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特許拒絶査定不服審判

2016-017711

コンタクトレンズ上の生体脂質堆積物の最小化

審判番号
2016-017711
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-535694外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年11月28日
審決日
2017年11月20日
公報発行日
2018年05月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02C) / P18 .575-Z (G02C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第184条の12第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-535694「コンタクトレンズ上の生体脂質堆積物の最小化」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日国際公開、WO2014/058613、平成27年11月 9日国内公表、特表2015-532460〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2013年9月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年10月8日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月20日に審査請求とともに手続補正がなされ、平成28年4月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月16日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年7月15日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年11月28日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正の補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年11月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、平成28年6月16日付けの手続補正における特許請求の範囲 「  【請求項1】 頻回交換または長期間装用コンタクトレンズ上への涙脂質の収着を最小にする方法であって、 (a)セノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAからなる群より選択されるコンタクトレンズを、該コンタクトレンズ上の涙脂質の蓄積を最小にするために少なくとも3時間の期間に亘り、 0.5ppmから10ppmのα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロライド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロライド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド、 クエン酸塩、クエン酸またはそれらの混合物、および 脂質収着阻害剤であって、 0.005質量%から0.05質量%の濃度でのヒアルロン酸と、 0.01質量%から0.8質量%の濃度での一般式I: 【化1】 の両性界面活性剤(式中、R1は、Rまたは-(CH2)n-NHC(O)Rであり、ここで、Rは、C8~C30アルキルまたはヒドロキシルにより置換されたC8~C30アルキルであり、nは、2、3または4であり;R2およびR3の各々は、独立して、水素およびC1~C4アルキルからなる群より選択され;R4は、C2~C8アルキレンまたはヒドロキシルにより置換されたC2~C8アルキレンであり;YはCO2-またはSO3-である)と、 0.02質量%から0.1質量%の濃度での、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロースと、 からなる群より選択される脂質収着阻害剤、 を含むレンズケア溶液と接触させる工程; (b)浸漬された前記コンタクトレンズをヒトの眼内に挿入する工程;および (c)工程(a)と(b)を繰り返す工程; を有してなり、 前記レンズケア溶液が、米国食品医薬品局の眼用器具の部門の1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験に基づく製品を消毒するための独立手順を満たすものであり、該手順は、消毒期間内で、mL当たりに回収された細菌の数が、対数で3.5以上の平均値だけ減少しなければならず、またmL当たりに回収された菌類および酵母の数が、対数で1.5以上の平均値だけ減少しなければならないという点で、前記溶液が、最短の推奨消毒期間に亘る第1の判断基準に合格することを要求するものである、方法。 【請求項2】 前記レンズケア溶液が、0.005質量%から0.05質量%の濃度でヒアルロン酸を含む、請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記レンズケア溶液が、0.01質量%から0.8質量%の濃度で一般式Iの前記両性界面活性剤を含む、請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記レンズケア溶液が、0.02質量%から0.1質量%の濃度で、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロースを含む、請求項1記載の方法。 【請求項5】 前記レンズケア溶液が、0.5ppmから1.3ppmのポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、または2ppmから5ppmのアレキシジンをさらに含む、請求項1記載の方法。 【請求項6】 前記レンズケア溶液が、0.01質量%から0.8質量%の一般式Iの前記両性界面活性剤をさらに含む、請求項2記載の方法。 【請求項7】 前記レンズケア溶液が、プロピレングリコールまたはミリスタミドプロピルジメチルアミンをさらに含む、請求項1記載の方法。 【請求項8】 工程(a)と(b)を繰り返す工程が、7日毎に少なくとも1回行われる、請求項1記載の方法。 【請求項9】 前記レンズケア溶液が、エチレンオキシド部分およびブチレンオキシド部分を含むブロックコポリマーをさらに含む、請求項4記載の方法。 【請求項10】 前記レンズケア溶液が、0.01質量%から0.8質量%の一般式Iの前記両性界面活性剤をさらに含む、請求項4記載の方法。 【請求項11】 前記中性メチルセルロースが、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群より選択される、請求項1記載の方法。」(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。また、上記下線部は本件補正により削除される箇所を示す。)を、 「  【請求項1】 頻回交換または長期間装用コンタクトレンズ上への涙脂質の収着を最小にする方法であって、 (a)セノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAからなる群より選択されるコンタクトレンズを、該コンタクトレンズ上の涙脂質の蓄積を最小にするために少なくとも3時間の期間に亘り、 0.5ppmから10ppmのα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロライド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロライド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド、 クエン酸塩、クエン酸またはそれらの混合物、および 脂質収着阻害剤であって、 0.005質量%から0.05質量%の濃度でのヒアルロン酸と、 0.01質量%から0.8質量%の濃度での一般式I: 【化1】 の両性界面活性剤(式中、R1は、Rまたは-(CH2)n-NHC(O)Rであり、ここで、Rは、C8~C30アルキルまたはヒドロキシルにより置換されたC8~C30アルキルであり、nは、2、3または4であり;R2およびR3の各々は、独立して、水素およびC1~C4アルキルからなる群より選択され;R4は、C2~C8アルキレンまたはヒドロキシルにより置換されたC2~C8アルキレンであり;YはCO2-またはSO3-である)と、 からなる群より選択される脂質収着阻害剤、 を含むレンズケア溶液と接触させる工程; (b)浸漬された前記コンタクトレンズをヒトの眼内に挿入する工程;および (c)工程(a)と(b)を繰り返す工程; を有してなり、 前記レンズケア溶液が、米国食品医薬品局の眼用器具の部門の1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験に基づく製品を消毒するための独立手順を満たすものであり、該手順は、消毒期間内で、mL当たりに回収された細菌の数が、対数で3.5以上の平均値だけ減少しなければならず、またmL当たりに回収された菌類および酵母の数が、対数で1.5以上の平均値だけ減少しなければならないという点で、前記溶液が、最短の推奨消毒期間に亘る第1の判断基準に合格することを要求するものである、方法。 【請求項2】 前記レンズケア溶液が、0.005質量%から0.05質量%の濃度でヒアルロン酸を含む、請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記レンズケア溶液が、0.01質量%から0.8質量%の濃度で一般式Iの前記両性界面活性剤を含む、請求項1記載の方法。 【請求項4】 前記レンズケア溶液が、0.5ppmから1.3ppmのポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、または2ppmから5ppmのアレキシジンをさらに含む、請求項1記載の方法 。 【請求項5】 前記レンズケア溶液が、0.01質量%から0.8質量%の一般式Iの前記両性界面活性剤をさらに含む、請求項2記載の方法。 【請求項6】 前記レンズケア溶液が、プロピレングリコールまたはミリスタミドプロピルジメチルアミンをさらに含む、請求項1記載の方法。 【請求項7】 工程(a)と(b)を繰り返す工程が、7日毎に少なくとも1回行われる、請求項1記載の方法。」と補正するものである。 2 補正についての判断 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における、脂質収着阻害剤の選択肢の1つであった「0.02質量%から0.1質量%の濃度での、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロース」を削除する補正事項(以下、「補正事項1」という。)と、補正前の特許請求の範囲の請求項4,9~11を削除する補正事項(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。 脂質収着阻害剤の選択肢から「0.02質量%から0.1質量%の濃度での、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロース」が除かれたレンズケア溶液を用いた頻回交換または長時間装用コンタクトレンズ上への涙脂質の収着を最小にする方法は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~10,18に記載されていたものである。したがって、いずれも、脂質収着阻害剤の選択肢から「0.02質量%から0.1質量%の濃度での、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロース」を削除する補正事項1及び補正事項2は、新規事項を追加するものにはあたらない。 よって、本件補正は、特許法第184条の12第2項により読み替えて適用する特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではない。 また、補正事項1は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の選択肢の1つを削除するものであり、補正の前後において産業上の利用分野及び課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。補正事項2は、補正前の特許請求の範囲の請求項を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものといえる。 本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項1を含むものであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 3 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前の平成23年6月16日に公開された刊行物である特表2011-517660号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線部は、発明の認定に用いた箇所を示す。) ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ビグアニド、ポリマービグアニド、クォータニウムアンモニウム化合物及びそれらのいずれかの混合物からなる群より選択されるカチオン性抗微生物性成分0.1ppm~10ppm、 ヒアルロン酸0.005wt%~0.15wt%、及び、 下記一般式 【化1】 (上式中、R1はR又は-(CH2)n-NHC(O)Rであり、ここで、Rはヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC8~C16アルキルであり、nは2、3又は4であり、R2及びR3は各々独立に、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルから選ばれ、そしてR4はヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC2~C8アルキレンである)の両性界面活性剤0.01wt%~1.0wt%、 を含む眼科組成物。 【請求項2】 前記ヒアルロン酸は0.005wt%~0.02wt%で存在し、そして前記カチオン性抗微生物性成分は0.5ppm~2.0ppmで存在するポリ(ヘキサメチレンビグアニド)である、請求項1記載の眼科組成物。 (中略) 【請求項4】 0.5ppm~3ppmで存在するα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロリド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロリド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリドをさらに含む、請求項2記載の眼科組成物。 (中略) 【請求項6】 クエン酸塩、クエン酸又はそれらの混合物をさらに含む、請求項4記載の眼科組成物。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は両性界面活性剤及びヒアルロン酸を含む眼科組成物に関する。本発明は、また、コンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するための眼科組成物の使用にも関する。」 ウ 「【発明を実施するための形態】 【0016】 Bausch & Lombの出願人らはレンズケア液としての使用のための多くの眼科製剤を開発しそして試験した。上記のとおり、このようなレンズケア液は機能的特性を満たさなければならない。最初に、液は変性涙タンパク質及び涙脂質ならびに他の外部汚染物を除去する洗浄能力を有しなければならない。第二に、液は様々な異種の細菌及び真菌株に対する有意な消毒能力を有しなければならない。第三に、液は刺痛を最少にしてコンタクトレンズの患者に快適さを維持するとともに、目の表面にさらなる快適さ又は保護を提供するプラットフォームを提供しなければならない。第四に、液は多くの異なるコンタクトレンズ材料の有意な収縮又は膨潤を生じさせてはならない。このような収縮又は膨潤は視力の損失及び所望されない又は顕著なレンズの移動性をもたらすことがある。第五に、市場の認識に対して取り組むために、液は現在の商業用レンズケア液の染色プロファイルと同等以上の表層点状角膜染色プロファイルを有するべきである。」 エ 「【0017】 上記のすべての特性に加えて、液は当該技術分野において「レジメン」試験と呼ばれている厳格な試験プロトコルにも合格しなければならない。ソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するように選択的に配合される眼科組成物は、非摩擦コンタクトレンズ清浄及び消毒液として食品医薬品局(FDA)からラベル認可を得るために、その製剤についての「レジメン」試験に合格しなければならない。開発中の多くの眼科組成物は米国市場における各々そしてすべてのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに用いるレジメン試験に合格し損なう。レジメン試験のより詳細な説明は本願のサブ表題「実施例」に提供されている。記載されそして特許請求される眼科組成物はこれらの機能的要求の各々を解決する。」 オ 「【0073】 上記のとおり、眼科組成物はコンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するために使用されうる。一般に、コンタクトレンズ液は「非摩擦レジメン」として当該技術分野において知られている毎日の又は一日おきのケア措置として使用されうる。この手順は、目からコンタクトレンズを取り外し、数ミリリットルの液でレンズの両面を濯ぎ、そしてレンズ貯蔵ケースにレンズを配置することを含む。その後、レンズを新鮮な液に少なくとも2時間浸漬させる。レンズをケースから取り出し、場合により、さらなる液で濯ぎ、そして目に再配置する。」 カ 「【0075】 (1)ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのアクリルエステルの重合により調製される材料から形成されるハードレンズ、(2)シリコーンアクリレート及びフルオロシリコーンメタクリレートから形成される剛性ガス透過性(RGP)レンズ、(3)ソフトヒドロゲルレンズ及び(4)非ヒドロゲルエラストマーレンズを含む多くの異なるタイプのコンタクトレンズで眼科組成物を使用することができる。」 キ 「【0086】 殺生物独立安定性 製剤の活性を評価するために、サンプルを4オンスPET容器中に入れ、そして周囲温度、及び、高温に所定の時間貯蔵した。サンプルの独立殺生物効力を指定した間隔で試験し、消毒活性について、時間経過に伴う製剤の安定性を決定する。「消毒製品の独立手順」(Stand- Alone Procedure for Disinfecting Products)は、米国食品医薬局(FDA)、眼科デバイス課によって用意された、1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験に基づいている。この性能要求は摩擦手順を含まない。 【0087】 独立試験は代表的な種類の微生物の標準的な接種を用いて消毒性製品に挑戦させ、そして製品が使用されうる時間に相当する予め決められた時間間隔で生存率低下の程度を実証する。所与の消毒時間(可能最小推奨消毒時間に対応する)の主な基準は、1mL当たりに回収される細菌の数が所与の消毒時間内に平均値で3.0 ログ(log)以上、低減されていなければならない、ということである。1ml当たりに回収されるカビ及びイーストの数は、最小推奨消毒時間の4倍の時間増加せずに、最小推奨消毒時間内に平均値で1.0ログ(log)以上、低減されなければならない。」 ク 「【0095】 PureVision(登録商標)レンズを用いたレジメン試験 レジメン効力試験は有機体汚染液中の試験有機体1.0×107~1.0×108CFU/mLの懸濁液0.01mLでコンタクトレンズの両面を最初に接種することを含む。接種材料を20~25℃で5~10分間、各レンズに吸着させる。吸着の時間の後に、レンズの各面を試験液で5秒間濯ぎ、その後、4時間、標準B&Lレンズケース中に保存された試験液中に含浸させる。生存している攻撃有機体を回収するために、所定の体積の確証された中和媒体をろ過装置に入れる。所与のレンズケースの全内容物(レンズ及び試験液)をろ過装置中の中和媒体に移す。適当な中和暴露時間後に、ろ過装置に真空を課し、液をろ過する。レンズを、試験有機体の回収に適する寒天培地床に無菌で移す。床中に使用されるのと同一の寒天(40~50℃)を所与の量でレンズ上に注ぎ、キャストする。試験フィルターを、試験有機体を回収するのに適する寒天培地の表面に配置する。細菌回収プレートを30~35℃で2~4日間インキュベートし、イースト回収プレートを20~25℃又は30~35℃で3~5日間インキュベートし、そしてカビ回収プレートを20~25℃で3~7日間インキュベートする。適切な接種材料、レンズの接種、ならびに、中和及び回収対照物を各試験で操作する。」 ケ 「【0103】 例5vsOpti-Free(登録商標)Replenishの臨床評価 多施設覆面実薬対照相互対比群2週間試験(multi-center, masked, active-controlled, bilateral, parallel-group, two-week study)を、被験者の半分に例5(試験液)のレンズケア液をランダムに受けさせ、そして半分にOpti-Free(登録商標)Replenish(対照液)を受けさせることで行った。試験の初めに、すべての被験者に彼らが常用しているレンズ(1/3がPureVision(登録商標)、1/3がAcuvue(登録商標)Oasys、1/3がNight & Day(登録商標)又はO2Optix(登録商標))及び試験レンズケア液又は対照レンズケア液のいずれかを分配した。被験者に液の使用及びレンズのケアを指示した。被験者に対して、試験の最初の1週間について、毎日の日記を付けさせ、それぞれの賛助者に完了した試験をメールすることを要求した。試験ではアジア系人361人の被験者(347人が試験を完了)が含まれ、表14に人口統計を示す。 【0104】 【表15】 」 (2)上記記載事項ア及びイに基づけば、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。 「コンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するための眼科組成物の使用方法であって、 ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)であるカチオン性抗微生物性成分0.5ppm~2.0ppm、 ヒアルロン酸0.005wt%~0.02wt%、及び、 下記一般式 【化1】 (上式中、R1はR又は-(CH2)n-NHC(O)Rであり、ここで、Rはヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC8~C16アルキルであり、nは2、3又は4であり、R2及びR3は各々独立に、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルから選ばれ、そしてR4はヒドロキシルによって場合により置換されていてよいC2~C8アルキレンである)の両性界面活性剤0.01wt%~1.0wt%、 0.5ppm~3ppmで存在するα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロリド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロリド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド、 クエン酸塩、クエン酸又はそれらの混合物、 を含む、使用方法。」(以下、「引用発明」という。) 4 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「眼科組成物」は、「コンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するため」に使用されるものである。したがって、引用発明の「眼科組成物」は、本件補正発明の「レンズケア溶液」に相当する。 (2)引用発明の「α-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロリド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロリド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド」は、本件補正発明の「α-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロライド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロライド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド」に相当する。 そして、引用発明の「眼科組成物」は、「α-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロリド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロリド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド」が「0.5ppm~3ppm」で存在している。したがって、引用発明1の「眼科組成物」は、本件補正発明の「0.5ppmから10ppmのα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロライド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロライド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド」を含むレンズケア溶液であるとする要件を満たしている。 (3)引用発明の「眼科組成物」は、「クエン酸塩、クエン酸又はそれらの混合物」を含むとされている。したがって、引用発明の「眼科組成物」は、本件補正発明の「クエン酸塩、クエン酸またはそれらの混合物」を含むレンズケア溶液であるとする要件を満たしている。 (4)引用発明の「眼科組成物」は、「ヒアルロン酸」を「0.005wt%~0.02wt%」を含むとされている。引用発明の「眼科組成物」における「ヒアルロン酸」の含量は、本件補正発明の「レンズケア溶液」における「ヒアルロン酸」の含量の範囲に含まれるものであるから、本件補正発明における「ヒアルロン酸」と同様に「脂質収着阻害剤」として作用するものといえる。したがって、引用発明の「眼科組成物」は、本件補正発明の「脂質収着阻害剤であって、0.005質量%から0.05質量%の濃度でのヒアルロン酸と、・・・からなる群より選択される脂質収着阻害剤」を含むレンズケア溶液であるとする要件を満たしている。 (5)引用発明の「眼科組成物」は、「コンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するため」のものであるから、その機能からみて、引用発明の「使用方法」は、クリーニングすることにより、コンタクトレンズへの収着を最小にする方法であるといえる。したがって、引用発明の「コンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するための眼科組成物の使用方法」と本件補正発明の「頻回交換または長期間装用コンタクトレンズ上への涙脂質の収着を最小にする方法」とは、「コンタクトレンズ上への」「収着を最小にする方法」である点で共通する。 以上より、本件補正発明と引用発明とは、 「コンタクトレンズ上への収着を最小にする方法であって、 0.5ppmから10ppmのα-[4-トリス(2-ヒドロキシエチル)-アンモニウムクロライド-2-ブテニル]ポリ[1-ジメチルアンモニウムクロライド-2-ブテニル]-ω-トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライド、 クエン酸塩、クエン酸またはそれらの混合物、および 脂質収着阻害剤であって、 0.005質量%から0.05質量%の濃度でのヒアルロン酸より選択される脂質収着阻害剤、 を含むレンズケア溶液を使用する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件補正発明は、「頻回交換または長期間装用」コンタクトレンズ上への「涙脂質」の収着を最小にする方法であって、 「(a)セノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAからなる群より選択されるコンタクトレンズを、該コンタクトレンズ上の涙脂質の蓄積を最小にするために少なくとも3時間の期間に亘り、」「レンズケア溶液と接触させる工程; (b)浸漬された前記コンタクトレンズをヒトの眼内に挿入する工程;および (c)工程(a)と(b)を繰り返す工程;」 を有するのに対し、引用発明はコンタクトレンズの種類及び収着を最小にしようとする物質を特定しておらず、また、クリーニングしそして消毒するための工程が、一応、明らかではない点。 [相違点2]本件補正発明の「レンズケア溶液」が、「米国食品医薬品局の眼用器具の部門の1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験に基づく製品を消毒するための独立手順を満たすものであり、該手順は、消毒期間内で、mL当たりに回収された細菌の数が、対数で3.5以上の平均値だけ減少しなければならず、またmL当たりに回収された菌類および酵母の数が、対数で1.5以上の平均値だけ減少しなければならないという点で、前記溶液が、最短の推奨消毒期間に亘る第1の判断基準に合格することを要求するものである」のに対し、引用発明の眼科組成物が、米国食品医薬品局の上記判断基準に合格することを要求するものであるか、一応、明らかではない点。 5 判断 (1)[相違点1]について 引用発明は眼科組成物を使用するコンタクトレンズの種類を特定していない。しかし、引用文献には、前記3(1)カの記載事項のとおり、眼科組成物を使用するコンタクトレンズについて「(3)ソフトヒドロゲルレンズ・・・を含む多くの異なるタイプのコンタクトレンズで眼科組成物を使用することができる。」と記載されており、ソフトヒドロゲルレンズにも使用できることが記載されているといえる。そして、例えば、特開2007-152121号公報の段落【0002】には、背景技術として、「ヒドロゲルコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズの一例である。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、コンタクトレンズの着用者が、非シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズに比較して、彼等の眼にこのようなレンズを長時間着用できることによって普及してきている。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの例は、アキュブーアドバンス(Acuvue Advance)およびアキュブーオアシス(Acuvue Oasys)の商標の下でジョンソンアンド・ョンソン社から、フォーカスナイトアンドデイ(Focus Night and Day)およびO2オプティックス(O2 Optix)の商標でチバ・ビジョン社から、またピュア・ビジョンの商標でバウシュ&ロンブ社(Bausch & Lomb)から入手可能である。アキュブーアドバンスは、ガリフィルコン(galyfilcon)Aの合衆国適合名(USAN)を有し、アキュブーオアシスはセノフィルコンAのUSANを有し、フォーカスナイトアンドデイレンズはロトラフィルコン(lotrafilcon)AのUSANを有し、O2オプティックスレンズはロトラフィルコンBのUSANを有し、またピュアビジョンレンズはバラフィルコン(balafilcon)AのUSANを有している」(下線部は当審で付与した。以下同様。)と記載されており、特開2008-174306号公報の【0006】にも、「本発明のパッケージ内に包装可能なシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの例としては、以下の米国採用名称(USAN)、即ち、ロトラフィルコン(lotorafilcon)A、ロトラフィルコン(lotorafilcon)B、バラフィルコン(balafilcon)A、ガリフィルコン(galyfilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A及びコムフィルコン(comfilcon)Aを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが挙げられる。・・・快適剤の例としては、コンタクトレンズが1日の終わりであっても、例えば、コンタクトレンズを連続して約14時間装用した後であっても、レンズ装用者にとって快適なままであるようにコンタクトレンズの湿潤性を促進する湿潤促進剤が挙げられる。」と記載されており、セノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAは、周知の長時間着用できるソフトヒドロゲルレンズであるといえる。したがって、引用発明において、眼科組成物を使用するコンタクトレンズを、周知の長時間着用できるセノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAとすることは、当業者が適宜選択しうることである。 また、引用文献の記載事項ウには、レンズケア液が、「最初に、液は変性涙タンパク質及び涙脂質ならびに他の外部汚染物を除去する洗浄能力を有しなければならない。」と記載されており、収着を最小にしようとする対象を、「涙脂質」とすることが示唆されているといえる。 さらに、引用文献の記載事項オには、「眼科組成物はコンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するために使用されうる。一般に、コンタクトレンズ液は「非摩擦レジメン」として当該技術分野において知られている毎日の又は一日おきのケア措置として使用されうる。この手順は、目からコンタクトレンズを取り外し、数ミリリットルの液でレンズの両面を濯ぎ、そしてレンズ貯蔵ケースにレンズを配置することを含む。その後、レンズを新鮮な液に少なくとも2時間浸漬させる。レンズをケースから取り出し、場合により、さらなる液で濯ぎ、そして目に再配置する。」と記載されている。当該記載によれば、クリーニングしそして消毒するための方法は、「目からコンタクトレンズを取り外し、数ミリリットルの液でレンズの両面を濯ぎ、そしてレンズ貯蔵ケースにレンズを配置することを含む。その後、レンズを新鮮な液に少なくとも2時間浸漬させる」工程と、「レンズをケースから取り出し、場合により、さらなる液で濯ぎ、そして目に再配置する」工程を、「毎日の又は一日おきのケア措置」として行うことであるといえる。そして、記載事項クの「吸着の時間の後に、レンズの各面を試験液で5秒間濯ぎ、その後、4時間、標準B&Lレンズケース中に保存された試験液中に含浸させる。」との記載によれば、「レンズを新鮮な液に少なくとも2時間浸漬させる」とあるのは、4時間の期間に亘り接触させることも含んでいるといえる。そうすると、引用文献には、クリーニングしそして消毒するための工程が、(a)コンタクトレンズを、該コンタクトレンズ上の涙脂質の蓄積を最小にするために少なくとも3時間の期間に亘り、眼科組成物と接触させる工程、(b)浸漬されたコンタクトレンズをヒトの眼内に挿入する工程、および、(c)工程(a)と(b)を繰り返す工程からなることが記載されているといえる。そして、コンタクトレンズについて、工程(a)と(b)を、毎日の又は一日おきのケア処置として行っていることから、当該コンタクトレンズが「頻回交換用」のコンタクトレンズであるといえる。 以上より、引用文献の記載にしたがい、引用発明におけるクリーニングしそして消毒するための工程を、(a)コンタクトレンズを、該コンタクトレンズ上の涙脂質の蓄積を最小にするために少なくとも3時間の期間に亘り、眼科組成物と接触させる工程、(b)浸漬されたコンタクトレンズをヒトの眼内に挿入する工程、および、(c)工程(a)と(b)を繰り返す工程とすることは、引用発明が予定する使用方法の範囲にすぎず、コンタクトレンズとして、頻回交換または長期間装用コンタクトレンズである、セノフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、およびコムフィルコンAとすることは、眼科組成物の使用にあたり適宜選択しうることである。 (2)[相違点2]について 引用文献の記載事項エには、「ソフトシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをクリーニングしそして消毒するように選択的に配合される眼科組成物は、非摩擦コンタクトレンズ清浄及び消毒液として食品医薬品局(FDA)からラベル認可を得るために、その製剤についての「レジメン」試験に合格しなければならない。」と記載されており、記載事項キに、「米国食品医薬局(FDA)、眼科デバイス課によって用意された、1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験」として、「所与の消毒時間(可能最小推奨消毒時間に対応する)の主な基準は、1mL当たりに回収される細菌の数が所与の消毒時間内に平均値で3.0 ログ(log)以上、低減されていなければならない、ということである。1ml当たりに回収されるカビ及びイーストの数は、最小推奨消毒時間の4倍の時間増加せずに、最小推奨消毒時間内に平均値で1.0ログ(log)以上、低減されなければならない。」ことが記載されている。そして、消毒性能を重視する当業者であれば、引用発明の抗微生物性成分の分量を数値範囲の上限に近づけて調整するといえるところ、その分量は本件補正発明の下限値の分量よりも遥かに大きいから、消毒性能を重視して配合された引用発明の眼科組成物は、細菌の数の低減量が「対数で3.5以上」、「対数で1.5以上」となるものであって相違点2に係る本願発明の構成を具備するといえる。 したがって、引用文献の示唆にしたがい、引用発明における眼科組成物を、米国食品医薬品局の眼用器具の部門の1997年5月1日付けの製品の消毒効力試験に基づく製品を消毒するための独立手順を満たすものであり、該手順は、消毒期間内で、mL当たりに回収された細菌の数が、対数で3.5以上の平均値だけ減少しなければならず、またmL当たりに回収された菌類および酵母の数が、対数で1.5以上の平均値だけ減少しなければならないという点で、前記溶液が、最短の推奨消毒期間に亘る第1の判断基準に合格することを要求するものとすることは、当業者が容易に想到しうることである。 (3)効果について そして、コンタクトレンズの種類を特定したことにより格別な効果の差異が生じるとはいえない。したがって、本件補正発明の効果は、引用文献の記載から当業者が認識できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 6 補正却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件発明について 1 本件発明 本件補正は、前記第2に記載したとおり、却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、平成28年6月16日付けの手続補正における特許請求の範囲の請求項1~11として記載された事項により特定される、前記第2の1に補正前の特許請求の範囲として記載したとおりのものである。(補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を、以下「本件発明」という。) 2 引用刊行物の記載及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前の平成23年6月16日に公開された刊行物である特表2011-517660号公報の記載事項及び記載された発明は、前記第2の3に記載したとおりである。 3 対比・判断 本件発明は、本件補正発明における脂質収着阻害剤の選択肢に、「0.02質量%から0.1質量%の濃度での、80kDaから250kDaの重量平均分子量を有する中性メチルセルロース」を追加したものである。 そうすると、本件発明の構成要件を全て含む本件補正発明が、前記第2の6に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本件発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-017711

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