特許拒絶査定不服審判
2016-013255
タイヤ
- 審判番号
- 2016-013255
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-215523外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月05日
- 審決日
- 2017年09月19日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ブリヂストン
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】山口 雄輔
- 分類
- P18 .121-WY (B60C) / P18 .537-WY (B60C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-215523号「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月22日出願公開、特開2015-13646号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成25年4月16日に出願した特願2013-85881号の一部を平成26年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年5月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともにこれと同時に手続補正書が提出され、その後当審において、平成29年6月21日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月4日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2.本願発明
本願の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、平成29年7月4日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
タイヤのトレッドに、該トレッドの少なくとも接地面を形成する、非発泡ゴムから成る表面ゴム層と、前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、発泡ゴムから成る内部ゴム層とを有し、前記表面ゴム層のゴム弾性率Msが前記内部ゴム層のゴム弾性率Miに比し低く、
前記表面ゴム層は、前記内部ゴム層のタイヤ径方向外側で前記内部ゴム層にのみ隣接することを特徴とするタイヤ。」
なお、本願発明2~4は、本願発明1を減縮した発明である。
第3.原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明1~4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用文献1に記載された発明、引用文献1に示されるような周知技術及び引用文献3に示されるような周知技術に基いて、また、引用文献2に記載された発明、引用文献2に記載されている事項及び引用文献3に示されるような周知技術に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
1.特開2007-131084号公報
2.特開2005-280511号公報
3.特開平10-324112号公報
第4.原査定の理由の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1の記載事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審で付与した。以下同様。)。
ア.「【請求項1】
トレッド部に平均発泡率の異なるゴム層を設けると共に、少なくとも路面と接する表面ゴム層(A)の平均発泡率を最も高くすることを特徴とするタイヤ。」
イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下で、走行初期よりドライ性能を損なうことなく、安定した氷上性能を有するタイヤを提供することを目的とするものである。」
ウ.「【0011】
本発明のタイヤは、トレッド部に平均発泡率の異なる複数のゴム層を設けると共に、少なくとも路面と接する表面ゴム層(A)の平均発泡率を最も高くすることが必要である。 上記とレッド部(審決注:「トレッド部」の誤記。)には平均発泡率の異なる複数のゴム層を設けることができるが、走行初期における氷上性能を向上させるために、路面と接する表面ゴム層(A)の平均発泡率をトレッド部の発泡ゴム層の中で、最も高くする。表面ゴム層(A)の発泡率を高くすることによって、ゴム層が柔軟で、路面との密着性が強くトレッド表面に発泡面が露出していない走行初期から、従来品に比べドライ性能を損ねることなく優れた氷上性能を得ることができる。また、高発泡率の表面ゴム層(A)は従来品に比べて耐摩耗性が劣るため走行早期に発泡面が露出し、さらに氷上性能が向上する。」
エ.「【0013】
さらに、表面ゴム層(A)の厚さは0.3~1mmの範囲であることが好ましく、表面ゴム層(A)の厚さは、初期性能を満足する厚さであればよく、より好ましくは、0.3~0.6mmである。
内部ゴム層(B)の厚さについては、特に限定はなく、タイヤサイズ、パターンなどの違いによって適宜決定すればよい。
ベースゴム層については、特に制限はないが、無発泡ゴム又は内部ゴム層(B)より平均発泡率の低い発泡ゴムから構成される。
また、ベースゴム層は、例えば、ショアーA硬度が、表面ゴム層(A)及び内部ゴム層(B)のショアーA硬度より高いゴムを用いることが好ましい。ショアー硬度Aの値は、ベースゴム層>内部ゴム層(B)>表面ゴム層(A)の順に高く、また、夫々のショアー硬度Aの値は特に限定はされないが、タイヤサイズなどの違いによって適宜決定すればよい。」
オ.「【0046】
例えば、図1に示すように、カーカス1と、該カーカス1のクラウン部をたが締めするベルト2と、表面ゴム層(A)5及び内部ゴム層(B)6からなる二層のキャップ部とベース部4の三層から成るトレッドを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド部以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。」
カ.「【0048】
タイヤ3は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、未加硫のトレッドが加硫されてなる本発明の発泡ゴム層で形成された表面ゴム層5及び内部ゴム層6からなる二層のキャップ部とベース部4の三層からなるタイヤ3が得られる。
・・・」
キ.記載事項ウ.の「路面と接する表面ゴム層(A)」との記載及び記載事項オ.の「表面ゴム層(A)5及び内部ゴム層(B)6からなる二層のキャップ部とベース部4の三層から成るトレッド」との記載並びに【図1】を参酌すると、タイヤのトレッドに、路面と接する発泡ゴム層で形成された表面ゴム層(A)5と、前記表面ゴム層(A)5のタイヤ径方向内側に隣接し、発泡ゴム層で形成された内部ゴム層(B)6とを有するといえるところ、記載事項エ.の「ショアーA硬度が、表面ゴム層(A)及び内部ゴム層(B)のショアーA硬度より高いゴムを用いる」との記載によれば、前記表面ゴム層(A)5のショアーA硬度が前記内部ゴム層(B)6のショアーA硬度に比し低くしていることが理解できる。
これらの記載事項ア.~カ.及び認定事項キ.並びに図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タイヤのトレッドに、路面と接する発泡ゴム層で形成された表面ゴム層(A)5と、前記表面ゴム層(A)5のタイヤ径方向内側に隣接し、発泡ゴム層で形成された内部ゴム層(B)6とを有し、前記表面ゴム層(A)5の平均発泡率が前記トレッドの発泡ゴム層の中で最も高くし、前記表面ゴム層(A)5のショアーA硬度が前記内部ゴム層(B)6のショアーA硬度に比し低くするタイヤ。」
(2)引用文献2の記載事項及び引用発明
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
左右のサイドウォールとトレッドとを備えており、
このトレッドが、その一端がサイドウォールの半径方向外側端と当接する表面層と、この表面層と積層された下地層とを備えており、
この表面層の硬度が下地層の硬度よりも小さく、
トレッドの厚みに対する表面層の厚みの比率が30%以下である空気入りタイヤ。」
イ.「【0012】
トレッド4は架橋ゴムからなり、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面18を形成する。トレッド面18には、溝20が刻まれている。この溝20により、トレッドパターンが形成されている。」
ウ.「【0019】
図2は、図1のタイヤ2のトレッド4の一部が示された拡大断面図である。この図2に示されるように、トレッド4は、ベース層32と、キャップ層34と、表面層36とからなる。ベース層32、キャップ層34及び表面層36は、半径方向内側から外側に向かい、この順に積層されている。キャップ層34は、表面層36にとっての下地層である。図2において両矢印Tで示されているのは、トレッド4の厚みである。厚みTは、4.0mm以上18.0mm以下が好ましい。」
エ.「【0022】
キャップ層34は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。好適なゴムは、天然ゴム及びジエン系合成ゴムである。ジエン系合成ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、イソプレン-イソブチレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体が例示される。表面層36が摩滅した後は、キャップ層34が路面と接触する。摩滅後の制動性能の観点から、キャップ層34にガラス繊維、セルコ、クレー、シラス等の充填剤が配合されるのが好ましい。制動性能の観点から、キャップ層34が発泡体とされてもよい。」
オ.「【0025】
表面層36は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。好適なゴムは、キャップ層34と同様に、天然ゴム及びジエン系合成ゴムである。特に、天然ゴムとポリブタジエンとが併用されることが、強度と耐久性との観点から好ましい。天然ゴムとポリブタジエンとの質量比は40/60以上95/5以下が好ましい。制動性能の観点から、表面層36にガラス繊維、セルコ、クレー、シラス等の充填剤が配合されるのが好ましい。制動性能の観点から、表面層36が発泡体とされてもよい。」
カ.記載事項ウ.の「トレッド4は、ベース層32と、キャップ層34と、表面層36とからなる。ベース層32、キャップ層34及び表面層36は、半径方向内側から外側に向かい、この順に積層されている。キャップ層34は、表面層36にとっての下地層である。」との記載、及び記載事項エ.オ.並びに【図1】を参酌すると、タイヤのトレッド4に、路面と接触するゴム組成物が架橋されることによって形成されている表面層36と、前記表面層36のタイヤ径方向内側に隣接する、ゴム組成物が架橋されることによって形成されているキャップ層34とを有するといえる。
これらの記載事項ア.~オ.、認定事項カ.及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「タイヤのトレッド4に、路面と接触するゴム組成物が架橋されることによって形成されている表面層36と、前記表面層36のタイヤ径方向内側に隣接する、ゴム組成物が架橋されることによって形成されているキャップ層34とを有し、前記表面層36の硬度が前記キャップ層34の硬度に比し小さく、
前記表面層36の一端がサイドウォール8の半径方向外側端と当接する空気入りタイヤ。」
(3)引用文献3の記載事項
引用文献3には、段落【0018】の「図1に示すように、トレッド12は、少なくとも2層のゴム層、本実施形態では、タイヤ半径方向外側に位置し、路面に接する外側ゴム層(所謂キャップゴム層)12Aと、タイヤ半径方向内側に位置する内側ゴム層(所謂ベースゴム層)12Bとの2層のゴム層から構成されたトレッド踏面部、及びこのトレッド踏面部のタイヤ幅方向両側に配置された側ゴム部12Cからなっている。」との記載及び【図1】を参酌すると、以下の事項(以下、「引用文献3に記載されている事項」という。)が記載されているものと認められる。
「路面に接する外側ゴム層(所謂キャップゴム層)12Aが、タイヤ半径方向内側に位置する内側ゴム層(所謂ベースゴム層)12Bにのみ隣接すること。」
2.対比 ・判断
(1)本願発明1について
ア.引用発明1を主の発明とした場合の検討
(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「タイヤ」は前者の「タイヤ」に相当し、後者の「トレッド」は前者の「トレッド」に相当する。
後者の「路面と接する発泡ゴム層で形成された表面ゴム層(A)5」と前者の「該トレッドの少なくとも接地面を形成する、非発泡ゴムから成る表面ゴム層」とは「該トレッドの少なくとも接地面を形成する、表面ゴム層」の限度で共通する。
後者の「前記表面ゴム層(A)5のタイヤ径方向内側に隣接し、発泡ゴム層で形成された内部ゴム層(B)6」は前者の「前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、発泡ゴムから成る内部ゴム層」に相当する。
以上から、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「タイヤのトレッドに、該トレッドの少なくとも接地面を形成する、表面ゴム層と、前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、発泡ゴムから成る内部ゴム層とを有するタイヤ。」
そして、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は、「表面ゴム層」が「非発泡ゴムから成る」のに対し、
引用発明1は、「表面ゴム層(A)5」が「発泡ゴム層で形成され」、「前記表面ゴム層(A)5の平均発泡率が前記トレッドの発泡ゴム層の中で最も高い」点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記表面ゴム層のゴム弾性率Msが前記内部ゴム層のゴム弾性率Miに比し低く」するのに対し、
引用発明1は、「前記表面ゴム層(A)5のショアーA硬度が前記内部ゴム層(B)6のショアーA硬度に比し低くする」点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記表面ゴム層は、前記内部ゴム層のタイヤ径方向外側で前記内部ゴム層に『のみ』隣接する」のに対し、
引用発明1は、「前記表面層36の一端がサイドウォール8の半径方向外側端と当接する」点。
(イ)判断
相違点1について検討する。
引用文献1の記載事項イ.に「本発明は、・・・走行初期よりドライ性能を損なうことなく、安定した氷上性能を有するタイヤを提供することを目的とするものである。」と記載され、記載事項ウ.に「本発明のタイヤは、・・・少なくとも路面と接する表面ゴム層(A)の平均発泡率を最も高くすることが必要である。・・・走行初期における氷上性能を向上させるために、路面と接する表面ゴム層(A)の平均発泡率をトレッド部の発泡ゴム層の中で、最も高くする。表面ゴム層(A)の発泡率を高くすることによって、ゴム層が柔軟で、路面との密着性が強くトレッド表面に発泡面が露出していない走行初期から、従来品に比べドライ性能を損ねることなく優れた氷上性能を得ることができる。また、高発泡率の表面ゴム層(A)は従来品に比べて耐摩耗性が劣るため走行早期に発泡面が露出し、さらに氷上性能が向上する。」と記載されるように、引用発明1は、走行初期よりドライ性能を損なうことなく、安定した氷上性能を有するタイヤを提供するという発明の課題を解決するために、「前記表面ゴム層(A)5の平均発泡率が前記トレッドの発泡ゴム層の中で最も高く」なるようにしたものである。
そうすると、例えば引用文献1の比較例4に示されるように、タイヤトレッドの接地面を形成する表面ゴム層を非発泡ゴムから形成するという技術が従来周知の技術であったとしても、当該周知の技術を、引用発明1に適用し、引用発明1において、「前記表面ゴム層(A)5の平均発泡率が前記トレッドの発泡ゴム層の中で最も高く」なるようにするという構成に替えて、表面ゴム層(A)5を非発泡ゴムから形成するという構成を採用することには阻害要因があるといえる。
したがって、引用発明1において、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
なお、引用文献3は、上記相違点3のために引用された文献であり、「路面に接する外側ゴム層(所謂キャップゴム層)12Aが、タイヤ半径方向内側に位置する内側ゴム層(所謂ベースゴム層)12Bにのみ隣接すること」が記載されているが、当該事項は、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と直接関連するものではない。
(ウ)小括
以上から、引用発明1において、少なくとも相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献1に示されるような周知技術及び引用文献3に示されるような周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
イ.引用発明2を主の発明とした場合の検討
(ア)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「タイヤ」は前者の「タイヤ」に相当し、後者の「トレッド4」は前者の「トレッド」に相当する。
後者の「路面と接触するゴム組成物が架橋されることによって形成されている表面層36」と前者の「該トレッドの少なくとも接地面を形成する、非発泡ゴムから成る表面ゴム層」とは「該トレッドの少なくとも接地面を形成する、表面ゴム層」の限度で共通する。
後者の「前記表面層36のタイヤ径方向内側に隣接する、ゴム組成物が架橋されることによって形成されているキャップ層34」と前者の「前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、発泡ゴムから成る内部ゴム層」とは、「前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、内部ゴム層」の限度で共通する。
以上から、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「タイヤのトレッドに、該トレッドの少なくとも接地面を形成する、表面ゴム層と、前記表面ゴム層のタイヤ径方向内側に隣接する、内部ゴム層とを有するタイヤ。」
そして、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1は、「表面ゴム層」が「非発泡ゴムから成」り、「内部ゴム層」が「発泡ゴムから成る」のに対し、
引用発明2は、「表面層36」が非発泡ゴムから成るか明らかでなく、「キャップ層34」が発泡ゴムから成るか明らかでない点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記表面ゴム層のゴム弾性率Msが前記内部ゴム層のゴム弾性率Miに比し低く」するのに対し、
引用発明2は、「前記表面層36の硬度が前記キャップ層34の硬度に比し小さ」い点。
<相違点3>
本願発明1は、「前記表面ゴム層は、前記内部ゴム層のタイヤ径方向外側で前記内部ゴム層に『のみ』隣接する」のに対し、
引用発明2は、「前記表面層36の一端がサイドウォール8の半径方向外側端と当接する」点。
(イ)判断
相違点1について検討する。
引用文献2の記載事項オ.には「制動性能の観点から、表面層36が発泡体とされてもよい。」との記載され、記載事項エ.には「制動性能の観点から、キャップ層34が発泡体とされてもよい。」と記載されている。しかしながら、上記各記載から理解できることは、表面層36及びキャップ層34を発泡体とするか否かを選択し得ることにとどまるものであり、その具体的な選択において、表面層36を発泡体とせず、キャップ層34を発泡体とすることが開示されているとはいえない。また、非発泡体を発泡体にすると、硬度が小さくなることが技術常識であるところ、硬度の小さい表面層36を非発泡体とし、硬度の大きいキャップ層34を発泡体とすることは、引用発明2の「前記表面層36の硬度が前記キャップ層34の硬度に比し小さく」するとの構成と逆行するものであり、自然な選択とはいえない。
したがって、引用発明2において、引用文献2に記載されている事項を参考にしても、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
なお、引用文献3は、上記相違点3のために引用された文献であり、先の(1)イ.で述べたとおり、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項と直接関連するものではない。
(ウ)小括
以上から、引用発明2において、少なくとも相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明1は、当業者が引用発明2、引用文献2に記載されている事項及び引用文献3に例示されるような周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第5.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1において「非発泡ゴムから成る表面ゴム層」と特定しているところ、同じく請求項1の「且つ前記表面ゴム層の平均発泡率が前記内部ゴム層の平均発泡率に比し低く」における「表面ゴム層の平均発泡率」の技術的意味が不明確である。
補足すると、表面ゴム層は非発泡ゴムから成るものであるから、「表面ゴム層」に「平均発泡率」という概念は存在しないものである。
また、仮に、非発泡ゴムの作製過程等において自然に生じてしまう微小の泡の存在を許容する意味だとしても、発明の詳細な説明の段落【0036】には、表面ゴム層として非発泡ゴムを採用することは記載されているが、同段落及び発明の詳細な説明全体をとおしてみても、作製過程の微小な泡の存在を許容する旨の記載及び他に非発泡ゴムにおいて「平均発泡率」との概念が存在する旨の記載もないので、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
また、請求項1を引用する請求項2~4の記載も同様の不備があるといえる。
2.当審拒絶理由の判断
平成29年7月4日に提出された手続補正書の手続補正によって、補正前の請求項1の「且つ前記表面ゴム層の平均発泡率が前記内部ゴム層の平均発泡率に比し低く」との記載が削除された。
これにより、当審拒絶理由で通知した上記理由は解消した。
3.小括
以上から、本願発明1~4は、明確であるから、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第5.むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013255