特許拒絶査定不服審判
2016-016112
耐火レンガ用組成物の製造方法、耐火レンガの製造方法
- 審判番号
- 2016-016112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-060381
- 請求日
- 2016年10月28日
- 審決日
- 2017年09月25日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】リグナイト株式会社
- 【請求人代理人】森 厚夫
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 山崎 直也
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P18 .121-WZ (C04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 60381「耐火レンガ用組成物の製造方法、耐火レンガの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-131762〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成23年1月14日(優先権主張 2010年1月26日 日本)に国際出願された特願2011-551740号(以下「原出願」という。)の一部を同年3月24日に新たな特許出願としたものであって、平成27年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、平成29年6月8日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年8月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記の事項により特定されるとおりのものであると認める。
「耐火骨材の表面にコーティング用粘結剤からなる固形のコーティング層を被覆してコーテッド耐火骨材を調製し、このコーテッド耐火骨材に液状のバインダー用粘結剤を配合し、これを混合することによって耐火レンガ用組成物を製造する方法であって、コーティング用粘結剤からなる上記コーティング層は、未硬化で熱硬化性を有する熱硬化性樹脂により形成されたものであると共に、コーティング用粘結剤とバインダー用粘結剤は反応して結合するものであることを特徴とする耐火レンガ用組成物の製造方法。」(以下、「本願発明1」という。)
第3.当審における拒絶理由の概要
平成29年6月8日付けの当審からの拒絶理由は、
「3)本件出願の請求項1-3,6-12に係る発明(以下、「本願発明1-3,6-12」という。)は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
という理由を含むものである。
引用例1:特開昭55-10476号公報
第4.本願発明に対する判断
1.引用例1の記載事項
引用例1には、次の記載がある。
(ア)「アルミナ、マグネシア等の無機質耐火骨材にフエノール系樹脂よりなる結合剤と要すれば少量の溶剤を添加し黒鉛粉末を加えて高速ミキサーで短時間混練することにより上記骨材の表面に黒鉛および一部硬化した結合剤より成る被覆層を形成することを特徴とする製銑用耐火物材料の製造法。」(特許請求の範囲)
(イ)「[実施例1-1]フエノール141g、ホルマリン(37%水溶液)118g、およびシユウ酸2gを100℃で加熱攪拌しながら3時間反応せしめた後、常圧脱水を行い、180℃まで濃縮した。得られたノボラツク樹脂は平均分子量720であつた。」(第1頁右欄第17行~第2頁左上欄第2行)
(ウ)「[実施例2-2]150℃に加熱したアルミナ40kgをワールミキサー中に投入し、実施例1-1で得た結合剤1.2kgをコートする。次に黒鉛2kgを加えてアルミナ表面に被覆させ、更にヘキサミン120g、水200gを投入し、崩解した所で取り出す。得られた黒鉛被覆耐火材料を150℃に加熱すると、強固な硬化物を得た。」(第2頁左下欄第5~12行)
(エ)「本発明方法の第2の特徴は、上記のような高速ミキサで短時間で混練することにより、熱硬化性の結合剤が完全に硬化しない状態でミキサから取り出す点にあり、得られる黒鉛被覆耐火材料は結合剤が半硬化の状態であり、表面は滑らかであるが多孔質の乾燥した粒状物で、黒鉛被覆層は骨材の表面に強固に接着している。」(第2頁右下欄第11~18行)
(オ)「また本材料にさらに黒鉛粉末および樹脂ワニスを加えて低速ミキサで混練すれば、黒鉛含有量の多い耐火物を従来よりも低圧で成形することができ、黒鉛粉末との接触面積が大きく黒鉛粉末も少量ですむので溶剤も少くてすむので得られる耐火物は気孔率が小さく、作業環境も著しく改善され、混練時間も短時間でよい。
こうして得られた耐火物は、黒鉛と骨材との結合力は従来品に比してはるかに強固であり、また二次結合剤と黒鉛被覆面との濡れが良いので黒鉛同志の結合も強固であり、二次結合剤の添加量も非常に少なくてすみ、成形時の充填率も良く、とくに焼成時にカーボンボンドが形成され易く高温時の強度を著しく向上し得るなどの利点がある。」(第3頁左上欄第6~20行)
(カ)「[実施例3-2]・・・改良品 黒鉛被覆電融アルミナ・・・(実施例2-2で得られたもの):72重量部、電融アルミナ・・・:25、天然黒鉛・・・:3、熱硬化性粉末樹脂(ノボラツク型フエノール樹脂ヘキサミン添加):5、エチレングリコール:4
上記配合物を常温でシンプソンミキサーにて混練し、バイブレーシヨンプレスにより65×114×230mm形状に成形、成形後100℃で24時間加熱し、300℃で15時間ベーキングした。」(第3頁右下欄第1行~第4頁左上欄第2行)
2.引用発明1の認定
記載事項(ア)-(エ)、(カ)によれば、引用例1には、実施例3-2において、
「150℃に加熱した電融アルミナである耐火骨材表面にノボラツク樹脂をコートし、次に黒鉛を加えてアルミナ表面に被覆し、ノボラツク樹脂が半硬化している黒鉛被覆電融アルミナを得た後、この黒鉛被覆電融アルミナに電融アルミナと天然黒鉛とノボラツク型フエノール樹脂である熱硬化性粉末樹脂とエチレングリコールを配合し、これを混練することによって耐火物用成形材料を製造する方法。」が記載されている(以下「引用発明1」という。)と認められる。
3.本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の耐火骨材の表面にコートされる「ノボラツク樹脂」は、本願発明1の「コーティング用粘結剤」に相当し、以下、同様に、「ノボラツク樹脂が半硬化している黒鉛被覆電融アルミナ」は「コーテッド耐火骨材」に、「を得た後」は「を調製し」に、「ノボラツク型フエノール樹脂である熱硬化性粉末樹脂」は「バインダー用粘結剤」に、「混練」は「混合」に、「成形材料」は「組成物」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の被覆されたノボラツク樹脂は、完全に硬化していない「半硬化」の状態の熱硬化性樹脂であるから、本願発明1の「未硬化で熱硬化性を有する熱硬化性樹脂」に相当する。
さらに、引用発明1において電融アルミナである耐火骨材をコートするノボラツク樹脂と、成形材料に配合されるノボラツク型フエノール樹脂は、共に熱硬化性を有するフエノール樹脂であるから、両者は本願発明1の「反応して結合するもの」に相当する。
してみれば、本願発明1と、引用発明1とは、
「耐火骨材の表面にコーティング用粘結剤を被覆してコーテッド耐火骨材を調製し、このコーテッド耐火骨材にバインダー用粘結剤を配合し、これを混合することによって組成物を製造する方法であって、コーティング用粘結剤は、未硬化で熱硬化性を有する熱硬化性樹脂であると共に、コーティング用粘結剤とバインダー用粘結剤は反応して結合するものであることを特徴とする組成物の製造方法。」である点で一致し、
本願発明1が、「コーティング用粘結剤からなる固形のコーティング層を被覆して」いるのに対し、引用発明1は、「半硬化の状態のノボラツク樹脂と黒鉛をコート」している点(相違点1)、本願発明1が、「コーテッド耐火骨材に液状のバインダー用粘結剤を配合し」ているのに対し、引用発明1は、「黒鉛被覆電融アルミナに熱硬化性粉末樹脂とエチレングリコールを配合し」ている点(相違点2)、本願発明1が、「耐火レンガ用」であるのに対し、引用発明1は、「耐火物用」である点(相違点3)で相違する。
4.相違点についての判断
(i)相違点1について
引用発明1は、コーティング層として、半硬化の状態のノボラツク樹脂と黒鉛をコートしており、記載事項(エ)によれば、「得られる黒鉛被覆耐火材料」は「表面は滑らかであるが多孔質の乾燥した粒状物」であるから、半硬化の状態のノボラツク樹脂は、固形のコーティング層といえる。
なお、本願の明細書の[0056]には、「また上記のように耐火骨材にコーティング用粘結剤を混合する際に、必要に応じて硬化剤や、耐火骨材とコーティング用粘結剤とを親和させるためのシランカップリング剤など各種のカップリング剤や、また黒鉛等の炭素質材料などを配合することもできる。」ことが記載されており、黒鉛の有無は差異にはならない。
したがって、この点は実質的な差異でない。
(ii)相違点3について
記載事項(カ)によれば、引用発明1の耐火物用成形材料を65×114×230mm形状(直方体)に成形し、ベーキングすることになるから、これは、耐火レンガに相当する。
したがって、この点は、実質的な相違点ではない。
(iii)相違点2について
記載事項(オ)によれば、「本材料にさらに黒鉛粉末および樹脂ワニスを加えて低速ミキサで混練」することが記載されている。
ここで、樹脂ワニスは、樹脂を溶剤に溶解させたものであることは周知であり、引用発明1におけるエチレングリコールが樹脂(ノボラツク型フエノール樹脂)の溶剤にあたることは明らかである。(なお、エチレングリコールがフエノール樹脂の溶剤として用いられることは、例えば、特開2007-204291号公報の段落【0014】に「前記ノボラック型フェノール樹脂(A)及びレゾール型フェノール樹脂(B)を溶解するために用いる有機溶剤は、沸点が高いものが好ましく、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられ、更に、前記グリコール類をメタノール、エタノール、ブタノールのような低級アルコールでエーテル化したカルビトール類やセロソルブ類を挙げることができ、好ましくは前記のノボラック型フェノール樹脂(A)及びレゾール型フェノール樹脂(B)の溶解性が良いことからエチレングリコールである。」と例示されるように周知の技術的事項である。)
してみれば、引用発明1において、結合材である熱硬化性粉末樹脂を予め溶剤であるエチレングリコールに溶解させて樹脂ワニスとした後に、耐火骨材と配合し、混練することは、引用例1に記載された技術的事項に基づいて当業者が適宜なし得る設計的事項である。
5.小括
以上のとおり、相違点1,3は実質的に相違点でないか、そうでないとしても当業者が容易に想到し得たものであり、相違点2は引用例1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1及び引用例1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5.請求人の主張について
請求人は平成29年8月8日付けで提出された、当審拒絶理由に対する意見書にて、上記相違点2について、本願発明1ではコーテッド耐火物に対して少量のバインダー用粘結剤を均一に分散させるためにバインダー用粘結剤を液状で使用しているものの、引用例1には、上記目的のために、熱硬化性粉末を溶剤に溶解させて樹脂ワニスとして使用することが記載されていないことから、本願発明1は、引用発明1及び引用例1の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない旨主張している。
しかしながら、記載事項(オ)によれば、「本材料にさらに黒鉛粉末および樹脂ワニスを加えて低速ミキサで混練すれば、・・・二次結合剤と黒鉛被覆面との濡れが良いので黒鉛同志の結合も強固であり、二次結合剤の添加量も非常に少なくてす」むことが記載されているから、二次結合剤は樹脂ワニスを指しているものと認められる。
そうすると、引用例1には、樹脂ワニスを用いることで、黒鉛被覆面との濡れが良いので、二次結合剤すなわちバインダー用粘結剤の添加量が少なくても黒鉛と骨材との強固に結合できるという効果が記載されているから、請求人の主張する目的、すなわち骨材に対して少量の二次結合剤を均一に分散させるために、樹脂ワニスを使用することも示唆されているといえる。
よって、上記の主張は採用できない。
第6.むすび
以上のとおり、本願発明1は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明及び拒絶理由について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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