特許拒絶査定不服審判
2016-013072
生物粒子計数器及び生物粒子計数方法
- 審判番号
- 2016-013072
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-265613外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月31日
- 審決日
- 2017年10月11日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-265613「生物粒子計数器及び生物粒子計数方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日出願公開、特開2013-117466、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月5日の出願であって、平成27年10月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年1月12日付けで手続補正がされ、同年6月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年6月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知がされ、同年8月18日付けで手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~8に係る発明は、以下の引用文献A~Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特表2009-501907号公報
B.特開平9-105738号公報
C.特開平8-15157号公報
D.特開2000-241335号公報
E.特開2008-39477号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献1~5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特表2009-501907号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特表平4-500274号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開平9-105738号公報(拒絶査定時の引用文献B)
4.特開平8-15157号公報(拒絶査定時の引用文献C)
5.特表2010-513847号公報 (当審において新たに引用した文献)
第4 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、平成29年8月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1~4は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
検出する対象物を含む液体に向けて所定の波長の光を1つの光源から照射する発光手段と、
前記対象物又は前記液体と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、前記対象物から放出される散乱光を分離し、前記対象物から放出される自家蛍光及び前記液体から放出されるラマン散乱光を含む光を透過させる散乱光選択光学手段と、
前記散乱光選択光学手段を透過する光から前記自家蛍光の波長域の一部に重なる波長を有する前記ラマン散乱光を低減し、且つ前記自家蛍光を透過させる自家蛍光選択光学手段と、
前記自家蛍光選択光学手段により前記ラマン散乱光が低減された後の光に基づいて、前記液体に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定手段と、
前記自家蛍光選択光学手段を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第1信号を出力する自家蛍光受光手段と、
前記散乱光選択光学手段により分離された散乱光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第2信号を出力する散乱光受光手段と、
前記散乱光受光手段により出力された前記第2信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記液体に含まれる対象物から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力する散乱光検出信号出力手段と、
前記散乱光選択光学手段から前記自家蛍光選択光学手段を経て前記自家蛍光受光手段までの光路に、前記光路以外から入射する光が入り込むことを防ぐ遮光壁とを備え、
前記発光手段は、
照射後放出される前記自家蛍光のピーク波長と前記ラマン散乱光のピーク波長とを異ならせる前記所定の波長の光を照射し、
前記生物粒子判定手段は、
前記散乱光検出信号出力手段により前記検出信号が出力された場合であって、前記散乱光受光手段により前記液体に含まれる前記対象物から放出された前記散乱光が受光された時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により光が受光され、前記時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により前記受光された光に対応する前記第1信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記散乱光検出信号出力手段により出力された前記検出信号に対応する前記液体に含まれる前記対象物を生物粒子であると判定することを特徴とする生物粒子計数器。
【請求項2】
請求項1に記載の生物粒子計数器において、
前記発光手段により照射される光の前記所定の波長は、375nm~420nmであり、
前記自家蛍光選択光学手段により光を透過する基準となるカットオフ波長は、450nm~490nmであることを特徴とする生物粒子計数器。
【請求項3】
検出する対象物を含む液体に向けて所定の波長の光を1つの光源から照射する発光工程と、
前記対象物又は前記液体と前記発光工程で照射された光との相互作用により放出される光のうち、前記対象物から放出される散乱光を分離し、前記対象物から放出される自家蛍光及び前記液体から放出されるラマン散乱光を含む光を透過させる散乱光選択光学工程と、
前記散乱光選択光学工程により透過された光から前記自家蛍光の波長域の一部に重なる波長を有する前記ラマン散乱光を低減し、且つ前記自家蛍光を透過させる自家蛍光選択光学工程と、
前記自家蛍光選択光学工程により前記ラマン散乱光が低減された後の光に基づいて、前記液体に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定工程と
前記自家蛍光選択光学工程を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第1信号を出力する自家蛍光受光工程と、
前記散乱光選択光学工程により分離された散乱光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第2信号を出力する散乱光受光工程と、
前記散乱光受光工程により出力された前記第2信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記液体に含まれる対象物から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力する散乱光検出信号出力工程と、
前記散乱光選択光学工程から前記自家蛍光選択光学工程を経て前記自家蛍光受光工程までの光路に、前記光路以外から入射する光が入り込むことを防ぐ遮光工程とを含み、
前記発光工程は、
照射後放出される前記自家蛍光のピーク波長と前記ラマン散乱光のピーク波長を異ならせる波長の光を照射し、
前記生物粒子判定工程は、
前記散乱光検出信号出力工程により前記検出信号が出力された場合であって、前記散乱光受光工程により前記液体に含まれる前記対象物から放出された前記散乱光が受光された時点と同時期に前記自家蛍光受光工程により光が受光され、前記時点と同時期に前記自家蛍光受光工程により前記受光された光に対応する前記第1信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記散乱光検出信号出力工程により出力された前記検出信号に対応する前記液体に含まれる前記対象物を生物粒子であると判定する特徴とする生物粒子計数方法。
【請求項4】
請求項3に記載の生物粒子計数方法において、
前記発光工程で照射される光の前記所定の波長は、375nm~420nmであり、
前記自家蛍光選択光学工程で光を透過する基準となるカットオフ波長は、450nm~490nmであることを特徴とする生物粒子計数方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載
平成29年6月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付加したものである。以下、同様である。)
ア「【0018】
本検出システムは、空中浮遊又は水中浮遊微粒子を検出し、例えば、サンプル中で検出され且つそのサイズ範囲内にあるそれぞれのサイズの粒子の数を示すような出力を生成し、該粒子が生物のものか、あるいは、非生物のものかを示すようにデザインされている。また、該検出システムは、粒子の数が通常のバックグラウンドのレベルを上回るといった、ある所定値を超えていると、及び/又は、それが生物体又はバイオ活性剤であり且つ危険な可能性があると、警告のシグナル又はその他の応答を発する。」
イ「【0026】
図3は、本発明の第二の具体例の流体微粒子検出システムのための光学システムの代表例である。図3に示されているように、該光学システム310は、源となる波長を有している電磁放射線314を与える励起源312を備えている。第一の波長選択装置316は、電磁放射線314のビームが当たるように配置せしめられている。該第一の波長選択装置316は、源となる波長を有しているどんな放射もその少なくとも一部を伝え、その他の波長の放射を反射するように構成されている。該第一の波長選択装置316は該励起光源312からの起こりえるスプリアスなスペクトルの放射を反射するように作動するものであることができる。電磁放射線314のビームの一部はパワーモニター検出器350に向けて第一の波長選択装置316により反射せしめられてよい。該パワーモニター検出器350は該励起光源312と情報交換するように動作してよく、任意に、該励起光源312からの出力パワーを一定に保つというフィードバックループの一部として働くものであってよい。該パワーモニター検出器350に向けて第一の波長選択装置316により反射された電磁放射線のビーム314の一部は、パワーモニターレンズ356により焦点が合わせられてよい。
【0027】
微粒子320を含有している媒質318は電磁放射線のビーム314が当たるように配置せしめられている。電磁放射線のビーム314の少なくとも一部は、該媒質318の中で散乱された電磁放射線になる。該散乱電磁放射線は、進行側散乱電磁放射線322と反対側散乱電磁放射線324とを含んでいるものである。第一の光学検出器326は、反対方向側の散乱電磁放射線324を受けるように配置せしめられている。該反対方向側の散乱電磁放射線324は、該光学検出器326に向けて該第一の波長選択装置316により反射せしめられてよい。バンドパスフィルタ352は、該第一の波長選択装置316と該光学検出器326との間で利用されて、電磁放射線のビーム314からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよい。焦点用レンズ354は、該第一の波長選択装置316と該光学検出器326との間で利用されて、該光学検出器326に対して反対方向側の散乱電磁放射線324の焦点を合わせるようにしてよい。
【0028】
図3に示されているように、該進行方向側の散乱電磁放射線322は、第一のビーム遮断レンズ360に当たるように向けられていてよい。該第一のビーム遮断レンズ360は、電磁放射線のビーム314の非散乱光成分を反射するようにデザインされていてよく、光学検出器におけるグレアを防止するようにしてよい。次に、該進行方向側の散乱電磁放射線は、光学素子370に向けられてよい。かかる光学素子370は、第四の具体例では、第二の波長選択装置316(当審注:370の誤記)である。該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の少なくとも一部を通し、該進行方向側の散乱電磁放射322の一部を反射するものであってよい。より具体的には、該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分を反射するが、一方で該進行方向側の散乱電磁放射322の残部がそれを通過するのを許容するものであってよい。第二のビーム遮光レンズ364は、該進行方向側の散乱電磁放射322の透過した部分を微粒子検出器366に向けてその焦点を合わせるものであってよい。該微粒子検出器366は、例えば、該微粒子320のサイズを区分けするためのフォトダイオードであってよい。
【0029】
該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分は、第二の光学検出器376に向けられていてよい。第二のバンドパスフィルタ372が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、電磁放射線のビーム314からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよい。焦点用レンズ374が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、該第二の光学検出器376に向けて該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分の焦点を合わせるものであってよい。該第二の光学検出器376は、例えば、PMT光学検出器であってよい。
・・・中略・・・
【0034】
・・・一方、図7は、デジタル変換器334の類似体をより詳細に示す概略図である。該微粒子検出器366の出力は、各パルスが媒質318中の微粒子により散乱される光を表し且つパルスの高さが粒子サイズに比例するという、一連のアナログパルスのパルスシグナルであり、例えば図6に示すようなシグナル60である。微粒子検出器366から入力される各パルスは、DCバックグラウンドを除去するためにハイパスフィルタ62を通過し、その後バッファ64を通って、入力されるパルスの高さを測定するピーク検出器65に達する。ピーク検出器65の出力は、パルス高のデータを備えた一連のパルス計数シグナルとなる。該デジタル変換器334の類似体およびピーク検出器回路の一例を図7により詳細に示し、図7Aは該回路の種々の箇所におけるパルス出力を示すものである。図7A中の出力シグナル「ピーク出力」は、分類のためにウィンドウコンパレータ回路336に送られる。図7A中に示されるその他のパルスは、ウィンドウコンパレータ回路336に計数を行い且つ記憶するように命じるタイミングおよびイネーブルシグナルである。
【0035】
ウィンドウコンパレータ回路336は、それぞれある所定の電圧範囲(ウィンドウ電圧)中のパルスを検出するように設計された一連のウィンドウコンパレータ66(一例として図6の符号1~10)を有する。各ウィンドウコンパレータ66は、入力されるパルス高がそのウィンドウ電圧内の場合のみ(例えば、コンパレータNo.5に対して5mV~7.5 mVの場合)、シグナルをそれに対応付けられたデジタル計数器68に送る。関連デジタル計数器68の出力は、表示パネル70に接続され、その表示パネル70が各粒子サイズにあるビン(箱)内の粒子数を表示する。このように、コントロールおよび出力表示ユニット338は、対応する計数器からの入力に基づいて各粒子サイズについて順に点灯する発光ダイオード(LED)を供えているLEDアレーにより、粒子サイズ分布のヒストグラムを生成して棒グラフを表示するものを含んでいる。棒グラフは異なる粒子サイズに対して色が異なってもよい。出力は、粒子サイズ分布のヒストグラムをその表示スクリーン上に表示するようにプログラムされたコンピュータに接続していてもよいし、別の方法としてそうされていてもよい。」
ウ「【0048】
また、本明細書記載の流体中浮遊微粒子検出器は、クリーンルームの設備を監視して、汚染の可能性及び/又は物質の紛失の可能性について監視するのに有利に使用されてよい。より大きな範囲の本検出器システム301を利用すると、該警報装置342は次の二つの条件が満たされたときにのみ作動されてよい:(1) ある所定のサイズの範囲 (約 1 ~ 約 7 nm) 内にある空中浮遊微粒子の数が突然に上昇することが検出された場合、そして、(2) 例えば、レーザ励起光を用いて生物体又はバイオ活性剤あるいは有機物質が下記するように検出された場合。
【0049】
それ自体では、粒子サイズのセンサーは周囲にある粒子からの誤った警告に対して弱点がある。こうした誤った警告をさらに減らすために、本病原体検出システム301はUV光誘起蛍光センサーでもって粒子をサイズでみる能力を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するようにした生物体又はバイオ活性剤について検証する検出器というものである。また、本発明の検出システム301は、生物兵器を含む生物体又はバイオ活性剤中に存在している代謝産物を検出するレーザ誘起蛍光センサーを有している該第一の光学式検出器326および該第二の光学式検出器376を備えている。特には、該光学システム310は約 270 nm ~ 約 410 nm、好ましくは、約 350 nm ~ 約 410 nmの波長で動作する励起源312を備えている。バイオ活性剤は次の三種の一次代謝産物を含有しているという前提に基づいて約 270 nm ~ 約 410 nmの波長が選択される:トリプトファン、これは、通常、約 220 nm ~ 約 300 nmのレンジを伴う約 270 nmの蛍光; ニコチナミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH)、これは、通常、約 340 nmの蛍光(レンジ 約 300 nm ~ 約 400 nm); そして、リボフラビン、これは、通常、約 400 nmの蛍光(レンジ 約 320 nm ~ 約 420 nm)。好ましくは、しかしながら、該励起源312は、約 350 ~ 約 410 nmの波長を有している。この波長はバイオ活性剤中の上記三種の一次代謝産物のうちの二種、NADHとリボフラビンを確実に励起し、ディーゼルエンジン排ガスや、例えば、ダスト又はベビーパウダーなどの、その他の不活性微粒子といった干渉性物質を励起することを排除することになる。このように、該第四の具体例では本発明は励起源312の波長の範囲を公正に選択するものであり、該励起光源はNADHやリボフラビンからの蛍光を励起する能力(トリプトファンを励起する能力に先行する)を保持している一方、例えば、ディーゼルエンジン排ガスなどの干渉性物質を励起することはない。本処理はディーゼル排ガス(例えば、266 nmの光などの短波長UVで励起される)により生まれる誤った警報を減少せしめるように採用される。」
エ
オ
(2)引用文献1に記載された事項の整理
ア 上記(1)ウに摘記した段落【0049】の「本病原体検出システム301はUV光誘起蛍光センサーでもって粒子をサイズでみる能力を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するようにした生物体又はバイオ活性剤について検証する検出器というものである。」という記載は、上記(1)アの「空中浮遊又は水中浮遊微粒子を検出し、例えば、サンプル中で検出され且つそのサイズ範囲内にあるそれぞれのサイズの粒子の数を示すような出力を生成し、該粒子が生物のものか、あるいは、非生物のものかを示すようにデザインされている」という記載と上記(1)イの光学システムに関する記載とを併せて読むと、上記(1)アの流体微粒子検出システムは、微「粒子」320を、「サイズでみる能力」である微粒子検出器366からの検出信号と、蛍光でみる能力である第二の光学検出器376からの検出信号「を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するよう」にした生物粒子判定手段を備えていることが理解できる。
イ そして、上記アにおける生物粒子判定手段は、その具体例として、上記(1)ウに摘記した段落【0048】に「該警報装置342は次の二つの条件が満たされたときにのみ作動されてよい:(1) ある所定のサイズの範囲 (約 1 ~ 約 7 nm) 内にある空中浮遊微粒子の数が突然に上昇することが検出された場合、そして、(2) 例えば、レーザ励起光を用いて生物体又はバイオ活性剤あるいは有機物質が下記するように検出された場合。」と記載されているように、微粒子検出器366からの検出信号により、所定サイズの粒子が所定時間内に所定個数以上検出され、かつ、第二の光学検出器376からの検出信号により、生物体が検出された場合、検出された粒子群(所定時間内に所定個数以上検出された所定サイズの粒子)は生物体であるとして警報を作動させることが開示されているといえる。
(3)引用文献1に記載された発明の認定
上記(1)及び上記(2)を総合すると、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「空中浮遊又は水中浮遊微粒子を検出し、例えば、サンプル中で検出され且つそのサイズ範囲内にあるそれぞれのサイズの粒子の数を示すような出力を生成し、該粒子が生物のものか、あるいは、非生物のものかを示すようにデザインされている流体微粒子検出システムであって、
源となる波長を有している電磁放射線314を与える励起源312を備えており、第一の波長選択装置316は、電磁放射線314のビームが当たるように配置せしめられており、該第一の波長選択装置316は、源となる波長を有しているどんな放射もその少なくとも一部を伝え、その他の波長の放射を反射するように構成されており、
微粒子320を含有している媒質318は電磁放射線のビーム314が当たるように配置せしめられており、電磁放射線のビーム314の少なくとも一部は、該媒質318の中で散乱された電磁放射線になり、該散乱電磁放射線は、進行側散乱電磁放射線322と反対側散乱電磁放射線324とを含んでいるものであり、
該進行方向側の散乱電磁放射線322は、第一のビーム遮断レンズ360に当たるように向けられていてよく、該第一のビーム遮断レンズ360は、電磁放射線のビーム314の非散乱光成分を反射するようにデザインされていてよく、次に、該進行方向側の散乱電磁放射線は、光学素子370に向けられてよく、かかる光学素子370は、第二の波長選択装置370であり、該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の少なくとも一部を通し、該進行方向側の散乱電磁放射322の一部を反射するものであってよく、より具体的には、該第一の光学素子370は、該進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分を反射するが、一方で該進行方向側の散乱電磁放射322の残部がそれを通過するのを許容するものであってよく、第二のビーム遮光レンズ364は、該進行方向側の散乱電磁放射322の透過した部分を微粒子検出器366に向けてその焦点を合わせるものであってよく、該微粒子検出器366は、例えば、該微粒子320のサイズを区分けするためのフォトダイオードであってよく、
該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分は、第二の光学検出器376に向けられていてよく、第二のバンドパスフィルタ372が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、電磁放射線のビーム314からの反対方向への散乱光をいずれも最小とする、及び/又は、測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよく、焦点用レンズ374が該第一の光学素子370と該第二の光学検出器376の間で利用されて、該第二の光学検出器376に向けて該進行方向側の散乱電磁放射322の反射蛍光シグナルの部分の焦点を合わせるものであってよく、該第二の光学検出器376は、例えば、PMT光学検出器であってよく、
該微粒子検出器366から入力される各パルスは、ピーク検出器65に達し、ピーク検出器65の出力は、ウィンドウコンパレータ回路336に送られ、ウィンドウコンパレータ回路336は、それぞれある所定の電圧範囲(ウィンドウ電圧)中のパルスを検出するように設計された一連のウィンドウコンパレータ66を有し、各ウィンドウコンパレータ66は、入力されるパルス高がそのウィンドウ電圧内の場合のみ、シグナルをそれに対応付けられたデジタル計数器68に送るものであり、
該微粒子320を、該微粒子検出器366からの検出信号と、該第二の光学検出器376からの検出信号を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するようにした生物粒子判定手段を備え、生物粒子判定手段は、微粒子検出器366からの検出信号により、所定サイズの粒子が所定時間内に所定個数以上検出され、かつ、第二の光学検出器376からの検出信号により、生物体が検出された場合、検出された粒子群(所定時間内に所定個数以上検出された所定サイズの粒子)は生物体であるとして警報を作動させるものであり、
約 350 ~ 約 410 nmの波長を有している励起源312の波長の範囲を公正に選択するものであり、該励起光源はNADHやリボフラビンからの蛍光を励起する能力を保持している、
流体微粒子検出システム。」
2.引用文献2~5について
(1)引用文献2の記載
平成29年6月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「第1図を参照すると、レーザー光線11が、レーザー12により偏光子13を通して投射され、レンズ14により、焦点合せされた光線16によって示すように、流体流に焦点を合せられる。前記光線は、毛管18内を流れる流れ標本流体流(flowing sample fluictstream)l7に焦点を合せられる。流れ17の流速を制御する役割をするフロー制御手段19が、模式的に示されている。レーザー偏光は、偏光子13により散乱面内に方向付けされてバックグラウンド散乱を最小にしている。レーザー光線は、拡大図22に示す領域を照明する。照明された体積(volume)の映像が、対物レンズ24により空間フィルタ23に映写される。空間フィルタ23は、照明された領域及びプローブされる体積を参照番号26で示される体積にする。空間フィルタは、プローブ体積の高さと巾とを定めている。分光フィルタ28(当審注:27の誤記)が、照明された体積からのレイリー及びラマン放射(Rayleigh and Raman emission)をはねつける。空間フィルタ及び分光フィルタを通過するエネルギーは、集束レンズ28により、2次電子増倍管(photomultjplier tube)でも、必要な感度を有する他のいかなる光変換器(phototransducer)でも良い光変換器29に焦点を合せられる。」(第3頁右上欄下から3行~左下欄第15行)
イ「第1図及び第2図の装置は、B-フィコエリトリン(PE)のモノマー及びダイマーのサブピコモル溶液の単一分子蛍光を検出するのに使用された。アルゴンレーザー12が、毛管18内にある流れ標本流の中心に数μmの点の大きさに焦点合せされた励起光線を提供した。流速は、PEに関する光破壊時間にほぼ等しい走行時間を与えるように選択され、レーザー強度は、第6図及び第7図に示すような最適S/√Bを与えるように選択される。蛍光発光は、顕微鏡対物レンズ24によって集められ、空間フィルタ23に映写される。空間フィルタは、プローブ体積を定め、毛管壁からの散乱及び蛍光を受入れなかった。蛍光干渉フィルタ27が、レイリー及びラマン散乱を受入れないようにするため使用された。蛍光は、2次電子増倍管及び増幅器/弁別器により検出された。第2図の蛍光破裂検出器は、しかる後オンラインリアルタイム方式でイベントの数を記録するのに使用された。」(第4頁左下欄第14行~末行)
ウ
(2)引用文献3の記載
平成29年6月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0022】次に、2本のレーザ光40,41の光路をずらした理由について説明する。レーザ光で水溶液を照射すると、水のラマン散乱に基づく強い信号がレーザ光の波長から約100nm長波長側に観測される。1つのレーザ光で1つの蛍光体を励起する場合には、発する蛍光の極大は通常最適励起波長の20~30nm長波長側に現われるので、この波長部分を透過させラマン線の部分を遮断するフィルターを介して受光することで、ラマン散乱の影響を受けずに蛍光検出を行うことができる。」
(3)引用文献4の記載
平成29年6月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【要約】
【目的】 プランクトンをクロロフィル色素を有する植物プランクトンとフィコビリン色素を有する藍藻とに分けて測定できる小型軽量の水中のプランクトンセンサ。
【構成】 420~520nm(第1の波長)および540~580nm(第2の波長)の波長範囲の光を照射できる発光ダイオード12を用いて水中を順次照射し、第1の波長によって植物プランクトン、第2の波長によって藍藻からそれぞれ放射される640~680nmの蛍光を受光部13で受光する水中のプランクトンセンサ。」
イ「【0019】またここで選択された第1の波長および第2の波長は、表1に示すように水のラマン散乱による妨害のない範囲である。
【0020】
【表1】
」
(4)引用文献5の記載
平成29年6月16日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0025】
図5を参照すると、本発明の粒度と蛍光の同時測定方式の機能性が、計器などによる測定結果の図式表現で示される。この動作原理は以下の通りである。計器が環境空気(または液体)を継続的に監視して、個々の空中浮遊粒子の粒度をリアルタイムで測定すると同時に、粒子が蛍光を発しているかどうかを決定する。蛍光シグナルに対して閾値が設定される。蛍光シグナルが設定レベルを下回る場合、粒子は不活性と認識される。この蛍光シグナル閾値は、蛍光シグナル強度、粒子断面積または粒子体積に応じた蛍光強度にすることができる。蛍光シグナル閾値が設定レベルを超える場合、粒子は生物学的に活性であると認識される。粒度と蛍光シグナル強度の統合データは、粒子毎に微生物の有無を決定することになる。」
イ
上記ア及びイ(図4)の記載からみて、当該引用文献5には、「計器が環境液体を継続的に監視して、粒子検出器が検出した散乱信号により個々の液中浮遊粒子の粒度をリアルタイムで測定すると同時に、蛍光検出器が検出した蛍光シグナルにより粒子が蛍光を発しているかどうかを決定し、蛍光シグナル閾値が設定レベルを超える場合、粒子は生物学的に活性であると認識され、粒度と蛍光シグナル強度の統合データは、粒子毎に微生物の有無を決定することになる。」という技術的事項が記載されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「励起源312」は、「水中浮遊微粒子」などの「微粒子320を含有している媒質318」に向けて「電磁放射線のビーム314」を照射する1つの光源であるから、本願発明1の「検出する対象物を含む液体に向けて所定の波長の光を1つの光源から照射する発光手段」に相当する。
イ 引用発明の「第二の波長選択装置370」は、「進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分を反射するが、一方で該進行方向側の散乱電磁放射322の残部がそれを通過するのを許容する」ものであるから、ここでの「進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分」及び「該進行方向側の散乱電磁放射322の残部」が、それぞれ、本願発明1の「対象物から放出される自家蛍光」及び「対象物から放出される散乱光」に相当するところ、引用発明の「第二の波長選択装置370」は、本願発明1の「散乱光選択光学手段」に相当する。
よって、引用発明の「第二の波長選択装置370」と、本願発明1の「前記対象物又は前記液体と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、前記対象物から放出される散乱光を分離し、前記対象物から放出される自家蛍光及び前記液体から放出されるラマン散乱光を含む光を透過させる散乱光選択光学手段」とは、「前記対象物又は前記液体と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、前記対象物から放出される散乱光と、前記対象物から放出される自家蛍光を含む光とを分離させる散乱光選択光学手段」の点で共通する。
ウ 引用発明の「第二のバンドパスフィルタ372」は、「測定されるべきスペクトルの特定の部分を選択するようにしてよく」、「進行方向側の散乱電磁放射322の蛍光シグナル部分」である「微粒子320」から放出される自家蛍光のみを透過させるもの」であるから、引用発明の「第二のバンドパスフィルタ372」と、本願発明1の「前記散乱光選択光学手段を透過する光から前記自家蛍光の波長域の一部に重なる波長を有する前記ラマン散乱光を低減し、且つ前記自家蛍光を透過させる自家蛍光選択光学手段」とは、「前記散乱光選択光学手段で分離した自家蛍光を含む光から、前記自家蛍光のみを透過させる自家蛍光選択光学手段」の点で共通する。
エ 引用発明の「生物粒子判定手段」は、「該微粒子320を、該微粒子検出器366からの検出信号と、該第二の光学検出器376からの検出信号を組み合わせて、生物的粒子と非生物的粒子を判別するようにした」ものであるから、引用発明の「生物粒子判定手段」と、本願発明1の「前記自家蛍光選択光学手段により前記ラマン散乱光が低減された後の光に基づいて、前記液体に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定手段」とは、「前記自家蛍光選択光学手段を通過した前記自家蛍光に基づいて、前記液体に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定手段」の点で共通する。
オ 引用発明の「第二の光学検出器376」は、本願発明1の「前記自家蛍光選択光学手段を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第1信号を出力する自家蛍光受光手段」に相当する。
カ 引用発明の「微粒子検出器366」は、本願発明1の「前記散乱光選択光学手段により分離された散乱光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第2信号を出力する散乱光受光手段」に相当する。
キ 引用発明の「ウィンドウコンパレータ回路336」は、「微粒子検出器366から入力される各パルスは、ピーク検出器65に達し、ピーク検出器65の出力」が入力され、「それぞれある所定の電圧範囲(ウィンドウ電圧)中のパルスを検出するように設計された一連のウィンドウコンパレータ66を有し、各ウィンドウコンパレータ66は、入力されるパルス高がそのウィンドウ電圧内の場合のみ、シグナルをそれに対応付けられたデジタル計数器68に」出力するものであるから、「微粒子検出器366」により出力された信号の大きさが、「所定の電圧」以上である場合、所定サイズの「微粒子320」から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力するものといえる。
よって、引用発明の「ウィンドウコンパレータ回路336」は、本願発明1の「前記散乱光受光手段により出力された前記第2信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記液体に含まれる対象物から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力する散乱光検出信号出力手段」に相当する。
ク 引用発明の「流体微粒子検出システム」は、「水中浮遊微粒子を検出し、例えば、サンプル中で検出され且つそのサイズ範囲内にあるそれぞれのサイズの粒子の数を示すような出力を生成し、該粒子が生物のものか、あるいは、非生物のものかを示すようにデザインされている」から、生物粒子を計数するものといえる。
よって、引用発明の「流体微粒子検出システム」は、本願発明1の「生物粒子計数器」に相当する。
(2)一致点、相違点
してみると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、次の各点で相違する。
(一致点)
「検出する対象物を含む液体に向けて所定の波長の光を1つの光源から照射する発光手段と、
前記対象物又は前記液体と前記発光手段により照射された光との相互作用により放出される光のうち、前記対象物から放出される散乱光と、前記対象物から放出される自家蛍光を含む光とを分離させる散乱光選択光学手段と、
前記散乱光選択光学手段で分離した自家蛍光を含む光から、前記自家蛍光のみを透過させる自家蛍光選択光学手段と、
前記自家蛍光選択光学手段を通過した前記自家蛍光に基づいて、前記液体に含まれる前記対象物が生物粒子であるか否かを判定する生物粒子判定手段と、
前記自家蛍光選択光学手段を経た後の光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第1信号を出力する自家蛍光受光手段と、
前記散乱光選択光学手段により分離された散乱光を受光し、前記受光した際の光の光量に応じる大きさの第2信号を出力する散乱光受光手段と、
前記散乱光受光手段により出力された前記第2信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記液体に含まれる対象物から放出された散乱光を検出したとして検出信号を出力する散乱光検出信号出力手段と、
を備える生物粒子計数器。」
(相違点1)
散乱光選択光学手段が、本願発明1では、対象物から放出される自家蛍光及び「液体から放出されるラマン散乱光」を含む光を「透過させる」のに対し、引用発明では、対象物から放出される自家蛍光を含む光に「液体から放出されるラマン散乱光」を含むか不明であり、対象物から放出される自家蛍光を含む光を反射させる点。
(相違点2)
自家蛍光選択光学手段が、自家蛍光を含む光から、本願発明1では、「自家蛍光の波長域の一部に重なる波長を有する前記ラマン散乱光を低減し」ているのに対し、引用発明では、この点につき不明である点。
(相違点3)
生物粒子判定手段が、本願発明1では、「前記ラマン散乱光が低減された後の」光(自家蛍光)に基づいて判定するのに対し、引用発明では、この点につき不明である点。
(相違点4)
本願発明1が、「前記散乱光選択光学手段から前記自家蛍光選択光学手段を経て前記自家蛍光受光手段までの光路に、前記光路以外から入射する光が入り込むことを防ぐ遮光壁」を備えているのに対し、引用発明では、この点につき不明である点。
(相違点5)
発光手段が、本願発明1では、「照射後放出される前記自家蛍光のピーク波長と前記ラマン散乱光のピーク波長とを異ならせる前記所定の波長の光を照射し」ているのに対し、引用発明では、この点につき不明である点。
(相違点6)
生物粒子判定手段が、本願発明1では、「前記散乱光検出信号出力手段により前記検出信号が出力された場合であって、前記散乱光受光手段により前記液体に含まれる前記対象物から放出された前記散乱光が受光された時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により光が受光され、前記時点と同時期に前記自家蛍光受光手段により前記受光された光に対応する前記第1信号の大きさが所定の閾値以上である場合、前記散乱光検出信号出力手段により出力された前記検出信号に対応する前記液体に含まれる前記対象物を生物粒子であると判定する」のに対し、引用発明では、「微粒子検出器366からの検出信号により、所定サイズの粒子が所定時間内に所定個数以上検出され、かつ、第二の光学検出器376からの検出信号により、生物体が検出された場合、検出された粒子群(所定時間内に所定個数以上検出された所定サイズの粒子)は生物体である」と判定する点。
(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点6について先に検討する。
引用文献5には、上記「第5 2.(4)」で認定したとおりの技術的事項が開示されており、すなわち、当該技術的事項は、粒子を「個々に」生物粒子か否かを判定するものである。
一方、引用発明の「生物粒子判定手段」は、「微粒子検出器366からの検出信号により、所定サイズの粒子が所定時間内に所定個数以上検出され、かつ、第二の光学検出器376からの検出信号により、生物体が検出された場合、検出された粒子群(所定時間内に所定個数以上検出された所定サイズの粒子)は生物体である」と判定するもの、すなわち、粒子を「群として」生物粒子か否かを判定するものであるから、引用発明に、引用文献5に記載の、粒子を「個々に」生物粒子か否かを判定するための技術的事項を適用する動機付けは存在しない。
したがって、引用文献5に記載された技術的事項が、たとえ上記相違点6に係る本願発明1の構成を備えているとしても、引用発明を出発点として上記相違点6に係る本願発明1の構成を得ることはできない。
また、上記相違点6に係る本願発明1の構成は、引用文献2~4(上記「第5 2.(1)~(3)」を参照。)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもない。
以上のことから、上記相違点6に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の全ての構成を備え、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明3及び4について
本願発明3及び4は、本願発明1及び2の物の発明を、方法の発明にカテゴリー変更しただけのものであるから、本願発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
原査定における主引用例である引用文献Aは、当審拒絶理由通知における引用文献1と同じ文献であることから、本願発明1と引用文献Aに記載された発明との一致点・相違点は、上記「第6 1.(2)」で示したとおりのものである。
そして、上記相違点6に係る本願発明1の構成は、原査定における引用文献A~Eには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1~4は、当業者であっても、原査定における引用文献A~Eに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013072