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特許拒絶査定不服審判

2016-013489

感知センサー及び感知装置

審判番号
2016-013489
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-254326
請求日
2016年09月08日
審決日
2017年09月11日
公報発行日
2017年11月24日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
  • 【請求人】日本電波工業株式会社
  • 【請求人代理人】井上 俊夫
審判長/審判官
  • 審判長 伊藤 昌哉
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P18 .121-WY (G01N) / P18 .537-WY (G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-254326「感知センサー及び感知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 2日出願公開、特開2012-145566、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年11月21日(優先権主張 平成22年12月24日)の出願であって、平成27年8月13日付けで拒絶理由が通知され、同年10月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年4月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月13日付けで同年4月8日付け手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、当審において平成29年6月1日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月26日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の理由及び当審拒絶理由の概要 1 原査定の理由の概要 (進歩性)この出願の請求項1~6に係る発明は、下記の引用文献1~4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2009-206792号公報 2.特開2005-274165号公報 3.特表2010-534831号公報 4.特開2008-058086号公報 2 当審拒絶理由の概要 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には、「圧電片に励振電極を設けて構成され、各々前記凹部を塞ぎ且つ振動領域が凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、励振電極が前記接続端子に電気的に接続される第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子と」と記載されているが、ここでの「第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子」の「各々」が「前記凹部を塞」ぐとは、一の凹部に対して「第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子」が協同して覆うものや、複数ある凹部の各々に対して「第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子」が別々に覆うものも含まれるため、当該記載で、どのようなものを特定しようとしているのか不明である。 よって、請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2に係る発明は、明確であるとはいえない。 第3 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成29年7月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 発振周波数を測定するための測定器に接続される接続端子を備えると共に一面側に凹部が形成された配線基板と、 前記凹部を塞ぐ圧電片に各々の励振電極を設けて構成され、各々の振動領域が前記凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、前記励振電極が前記接続端子に電気的に接続される第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子と、 第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子を含む配線基板の一面側の領域を覆うように設けられた流路形成部材と、 前記流路形成部材に開口した試料液の注入口と、 前記流路形成部材に設けられ、前記注入口から注入された試料液が貯留される廃液領域と、 前記配線基板と流路形成部材との間に形成され、前記注入口から両方の圧電振動子の一面側を介して廃液領域へ毛細管現象により試料液を流通させるための流路と、 前記流路に試料液を流通させるために、前記廃液領域に接続するように流路形成部材に開口した通気口と、 前記第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子のうち一方のみに前記流路に面して設けられ、試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜と、 を備え、 前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極は、当該第1の圧電振動子及び当該第2の圧電振動子に共通の前記圧電片に形成されており、 前記流路は、前記注入口から前記共通の圧電片の一面の一端部へ下方に向けて試料液を流通させる供給路と、前記共通の圧電片の一面の他端部上から前記廃液領域へ向けて上方へ前記試料液を流通させる排出路と、前記共通の圧電片の一面の一端部上から他端部上へ向けて当該共通の圧電片の一面に沿って当該試料液を流通させると共に、前記供給路と前記排出路とを接続する面上流路と、を備え、 前記流路形成部材には、前記共通の圧電片を前記配線基板に押圧すると共に、前記共通の圧電片の一面に向かって見て前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極を囲むように、前記配線基板へ向けて突出して内側に前記面上流路を形成し、前記供給路により前記共通の圧電片の一面に供給された試料液が前記排出路によって前記共通の圧電片の一面から排出されるまでに当該共通の圧電片の外側に流れることを防ぐための環状の規制部が設けられ、 前記共通の圧電片の一面に向かって見て当該共通の圧電片の一端部から他端部へ前記試料液の流通方向に沿って仮想の直線を引いたときに、前記面上流路は当該直線に対して左右対称に形成され、前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極は当該直線の左右に各々配置されると共に、当該直線に対して互いに左右対称のレイアウトとなるように形成されていることを特徴とする感知センサー。 【請求項2】 請求項1に記載の感知センサーと前記測定器とを含んだことを特徴とする感知装置。」 第4 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、下記2の引用発明に関連する箇所に当審において付したものである。) (引1ア) 「【0014】 (第1の実施形態) 以下、本実施の形態に係わる圧電振動子である水晶振動子を備えた感知装置として、例えば血液あるいは血清中の特定の抗原を感知する機能を備えた感知装置5について説明する。図1の外観構成図に示すように、感知装置5は発振回路ユニット4と装置本体6とを備えており、発振回路ユニット4はケーブル例えば同軸ケーブル51を介して装置本体6に対して着脱自在に接続されている。装置本体6の筐体61前面に設けられた表示部62は、例えば周波数あるいは周波数の変化分等の測定結果を表示する役割を果たし、例えばLED表示画面や液晶表示画面により構成されている。 【0015】 発振回路ユニット4には、図2に外観構成を示す水晶センサ3が着脱自在に接続される。水晶センサ3は後述のように圧電発振回路である水晶発振回路40を構成し、一端側が接続端子をなすプリント基板31の上にゴムシート32を重ね、このゴムシート32に設けられた不図示の凹部を塞ぐように後述の水晶振動子24を設け、更にゴムシート32の上から上蓋ケース33を装着した構成となっている。当該構成により水晶振動子24の下面側の前記凹部が気密空間となってランジュバン型の水晶センサが構成される。上蓋ケース33には試料溶液の注入口34と試料溶液が注入されたことを確認する確認口35とが設けられており、注入口34から試料溶液を注入することによって水晶振動子24の上面側の空間に試料溶液を満たすことができる。 【0016】 水晶センサ3に設けられた水晶振動子24は背景技術の欄で説明したように、例えばATカットにより形成された円形の水晶片2と、例えば金からなる電極21、22、23とから構成されている。図3(a)、(b)、(c)は水晶振動子24の夫々表面、裏面、側面を示している。水晶片2の表面側にはその直径方向に沿って帯状の凹部26が形成されている。また、当該水晶片2において凹部26及び当該凹部26の延長領域を挟む半円状の2つの領域は第1の振動領域25a及び第2の振動領域25bであり、この例ではこれらの振動領域25a、25bは互いに対となっている。 【0017】 第1の振動領域25aの表面、第2の振動領域25bの表面には夫々半円状の前記電極21、22が形成されており、水晶片2の裏面側には振動領域25a、25bにより共用される円形の電極23が設けられている。そして電極21、23により第1の振動領域25aが、電極22、23により第2の振動領域25bが夫々個別に振動し、周波数信号を出力することができる。背景技術の項目で述べたように、電極21、22は、周波数温度特性を揃えるという目的を逸脱しない範囲において、互いの厚さをわずかに変えて主モードの発振周波数を例えば50kHz異ならせている。以下、第1の振動領域25aからの出力をチャンネル1、第2の振動領域25bからの出力をチャンネル2とする。 ・・・中略・・・ 【0020】 図2、図3に示すように励振用の電極21、22はプリント基板31上に延伸された電極である接続端33a、33bと各々接続されており、また励振用の電極23は同じくプリント基板31上に設けられた電極である接続端33cと接続されている。そして基板31上にはインダクタ27が設けられており、インダクタ27は接続端33aと接続端33bとに接続されている。 ・・・中略・・・ 【0023】 前記水晶振動子24の第1の振動領域25aに設けられた電極21には、例えば図7(a)に示すように既述の注入口34に注入される試料溶液中に含まれる感知対象物71と反応しない抗体(タンパク質)からなるブロック層72が形成されている。ブロック層72は、電極21表面への感知対象物71の吸着による第1の発振周波数「F1」の変化を防ぐ役割を果たす。即ち、第1の振動領域25aからは第1の発振周波数「F1」に対して、温度変化のみの影響を受けた発振周波数「F1’」を取り出すことができる。 ・・・中略・・・ 【0025】 一方、水晶振動子24の他方側の領域、例えば第2の振動領域25bに設けられた電極22には、例えば図7(b)に示すように抗原である感知対象物71と選択的に反応して結合する抗体からなる吸着層73が設けられている。吸着層73に対して感知対象物71が抗原抗体反応を起こして吸着されることによる質量負荷効果を利用して、第2の発振周波数「F2」を変化させることができる。この結果、チャンネル2からは、第2の発振周波数「F2」に対して、抗体の吸着及び温度変化の双方の影響を受けた発振周波数「F2’」を取り出すことができる。 【0026】 ここで水晶振動子24に設けられた第1の振動領域25a及び第2の振動領域25bは、同じ水晶センサ3内にて共通の試料溶液中に浸漬されるため、各々の領域25a、25bが置かれる温度条件はほぼ一致する。またこれらの領域25a、25bは共通の水晶片2上に設けられているので、第1の発振周波数「F1」と、第2の発振周波数「F2」とは互いにほぼ一致した周波数温度特性を示すようになっている。」 (引1イ) 図2には、以下の図面が示されている。 (引1ウ) 図3には、以下の図面が示されている。 2 引用文献1に記載された発明の認定 (引1ア)~(引1ウ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「発振回路ユニット4に着脱自在に接続される水晶センサ3であって、 水晶センサ3は、一端側が接続端子をなすプリント基板31の上にゴムシート32を重ね、このゴムシート32に設けられた凹部を塞ぐように水晶振動子24を設け、更にゴムシート32の上から上蓋ケース33を装着した構成となっており、上蓋ケース33には試料溶液の注入口34と試料溶液が注入されたことを確認する確認口35とが設けられており、注入口34から試料溶液を注入することによって水晶振動子24の上面側の空間に試料溶液を満たすことができ、 水晶センサ3に設けられた水晶振動子24は、円形の水晶片2と、電極21、22、23とから構成されており、水晶片2の表面側にはその直径方向に沿って帯状の凹部26が形成され、また、当該水晶片2において凹部26及び当該凹部26の延長領域を挟む半円状の2つの領域は第1の振動領域25a及び第2の振動領域25bであり、これらの振動領域25a、25bは互いに対となっており、 第1の振動領域25aの表面、第2の振動領域25bの表面には夫々半円状の前記電極21、22が形成されており、水晶片2の裏面側には振動領域25a、25bにより共用される円形の電極23が設けられ、そして電極21、23により第1の振動領域25aが、電極22、23により第2の振動領域25bが夫々個別に振動し、周波数信号を出力することができ、 励振用の電極21、22はプリント基板31上に延伸された電極である接続端33a、33bと各々接続されており、また励振用の電極23は同じくプリント基板31上に設けられた電極である接続端33cと接続されており、 前記水晶振動子24の第1の振動領域25aに設けられた電極21には、注入口34に注入される試料溶液中に含まれる感知対象物71と反応しない抗体(タンパク質)からなるブロック層72が形成されており、一方、水晶振動子24の第2の振動領域25bに設けられた電極22には、抗原である感知対象物71と選択的に反応して結合する抗体からなる吸着層73が設けられており、 水晶振動子24に設けられた第1の振動領域25a及び第2の振動領域25bは、同じ水晶センサ3内にて共通の試料溶液中に浸漬される、 水晶センサ3。」 3 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引2ア) 「【0022】 最初に、本実施形態のQCMセンサー装置で使用するQCMセンサー単体について説明する。図1に示すように、目的物質を選択的に吸着させるための吸着膜と励振電極とを有する圧電振動子1を試料液体に接触させ、前記吸着膜に前記目的物が吸着することにより変化する前記圧電振動子1の共振数端数を検出して前記目定期物質を定量分析するQCMセンサーは、前記試料液体を流すための基台7と、該基台7と所定の隙間を保って配設した前記圧電振動子1と、前記試料液体を前記隙間へ所定速度で注入するための液体注入部材10と、前記隙間に注入された前記試料液体を排出するための液体吸収部材11と、前記励振電極と電気的に接続された外部接続電極とを有する。また前記センサーは前記液体注入部材10へ流す前記試料液体を一時的に貯留するための貯留パッド12と、前記液体吸収部材11で排出した前記試料液体を吸収するための吸収パッド13を有している。 ・・・中略・・・ 【0032】 次に図1のA-A’間の断面図である図7に示すように、圧電振動子1を実装した基板3と基台7とをスペーサー8を介して接着することにより、圧電振動子1と基台7の間に所定の隙間を設けることができる。この時、スペーサー8の厚みにより隙間の高さhを調整することが可能であり、試料液体が通過できる範囲で自由に変更することができる。本実施形態では高さhが約30μmとなるよう厚さ100μmのスペーサー8を使用したが、特に限定されるものではない。スペーサー8の材質はアクリルを使用し、接着剤9として常温硬化型のシリコーン接着剤を使用した。基台7としては材質に特に制限はないが、本実施形態ではガラス板を使用した。 【0033】 図1に示す如く、液体注入側基板3と基台7の隙間には、液体注入部材10を差し込み、液体排出側の基板3と基台7の隙間には、液体吸収部材11を差し込むように配設している。貯留パッド12は液体注入部材10と一部重なるように配置し、両面テープまたは粘着テープなどで基台7に固定し、吸収パッド13は同様に液体吸収部材11と一部重なるように配置し、両面テープまたは粘着テープで基台7に固定している。 ・・・中略・・・ 【0035】 液体注入部材10および液体吸収部材11は濾紙、ガラス繊維、メンブレンフィルターなどを用いることができるが、本実施形態では液体注入部材10に液体貯留力の低いガラス繊維を使用することで基板3と基台7の隙間に試料液体が流れ込み易くしており、液体吸収部材11にメンブレンフィルターを使用することにより基板3と基台7の隙間から排出される試料液体の速度を調整した。また貯留パッド12および吸収パッド13については液体を貯留および吸収できる繊維状のものであれば特に制限はない。」 (引2イ) 「【0037】 図11は上記のQCMセンサーをケース14内に設置した状態を示す断面図、図12はQCMセンサーと分析装置15の関係を示す外観図である。ケース14は、試料液体を滴下する部分に貯留パッド12を露呈する開口部が設けられている。基板3上の配線4a、4bは、外部の分析装置15と電気的に接続するため、基板3の配線4a、4bをケース14の外に突出させており、この配線4a、4bが配設された基板3を分析装置15の所定のコネクタ部に接続することにより、分析装置15が分析測定するようになっている。 【0038】 以上の構造とすることにより、貯留パッド12に試料液体を滴下するだけで、試料液体が液体注入部材10に濡れ伝わり、さらに基台7と圧電振動子1の隙間を通過して液体吸収部材11および吸収パッド13に吸収される。この時、吸着膜を設けた圧電振動子1に試料液体中の目的物質が吸着されその際に圧電振動子1の共振周波数の変化を検出することにより目的物質の吸着量を知ることが可能となる。試料液体を流動させる際にポンプなどの外部動力を一切使用する必要が無く、非常に簡便なQCMセンサー装置を得ることができる。」 (引2ウ) 図11には、以下の図面が示されている。 4 引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、次の事項が記載されている。 (引3ア) 「【課題を解決するための手段】 【0009】 前記目的を達成するために本発明は、基準電極、作用電極及び電極連結部を備えた下部基板と;前記下部基板上に積層される中間基板であって、試料導入部と前記試料導入部からT型に分岐するように設計され、基準電極及び作用電極が露出する検出部に連結され、それぞれ選択的に酵素接合体貯蔵所または基質貯蔵所が配置されている2つの微細流路、試料溶液によって溶解された基質溶液が前記検出部に時間的に遅れて到達するように前記基質貯蔵所が配置されている微細流路上に付加する通気部及び空気排出口を備えた混合部、前記検出部を通過した流体が吸収される吸収部、前記吸収部末端に通気部を備える前記中間基板と;前記中間基板に形成された微細流路に毛細管現象を誘導するように積層される上部基板を含んで具備される微細流路型センサー複合構造物を提供する。 【発明の効果】 【0010】 上記で詳しくみたように、本発明の微細流路型センサー複合構造物は、別途の操作なしに毛細管現象のみで試料が移動し、一回の試料注入で、免疫反応、洗浄、電気化学測定まで可能であるので、測定時間が短く簡便かつ優れた敏感度及び選択性を有する。」 5 引用文献4の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (引4ア) 「【0049】 他の実施の形態に係る水晶センサの一例として、水晶センサ7について以下に説明する。図9は、水晶センサ7の斜視図であり、図10は水晶センサ7を構成する各部材の上面側を示した分解斜視図である。また図11は、水晶センサ7の縦断側面図である。なお、図11においては便宜上水晶振動子2の電極の図示は省略している。図中71は支持体であり、その表面には配線基板3を収容し、保持する凹部72が設けられている。図中73は、凹部72に設けられた係合突起であり、配線基板3の係合孔37a,37b及び水晶押さえ部材4の係合孔47a,47bに係合し、これらの位置を固定するために設けられている。図中74は、孔であり、その周側面にねじが切られている。 【0050】 図中81は、液給排用カバーである。図11に示すようにその下面には、凹部82が設けられており、この凹部82が支持体71側に設けられた突起75に嵌合することで液給排用カバー81は支持体71に対して位置決めされ、孔74に対応するねじ83により固着される。このように支持体71に固着された液給排用カバー81は、水晶押さえ部材4を凹部82に収容された配線基板3に向けて押圧することにより、環状突起43が水晶振動子2を配線基板3に押し付けて、その位置を固定する。 ・・・中略・・・ 【0054】 この水晶センサ7は図13(a)に示すように試料液供給管88a及び流路85aを介して液収容空間45に試料液101を供給すると同時に流路85b及び試料液排出管88bを介して液収容空間45の試料液101を吸引することにより、励振電極22上において試料液101を例えば50μL/分の速度で流通させ、試料液中における測定物質を励振電極22へ吸着させる。この際に試料液101中に気泡102が混入し、開口部43に入り込んでも、環状突起43と水晶振動子2がなす角部において、気泡102から見て上方側が開放されているため、図13(b)、(c)に示すように気泡102はこの角部に留まることが抑えられ、試料液101に押し流されて容易に流路85bに流入して液収容空間45から除去される。その結果として、既述の水晶センサ20と同様に精度の高い測定を行うことができる。 【0055】 また上記のように突起84により試料液が励振電極22の直上を流通するため測定物質の励振電極22への吸着性が高まり、より精度の高い測定を行うことができる。なおこのように突起84を設けることが好ましいが、図14に示すように突起84を設けない構成としてもよい。さらにコネクタ87,87、試料液供給管88a、試料液排出管88bは液給排用カバー81に対して着脱自在に構成されるため、測定後、これらをカバー81から外して容易に洗浄することができるため洗浄に要する手間、コストが抑えられる結果として、測定に要するコストが抑えられる。」 (引4イ) 図13には、以下の図面が示されている。 6 引用文献5の記載事項 前置報告において新たに提示され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭56-153250号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審が付与したものである。) (引5ア) 「第1図は、この発明による装置に用いられ得る圧電結晶検出子の考えられる実施例の側断面図を図解的に表わす。この検出器はハウジング1を備える。ハウジング1は検出器ハウジング内へ調査されるべき混合気体が流れる際に通る気体-供給管に接続される。ハウジング1内にはたとえば水晶のような圧電結晶2が備えられ、前記結晶は結晶2の両側面が検出器ハウジング1を通つて流れる混合気体と接しているような方法で2本の電極3,4の間に取付けられている。少なくとも結晶の片側、好ましくは両側には所望のサブストレート層が設けられる。この発明の気体検出器においてこの種の結晶検出器を用いると、結晶は、その発振周波数が圧電結晶2の振動周波数により決定される適切な発振回路内に組み込まれる。 圧電結晶の検出子を有する検出装置は第2図で図解的に表わされる方法により構成されてもよい。この装置は、2個の発振子すなわち検出用発振素子5と参照用発振素子6とを含む。二つの発振素子は正確に同一設計であり、同一の発振結晶を含み、それに対して発振検出器5における結晶にはサブストレート層が設けられるが、他方参照発振器6における結晶はこのような層を欠いている。二つの発振素子5,6からの出力信号は混合回路7に加えられ、混合回路7からは二つの発振素子の出力信号の差周波数と和周波数とを含む信号が得られる。混合回路7は差周波数のみを通すように調整されたフイルタ8に接続され、前記差周波数はこのフイルタの出力側に接続されたデジタル周波数カウンタ9によつて表示される。フイルタ8の出力信号も、その出力電圧がレコーダ11によつて記録され得る周波数-電圧変換器10に印加され、前記レコーダ11は時間の関数として2つの発振子5,6の間の周波数の差を示す曲線を描く。 正確な測定を行なうためには、混合気体が検出用および参照用結晶上で作動する方法が最大限可能な範囲まで双方の場合において正確に同一であることが重要である。 このことは混合気体が流れるように調整されている共通の検出用ハウジングに二つの結晶を取付けることにより確保される。たとえば、この調整は第5図に図解的に示される。第5図は検出ハウジング12の平面断面図である。検出ハウジング12は互に対向し、かつそれを通つて検出されるべき混合気体が通過しようとする、導入口13と排出口14を有する。ハウジング内には、2個の同一かつ対称に配置された気体の流れのための流路16,17を有する本体15が備えられている。この流路内において検出用結晶18と参照用結晶19とは、その側面が前記気体の流れの方向と平行となるように取り付けられ、かつ全ての気体の流れが通過する対称な平面の各々の側部で相互に対称となつている。図示された実施例において、この結晶は結晶体上に直接金属化された電極が設けられている種類のものである。」(第3頁右下欄第10行~第4頁左下欄第5行) (引5イ) 第5図には、以下の図面が示されている。 第5 原査定の理由についての当審の判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明では、「発振回路ユニット4に着脱自在に接続される水晶センサ3であって、水晶センサ3は、一端側が接続端子をなすプリント基板31の上にゴムシート32を重ね、このゴムシート32に設けられた凹部を塞ぐように水晶振動子24を設け」ることが特定されていることから、ここでの「発振回路ユニット4」は、本願発明1の「発振周波数を測定するための測定器」に相当するところ、引用発明の「プリント基板31」と「ゴムシート32」とを併せたものが、本願発明1の「発振周波数を測定するための測定器に接続される接続端子を備えると共に一面側に凹部が形成された配線基板」に相当する。 イ 引用発明では、「ゴムシート32に設けられた凹部を塞ぐように水晶振動子24を設け、・・・水晶振動子24は、円形の水晶片2と、電極21、22、23とから構成されており、・・・電極21、23により第1の振動領域25aが、電極22、23により第2の振動領域25bが夫々個別に振動し、・・・励振用の電極21、22はプリント基板31上に延伸された電極である接続端33a、33bと各々接続されており、また励振用の電極23は同じくプリント基板31上に設けられた電極である接続端33cと接続されて」いることが特定されていることから、引用発明の「第1の振動領域25a」の「水晶振動子24」及び「第2の振動領域25b」の「水晶振動子24」が、本願発明1の「前記凹部を塞ぐ圧電片に各々の励振電極を設けて構成され、各々の振動領域が前記凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、前記励振電極が前記接続端子に電気的に接続される第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子」に相当する。 ウ 引用発明では、「ゴムシート32に設けられた凹部を塞ぐように水晶振動子24を設け、更にゴムシート32の上から上蓋ケース33を装着した構成となっており、上蓋ケース33には試料溶液の注入口34・・・が設けられており、注入口34から試料溶液を注入することによって水晶振動子24の上面側の空間に試料溶液を満たすことができ」ることが特定されていることから、引用発明の「上蓋ケース33」と、本願発明1の「第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子を含む配線基板の一面側の領域を覆うように設けられた流路形成部材」とは、「第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子を含む配線基板の一面側の領域を覆うように設けられた空間形成部材」である点で共通する。 エ 上記ウを踏まえると、引用発明の「注入口34」と、本願発明1の「前記流路形成部材に開口した試料液の注入口」とは、「前記空間形成部材に開口した試料液の注入口」である点で共通する。 オ 上記ウ及びエを踏まえると、引用発明の「注入口34から試料溶液を注入することによって水晶振動子24の上面側の」「試料溶液を満たすことができ」る「空間」と、本願発明1の「前記配線基板と流路形成部材との間に形成され、前記注入口から両方の圧電振動子の一面側を介して廃液領域へ毛細管現象により試料液を流通させるための流路」とは、「前記配線基板と空間形成部材とにより形成され、前記注入口から両方の圧電振動子の一面側に試料液を入れるための空間」である点で共通する。 カ 引用発明では、「前記水晶振動子24の第1の振動領域25aに設けられた電極21には、注入口34に注入される試料溶液中に含まれる感知対象物71と反応しない抗体(タンパク質)からなるブロック層72が形成されており、一方、水晶振動子24の第2の振動領域25bに設けられた電極22には、抗原である感知対象物71と選択的に反応して結合する抗体からなる吸着層73が設けられて」いることが特定されていることから、引用発明の「吸着層73」と、本願発明1の「前記第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子のうち一方のみに前記流路に面して設けられ、試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜」とは、「前記第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子のうち一方のみに前記空間に面して設けられ、試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜」である点で共通する。 キ 上記イを踏まえると、引用発明の「電極21、22、23」は、本願発明1と同様に、「前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極は、当該第1の圧電振動子及び当該第2の圧電振動子に共通の前記圧電片に形成されて」いるものである。 ク 上記ウ~オを踏まえると、引用発明の「注入口34から試料溶液を注入することによって水晶振動子24の上面側の空間に試料溶液を満たすことができ」ることと、本願発明1の「前記流路は、前記注入口から前記共通の圧電片の一面の一端部へ下方に向けて試料液を流通させる供給路と、前記共通の圧電片の一面の他端部上から前記廃液領域へ向けて上方へ前記試料液を流通させる排出路と、前記共通の圧電片の一面の一端部上から他端部上へ向けて当該共通の圧電片の一面に沿って当該試料液を流通させると共に、前記供給路と前記排出路とを接続する面上流路と、を備え」ることとは、「前記空間は、前記注入口から前記共通の圧電片の一面へ下方に向けて試料液を入れる供給空間を備え」る点で共通する。 ケ 引用発明の「水晶センサ」は、本願発明1の「感知センサー」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「発振周波数を測定するための測定器に接続される接続端子を備えると共に一面側に凹部が形成された配線基板と、 前記凹部を塞ぐ圧電片に各々の励振電極を設けて構成され、各々の振動領域が前記凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、前記励振電極が前記接続端子に電気的に接続される第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子と、 第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子を含む配線基板の一面側の領域を覆うように設けられた空間形成部材と、 前記空間形成部材に開口した試料液の注入口と、 前記配線基板と空間形成部材とにより形成され、前記注入口から両方の圧電振動子の一面側に試料液を入れるための空間と、 前記第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子のうち一方のみに前記空間に面して設けられ、試料液中の感知対象物を吸着する吸着膜と、 を備え、 前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極は、当該第1の圧電振動子及び当該第2の圧電振動子に共通の前記圧電片に形成されており、 前記空間は、前記注入口から前記共通の圧電片の一面へ下方に向けて試料液を入れる供給空間を備える、感知センサー。」 (相違点1) 空間形成部材が、本願発明1では、 「前記注入口から注入された試料液が貯留される廃液領域と、 前記配線基板と流路形成部材との間に形成され、前記注入口から両方の圧電振動子の一面側を介して廃液領域へ毛細管現象により試料液を流通させるための流路と、 前記流路に試料液を流通させるために、前記廃液領域に接続するように流路形成部材に開口した通気口」とを備え、 「前記流路は、前記注入口から前記共通の圧電片の一面の一端部へ下方に向けて試料液を流通させる供給路と、前記共通の圧電片の一面の他端部上から前記廃液領域へ向けて上方へ前記試料液を流通させる排出路と、前記共通の圧電片の一面の一端部上から他端部上へ向けて当該共通の圧電片の一面に沿って当該試料液を流通させると共に、前記供給路と前記排出路とを接続する面上流路と」を備え、 「前記共通の圧電片を前記配線基板に押圧すると共に、前記共通の圧電片の一面に向かって見て前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極を囲むように、前記配線基板へ向けて突出して内側に前記面上流路を形成し、前記供給路により前記共通の圧電片の一面に供給された試料液が前記排出路によって前記共通の圧電片の一面から排出されるまでに当該共通の圧電片の外側に流れることを防ぐための環状の規制部が設けられ」ている「流路形成部材」であるのに対し、引用発明では、このような構成を採用していない点。 (相違点2) 第1の圧電振動子の励振電極及び第2の圧電振動子の励振電極の構成に関して、本願発明1では、「前記共通の圧電片の一面に向かって見て当該共通の圧電片の一端部から他端部へ前記試料液の流通方向に沿って仮想の直線を引いたときに、前記面上流路は当該直線に対して左右対称に形成され、前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極は当該直線の左右に各々配置されると共に、当該直線に対して互いに左右対称のレイアウトとなるように形成されている」のに対し、引用発明では、このような構成を採用していない点。 (2)相違点についての判断 本願発明1は、第1の圧電振動子の励振電極及び第2の圧電振動子の励振電極が形成された共通の圧電片の一面上の一端部から他端部へ向けて、毛細管現象に加えてサイホンの原理が働くフロースルー方式の感知センサを、相違点1の構成として具体化した上で、前記第1の圧電振動子の励振電極及び前記第2の圧電振動子の励振電極の配置を、相違点2の構成として具体化したものであるから、まず、相違点1について検討する。 引用発明は、「水晶振動子24の上面側の空間に試料溶液を満たす」方式のいわゆる貯留方式の感知センサであって、フロースルー形式の感知センサーが、引用文献2及び4に記載されているとしても、引用文献1には、引用発明を貯留方式からフロースルー方式に変更する動機になる旨の記載は見当たらない。 そして、引用文献2~5のいずれにも、上述した毛細管現象に加えてサイホンの原理が働くフロースルー方式の感知センサを得るための上記相違点1に係る本願発明1の構成について記載も示唆もされていない。 よって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 (3)小括 以上のことから、本願発明1は、相違点2を検討するまでもなく、引用発明及び引用文献2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるので、上記1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 当審拒絶理由の判断 平成29年7月26日に提出された手続補正書によって、請求項1の上記記載が、「前記凹部を塞ぐ圧電片に各々の励振電極を設けて構成され、各々の振動領域が前記凹部と対向するように前記配線基板に固定されると共に、前記励振電極が前記接続端子に電気的に接続される第1の圧電振動子及び第2の圧電振動子と」と補正されたことで、請求項1に係る発明及び請求項1の記載を引用する請求項2に係る発明は明確となった。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-013489

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