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特許拒絶査定不服審判

2017-000829

電気バッテリの充電状態を推定する方法

審判番号
2017-000829
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-510867外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年01月20日
審決日
2017年10月10日
公報発行日
2017年11月24日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G01R) / P18 .537-WY (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-510867「電気バッテリの充電状態を推定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日国際公開、WO2012/160301、平成26年 8月21日国内公表、特表2014-520254、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2012年5月16日(パリ条約による優先権主張 2011年5月20日 フランス共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年6月21日付けで手続補正がなされたが、平成28年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年9月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (1)理由1 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-15 ・引用文献等 1-6 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2011/027449号 2.特表2007-517190号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2008-10420号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2008-520179号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2000-40530号公報(周知技術を示す文献) 6.特開2004-271410号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) (2)理由2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項5で記載したモデリングと、請求項2-4における各構成要素(機能性、入力変数、出力変数、補正パラメータ、状態観測器の支援等)とは、どのように対応付けられているのかが、依然として明確ではない。 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、平成28年6月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5を削除する補正であるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる事項を目的とするものである。 第4 本願発明 本願の請求項1-14に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成29年1月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 セルと呼ばれる複数の電気蓄電池を備える電気バッテリの充電状態(SOCbatt_k)を推定する方法であって、以下のステップ、すなわち、 a)前記バッテリの各々のセルの充電状態(SOCcell_est_i)が決定されるステップと、 b)セルの前記充電状態の最大の所定の値から、ステップa)において決定される、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離を引いた値に等しい、前記バッテリの使用範囲が決定されるステップと、 c)前記バッテリの充電状態(SOCbatt_k)が、ステップa)において決定される前記最も少なく充電されているセルの前記充電状態(SOCcell_min_k)と、ステップb)において決定される前記バッテリの前記使用範囲との間の比に等しいように決定されるステップと を含むことを特徴とする方法。 【請求項2】 ステップa)において、前記バッテリの各々のセルに対して以下のステップ、すなわち、 a1)そのセルの機能性を表す少なくとも1つの入力変数(i_cell)の値(I_cell_mes)が決定されるステップと、 a2)そのセルの前記機能性を表す少なくとも1つの出力変数(u_cell)の値(V_cell_mes)が決定されるステップと、 a3)前記セルの前記充電状態(SOCcell_est_i)が、前記入力変数(i_cell)のステップa1)において決定される前記値に基づき、前記出力変数(u_cell)のステップa2)において決定される前記値から導出される補正パラメータにより補正される状態観測器の支援によって推定されるステップとが実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記入力変数が、少なくとも、前記セルを通過する電流(i_cell)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記出力変数が、少なくとも、前記セルの端子間の電圧(u_cell)を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。 【請求項5】 前記状態観測器が、カルマンフィルタ(FK_i)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。 【請求項6】 前記カルマンフィルタ(FK_i)が、前記セルの前記機能性によって決まる少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記カルマンフィルタ(FK_i)の前記パラメータが、前記セルの開回路電圧(OCV)と前記セルの前記充電状態を関係付ける関数によって決まることを特徴とする、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記セルの前記開回路電圧(OCV)と前記セルの前記充電状態を関係付ける前記関数がアフィン関数であり、前記カルマンフィルタ(FK_i)の前記パラメータがこの関数の成長率(a)であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記セルの前記開回路電圧(OCV)と前記セルの前記充電状態を関係付ける前記関数が区分的アフィン関数であり、異なるカルマンフィルタ(FK_i1、FK_i2、FK_i3、FK_i4)が、前記セルの前記開回路電圧(OCV)と前記セルの前記充電状態を関係付ける前記関数の異なるアフィン部分に関連する、前記セルの前記充電状態の値の各々の範囲に対して使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。 【請求項10】 所与の時間でのステップa)の履行の間に使用される前記カルマンフィルタ(FK_i1、FK_i2、FK_i3、FK_i4)が、直前の時間での前記セルの前記推定される充電状態(SOCcell_est_i)の値の関数として決定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記充電状態の値の第1の範囲に関連する第1のカルマンフィルタと、前記充電状態の値の第2の範囲に関連する第2のカルマンフィルタとの間の遷移が、自動化システム(A)により管理され、 前記第1のカルマンフィルタから前記第2のカルマンフィルタへの遷移が、前記充電状態の推定される値が、第1のしきい値に達するときに行われ、 前記第2のカルマンフィルタから前記第1のカルマンフィルタへの遷移が、前記充電状態の推定される値が、前記第1のしきい値とは異なる第2のしきい値に達するときに行われることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。 【請求項12】 ステップa)において、各々のセルの前記充電状態が、アンペア時測定基準計量方法により決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 【請求項13】 ステップa)において、 前記バッテリに進入する電流が積分され、 各々のセルの前記充電状態が、前記バッテリに進入する前記電流の前記積分と当該の前記セルの容量との間の比の関数として決定されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。 【請求項14】 当該バッテリが、自動車の牽引バッテリであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 ア 「[請求項6] 直列接続された複数の電池セル(221)を有する組電池(220)の充電状態検出方法であって、 前記複数の電池セルは、各々が少なくとも1個の前記電池セルを有する複数の電池ブロック(BB(1)-BB(n))に分割され、 前記充電状態検出方法は、 前記複数の電池ブロックのそれぞれでの状態検出値に基づいて、前記複数の電池ブロックのそれぞれに対応した複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))を算出するステップ(S100)と、 前記複数の蓄電量推定値のうちの最大値(BSmax)および最小値(BSmin)、を求めるステップ(S110)と、 前記複数の蓄電量推定値に基づいて、前記組電池の全体蓄電量推定値(SOC♯)を設定するステップ(S130,S140)とを備え、 前記設定するステップは、前記最大値が制御上限値(SOCu)より高い第1のケース(401)では、前記全体蓄電量推定値を前記制御上限値より高く設定する一方で、前記最小値が制御下限値(SOCl)より低い第2のケース(402)では、前記全体蓄電量推定値を前記制御下限値より低く設定し、かつ、前記複数の蓄電量推定値の全てが前記制御下限値以上かつ前記制御上限値以下で定義される制御範囲に入っている第3のケース(403)では、現在の前記複数の蓄電量推定値の分布に基づいて前記全体蓄電量推定値を前記制御範囲内の値に設定する、組電池の充電状態検出方法。」 イ 「[請求項8] 前記求めるステップ(S110)は、前記最大値(BSmax)および前記最小値(BSmin)の差に従ってばらつき量(DBS)をさらに求め、 前記設定するステップ(S130,S140)は、 前記制御範囲の広さを示す制御幅(WSOC)から前記ばらつき量を減算した第1の値に対する、前記最大値から前記ばらつき量および前記制御幅を減算した第2の値の比に従って、現在の前記複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))が前記制御範囲のどこに位置するかを示すパラメータ(α)を求めるステップ(S130)と、 前記パラメータおよび前記制御幅の乗算値と前記制御下限値(SOCl)との和に従って、前記全体蓄電量推定値(SOC♯)を算出するステップ(S140)とを含む、請求の範囲第6項または第7項に記載の組電池の充電状態検出方法。」 ウ 「[0002] 電動機により車両駆動力を発生する電気自動車やハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の電動車両では、二次電池(以下、単に電池ともいう)を搭載し、この二次電池に蓄えられた電力により電動機を駆動している。また、電動車両では減速時に電動機の回生制動力を発生させることにより、当該回生発電による電力によって二次電池を充電することが行なわれる。 [0003] このように、電動車両に搭載された二次電池は、車両走行中に充放電が繰返されるため、車両走行中における二次電池の蓄電量の制御が重要となる。蓄電量を示す状態量としては、従来からSOC(State Of Charge)が用いられる。SOCは、満蓄電状態の蓄電量に対する現時点の蓄電量の比率で示される。すなわち、満蓄電状態ではSOC=100(%)であり、全く蓄電されていない状態ではSOC=0(%)である。 [0004] 通常は、SOC=50-60(%)程度を制御目標としつつ、制御下限値(たとえば30(%))から制御上限値(たとえば80(%))の範囲内にSOCが収まるように、走行中における二次電池の充放電が制御される。具体的には、SOCが制御下限値に近づくと、二次電池の充電を促すような車両制御が実行される。一例として、ハイブリッド自動車では内燃機関の出力を用いて発電機を作動することによって、二次電池の充電電力が発生される。一方、SOCが制御上限値に近づくと、回生制動を制限あるいは禁止するような車両制御が実行される。」 エ 「[0013] この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、SOC変化に対する電圧変化の特性が比較的一様である二次電池によって構成された組電池の適切な充放電制御のために、組電池の電池ブロック間の蓄電量ばらつきを反映した全体でのSOCを的確に設定することである。」 オ 「[0023] この発明によれば、SOC変化に対する電圧変化の特性が比較的一様である二次電池によって構成された組電池について、現時点での組電池の電池ブロック間の蓄電量ばらつきを反映して、組電池の蓄電量や充放電を的確に制御するための全体SOCを的確に設定することができる。」 カ 「[0060] 図4を参照して、電池ブロックBB(1)-BB(n)のそれぞれのブロックSOCは、上述のように一様とはならず、一定の分布を有している。図4には、このようなSOCの分布状態401-403,411,412が示される。それぞれの分布状態において、左端の値がブロックSOC間の最小値BSminを示し、右端の値がブロックSOC間の最大値BSmaxを示す。そして、最大値BSmaxおよび最小値BSminの差によって、ブロックSOC内の現在のばらつき量DBS(以下、単に「SOCばらつき」とも称する)が定義される。 [0061] 図4では、一例として、SOCの制御下限値SOClおよび制御上限値SOCuは、30(%)および80(%)にそれぞれ設定される。SOClからSOCuまでが、SOCの制御範囲に相当し、当該制御範囲の幅を表わすSOC制御幅WSOCは、WSOC=SOCu-SOClで定義される。図4の例では、WSOC=50(%)である。」 キ 「[0069] 特に、組電池(メインバッテリ220)の充放電を制御範囲内に制限するための可動範囲に対する、現在のブロックSOC分布の相対的な位置関係を定量的に示すためのパラメータαが導入される。ここで、分布状態403aから充電されて分布状態403bへ至るまで、あるいは、分布状態403bから放電されて分布状態403aへ至るまでの範囲が「可動範囲」に相当する。すなわち、可動範囲は(WSOC-DBS)で示される。パラメータαは、下記(1)式によって演算される。 [0070] α=(BSmax-(SOCu+DBS))/(WSOC-DBS)…(1) 式(1)では、電池ブロック間でのSOCばらつきを反映して、可動範囲に対する現在のブロックSOCの分布が定量的に評価される。 [0071] 全体SOC設定部315は、電池ブロックBB(1)-BB(n)のそれぞれのブロックSOC(BSOC(1)-BSOC(n))から、SOCばらつきDBSおよび最大値BSmaxを求めるととも、上記式(1)に従ってパラメータαを算出する。さらに、全体SOC設定部315は、下記(2)式に従って、全体SOC(SOC♯)を設定する。 [0072] SOC♯=SOCl+WSOC・α   …(2) 」 上記段落[0070]の(1)式は、「可動範囲に対する現在のブロックSOCの分布」を定量的に評価する式であるから、(1)式右辺の分数の分子に「(BSmax-(SOCu+DBS))」とある式が「(BSmax-(SOCl+DBS))」の誤記であることは明らかである。 したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「直列接続された複数の電池セル(221)を有する組電池(220)の充電状態検出方法であって、 前記複数の電池セルは、各々が少なくとも1個の前記電池セルを有する複数の電池ブロック(BB(1)-BB(n))に分割され、 前記充電状態検出方法は、 前記複数の電池ブロックのそれぞれでの状態検出値に基づいて、前記複数の電池ブロックのそれぞれに対応した複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))を算出するステップ(S100)と、 前記複数の蓄電量推定値のうちの最大値(BSmax)および最小値(BSmin)、を求めるステップ(S110)と、 前記複数の蓄電量推定値に基づいて、前記組電池の全体蓄電量推定値(SOC♯)を設定するステップ(S130,S140)とを備え([請求項6]より)、 前記求めるステップ(S110)は、前記最大値(BSmax)および前記最小値(BSmin)の差に従ってばらつき量(DBS)をさらに求め、 前記設定するステップ(S130,S140)は、 前記制御範囲の広さを示す制御幅(WSOC)から前記ばらつき量を減算した第1の値に対する、前記最大値から前記ばらつき量および前記制御幅を減算した第2の値の比に従って、現在の前記複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))が前記制御範囲のどこに位置するかを示すパラメータ(α)を求めるステップ(S130)と、 前記パラメータおよび前記制御幅の乗算値と前記制御下限値(SOCl)との和に従って、前記全体蓄電量推定値(SOC♯)を算出するステップ(S140)とを含み([請求項8]より)、 パラメータαは下記(1)式によって演算され、 α=(BSmax-(SOCl+DBS))/(WSOC-DBS)…(1) 全体SOC(SOC♯)は、下記(2)式に従って、設定され、 SOC♯=SOCl+WSOC・α   …(2) (段落[0069]-[0072]より) SOCの制御下限値SOClから制御上限値SOCuまでが、SOCの制御範囲に相当し、当該制御範囲の幅を表わすSOC制御幅WSOCは、 WSOC=SOCu-SOCl で定義される(段落[0061]より)、 組電池の充電状態検出方法([請求項8]より)。」 2 引用文献2-引用文献6について 引用文献2-引用文献4には、カルマンフィルタを用いて充電状態の推定を行うことが記載されている。 また、引用文献5には、リチウムイオン二次電池について、「容量と開放電圧の特性は3つの直線からなる折線グラフで近似される」(段落【0017】)と記載されている。 さらに、拒絶査定において新たに引用された引用文献6には、「バッテリの充電状態SOCの使用範囲は、・・・バッテリの充電状態SOCが0%から100%の範囲以内となるように充放電電力を制御する必要がある。」(段落【0041】)と記載されている。 第6 対比・判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「直列接続された複数の電池セル(221)を有する組電池(220)」が、本願発明1における「セルと呼ばれる複数の電気蓄電池を備える電気バッテリ」に相当する。 イ 引用発明における「組電池の充電状態検出方法」は、「全体蓄電量推定値(SOC♯)を算出するステップ(S140)」を含んでいるから、次の相違点は除いて、本願発明1における「電気バッテリの充電状態(SOCbatt_k)を推定する方法」に相当する。 ウ 引用発明における「複数の電池ブロックのそれぞれでの状態検出値に基づいて、前記複数の電池ブロックのそれぞれに対応した複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))を算出するステップ(S100)」が、本願発明1における「a)前記バッテリの各々のセルの充電状態(SOCcell_est_i)が決定されるステップ」に相当する。 エ 引用発明における「複数の蓄電量推定値のうちの最大値(BSmax)および最小値(BSmin)、を求めるステップ(S110)」は、「前記最大値(BSmax)および前記最小値(BSmin)の差に従ってばらつき量(DBS)をさらに求め」ているから、本願発明1における「b)セルの前記充電状態の最大の所定の値から、ステップa)において決定される、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離を引いた値に等しい、前記バッテリの使用範囲が決定されるステップ」とは、「b’)ステップa)において決定される、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離の値を求めるステップ」の点で共通する。 オ 引用発明における「全体蓄電量推定値(SOC♯)」を算出することが、次の相違点は除いて、本願発明1における、「バッテリの充電状態(SOCbatt_k)」を「推定する」ことに相当する。 カ 引用発明における「設定するステップ(S130,S140)」、つまり「前記制御範囲の広さを示す制御幅(WSOC)から前記ばらつき量を減算した第1の値に対する、前記最大値から前記ばらつき量および前記制御幅を減算した第2の値の比に従って、現在の前記複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))が前記制御範囲のどこに位置するかを示すパラメータ(α)を求めるステップ(S130)と、前記パラメータおよび前記制御幅の乗算値と前記制御下限値(SOCl)との和に従って、前記全体蓄電量推定値(SOC♯)を算出するステップ(S140)とを含み、 パラメータαは下記(1)式によって演算され、 α=(BSmax-(SOCl+DBS))/(WSOC-DBS)…(1) 全体SOC(SOC♯)は、下記(2)式に従って、設定され、 SOC♯=SOCl+WSOC・α   …(2) SOCの制御下限値SOClから制御上限値SOCuまでが、SOCの制御範囲に相当し、当該制御範囲の幅を表わすSOC制御幅WSOCは、 WSOC=SOCu-SOCl で定義される」ステップと、本願発明1における「c)前記バッテリの充電状態(SOCbatt_k)が、ステップa)において決定される前記最も少なく充電されているセルの前記充電状態(SOCcell_min_k)と、ステップb)において決定される前記バッテリの前記使用範囲との間の比に等しいように決定されるステップ」とは、「c’)前記バッテリの充電状態(SOCbatt_k)が、ステップa)において決定される、前記最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)か、前記最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)のうちの一方と、b’)ステップa)において求められる、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離の値とを用いて決定されるステップ」の点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「セルと呼ばれる複数の電気蓄電池を備える電気バッテリの充電状態(SOCbatt_k)を推定する方法であって、以下のステップ、すなわち、 a)前記バッテリの各々のセルの充電状態(SOCcell_est_i)が決定されるステップと、 b’)ステップa)において決定される、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離の値を求めるステップと、 c’)前記バッテリの充電状態(SOCbatt_k)が、ステップa)において決定される、前記最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)か、前記最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)のうちの一方と、b’)ステップa)において決定される、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離の値とを用いて決定されるステップと を含むことを特徴とする方法。」 (相違点) 本願発明1では、「バッテリの充電状態(SOCbatt_k)」が、「最も少なく充電されているセルの前記充電状態(SOCcell_min_k)」と、「バッテリの使用範囲」(セルの前記充電状態の最大の所定の値から、最も多く充電されているセルの充電状態(SOCcell_max_k)と、最も少なく充電されているセルの充電状態(SOCcell_min_k)との間の乖離を引いた値に等しい)との間の比に等しいように決定されるのに対し、引用発明では、「全体蓄電量推定値(SOC♯)」が、「前記制御範囲の広さを示す制御幅(WSOC)から前記ばらつき量を減算した第1の値に対する、前記最大値から前記ばらつき量および前記制御幅を減算した第2の値の比に従って、現在の前記複数の蓄電量推定値(BSOC(1)-BSOC(n))が前記制御範囲のどこに位置するかを示すパラメータ(α)を求め」、「前記パラメータおよび前記制御幅の乗算値と前記制御下限値(SOCl)との和に従って」算出されている点。 (2)相違点についての判断 ア 本願発明1における「バッテリの充電状態(SOCbatt_k)」を決定する式は、引用発明1における「全体蓄電量推定値(SOC♯)」を算出する式において、 (条件1)制御下限値(SOCl)=0 (条件2)制御上限値SOCu=1 の2つの条件が共に満たされたときの式と等価な式となる。 (なお、具体的に説明すると、上記2つの条件が共に満たされれば、 SOC制御幅について: WSOC=SOCu-SOCl =1 パラメータαの分子について: BSmax-(SOCl+DBS)=BSmax-(DBS) =BSmax-(BSmax-BSmin) =BSmin となる。すると、パラメータαとSOC♯は、それぞれ、 α=(BSmin)/(1-DBS) =(BSmin)/(1-(BSmax-BSmin)) SOC♯=SOCl+WSOC・α =α となり、引用発明においてSOC♯を設定する式は、本願発明1における、「バッテリの充電状態(SOCbatt_k)」を決定する式と等価な式となる。) イ よって、上記相違点についての判断は、引用発明において、「全体蓄電量推定値(SOC♯)」の制御範囲に関する上記2つの条件を共に満たすようにすることが当業者にとって容易であったか否か、という問題に言い替えることができる。 そこで該問題について検討すると、引用文献1では、制御下限値(SOCl)及び制御上限値SOCuについて、次のように記載されている。 (ア)「[0004] 通常は、SOC=50-60(%)程度を制御目標としつつ、制御下限値(たとえば30(%))から制御上限値(たとえば80(%))の範囲内にSOCが収まるように、走行中における二次電池の充放電が制御される。」 (イ)「[0013] この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、SOC変化に対する電圧変化の特性が比較的一様である二次電池によって構成された組電池の適切な充放電制御のために、組電池の電池ブロック間の蓄電量ばらつきを反映した全体でのSOCを的確に設定することである。」 (ウ)「[0061] 図4では、一例として、SOCの制御下限値SOClおよび制御上限値SOCuは、30(%)および80(%)にそれぞれ設定される。SOClからSOCuまでが、SOCの制御範囲に相当し、当該制御範囲の幅を表わすSOC制御幅WSOCは、WSOC=SOCu-SOClで定義される。」 上記(ア)~(ウ)の記載内容を総合すれば、引用発明では、組電池の電池ブロック間に蓄電量ばらつきが生じていたとしても、全体でのSOCを的確に設定しえる方法を用いることで、通常のとおり、SOC=50-60(%)程度を制御目標としつつ、制御下限値(たとえば30(%))から制御上限値(たとえば80(%))の範囲内にSOCが収まるように、走行中における二次電池の充放電を制御することを目的になされた発明であることがわかる。 ウ すると、引用発明においては、組電池を、「全体蓄電量推定値(SOC♯)」が0から1(つまり、0%から100%)の範囲で最大限に充放電して用いること、すなわち、「全体蓄電量推定値(SOC♯)」に対し、制御下限値(SOCl)=0、制御上限値SOCu=1という2つの条件を設定して用いることは、通常考えられないことである。 また、引用文献2-5にも、「全体蓄電量推定値(SOC♯)」に対し、制御下限値(SOCl)=0、制御上限値SOCu=1という2つの条件を設定することは、記載されていない。 さらに、拒絶査定において新たに引用された引用文献6の、「バッテリの充電状態SOCの使用範囲は、・・・バッテリの充電状態SOCが0%から100%の範囲以内となるように充放電電力を制御する必要がある。」との記載は、充電状態SOCが所定の下限値(>0%)と上限値(<100%)との間にあるように充放電電力を制御する必要があることを一般的に説明した記載であって、バッテリの充電状態SOCの範囲を0%から100%に設定すべきことを意味しない。 エ よって、上記相違点は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明ができたものであるとはいえない。 2 本願発明2-14について 本願発明2-14も、上記相違点に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について (1)理由1(進歩性)について 本願発明1-14が、当業者が引用発明及び周知技術(引用文献2-6)に基づいて容易に発明をすることができたものではないことは、上記第5「1」、「2」にて述べたとおりである。 (2)理由2(記載不備)について 審判請求時の補正により、原査定の拒絶の対象とされた(平成28年6月21日付けで手続補正で補正された特許請求の範囲の)請求項5は削除された。 よって、理由2は解消している。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由により、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-000829

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