特許拒絶査定不服審判
2016-018426
航空機燃料電池システム
- 審判番号
- 2016-018426
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-531938
- 請求日
- 2016年12月08日
- 審決日
- 2017年10月02日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 【請求人代理人】小倉 博
- 【請求人代理人】黒川 俊久
- 【請求人代理人】田中 拓人
- 審判長/審判官
- 審判長 和田 雄二
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 出口 昌哉
- 分類
- P18 .113-Z (B64D) / P18 .121-Z (B64D) / P18 .575-Z (B64D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-531938号「航空機燃料電池システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月5日国際公開、WO2012/045031、平成25年12月26日国内公表、特表2013-545649号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)9月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年9月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年3月22日 :翻訳文提出
平成27年8月24日付け:拒絶理由の通知
平成28年2月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年7月29日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
平成28年12月8日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 平成28年12月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年12月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「第1の燃料(11)を貯蔵する第1の燃料タンク(21)及び第2の燃料(12)を貯蔵するする第2の燃料タンク(22)を備える燃料貯蔵システム(10)と、
前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成するする燃料電池システム(400)と、
前記第1の燃料及び前記第2の燃料の両方を前記燃料貯蔵システム(10)から前記燃料電池システム(400)に供給する燃料供給システム(50)と
を備え、
前記第1の燃料(11)はケロシン系ジェット燃料であり、前記第2の燃料(12)は極低温液体燃料である、航空機システム(5)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年2月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「第1の燃料(11)を貯蔵することができる第1の燃料タンク(21)及び第2の燃料(12)を貯蔵することができる第2の燃料タンク(22)を備える燃料貯蔵システム(10)と、
前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成することができる燃料電池システム(400)と、
前記第1の燃料及び前記第2の燃料の両方を前記燃料貯蔵システム(10)から前記燃料電池システム(400)に供給することができる燃料供給システム(50)と
を備える、航空機システム(5)。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である、「第2の燃料」について、本件補正前の請求項2に記載した事項である「極低温液体燃料である」という限定を付加するとともに、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項である「第1の燃料」について「ケロシン系ジェット燃料であり」という限定を付加することを含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、審判請求人は、本件補正について、請求項1の削除を目的とする補正である旨主張しているが、本件補正後の「第1の燃料(11)はケロシン系ジェット燃料であり」という発明特定事項は、本件補正前の請求項2には記載されていないから、本件補正の目的を上記のとおり、特許請求の範囲の減縮であるとした。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の記載に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は上記1(1)のとおり補正されたが、本件補正後の請求項1の記載のうち「貯蔵するする」は「貯蔵する」の、また、「生成するする」は「生成する」の誤記と認められるので、本件補正発明を以下のように認定した。
「第1の燃料(11)を貯蔵する第1の燃料タンク(21)及び第2の燃料(12)を貯蔵する第2の燃料タンク(22)を備える燃料貯蔵システム(10)と、
前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成する燃料電池システム(400)と、
前記第1の燃料及び前記第2の燃料の両方を前記燃料貯蔵システム(10)から前記燃料電池システム(400)に供給する燃料供給システム(50)と
を備え、
前記第1の燃料(11)はケロシン系ジェット燃料であり、前記第2の燃料(12)は極低温液体燃料である、航空機システム(5)。」
(2)引用刊行物の記載および発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2010-510927号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【0007】
本発明の一例示的実施形態によると、航空機用推進装置が提供されている。
推進装置は、推進装置とエネルギ変換器とを備えている。
第1エネルギ変換器は、第1燃料により、推進装置に推進エネルギを供給するように適合されている。
更に、エネルギ変換器は、第2燃料により、推進装置に推進エネルギを供給するように適合されている。
推進装置は、推進エネルギにより、前方推進力を発生するように適合されている。
【0008】
本発明の別の一例示的実施形態によると、航空機の推進方法が提供されている。
第1燃料および/または第2燃料は、エネルギ変換器に利用可能にされている。
推進装置用の推進エネルギは、第1燃料および/または第2燃料により、エネルギ変換器で発生される。
更に、推進装置に、推進エネルギは供給される。
前方推進力は、推進装置により、推進エネルギから発生される。
【0009】
別の一例示的実施形態によると、上記記載の推進装置が航空機に使用されている。」
「【0011】
「エネルギ変換器」とは、エネルギを変換する機械を示してもよい。
かかる変換器は、例えば、燃料に基づいて推進モーメントまたは推進エネルギを発生する内燃機関を備えている。
さらに、エネルギ変換器は、例えば、電気エネルギから推進エネルギを発生する電動モータ等の動力装置を備えていてもよいし、あるいは、エネルギ変換器が灯油に基づいて推進エネルギを発生する燃焼室を備えていてもよい。」
「【0015】
別の一例示的実施形態によると、推進装置は、更に第1タンクと第2タンクとを備えている。
第1タンクは、エネルギ変換器に第1燃料を利用可能にするように適合されており、第2タンクは、エネルギ変換器に第2燃料を利用可能にするように適合されている。
【0016】
別の一例示的実施形態によると、第1燃料は、第2燃料とは異なる。」
「【0018】
別の一例示的実施形態によると、第1燃料と第2燃料の少なくとも一方は、ガソリン、灯油、ディーゼル油、水素、メタン、天然ガス、および合成炭化水素を含む群から選択される。」
「【0032】
別の一例示的実施形態によると、エネルギ変換器と別のエネルギ変換器の少なくとも1つの変換器は、ターボエンジン、可変燃焼室を有するターボエンジン、ピストンエンジン、プラネタリーピストンエンジン、電動モータ、ガスタービンおよび燃料電池を含む群から選択される。」
「【0038】
図2は、第1タンク6から第1燃料を、また第2タンク11から第2燃料を受領する1つのエネルギ変換器4、5の一例示的実施形態である。
この配置では、第1燃料と第2燃料とは異なってもよい。
従って、上記1つのエネルギ変換器4、5は、二価であっても、またハイブリッド設計で構成されてもよい。
これは、上記1つのエネルギ変換器4、5が、例えば、一方では従来の灯油燃料により、また他方では、例えば、非在来型燃料、例えば天然ガスにより推進エネルギを発生してもよいことを意味する。
こうして、経済的および生態学的要求に応じて、第1または第2燃料による燃料供給を選択することができ、そのため、推進装置は推進エネルギまたは前方推進力を効果的かつ環境的に優しい様式で供給することができる。
従って、例えば、飛行場の近傍等の、人口密集地域では、環境的に優しい燃料を使用し、巡航飛行中は、効率的な燃料だが汚染物質の量の増大に関係する燃料を使用することが可能である。」
イ これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、以下の引用発明は、引用例1の図2に示された実施形態を基本として認定している。
「第1タンク6から第1燃料を、また第2タンク11から第2燃料を受領する1つのエネルギ変換器4を備えた航空機であって、
エネルギ変換器4が燃料電池であり、
第1の燃料が灯油燃料であり、第2の燃料が天然ガスである、
航空機。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「第1タンク6」が「第1の燃料」を貯蔵し、「第2タンク11」が「第2燃料」を貯蔵するものであることは明らかである。したがって、引用発明の「第1の燃料」、「第2の燃料」、「第1タンク6」および「第2タンク」は、それぞれ本件補正発明の「第1の燃料(11)」、「第2の燃料(12)」、「第1の燃料タンク(21)」および「第2の燃料タンク(22)」に相当する。また、引用発明の「第1タンク6」および「第2タンク11」の両者で、航空機において燃料を貯蔵するシステムを構成するといえるから、引用発明の「第1タンク6」および「第2タンク11」によって、本件補正発明の「燃料貯蔵システム(10)」に相当する構成をなすことになる。
b 引用発明の「エネルギ変換器4」は「燃料電池」であるところ、本件補正発明の「燃料電池システム(400)」との対比において、「燃料電池」の限度で共通する。
c 引用発明の「航空機」は、システムとしての航空機全体を示していると解されるから、本件補正発明の「航空機システム」に相当する。これと、上記aおよびbを踏まえると、引用発明の「第1タンク6から第1燃料を、また第2タンク11から第2燃料を受領する1つのエネルギ変換器4を備えた航空機であって、エネルギ変換器が燃料電池であり」は、本件補正発明の「第1の燃料(11)を貯蔵する第1の燃料タンク(21)及び第2の燃料(12)を貯蔵する第2の燃料タンク(22)を備える燃料貯蔵システム(10)と、前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成する燃料電池システム(400)と、」「を備え」た「航空機システム(5)」との対比において、「第1の燃料を貯蔵する第1の燃料タンク及び第2の燃料を貯蔵する第2の燃料タンクを備える燃料貯蔵システムと、前記第1の燃料及び前記第2の燃料を受領する燃料電池システムと、」「を備え」た「航空機システム」の限度で一致する。
d 引用発明の「第1の燃料が灯油燃料であり」は、技術的みて、本件補正発明の「前記第1の燃料(11)はケロシン系ジェット燃料であり」に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点および相違点は次のとおりである。
<一致点>
「第1の燃料を貯蔵する第1の燃料タンク及び第2の燃料を貯蔵する第2の燃料タンクを備える燃料貯蔵システムと、前記第1の燃料及び前記第2の燃料を受領する燃料電池と、を備え、前記第1の燃料はケロシン系ジェット燃料である、航空機システム。」
<相違点1>
燃料電池に関し、本件補正発明が「燃料電池システム(400)」であるのに対し、引用発明は「燃料電池」である点。
<相違点2>
本件補正発明は、「前記第1の燃料及び前記第2の燃料の両方を前記燃料貯蔵システム(10)から前記燃料電池システム(400)に供給する燃料供給システム(50)」を備え、「燃料電池システム(400)」が、「前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成する」ものであるのに対し、引用発明の「燃料電池」は、「第1タンク6から第1燃料を、また第2タンク11から第2燃料を受領する」ものである点。
<相違点3>
本件補正発明の「第2の燃料(12)は極低温液体燃料」であるのに対し、引用発明は「第2の燃料が天然ガスである」点。
(4)判断
以下、上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
燃料電池は電池単体ではなく、周辺の補機類も含めてシステムとして構成、使用されることが技術常識であるから、引用発明の「燃料電池」も、補機類を含めた燃料電池システムであると解される。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明の燃料電池を補機類を含めた燃料電池システムとして構成することは、燃料電池に関する上記技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 相違点2ついて
引用発明の「燃料電池」は、「第1タンク6から第1燃料を、また第2タンク11から第2燃料を受領する」ものであるから、両方の燃料を受領できるように構成されていると解されるところ、燃料電池は、燃料が燃料供給システムによって燃料電池まで供給源から供給され、受領した燃料を使用して電力を生成するというものであるから、引用発明が、第1タンク6及び第2タンク11から燃料電池まで、第1燃料および第2燃料の両方を供給する燃料供給システムを備えること、そして、引用発明の燃料電池がその供給された、第1燃料及び第2燃料を使用して電力を生成することは明らかである。
よって、引用発明は、本件補正発明の「燃料供給システム」に相当する構成、および、本件補正発明の「燃料電池システム(400)」が、「前記第1の燃料(11)及び前記第2の燃料(12)を使用して電力(410)を生成する」という構成を実質的に備えていると解されるから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に実質的な相違点であるとしても、エネルギ変換器としての燃料電池において、受領した燃料を使用して電力を生成することは当業者が容易になしうる事項にすぎない。
ウ 相違点3について
天然ガスを燃料とする場合、エネルギー密度や取り扱い性の観点から、天然ガスを極低温液化させて(いわゆるLNGとして)貯蔵および搬送することは例を挙げるまでもなく周知の技術である。また、航空機のような限られた空間を有する機材において、天然ガスをエネルギー密度が低く大容積を占める気体のまま燃料タンクに貯蔵するとは通常考えられない。したがって、引用発明の「第2の燃料」である「天然ガス」は、極低温液体状態で第2タンクに貯蔵されていると解することが妥当かつ自然である。よって、相違点3は実質的な相違点とはいえない。
仮に実質的な相違点であるとしても、天然ガスを極低温液体状態で貯蔵することが例を挙げるまでもなく周知・慣用の技術であることからすれば、引用発明の「第2の燃料」である「天然ガス」を、極低温液体状態で第2タンクに貯蔵することは、当業者が容易になしうる事項にすぎない。
エ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明であるか、または、当業者が引用発明および周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、または、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年12月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、平成28年2月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2 引用例等
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された刊行物(以下、それぞれ「引用例A」~「引用例F」という。)は次のとおりである。
引用例A:特表2008-521693号公報
引用例B:特表2010-510927号公報
引用例C:特開2000-25696号公報
引用例D:特開2002-70580号公報
引用例E:特表2006-504043号公報
引用例F:特表2003-518710号公報
そして、上記引用例Bは、上記「第2[理由]2(2)」の引用例1であり、その記載事項及び発明は、上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。
なお、原査定の概要は、請求項1に係る発明について、原査定は引用例Bに記載された発明か、当業者が当該発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとするものである。
3 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、「前記第1の燃料(11)はケロシン系ジェット燃料であり、前記第2の燃料(12)は極低温液体燃料である」という、第1の燃料および第2の燃料に関する発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明であるか、または、当業者が引用発明および周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明であるか、または、当業者が引用発明および周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-018426