特許異議申立
2016-701164
蓄熱エレメント及びそれを用いた換気ユニット
- 審判番号
- 2016-701164
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-258416
- 登録番号
- 特許第5937811号(P5937811)
- 請求日
- 2016年12月21日
- 審決日
- 2017年06月12日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パッシブエネルギージャパン株式会社
- 【権利者代理人】馬場 資博
- 【権利者代理人】唐鎌 睦
- 【異議申立人】小西 富雅
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 中村 則夫
- 審判官 山崎 勝司
- 分類
- P1651.113-YAA(F28D) / P1651.121-YAA(F28D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5937811号発明「蓄熱エレメント及びそれを用いた換気ユニット」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5937811号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第5937811号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5937811号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は,平成28年5月20日付けでその特許権の設定登録がされ,平成28年12月21日に特許異議申立人である小西富雅より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
そして,その後の手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 2月 6日 取消理由通知
平成29年 4月 5日 意見書提出(特許権者)
〃 訂正請求書提出(特許権者)
同年 5月13日 意見書提出(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者が平成29年4月5日に提出した訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)における請求の趣旨は,本件特許の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを求めるものであり,その内容は,本件訂正請求書によれば,次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に
「スリーブ」
とあるのを,
「外壁の厚さに合わせて長さが調節できるようになっているスリーブ」
と訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の「換気システムであって,」の後に,
「前記蓄熱エレメントは,当該蓄熱エレメントのうちの前記室内側フード側にリング状部材が装着された状態で,当該蓄熱エレメントの一部が前記換気ユニットを設置する外壁から外側に突出する位置に配置されるよう,前記スリーブ内のうちの前記屋外側フード側に設置されており,」
を追加する。
2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前の請求項1の特定事項である「スリーブ」について,「外壁の厚さに合わせて長さが調節できるようになっている」との限定を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項1は,本件明細書の【0012】の記載に基いたものであるから,新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は,訂正前の請求項1の特定事項である「蓄熱ユニット」について,その配置に係る構成に関し限定を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,訂正事項2は,本件明細書の【0012】及び本件図面の図2の記載に基いたものであるから,新規事項を追加するものではない。
なお,特許異議申立人は,平成29年5月13日に提出した意見書の「4-4 特許法第120条の5第2項に違反について」(7ページ6行~8ページ3行)において,訂正事項2の「リング状部材」に係る訂正について,「リング状部材」なる要件の追加は構成要件の直列的付加にはあたらず,訂正事項2は特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当せず,本件訂正請求は却下されるべきものである旨主張している。しかしながら,訂正事項2は,上述のように,訂正前の請求項1の蓄熱ユニットについて,その配置に係る構成に関し「リング状部材」含め限定を付加するものであるから,上記主張は理由がない。
3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による上記訂正事項1及び2は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1係る発明(以下「本件発明」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
「【請求項1】
多孔質部材で構成され内部に流入する気体から熱と湿気を吸入しながら所定温度まで蓄熱する蓄熱エレメントと,室内側フードと,防塵フィルターと,換気ファンと,外壁の厚さに合わせて長さが調節できるようになっているスリーブと,屋外側フードから成る換気ユニットを,室内の一方側と他方側とにそれぞれ設置した換気システムであって,
前記蓄熱エレメントは,当該蓄熱エレメントのうちの前記室内側フード側にリング状部材が装着された状態で,当該蓄熱エレメントの一部が前記換気ユニットを設置する外壁から外側に突出する位置に配置されるよう,前記スリーブ内のうちの前記屋外側フード側に設置されており,
室外の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御し,また,室外の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御する,コントロールユニットを備えた,
ことを特徴とする換気システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対し,平成29年2月6日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(新規事項)
平成27年11月30日の手続補正でなされた請求項1に係る補正は,「室外の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御し,また,室外の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御する,コントロールユニットを備えた」という事項を追加することを含むものであるが,当該事項に含まれる「同時に」という事項は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内になく,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから,本件請求項1に係る特許は特許法第113条第1号に該当し,取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(新規性)
本件請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された以下の引用例(甲号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件請求項1に係る特許は,特許法第113条第2号により取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された以下の引用例(甲号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,本件請求項1に係る特許は,特許法第113条第2号により取り消されるべきものである。
<引用例一覧>
甲第1号証 「CWP-MA50 OPERATION MANUAL」,2011年1月25日
甲第2号証 「インヴェンター熱回収換気システム」,パッシブエネルギージャパン,平成21年9月11日,[平成28年12月15日印刷],インターネット<URL:www.uniteco.jp/inventer/inVENTer.pdf>
甲第3号証 池原基博,外3名,「住宅用ダクトレス熱交換換気の適用性検討評価」,三井住友建設技術開発センター報告,三井住友建設株式会社技術研究開発本部,平成23年9月30日,No9 2011,p121-125
2 取消理由1(新規事項)についての判断
本件発明の「室外の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御し,また,室外の空気が他方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該他方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御すると同時に,室内の空気が一方側の前記換気ユニットの前記蓄熱エレメントに吸入されるよう当該一方側の前記換気ユニットの前記換気ファンを回動制御する,コントロールユニットを備えた」という事項(以下「追加事項」という。)は,平成27年11月30日の手続補正よって本件請求項1に追加された事項である。(下線は当審が付した。)
そして,上記追加事項に関連して,当初明細書には次の記載がある。
「【0013】
図3は本発明に係わる換気ユニットの使用状態を説明するための構成断面図であり,図中,301a,301bは換気ユニット,302は室内空間,303a,303bは屋外側フード,304a,304bは蓄熱エレメント,305a,305bは屋内側フード,306a,306bは換気ファンである。
この図において,図示しないコントロールユニットから送出された駆動信号などによって,換気ファン306a,306bが例えば時計方向に回動すると,屋外側フード303aを介して屋外の空気が吸引され,蓄熱エレメント304a内に至る。ここで,その空気に含まれている熱や湿気が蓄熱エレメント304a内に吸入される等して所定値まで蓄積される。
【0014】
同様にして,室内側フード305bを介して室内の空気が吸引され,蓄熱エレメント304b内に至る。ここで,その空気に含まれている熱や湿気が蓄熱エレメント304b内に吸入される等して所定値まで蓄積される。
吸引された空気などに含まれている湿気や熱がこのようにして所定値まで蓄熱エレメント304a,304b内に取り込まれた後,その空気は,屋外側フード303bを通って室外に放出される。
【0015】
一方,図示しないコントロールユニットから送出された駆動信号などによって,換気ファン306a,306bが例えば反時計方向に回動すると,屋外側フード303bを介して屋外の空気が吸引され,蓄熱エレメント304b内に至る。ここで,その空気に含まれている熱や湿気が蓄熱エレメント304b内に吸入される等して所定値まで蓄積される。
同様にして,室内の空気が室内側フード305bの周辺部分から吸引され,図3で図示しない防塵フィルター(図2の防塵フィルター204)→換気ファン306→図3で図示しないリング状部材(図2のリング状部材207)→図3で図示しないスリーブ(図2のスリーブ202)を通って蓄熱エレメント304aの中に取り込まれる。
【0016】
ここで,その空気に含まれている熱や湿気が蓄熱エレメント304aの図示しない多孔質部材(図1の蓄熱エレメント本体101を構成する部材)に吸着される等して所定値まで蓄積される。このようにして空気に含まれる湿気や熱が所定値まで蓄熱エレメント304aの内部に取り込まれた後,その空気は,屋外側フード305aを通って,室外へ放出される。
【0017】
このようにして,図示しないコントロールユニットから送出された駆動信号などによって,換気ファン306a,306bが時計方向や反時計方向に回動し,室内302の湿気や温度を最適の状態に保持する。また,冬の冷熱を夏まで保存して夏になるとその冷熱で冷房し,逆に夏の温熱を冬まで保存して冬になるとその温熱を暖房に利用することが可能となる等,季節に応じて最適となる空調なども行う。」
上記記載において,例えば,換気ユニット301a,301bをそれぞれ,本件請求項1の「一方側の換気ユニット」,「他方側の換気ユニット」に対応させると,当初明細書から,一方側及び他方側の換気ユニットの制御態様について,次の事項が把握できる。
1 コントロールユニットから送出された駆動信号などによって,一方側及び他方側の換気ファンが時計方向に回動すると,一方側の屋外側フードを介して屋外の空気が吸引され,一方側の蓄熱エレメントに至る。同様にして,他方側の室内側フード介して室内の空気が吸引され,他方側の蓄熱エレメント内に至る。
吸引された空気に含まれる湿気や熱が所定値まで一方側及び他方側の蓄熱エレメント内に取り込まれた後,その空気は,他方側の屋外側フードを通って室外に放出される。
2 コントロールユニットから送出された駆動信号などによって,一方側及び他方側の換気ファンが反時計方向に回動すると,他方側の屋外側フードを介して屋外の空気が吸引され,他方側の蓄熱エレメントに至る。同様にして,一方側の室内側フード介して室内の空気が吸引され,一方側の蓄熱エレメント内に至る。
吸引された空気に含まれる湿気や熱が所定値まで一方側及び他方側の蓄熱エレメントの内部に取り込まれた後,その空気は,一方側の屋外側フードを通って,室外へ放出される。
3 このようにして,コントロールユニットから送出された駆動信号などによって,一方側及び他方側の換気ファンが時計方向や反時計方向に回動し,室内の湿気や温度を最適の状態に保持する。
当初明細書等には,たしかに,一方側及び他方側の換気ファンの回動が「同時に」される制御であることは直接記載されてはいない。しかしながら,当業者は,上記1及び2から,上記3の作用を奏することからして,一方側及び他方側の換気ファンの回動が「同時に」される制御を含むものと普通に認識できる。よって,上記追加事項は,当初明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
以上より,本件請求項1に係る特許は,上記取消理由1によって取り消されるべきものであるとすることはできない。
3 取消理由2(新規性),取消理由3(進歩性)についての判断
本件発明と,上記甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明,及び,特許異議申立人が平成29年5月13日に提出した意見書に添付された甲第4号証(CWP-MA 50 K,USER’S MAUNUAL」,Ventilation Systems,2010年)に記載された発明とを対比すると,甲第4号証には,本件発明の「当該蓄熱エレメントの一部が前記換気ユニットを設置する外壁から外側に突出する位置に配置されるよう,前記スリーブ内のうちの前記屋外側フード側に設置されており」という事項に相当するものが記載されているものの,いずれの甲号証にも,本件発明の「リング状部材」に相当するものは記載されていない。そうすると,いずれの甲号証にも,本件発明の「前記蓄熱エレメントは,当該蓄熱エレメントのうちの前記室内側フード側にリング状部材が装着された状態で,当該蓄熱エレメントの一部が前記換気ユニットを設置する外壁から外側に突出する位置に配置されるよう,前記スリーブ内のうちの前記屋外側フード側に設置されており,」という特定事項は開示されていないといえる。(下線は当審が付した。)
また,上記特定事項を備えることが設計的事項であると直ちに判断できる証拠もない。
なお,特許異議申立人は上記意見書の「4-5-2 訂正発明1の訂正事項1~4と証拠に記載された発明との対比」において,「甲4発明のリング状の『内側伸縮自在ダクト(2)』が『セラミック熱交換器(5)』の『化粧グリル(1)』側に装着される構成は,訂正発明1の訂正事項3『前記蓄熱エレメントは,当該蓄熱エレメントのうちの前記室内側フード側にリング状部材が装着された状態で,・・・(中略)・・・』に相当する。」(10ページ10~13行)と主張している。これはすなわち,甲第4号証の「内側伸縮自在ダクト(2)」は,本件発明の「リング状部材」相当する旨の主張と解せるが,同「外側伸縮自在ダクト(3)」だけではダクトの長さが調節できないことに鑑みると,同「内側伸縮自在ダクト(2)」は,「外側伸縮自在ダクト(3)」と合わせて,本件発明の「外壁の厚さに合わせて長さが調節できるようになっているスリーブ」に相当するものである。また,同「内側伸縮自在ダクト(2)」は,本件発明のリング状部材のように「当該蓄熱エレメントのうちの前記室内側フード側に」「装着された」もの,つまり,「セラミック熱交換器(5)」に装着されたものではない。
したがって,同 「内側伸縮自在ダクト(2)」は,本件発明の「リング状部材」相当するとはいえず,特許異議申立人の上記主張は理由がない。
よって,本件請求項1に係る特許は,上記取消理由2又は上記取消理由3によって取り消されるべきものであるとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから,上記取消理由通知に記載した取消理由によっては,本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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