特許拒絶査定不服審判
2016-012308
セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素の分離安定固定化方法
- 審判番号
- 2016-012308
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-155623外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月15日
- 審決日
- 2017年05月30日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ユニオン昭和株式会社
- 【請求人代理人】大谷 保
- 分類
- P18 .121-WY (G21F) / P18 .537-WY (G21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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特願2012-155623「セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素の分離安定固定化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日出願公開、特開2014- 16311、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月11日の出願であって、平成28年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月8日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年5月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年8月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成29年4月13日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月26日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成29年4月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、A型ゼオライト及びモルデナイトから選ばれる少なくとも1種のゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた多核種の元素を吸着した吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)と、を有する多核種の元素の分離安定固定化方法であって、
前記工程(2)において、600~700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する、分離安定固定化方法。」
なお、本願発明2ないし7は、いずれも、本願発明1をさらに減縮した発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭58-184598号公報)には次の事項が記載されている。
ア「本発明の目的は放射性廃液のガラス固化において、特にセシウム等の揮発成分の揮発を抑制して放射性廃液を安定にガラス中に固定化する方法を提供することを目的とする。
核分裂生成物中で最も水に溶け出し易く、半減期の長い元素はセシウムとストロンチウムである。しかも、セシウムは高温での熱処理工程において揮発しやすい。ゼオライト系の吸着剤がセシウム及びストロンチウムに対して選択的なイオン交換特性を持つことが知られており、放射性廃液中からこれらの危険核種を選択的に吸着除去できる。しかも、特願昭55-13646に示すようにフエロシアン化金属をゼオライトに添着するとセシウムに対する選択性は飛躍的に向上する。しかし、吸着しただけでは安定に固定化することはできない。しかし、本発明者らの実験の結果、放射性廃液にゼオライト系吸着剤を加えて、セシウム等を吸着させた後、これにケイ酸ソーダ溶液及び添加剤を加えてゲル化すると、ゼオライト系吸着剤はゲル中に分散し、これを加熱処理してガラス固化体とすると、ゼオライトは分散状態のままガラス中に取り込まれ、同時に吸着成分とゼオライトまたはガラス成分との反応が起つて安定な化合物となり、ほとんど揮発が生じないことがわかつた。特に添加剤としてホウ素化合物を加えた場合、ガラスはホウケイ酸ガラスとなり、ガラス自体の化学的耐久性も良くなるうえに、水に溶解し易いセシウム等が安定な化合物となつているので廃液成分の水中への浸出は非常に低くなる。
第1図に加熱処理温度とセシウムの浸出率の関係を第2図に加熱処理温度とセシウムの揮発率との関係を示すが、揮発を抑制しながらセシウム浸出率の低い固化体を形成するためには1000℃~1100℃で加熱処理するのが適切であると考えられる。これは、ホウケイ酸ガラスの溶融に適した温度である。ゆえに、1000℃~1100℃で加熱処理すればCsの揮発を抑制しながら化学的に安定なガラス固化体をつくることができる。
以下、本発明の一実施例を第3図により説明する。本実施例は核燃料再処理工場の高レベル放射性廃液固化装置に適用したもので、貯蔵容器内でガラス固化のための加熱処理を行うことを目的としている。
フエロシアン化銅添着ゼオライトが吸着剤貯蔵容器1に貯蔵されている。廃液タンク2中の高レベル放射性廃液に吸着剤貯蔵容器1から廃液中セシウム量に応じたフエロシアン化銅添着ゼオライトが供給され、攪拌器7で攪拌される。フエロシアン化銅添着ゼオライトを含む高レベル放射性廃液は貯蔵容器5に供給される。ケイ酸ソーダ溶液タンク3中のケイ酸ソーダ溶液及び添加剤タンク4中のホウ酸が貯蔵容器5に供給され、攪拌器8で廃液と混合される。ゲル化が完了したら攪拌をやめ、貯蔵容器5′は加熱炉6で200℃で乾燥される。乾燥終了後、今度は1100℃まで温度を上げガラス固化体を形成した後、5″のように上端を溶接して貯蔵される。
本実施例によれば、同一容器内でガラス固化処理工程が行なえ、しかも揮発性のあるセシウムを吸着剤で保持しているため、ガラス固化処理時に外界に放射能がもれる可能性が少ない。
本発明によれば、放射性廃液中の揮発成分の揮発を抑制しながら、放射性廃液をガラス中に安定に固定化することができる。」(1頁右下欄16行~2頁左下欄19行)
イ「第3図
」
(2)したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「フエロシアン化銅添着ゼオライトが吸着剤貯蔵容器1に貯蔵され、廃液タンク2中の高レベル放射性廃液に吸着剤貯蔵容器1から廃液中セシウム量に応じたフエロシアン化銅添着ゼオライトが供給され、攪拌器7で攪拌され、フエロシアン化銅添着ゼオライトを含む高レベル放射性廃液は貯蔵容器5に供給され、ケイ酸ソーダ溶液タンク3中のケイ酸ソーダ溶液及び添加剤タンク4中のホウ酸が貯蔵容器5に供給され、攪拌器8で廃液と混合され、ゲル化が完了したら攪拌をやめ、貯蔵容器5′は加熱炉6で200℃で乾燥され、乾燥終了後、今度は1100℃まで温度を上げガラス固化体を形成する放射性廃液のガラス固化方法。」
2 引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(許俊男、三村均、天満元昭、菅野卓治,<報文>ゼオライトによる高レベル放射性廃液からのCs,Srの除去ならびに沈殿物の固化,東北大学選鉱製錬研究所彙報,日本,1984年 9月25日,Vol.40, No.1,p.38-48)には次の事項が記載されている。
「1. 緒言
核燃料サイクルのダウンストリームにおける,高レベル放射性廃液の処理処分法の確立は,原子力開発の上で極めて重要な課題である.我が国においても,近年になって,廃液の固化技術に関する研究開発が活発になされており,中でもガラス固化法は廃棄物の一括固化法としてかなりの報告が認められる.しかし,熱力学的に準安定なガラスは,熱水および高放射線下においては,その本来の特性が失われる可能性があると指摘されている.
このため,熱力学的に安定なセラミックス固化体が有望視されており,スーパーカルサイン,シンロック等の鉱物固化法が提案されている.一方,著者らは,CsおよびSrを対象とした場合には,無機イオン交換体の一種であるゼオライトを用いることにより,これら核種を選択的に交換吸着し,高温焼成すれば,極めて安定な固化体の製造が可能であることを報告している.ゼオライトはこのような交換吸着剤としての性能を有するほかに,アルミノケイ酸塩組成を有することから固化素材としても利用できるものと考えられる.
以上の観点から,本研究では,ゼオライトの応用範囲を拡げて,脱硝沈殿物およびCs,Srを同時に固化する方法について検討した.すなわち,脱硝廃液からゼオライトによりCsとSrを選択的に吸着除去し,これを脱硝沈殿物と混合し,このプレス成型体を高温焼成することにより,緻密でかつ浸出性の低い安定なセラミックス固化体の製造法について検討した.
2. 実験
2.1 ゼオライト
使用したゼオライトとしては,合成ゼオライトA型(A-4,東洋ソーダ製),X型(F-9,東洋ソーダ製),Y型(SK-40,ノートン社製),モルデナイト(栗田工業製,以下SMと略す),天然産のシャバサイト(米国産,Linde IE-96,以下Cと略す),モルデナイト(宮城県川原子産,以下NMと略す)およびクリノプチロライト(山形県板谷産,以下CPと略す)の計7種類である.これらのゼオライトの化学組成は,Table 1 にまとめて示した.いずれも200メッシュ程度の粉末とした後,飽和NH4Cl の溶液の入った密封容器内で数日静置し,吸着水量を平衡に保ったものを,一定量精秤して実験に使用した.
(---Table 1 :省略---)
2.2 廃液および脱硝
前報でも示したように,動燃再処理廃液組成に準じて調製した.本実験では,15成分系の模擬廃液(Na,Cr,Fe,Ni,Rb,Sr,Zr,Mo,Ru,Rh,Pd,Te,Cs,Ba,La-2N硝酸溶液)を使用した.廃液中のCsおよびSrの各濃度は、それぞれ0.0371および0.0165Mである.脱硝は,ギ酸による硝酸分解法を採用し,前報で示した実験装置を用いて実施した.すなわち,模擬廃液50mlをテフロン製三角フラスコに入れ,加熱沸とう後,一定量の0.5N NaNO2を加え,さらに25N HCOOHを徐々に添加し6時間脱硝した.なお,ギ酸と硝酸のモル比([HCOOH]/[HNO3])は1.25~2.25とした.脱硝後,ガラスフィルター(G4)で脱硝沈殿をろ別した溶液は,脱硝廃液として吸着実験に使用した.
2.3 脱硝廃液からのCsおよびSrの吸着
各ゼオライト1gを,上記の脱硝廃液50mlに添加し,Cs吸着の場合は25℃で1時間,Srの場合は25℃で24時間振とうし,平衡後の上澄み液を遠心分離(3,000rpm,5分間)した後,そのγ放射能を測定して吸着率(%)を求めた.脱硝酸液の初期pHは6.3~7.6のほぼ中性であり,トレーサーとして使用した137Csもしくは85Sr(核理研LINACにて照射製造)の放射能はほぼ10-2μCi/mlであった.なお,ゼオライト量を1~5gまで変化させた場合の,CsおよびSrの吸着率の変化も調べた.次に,ゼオライトを混合した場合の,吸着率および吸着速度について検討した.混合系としては,SrおよびCsにそれぞれ高い選択性を有するAおよびモルデナイトを選び,各々重量比で0~100%まで混合比率を変化させたものを使用した.混合ゼオライトの全量は5gとし,脱硝廃液50mlに添加して,25℃の恒温槽内で振とうして吸着実験を行なった.振とう時間は,Cs吸着で1時間,Srの場合は36時間とした.一定時間毎に液相を一定量サンプリングし,遠心分離した後,そのγ放射能を測定して,吸着率およびその時間的変化を調べた.サンプリング液は毎回もどしており,固/液比は一定である.なおCs吸着の場合は,吸着速度が極めて速いためバッチ法により行なった.
2.4 脱硝沈殿物の固化処理
2.4.1 脱硝沈殿物の収量およびCsとSrの沈殿率
脱硝時のギ酸のモル比を1.25~2.25まで変化させ,生成した脱硝沈殿物をろ別後,約75℃で乾燥後秤量した.この沈殿の収量と脱硝時のpHとの関係について調べた.なお,あらかじめ模擬廃液にトレーサーとして137Csもしくは85Srを10-2Ci/ml程度添加しておき,脱硝前後の液中のγ放射線の変化を調べることにより,CsおよびSrの沈殿率も調べた.
2.4.2 脱硝沈殿物のゼオライトによる固化
脱硝後,種々のPhで生成した上記の沈殿物を,各種ゼオライト(Na型のAゼオライト,合成モルデナイトおよびその混合体)と1:1(混合比)で混合し,プレス成型後(2.3×103kg・cm-2),1200℃で1時間焼成することによりセラミック固化体を製造した.焼成固化体の粉末X線回折(Cu-Kα,30kV,10mA,scale factor×4000)を行なって生成相をを固定し,脱硝沈殿の生成時のpHによる,固化体中の生成相の変化を調べた.
2.4.3 ゼオライトの加熱変化
脱硝廃液([HCOOH]/[HNO3]=2.0で脱硝,pH6.3~7.6)50mlにゼオライト(Na型のAゼオライト,合成モルデナイトもしくはその混合体)を一定量添加した.25℃で24時間振とうし,平衡後ゼオライトを取り出し,水洗乾燥後プレス成型したものを,1200℃までの各温度で1時間焼成した.焼成後,X線回折を行ない,焼成温度によるゼオライトの加熱変化について調べた.焼成後,X線回折を行ない,焼成温度によるゼオライトの加熱変化について調べた.なお,各ゼオライトの使用量は,2.3の結果を基に,CsとSrの吸着が90%以上達成できる量とした.
2.4.4 脱硝沈殿物とゼオライトの反応
上記と同様の実験であるが,ここではゼオライトを固化素材としても利用するため,沈殿とゼオライトを同時に炉過し,水洗乾燥した.これらを混合しプレス成型後,1200℃までの各温度で1時間焼成した.得られたセラミックス固化体のX線回折を行ない,焼成温度による焼成相の固定およびその相変化について調べた.
2.4.5 固化体からのCsとSrの浸出性
固化素材としてのゼオライト量を増加し,脱硝沈殿物の含有量を10%程度とした固化体を製造して,CsとSrの浸出試験を行なった.浸出試験に用いた固化体の製造法は以下の通りである.すなわち,模擬廃液を[HCOOH]/[HNO3]=2.0で脱硝して,Aもしくは合成モルデナイトを一定量添加し,24時間後吸着平衡に達したゼオライトおよび脱硝沈殿物を,同時に炉別する.これらを水洗乾燥後,プレス成型して固化体を製造した.これら固化体は,65~100メッシュの粉末状とし,あらかじめN2ガス吸着法によって,その比表面積を測定しておく.浸出試験は,試料を1g精秤し,50mlの蒸留水中で25℃で24時間振とうして行なった.上澄液を遠心分離後,一定量採取して,液中に浸出したCsおよびSr量を,原子吸光法(パーキンエルマー社製460型原子吸光度計使用)で測定し,浸出率(g/cm2・day)を求めた.」(38頁本文1行~41頁6行)
(2)したがって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「脱硝廃液からゼオライトによりCsとSrを選択的に吸着除去し,これを脱硝沈殿物と混合し,このプレス成型体を1200℃で1時間焼成することにより,緻密でかつ浸出性の低い安定なセラミックス固化体を製造する方法。」
3 周知例
(1)原査定に周知例として引用された特公昭62-43519号公報(周知例1)には次の事項が記載されている。
ア「特許請求の範囲
1 放射性物質取扱施設から発生する水溶液状廃液中の放射性セシウムを除去する方法において、フェロシアン化金属化合物を添着したゼオライトを吸着剤として用いることを特徴とする放射性廃液の処理方法。」(1頁左欄1~6行)
イ「フェロシアン化物を作る金属としては、銅,亜鉛,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,あるいは、これらの複数種を用い、また、ゼオライトとしてはイオン交換容量が大きく、分子ふるいとして空洞径の大きいX型を用いるのが好ましい。」(2頁左欄18~22行)
(2)原査定に周知例として引用された特開昭56-111041号公報(周知例2)には次の事項が記載されている。
ア「特許請求の範囲
1 水に難溶なフェロシアン化物を生成する金属をゼオライトの空洞内にイオン交換吸着させ、このゼオライトを可溶性フェロシアン化物水溶液で処理することにより上記ゼオライトの表面および空洞内に上記金属のフェロシアン化金属化合物を生成沈着させた後、熟成処理を施すことを特徴とするフェロシアン化金属化合物を添着させたゼオライトの製法。 」(1頁左下欄1~9行)
イ「ゼオライトは空洞容積および交換容積が大きなX型が好ましいが、Y型も使用することができる。」(2頁左欄37~38行)
(3)ゼオライトの種類としてX型は通常のものであって、上記の周知例1,2から、X型ゼオライトにフェロシアン化金属化合物を添着することは周知技術であると認められる。
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「フエロシアン化銅添着ゼオライトが吸着剤貯蔵容器1に貯蔵され、廃液タンク2中の高レベル放射性廃液に吸着剤貯蔵容器1から廃液中セシウム量に応じたフエロシアン化銅添着ゼオライトが供給され、攪拌器7で攪拌され」ること(工程)と、本願発明1の「不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、A型ゼオライト及びモルデナイトから選ばれる少なくとも1種のゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素を吸着する工程(1)」とは、「不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、ゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウムを含む元素を吸着する工程(1)」である点で一致する。
引用発明の「フエロシアン化銅添着ゼオライトを含む高レベル放射性廃液は貯蔵容器5に供給され、ケイ酸ソーダ溶液タンク3中のケイ酸ソーダ溶液及び添加剤タンク4中のホウ酸が貯蔵容器5に供給され、攪拌器8で廃液と混合され、ゲル化が完了したら攪拌をやめ、貯蔵容器5′は加熱炉6で200℃で乾燥され、乾燥終了後、今度は1100℃まで温度を上げガラス固化体を形成する」こと(工程)と、本願発明1の「前記工程(1)により得られた多核種の元素を吸着した吸着剤を焼成してセラミックス状固化体とする工程(2)」とは、「前記工程(1)により得られた元素を吸着した吸着剤を加熱処理して固化体とする工程(2)」である点で一致する。
引用発明の「ガラス固化体を形成する放射性廃液のガラス固化方法」が本願発明1の「分離安定固定化方法」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「不溶性フェロシアン化合物(A)を添着した、ゼオライト(B)よりなる吸着剤を被処理液に接触させて、セシウムを含む元素を吸着する工程(1)と、
前記工程(1)により得られた元素を吸着した吸着剤を加熱処理して固化体とする工程(2)とを有する分離安定固定化方法。」
(相違点)
(相違点1)ゼオライトについて、本願発明1では、「A型ゼオライト及びモルデナイトから選ばれる少なくとも1種のゼオライト」であるのに対し、引用発明においては、そのような特定がない点。
(相違点2)吸着する元素が、本願発明1では「セシウム及びストロンチウムを含む多核種の元素」であるのに対し、引用発明では「セシウム」である点。
(相違点3)セシウムを含む元素を吸着した吸着剤を加熱処理して固化体とする工程が、本願発明1では「焼成してセラミックス状固化体とする工程」であって「600~700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する」工程であるのに対し、引用発明では「加熱炉6で200℃で乾燥」の後、「1100℃まで温度を上げガラス固化体を形成する」工程である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について検討すると、「セシウムを含む元素を吸着した吸着剤を」「焼成してセラミックス状固化体とする工程」において「600~700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する」という技術事項は、引用文献2にも記載されていない。
すなわち、引用文献2においては、、「セシウムを含む元素を吸着した吸着剤を」「焼成してセラミックス状固化体とする工程」において「1200℃で1時間焼成する」技術事項が開示されているにとどまり、特定温度でセシウムをゼオライトに移行させた後に高温(1000℃以上)で焼成するという技術思想は示唆もされていない。この点が周知例1,2に記載されていないことはいうまでもない。
すると、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項が当業者によって容易に想到したものであるということはできない。
そして、この相違点3に係る発明特定事項により、本願発明1は、吸着した元素(セシウム)を安定固定化することができるという格別顕著な作用効果を奏する。
(3)小活
したがって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
2 本願発明2ないし7について
また、本願発明2ないし7についても、上記の相違点3に係る本願発明1の「焼成してセラミックス状固化体とする工程であって、600~700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する工程」であるという発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様に、本願発明2ないし7は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項並びに周知例1,2に記載された周知例に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1に係る発明について、上記引用文献1,2及び周知例1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年4月26日付けの手続補正により補正された請求項1は「焼成してセラミックス状固化体とする工程」であって「600~700℃の条件で処理し、不溶性フェロシアン化合物に吸着したセシウムをゼオライトに移行させた後に、1000℃以上で処理する」工程という発明特定事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし7は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の記載について、本願における課題を解決できるものであることが明確でなく、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年4月26日付けの手続補正における補正の結果、この拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおりであり、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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