特許拒絶査定不服審判
2017-002453
車両の制御装置
- 審判番号
- 2017-002453
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-153223外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月20日
- 審決日
- 2017年09月19日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人プロスペック特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (B60W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-153223号「車両の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年2月2日出願公開、特開2015- 20733号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月24日の出願であって、平成28年4月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年6月20日に意見書及び補正書が提出されたが、平成28年11月16日付けで拒絶査定がされ、平成29年2月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年11月16日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・刊行物等 1-3
先に通知した刊行物1には、モータMと、レゾルバRと、を備えたハイブリッド車両に適用される制御装置であって、未メンテナンス又はレゾルバRによる角度ずれである電気角αの学習値がない場合、アイドルストップを禁止する、ように構成された、ハイブリッド車両の制御装置の発明が記載されている(特に、段落【0014】、【0022】-【0027】、図12を参照)。
平成28年6月20日付け手続補正書による補正後の請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者の相違点は、以下のとおりである。
補正後の請求項1に係る発明は、車両のドライバの指示に応じて、同車両の車速と、所定の目標車速と、を一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるクルーズ運転を実行可能に構成されるのに対し、刊行物1に記載された発明は、クルーズ運転を実行可能でない点(以下、「相違点ア」という。)。
補正後の請求項1に係る発明は、オフセット量が取得されていない場合、クルーズ運転を禁止するように構成されるのに対し、刊行物1に記載された発明は、未メンテナンス又はレゾルバRによる角度ずれである電気角αの学習値がない場合、アイドルストップを禁止する点(以下、「相違点イ」という。)。
相違点アについて検討すると、クルーズ運転を実行可能とすることは電動車両の技術分野における周知技術であるから(例えば、刊行物2の段落【0037】-【0038】、【0041】、図3や、刊行物3の段落【0015】-【0016】、図2-3、などを参照。以下、「周知技術1」という。)、刊行物1に記載された発明と周知技術1を組み合わせ、刊行物1に記載された発明を、車両のドライバの指示に応じて、同車両の車速と、所定の目標車速と、を一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるクルーズ運転を実行可能に構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
相違点イについて検討すると、刊行物1に記載された発明において、アイドルストップを禁止するか否かを判定するとき、学習値に関する条件のみとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。また、刊行物1には、「学習が行われるまでの間、モータMのトルク低下によってエンジン始動ができない」(段落【0028】)と記載されているから、刊行物1に記載された発明と周知技術1を組み合わせる場合に、十分な走行性能を得ることなどを参酌し、オフセット量が取得されていない場合、アイドルストップに換えて、又は、加えてクルーズ運転を禁止する構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2-3に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 2
・刊行物等 1、4-5
刊行物1には、上記発明が記載されている。
平成28年6月20日付け手続補正書による補正後の請求項2に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者の相違点は、以下のとおりである。
補正後の請求項2に係る発明は、車両のドライバの指示に応じて行われるレーダ・クルーズ運転であって、車両と、他の車両と、の車間距離を所定の目標距離に一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるレーダ・クルーズ運転を実行可能に構成されるのに対し、刊行物1に記載された発明は、レーダ・クルーズ運転を実行可能でない点(以下、「相違点ア」という。)。
補正後の請求項2に係る発明は、オフセット量が取得されていない場合、レーダ・クルーズ運転を禁止するように構成されるのに対し、刊行物1に記載された発明は、未メンテナンス又はレゾルバRによる角度ずれである電気角αの学習値がない場合、アイドルストップを禁止する点(以下、「相違点イ」という。)。
相違点アについて検討すると、レーダ・クルーズ運転を実行可能とすることは電動車両の技術分野における周知技術であるから(例えば、刊行物4の段落【0035】-【0036】、【0039】、【0042】、図3や、刊行物5の段落【0029】-【0030】、図2、などを参照。以下、「周知技術2」という。)、刊行物1に記載された発明と周知技術2を組み合わせ、刊行物1に記載された発明を、車両のドライバの指示に応じて行われるレーダ・クルーズ運転であって、車両と、他の車両と、の車間距離を所定の目標距離に一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるレーダ・クルーズ運転を実行可能に構成することは、当業者が容易に想到し得るものである。
相違点イについて検討すると、刊行物1に記載された発明において、アイドルストップを禁止するか否かを判定するとき、学習値に関する条件のみとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。また、刊行物1には、「学習が行われるまでの間、モータMのトルク低下によってエンジン始動ができない」(段落【0028】)と記載されているから、刊行物1に記載された発明と周知技術2を組み合わせた場合に、十分な走行性能を得ることなどを参酌し、オフセット量が取得されていない場合、アイドルストップに換えて、又は、加えてレーダ・クルーズ運転を禁止する構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物4-5に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<刊行物等一覧>
1:特開2006-152882号公報
2:特開2009-29314号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
3:特開2000-8902号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
4:特開2012-131292号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
5:特開2007-168502号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年6月20日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)。
「 【請求項1】
発電電動機と、レゾルバと、を備えた車両に適用される制御装置であって、
前記車両のドライバの指示に応じて、同車両の車速と、所定の目標車速と、を一致させるトルクを前記発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるクルーズ運転を実行可能に構成され、
前記レゾルバによって検出される前記発電電動機の前記回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、
前記クルーズ運転を禁止するように構成された、
車両の制御装置。
【請求項2】
発電電動機と、レゾルバと、を備えた車両に適用される制御装置であって、
前記車両のドライバの指示に応じて行われるレーダ・クルーズ運転であって、前記車両と、他の車両と、の車間距離を所定の目標距離に一致させるトルクを前記発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるレーダ・クルーズ運転を実行可能に構成され、
前記レゾルバによって検出される前記発電電動機の前記回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、
前記レーダ・クルーズ運転を禁止するように構成された、
車両の制御装置。」
第4 刊行物
1.刊行物1(特開2006-152882号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物1には、「ハイブリッド車両の制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)
(1)刊行物1の記載事項
1a)「【請求項1】
エンジンとモータの少なくとも一方の動力を車輪に伝達して走行し、所定の条件下でエンジンを自動停止始動を行うハイブリッド車両の制御装置において、前記モータのロータの回転位置を検出する回転位置検出装置と、この回転位置検出装置の取り付け位置を補正する位置補正手段とを設け、この位置補正手段で取り付け位置が補正されるまでは、前記エンジンの自動停止始動を禁止することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記位置補正手段は自動で取り付け位置を学習することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記位置補正手段で回転位置検出装置の取り付け位置が補正されるまでは、モータによるエンジン始動を禁止し、セルモータを用いてエンジン始動を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記位置補正手段によって取り付け位置が補正されるまで、モータの出力を制限することを特徴とする請求項1~請求項3の何れかに記載のハイブリッド車両の制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】)
1b)「【0009】
請求項1に記載した発明によれば、モータトルクが低下している状態でのエンジン始動を防止することができるため、エンジン始動をスムーズに行うことができ、したがって、商品性を向上することができる効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、例えば、学習値が得られない不定状態となるのを防止することができるため、過電流や制御が不安定状態になるのを防止することができ、したがって、燃費やドライバビリティを向上するとともに信頼性を向上することができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、回転位置検出装置の取り付け位置が補正されるまでは乗員に違和感を与えることなしにセルモータによってエンジンの始動を行うことができるため、商品性を向上できる効果がある。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、例えば、学習が行われない異常状態に陥ったとしても、モータの出力制限を行いエンジンを停止に至らしめないことが可能となるため、乗員の負担を軽減することができる効果がある。」(段落【0009】ないし【0012】)
1c)「【0013】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施の形態におけるハイブリッド車両の制御装置はエンジンとトランスミッションとの間にモータが挟みこまれた形式のハイブリッド車両に用いられるものであって、エンジンのクランクシャフトとモータのロータとが直結され、モータによりエンジンを駆動補助可能とし、減速時にはモータを発電機として機能させる回生作動により減速エネルギーの一部を電気エネルギーに変換して回収するものである。さらに、上記ハイブリッド車両は、長時間の停車など所定の条件を満たした場合に自動的にエンジン停止であるアイドルストップを行うとともに、乗員のアクセルON等の操作により自動的にエンジン始動を行う、エンジンの自動停止始動制御を行うものである。
【0014】
図1はエンジンEとモータMとの接続部の周辺を示すものである。同図に示すように、前記エンジンEのシリンダブロック1の側面にはモータMが取り付けられるようになっており、このシリンダブロック1と前記モータMとの間にはモータMの磁極位置を検出するレゾルバ(回転位置検出手段)Rが取り付けられている。具体的には、前記レゾルバRのレゾルバステータ2がエンジンEのオイルシールケース3にボルト4により固定され、一方、レゾルバロータ5はモータMのロータ6にリング状のセンサカラー7の圧入により固定されている。さらに、前記レゾルバステータ2には図示しないハーネスを支持するハーネスホルダ8が接続されており、このハーネスホルダ8が前記レゾルバステータ2からシリンダブロック1の側面に渡って配策され、この端部にグロメット9を介してハーネス10が接続されている。このハーネス10を介して前記レゾルバRからの検出信号が角速度(ω)と角度(θ)に関する信号に変換する図示しないR/D変換器に入力されている。」(段落【0013】及び【0014】)
1d)「【0018】
ここで、前記電気角はレゾルバロータ5の検出位置、つまり、前記モータMのロータ6の回転位置を表すものであり、例えば、電気角aの場合には出力端子S1-S3間からは電圧Yが出力され、一方、出力端子S2-S4間からは電圧Xが出力される。この時、それぞれの電圧Y、電圧Xが得られる電気角は電気角aのみとなり、前記各出力端子S1~S4からの出力信号を処理することで、ロータ6の回転位置を検出することができる。
【0019】
図5は前記レゾルバRのレゾルバロータ5、前記レゾルバステータ2の取り付け位置を模式的に示したものであり、前記レゾルバロータ5には突部13が計90度ずつ4箇所に設けられている。ここで、前記レゾルバロータ5の突部13の最も外側となる頂点bはゼロ位置である理想取り付け位置(図中、鎖線で示す)に対して半時計回りにずれて配置された、いわゆる、ロータ側ずれが生じた状態となっており、一方、レゾルバステータ2は、このレゾルバステータ2に設けられた基準位置cが理想取り付け位置に対して時計回りにずれて配置された、いわゆる、ステータ側ずれが生じた状態になっている。
【0020】
具体的には、図6に示すように、前記ロータ側ずれは、前記ロータ6の外周に設けられた複数の磁極14のうち、例えば、N極14aと前記突部13の頂点bとを基準として、この間に生じた角度をロータ側の角度ずれとしている。一方、図7に示すように、前記ステータ側ずれは、モータMのステータ15に複数設けられたティース16に巻装されているU相巻線17とレゾルバステータ2の基準位置cとを基準としてこの間に生じた角度をステータ側の角度ずれとしている。ここで、前記N極14aと頂点b、U相巻線17と基準位置cとが理想取り付け位置上にある場合に、各々角度ずれが生じていない状態となる。尚、この図6、図7では3相ブラシレスDCモータを用いている。
【0021】
図8は縦軸を電圧(V)、横軸を電気角(θ)とし、レゾルバRの角度ずれが0度の場合のモータトルクを示している。具体的には、前記モータトルクは前記モータMのロータ6の界磁方向をd軸、このd軸に直交する成分をq軸とした場合のq軸方向のトルク成分(q軸電圧)Vqとd軸方向の界磁成分(d軸電圧)Vdとで構成されている。ここで、モータMの回転数が一定でモータトルクが0、つまり、外からロータ6に力が加わって回転している状態ではモータMの逆起電圧と前記トルク成分とが等しくなり、縦軸をq、横軸をdとした図10に示すようにトルク成分Vqに対応するとともにq軸方向にのみ作用するベクトルで表すことができ、この時、界磁成分であるd軸方向のベクトルは生じない。」(段落【0018】ないし【0021】)
1e)「【0022】
図9は、上記図8と同様の縦軸と横軸とを有するものであり、レゾルバRの角度ずれが生じている場合のモータMのロータ6のトルク成分Vqと界磁成分Vdとを示している。ここで、モータMの逆起電圧とトルク成分との位相は電気角α(図中、レゾルバずれ量αで示す)だけずれている。前記トルク成分は逆起電圧のピーク値Vp1よりも低いピーク値Vp2となっており、このピーク値の差分に応じた界磁成分が生じることとなる。つまり、前記逆起電圧は、トルク成分Vqと界磁成分Vdとに分解することができるのである。これを図11に示すように、トルク成分Vqに対応したq軸方向のベクトルと界磁成分Vdに対応したd軸方向のベクトルとで表すことができる。このように、角度ずれである電気角αが生じているためq軸の界磁成分Vdが増加することとなるのである。
ここで、モータMの通電電流をIとすると、I=0のとき、逆起電圧Eは
【0023】
【数1】 - (略) -
【0024】
となり、角度ずれである電気角αは、α=arctan(Vq/Vd)となる。すなわち、逆起電圧の大きさとトルク成分Vqと界磁成分Vdとの大きさは、ロータ6の回転速度に依存するが、上記電気角αは通電電流Iが0であれば回転数によらず成立するため、制御ユニットにおいてレゾルバRの角度ずれである電気角αを算出し、この算出結果である学習値を前記制御ユニットのメモリ(例えば、EEPROM)に記憶し、この学習値に基づいて、モータMのトルクが最適な状態となるように制御を行うことができるのである。」(段落【0022】ないし【0024】)
1f)「【0025】
次に図12のフローチャートに基づいて制御ユニットによるモータMの始動処理を説明する。
まず、ステップS1では電源をオンにしてステップS2に進む。ステップS2では未メンテナンスか又はレゾルバによる学習値なしか否かを判定する。判定結果が「YES」(未メンテナンス又は学習値なし)である場合はステップS3に進み、判定結果が「NO」(未メンテナンスではなく学習値あり)である場合はステップS13に進む。
【0026】
ステップS3ではモータを用いてエンジンを始動する。ステップS4ではモータによりエンジンを始動することができたか否かを判定する。判定結果が「YES」(始動できた)である場合はステップS5に進み、判定結果が「NO」(始動できなかった)である場合はステップS12に進みセルモータによるエンジン始動を行いステップS5に進む。ステップS5ではアイドルストップを禁止してステップS6に進む。ステップS6ではモータトルクをある値に制限する。ステップS7(位置補正手段)ではレゾルバの取り付け位置の学習を実行する。ここで、前記モータトルクの制限とは、予め設定されている代替値を用いて、モータを駆動するインバータの出力を通常のものよりも低く制限することである。
【0027】
ステップS8では学習結果が異常か否かを判定する。判定結果が「YES」(異常)である場合はステップS9に進み、判定結果が「NO」(異常ではない)である場合はステップS14に進む。ステップS9ではアイドルストップを禁止する。ステップS10ではモータトルクを制限し、さらに、ステップS11では学習値が異常である旨を乗員に知らせる警告灯を点灯しリターンする。
一方、ステップS14ではアイドルストップを許可し、ステップS15で通常のモータ制御に移行してリターンする。
【0028】
すなわち、乗員が乗車して電源を入れたときメンテナンスが行われたか又はレゾルバRの取り付け位置の学習が行われているかを判断して、メンテナンスと学習との両者が行われていない場合に限り、レゾルバRの取り付け位置の学習を行うようになっている。そして、学習が行われるまでの間、モータMのトルク低下によってエンジン始動ができないような場合にはセルモータによってエンジンEを始動し、さらに、エンジンEの始動頻度を低減させるべくアイドルストップを禁止している。この時、モータトルクは最適化されていないため、モータMのトルクを代替値を用いて制限している。そして、学習の結果が異常である場合には、モータトルクを最適な状態で制御することができないため、アイドルストップを禁止するとともにモータトルクを制限して、乗員に学習が異常である旨を知らせている。
【0029】
したがって、上述の実施の形態によれば、メンテナンスやレゾルバRの取り付け位置の学習が行われずモータトルクが最適化されていない状態でエンジンEを始動するのを防止することができるため、常にエンジンEの始動をスムーズに行うことができ、この結果、商品性を向上することができる。
【0030】
さらに、学習値が不定状態となるのを防止してモータMに過電流が流入したりモータMの制御が不安定状態になるのを防止することができるため、燃費やドライバビリティを向上するとともに信頼性を向上することができる。」(段落【0025】ないし【0030】)
(2)上記(1)及び図面から分かること
1g)上記1e)及び1f)における段落【0024】ないし【0026】の記載及び図12におけるS2ないしS5の記載から、レゾルバRの角度ずれである電気角αから求めた学習値がない場合にアイドルストップを禁止することが分かる。
(3)刊行物1記載の発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし図12の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「モータMと、レゾルバRと、を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
レゾルバRの角度ずれから求めた学習値がない場合、
アイドルストップを禁止するように構成された、
ハイブリッド車両の制御装置。」
2.刊行物2(特開2009-29314号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物2には、「車両の駆動力制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)
(1)刊行物2の記載事項
2a)「【0004】
このハイブリッド車両にて、運転者が定速走行を行うために、オートクルーズスイッチを操作すると、この定速走行を行うための目標車速を設定し、現在の車速とこの目標車速との偏差が減少するように、エンジンと電気モータを駆動制御する。即ち、現在の車速と目標車速との偏差を打ち消す方向のエネルギを計算し、エンジンのトルクを増減すると共に電気モータのトルクを増減することで、車両を目標車速で安定して走行させる。」(段落【0004】)
2b)「【0023】
動力分配統合機構15は、外歯歯車のサンギヤ22と、このサンギヤ22と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ23と、サンギヤ22に噛合すると共にリングギヤ23に噛合する複数のピニオンギヤ24と、複数のピニオンギヤ24を自転、且つ、公転自在に保持するキャリア25とを有し、サンギヤ22とリングギヤ23とキャリア25とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構15にて、キャリア25にはエンジン12のクランクシャフト13が、サンギヤ22にはモータ19が、リングギヤ23にはリングギヤ軸17を介して減速ギヤ18がそれぞれ連結されている。そして、モータ16が発電機として機能するときにはキャリア25から入力されるエンジン12からの動力をサンギヤ22側とリングギヤ23側にそのギヤ比に応じて分配し、モータ16が電動機として機能するときにはキャリア25から入力されるエンジン12からの動力とサンギヤ22から入力されるモータ16からの動力を統合してリングギヤ23側に出力する。リングギヤ23に出力された動力は、リングギヤ軸17からギヤ機構26及びデファレンシャルギヤ27を介して、最終的には車両の駆動輪28に出力される。
【0024】
モータ16及びモータ19は、いずれも発電機として駆動することができると共に、電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ29,30を介してバッテリ31と電力のやりとりを行なう。インバータ29,30とバッテリ31とを接続する電力ライン32は、各インバータ29,30が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータ16,19いずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。従って、バッテリ31は、モータ16,19のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータ16,19により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ31は充放電されない。
【0025】
モータ16,19は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)33により駆動制御されている。モータECU33には、モータ16,19を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータ16,19の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ34,35からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ16,19に印加される相電流などが入力されており、モータECU33からは、インバータ29,30へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU33は、ハイブリッド用電子制御ユニット20と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット20からの制御信号によってモータ16,19を駆動制御すると共に必要に応じてモータ16,19の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット20に出力する。」(段落【0023】ないし【0025】)
2c)「【0044】
このように本実施例の車両の駆動力制御装置にあっては、ハイブリッド用電子制御ユニット20が、運転者のオートクルーズスイッチ52の設定操作に基づいて定速走行用の目標車速Vtを設定し、この目標車速Vtが設定されたとき、車速センサ51により検出された車速Vが目標車速Vtになるように要求トルクTrtを設定し、この要求トルクTrtが設定されたとき、この要求トルクTrtと車両が出力可能な正の最大トルクTramaxと負の最大トルクTrbmaxを用いて、運転者のアクセル操作またはブレーキ操作によるトルク指令値に対する要求トルクVrtを表す定速走行用トルクマップを設定し、トルク指令値に応じて定速走行用トルクマップを用いて要求トルクTrtを変更するように制御している。」(段落【0044】)
(2)刊行物2技術
上記(1)及び図面の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されている。
「発電機及び電動機として駆動できるモータ16、19と、モータ16、19の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ34、35を備えたハイブリッド車両において、運転者によるオートクルーズスイッチ52の設定操作に基づいて定速走行用の目標車速Vtを設定し、この目標車速Vtが設定されたとき、車速センサ51により検出された車速Vが目標車速Vtになるように要求トルクTrtを設定する技術。」
3.刊行物3(特開2000-8902号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物3には、「車両用定速走行制御システム」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)
(1)刊行物3の記載事項
3a)「【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例により説明する。図1は実施例の構成を示すブロック図である。エンジン1の出力は、出力分割機構2で2経路に分割される。一方の経路は、トランスアクスル3に接続され、このトランスアクスル3からの駆動力が、左右の前輪軸を介して、図示しない両前輪に伝達されるようになっている。他方の経路はジェネレータ4を介して発電する経路であり、この電力は、インバータ5を介して、モータ6を駆動したり、バッテリ7を充電するために使用される。エンジン1はエンジンコントローラ8を介して定速走行制御部9に接続されている。
【0012】モータ6は走行用のモータであり、交流誘導電動機である。モータ6にはトランスアクスル3が接続され、モータ6はインバータ5およびモータコントローラ10を介して定速走行制御部9に接続されている。またモータ6は、インバータ5を介して、走行駆動用の主電源であるバッテリ7と接続されている。モータコントローラ10はジェネレータ4にも接続されている。
【0013】定速走行制御部9には、バッテリの残容量を検知するバッテリ残容量検知部11、モータ1で駆動される車輪の回転から走行車速を検知する車速センサ12、シフトレバーのポジションから走行レンジを検知するシフト位置検知部13、運転席近傍に設けられた定速走行用の定速走行スイッチ14、およびブレーキスイッチ15が接続されている。ブレーキスイッチ15は図示しないブレーキペダルに付設され、ブレーキペダルの踏み始めの微少ストロークでオンとなるスイッチである。」(段落【0011】ないし【0013】)
3b)「【0014】次に定速走行を行う際の動作を説明する。まず、バッテリ残容量検知部11で検知したバッテリの残容量が所定量を超えている場合の定速走行動作を説明する。運転者は定速走行を実際に行う前にシフトレバーを操作して、ドライブレンジに設定する。車速が所望の値となったところで、定速走行スイッチ14をオンとする。定速走行制御部9は、定速走行スイッチ14がオンされると、まずシフト位置検知部13で検知されたシフトポジションがドライブレンジであり、車速センサ12で検知した走行車速が40km/h~110km/hの範囲内であり、かつブレーキスイッチ15がオフ状態であるか否かを判定し、これらの条件を満たしていれば、定速走行状態へ移行する。
【0015】定速走行状態へ移行すると、定速走行スイッチ14がオンされたときの走行車速を定速走行速度として設定する。まず、定速走行速度で走行するため必要なエンジン出力を計算し、エンジンコントローラ8によりエンジン1を制御する。同時に必要な駆動力に対し、モータが分担するトルクを算出する。エンジンによる直接駆動とモータを介した駆動の割合が、最大効率になるように、モータコントローラ10によりジェネレータ4を駆動してエンジン出力を2系統に振り分ける。
【0016】96ms毎に、新たに車速センサ12から入力された走行車速と設定された定速走行速度を比較して、定速走行速度で走行するために必要な出力トルクを算出する。この際、実際の走行車速が定速走行速度より、遅い場合には、モータコントローラ10により、ジェネレータ4を介して電力が供給されているモータ6に、バッテリ7からも電力を供給して、モータ6の出力トルクを増加して、駆動力を高める。実際の走行車速が定速走行速度より、速い場合には、モータコントローラ10により、エンジン1からジェネレータ4を介してモータ6へ供給されている電力を削減し、モータ6の出力トルクを低減し、その分の電力をインバータ5からバッテリ7へ充電する。」(段落【0014】ないし【0016】)
(2)刊行物3技術
上記(1)及び図面の記載からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されている。
「走行用のモータ6及びエンジン1を備えた車両用定速走行制御システムにおいて、運転者が定速走行スイッチ14をオンすると、オンされたときの走行速度を定速走行速度として設定し、走行車速が定速走行速度となるようにモータ6の出力トルクを増加あるいは低減するように制御する技術。」
4.刊行物4(特開2012-131292号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物4には、「ハイブリッド電気自動車の制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)
(1)刊行物4の記載事項
4a)「【請求項1】
内燃機関とバッテリに蓄えられた電力を動力源として力行する電動機との少なくとも一方から出力される動力で下り勾配を有する走行路面を走行するハイブリッド電気自動車において、走行速度を予め設定された設定速度に維持するように定速走行制御を行うハイブリッド電気自動車の制御装置であって、
前記ハイブリッド電気自動車の走行速度を検出する走行速度検出手段と、
前記ハイブリッド電気自動車の先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、
前記下り勾配の最下地点より手前側に設定された惰性走行開始地点から惰性走行を開始し、前記車間距離検出手段によって検出された車間距離が予め設定された所定車間距離未満となった場合に前記惰性走行を中止する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
4b)「【0020】
モータ4は、力行時にはバッテリ11に蓄えられた電力を用いて力行駆動することによりハイブリッド電気自動車1の動力源の一つとして機能すると共に、回生時にはバッテリ11を充電するための電力を発電する発電機として機能する電動機である。」(段落【0020】)
4c)「【0036】
車間距離が予め設定された所定車間距離L1以上である場合(ステップS104:YES)、上述のように算出された惰性走行開始地点aにハイブリッド電気自動車1が到達すると、車両ECU26はエンジン2への燃料供給を停止し、惰性走行を開始する(ステップS105)。このように最下地点aの手前側から惰性走行を開始することにより、定速走行制御における設定速度Vsetの許容範囲内において惰性走行を行い、燃費性能を効果的に向上させることができる。
【0037】
惰性走行の開始後は、車両ECU26は車速センサ16からの取得値に基づいて、車速Vが設定速度Vset未満になったか否かを判定する(ステップS106)。走行速度Vが設定速度Vset以上である場合(ステップS106:NO)は、当該処理をループ処理しながら待機する。一方、走行速度Vが設定速度Vset未満となった場合(ステップS106:YES)は、車両ECU26は惰性走行を終了する(ステップS107)。これにより走行速度Vを設定速度Vsetの許容範囲に維持しながら、定速走行制御下において惰性走行を効率的に実施することができる。
【0038】
続いて車両ECU26はバッテリ充電量検出手段15からの取得値に基づいてバッテリ11のSOCを取得し、当該SOCが予め設定された所定値SOC1より大きいか否かを判定する(ステップS108)。ここで所定値SOC1は、バッテリ11にモータ4を力行駆動させるだけの電力が蓄えられているか否かを判定するための閾値である。
【0039】
バッテリ11のSOCが所定値SOC1より高い場合(ステップS108:YES)、バッテリ11に十分な電力が残っているため、モータ4を力行駆動することにより、上り勾配によって減速しようとするハイブリッド電気自動車1の走行速度を維持することができる(ステップS109)。このとき、ハイブリッド車両1はバッテリ11に充電された電力を用いてモータ4を駆動することにより走行できるので、エンジン2における燃料消費量を抑え、燃費を向上させることができる。一方、バッテリ11のSOCが所定値SOC1未満である場合(ステップS108:NO)、バッテリ11にモータ4の力行駆動に要する電力が残っていないため、モータ4を力行駆動させることなく、クラッチ3を接続させてエンジン2からの出力によって走行を行う(ステップS110)。
【0040】
一方、車間距離Lが予め設定された所定車間距離L1未満である場合(ステップS104:NO)、走行条件に関わらず惰性走行の実施を禁止する(ステップS111)。惰性走行はハイブリッド電気自動車1が有する慣性力を利用して走行を行うため、下り勾配を走行中の走行速度Vが増大し、先行車両との車間距離Lを十分に確保できなくなる場合があり、危険である。そこで本発明では、惰性走行中に走行車両2との車間距離Lが所定車間距離L1未満となった場合に惰性走行を中止することにより、ハイブリッド電気自動車1の安全性を確保することができる。このように本発明では、定速走行制御下における燃費性能の改善を図ると共に、高度な安全性を実現することができる。」(段落【0036】ないし【0040】)
4d)「【0045】
図4に示すように、所定車間距離L1は相対速度Vrが大きくなるに従って増加するように設定されている。これにより、相対速度Vrが大きい場合(即ち、車間距離Lが狭まる速度が速い場合)、惰性走行を中止するタイミングの基準となる所定車間距離L1を大きく確保することによって、惰性走行の中止タイミングを早めることができる。即ち、相対速度Vrが大きい場合であっても、車間距離Lをより大きく確保することにより、車両の安全性を確実に確保することができる。これにより、例えば走行速度Vの遅い先行車両2が前方にいる場合に、惰性走行を早めに中止し、安全性を確保することができる。
【0046】
以上説明したように本実施例に係るハイブリッド電気自動車1では、下り勾配を走行中のハイブリッド自動車1において走行速度Vが定速走行制御により設定速度Vsetに維持されている場合に、当該下り勾配の最下地点bより手前にある惰性走行開始地点aから惰性走行が実施される。このように最下地点bの手前側から惰性走行を開始することにより、定速走行制御における設定速度Vsetの許容範囲内において惰性走行を行い、燃費性能を効果的に向上させることができる。一方、惰性走行はハイブリッド自動車1が有する慣性力を利用して走行を行うため、下り勾配を走行中の走行速度Vが増大し、先行車両2との車間距離Lを十分に確保できなくなる場合があり、危険である。そこで本発明では、惰性走行中に先行車両2との車間距離Lが所定車間距離L1未満となった場合に惰性走行を中止することにより、ハイブリッド自動車1の安全性を確保することができる。このように本発明では、定速走行制御下における燃費性能の改善を図ると共に、高度な安全性を実現することができる。」(段落【0045】及び【0046】)
(2)刊行物4技術
上記(1)及び図面の記載からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4技術」という。)が記載されている。
「ハイブリッド自動車の制御装置において、下り勾配の最下地点より手前側に設定された惰性走行開始地点から惰性走行を開始して燃費性能を向上させるとともに、先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段によって検出された車間距離が予め設定された所定車間距離未満となった場合に惰性走行を中止することにより、安全性を確保する技術。」
5.刊行物5(特開2007-168502号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物5には、「ハイブリッド車両の車間制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)
(1)刊行物5の記載事項
5a)「【請求項1】
モータとエンジンを駆動系に有し、先行車の捕捉時、設定された自車との車間距離を維持するように制駆動力を制御する車間制御システムを備えたハイブリッド車両の車間制御装置において、
車間制御による走行時、前記車間制御システムから入力した車間距離情報が応答性の高い駆動力を要求する情報を示すほど、要求駆動力に対し前記モータにより分担する駆動力配分比を高く設定するモータ-エンジン駆動力配分比設定手段を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の車間制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
5b)「【0006】
よって、本発明のハイブリッド車両の車間制御装置にあっては、車間制御による走行時、モータ-エンジン駆動力配分比設定手段において、車間制御システムから入力した車間距離情報が応答性の高い駆動力を要求する情報を示すほど、要求駆動力に対しモータにより分担する駆動力配分比が高く設定される。
すなわち、加速時、エンジンとモータに対し同時に駆動指令を加えた場合、エンジンの駆動力立ち上がり制御応答性よりモータの駆動力立ち上がり制御応答性が高く、モータ駆動力配分比を高く設定した方が、高い加速応答性を発揮することができる。
例えば、設定した車速以下で先行車を追従しているとき、先行車が加速した場合、車間距離が拡大し、自車は先行車に追従するために加速する。しかし、車間距離の拡大に応じてモータ駆動力配分比を高く設定することで、高いモータの駆動力立ち上がり制御応答性が生かされ、自車の加速応答性が増し、先行車への追従性が高まる。
例えば、設定した車速以下で先行車を追従しているとき、先行車を追い越そうとアクセルペダル踏み込み先行車に接近した場合、車間距離が縮小する。しかし、車間距離の縮小に応じてモータ駆動力配分比を高く設定することで、高いモータの駆動力立ち上がり制御応答性が生かされ、自車の加速応答性が増し、先行車の追越し性が高まる。
さらに、要求駆動力はモータ駆動力配分比とエンジン駆動力配分比との和により与えられることで、モータ駆動力配分比を高く設定した場合、高く設定した分、相対的にエンジン駆動力配分比が低く設定されることになる。したがって、車間距離情報によりモータ駆動力配分比が高く設定される加速時には、エンジン使用率が下がり、燃費向上に寄与することができる。
この結果、車間制御による走行時、車間距離情報にあらわれた加速意図に応じて高い加速応答性を発揮することにより、先行車への追従性や先行車追越し性を高めることができると共に、燃費向上にも寄与することができる。」(段落【0006】)
5c)「【0015】
前記インバータ302は、CPU101により直接制御されている。エンジン305の発生トルク及び回転数に応じて強電バッテリ301の電気エネルギーをモータ303へ供給すること、及び発電機304を動作させて発生した電気エネルギーを強電バッテリ301へと戻す役目を有する。なお、モータ303と発電機304とエンジン305は、遊星歯車機構(動力分割機構306に内蔵)に直結しているため、トルク及び回転数のバランスを保つように制御しないと車両を正常に作動させることができない。
【0016】
前記モータ303は、車速が低い場合は単独で駆動トルクを発生させる。また、車速が高い場合は、エンジン305の駆動トルクをアシストしている。さらに、減速時は発電作用(回生制動)することにより電気エネルギーを発生させ、これをインバータ302を経由して強電バッテリ301へ戻す役目を有する。」(段落【0015】及び【0016】)
(2)刊行物5記載の技術
上記(1)及び図面の記載からみて、刊行物5には以下の技術(以下、「刊行物5技術」という。)が記載されている。
「モータとエンジンを駆動系に有し、先行車の捕捉時、設定された自車との車間距離を維持するように制駆動力を制御する車間制御システムを備えたハイブリッド車両の車間制御装置において、車間制御システムから入力した車間距離情報が応答性の高い駆動力を要求する情報を示すほど、要求駆動力に対しモータにより分担する駆動力配分比を高く設定する技術。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「モータM」は、上記第4 1.1c)の記載からみて発電機としても機能するものであるから、本願発明1における「発電電動機」に相当し、引用発明における「レゾルバR」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「レゾルバ」に相当し、以下同様に、「ハイブリッド車両の制御装置」は「車両に適用される制御装置」あるいは「車両の制御装置」に、「ない場合」は「取得されていない場合」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値」は、上記第4 1.1d)及び1e)の記載から、レゾルバRによって検出されるモータMのロータの回転位置の理想取り付け位置からのずれによって生じるものであるから、本願発明1における「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量」に相当する。
さらに、引用発明における「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値がない場合、アイドルストップを禁止する」と、本願発明1における「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、クルーズ運転を禁止する」とは、「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、所定の制御を禁止する」という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「発電電動機と、レゾルバと、を備えた車両に適用される制御装置であって、
レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、
所定の制御を禁止するように構成された、
車両の制御装置。」
[相違点1]
本願発明1においては「車両の制御装置」において、「車両のドライバの指示に応じて、同車両の車速と、所定の目標車速と、を一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるクルーズ運転を実行可能に構成され」るのに対して、
引用発明においては「ハイブリッド車両の制御装置」において、そのようなクルーズ運転が実行可能に構成されるか不明である点(以下、「相違点1」という。)。
[相違点2]
「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、所定の制御を禁止する」に関して、本願発明1においては「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、クルーズ運転を禁止する」のに対して、引用発明においては「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値がない場合、アイドルストップを禁止する」点(以下、「相違点2」という。)。
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
[相違点2について]
上記刊行物2技術は、「発電機及び電動機として駆動できるモータ16、19と、モータ16、19の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ34、35を備えたハイブリッド車両において、運転者によるオートクルーズスイッチ52の設定操作に基づいて定速走行用の目標車速Vtを設定し、この目標車速Vtが設定されたとき、車速センサ51により検出された車速Vが目標車速Vtになるように要求トルクTrtを設定する技術」であり、
上記刊行物3技術は、「走行用のモータ6及びエンジン1を備えた車両用定速走行制御システムにおいて、運転者が定速走行スイッチ14をオンすると、オンされたときの走行速度を定速走行速度として設定し、走行車速が定速走行速度となるようにモータ6の出力トルクを増加あるいは低減するように制御する技術」である。
しかしながら、上記刊行物2技術及び刊行物3技術においては、「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、クルーズ運転を禁止する」ことについては、開示や示唆がされていない。
さらに、ハイブリッド車両においてクルーズ運転を行うことは、上記刊行物2技術及び刊行物3技術から周知技術であるとしても、引用発明に上記刊行物2技術及び刊行物3技術による周知技術を適用する際に、引用発明の「アイドルストップを禁止する」ことに代えて、あるいは加えて「クルーズ運転を禁止する」ための示唆を上記刊行物2技術及び刊行物3技術からは見出すことができない。
よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、刊行物2技術及び刊行物3技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。
2.本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比する。
引用発明における「モータM」は、上記第4 1.1c)の記載からみて発電機としても機能するものであるから、本願発明2における「発電電動機」に相当し、引用発明における「レゾルバR」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明2における「レゾルバ」に相当し、以下同様に、「ハイブリッド車両の制御装置」は「車両に適用される制御装置」あるいは「車両の制御装置」に、「ない場合」は「取得されていない場合」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値」は、上記第4 1.1d)及び1e)の記載から、レゾルバRによって検出されるモータMのロータの回転位置の理想取り付け位置からのずれによって生じるものであるから、本願発明2における「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量」に相当する。
さらに、引用発明における「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値がない場合、アイドルストップを禁止する」と、本願発明2における「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、レーダ・クルーズ運転を禁止する」とは、「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、所定の制御を禁止する」という限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「発電電動機と、レゾルバと、を備えた車両に適用される制御装置であって、
レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、
所定の制御を禁止するように構成された、
車両の制御装置。」
[相違点3]
本願発明2においては「車両の制御装置」において、「車両のドライバの指示に応じて行われるレーダ・クルーズ運転であって、車両と、他の車両と、の車間距離を所定の目標距離に一致させるトルクを発電電動機の回転軸に生じさせる運転であるレーダ・クルーズ運転を実行可能に構成され」るのに対して、
引用発明においては「ハイブリッド車両の制御装置」において、そのようなレーダ・クルーズ運転が実行可能に構成されるか不明である点(以下、「相違点3」という。)。
[相違点4]
「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、所定の制御を禁止する」に関して、本願発明2においては「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、レーダ・クルーズ運転を禁止する」のに対して、引用発明においては「レゾルバRの角度ずれから求めた学習値がない場合、アイドルストップを禁止する」点(以下、「相違点4」という。)。
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
[相違点4について]
上記刊行物4技術は、「ハイブリッド自動車の制御装置において、下り勾配の最下地点より手前側に設定された惰性走行開始地点から惰性走行を開始して燃費性能を向上させるとともに、先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段によって検出された車間距離が予め設定された所定車間距離未満となった場合に惰性走行を中止することにより、安全性を確保する技術」であり、
上記刊行物5技術は、「モータとエンジンを駆動系に有し、先行車の捕捉時、設定された自車との車間距離を維持するように制駆動力を制御する車間制御システムを備えたハイブリッド車両の車間制御装置において、車間制御システムから入力した車間距離情報が応答性の高い駆動力を要求する情報を示すほど、要求駆動力に対しモータにより分担する駆動力配分比を高く設定する技術」である。
しかしながら、上記刊行物4技術及び刊行物5技術においては、「レゾルバによって検出される発電電動機の回転軸の回転位置と、実際の回転位置と、の差であるオフセット量が取得されていない場合、レーダ・クルーズ運転を禁止する」ことについては、開示や示唆がされていない。
さらに、ハイブリッド車両においてレーダ・クルーズ運転を行うことは、上記刊行物4技術及び刊行物5技術から周知技術であるとしても、引用発明に上記刊行物4技術及び刊行物5技術による周知技術を適用する際に、引用発明の「アイドルストップを禁止する」ことに代えて、あるいは加えて「レーダ・クルーズ運転を禁止する」ための示唆を上記刊行物4技術及び刊行物5技術からは見出すことができない。
よって、相違点3について判断するまでもなく、本願発明2は、引用発明、刊行物4技術及び刊行物5技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、刊行物2技術及び刊行物3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、本願の請求項2に係る発明は、引用発明、刊行物4技術及び刊行物5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-002453