特許拒絶査定不服審判
2016-015466
プリンターの制御方法およびプリンター
- 審判番号
- 2016-015466
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-052627外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月17日
- 審決日
- 2017年08月01日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】セイコーエプソン株式会社
- 【請求人代理人】渡辺 和昭
- 【請求人代理人】西田 圭介
- 【請求人代理人】仲井 智至
- 分類
- P18 .121-WY (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 52627「プリンターの制御方法およびプリンター」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日出願公開,特開2013-184416,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月9日の出願であって,平成27年2月12日付けで手続補正がされ,同年12月28日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年2月22日付けで手続補正がされ,同年7月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1-5に係る発明は,以下の引用文献1及び2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2006-159808号公報
2.特開2011-97171号公報
第3 本願発明
本願請求項1乃至5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明5」という。)は,平成28年10月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
印刷動作を含む処理動作を行うことが可能な動作モードから当該動作モードよりも消費電力の少ない省電力モードに稼動状態が切り替わると,前記稼動状態が前記省電力モードであることを示す省電力モード情報を表示部に表示するとともにスイッチの操作による入力を監視し,前記スイッチの操作による入力に基づいて前記稼動状態を前記省電力モードから前記動作モードに復帰させるプリンターの制御方法であって,
前記表示部に前記省電力モード情報が表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出されると,前記稼動状態を前記省電力モードに維持したままで前記表示部の表示を前記省電力モード情報からステータスに切り替え,
前記表示部に前記ステータスが表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出されると,前記稼動状態を前記省電力モードから前記動作モードに切り替え,
前記稼動状態が前記省電力モードから前記動作モードに切り替わると,前記表示部に前記ステータスが表示されているときに検出された前記入力に基づく処理動作を行い,
前記省電力モード情報を第1表示形態によって前記表示部に表示し,前記ステータスを前記第1表示形態とは異なる第2表示形態によって前記表示部に表示し,
前記第1表示形態による前記表示部の消費電力は,前記第2表示形態による前記表示部の消費電力以下であることを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項2】
請求項1において,
前記表示部の表示が前記省電力モード情報から前記ステータスに切り替わると,前記表示部の表示が前記ステータスとなってからの経過時間を計測しており,
前記経過時間が予め設定した設定時間を越えるまでの間に前記スイッチの操作による入力が新たに検出されない場合には,前記表示部の表示を前記ステータスから前記省電力モード情報に戻し,
前記表示部に前記省電力モード情報が表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出されると,前記稼動状態を前記省電力モードに維持したままで前記表示部の表示を前記省電力モード情報から前記ステータスに切り替えることを特徴とするプリンターの制御方法。
【請求項3】
印刷動作を含む処理動作を行うことが可能な動作モードと当該動作モードよりも消費電力の少ない省電力モードとの間で稼動状態を切り替えるプリンターにおいて,
表示部と,
スイッチと,
前記省電力モードにおいて前記スイッチの操作による入力を監視している監視部と,
前記稼動状態が前記動作モードから前記省電力モードに切り替わると前記表示部に当該稼動状態が当該省電力モードであることを示す省電力モード情報を表示するとともに,前記省電力モードのときに前記スイッチの操作による入力が検出されると前記省電力モード情報に替えて前記表示部にステータスを表示する表示制御部と,
前記省電力モードにおいて前記表示部に前記省電力モード情報が表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出された場合には前記稼動状態を当該省電力モードに維持し,前記省電力モードにおいて前記表示部に前記ステータスが表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出された場合には前記稼動状態を当該省電力モードから前記動作モードに切り替える稼動状態制御部と,
前記省電力モードにおいて前記表示部に前記省電力モード情報が表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出された場合には当該入力に基づく処理動作を行わず,前記省電力モードにおいて前記表示部に前記ステータスが表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出された場合には前記稼動状態が当該省電力モードから前記動作モードに切り替えられた後に当該入力に基づく処理動作を行う処理部と,を備え,
前記表示制御部は,前記省電力モード情報を第1表示形態によって前記表示部に表示し,前記ステータスを前記第1表示形態とは異なる第2表示形態によって前記表示部に表示し,
前記第1表示形態による前記表示部の消費電力は,前記第2表示形態による前記表示部の消費電力以下であることを特徴とするプリンター。
【請求項4】
請求項3において,
前記省電力モードにおいて前記表示部の表示が前記省電力モード情報から前記ステータスに切り替わると,前記表示部の表示が前記ステータスとなってからの経過時間を計測するタイマーを有し,
前記表示制御部は,前記経過時間が予め設定した設定時間を越えるまでの間に前記スイッチの操作による入力が新たに検出されない場合には,前記表示部の表示を前記ステータスから前記省電力モード情報に戻すことを特徴とするプリンター。
【請求項5】
請求項3において,
前記表示部は,1つまたは複数のLEDを備え,
前記第1表示形態は,全てのLEDの消灯,或いは,1つのLEDの点灯であることを特徴とするプリンター。」
第4 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0009】
本発明では上記のような状況を鑑み,省電力状態にある機器に対して使用者による操作パネルからの入力が行われた場合に一部の機構のみを省電力状態から復帰した後,一定時間内に次の入力があった場合のみ全機構を省電力状態から復帰するようにし,一定時間内に次の入力がない場合は再び全機構を省電力状態に戻すように構成するプリンタの省電力制御方法を提供することを目的とする。」
イ 「【0014】
以下に図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。本実施例では対象とする機器をプリンタとして説明する。またプリンタの通常の電力状態を「通常電力モード」,省電力状態を「省電力モード」とし,省電力モードのうち全体的に省電力状態に移行する場合を「全省電力モード」,プリンタの印刷機構のみを省電力状態に移行する場合を「半省電力モード」と定義する。
【0015】
図1は本発明を実施する機器の基本的構成を示すブロック図である。1は印刷指示などの機器の各種の機能の実行指示を行うための操作部である。操作部1は複数個のキー,ボタン,スイッチなどから構成される。2は機器の状態や各種の操作結果を使用者に通知するための表示部である。表示部2は液晶パネル,LEDなどで構成される。
【0016】
3はホスト機器との通信を行う通信部である。通信部3はシリアルポート,LAN,USBなど各種のインタフェースの一つまたは複数から構成される。ホスト機器から送られてくる印刷データを周辺機器側に入力する場合や,ホスト機器からの問い合わせに対する応答を行う場合に使用する。4は機器の各機能の実行を行う制御部である。制御部4は操作部1や通信部3からの各種の入力動作に対応して各種の出力動作の制御や,機器の省電力のための各種の制御を行う。各種の制御の手順はROM5内に含まれる制御プログラムに記憶されている。
【0017】
5は記憶装置の一種であるROMである。ROM5は書きこみが不可能な読み出し専用記憶装置であり,制御部4を制御するプログラムなどが記憶されている。6は記憶装置の一種であるRAMである。RAM6は書き換えが可能な記憶装置であり,制御部4が各種制御を行う際に必要となる変数などで使用したり,ホスト機器から送られてくる印刷データを一時的に蓄えたりして使用する。
【0018】
7は経過時間を計測するタイマーである。タイマー7は機器の制御のタイミングの調整で使用されたり,各種の省電力モードと通常電力モードの切り替え時間の計測で使用されたりする。8は印刷を実行する印刷部である。印刷部8は印刷ヘッド,インク,紙送り装置などで構成され,ホスト機器から送られてくる印刷データなどの印刷処理を実施する。」
ウ 「【0019】
図2は本発明に係わる機器の全省電力モード時の状態の一例を示す図である。11~18の各ブロックは図1の1~8の各ブロックと同じものを意味しており,図1を通常電力モードの状態であるとした時に対して,全省電力モード時の状態を示す図である。各ブロックの背景色が省電力モード時の状態を示しており,背景が白色であるブロックは供給される電力のままのフルパワー状態,背景が薄い灰色であるブロックは一部もしくは全部が省電力状態である省電力状態,背景が濃い灰色であるブロックは電力が供給されていない状態である電力オフ状態をそれぞれ示している。
【0020】
通常電力モード時には図1に示すように全ブロックがフルパワー状態である。全省電力モード時には図2に示すように操作部11,タイマー17ではフルパワー状態,表示部12,通信部13,制御部14,RAM16では省電力状態,ROM15,印刷部18では電力オフ状態になっている。操作部11,タイマー17がフルパワー状態,及び通信部13が省電力状態であるのは,省電力モードを終了するイベントの発生を検知するためである。制御部14,RAM16が省電力状態なのは,省電力モードを終了した場合の通常電力モードへの復帰処理を速やかに実施するためである。表示部12が省電力状態なのは,使用者に対し現在の機器の状態を示すためである。ROM15,印刷部18が電力オフ状態になっているのは,全省電力モード時には使用されないためである。」
エ 「【0021】
図3は本発明に係わる機器の半省電力モード時の状態の一例を示す図である。図2と同様に各ブロックの背景色が省電力モード時の状態を示しており,19に示す印刷部以外の状態は図1の通常電力モードと同様な状態になっている。印刷部19だけが電力オフ状態になっているのは,機器の各機構の中で印刷部の電力消費が最も高いことと,その起動時間に最も時間がかかることが原因となっている。」
オ 「【0022】
図4は本発明に係わる機器の操作パネルの一例を示す図である。操作パネルは21~23からなる表示部2と,24~28からなる操作部1から構成されている。21は機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示する液晶パネルである。22は使用者に対する警告が表示されている時に点滅するメッセージ用のLEDである。このLEDは機器が省電力モードである時には点灯し,省電力モードであることを示す役割も持っている。23は印刷データの受信中に点滅するデータ用のLEDである。24は印刷を強制的に中止したり,メニュー操作を途中で中止する時に押下する中止ボタンである。25はメニュー操作を行う時に項目選択を切り替えるために押下する四方向ボタンである。」
カ 「【0024】
図5は本発明に係わる機器の制御手順の概略を示すフローチャートである。使用者がプリンタ機器の電源スイッチをオンにした場合に図5のフローチャートの処理が開始する。ステップS101では機器の各種の初期化を実施する。初期化処理は制御プログラムなどのソフトウェア的な処理や,機器内の各種の装置のハードウェア的な処理からなり,通信部3や印刷部8などの機構を使用可能になるように処理する。同時にタイマー7におけるカウンタの値を初期設定した後にカウントを開始する。ステップS102では使用者の設定に従い通信部3においてホスト機器との通信回線を接続しようとする。ここでホスト機器側が応答しない場合にはオフライン状態のまま次の処理を続ける。
【0025】
ステップS103では機器に対する使用者からの指示があるかどうかを調べる。具体的には通信部3においてホスト機器との通信回線にデータが着信しているかを調べたり,操作部1から入力操作が行われているかを調べたりする。調べた結果,受信したデータ情報や押下されているボタン情報はその内容をRAM6内のバッファに保持する。ステップS104ではステップS103での処理結果を調べ,使用者からの指示があったならばステップS105へ進み,そうでなかったならばステップS109へ進む。ステップS105ではステップS103での処理結果を調べ,使用者からの指示が電源ボタンの押下であったならばステップS110へ進み,そうでなかったならばステップS106へ進む。使用者からの指示が電源ボタンの押下である場合は強制的に全省電力モードへと移行する。
【0026】
ステップS106ではステップS103でRAM6内のバッファに保持したデータもしくはボタン入力を調べ,その要求内容に従ってプリンタの各種の処理を実行する。ステップS107ではステップS106での処理内容を調べ,印刷処理を行うものであった場合にはステップS108へ進み,そうでなかったならばステップS109へ進む。ステップS108ではタイマー7におけるカウンタの値を初期値0に設定し,その後ステップS103へ戻り処理を繰り返す。このカウンタはプリンタの印刷処理が停止してからの時間を計測していることから,ステップS106及びステップS107で印刷処理が実施されたと判定されたためにその値をリセットする。ステップS109ではタイマー7におけるカウンタの値が一定の値を超えているかどうかを調べ,超えている場合はステップS110へ進み,そうでなかったならばステップS103へ戻り処理を繰り返す。」
【0027】
本実施例の機器では通常電力モードにおいて印刷処理がある一定時間ない場合に全省電力モードに移行するとする。この一定時間の単位は数十分単位である場合が多く,その値は機器により固定の値であったり,使用者により任意の値に設定されていたりする。ステップS110では印刷部8への電源供給を遮断し,停止処理をする。本機器では省電力効率を上げるために最も電力消費の高い印刷部への電力供給を停止することとする。状態としてはこの段階で図3に示す半省電力モードの状態になる。
【0028】
ステップS111では機器の状態を通常電力モードから全省電力モードへ移行するように制御する。内容的には図3の状態から図2の状態になるように制御する。この結果,制御部4もスリープ状態となるため,CPUによる制御は停止する。通信部3を介してのホスト機器側からのデータの受信や,使用者による操作部1の操作などのイベントが発生すると,割り込み信号が発生してステップS112以降の処理へ遷移する。ステップS112では機器の状態を全省電力モードから半省電力モードへ移行するように制御する。内容的には図2の状態から図3の状態になるように制御する。
【0029】
ステップS113ではステップS111で発生した割り込み信号から発生したイベントの内容を調べ,その要求内容に従ってプリンタの各種の処理を実行する。ステップS114ではステップS111で発生した割り込み信号から発生したイベントの内容を調べ,それが使用者による操作部1の操作であればステップS115へ進み,それ以外(公報においては「それ例外」と記載されているが,当審で誤記と認めて前記のとおり認定した。)であったならばステップS117へ進む。ステップS115では通信部3あるいは操作部1からの次のイベントの発生を一定時間待つ。この一定時間の単位は数秒単位で,その値は機器により固定の値であったり,使用者により任意の値に設定されていたりする。
【0030】
ステップS116ではステップS115で次のイベントが発生したかどうかを調べ,発生したならばステップS117へ進み,そうでなかったならばステップS111へ戻る。ステップS117では印刷部8への電力供給を開始し,起動する。この結果,機器の状態が半省電力モードから通常電力モードへ移行する。内容的には図3の状態から図1の状態になる。ステップS118ではタイマー7におけるカウンタの値を初期値0に設定し,その後ステップS103へ戻り処理を繰り返す。カウンタの値を初期設定し,再び省電力モードへ移行するまでの時間計測を開始する。」
上記の各摘記事項から,引用文献1には以下の技術事項が記載されていると認められる。
(ア)
・プリンタの省電力制御方法に係る発明が記載されている。
(イ)
・プリンタの基本的構成は,操作部,表示部,通信部,制御部,ROM,RAM,タイマー,印刷部である。
・電力モードには,通常電力モード,省電力モードがある。省電力モードは,全省電力モードと半省電力モードからなる
・通常の電力状態は「通常電力モード」,プリンタの基本的構成を全体的に省電力状態とするのは「全省電力モード」,プリンタの基本的構成のうちプリンタの印刷機構のみを省電力状態とするのは「半省電力モード」である。
(ウ)
・プリンタの各基本的構成において,供給される電力のままであるのをフルパワー状態,供給される電力の一部もしくは全部が省電力状態であるのを省電力状態,電力が供給されていない状態を電力オフ状態とする。
・通常電力モード時は,プリンタの基本的構成の全てがフルパワー状態である。
・全省電力モード時は,プリンタの基本的構成のうち,操作部,タイマーがフルパワー状態,表示部,通信部,制御部,RAMが省電力状態,ROM,印刷部が電力オフ状態である。
・表示部は,全省電力モード時に,供給される電力の一部もしくは全部が省電力状態である省電力状態となっているが,これは,使用者に対し現在の機器の状態を示すためである。
(エ)
・半省電力モード時は,プリンタの基本的構成のうち,印刷部だけが電力オフ状態であって,それ以外は通常電力モードと同様な状態,つまりフルパワー状態である。
(オ)
・操作パネルは表示部と,操作部から構成される。
・表示部のうち,液晶パネルは機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示するものであり,メッセージ用のLEDは使用者に対する警告が表示されている時に点滅するものである。
・メッセージ用のLEDは機器が省電力モードである時には点灯し,省電力モードであることを示す役割も持っている。
(カ)
・使用者からの指示が電源ボタンの押下の場合も,プリンタの印刷処理が停止してからの時間を計測するタイマー7のカウンタの値が一定の値を超えた場合も,図5のフローチャートにおけるステップS110へ進み,このステップ110は,印刷部8への電源供給を遮断し,停止処理をするものであって,プリンタの電力モードとしては半省電力モードの状態である。
・ステップ110を経て,ステップS111に進むと,プリンタの電力モードは半省電力モードから全省電力モードに移行する。
・全省電力モード時に,ホスト機器側からのデータの受信や,使用者による操作部の操作などのイベントが発生すると,プリンタの電力モードは全省電力モードから半省電力モードへ移行する。
・全省電力モード時に発生したイベントが,使用者による操作部の操作であれば,ステップS115へ進む,つまり次のイベントの発生を一定時間待ち,ホスト機器側からのデータの受信を含む使用者による操作部の操作以外のイベントであれば,ステップS117に進む,つまり印刷部を起動する。
・次のイベントの発生を待つ一定時間の間に,次のイベントが発生すればステップS117へ進む,つまり印刷部を起動し,プリンタの電力モードは半省電力モードから通常電力モードへ移行する。
・次のイベントの発生を待つ一定時間の間に,次のイベントが発生しなければステップS111へ戻る,つまりプリンタの電力モードは半省電力モードから全省電力モードへ移行する。
したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「印刷指示などの機器の各種の機能の実行指示を行うための複数個のキー,ボタン,スイッチなどから構成される操作部と,
機器の状態や各種の操作結果を使用者に通知するための液晶パネル,LEDなどで構成される表示部と,
ホスト機器との通信を行う通信部と,
機器の各機能の実行を行う制御部と,
記憶装置の一種であるROMと,
記憶装置の一種であるRAMと,
経過時間を計測するタイマーと,
印刷を実行する印刷部と,を基本的構成とするプリンタにおいて,
通常電力モード時は全てがフルパワー状態であり,
全省電力モード時は,操作部,タイマーがフルパワー状態,表示部,通信部,制御部,RAMが省電力状態,ROM,印刷部が電力オフ状態になっており,
半省電力モード時は,操作部,タイマー,表示部,通信部,制御部,RAM,ROMがフルパワー状態,印刷部が電力オフ状態になっており,
液晶パネルは,機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示するためのものであって,全省電力モード時において電力オフ状態ではなく省電力状態であるため,使用者に対し現在の機器の状態を示すことができ,
LEDは,使用者に対する警告が表示されている時に点滅するメッセージ用のLEDであって,機器が省電力モードである時には点灯し,省電力モードであることを示すものであって
電源オン状態で通常電力モードの時に電源ボタンを押下する,もしくは,プリンタの印刷処理が停止してからの時間を計測するカウンタの値が一定の値を超えると,印刷部への電源供給を遮断し,停止処理を行うことで半省電力モードとした後に,全省電力モードへ移行し,
ホスト機器側からのデータの受信や,使用者による操作部の操作などのイベントが発生すると,割り込み信号が発生して,全省電力モードから半省電力モードへ移行するように制御され,
発生したイベントの内容が使用者による操作部の操作であれば,操作部からの次のイベントの発生を一定時間待ち,イベントが発生しなければ全省電力モードへ戻り,
発生したイベントの内容が使用者による操作部の操作であって,操作部からの次のイベントの発生が一定時間内にあった場合,又は発生したイベントの内容が使用者による操作部の操作以外であった場合には,印刷部への電力供給を開始し,起動して,半省電力モードから通常電力モードへ移行する,プリンタの省電力制御方法。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
キ 「【0105】
[動作]
以上のような構造およびフローチャートに基づく,本実施の形態に係る画像形成装置150の動作について,図10~図12に示す表示パネル172の表示例を用いて説明する。なお,画像形成装置150の表示パネル172における初期画面は,上述した第1の実施の形態における図8に示す画面である。
【0106】
図8に示す画面が表示されている状態で,操作パネル170のハードウェアキーまたはタッチパネル型の表示パネル172をユーザが押下しない状態で(S1000にてNO),予め定められた時間が経過すると(S1010にてYES),非省エネモードから省エネモードへ移行して,定着装置234への電力供給が停止されるとともに,表示パネル172にスクリーンセーバが表示される(S1020)。このときの表示パネル172の表示例を図10に示す。」
ク 「【0107】
図10に示すように表示パネル172には,「ただいま○○キャンペーン中 ○○株式会社」と表示されるとともに「省エネモードで実行可能な処理を行なう場合にはこちらをタッチ」と表示されている。この「こちらをタッチ」の部分が特定キーの部分である。
【0108】
この図10に示す特定キーをユーザが押下すると(S1030にてYES),画像形成装置150は,省エネモードを維持した状態で,省エネモードで実行可能な機能を選択する画面を,表示パネル172に表示する(S2000)。このときの表示パネル172の表示例を図11および図12に示す。」
ケ 「【0109】
この図11に示す表示パネル172の画面は,コピーモードが選択されている場合の画面例であって,図12に示す表示パネル172の画面は,FAXモード(ファクス/イメージ送信モード)が選択されている場合の画面例である。これらの図においては,選択されているモードの選択ボタンが二重枠線で示されている。なお,図11に示すコピーモードにおいては,記録用紙に画像を形成する機能(印刷機能)は,選択することも実行することもできない。また,これらの図に示すように,表示パネル172には,「復帰」ボタンが表示されている。
【0110】
これらの図11および図12に示すいずれかの機能をユーザが選択すると(S2010にてYES),省エネモードで(省エネモードを維持した状態)で,選択された機能を実行する(S2020)。
【0111】
これらの図11または図12に示す「復帰」ボタンをユーザが押下すると(S2030にてYES),画像形成装置150は,省エネモードで(省エネモードを維持した状態)で,スクリーンセーバを,表示パネル172に表示する(S1020)。このときの表示パネル172の表示例は上述した図10である。なお,図11または図12に示す「復帰」ボタンをユーザが押下しないと(S2030にてNO),画像形成装置150は,省エネモードで,図11または図12に示す画面を,表示パネル172に表示し続ける(S2000)。また,図11または図12に示す「復帰」ボタンをユーザが押下しない状態で予め定められた時間が経過すると,画像形成装置150は,省エネモードで,図10に示す画面に移行するようにしても構わない。いずれにしても,画像形成装置150において,省エネモードは解除されない。」
コ 「【0112】
一方,図10に示す特定キー以外をユーザが押下すると(S1040にてYES),画像形成装置150は,省エネモードを解除して定着装置234への電力供給を再開して,ログイン画面を表示パネル172に表示する(S1070)。これ以降の動作は,上述の第1の実施の形態と同じであるため,ここでは繰返して説明しない。」
上記の各摘記事項から,引用文献2には以下の技術事項が記載されていると認められる。
(キ)
・操作パネル170のハードウェアキーまたはタッチパネル型の表示パネル172をユーザが押下しない状態で予め定められた時間が経過する,つまり,一定時間操作がなされないと,画像形成装置150の表示パネル172に表示されていた初期画面に替わって,図10に示されるスクリーンセーバーが表示される。
・画像形成装置150の表示パネル172にスクリーンセーバが表示されるときは,画像形成装置150は,非省エネモードから省エネモードへ移行して,定着装置234への電力供給が停止される。
(ク)
・図10に示す表示パネル172,つまりスクリーンセーバが表示される表示パネル172には「こちらをタッチ」を含む表示があり,「こちらをタッチ」の部分が,特定キーである。
・特定キーをユーザが押下すると,図11および図12に示す省エネモードで実行可能な機能を選択する画面を表示パネル172に表示する。
・省エネモードで実行可能な機能を選択する画面を表示している間も,省エネモードは維持されている。
(ケ)
・図11および図12に示す省エネモードで実行可能な機能を選択する画面には,「復帰」ボタンが表示されている。
・「復帰」ボタンをユーザが押下すると,画像形成装置150は,省エネモードで実行可能な機能を選択する画面に替えて,スクリーンセーバを,表示パネル172に表示する。
・「復帰」ボタンをユーザが押下して,スクリーンセーバを,表示パネル172に表示されても,省エネモードは維持されている。
・省エネモードで実行可能な機能を選択する画面が表示された状態で,「復帰」ボタンをユーザが一定時間押下しないと,スクリーンセーバを,表示パネル172に表示するようにしてもよい。
(コ)
・図10に示す特定キー以外,つまりスクリーンセーバ内の特定キー以外の領域をユーザが押下すると,画像形成装置150は,省エネモードを解除して定着装置234への電力供給を再開して,ログイン画面を表示パネル172に表示する。
したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「画像形成装置の表示パネルには初期画面が表示され,該画面が表示されている状態で,操作パネルのハードウェアキーまたはタッチパネル型の表示パネルをユーザが押下しない状態で,予め定められた時間が経過すると
非省エネモードから省エネモードへ移行して,定着装置への電力供給が停止されるとともに,表示パネルにスクリーンセーバが表示され,該スクリーンセーバ内には,特定キーが表示されており,
該特定キーをユーザが押下すると,画像形成装置は,省エネモードを維持した状態で,省エネモードで実行可能な機能を選択する画面を,表示パネルに表示し,その際表示パネルには,「復帰」ボタンが表示されており,
いずれかの機能をユーザが選択すると,省エネモードで(省エネモードを維持した状態)で,選択された機能を実行し,
「復帰」ボタンをユーザが押下すると,画像形成装置は,省エネモードで(省エネモードを維持した状態)で,スクリーンセーバを,表示パネルに表示し,
「復帰」ボタンをユーザが押下しない状態で予め定められた時間が経過すると,画像形成装置は,省エネモードで,スクリーンセーバを示す画面に移行し,
スクリーンセーバを表示した状態で,特定キー以外をユーザが押下すると,画像形成装置は,省エネモードを解除して定着装置への電力供給を再開して,ログイン画面を表示パネルに表示する,画像形成装置。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「プリンタ」は,前者の「プリンター」に相当する。
後者の「プリンタの省電力制御方法」は,前者における「プリンターの制御方法」が,省電力に係る制御方法であるので,前者の「プリンターの制御方法」に相当する。
後者の「操作部」は,スイッチを含むものであるから,前者の「スイッチ」に相当する。
後者の「通常電力モード」が,前者の「動作モード」に,前者の「省電力モード」が,後者の「省電力モード」に相当することは自明である。
後者の表示部の「LED」は,機器が省電力モードである時には点灯し,省電力モードであることを示すことができ,後者の表示部の「液晶パネル」は,機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示するためのものであって,全省電力モード時においても使用者に対し現在の機器の状態を示すことができるのであるから,後者のLED及び液晶パネルを含めた「表示部」は,前者の「表示部」に相当し,該「液晶パネル」における機器の現在の状態やメニューの表示は,前者の「ステータス」の表示に相当することは自明である。
後者において「液晶パネル」は,機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示するためのものであって,全省電力モード時においても使用者に対し現在の機器の状態を示すことを踏まえると,前者の「ステータス」の表示に相当する表示は,常時行われているといえる。
後者において,全省電力モード中に使用者による操作部の操作などのイベントが発生すると,割り込み信号が発生するのであるから,前者は,後者の「(省電力モード中の)スイッチの操作による入力を監視」するに相当する構成を有していることは自明である。
後者において,「省電力モード」は「全省電力モード」と「半省電力モード」を有するものであるが,「全省電力モード」と「半省電力モード」も,「省電力」の度合いに差があるとしても,「通常電力モード」に比べて「省電力」となっていることは自明であり,「全省電力モード」から「半省電力モード」へ,又,「半省電力モード」から「全省電力モード」へ移行した場合であっても,「省電力モードに維持したまま」といえる。
後者において,全省電力モード中に使用者による操作部の操作などのイベントが発生し,さらに操作部からの次のイベントの発生が一定時間内にあった場合,印刷部8への電力供給を開始し,起動して,通常電力モードへ移行するのであるから,後者は,前者の「スイッチの操作による入力に基づいて稼動状態を省電力モードから動作モードに復帰」させるに相当する構成を有していることは自明である。
後者において,省電力モードであることを表示部のメッセージ用のLEDの点灯で表示し,ステータスに相当する情報を表示部の液晶パネルで表示しているから,「省電力モード情報を第1表示形態によって表示部に表示し,ステータスを第1表示形態とは異なる第2表示形態によって前記表示部に表示」しているといえる。
したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「印刷動作を含む処理動作を行うことが可能な動作モードから当該動作モードよりも消費電力の少ない省電力モードに稼動状態が切り替わると,前記稼動状態が前記省電力モードであることを示す省電力モード情報を表示部に表示するとともにスイッチの操作による入力を監視し,前記スイッチの操作による入力に基づいて前記稼動状態を前記省電力モードから前記動作モードに復帰させるプリンターの制御方法であって,
前記表示部に前記省電力モード情報が表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出されると,前記稼動状態を前記省電力モードに維持し,
前記表示部に前記ステータスが表示されているときに前記スイッチの操作による入力が検出されると,前記稼動状態を前記省電力モードから前記動作モードに切り替え,
前記稼動状態が前記省電力モードから前記動作モードに切り替わると,前記表示部に前記ステータスが表示されているときに検出された前記入力に基づく処理動作を行うプリンターの制御方法。」
(相違点)
(相違点1)表示部の表示に関して,本願発明1は「表示部に省電力モード情報が表示されているときにスイッチの操作による入力が検出されると,稼動状態を前記省電力モードに維持したままで前記表示部の表示を省電力モード情報からステータスに切り替え」るのに対し,引用発明1は表示部の表示を省電力モード情報からステータスに切り替えるかに関して不明である点。
(相違点2)表示部の表示に関して,本願発明1は,「省電力モード情報を第1表示形態によって表示部に表示し,ステータスを前記第1表示形態とは異なる第2表示形態によって前記表示部に表示」することを発明特定事項としているものである。これに対して,引用発明1は,液晶パネルが機器の現在の状態(ステータスに相当する。)を表示し,LEDが省電力モードであることを表示しており,引用発明1のLEDの表示が第1表示形態に,液晶パネルの表示が第2表示形態に相当するとすれば,形式的には本願発明1の上記の発明特定事項は,引用発明1においても備わっているとみることができる。しかしながら,実質的にみると,上記相違点1において述べたように,本願発明1の第1表示形態と第2表示形態は切り替えて表示されるものであるから,この前提において,引用発明1が上記の本願発明1の発明特定事項を備えているかに関して不明である点。
(相違点3)本願発明1は「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」であるのに対し,引用発明1は,その点が明らかではない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点3について検討すると,相違点3に係る本願発明1の「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」であるという発明特定事項は,引用文献1及び2には記載されておらず,本願出願日前において周知技術であるともいえず,また当業者にとって設計的事項とする根拠もない。
そして,本願発明1は上記発明特定事項を備えることによって,「省電力モードにおける電力の消費をより抑制することが可能となる」という顕著な効果を奏するものである。(本願明細書,段落【0013】参照。)
したがって,上記相違点1及び2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」と同一の発明特定事項を備え,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.本願発明3について
本願発明3は装置に係る発明であって,本願発明1の「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」という発明特定事項と,実質的に同一の発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
4.本願発明4及び5について
本願発明4及び5は,本願発明3の「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」と同一の発明特定事項を備え,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明3と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により,本願発明1乃至5は「第1表示形態による表示部の消費電力は,第2表示形態による表示部の消費電力以下」という発明特定事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-015466