特許拒絶査定不服審判
2016-018128
インクカートリッジ、インクカートリッジのセット及びICチップ
- 審判番号
- 2016-018128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-089739外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月02日
- 審決日
- 2017年10月30日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】珠海納思達企業管理有限公司
- 【請求人代理人】河野 英仁
- 【請求人代理人】河野 登夫
- 分類
- P18 .121-WY (B41J) / P18 .537-WY (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 89739「インクカートリッジ、インクカートリッジのセット及びICチップ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日出願公開、特開2015-166185、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月26日(パリ条約による優先権主張2011年12月30日、中国)に出願された特願2012-211871号(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年4月24日に新たな特許出願としたものであって、平成28年1月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月7日付けで手続補正がされ、同年9月14日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月20日)、これに対し、同年12月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成29年5月29日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月14日付けで手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年7月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
光を感知する受光部と、母線で接続された複数の設備電気接点とを有するインクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジにおいて、
前記インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であり、
前記設備電気接点に電気接続する容器電気接点と、
複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置と、
前記受光部に向けて発光する発光部と、
前記インクジェットプリンターから出力された前記第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び前記発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる制御部と
を備えるインクカートリッジ。
【請求項2】
光を感知する受光部と、母線で接続された複数の設備電気接点とを有するインクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジのセットにおいて、
該セットは少なくとも、
請求項1に記載の第1の色に係るインクカートリッジと、
第2の色に係るインクカートリッジとを含み、
該第2の色に係るインクカートリッジは、
前記設備電気接点に電気接続する容器電気接点と、
複数色の内、第2の色を特定する第2色識別情報が格納された情報記憶装置と、
前記受光部に向けて発光する発光部と、
前記インクジェットプリンターから出力された前記第2の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び前記発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる制御部とを備える
インクカートリッジのセット。
【請求項3】
光を感知する受光部と、母線で接続された複数の設備電気接点とを有するインクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジのICチップにおいて、
前記インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であり、
前記設備電気接点に電気接続する容器電気接点と、
複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置と、
前記受光部に向けて発光する発光部と、
前記インクジェットプリンターから出力された前記第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び前記発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる制御部と
を備えるICチップ。」
第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その原出願の優先日に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、そ原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
・請求項 1~3
・引用文献 特開2009-248373号公報」
2.原査定の理由の判断
(1)引用文献
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-248373号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。
ア.「【0009】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)191の本体カバー192を開放した状態を示す斜視図である。尚、本実施形態で説明する記録装置はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクが注入されたインクタンク101を搭載したカラー記録装置である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の記録装置191は、記録ヘッドおよびインクタンクを搭載したキャリッジ196が走査のための移動する機構などを備えている。また、記録装置191は、キャリッジ196等が本体カバー192およびその他のケース部分によって覆われている記録装置本体と、その前後にそれぞれ設けられる排紙トレイ194と、自動給紙装置(ASF)193とを備えている。また、記録装置191には、本体カバー192を閉じた状態および開いた状態の両方で記録装置191の状態を表示するための表示器、電源スイッチおよびリセットスイッチを備えた操作部195が設けられている。
【0011】
本体カバー192を開放した状態で、操作者は、キャリッジ196が移動する範囲およびその周辺を見ることができる。キャリッジ196は記録ヘッドユニット162およびブラックタンク101K、イエロータンク101Y、マゼンタタンク101M、シアンタンク101C(以下、これらのインクタンクを同一の符号「101」で示す場合もある)を搭載している。実際は、本体カバー192を開けると、キャリッジ196が自動的に同図に示す、記録装置191のほぼ中央位置(以下、インクタンク交換位置ともいう)へ移動するシーケンスが実行される。操作者は、このインクタンク交換位置でそれぞれのインクタンクの交換操作などを行うことができる。
【0012】
本実施形態の記録装置191は、記録ヘッドユニット162に、各色のインクに対応したチップ形態の記録ヘッド(不図示)が設けられている。これら各色の記録ヘッドがキャリッジ196の移動によって用紙などの記録媒体に対して往復走査を行い、記録媒体にインクを吐出して記録を行うものである。すなわち、キャリッジ196は、その移動方向に延在するシャフト198と摺動可能に係合するとともに、キャリッジモータおよびその駆動力伝達機構によって、上述の移動をすることができる。そして、ブラックK、イエローY、マゼンタM、シアンCのインクに対応したそれぞれの記録ヘッドでは、フレキシブルケーブル197を介して制御回路から送られる吐出データに基づいてインクの吐出が行われる。また、記録装置191には、紙送りローラや排紙ローラなどの紙送り機構が設けられ、自動給紙装置193から給紙された記録媒体(不図示)を排紙トレイ194まで搬送することができる。また、キャリッジ196には、タンクホルダと一体の記録ヘッドユニット162が着脱自在に装着され、この記録ヘッドユニット162に対してそれぞれのインクタンク101が着脱自在に装着される。」
イ.「【0018】
タンクホルダ163は、インクタンク101から供給されたインクを吐出する記録ヘッド161を備えた記録ヘッドユニット162と一体に形成されている。このホルダ163の第1係止部165および第2係止部166に対し、インクタンク101の第1係合部103および第2係合部104がそれぞれ係合することで、インクタンク101がホルダ163に装着され固定される。またこのとき、ホルダ163に設けられた接点(以下コネクタと称す)164と、インクタンク101に設けられた基板141の電極パッド143(図4(a)、(b)参照)とが接触し、インクタンク101とタンクホルダ163との電気的接続が可能になる。」
ウ.「【0021】
インクタンク101の内側に向けて取り付けられる基板141の面には、LED(Light Emitting Diode)など可視光を発生する発光素子142と、情報を記憶可能な記憶素子と、発光素子を制御する制御素子とが設けられている。特に本実施形態においては、記憶素子と制御素子とは一体のICパッケージ144として基板に設けられており、コネクタ164よりパッド143を介して供給される電気信号により、ICパッケージ144内の制御素子は発光部142の発光の制御を行う。また、発光素子142から発光する光を導光部121へ投光する際の光量の減衰を抑えるため、基板141は発光素子142が入射面123の近傍になるように配置されている。
【0022】
発光素子142から発光された光は、導光部121の端面である入射面123より入射され、導光部121を通り操作者に光を表示させる表示部122まで到達する。発光素子142の光には可視光を採用しており、拡散光であるため矢印A1からA3のように、複数の光線を有している。」
エ.「【0026】
インクタンク101は、製造時に発光素子142の発光確認を行い、発光光量のチェックを行っている。発光光量のチェックでは、発光素子142から発光された光が導光部121内を通り表示部122へ到達した光の強さを工程のセンサで認識する。これを光の強さに応じた4段階のランク情報として分類し、それぞれのインクタンク101に設けられたICパッケージ144内の記憶素子にランク情報が書き込まれる。同時に、記憶素子には、インクタンク101に注入された色(色ID)や、インクタンク毎に異なる個別コードや、注入日、注入量などの他の情報も書き込まれる。」
オ.「【0033】
記録装置の制御部から送られるパケットは、複数搭載される各色のインクタンクを識別するための色IDと発光素子のオン/オフを制御する信号の組からなる。具体的には、例えば、図6の信号線「DATA」で、「C-on」、「M-on」、「Y-on」は、それぞれシアンタンク、マゼンタタンク、イエロータンクの発光素子を点灯させる命令である。また、「C-off」、「M-off」はシアンタンク、マゼンタタンクの発光素子を消灯させるための命令であり、「null」は信号が無いことを示している。
【0034】
それぞれの命令は、インクタンク101に設けられたICパッケージ144内の制御素子が受け取る。制御素子は、記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、不合致の場合は以降の命令に対して反応しないが、合致した場合は、次にある発光素子の点灯/消灯の命令に従う。このようにして、バス接続においても、インクタンク毎に発光素子の点灯/消灯を個別に制御することが出来る。」
カ.「【0049】
なお、上記の説明では、操作者が目視により表示パターンを確認することを説明したが、本実施形態の記録装置は、操作者が何らかの原因により表示パターンを確認できなかった場合でも、インクタンク装着位置の誤りを検出可能である。
【0050】
記録装置本体に光量測定用の受光部210(図1参照)を設けることによりこれを実現している。受光部210はフォトトランジスタからなるセンサであり、受光光量に応じて光電流が変化する。
【0051】
図11は、インクタンクのLEDと記録装置のフォトトランジスタとの関係を模式的に示した図である。本実施形態においては、図11で示す回路により光電流の変化を電圧の変化として検出している。このような構成によれば、インクタンク上の表示装置を発光させながらキャリッジの位置を移動させ、その際の受光部による受光光量を記憶することでキャリッジ上のインクタンク装着位置を表示可能である。なお、受光部210を表示部122に対向する位置に設けることで、インクタンクの構成を変更することなくこの位置表示動作を実現可能である。」
上記の記載事項を総合すると、引用文献には、次の発明が記載されているものと認められる。
「キャリッジ等が本体カバーおよびその他のケース部分によって覆われている記録装置本体を備え、
記録装置本体に光量測定用の受光部を設け、
キャリッジには、タンクホルダと一体の記録ヘッドユニットが着脱自在に装着された、
インクジェット記録装置において、
インクタンクはブラックタンク、イエロータンク、マゼンタタンク、シアンタンクであって、
インクタンクがタンクホルダに装着され固定され、タンクホルダに設けられたコネクタと、インクタンクに設けられた基板の電極パッドとが接触し、インクタンクとタンクホルダとの電気的接続が可能になり、
インクタンクの内側に向けて取り付けられる基板の面には、可視光を発生する発光素子と、情報を記憶可能な記憶素子と、発光素子を制御する制御素子とが設けられ、
記憶素子と制御素子とは一体のICパッケージとして基板に設けられており、
記憶素子には、インクタンクに注入された色(色ID)の情報が書き込まれ、
発光素子から発光された光は、表示部まで到達し、
受光部を表示部に対向する位置に設けることで、位置表示動作を実現可能であり、
記録装置の制御部から送られるパケットは、複数搭載される各色のインクタンクを識別するための色IDと発光素子のオン/オフを制御する信号の組からなり、
制御素子は、記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、不合致の場合は以降の命令に対して反応しないが、合致した場合は、次にある発光素子の点灯/消灯の命令に従う
インクタンク。」(以下「引用発明A」という。)
「キャリッジ等が本体カバーおよびその他のケース部分によって覆われている記録装置本体を備え、
記録装置本体に光量測定用の受光部を設け、
キャリッジには、タンクホルダと一体の記録ヘッドユニットが着脱自在に装着された、
インクジェット記録装置において、
インクタンクはブラックタンク、イエロータンク、マゼンタタンク、シアンタンクであって、
インクタンクがタンクホルダに装着され固定され、タンクホルダに設けられたコネクタと、インクタンクに設けられた基板の電極パッドとが接触し、インクタンクとタンクホルダとの電気的接続が可能になり、
インクタンクの内側に向けて取り付けられる基板の面には、可視光を発生する発光素子と、情報を記憶可能な記憶素子と、発光素子を制御する制御素子とが設けられ、
記憶素子と制御素子とは一体のICパッケージとして基板に設けられており、
記憶素子には、インクタンクに注入された色(色ID)の情報が書き込まれ、
発光素子から発光された光は、表示部まで到達し、
受光部を表示部に対向する位置に設けることで、位置表示動作を実現可能であり、
記録装置の制御部から送られるパケットは、複数搭載される各色のインクタンクを識別するための色IDと発光素子のオン/オフを制御する信号の組からなり、
制御素子は、記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、不合致の場合は以降の命令に対して反応しないが、合致した場合は、次にある発光素子の点灯/消灯の命令に従う
ICパッケージ。」(以下「引用発明B」という。)
(2)本願発明1について
ア.対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。
後者の「光量測定用の受光部」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「光を感知する受光部」に相当し、同様に、「インクジェット記録装置」は「インクジェットプリンター」に相当する。また、後者においては「タンクホルダに設けられたコネクタと、インクタンクに設けられた基板の電極パッドとが接触し、インクタンクとタンクホルダとの電気的接続が可能にな」るから、後者の「コネクタ」は前者の「設備電気接点」に相当する。
後者の「インクジェット記録装置」は、「記録装置本体を備え、記録装置本体に光量測定用の受光部を設け」たものであるから、「光量測定用の受光部」を有するといえる。また、後者の「インクジェット記録装置」は、「キャリッジ等が本体カバーおよびその他のケース部分によって覆われている記録装置本体を備え」ており、「キャリッジには、タンクホルダと一体の記録ヘッドユニットが着脱自在に装着された」のだから、「タンクホルダ」は「インクジェット記録装置」の一部をなすといえ、後者の「タンクホルダに設けられたコネクタ」は「インクジェット記録装置」に設けられているといえる。そうすると、後者の「光量測定用の受光部」を有し、「コネクタ」が設けられた「インクジェット記録装置」と、前者の「光を感知する受光部と、母線で接続された複数の設備電気接点とを有するインクジェットプリンター」とは、「光を感知する受光部と、設備電気接点とを有するインクジェットプリンター」との概念で共通する。
後者の「インクタンク」は「ブラックタンク、イエロータンク、マゼンタタンク、シアンタンクであって」、「タンクホルダに装着され固定され」るから、「インクタンク」は「インクジェット記録装置」に装着される複数のものであるといえ、後者のこの点は前者の「インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であ」る点に相当する。
後者の「電極パッド」は、「タンクホルダに設けられたコネクタと、インクタンクに設けられた基板の電極パッドとが接触し、インクタンクとタンクホルダとの電気的接続が可能にな」るものであるから、前者の「前記設備電気接点に電気接続する容器電気接点」に相当する。
後者の「記憶素子」は、「インクタンクに注入された色(色ID)の情報が書き込まれ」るから、前者の「複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置」に相当する。
後者においては「発光素子から発光された光は、表示部まで到達し、受光部を表示部に対向する位置に設けることで、位置表示動作を実現可能であ」るから、後者の「発光素子」及び「表示部」からなる機構は「受光部」に対向して発光しているといえ、後者のこのような機構は前者の「前記受光部に向けて発光する発光部」に相当する。
後者の「制御素子」は、「記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、不合致の場合は以降の命令に対して反応しないが、合致した場合は、次にある発光素子の点灯/消灯の命令に従う」から、記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、合致した場合は、命令に従って発光素子を点灯/消灯させるものであって、前者の「前記インクジェットプリンターから出力された前記第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び前記発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる制御部」と、「発光部を制御して発光させる制御部」との概念で共通する。
したがって、両者は、
「光を感知する受光部と、設備電気接点とを有するインクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジにおいて、
前記インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であり、
前記設備電気接点に電気接続する容器電気接点と、
複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置と、
前記受光部に向けて発光する発光部と、
発光部を制御して発光させる制御部と
を備えるインクカートリッジ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
「設備電気接点」に関して、前者では「母線で接続された複数」のものであるに対して、後者ではその点につき明らかでない点。
[相違点2]
「制御部」に関して、前者では「インクジェットプリンターから出力された第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる」のに対して、後者ではそのようなものでない点。
イ.判断
上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、上記引用発明Aが備えるものではなく、示唆もされていない。また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載のとおり、従来の技術が「インクカートリッジが正しい位置に装着されているにも関わらず、受光部が十分な光を感知できなかったことにより、正しい位置或いは適切な位置に設置されていないと誤判別してしまうことがある。結局このような問題を引き起こす根本的な原因は、生産時の回避できない製造上の誤差により、1つ1つのLEDランプから出される光の量は多少異なり、検知対象のインクカートリッジのLEDランプから発射される光の量が少ないと、光線は散乱光となるため、受光部に届く光の量が閾値を満たさず、インクカートリッジが正しい位置に装着されているにも関わらず、受光部がインクカートリッジ未装着と誤判別してしまう事態が生じる。」(段落【0004】)ものであったのに対して、「本発明は、インクカートリッジの構造を変えることなく、上記の受光部に届く光の量が閾値を満たさない問題を解決できるインクカートリッジセット及び前記インクカートリッジを利用した装着検知方法を提供する」(段落【0005】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(3)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1のインクカートリッジを含む「インクカートリッジのセット」の発明である。そうすると、本願発明2と引用発明Aとは少なくとも上記(2)ア.の相違点1及び2において相違するから、本願発明2は、本願発明1と同様に、当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本願発明3について
ア.対比
本願発明3と引用発明Bとを対比する。
後者の「光量測定用の受光部」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「光を感知する受光部」に相当し、同様に、「インクジェット記録装置」は「インクジェットプリンター」に、「ICパッケージ」は「ICチップ」に相当する。また、後者においては「タンクホルダに設けられたコネクタと、インクタンクに設けられた基板の電極パッドとが接触し、インクタンクとタンクホルダとの電気的接続が可能にな」るから、後者の「コネクタ」は前者の「設備電気接点」に相当する。
後者の「インクジェット記録装置」は、「記録装置本体を備え、記録装置本体に光量測定用の受光部を設け」たものであるから、「光量測定用の受光部」を有するといえる。また、後者の「インクジェット記録装置」は、「キャリッジ等が本体カバーおよびその他のケース部分によって覆われている記録装置本体を備え」ており、「キャリッジには、タンクホルダと一体の記録ヘッドユニットが着脱自在に装着された」のだから、「タンクホルダ」は「インクジェット記録装置」の一部をなすといえ、後者の「タンクホルダに設けられたコネクタ」は「インクジェット記録装置」に設けられているといえる。そうすると、後者の「光量測定用の受光部」を有し、「コネクタ」が設けられた「インクジェット記録装置」と、前者の「光を感知する受光部と、母線で接続された複数の設備電気接点とを有するインクジェットプリンター」とは、「光を感知する受光部と、設備電気接点とを有するインクジェットプリンター」との概念で共通する。
後者の「インクタンク」は「ブラックタンク、イエロータンク、マゼンタタンク、シアンタンクであって」、「タンクホルダに装着され固定され」るから、「インクタンク」は「インクジェット記録装置」に装着される複数のものであるといえ、後者のこの点は前者の「インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であ」る点に相当する。
後者においては「記憶素子と制御素子とは一体のICパッケージとして基板に設けられて」いるから、後者の「ICパッケージ」は、「記憶素子」及び「制御素子」を備えているといえ、前者の「ICチップ」と「情報記憶装置と制御部とを備える」との概念で共通する。
後者の「記憶素子」は、「インクタンクに注入された色(色ID)の情報が書き込まれ」るから、前者の「複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置」に相当する。
後者の「制御素子」は、「記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、不合致の場合は以降の命令に対して反応しないが、合致した場合は、次にある発光素子の点灯/消灯の命令に従う」から、記憶素子に書かれた色IDとパケットの色IDを照合し、合致した場合は、命令に従って発光素子を点灯/消灯させるものであって、前者の「前記インクジェットプリンターから出力された前記第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び前記発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる制御部」と、「発光部を制御して発光させる制御部」との概念で共通する。
したがって、両者は、
「光を感知する受光部と、設備電気接点とを有するインクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジにおいて、
前記インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジは複数であり、
複数色の内、第1の色を特定する第1色識別情報が格納された情報記憶装置と、
発光部を制御して発光させる制御部と
を備えるICパッケージ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点3]
「設備電気接点」に関して、前者では「母線で接続された複数」のものであるに対して、後者ではその点につき明らかでない点。
[相違点4]
前者が「設備電気接点に電気接続する容器電気接点と、受光部に向けて発光する発光部とを備える」のに対して、後者はそのようなものでない点。
[相違点5]
「制御部」に関して、前者では「インクジェットプリンターから出力された第1の色とは異なる他の色を特定する他色識別情報及び発光部の発光状態を制御する状態制御情報を含む発光指令を受信した後に、前記他色識別情報を無視して前記状態制御情報に基づき前記発光部を制御して発光させる」のに対して、後者ではそのようなものでない点。
イ.判断
上記相違点5について検討する。
上記相違点5に係る本願発明3の発明特定事項は、上記引用発明Bが備えるものではなく、示唆もされていない。また、上記相違点5に係る本願発明3の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明3は、上記相違点5に係る本願発明3の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載のとおり、従来の技術が「インクカートリッジが正しい位置に装着されているにも関わらず、受光部が十分な光を感知できなかったことにより、正しい位置或いは適切な位置に設置されていないと誤判別してしまうことがある。結局このような問題を引き起こす根本的な原因は、生産時の回避できない製造上の誤差により、1つ1つのLEDランプから出される光の量は多少異なり、検知対象のインクカートリッジのLEDランプから発射される光の量が少ないと、光線は散乱光となるため、受光部に届く光の量が閾値を満たさず、インクカートリッジが正しい位置に装着されているにも関わらず、受光部がインクカートリッジ未装着と誤判別してしまう事態が生じる。」(段落【0004】)ものであったのに対して、「本発明は、インクカートリッジの構造を変えることなく、上記の受光部に届く光の量が閾値を満たさない問題を解決できるインクカートリッジセット及び前記インクカートリッジを利用した装着検知方法を提供する」(段落【0005】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明3は、引用発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
「本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1、3について
本願の請求項1、3の記載は、インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジが複数であることを特定しておらず、装着されるインクカートリッジが1つである場合を含むものとなっている。
しかし、本願の発明の詳細な説明によると、本願は、「検知対象のインクカートリッジのLEDランプから発射される光の量が少ないと、光線は散乱光となるため、受光部に届く光の量が閾値を満たさず、インクカートリッジが正しい位置に装着されているにも関わらず、受光部がインクカートリッジ未装着と誤判別してしまう事態が生じる。」(段落【0004】)、「本発明は、インクカートリッジの構造を変えることなく、上記の受光部に届く光の量が閾値を満たさない問題を解決できるインクカートリッジセット及び前記インクカートリッジを利用した装着検知方法を提供するものである。」(段落【0005】)という課題を解決するために、「プリンターから任意のインクカートリッジ発光部の発光を制御する指令が送られると、全てのインクカートリッジ上の発光部がオンになる。これにより、例え任意のインクカートリッジ発光部から発射される光の量が少ない場合でも、ほかのインクカートリッジの光線で補ってプリンターに正しく識別させることができる。」(段落【0015】)、「異なったインクカートリッジにある各制御部は、プリンターからの発光指令を受信した後、その発光指令に含まれるインクカートリッジ識別情報を無視し、そのまま発光部の点灯或いは消灯を制御する。言い換えれば、どのインクカートリッジを検出しても、上記複数のインクカートリッジの複数の発光部は全て点灯或いは消灯する。」(段落【0025】)、「プリンターからの発光指令がインクカートリッジセットのどのインクカートリッジのLEDランプのオン/オフを制御するものなのかに関係なく、前記インクカートリッジセットの複数のLEDランプはどれもオン或いはオフする仕組みとなっている。言い換えれば、上記インクカートリッジセットの各インクカートリッジの制御部(発光制御モジュール)はプリンターからの任意の発光指令を受信すると、それぞれの発光部の発光を制御し始める。これにより、装着検知の時は、たとえいずれかのLEDランプの発光量が少ない場合でも、隣接のインクカートリッジのLEDランプから発射される散乱光である程度補い、検知に必要な光の量に係る閾値を満たすようにしているため、正しい位置に装着したにも関わらず、LEDランプの発光量が少ないためにプリンターがインクカートリッジが正しい位置に装着されていないと誤判別してしまうという不具合を回避することができる。」(段落【0030】)ということを行っている。(なお、下線は当審で付したものである。)
してみると、本願の請求項1、3に係る発明において、インクジェットプリンターに装着されるインクカートリッジが1つである場合、インクカートリッジの発光部の発光量が少ないときに隣接する他のインクカートリッジから発射される光によって補われるということはないから、発明の詳細な説明に記載された、上記のような課題は解決されない。
したがって、本願の請求項1、3に係る発明は、発明の詳細な説明によって十分にサポートされているとはいえず、発明の詳細な説明に記載したものであることが明確でない。」
2.当審拒絶理由の判断
平成29年7月14日にされた手続補正により、本件補正前の請求項1及び3は上記「第2 本願発明」において摘示した請求項1及び3のとおりにそれぞれ補正された。
このことにより、請求項1及び3に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものであることが明確となった。
よって、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-018128