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特許拒絶査定不服審判

2017-001351

蛍光観察システム、および蛍光観察システムの動作方法

審判番号
2017-001351
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-173776外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年01月31日
審決日
2018年01月31日
公報発行日
2018年03月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G01N) / P18 .537-WY (G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-173776「蛍光観察システム、および蛍光観察システムの動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日出願公開、特開2012- 98271、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年8月9日(パリ条約による優先権主張、2010年 8月9日、ドイツ連邦共和国、2010年8月9日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年7月8日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月5日付けで手続補正(以下、「手続補正1」という。)がなされ、平成28年2月26日付けで最後の拒絶理由(以下、「最後の拒絶理由」という。)が通知され、平成28年5月31日付けで手続補正(以下、「手続補正2」という。)がなされたが、平成28年9月29日付けで、手続補正2についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで、最後の拒絶理由により、拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月31日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正(以下、「手続補正3」という。)がなされ、当審において、平成29年9月4日付けで拒絶理由が通知され、平成29年12月1日付けで手続補正(以下、「手続補正4」という。)がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-12に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、手続補正4により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、5は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 蛍光観察システムであって、 対象物を照明するための光源と、 前記対象物の拡大表示をユーザに提供するための接眼レンズ、および、前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラを含む顕微鏡光学系と、 ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、 前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え、 蛍光のみを透過する蛍光フィルタが前記対象物と前記カメラとの間のビーム経路に配置され、 照明光フィルタが、前記光源と前記対象物との間の照明ビーム経路に配置され、 観察光フィルタが、前記対象物と前記接眼レンズとの間のビーム経路に配置され、 前記照明光フィルタの透過特性は第1の部分特性(I)と第2の部分特性(II)との和であり、 前記観察光フィルタの透過特性は、第3の部分特性(III)と第4の部分特性(IV)との和であり、 前記第1の部分特性(I)は、しきい値波長を下回る第1の波長範囲において、第1の値よりも大きい値を有する透過率を有し、 前記第2の部分特性(II)は、前記しきい値波長を上回る、610nmから750nmまでの第2の波長範囲において、第2の値よりも小さくかつ第3の値よりも大きい値を有する透過率を有し、 前記照明光フィルタの透過率は、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲との間において、第4の値よりも小さい値を有し、 前記第3の部分特性(III)は、前記しきい値波長を上回る第3の波長範囲において、前記第1の値よりも大きい値を有する透過率を有し、 前記第4の部分特性(IV)は、前記しきい値波長を下回る、420nmから560nmまでの第4の波長範囲において、前記第2の値よりも小さくかつ前記第3の値よりも大きい値を有する透過率を有し、前記観察光フィルタの透過率は、前記第4の波長範囲と前記第3の波長範囲との間において、前記第4の値よりも小さい値を有し、 前記第4の値は前記第3の値よりも小さく、前記第3の値は前記第2の値よりも小さく、前記第2の値は前記第1の値よりも小さく、 前記しきい値波長は、580nmから620nmまでの波長範囲の中から選ばれ、 前記第1の値は0.5であり、 前記第3の値は0.0005である、蛍光観察システム。」 「【請求項5】 蛍光観察システムであって、 対象物を照明するための光源と、 前記対象物の拡大表示をユーザに提供するための接眼レンズ、および、前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラを含む顕微鏡光学系と、 ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、 前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え、 蛍光のみを透過する蛍光フィルタが前記対象物と前記カメラとの間のビーム経路に配置され、 照明光フィルタが、前記光源と前記対象物との間の照明ビーム経路に配置され、 観察光フィルタが、前記対象物と前記接眼レンズとの間のビーム経路に配置され、 前記照明光フィルタの透過特性は、しきい値波長を下回る波長範囲において、第1の値よりも大きい値を有する透過率を有し、前記照明光フィルタの透過特性は、前記しきい値波長を上回り、かつ610nmを下回る波長範囲において、第4の値よりも小さい値を有する透過率を有し、 前記観察光フィルタの透過特性は、前記しきい値波長を上回る波長範囲において、前記第1の値よりも大きい値を有する透過率を有し、前記観察光フィルタの透過特性は、前記しきい値波長を下回り、かつ560nmを上回る波長範囲において、前記第4の値よりも小さい値を有する透過率を有し、 【数4】 TL(/r)は(上付き矢印を/で代用する)、前記照明光フィルタの透過特性であり、 TO(/r)は前記観察光フィルタの透過特性であり、 /r(上付き矢印を/で代用する)は、CIE1931XYZ色空間のCIExy色度図における座標であり、 Sは、CIE1931XYZ色空間のCIExy色度図のスペクトル軌跡と呼ばれるラインであり、 /Wは(上付き矢印を/で代用する)は、CIE1931XYZ色空間のCIExy色度図における白色点である、 が成立し、 前記しきい値波長は、580nmから620nmまでの波長範囲の中から選ばれ、 前記第1の値は0.5であり、 前記第4の値は0.0002である、蛍光観察システム。」 本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6は、本願発明5を減縮した発明を含む。 本願発明7-10は、それぞれ本願発明1-4に対応する方法の発明であり、本願発明11-12は、それぞれ本願発明5-6に対応する方法の発明であり、本願発明1-6とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2000-097859号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【課題】 観察対象物の蛍光像と通常像とを重ねて明瞭に区別して観察することができる、構成の簡単な蛍光観察方法及び装置を提供する。」(フロントページ) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、実体顕微鏡、手術用顕微鏡、コルポスコープ、スリットランプ等の立体観察装置や内視鏡等、観察している部位に処置や作業を施すのに適した蛍光観察方法および装置に関する。」 「【0007】また、上記第2の目的を達成するため、本発明による蛍光観察装置は、照明用光源と、照明用光源からの光を観察対象物に照射するための照明光学系と、照明光学系を介して照明した観察対象物の像を得るための像形成光学系とを備え、照明光学系に蛍光物質の励起波長を含む励起光に波長を限定する励起フィルターを配置し、像形成光学系に前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過するバリアフィルターを配置した蛍光観察装置において、前記励起フィルターとバリアフィルターとを重ねたときの透過率が、3色分解のRGBの波長帯に夫々透過率を有し、且つ前記蛍光最強波長での透過率が0.05%以上であることを特徴としている。」 「【0008】 【発明の実施の形態】以下、図示した実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。 実施例1 図1は本発明を実体顕微鏡に適用した本実施例の概略構成図、図2は本実施例に用いられる励起フィルターとバリアフィルターの第1の組合せによる透過率特性線図、図3は従来方法による励起フィルターとバリアフィルターの組合せによる透過率特性線図、図4乃至図8は夫々本実施例に用いられる励起フィルターとバリアフィルターの第2乃至第5の組合せによる透過率特性線図である。 【0009】図1において、1は対物レンズ、2は左右一対のアフォーカル変倍系、3はアフォーカル光束を受けて2方向に光束を分割するビームスプリッタ、4は一対の結像レンズ、5は像を正立させるための正立プリズム、6は一対の眼幅調整プリズム、7は一対の視野絞り、8は一対の接眼レンズで、対物レンズ1,変倍系2,ビームスプリッタ3及び結像レンズ4は像形成光学系を構成している。9はビームスプリッタ3により分割された観察対象物Oからの光束を受ける撮影レンズ、10は撮影レンズ9により形成された像を受像するCCD等の撮像素子である。11は照明用光源、12は集光レンズ、13は赤外線カットフィルター、14は光源11を顕微鏡から離し顕微鏡を自由な位置に移動することを可能にするライトガイドファイバー束、15はリレーレンズ、16は照野絞り、17は光路内に挿脱可能な励起フィルター、18は照明光を観察対象物Oへ導びくレンズプリズム系で、これらは照明光学系を構成している。19は変倍系2とビームスプリッタ3の間の光路内に挿脱可能なバリアフィルターである。 【0010】一般に、蛍光物質は光を吸収し、その光よりも長い波長の蛍光を発するが、その蛍光物質が最も良く吸収する光の波長を励起波長と呼び、またその蛍光物質が発する蛍光の最大波長を蛍光最強波長と呼んでいる。上記構成の実体顕微鏡を用いて、観察対象物Oを蛍光観察するには、照明光学系に励起波長を50%以上透過する励起フィルター17を入れ、観察系に励起光を殆どカットして蛍光最強波長を50%以上透過するバリアフィルター19を入れる。これにより、観察対象物の蛍光発光部位のみを観察することができる。然し、観察対象物に何らかの作業を施す場合には、蛍光も目立つが背景となる他の部位も明るく見えなければならない。この要求に応ずるためには、上記条件に加えて以下に説明するようなフィルターの組合せが必要である。」 「【0015】第3のフィルター組合せによる特性曲線が図5に示されている。上記第1及び第2のフィルター組合せは、何れも略単色光で背景を照明しているため、背景の色情報がなくなる。例えば、第1のフィルター組合せでは、白と紫がどちらも紫に見える。これに対して、この第3のフィルター組合せは、これらの区別がつくものである。即ち、第3のフィルター組合せでは、蛍光物質の励起波長と蛍光の波長が離れている場合である。励起フィルター17は、第2のフィルター組合せのように励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ、バリアフィルター19は、励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させる。これにより、3波長の光で背景を照明することになる。更に、この3波長は3色分解のRGBに1波長帯づつ入っているよう選定されている。RGBの夫々の波長帯をλB、λG、λRとすると、600nm<λR<700nm、500nm<λG<600nm、400nm<λB<500nmと考えて良い。これにより、色の情報の偏りが少なくなり、色の区別がつき易くなる。この励起フィルター17とバリアフィルター19を重ねた場合の透過率が図6に示されている。図中、斜線を施した部分は、蛍光の発光特性を示している。 【0016】また、背景光の強度と蛍光の強度との差を小さくするためには、励起フィルターとバリアフィルターを重ねた場合のRGBの各波長帯λmR、λmG、λmBでの最大透過率を夫々TmR、TmG、TmBとしたとき、次の条件を満たすことが必要である。 1%≦TmR≦10%、1%≦TmG≦10%、1%≦TmB≦10% (2) TmR、TmG、TmBが夫々の上限を越えて大きくなると背景光の強度が強くて蛍光が目立たなくなり、また、夫々の下限を越えて小さくなると背景にその色の情報がなくなる。TmR、TmG、TmBの総てがその下限値を下回ると、背景が暗くなり、作業できる明るさが得られなくなる。また、背景照明光の色を白に近づけるためには、各波長帯での最大透過率をTmax、最小透過率をTminとしたとき、次の条件を満たすことが必要である。 Tmin/Tmax≧0.5 (3)」 「【0019】ここで用いられる励起フィルター17やバリアフィルター19は、干渉フィルターであることが多い。干渉フィルターは入射角度が大きいと透過特性が変わるが、フィルター面の法線と入射光線のなす角度が30゜以内であれば問題ない。入射角度の差が無いようにするためには、これらのフィルターをアフォーカル光束中で用いるのが良い。そのため、バリアフィルター19を、観察光路に出し入れできるフィルターユニット20を光束分割ユニット21の観察対象物側に入れると、肉眼観察系と撮影系に同時にバリアフィルター19を入れることができ、撮影系へのバリアフィルターの入れ忘れによる失敗を回避することができる。」 したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定の根拠とした引用箇所、及び段落番号である。)。 「観察対象物の蛍光像と通常像とを重ねて明瞭に区別して観察することができる、顕微鏡に適した蛍光観察装置(フロントページ、【課題】、【0001】)であって、 照明用光源と、照明用光源からの光を観察対象物に照射するための照明光学系と、照明光学系を介して照明した観察対象物の像を得るための像形成光学系と(【0007】)、一対の接眼レンズと、像形成光学系を構成しているビームスプリッタにより分割された観察対象物Oからの光束を受ける撮影レンズと、撮影レンズにより形成された像を受像するCCD等の撮像素子と(【0009】)を備え、照明光学系に蛍光物質の励起波長を含む励起光に波長を限定する励起フィルターを配置し、像形成光学系に前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過するバリアフィルターを配置し(【0007】)、肉眼観察系と撮影系に同時にバリアフィルターを入れ(【0019】)、前記励起フィルターとバリアフィルターとを重ねたときの透過率が、3色分解のRGBの波長帯に夫々透過率を有し、且つ前記蛍光最強波長での透過率が0.05%以上であり(【0007】)、 蛍光物質の励起波長と蛍光の波長が離れている場合、励起フィルター17は、励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ、バリアフィルター19は、励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させ、これにより、3波長の光で背景を照明することになり、更に、この3波長は3色分解のRGBに1波長帯づつ入っているよう選定されており、RGBの夫々の波長帯をλB、λG、λRとすると、600nm<λR<700nm、500nm<λG<600nm、400nm<λB<500nmと考えて良く、これにより、色の情報の偏りが少なくなり、色の区別がつき易くなり(【0015】)、 背景光の強度と蛍光の強度との差を小さくするためには、励起フィルターとバリアフィルターを重ねた場合のRGBの各波長帯λmR、λmG、λmBでの最大透過率を夫々TmR、TmG、TmBとしたとき、次の条件を満たすことが必要であり、 1%≦TmR≦10%、1%≦TmG≦10%、1%≦TmB≦10% また、背景照明光の色を白に近づけるためには、各波長帯での最大透過率をTmax、最小透過率をTminとしたとき、次の条件を満たすことが必要である、 Tmin/Tmax≧0.5 (【0016】) 蛍光観察装置(フロントページ、【課題】)。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-163413号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、顕微鏡システムおよび顕微鏡検査方法に関する。特に、近赤外線および/または赤外線波長での蛍光の発光を観察するのに用いることができる顕微鏡システムおよび顕微鏡検査方法に関する。」 「【0040】 図1は、光軸7を有する対物レンズ5を含む顕微鏡光学系3を含む顕微鏡システム1を模式的に示している。被検物9は対物レンズ5の物体平面に置かれる。物体9から発散している光は、2つのズームシステム12、13が光軸7から離れて配置されている平行ビーム11を形成するように対物レンズ5によって変形される。ズームシステム12、13は、平行ビーム11の部分ビーム14および15を用い、部分ビーム14、15を接眼レンズ16および17に顕微鏡システム1の管の本体の偏向プリズム(図1に図示せず)を通して供給する。使用者は、それぞれ左眼18および右眼19で接眼レンズ16,17を見ると、物体9の拡大表示を像として知覚できる。左眼18で知覚された像は、光軸に対してαの角度で物体を見たときの像に相当し、右眼19で知覚された像は、光軸7に対して-αの角度で物体9を見たときの像に相当し、これにより、使用者は、両眼18、19での物体9の立体像を知覚する。 【0041】 部分透過ミラー21が、部分ビーム15にその光の一部がビーム23として分岐するように配置されている。ビーム23は、さらなるビームスプリッタ25で分割され、ビーム27および29を形成する。ビーム27は、カメラ32が光軸7に対し-αの観察角度で物体9の像を検出するようにカメラアダプタ光学系31を通してカメラ32の感光要素に与えられる。カメラ32で検出された像は、データ線33を介して像データとしてコントローラ35に伝達される。」 「【0044】 ビーム29は、カメラ55が物体の赤外線像を検出し得るように、カメラアダプタ光学系53を介してカメラ55の感光要素に与えられる。フィルタ57がビーム29に配置されている。フィルタ57の透過特性は、図2aにライン58として模式的に示されている。図2aの垂直線59はさらに、780nmでの蛍光物質、インドシアニングリーン(ICG)の最大励起スペクトルをあらわす。図2aの垂直線60は、835nmでのICGの対応する最大蛍光発光スペクトルをあらわす。フィルタ57の透過特性58は、約810nmで閾値61を示している。フィルタ57は、閾値より低い波長で実質的に非透過性であり、フィルタ57は、閾値より高い波長で実質的に透過性を有する。このように、物質の蛍光が、さらに以下に示すように顕微鏡システム1の照射システム63で励起する限り、カメラ55は、物体9内の蛍光物質の分散を表す物体9の像を検出する。 【0045】 カメラ55で検出した像は、データ線65を介してコントローラ35に伝達される。コントローラ35は、カメラ55で検出した像を像データとしてデータ線67を介してLCDディスプレイ69に伝達する。LCDディスプレイ69は、コリメーター光学系70および部分透過ミラー68によって部分ビーム15と重なる像として像データを表す。ディスプレイ69の像は、物体9の直接光学像と重なって、使用者の眼19によって知覚され得る。LCDディスプレイ69は、緑色などの可視の色でカメラ55によって検出される赤外光強度分布を表す。物体9を形成するヒトの組織が含む緑色は、通常比較的少量であるので、赤外線像を表すために緑色を用いるとよいかもしれない。」 したがって、上記引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定の根拠とした段落番号である。)。 「近赤外線および/または赤外線波長での蛍光の発光を観察するのに用いることができる顕微鏡システム(【0001】)であって、顕微鏡システム1は、対物レンズ5を含む顕微鏡光学系3を含み、 物体9から発散している光は、平行ビーム11を形成するように対物レンズ5によって変形され、平行ビーム11の部分ビーム14および15(【0040】)のうち、部分透過ミラー21が、部分ビーム15にその光の一部がビーム23として分岐するように配置され、ビーム23は、さらなるビームスプリッタ25で分割され、ビーム27および29を形成し(【0041】)、ビーム29は、カメラ55が物体の赤外線像を検出し得るように、カメラアダプタ光学系53を介してカメラ55の感光要素に与えられ、フィルタ57がビーム29に配置され、フィルタ57は、閾値より低い波長で実質的に非透過性であり、フィルタ57は、閾値より高い波長で実質的に透過性を有し、このように、物質の蛍光が、顕微鏡システム1の照射システム63で励起する限り、カメラ55は、物体9内の蛍光物質の分散を表す物体9の像を検出し(【0044】)、 カメラ55で検出した像は、データ線65を介してコントローラ35に伝達され、コントローラ35は、カメラ55で検出した像を像データとしてデータ線67を介してLCDディスプレイ69に伝達し、LCDディスプレイ69は、コリメーター光学系70および部分透過ミラー68によって部分ビーム15と重なる像として像データを表し、ディスプレイ69の像は、物体9の直接光学像と重なって、使用者の眼19によって知覚され得、LCDディスプレイ69は、緑色などの可視の色でカメラ55によって検出される赤外光強度分布を表す(【0045】)、 顕微鏡システム(【0001】)。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2007-122048号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、顕微鏡検査システム及び蛍光を可視化するための記録方法に関する。」 「【0024】 図1は、光軸7を有する対物レンズ5を含む顕微鏡検査光学系3を備えた顕微鏡検査システム1を概略的に示している。検査される物体9は、対物レンズ5の物体平面内に配置される。物体9から発せられる光は、対物レンズ5によって平行ビーム11となるように変形され、その中に2つのズーム系12、13が光軸7から或る距離を置いて配置される。ズーム系12、13は、平行ビーム11の部分ビーム14、15を用い、当該部分ビーム14、15を、顕微鏡検査システム1の筒の本体の偏向プリズム(図1においては図示せず)を通して、接眼レンズ16、17に供給する。ユーザは、左目18と右目19でそれぞれ接眼レンズ16、17を覗き込むと、画像として物体9の拡大された表示を知覚するであろう。ユーザが両目18、19で物体9の立体画像を知覚するように、左目18で知覚される画像は、光軸7に対して角度(で物体を見たときの画像に対応し、右目19で知覚される画像は、光軸7に対して角度-(で物体9を見たときの画像に対応している。 【0025】 ビーム23として光の一部を分枝するために、半透明ミラー21が部分ビーム15内に配置されている。ビーム23は、さらなるビームスプリッタ25によって分割され、ビーム27、29となる。ビーム27は、カメラ32が光軸7に対して観測角-(で物体9の画像を検出するように、カメラアダプタ光学素子31を通してカメラ32の光検出素子に供給される。カメラ32によって検出された画像は、画像データとして、データライン33を通ってコントローラ35に伝送される。」 「【0028】 ビーム29は、カメラ55が物体の赤外線画像を検出できるように、カメラアダプタ光学素子53を通して、カメラ55の光検出素子に供給される。フィルタ57が、ビーム29内に配置される。フィルタ57の透過特性は、特定の用途において用いられる蛍光マーカーの蛍光波長に合わせられる。示された例において、蛍光マーカーは、約835nmの蛍光発光を有するICGである。フィルタ57の透過特性は、810nmよりも大きい波長を有する光のみが透過され、810nm未満の波長の光は透過されないように設計されている。従って、カメラ55は、以下にさらに示されるように、顕微鏡検査システム1の照射系63によって物体の蛍光が励起された場合に、物体9の蛍光物質の分布を表わす物体9の画像を検出する。 【0029】 カメラ55によって検出された画像は、データライン65を通ってコントローラ35に伝送される。コントローラ35は、画像データとして、カメラ55によって検出された画像を、データライン67を通してLCDディスプレイ69に伝送する。LCDディスプレイ69は、画像データを、平行光学系70及び半透明ミラー68によって部分ビーム15と重ね合わせられた画像として表示する。LCDディスプレイ69の画像は、物体9の直接的な光学像と重ね合わせられた形で、ユーザの目19によって知覚されるであろう。LCDディスプレイ69は、カメラ55によって検出された赤外線光強度の分布を、緑色などの可視色で表示する。赤外線画像を表示するためには、緑色を用いるのが好ましい。何故なら、物体9を形成する人体組織には、通常、比較的少量ではあるが緑色が含まれるからである。」 したがって、上記引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定の根拠とした段落番号である。)。 「対物レンズ5を含む顕微鏡検査光学系3を備えた顕微鏡検査システムであって(【0024】)、 検査される物体9は、対物レンズ5の物体平面内に配置され、物体9から発せられる光は、対物レンズ5によって平行ビーム11となるように変形され、その中に2つのズーム系12、13が光軸7から或る距離を置いて配置され、平行ビーム11の部分ビーム15を用い(【0024】)、ビーム23として光の一部を分枝するために、半透明ミラー21が部分ビーム15内に配置され、ビーム23は、さらなるビームスプリッタ25によって分割され(【0025】)、ビーム29は、カメラ55が物体の赤外線画像を検出できるように、カメラアダプタ光学素子53を通して、カメラ55の光検出素子に供給され、フィルタ57が、ビーム29内に配置され、フィルタ57の透過特性は、特定の用途において用いられる蛍光マーカーの蛍光波長に合わせられ、カメラ55は、顕微鏡検査システム1の照射系63によって物体の蛍光が励起された場合に、物体9の蛍光物質の分布を表わす物体9の画像を検出し(【0028】)、 カメラ55によって検出された画像は、データライン65を通ってコントローラ35に伝送され、コントローラ35は、画像データとして、カメラ55によって検出された画像を、データライン67を通してLCDディスプレイ69に伝送し、LCDディスプレイ69は、画像データを、平行光学系70及び半透明ミラー68によって部分ビーム15と重ね合わせられた画像として表示し、LCDディスプレイ69の画像は、物体9の直接的な光学像と重ね合わせられた形で、ユーザの目19によって知覚され、LCDディスプレイ69は、カメラ55によって検出された赤外線光強度の分布を、緑色などの可視色で表示する(【0029】)、 顕微鏡検査システム(【0024】)。」 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「蛍光観察装置」が、本願発明1における「蛍光観察システム」に相当する。 イ 引用発明における「照明用光源」は、「観察対象物に照射」される光源であるから、本願発明1における「対象物を照明するための光源」に相当する。 ウ 引用発明における「一対の接眼レンズ」は、「顕微鏡」の接眼レンズであるから、本願発明1における「前記対象物の拡大表示をユーザに提供するための接眼レンズ」に相当する。 エ 引用発明における「像形成光学系を構成しているビームスプリッタにより分割された観察対象物Oからの光束を受ける撮影レンズと、撮影レンズにより形成された像を受像するCCD等の撮像素子」は、「像形成光学系に前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過する」「バリアフィルターを配置し」て撮影するものであって、「観察対象物の蛍光像と通常像とを重ねて」観察することができる蛍光観察装置を構成するものであるから、本願発明1における「前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラ」とは、「前記対象物の蛍光像を含む像を検出するためのカメラ」の点で共通する。 オ 引用発明における「蛍光観察装置」は「顕微鏡」に適したものであるから、引用発明における「一対の接眼レンズ」と、「撮影レンズと、撮影レンズにより形成された像を受像するCCD等の撮像素子」とを含む光学系が、本願発明1における「顕微鏡光学系」に相当する。 カ 引用発明における「照明用光源からの光を観察対象物に照射するための」「照明光学系に蛍光物質の励起波長を含む励起光に波長を限定する励起フィルター」が「配置」されることが、本願発明1における「照明光フィルタが、前記光源と前記対象物との間の照明ビーム経路に配置され」ることに相当する。 キ 引用発明における「像形成光学系に前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過するバリアフィルターを配置」することは、「バリアフィルター」が「肉眼観察系」に入れられる点、及び「一対の接眼レンズ」が、「顕微鏡」の接眼レンズである点を踏まえれば、本願発明1における「観察光フィルタが、前記対象物と前記接眼レンズとの間のビーム経路に配置され」ることに相当する。 ク 引用発明における「励起フィルター17」が、「蛍光物質の励起波長と蛍光の波長が離れている場合」、「励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ」る特性であることが、本願発明1における「前記照明光フィルタの透過特性は第1の部分特性(I)と第2の部分特性(II)との和であ」ることに相当する。 ケ 引用発明において、「バリアフィルター19」が、「蛍光物質の励起波長と蛍光の波長が離れている場合」、「励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させ」る特性であることが、本願発明1における「前記観察光フィルタの透過特性は、第3の部分特性(III)と第4の部分特性(IV)との和であ」ることに相当する。 コ 引用発明における「バリアフィルター19」と「励起フィルター17」は、「蛍光物質の励起波長と蛍光の波長が離れている場合」に用いられるものであるから、「蛍光物質の励起波長」と「蛍光の波長」との間の波長が、本願発明1における「しきい値波長」に相当するといえる。 サ 上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「励起フィルター17」が、「励起光」を「透過させ」ることと、本願発明1における「照明光フィルタ」の「前記第1の部分特性(I)は、しきい値波長を下回る第1の波長範囲において、第1の値よりも大きい値を有する透過率を有」することとは、「照明光フィルタ」の「前記第1の部分特性(I)は、しきい値波長を下回る第1の波長範囲において、光を透過させる透過率を有」する点で共通する。 シ 上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「励起フィルター17」が、「蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ」ることと、本願発明1における「照明光フィルタ」の「前記第2の部分特性(II)は、前記しきい値波長を上回る、610nmから750nmまでの第2の波長範囲において、第2の値よりも小さくかつ第3の値よりも大きい値を有する透過率を有」することとは、「照明光フィルタ」の「前記第2の部分特性(II)は、前記しきい値波長を上回る第2の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有」する点で共通する。 ス 引用発明における「励起フィルター17」は「励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ」ているから、引用文献1の図5に示されているとおり、「励起光」の波長と、「蛍光最強波長より長波長側の光」との間の波長の光をカットしていることは明らかである。よって、上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「励起フィルター17」が、「励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ」させていること(つまり、「励起光」の波長と、「蛍光最強波長より長波長側の光」との間の波長の光をカットしていること)と、本願発明1における「前記照明光フィルタの透過率は、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲との間において、第4の値よりも小さい値を有」することとは、「前記照明光フィルタの透過率は、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲との間において、光をカットする値を有」する点で共通する。 セ 上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「バリアフィルター19」が、「励起フィルター17を透過した光」の「長波長側の光を透過させ」ることと、本願発明1における「観察光フィルタ」の「前記第3の部分特性(III)は、前記しきい値波長を上回る第3の波長範囲において、前記第1の値よりも大きい値を有する透過率を有」することとは、「観察光フィルタ」の「前記第3の部分特性(III)は、前記しきい値波長を上回る第3の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有」する点で共通するといえる。 ソ 上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「バリアフィルター19」が、「励起フィルター17を透過した光」の「短波長側」の「光を透過させ」ることと、本願発明1における「観察光フィルタ」の「前記第4の部分特性(IV)は、前記しきい値波長を下回る、420nmから560nmまでの第4の波長範囲において、前記第2の値よりも小さくかつ前記第3の値よりも大きい値を有する透過率を有」することとは、「観察光フィルタ」の「前記第4の部分特性(IV)は、前記しきい値波長を下回る、第4の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有」する点で共通する。 タ 引用発明における「バリアフィルター19」は「励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させ」ているから、引用文献1の図5に示されているとおり、「励起光」の波長と、「蛍光最強波長より長波長側の光」との間の波長の光をカットしていることは明らかである。よって、上記「コ」を踏まえれば、引用発明における「バリアフィルター19」が「励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させ」ていること(つまり、「励起光」の波長と、「蛍光最強波長より長波長側の光」との間の波長の光をカットしていること)と本願発明1における「前記観察光フィルタの透過率は、前記第4の波長範囲と前記第3の波長範囲との間において、前記第4の値よりも小さい値を有」することとは、「前記観察光フィルタの透過率は、前記第4の波長範囲と前記第3の波長範囲との間において、光をカットする値を有」する点で共通する。 よって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、共通点があるといえる。 (一致点) 「蛍光観察システムであって、 対象物を照明するための光源と、 前記対象物の拡大表示をユーザに提供するための接眼レンズ、および、前記対象物の蛍光像を含む像を検出するためのカメラを含む顕微鏡光学系と、 照明光フィルタが、前記光源と前記対象物との間の照明ビーム経路に配置され、 観察光フィルタが、前記対象物と前記接眼レンズとの間のビーム経路に配置され、 前記照明光フィルタの透過特性は第1の部分特性(I)と第2の部分特性(II)との和であり、 前記観察光フィルタの透過特性は、第3の部分特性(III)と第4の部分特性(IV)との和であり、 前記第1の部分特性(I)は、しきい値波長を下回る第1の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有し、 前記第2の部分特性(II)は、前記しきい値波長を上回る、第2の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有し、 前記照明光フィルタの透過率は、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲との間において、光をカットする値を有し、 前記第3の部分特性(III)は、前記しきい値波長を上回る第3の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有し、 前記第4の部分特性(IV)は、前記しきい値波長を下回る、第4の波長範囲において、光を透過させる値を有する透過率を有し、 前記観察光フィルタの透過率は、前記第4の波長範囲と前記第3の波長範囲との間において、光をカットする値を有する、 蛍光観察システム。」 (相違点1) 本願発明1では、「前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラ」を含み、「ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え」、「蛍光のみを透過する蛍光フィルタが前記対象物と前記カメラとの間のビーム経路に配置され」ているのに対し、引用発明においては、「撮影レンズと、撮影レンズにより形成された像を受像するCCD等の撮像素子」により、「観察対象物の蛍光像と通常像とを重ねて」撮影しているものの、観察対象物と撮影レンズ及びCCD等の撮像素子との間に「蛍光のみを透過する蛍光フィルタ」は配置されていないから、「観察対象物の蛍光像」のみを撮影するものではなく、また、撮影された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラも、ディスプレイによって表示された像を、接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系も備えていない点。 (相違点2) 本願発明1では、 ア 照明光フィルタの第1の部分特性(I)は、しきい値波長を下回る第1の波長範囲において、「第1の値よりも大きい値」を有する透過率を有し、第2の部分特性(II)は、前記しきい値波長を上回る、「610nmから750nmまでの」第2の波長範囲において、「第2の値よりも小さくかつ第3の値よりも大きい値」を有する透過率を有し、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲との間において、「第4の値よりも小さい」値を有し、 イ 観察光フィルタの前記第3の部分特性(III)は、前記しきい値波長を上回る第3の波長範囲において、「前記第1の値よりも大きい値」を有する透過率を有し、前記第4の部分特性(IV)は、前記しきい値波長を下回る、「420nmから560nmまでの」第4の波長範囲において、「前記第2の値よりも小さくかつ前記第3の値よりも大きい値」を有する透過率を有し、前記第4の波長範囲と前記第3の波長範囲との間において、「前記第4の値よりも小さい値」を有し、 ウ 前記第4の値は前記第3の値よりも小さく、前記第3の値は前記第2の値よりも小さく、前記第2の値は前記第1の値よりも小さく、 前記しきい値波長は、580nmから620nmまでの波長範囲の中から選ばれ、 前記第1の値は0.5であり、 前記第3の値は0.0005である、 のに対し、 引用発明における「励起フィルター17」は、照明用光源からの光を「蛍光物質の励起波長を含む励起光に波長を限定する」とともに「励起光のほかに蛍光最強波長より長波長側の光を透過させ」る特性を有し、「バリアフィルター」は、「前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過する」とともに「励起フィルター17を透過した光の短波長側と長波長側の光を透過させ」る特性を有することが示されているに過ぎない点。 (2)相違点についての判断 まず、相違点1について検討する。 引用文献2、引用文献3に記載された技術は、何れも「カメラ55」が、物体9からのビームに光フィルタ57を配置し、物体9内の蛍光物質の分散を表す物体9の像を検出し、カメラ55で検出した像は、コントローラ35に伝達され、コントローラ35は、カメラ55で検出した像を像LCDディスプレイ69に伝達し、LCDディスプレイ69は、コリメーター光学系70(平行光学系70)および部分透過ミラー68(半透明ミラー68)によって部分ビーム15と重なる像として像データを表し、ディスプレイ69の像は、物体9の直接光学像と重なって、使用者の眼19によって知覚され得」る構成を備えているものの、蛍光の波長は、近赤外線および/または赤外線波長であって、上記構成は、使用者の眼19によっては知覚され得ない蛍光を、例えば緑色などの可視の色の像とし、物体9の直接光学像と重なって、使用者の眼19によって知覚され得るようにするための構成である。 これに対し、引用発明1における蛍光は、「像形成光学系に前記励起光の大部分をカットして蛍光物質の蛍光最強波長を透過するバリアフィルターを配置し」、「観察対象物の蛍光像と通常像とを重ねて明瞭に区別して観察することができる」ものであるから、蛍光像は使用者の眼によって知覚されるものである。さらに、引用発明では、「肉眼観察系と撮影系に同時にバリアフィルターを入れ」るのであるから、撮影系で撮影される像は、使用者が肉眼で観察する像と同じ「観察対象物の蛍光像と通常像とを重ね」た像であって、「観察対象物の蛍光像」のみを撮影するものではない。 よって、引用発明に引用文献2,引用文献3に記載された技術を適用する動機付けがなく、また、仮に適用したとしても、上記相違点1に係る本願発明1の構成とはならない。 したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 2.本願発明5について 本願発明5は、本願発明1と同じく、「前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラ」を含み、「ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え」ている。 よって、本願発明5と引用発明とは、少なくとも上記「1.」「(1)」の「(相違点1)」と同じく、「前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラ」を含み、「ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え」ているのであるから、その他の点について判断するまでもなく、上記「1.」「(2)」で述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び、引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 3.本願発明2-4について 本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1と同じく、「前記対象物の蛍光像を検出するためのカメラ」を含み、「ディスプレイによって表示された像を、前記接眼レンズへのビーム経路に投影するための、表示および投影光学系と、前記カメラによって検出された蛍光像を受けるとともに、前記受けた蛍光像を前記ディスプレイに送出するように構成されたコントローラとを備え」る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明6について 本願発明6は、本願発明5を減縮した発明を含む発明であるから、本願発明5と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明7-10について 本願発明7-10は、それぞれ本願発明1-4に対応する方法の発明であるから、本願発明1-4について述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 6.本願発明11-12について 本願発明11-12は、それぞれ本願発明5-6に対応する方法の発明であるから、本願発明5-6について述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1-14について上記引用文献1-3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかし、上記のとおり、手続補正4によって補正された本願発明1-12(なお、本願発明1は原査定における請求項3に対応する発明であり、本願発明5は原査定における請求項10に対応する発明である。)は、上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第6項第2号について 当審では、手続補正3により補正された特許請求の範囲の記載につて、 (1) 請求項1及び請求項7について「前記第1の波長範囲」の意味するところが明確とはいえない。 (2) 請求項5における「前記照明光フィルタの透過特性」及び「前記観察光フィルタの透過特性」についての記載の意味するところが明確でない。 (3) 請求項11における「前記照明光フィルタの透過特性」についての記載の意味するところが明確でない。 (4) 請求項2~5には、数式が記載されているが、数式と「蛍光観察システム」との関係が不明である。 (5) 請求項6、12における、 「 のうち少なくとも1つが成立する…蛍光観察システム」という記載は、明確でない。 との拒絶の理由を通知しているが、手続補正4によって、特許請求の範囲の記載が補正されたことにより、これらの拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-12は、当業者が引用発明及び引用文献2、引用文献3に記載された技術に基づいて容易に発明できたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-001351

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