特許拒絶査定不服審判
2016-011740
アモルファスおよび部分的にアモルファスからなるナノスケールイオン貯蔵材料
- 審判番号
- 2016-011740
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-097415外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月04日
- 審決日
- 2018年03月26日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エイ123・システムズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
- 【請求人代理人】山田 卓二
- 【請求人代理人】田中 光雄
- 【請求人代理人】中野 晴夫
- 分類
- P18 .113-WY (C01B) / P18 .121-WY (C01B) / P18 .536-WY (C01B) / P18 .537-WY (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 97415「アモルファスおよび部分的にアモルファスからなるナノスケールイオン貯蔵材料」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-227215、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2006年12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年12月2日、米国、2006年4月3日、米国)を国際出願日とする特願2008-543508号の一部を平成25年5月7日に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月4日付けで手続補正がされ、平成26年11月28日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月2日付けで手続補正がされ、平成28年3月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、平成28年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年6月1日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、平成29年10月6日付けで手続補正がされ、平成29年10月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成30年1月31日付けで手続補正がされたものである。
なお、平成26年6月24日付け、平成27年4月21日付け、平成28年8月31日付け、及び、平成29年11月1日付けで刊行物等提出書が提出されている。
2 原査定の概要
原査定(平成28年3月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(1)本願請求項1~18に係る発明は、以下の引用文献1の実施例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願請求項1~18に係る発明は、以下の引用文献1の実施例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特表2005-514304号公報
3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由1及び2の概要は次のとおりである。
(1)本願の特許請求の範囲の「質量または体積で少なくとも5%のアモルファス相」との記載、「最小断面のディメンジョン」との記載、及び、表現ぶりが互いに整合していない記載が不明確であるから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段を反映していないため、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3)本願の発明の詳細な説明には、本願発明に対応する実施例が記載されておらず、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4)本願請求項1~3、5~8、11~13、15、16に係る発明は、上記引用文献1の実施例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(5)本願請求項1~8、11~16に係る発明は、上記引用文献1の実施例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4 本願発明について
本願請求項1~13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明13」という。)は、平成30年1月31日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
【請求項1】
LiaMcNdXeOf(ここで、Mは、1以上の第1列遷移金属、Nは、周期律表のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、IIB族、IIIB族、若しくはVIIB族の元素、Xは、P、0≦a≦1、0.8≦c≦1.2、0≦d≦0.10、0.9≦e≦2.2、および3.6≦f≦8.8)で示される金属リン酸塩又はリチウム金属リン酸塩であって、さらに炭素を少なくとも4.00質量%含み、少なくとも10m2/gの比表面積を有し、調製された状態において、前記金属リン酸塩はアモルファス相であり、前記リチウム金属リン酸塩はアモルファス相及びかんらん石相を有する、ナノスケールマテリアル。
【請求項2】
上記Mが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選択された第1列遷移金属の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項3】
上記Mが、Feであることを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項4】
上記Mが、Mn及びFeを含むことを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項5】
上記NがNbであることを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項6】
上記調製された状態で、上記1以上の第1列遷移金属の濃度に比して、少なくとも5モル%の濃度でリチウムを含有することを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項7】
上記調製された状態で、上記1以上の第1列遷移金属の濃度に比して、少なくとも10モル%の濃度でリチウムを含有することを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項8】
上記調製された状態で、上記1以上の第1列遷移金属の濃度に比して、95モル%以下の濃度でリチウムを含有することを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項9】
上記調製された状態で、上記1以上の第1列遷移金属の濃度に比して、85モル%以下の濃度でリチウムを含有することを特徴とする請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項10】
少なくとも25m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項11】
少なくとも50m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1記載のナノスケールマテリアル。
【請求項12】
請求項1記載のナノスケールマテリアルを含むカソード。
【請求項13】
請求項12記載のカソードを含む電気化学セル。
5 引用文献について
(1)引用文献1(特表2005-514304号公報)には、次の記載事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。
ア 「【0083】
実施例1.金属ドープ組成物
本実施例では、式Li(Fe1-aM’’a)PO4[式中、M’’は、Al、Ti、Zr、Mn、Nb、Ta、W、Mg、またはLiである]を有する組成物の調製を実証する。具体的な組成物、熱処理および結果を、それぞれ表2および3に挙げる。・・・
・・・
【0091】
各試料を調製するために、化合物のそれぞれを、アルゴンを充満させたグローブボックス内で秤量した。その後、それらをグローブボックスから取り出し、ポリプロピレン製ジャー内で、ジルコニア微粉砕ボールをアセトン中で約20分間用いて、ボールミル粉砕した。微粉砕された混合物を100℃以下の温度で乾燥した後、アルゴンを充満させたグローブボックス内で乳鉢および乳棒を用いて摩砕した。次に、混合物のそれぞれを、表3に“HT1”~“HT7”として挙げた条件下で熱処理した。各場合において、350℃で10時間にわたる第1の熱処理を、指定のガス雰囲気の流通下で実施した。その後、粉末試料のそれぞれを、乳鉢および乳棒を用いて摩砕し、指定のガス雰囲気の流通下、より高温での第2の熱処理に付した。
・・・
【0096】
【表4】
・・・
【0098】
【表6】
・・・
【0100】
【表8】
」
イ 「【0111】
実施例2.リチウム欠損組成物および置換組成物
いくつかの組成物は、表2に挙げた式Li1-aM’’aFePO4の全体組成物を用いて調製した。プラスチック製および磁製微粉砕容器の両方をジルコニア微粉砕媒体と一緒に用いた点を除き、実施例1の出発材料および合成手順を用いた。ポリマー製微粉砕容器と微粉砕媒体との摩耗が炭素源になりうるので、磁製容器は、この潜在的な炭素源の有無で結果を比較するために用いた。
・・・
【0121】
実施例2の粉末について、TEM観察を実施した。図13は、1%Nbまたは1%Zrでドープした粉末のTEM像のコピーを示している。個々の微結晶の平均サイズが、Nbドープ試料で約100nm未満、Zrドープ試料で約50nm未満であり、粉末が凝集した形態を有することがわかる。燃焼IR分析により焼成条件に応じて典型的には0.2~2.5重量%であると決定されるレベルで存在する残留炭素について、エネルギー分散型X線分析を実施して、その位置を決定した。図14は、600℃で焼成した1%Nbドープ試料中の領域のTEM像および相応する化学分析を示しており、約2.4%の残留炭素を有すると分析された。実施例2の他のものに比べ比較的残留炭素含量の高いこの試料をTEMに選択して、従来技術で行われているような粒子状の炭素被膜が存在するかを決定した。図14は、炭素が富んだレベルで見いだされ、試料中に少量で存在する、未反応前駆体の粒子を示している。オリビン相を含有する他の領域では、炭素は検出されない。図15および16は、オリビン相粒子の高分解能TEM像を示しており、格子縞が画像化されている。炭素または他の別個の伝導性化合物の連続表面相は、見いだされなかった。したがって、これらの試料の微細粒子サイズおよび増大した伝導性は、有意な量の遊離炭素のない試料中で観察されることがわかる。
【0122】
表面積測定は、有効な粒子サイズの他の周知の尺度である。BET法を用いて、いくつかの条件下で熱処理したドープ試料および非ドープ試料の比表面積を測定した。表4は、さまざまな粉末試料の結果を示している。非ドープ粉末は、600℃以上の熱処理温度の場合、典型的には約10m2/g未満の比表面積を有することが観察される。これらは、ほぼ完全に結晶化した粉末を提供するのに足る熱処理条件である。しかしながら、ドープ組成物は、はるかに大きな表面積を有し、典型的には、600℃で焼成した1%Zrドープ粉末では40m2/gを超え、600℃で焼成した1%Nbドープ粉末では30m2/gを超える。これらの温度での焼成後、ドープ試料では、少量の完全に結晶化していない前駆体がオリビン相に残るが、粉末はほぼ完全に結晶化する。・・・
【0123】
【表9】
」
ウ 「【0150】
実施例6.微粉砕媒体および容器からのドーピング
本実施例は、高い電子伝導率を得るためのドーピングを、適切な微粉砕媒体および容器を用いて実現することができることを示す。また、本発明の材料の高い電子伝導率を、余剰の炭素または他の伝導性添加物を用いることなく得ることができることも示す。表6に、実施例1および2の方法に従って調製したいくつかの材料の炭素およびジルコニウム分析の結果を示す。3/8’’のZrO2微粉砕媒体で微粉砕することにより、検出可能な濃度のZrを試料に加えることができることがわかる。公称非ドープ試料では、微粉砕媒体からのZr濃度が0.018であるときに、約10-3S/cmの高い伝導率が観察される。この加えられたZrを考慮に入れると、試料の組成は、他の伝導率の高い試料と同様のLi1-aZraFePO4タイプを有する。ポリプロピレン製微粉砕ジャーにより、この試料に若干過剰の炭素が加えられていることもわかった。1/4’’のZrO2微粉砕媒体を用いると、生じるZrドーピングは無視しうる。800℃で焼成した非ドープ試料は、0.25重量%の炭素と10-8S/cmの低い伝導率を有する。
【0151】
したがって、表1に挙げたような、ジルコニア微粉砕媒体で微粉砕されている低濃度でドープされた試料も、さらにZrでドープすると、伝導率を改善させることができる。
4種のZrおよびNbドープ試料を、Li1-aM’’aFePO4組成を有し、高い電子伝導率を有するように配合した。1つの例において炭素濃度は2重量%未満であり、他の3つの例では1重量%未満である。もっとも高い伝導率10-2S/cmの試料は、炭素濃度が僅か0.32重量%ともっとも低く、絶縁性の高い非ドープ試料とほぼ同じである。最も高い炭素濃度を有する試料は、最も低い伝導率を有する。これらの結果は、ドープ試料の高い電子伝導率が、炭素濃度と相関せず、むしろここに記載したようなドーピングに相関することを示している。
【0152】
【表11】
」
(2)引用文献1には、上記(1)イによれば、実施例2において、「600℃で焼成した1%Nbドープ試料」が「2.4%の残留炭素」を有し、「比表面積」が「30m2/gを超える」こと、「微結晶の平均サイズ」が「約100nm未満」であること、及び、「焼成後、ドープ試料では、少量の完全に結晶化していない前駆体がオリビン相に残るが、粉末はほぼ完全に結晶化する」ことが記載されている。そして、「600℃で焼成した1%Nbドープ試料」は、上記(1)アの「表2.非ドープおよびドープのリン酸鉄リチウムに関する結果」の「5.ニオブ」の欄の記載、及び、「表3.熱処理条件」の「HT1」の記載からみて、「Li(Nb0.001Fe0.999)PO4」といえる。また、「600℃で焼成した1%Nbドープ試料」の比表面積は、上記(1)イの「表4.絶縁性および伝導性試料の組成、焼成条件、および比表面積」によれば、「34.7m2/g」であるといえる。さらに、「2.4%の残留炭素」は、上記(1)ウの「表6.伝導性リン酸鉄リチウム材料の炭素分析」に「炭素(wt%)」と記載されていることから、2.4wt%の残留炭素を示しているといえる。
これら記載を整理すると、引用文献1には、
「Li(Nb0.001Fe0.999)PO4の組成を有し、2.4wt%の残留炭素を含み、34.7m2/gの比表面積を有し、焼成後の状態において、少量の完全に結晶化していない前駆体がオリビン相に残る、ほぼ完全に結晶化しており、平均サイズが100nmの微結晶である、Nbドープ試料。」の発明(以下、引用発明)という。)が記載されているといえる。
6 原査定及び当審拒絶理由についての判断
(1)特許法第29条(原査定の理由及び当審拒絶理由)について
ア 本願発明1について
(ア)本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「Li(Nb0.001Fe0.999)PO4」は、本願発明1の「LiaMcNdXeOf(ここで、Mは、1以上の第1列遷移金属、Nは、周期律表のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、IIB族、IIIB族、若しくはVIIB族の元素、Xは、P、0≦a≦1、0.8≦c≦1.2、0≦d≦0.10、0.9≦e≦2.2、および3.6≦f≦8.8)で示される金属リン酸塩又はリチウム金属リン酸塩」に相当する。
また、引用発明の「34.7m2/gの比表面積を有」すること、「平均サイズが100nmの微結晶である、Nbドープ試料」は、それぞれ、本願発明1の「少なくとも10m2/gの比表面積を有」すること、「ナノスケールマテリアル」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、
「LiaMcNdXeOf(ここで、Mは、1以上の第1列遷移金属、Nは、周期律表のIIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、IIB族、IIIB族、若しくはVIIB族の元素、Xは、P、0≦a≦1、0.8≦c≦1.2、0≦d≦0.10、0.9≦e≦2.2、および3.6≦f≦8.8)で示される金属リン酸塩又はリチウム金属リン酸塩であって、炭素を含み、少なくとも10m2/gの比表面積を有する、ナノスケールマテリアル」である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明1は、炭素を「少なくとも4.00質量%含」むことを特定しているのに対して、引用発明は、炭素を「2.4wt%」含む点。
(相違点2)
本願発明1は、「調製された状態において、前記金属リン酸塩はアモルファス相であり、前記リチウム金属リン酸塩はアモルファス相及びかんらん石相を有する」ことが特定されているのに対して、引用発明は、「Li(Nb0.001Fe0.999)PO4」が、「焼成後の状態において、少量の完全に結晶化していない前駆体がオリビン相に残る、ほぼ完全に結晶化している」点。
(イ)上記相違点1は、実質的な相違点であるから、上記相違点2を検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるといえない。
なお、原査定では、引用文献1に記載されたLiFePO4の製造方法と、本願明細書の実施例1のLiFePO4の製造方法とに差異が認められないため、これら製造方法で得られたLiFePO4の特性が一致している蓋然性は高いと判断している。
しかしながら、本願明細書の実施例1の製造方法は、ポリプロピレンのジャーにおいて鋼鉄の破砕ボールを使用して72時間ボールミルを行っている(段落【0044】参照)のに対して、引用文献1に記載された製造方法は、上記5(1)アによれば、ポリプロピレン製ジャー内で、ジルコニア微粉砕ボールを用いて20分間ボールミル粉砕しており、引用文献1の実施例1に記載されたLiFePO4において、ポリプロピレンに由来する炭素の含有量が、本願発明1のように4.00質量%以上になっているとはいえない。
(ウ)次に、上記相違点1を当業者が容易に想到し得ることかについて検討する。
引用文献1には、上記5(1)イ及びウによれば、引用発明の「2.4wt%の残留炭素」は他のものに比べて高い炭素含量であること、及び、炭素含量は電子伝導率に相関しないことが記載されているが、炭素含量を2.4wt%よりも高くすることは記載も示唆もされていない。また、リチウム金属リン酸塩のアモルファス相及びかんらん石相の安定化のために、炭素を少なくとも4.00質量%含有させることが、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
よって、引用発明において、炭素を少なくとも4.00質量%含有させることは、当業者が容易に想到し得ることでない。
したがって、上記相違点2を検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
イ 本願発明2~13について
本願発明2~13は、本願発明1を更に減縮したものであるから、上記アと同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるといえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。
(2)特許法第36条(当審拒絶理由)について
平成30年1月31日付けの手続補正によって、特許請求の範囲の請求項1において、「金属リン酸塩又はリチウム金属リン酸塩であ」ること、「炭素を少なくとも4.00質量%含」むこと、「少なくとも10m2/gの比表面積を有」すること、及び、「ナノスケールマテリアル」であることが特定され、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段が反映されたため、当審拒絶理由1及び2において通知した特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に関する拒絶理由は解消した。
また、同手続補正によって、特許請求の範囲の請求項1~11の「ナノスケールマテリアル」及び請求項12~13の「カソード」の表現ぶりが統一され、さらに、特許請求の範囲の「質量または体積で少なくとも5%のアモルファス相」及び「最小断面のディメンジョン」との記載が削除され、特許請求の範囲の記載は明確になったため、当審拒絶理由1及び2において通知した特許法第36条第6項第2号に関する拒絶理由は解消した。
7 情報提供に対する判断
平成26年6月24日付け、平成27年4月21日付け、平成28年8月31日付け、及び、平成29年11月1日付けの刊行物等提出書において、原査定及び当審拒絶理由通知で引用した引用文献1(特表2005-514304号公報)に加えて、特開2003-203628号公報、特開2005-158673号公報、国際公開第02/089233号、特開2004-14340号公報、特表2005-519451号公報、特開2002-117848号公報、特開2003-346783号公報、森澤諭他,酸化チタンを用いたリートベルト法による結晶相解析精度の向上,平成21年度三重県工業研究所研究報告,2010年,第34巻,第98~102頁(以下、それぞれ「刊行物1」~「刊行物8」という。)が提出された。
刊行物1には、炭素から成る導電パスを組み込んだオリビン型リン酸リチウムの正極活物質粒子が記載され(請求項1参照)、刊行物2には、非晶質の遷移金属リン酸錯体を主体とする電極活物質が記載され(請求項1参照)、刊行物3には、LiFePO4又はLiFeMnPO4からなる平均粒径5~100nmの結晶性粒子状物質が記載され(特許請求の範囲参照)、刊行物4には、リチウム金属リン酸塩の1次粒子が集合した2次粒子であって、1次粒子間に炭素から成る電子導電性物質を介在させた電極材料が記載され(特許請求の範囲参照)、刊行物5には、リチウム金属リン酸塩の電極活物質と電気伝導性炭素状物質を含む電極が記載され(請求項12及び41参照)、刊行物6には、LiFePO4とアセチレンブラックの混合物をペレット状に成形したLiFePO4炭素複合体が記載され(実施例1参照)、刊行物7には、LixMO2(MはCo、Ni、Mnのうちの一種以上)の正極活物質が記載され(請求項2参照)、そして、刊行物8には、リートベルト法について記載されている。
しかしながら、刊行物1~8には、金属リン酸塩又はリチウム金属リン酸塩のナノスケールマテリアルが、調製された状態において、前記金属リン酸塩はアモルファス相であり、前記リチウム金属リン酸塩はアモルファス相及びかんらん石相を有することは記載されていないし、さらに、アモルファス相及びかんらん石相の安定化のために、炭素を少なくとも4.00質量%含有させることも記載されていない。
したがって、刊行物1~8の記載を考慮しても、本願発明1~13の新規性及び進歩性を否定することはできない。
また、上記刊行物提出書において、特許請求の範囲の「一般式LiaCbMcNdXeOf」との化学組成式で示される「化合物」との用語、及び、「質量または体積で少なくとも5%のアモルファス相を有する」との表現の記載不備を指摘しているが、これら記載不備については、平成30年1月31日付けの手続補正によって解消している。
8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審からの拒絶理由のいずれによっても本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-011740