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特許拒絶査定不服審判

2016-017150

組織サンプルの処理装置

審判番号
2016-017150
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-096492外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年11月16日
審決日
2018年01月05日
公報発行日
2018年02月23日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-WY (G01N) / P18 .121-WY (G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012- 96492「組織サンプルの処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日出願公開、特開2012-225922、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成24年4月20日(パリ条約による優先権主張 2011年4月20日  ドイツ)の出願であって、平成27年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月26日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年7月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1 本願の請求項1、3、6及び11ないし15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 本願の請求項1ないし9及び11ないし15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2005-210931号公報 引用文献2:特開2001-150377号公報 引用文献3:特開平10-273224号公報 引用文献4:特開2003-204197号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし13に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、平成28年11月16日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである(なお、本願発明2ないし13については、記載を省略する。)。 「  【請求項1】 包埋剤の浸潤ないし浸透の後に、組織の組織学的サンプルを把持するための組織サンプルの処理装置であって、 負圧を生成するためのベンチュリノズル(6)と、 該負圧によってその吸引開口部(4)において該組織サンプルを直接的に固定するための少なくとも一つの吸引ノズル(3) を含む、組織サンプルの処理装置。」 第4 引用文献の記載事項 1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。 (引1-ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質を汚染することのないようにピックアップするピックアップ装置及び方法に関するものである。」 (引1-イ)「【0004】 以上のように、今日まで、数~数十μmといった細胞を単独で、指定した場所から指定した場所へ自由自在に簡単に自動で移動させることができるシステムは開発されていない。」 (引1-ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質を汚染することのないようにピックアップすることができ、更に、ピックアップ操作を繰り返して行っても汚染することがない装置及び方法を得ることを目的とする。」 (引1-エ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0016】 本発明においては、汚染のない微小担体片と該微小担体片を先端部で保持する担体保持ノズル手段とを備え、前記担体保持ノズル手段には前記微小担体片を微小物質に接触させて微小担体片に微小物質を転写する間では保持状態を保持し別の微小物質をピックアップする前には前記微小担体片の保持状態を解除する保持制御手段を備えたものであるため、微小物質を汚染することのないようにピックアップすることができ、ピックアップ操作を繰り返して行っても汚染することがない。 【0017】 本発明の担体保持ノズル手段としては、微小担体片を先端部で保持し、微小物質と接触する場合には微小担体片のみが触れ、ノズル手段の先端部は微小物質に触れないようにするものであればよく、例えば、微小担体片に保持用軸を突設して設け、この保持用軸をノズル手段の先端部で保持するようにしたり、ノズル手段の先端部に接着剤を配し、この接着剤に微小担体片を接着して保持するようにしたりしてもよいが、好ましくはノズル先端部を負圧にして微小担体片を保持する吸気吸引を行う。 ・・・ 【0019】 微小担体片の大きさはピックアップする微小物質の種類や状態に応じて相違する。例えば、培養された培養液やコロニー中の菌体細胞を単離したりするためのピックアップでは1mm程度の大きさでも良いが、溶菌されたDNA又はRNAやマイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞では、その1/10~1/1000程度の大きさが好ましい。 ・・・ 【0023】 本発明では好ましい態様として、担体保持ノズル手段をX-Y-Z座標軸方向に移動させるノズル移動手段を更に備える。これにより、指定した場所にある微小な細胞や物質をピックアップし、指定した位置に高精度に移動しスポットすることができる。例えば、シャーレ等に培養された微生物コロニーを、液体培地が貯留されているマイクロプレートに移植すること、5~500μmの単一細胞を、移植すること、CCDカメラでばら撒かれた極小植物種子を認識し、培地に播種すること等を正確に行うことができる。」 (引1-オ)「【0029】 実施例2.担体保持ノズルの動作 図3は担体保持ノズルの動作を示す説明図である。図に示す通り、微小物質のピックアップの前段階として、a図に示す通り、ノズル21の先端部31にビーズ32を装着する。即ち、ビーズストッカー20上に並んで載置されたビーズ32の1つをノズル21の先端部31で接触させ、ノズル21の軸心に沿って形成された吸引管34内部の空気を圧力制御手段33で吸引制御してビーズ32を保持する。保持している間は吸引管34内部の気圧を圧力制御手段33によって負圧状態としてビーズ32の保持を維持する。この吸引管34の気圧を制御する圧力制御手段33はxステージ18内部に配されている。 【0030】 b図に示す通り、カメラ19でピックアップされる微小物質としてのコロニー35の位置を認識させ、このカメラ19によるコロニー35の位置決めデータに基づいてX-Y-Z座標軸方向に移動させるノズル移動手段によってノズル先端31をコロニー35が載置されている位置の上方へ移動させる。 【0031】 c図に示す通り、圧力制御手段33により吸引管34内の負圧状態を維持したまま、コロニー35と接触させる。ビーズ32の接触面にコロニー35を形成する細菌が付着し、ノズル先端31にピックアップされる。尚、微小物質へのビーズ32の接触面は、ノズル先端31に対して対向する半球面であることを原則とする。この半球面を越えてノズル先端31側の面と接触すると吸引管34の吸引により微小物質が引き込まれ、ノズル先端31が汚染される虞があるからである。尚、ピックアップする微小物質が液体又は液体中に懸濁された物質である場合には、表面張力があるため、前記半球面よりも小さくする必要がある。 【0032】 微小物質をピックアップさせた後、ノズル移動手段によって予め定められたマイクロプレート24内の特定のウェル36上方に移動させ、圧力制御手段33で吸引管34内を正圧とすることで、d図に示す通り、ビーズ32の保持が解除されてウェル36内に落下しピックアップされた微小物質としてのコロニー35を形成していた細菌が分離される。尚、ノズル移動手段の高さ位置を制御することにより、ビーズ32の最低部のみをウェル36内に浸して細菌を分離することも可能である。 【0033】 連続してピックアップする場合には、d図に示したようにノズル先端部31にはビーズ32が保持されていない状態であって、ノズル先端部31は汚染のない状態となっているため、a図に示すように、別のビーズ32を保持して、別のコロニーの細菌をピックアップすればよい。 【0034】 これらの方法でピックアップ&プレイスを行うことで、ノズルと微小物質との直接の接触はなく、ノズルの磨耗は半永久的にない。コンタミネーションも発生せず、ランニングコストの削減や洗浄度向上に大きく貢献することになる。同じく、微小物質もノズルと接触しないので微小物質に損傷を与えない。」 (引1-カ)【図3】 「 」 2 引用文献1に記載された発明の認定 (1)(引1-オ)の段落【0029】に記載された「担体保持ノズル」及び「ノズル21」が、(引1-エ)の段落【0016】に記載された「担体保持ノズル手段」に相当することは明らかである。 (2)(引1-オ)の段落【0029】に記載された「先端部31」及び段落【0031】に記載された「ノズル先端31」が、(引1-エ)の段落【0016】に記載された「先端部」に相当することは明らかである。 (3)上記(1)及び(2)を踏まえると、(引1-ア)ないし(引1-カ)の記載から、引用文献1には、 「 培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質をピックアップするピックアップ装置であって、 汚染のない微小担体片と該微小担体片を先端部で保持する担体保持ノズル手段とを備え、 担体保持ノズル手段は、 ビーズストッカー20上に並んで載置された微小担体片であるビーズ32の1つを担体保持ノズル手段の先端部で接触させ、担体保持ノズル手段の軸心に沿って形成された吸引管34内部の空気を圧力制御手段33で吸引制御してビーズ32を保持し、 圧力制御手段33により吸引管34内の負圧状態を維持したまま、コロニー35と接触させ、ビーズ32の接触面にコロニー35を形成する微小物質である細菌が付着し、先端部にピックアップされるように動作するものである、 ピックアップ装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 3 引用文献2ないし4について (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献2は、負圧生成手段としてベンチュリノズルが周知であることを示すために引用されたものであり、電子部品等の部品吸着器において、ベンチュリー効果によりノズル開口端に負圧を生じさせるという技術的事項が記載されている。 (2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献3は、交換可能な吸引ノズルが周知であることを示すために引用されたものであり、化学物質等の微小固形物を搬送する装置において、微小固形物を吸引保持する吸引ノズルを複数容易し、着脱手段により交換可能にするという技術的事項が記載されている。 (3)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である上記引用文献4は、負圧吸着手段にセンサを設けることが周知であることを示すために引用されたものであり、電子部品実装装置において、真空吸引回路に真空センサを設けて目詰まりを判定するという技術的事項が記載されている。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質」と、本願発明1の「包埋剤の浸潤ないし浸透の後」の「組織の組織学的サンプル」とは、「生物学的サンプル」である点において共通する。 イ 引用発明の「ピックアップする」は、本願発明1の「把持する」に相当する。 ウ 引用発明の「ピックアップ装置」は、「培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質をピックアップする」ものであるから、引用発明の「ピックアップ装置」と、本願発明1の「組織サンプルの処理装置」とは、「生物学的サンプルの処理装置」である点において共通する。 エ 引用発明の「圧力制御手段33」と、本願発明1の「ベンチュリノズル」とは、「負圧生成手段」である点において共通する。 オ 引用発明の「先端部」に吸引のための開口部が設けられていることは明らかであるから、引用発明の「先端部」及び「担体保持ノズル手段」は、それぞれ本願発明1の「吸引開口部」及び「吸引ノズル」に相当する。 カ 引用発明の「付着」は、本願発明1の「固定」に相当する。 (2)よって、本願発明1と引用発明とは、 「 生物学的サンプルを把持するための生物学的サンプルの処理装置であって、 負圧を生成するための負圧生成手段と、 その吸引開口部において該生物学的サンプルを固定するための少なくとも一つの吸引ノズル を含む、生物学的サンプルの処理装置。」 の発明である点で一致し、次の3点で相違する。 (相違点1) 生物学的サンプルの処理装置が、本願発明1においては、「包埋剤の浸潤ないし浸透の後に、組織の組織学的サンプルを把持するための組織サンプルの処理装置」であるのに対し、引用発明においては、「培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質をピックアップするピックアップ装置」である点。 (相違点2) 負圧生成手段が、本願発明1においては「ベンチュリノズル」であるのに対し、引用発明においては「圧力制御手段33」であり、具体的な機構は特定されていない点。 (相違点3) その吸引開口部において該生物学的サンプルを固定するための少なくとも一つの吸引ノズルが、本願発明1においては、「負圧によってその吸引開口部において該組織サンプルを直接的に固定する」ものであるのに対し、引用発明においては、「圧力制御手段33で吸引制御して微小担体片を先端部で保持し、該微小担体片に微小物質を付着させる」ものである点。 (3)以上のとおり、本願発明1と引用発明とは、上記相違点1ないし3において実質的に相違するから、本願発明1は引用発明と同一ではない。 したがって、本願発明1は引用文献1に記載された発明ではない。 (4)相違点についての判断 ア 上記相違点1について検討する。 本願発明1と引用発明とは、それぞれが取り扱う対象が生物学的サンプルとして共通している。 しかしながら、引用発明が取扱い対象とする「培養された培養液やコロニー中の菌体細胞、溶菌されたDNA又はRNA、マイクロマニピュレーションで操作された組織・細胞等の微小物質」は、包埋処理を施して使用するようなものではなく、引用文献1には、包埋処理を施したサンプルのピックアップに引用発明を使用することができる旨の示唆もないから、引用発明において、取扱い対象を「包埋剤の浸潤ないし浸透の後の組織の組織学的サンプル」に変更しようとする動機付けが存在しない。 また、たとえ動機付けがあったとしても、本願発明1が取扱い対象とする「包埋剤の浸潤ないし浸透の後」の「組織の組織学的サンプル」と引用発明が取扱い対象とする「微小物質」とは、生物学的サンプルとしての性質や寸法などの物理的特性が異なるものであり、これらの差異から見て、本願発明1と引用発明とでは、吸引ノズルの寸法や負圧のレベルが相当に異なると認められることから、引用発明をそのまま用いて包埋剤の浸潤ないし浸透の後の組織の組織学的サンプルを直接的に固定することができるとは認められない。 そして、引用文献2ないし4の記載を見ても、「包埋剤の浸潤ないし浸透の後の組織の組織学的サンプルを把持する装置」に関する開示はない。 したがって、当業者といえども、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。 イ よって、上記相違点2及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2ないし13について 本願発明2ないし13も、本願発明1の「包埋剤の浸潤ないし浸透の後に、組織の組織学的サンプルを把持するための組織サンプルの処理装置」との構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし13は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用発明及び引用文献2ないし4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-017150

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