特許拒絶査定不服審判
2016-012078
親水性チオールプローブ
- 審判番号
- 2016-012078
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-532520外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月09日
- 審決日
- 2017年04月04日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .113-WY (G01N) / P18 .121-WY (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-532520「親水性チオールプローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開、WO2013/035513、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月17日(優先権主張:平成23年9月9日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、平成27年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日に意見書と手続補正書が提出された後、同年9月9日付けで拒絶理由が通知され、同年11月27日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成28年4月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成27年11月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
下記式(I):
【化1】
(式中、R1は架橋基であり、炭素数1~3の炭化水素基又は炭素数2~6のアルキレンオキシド含有基を表し、R2は置換アンモニウム基又は置換アミノ基を表す)
で示される、タンパク質の質量分析用チオールプローブ。」(以下、「本願発明1」という。)
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
1.(新規性)本願の請求項1、3及び15に係る発明は、本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願の請求項1~9及び15に係る発明は、本願の優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2008-500446号公報
2.国際公開第2011/018227号
3.Thermoscientific、EZ-Link Iodoacetyl-LC-Biotin; EZ-Link Iodoacetyl-PEG2-Biotin、INSTRUCTIONS、2008年1月1日、
http://www.funakoshi.co.jp/data/datasheet/PCC/21334.pdf
引用文献1には、分析物の検出に使用するタンパク質のアミノ酸のシステイン残基に結合できるチオール反応性基を有するフルオロフォア(チオールプローブに相当する)であって(段落0003、0008)、式(I)と同一のものが記載されている(段落0067の化合物(9)参照)。
請求項1,3に係る発明は、引用文献1に記載された発明と格別相違しない。
引用文献2には、システインのチオール基と反応させるためのヨードアセチル足場(チオールプローブに相当する)であって、式(I)と同一のものが記載されており、これを質量分析によって検出することも記載されている。
請求項1、3、15に係る発明において「プローブ」であることを特定することにより、引用文献2のヨードアセチル足場と構造、組成上の差異を生ずるものとは認められない。
第4 当審の判断
1 本願発明1について
(1)引用例1(特表2008-500446号公報)の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張日前に頒布された特表2008-500446号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。「・・・・」で略記箇所があることを示す。)
(引1ア) 「【請求項1】
式
A-Y
を有するフルオロフォアであって、
式中、Aは、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核およびアザクマリン核からなる群から選択され;および
Yは、
【化1】
(式中、nは1から6の整数);
A’-CO-R1(式中、A’は-R2O-または-R2N(R3)-、R2はC1からC6のアルキル、R3はHまたはCH3、およびR1はCH2Cl、CH2Br、CH2I);または
【化2】
・・・・
であることを特徴とするフルオロフォア。
・・・・
【請求項23】
式
A-Y’-B
を有するバイオセンサー化合物であって、
式中、Aは、蛍光発光を示し、かつスクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核、およびアザクマリン核からなる群から選択されるフルオロフォアであり、
Y’-Bは、
【化20】
・・・・
(式中、nは1から6の整数)であり、
またはY’-Bは、A’-CO-V-Bであり、A’は-R2O-または-R2N(R3)-、(式中、R2はC1からC6のアルキル、R3はHまたはCH3)であり、およびV-Bは、-CH2-Bまたは
【化21】
・・・・
(式中、mは2から6の整数であり、
Bは、検出されるリガンドに結合親和性を有するレセプター)であり、前記バイオセンサー化合物は、前記リガンドの結合の結果としての蛍光特性における検出可能な変化を示すことを特徴とするバイオセンサー化合物。
・・・・
【請求項33】
少なくとも1つの変異結合タンパク質を有し、前記結合タンパク質のチオール基を介して前記結合タンパク質に共有結合されたフルオロフォアを伴うバイオセンサー化合物であって、前記フルオロフォアは、少なくとも約575nmで発光蛍光を示し、スクエアレイン核、ナイルレッド核、ベンゾジオキサゾール核、クマリン核およびアザクマリン核からなる群から選択されるバイオセンサー化合物を提供する工程、
前記結合タンパク質を分析物源と接触させて、前記分析物を前記結合タンパク質に結合させる工程、および、
前記結合タンパク質をエネルギー源に曝して前記フルオロフォアを励起する工程、および前記分析物源の分析物または分析物濃度の指標として蛍光特性を検出する工程
を含むことを特徴とする分析物の検出方法。」
(引1イ)「【0066】
1つの実施形態では、アザクマリン核は、式
【0067】
【化18】
または
・・・・
【0068】
を有する。」
(2)本願発明1と引用例1に記載された発明との対比、検討
(2-1)引用例1に記載された発明
ア 上記(引1ア)及び(引1イ)の記載からみて、引用例1には、次の化学物質が記載されている。
「下記の式:
であるフルオロフォア。」(以下、「引例1発明」という。)
(2-2)本願発明1と引例1発明との対比
ア 本願発明1の式(I)の「R1」には、炭素数2の炭化水素基であるエチル基が含まれる。
イ 上記アを勘案して、本願発明1と引例1発明とを対比すると、両者は、
(一致点)
「 下記の式(I):
I-CH2-CO-O-CH2-CH2-R’2
(式中、R’2は窒素を介してメチル基に結合する基を表す)
で示される分析用の化合物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
化合物中の「R’2」が、本願発明1では「置換アンモニウム基又は置換アミノ基」であるのに対し、引例1発明では、窒素を介してメチル基に結合する基ではあるものの、ベンゼン環や二重結合、さらに複素環を含む縮合環構造をも含み、メチル基とは反対側に置換アミノ基を含む、蛍光発光を生じるために必要な構造部分アザクマリン核を有する、複雑な含窒素構造基である点。
(相違点2)
分析用の化合物ではあるが、本願発明1は「タンパク質の質量分析用チオールプローブ」であるのに対し、引例1発明は「フルオロフォア」である点。
(2-3)相違点についての検討
上記相違点2について検討する。
ア 「フルオロフォア」は、「蛍光色素分子」、「蛍光発色団」などの日本語に訳される物質であって、引用例1には、引例1発明だけでなく、記載された「フルオロフォア」や当該フルオロフォアを用いた「バイオセンサー化合物」をタンパク質の質量分析において使用することは、何ら記載も示唆もされていない。
イ そうすると、引用例1には本願発明1の「タンパク質の質量分析用チオールプローブ」が記載されているとも認められないし、引例1発明が「タンパク質の質量分析用チオールプローブ」に適用できることが当該技術分野において自明であるともいえないので、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用例1に記載された発明であるとはいえず、また、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ また、引用例2(国際公開第2011/018227号)には、ペプチドと結合するヨードアセチル足場が記載されているが、本願発明1の「タンパク質の質量分析用チオールプローブ」が記載されているとは認められないし、ヨードアセチル足場が「タンパク質の質量分析用チオールプローブ」に適用できることが当該技術分野において自明であるともいえないことから、本願発明1は、引用例2に記載された発明であるとはいえず、また、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 請求項2~9、15について
請求項2~9、15に係る発明は、請求項1を直接的又は間接的に引用して特定されている発明であるから、上記1で請求項1に係る発明について検討した結果と同様の理由で、引用例1又は引用例2に記載された発明に該当するものであるとも、引用例1又は引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。
3 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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