特許拒絶査定不服審判
2016-010130
流量制御弁
- 審判番号
- 2016-010130
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-169661
- 請求日
- 2016年07月05日
- 審決日
- 2017年07月03日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社鷺宮製作所
- 【請求人代理人】瀧野 文雄
- 【請求人代理人】瀧野 秀雄
- 【請求人代理人】津田 俊明
- 【請求人代理人】鳥野 正司
- 【請求人代理人】福田 康弘
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 久保 竜一
- 審判官 遠藤 尊志
- 分類
- P18 .121-Z (F16K) / P18 .575-Z (F16K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-169661「流量制御弁」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 38368〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月19日の出願であって、平成27年8月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年10月30日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成28年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成28年7月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
第2 平成28年7月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年7月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の内容
1-1.本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容されるとともにモータによって移動させられる弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容されるとともにモータによって移動させられる弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、
前記弁部材に設けられるとともに外周縁が前記シリンダ部の内周面に摺動可能に接して、又は、前記シリンダ部に設けられるとともに内周縁が前記弁部材の外周面に摺動可能に接して、前記シリンダ部と前記弁部材との間を封止する環状に形成されたシール部材をさらに備え、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シール部材における前記摺動可能に接する外周縁又は内周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
前記第2の面と前記軸線とがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該第2の面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記第1の面が、環状に形成されるとともに、その内周縁が前記軸線と直交するように形成された前記弁部材における前記弁ポート寄りの端面の外周縁と全周にわたって連接され、
前記第1の面と前記軸線とがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該第1の面が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の流量制御弁。」
1-2.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成27年10月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容された弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容された弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、
前記弁部材に設けられるとともに外周縁が前記シリンダ部の内周面に摺動可能に接して、又は、前記シリンダ部に設けられるとともに内周縁が前記弁部材の外周面に摺動可能に接して、前記シリンダ部と前記弁部材との間を封止する環状に形成されたシール部材をさらに備え、
前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シール部材における前記摺動可能に接する外周縁又は内周縁の内側の平面視面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
前記第2の面と前記軸線とがなす角度β2が0<β2の関係を満たすように、当該第2の面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記第1の面が、環状に形成されるとともに、その内周縁が前記軸線と直交するように形成された前記弁部材における前記弁ポート寄りの端面の外周縁と全周にわたって連接され、
前記第1の面と前記軸線とがなす角度β1がβ1<90度の関係を満たすように、当該第1の面が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の流量制御弁。」
2.補正の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明及び請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容された弁部材」を「前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容されるとともにモータによって移動させられる弁部材」に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
2-1.本件補正発明
本件補正後の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、前記「1-1.」に記載したとおりのものである。
2-2.引用例の記載事項
(1)引用例1
(1-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-211679号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
(ア)「【0001】
本発明は、例えば、空気調和機の冷媒の流量を制御する電動弁に関する。」
(イ)「【0003】
図4は特許文献1に開示された電動弁に類似した電動弁の構造を示す。同図においては、要部にハッチングを施してある。
この電動弁は、特許文献1に記載された電動弁の弁口径を大きくしたものであり、弁体の先端部が弁座口径に合わせて拡大されたものである。
この電動弁は、弁本体10を有し、弁本体10には弁室14と弁室14に通ずるオリフィス16が形成される。
弁本体10に対しては、オリフィス16側のパイプ12aと、弁室14の側面の開口部に通ずるパイプ12bが接続される。弁本体10の弁室14の上部にはねじ軸受20が挿入され、弁本体10に固定される。
ねじ軸受20の中心部には雌ねじ部22が形成される。弁本体10の上部にはベースプレート28が固着され、有底円筒形状のキャン30がとりつけられる。」
(ウ)【0004】
キャン30の外周部には、全体を符号40で示すステータ部材が嵌着される。ステータ部材40は、ヨーク44と、ヨーク44の内部に設けられボビンに巻き付けたコイル46を有し、その全体がプラスチック42で覆われている。コイル46はリード線48を介して給電を受ける。このステータ部材40はキャン30の内部に回転自在に支持されるロータ部材50とともにステッピングモータを構成する。
【0005】
磁性材料でつくられたロータ部材50は、プラスチック材料でつくられた太陽ギヤ部材51に一体に連結され、・・・(中略)・・・
【0007】
・・・(中略)・・・太陽ギヤ52の回転数を大きな減速比で減速して出力ギヤ70に伝達することができる。
【0008】
・・・(中略)・・・これらスリット73a及び平板部73bで構成される継手を介して、出力ギヤ70はドライバ72に連結される。
【0009】
ドライバ72に形成された雄ねじ部74は、ねじ軸受20に形成された雌ねじ部22に螺合されているので、ドライバ72は回転ととともに軸方向に移動する。ドライバ72の軸方向の移動量はボール状の押圧部材76を介して軸状の弁体80に伝達される。このボール状の押圧部材76は、ドライバ72の回転が弁体80に伝達されないように作用する。
【0010】
弁体80は弁本体10の内部に固定されたパイプ状のばねケース90の下部小径部90cにより案内されて軸方向に移動する。」
(エ)「【0014】
本発明の電動弁は、基本的手段として、弁座が形成された弁本体と、前記弁本体に固定され、その内側に雌ねじが形成されたねじ軸受と、前記雌ねじに螺合する雄ねじを備えたドライバと、前記ドライバによる押圧によって、前記弁座に当接又は近接可能とされた弁体と、前記弁本体に固着されたキャンと、前記キャン内に回動自在に配置され、その回転力が前記ドライバを介して前記弁体に伝達されるロータと、前記キャンの外周に配置されたステータと、前記弁体を前記ロータの側に付勢するコイルばね手段とを備え、前記コイルばね手段は、少なくともその一部が前記ねじ軸受側に配置されたものである。
・・・(中略)・・・
【0016】
さらに、前記弁本体は、前記弁体をガイドするガイド部を備えることもできる。
さらにまた、前記弁座の口径及び前記ガイド部の径はほぼ同一であり、前記弁体は、その弁座側の端部、及び該端部と反対側の端部に位置する背圧室を連通する均圧路を備えることもできる。
・・・(中略)・・・
【0018】
また、弁本体に弁体をガイドするガイド部を備えるようにすれば、該弁体の摺動をさらに良好に行うことが出来る。
【0019】
さらに、弁座の口径及びガイド部の径をほぼ同一とし、弁体に、その弁座側の端部、及び該端部と反対側の端部に位置する背圧室を連通する均圧路を形成すれば、弁体前後の圧力バランスがとれ、該弁体の摺動を低トルクで行うことが出来、これにより、当該電動弁のアクチュエータ、ひいては当該電動弁をさらに小型化することができる。」
(オ)「【0022】
本実施例の電動弁の弁本体110は、オリフィス16の弁室14側の開口部に弁座18を有し、これが弁体180の先端に設けられた傾斜部82に対向する。
(カ)「【0033】
図3は、本発明の電動弁の更に他の実施例を示す。図3において、図1、図2および図4と同一の符号は、同一または同等部分をあらわしているので、その説明は省略する。
本実施例の電動弁はさらに大容量の流量を取扱う電動弁に適用される。この例においては、弁本体は、弁本体胴部310及び弁本体蓋部350とより成る。」
(キ)「【0034】
弁本体胴部310の弁室14の上部の開口部には弁体380のガイド部材となる弁本体蓋部350がボルト360により固着される。また弁本体蓋部350と弁本体胴部310との間はシール部材354でシールされる。弁本体蓋部350は弁室14内に挿入される円筒部352を有し、円筒部352の内径部であるガイド部352aには弁体380が挿入され、弁体380はガイド部352a内を摺動する。弁体380に固着された係止部材284は、弁本体蓋部350の小径部350dに摺動自在に支持される。
・・・(中略)・・・
【0038】
この実施例においては、ガイド部352aと弁体380の摺接部の長さ寸法は長く設定されているので、大型の弁体380も弁座18に対して高精度の同芯性を保って確実に案内される。
また実施例においても、弁体380が収容されるガイド部352aの内径寸法は、弁座18の内径寸法D1とほぼ均しく形成される。」
(ク)「【0039】
さらに弁体380の中心部には均圧路280aが設けてあり、また係止部材284には均圧路280aに連通する均圧路284aが、さらにこの均圧路284aと背圧室285とを連通する均圧路284bが設けてある。この均圧路280a、284a及び284bと背圧室285とを備えることにより、パイプ12a側の流体圧力が背圧室285に導入され、弁体380の上下にかかる圧力差は解消される。
これにより、小さな推力で弁体380を操作することができる。」
そして、特に記載事項(オ)、(カ)及び図3の記載からみて、次の事項が理解できる。
(ケ)弁座18は、オリフィス16の弁室14側の開口部の縁部から構成されている。
(コ)弁体380の先端に設けられた傾斜部82は、弁閉時に弁座18に当接する。
特に記載事項(キ)及び図3の記載からみて、次の事項が理解できる。
(サ)弁室14内に挿入される円筒部352の弁座18側の端部は、弁座18と間隔をあけて対向している。
特に摘記事項(ウ)、(エ)及び(カ)及び図3の記載からみて、図3に記載された電動弁は、ステータ部材40がロータ部材50とともにステッピングモータを構成し、該ロータ部材50の回転が減速してドライバ72に伝達され、ドライバ72が回転ととともに軸方向に移動し、ドライバ72の軸方向の移動量が弁体380に伝達され、弁体380が軸方向に移動するものであるから、刊行物1には次の事項が開示されているといえる。
(シ)弁体380は、ステッピングモータにより軸方向に移動される。
特に記載事項(エ)、(カ)、(キ)、(ク)及び図3の記載からみて、次の事項が理解できる。
(ス)背圧室285は、円筒部352内の空間が弁体380により区画されて円筒部352内における弁座18側の端部と反対側の端部側に形成されている。
(1-2)そうすると、これらの記載からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「弁室14に通ずるオリフィス16が形成される弁本体と、オリフィス16の弁室14側の開口部の縁部から構成されている弁座18と、弁本体に形成された弁室14内に挿入され、弁座18側の端部が弁座18と間隔をあけて対向している円筒部352と、円筒部352の内径部であるガイド部352aに挿入され、ガイド部352a内を摺動し、弁座18に対して高精度の同芯性を保って確実に案内されるとともに、ステッピングモータにより軸方向に移動される弁体380と、弁体380に固着された係止部材284と、を備え、
背圧室285が、円筒部352内の空間が弁体380により区画されて円筒部352内における弁座18側の端部と反対側の端部側に形成され、
弁体380の中心部には均圧路280aが設けてあり、係止部材284には均圧路280aに連通する均圧路284aが、さらにこの均圧路284aと背圧室285とを連通する均圧路284bが設けてあり、オリフィス16側のパイプ12a側の流体圧力が背圧室285に導入され、
弁体380の先端に設けられた傾斜部82は、弁閉時に弁座18に当接し、
弁体380が収容されるガイド部352aの内径寸法は、弁座18の内径寸法D1とほぼ均しく形成される、
流量を制御する電動弁。」
(2)引用例2
(2-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-229074号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(セ)「(1)ボデー1に開口する通路2に対し、通路2に離接移動自在のポペット3と、このポペット3を通路2方向に押圧する押圧バネ4から成る油通路開閉弁5において、ポペット3先端部を小さな角度αと、それより大きな角度βで二段面取りを行なってエッヂ6を構成し、対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θでテーパー孔面7加工を行なうと共に、このテーパー孔面7途中に、閉状態時に前記のポペット3のエッヂ6が位置することを特徴とした液体通路開閉弁の密閉保持装置。」(第1ページ左下欄第5~15行)
(ソ)「[従来技術及び発明が解決しようとする課題]
従来の油等の液体通路の開閉弁は、先端に一段のテーパー加工を施したポペットを、通路端面の直角のエッヂ部に押しつけて閉鎖するものであり、通路端面の直角のエッヂ部には、できるだけ油洩れを少なくするためコーキング処理を行なって、0.3~0.5mmのシート面をもたせている。
しかし、この作業においては、エッヂの加工精度保持にバラツキが多く、不良率が高かった。
さらに、ポペットの離接移動により、コーキング処理を行なった0.3~0.5mmのシート面幅が次第に広くなり、ポペットを押しつける押圧バネのセット圧が徐々に低下し所定圧以下でポペットが開くので、圧力調節に時間を必要とする等の欠点を有していた。」(第1ページ左下欄第20行~右下欄第14行)
(タ)「[課題を解決するための手段]
この発明は、従来装置のこのような不具合を、解消しようとするものであって、次のような技術的手段を講じた。即ち、ボデー1に開口する通路2に対し、通路2に離接移動自在のポペット3と、このポペット3を通路2方向に押圧する押圧バネ4から成る油通路開閉弁5において、ポペット3先端部を小さな角度αと、それより大きな角度βで二段面取りを行なってエッヂ6を構成し、対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θでテーパー孔面7加工を行なうと共に、このテーパー孔面7途中に、閉状態時に前記のポペット3のエッヂ6が位置することを特徴とした液体通路開閉弁の密閉保持装置の構成とした。」(第1ページ右下欄第15行~第2ページ左上欄第9行)
(チ)「[発明の効果]
この発明は、ポペット3先端部を小さな角度αと、それより大きな角度βで二段面取りを行なってエッヂ6を構成し、対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θでテーパー孔面7加工を行ない、このポペット3を押圧バネ4により、テーパー孔面7途中に閉状態時にエッヂ6が位置するように接当するから、加工精度が容易に保て、また、従来に比しエッヂ6のダレが生じないから、長期間の耐久性が向上し調節時間を必要としない。」(第2ページ左下欄第6~16行)
(ツ)「[実施例]
以下に、図面を参照して、この発明の実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
・・・(中略)・・・
配管19内から分岐した通路2には、油通路開閉弁5が取付けられている。
この油通路開閉弁5は、配管19の内圧を一定以下に保つ、圧力設定用のリリーフ弁として取付けられ、通路2が所定圧以下の場合、ポペット3は押圧バネ4により通路2端面に押しつけられ、油通路開閉弁5を閉鎖している。
この閉鎖状態を詳述すると、ポペット3先端部の小さな角度α(図例では、30度。)と、それより大きな角度β(図例では、70度。)での二段面取りのエッヂ6部が、対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θ(図例では、60度。)でテーパー孔面7加工を行なった、この端面のテーパー孔面7の中途部に接当して閉鎖している。
次に、配管19の内圧が上昇し所定圧を越えると、押圧バネ4はポペット3の移動によりこれを介し縮められ、圧液はテーパー孔面7とエッヂ6間の間隙からタンク10側に排出され、配管19の内圧を所定圧力以内に保ち、破損を防止する開放状態と成る。
圧液が外部に排出され、配管19内が所定圧以下に下がると、押圧バネ4により再度ポペット3先端部の二段面取りのエッヂ6部が、通路2端面のテーパー孔面7の中途部に接当して閉鎖状態に戻る。」(第2ページ左下欄第17行~第3ページ右上欄第17行)
(テ)「図例は、油圧回路で説明したが、液体を利用するものであれば、どれでも使用できる。
また、図例はリリーフ弁として説明したが、前後室の圧力差を感知して開閉するものであれば、逆止弁や定圧弁や分流弁等にも使用できる。」(第3ページ右上欄第18行~左下欄第2行)
そして、記載事項(タ)、(ツ)及び第1図の記載からみて、次の事項が理解できる。
(ト)ポペット3先端部を、角度βで規定される第1のテーパー面と、該第1のテーパー面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された、角度βよりも小さな角度αで規定される第2のテーパー面と、により二段面取りを行なって、前記第1のテーパー面と前記第2のテーパー面との間にエッヂ6を構成する。
(2-2)そうすると、これらの記載からみて、引用例2には、次の技術が記載されている。
「先端に一段のテーパー加工を施したポペットを、通路端面の直角のエッヂ部に押しつけて閉鎖する、従来の開閉弁が有する、ポペットの離接移動によりシート面幅が次第に広くなる等の欠点を解消し、エッヂ6のダレが生じないようにするため、ボデー1に開口する通路2に対し、通路2に離接移動自在のポペット3と、このポペット3を通路2方向に押圧する押圧バネ4から成る油通路開閉弁5において、ポペット3先端部を、角度βで規定される第1のテーパー面と、該第1のテーパー面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された、角度βよりも小さな角度αで規定される第2のテーパー面と、により二段面取りを行なって、前記第1のテーパー面と前記第2のテーパー面との間にエッヂ6を構成し、対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θでテーパー孔面7加工を行なうと共に、このテーパー孔面7途中に、閉状態時に前記のポペット3のエッヂ6が位置する構成とする。」
2-3.本件補正発明と引用発明との対比・判断
(1)対比
(ア)引用発明の「オリフィス16」及び「弁本体」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「弁ポート」及び「弁ハウジング」に相当するから、引用発明の「弁室14に通ずるオリフィス16が形成される弁本体」は、本件補正発明の「弁ポートが設けられた弁ハウジング」に相当する。
(イ)引用発明の「弁座18」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「弁座部」に相当する。そして、引用発明において、弁座18は、円筒部352の内径部であるガイド部352aの内径寸法とほぼ均しい内径寸法D1を有していることからみて、当然、環状となっている。
そうすると、引用発明の「オリフィス16の弁室14側の開口部の縁部から構成されている弁座18」は、本件補正発明の「前記弁ポートと連通して設けられ、すり鉢形状の着座面を有する環状の弁座部」と、「前記弁ポートと連通して設けられ」る「環状の弁座部」である点で一致する。
(ウ)引用発明の「円筒部352」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「シリンダ部」に相当し、その「弁座18側の端部」は、本件補正発明の「一方の端部」に相当する。そして、引用発明において、弁体380が円筒部352の内径部であるガイド部352aにより弁座18に対して高精度の同芯性を保って確実に案内されることからみて、円筒部352と弁座18とは同芯状とされている。
そうすると、引用発明において、「弁本体に形成された弁室14内に挿入され、弁座18側の端部が弁座18と間隔をあけて対向している円筒部352」を備え、弁体380が「円筒部352の内径部であるガイド部352aに挿入され、ガイド部352a内を摺動し、弁座18に対して高精度の同芯性を保って確実に案内される」ことは、本件補正発明の「前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部」を備えることに相当する。
(エ)引用発明の「ステッピングモータ」は、本件補正発明の「モータ」に相当する。そして、引用発明は、弁体380に固着された係止部材284が弁体380と一体に移動するものであるから、引用発明の「弁体380」及び「係止部材284」は、合わせて、本件補正発明の「弁部材」に相当する。さらに、引用発明において、弁体380が弁座18に対して離座及び着座することは、技術常識からみて、明らかである。
そうすると、引用発明の「円筒部352の内径部であるガイド部352aに挿入され、ガイド部352a内を摺動し、弁座18に対して高精度の同芯性を保って確実に案内されるとともに、ステッピングモータにより軸方向に移動される弁体380」及び「弁体380に固着された係止部材284」は、合わせて、本件補正発明の「前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容された弁部材」に相当する。
(オ)引用発明の「弁座18側の端部と反対側の端部」及び「背圧室285」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「他方の端部」及び「背圧室」に相当する。そして、引用発明において、オリフィス16側のパイプ12a側の流体圧力が背圧室285に導入されていることは、背圧室285とオリフィス16とを連通させていることにほかならない。さらに、引用発明の「均圧路280a」、「均圧路284a」及び「均圧路284b」は、合わせて、本件補正発明の「均圧路」に相当するから、引用発明において、「背圧室285が、円筒部352内の空間が弁体380により区画されて円筒部352内における弁座18側の端部と反対側の端部側に形成され、弁体380の中心部には均圧路280aが設けてあり、係止部材284には均圧路280aに連通する均圧路284aが、さらにこの均圧路284aと背圧室285とを連通する均圧路284bが設けてあり、オリフィス16側のパイプ12a側の流体圧力が背圧室285に導入され」ることは、本件補正発明の「前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路」を備えることに相当する。
(カ)本件補正発明は、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成されているから、弁閉時には、弁ポート側の流体圧力は、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側に作用する。さらに、本願明細書及び図面の記載を参照すると、弁開時においても、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が前記着座面に最も近接し、前記弁部材と前記着座面との間を流れる流れは、当該箇所において、最も絞られている。そうすると、弁開時においても、弁ポート側の流体圧力は、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側に作用することとなる。してみれば、本件補正発明の「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」は、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積を規定するものである。
一方、引用発明は、弁体380の先端に設けられた傾斜部82が弁閉時に弁座18に当接するものであって、引用例1、特に図3の記載からみて、傾斜部82は、その外周端よりも内周側の箇所(以下、「着座箇所」という。)で弁座18に当接するから、弁閉時には、オリフィス16側のパイプ12a側の流体圧力は、前記着座箇所内側に作用し、当該着座箇所の内径寸法は、当然、弁座18の内径寸法D1に等しい。さらに、引用例1、特に図3の記載からみて、弁開時においては、弁座18が傾斜部82に最も近接し、弁部材380と弁座18との間を流れる流れは、当該箇所において、最も絞られている。そうすると、弁開時において、オリフィス16側のパイプ12a側の流体圧力は、弁座18に最も近接している傾斜部82の箇所の内側に作用することとなるが、当該箇所が前記着座箇所近傍であることは明らかである。してみれば、弁座18の内径寸法D1によって代表される、弁座18の開口の平面視面積は、弁体380のパイプ12a側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積とおおむね等しい。
そして、引用発明における、「弁体380が収容されるガイド部352aの内径寸法」によって代表される、円筒部352の内側空間の横断面積は、本件補正発明の「シリンダ部の内側空間の横断面積」に相当する。
そうすると、引用発明の「弁体380が収容されるガイド部352aの内径寸法は、弁座18の内径寸法D1とほぼ均しく形成される」ことは、本件補正発明の「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積が前記シリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になる」ことと、「弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積がシリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になる」点で一致する。
(キ)引用発明の「流量を制御する電動弁」は、本件補正発明の「流量制御弁」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「弁ポートが設けられた弁ハウジングと、前記弁ポートと連通して設けられる環状の弁座部と、前記弁座部の軸心を通る軸線上に軸心が配置され、前記弁ハウジング内で当該弁座部と一方の端部が間隔をあけて対向するように設けられたシリンダ部と、前記弁座部の着座面に対して離座及び着座するように前記シリンダ部内にピストン状に移動可能に収容されるとともにモータによって移動させられる弁部材と、前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路と、を備えた流量制御弁において、
弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積が前記シリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、前記弁部材が形成されていることを特徴とする流量制御弁。」
【相違点】
本件補正発明は、
弁座部がすり鉢形状の着座面を有し、
前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、
前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、
弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積が前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積で規定されるのに対し、
引用発明は、
弁座部(弁座18)が弁ポート(オリフィス16)の弁室14側の開口部の縁部から構成され、
弁部材(弁体380)の先端に設けられた傾斜部82が弁閉時に弁座部に当接し、
弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積が、弁座部の内径寸法D1によって代表される、弁座部の開口の平面視面積でおおむね規定される点。
(2)判断
以下、相違点について検討する。
前記相違点について引用例2をみると、引用例2に記載された技術の「通路2」、「ポペット3」、「第1のテーパー面」、「第2のテーパー面」、「エッヂ6」、「通路2端面」及び「テーパー孔面7」は、それぞれ、本件補正発明の「弁ポート」、「弁部材」、「第1の面」、「第2の面」、「第1の面と第2の面との連接箇所」、「弁座部」及び「すり鉢形状の着座面」に相当する。
そして、引用例2、特に記載事項(ツ)及び第1図の記載からみて、引用例2に記載された技術において、着座面(テーパー孔面7)、第1の面(第1のテーパー面)及び第2の面(第2のテーパー面)のそれぞれと弁座部(通路2端面)の軸心を取る軸線とがなす角度が、それぞれ、角度θ、角度β及び角度αの1/2となることは、明らかであって、角度β及び角度αの1/2がいずれも90度よりも小さくなることも明らかである。そうすると、引用例2に記載された技術の「ポペット3先端部を、角度βで規定される第1のテーパー面と、該第1のテーパー面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された、角度βよりも小さな角度αで規定される第2のテーパー面と、により二段面取りを行なって、」「対応する通路2端面に、ポペット3の角度αより大きくて角度βより小さな、角度θでテーパー孔面7加工を行なう」ことは、本件補正発明の、弁座部が「すり鉢形状の着座面を有」し、「前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、」「前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され」ることに相当する。
さらに、引用例2に記載された技術は、第1の面と第2の面との連接箇所(エッヂ6)が、閉状態時にすり鉢形状の着座面(テーパー孔面7)途中に位置する構成であるから、第1の面と第2の面との連接箇所内側の平面視面積は、弁部材の弁ポート(通路2)側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積に等しい。そうすると、引用例2に記載された技術の「前記第1のテーパー面と前記第2のテーパー面との間にエッヂ6を構成し、」「テーパー孔面7途中に、閉状態時に前記のポペット3のエッヂ6が位置する構成とする」ことは、本件補正発明の「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、」弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積が「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」で規定されることに相当する。
してみると、引用例2には、前記相違点に係る本件補正発明を特定する事項である、弁座部がすり鉢形状の着座面を有し、前記弁部材が、それぞれ前記軸線を中心として配置された第1の面及び当該第1の面の外周縁全周にわたって内周縁が連接された第2の面を有し、前記第1の面と前記第2の面との連接箇所が、弁閉時にその全周にわたって前記着座面に当接されるように形成され、前記着座面、前記第1の面及び前記第2の面のそれぞれと前記軸線とがなす角度をそれぞれα、β1及びβ2としたとき(但し、α、β1及びβ2はそれぞれ同じ向きに開く角の角度)、β2<α<β1、及び、β1-β2<90度、の関係を満たすようにそれぞれの面が形成され、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積が前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積で規定される、技術が記載されているといえる。
そして、引用発明との関係で引用例2をみると、引用例2に記載された従来の開閉弁の「先端に一段のテーパー加工を施したポペット」は、引用発明の「先端に設けられた傾斜部82は」を有する「弁体380」に相当し、引用例2に記載された従来の開閉弁の「通路端面の直角のエッヂ部」は、引用発明の「オリフィス16の弁室14側の開口部の縁部から構成されている弁座18」に相当する。さらに、引用発明は、弁部材(弁体380)の上下にかかる圧力差を解消して、小さな推力で弁体を操作することができるようにするため、弁座部(弁座18)の内径寸法D1を、シリンダ部(円筒部352)の内径部であるガイド部352aの内径寸法とほぼ均しく形成するものであるから、前記内径寸法D1を維持するため弁座部の変形を防止するという課題が内在していることは、当業者にとって明らかである。そうすると、引用発明と引用例2に記載された技術は、技術分野を同じくするものであって、解決しようとする課題も共通しているから、前者に後者を適用することは、当業者が容易になし得る事項である。
以上のとおりであるから、引用発明において、相違点に係る本件補正発明の特定事項を備えるようにすることは、引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
そして、引用例1、特に図3の記載からみて、引用発明は、傾斜部82と該傾斜部82に連接する弁部材(弁体380)の外周面とがなす角度が90度より大きくなっているから、弁開時に前記外周面から該外周面と前記傾斜部82との連接箇所を通過して前記傾斜部82に流体が流れる際の角度変化は、当然、90度より小さい。角度変化が小さい方が流れが剥離しにくいことは技術常識であるから、引用発明においても、弁開時に前記外周面から連接箇所を通過して傾斜部82に流体が流れるところ、角度変化が90度となる構成に比べて、前記外周面から連接箇所を通過したあとに傾斜部82に沿って流体が流れやすくなり、前記傾斜部82から流体の流れが剥離することが抑制されることは、明らかである。そうすると、引用発明は、弁開時に第2の面から連接箇所を通過して第1の面に流体が流れるところ、前記第2の面から前記連接箇所を通過したあとに前記第1の面に沿って流体が流れやすくなり、前記第1の面から流体の流れが剥離することを抑制でき、弁開時において弁部材の軸心方向に加わる力のバランスが崩れてしまうことを抑制できるという本件補正発明の奏する効果と同様な効果を奏しているといえる。そして、引用発明に引用例2に記載された技術を適用し、引用発明において、相違点に係る本件補正発明2の特定事項を備えるようにしても、前記角度変化に対応する角度変化は90度より小さいから、本件補正発明が奏する効果と同様な効果を奏することが損なわれることはない。してみれば、本件補正発明の奏する効果も、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できたものであって、格別なものともいえない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の5.(1)(ii)において、「引用文献2の発明は、受動的に開閉する構成を有しているため、(A)角部に変形が生じやすく、さらにその結果として、(B)弁閉力が変化してしまうという課題が生じ、この課題を解決するために、二段面取りの構成を採用して角部の変形の抑制を図っています。
これに対し、本願発明1や引用文献1の電動弁のように、能動的に開閉させる構成では、圧力差によって弁部材が意図せずに開閉しにくく、引用文献2の発明と比較して弁閉力を小さい値に設定することができ、弁部材が弁座に強く押し付けられにくくなっています。従って、弁部材または弁座に形成された角部は充分に変形しにくくなっています。
また、本願発明1や引用文献1の電動弁のような機構では、弁部材を移動させる力は出力(電力)によって決まり、バネの弾性力によって移動させる機構のようにバネ長(弁部材の位置)によって変化するものではありません。従って、仮に角部が変形して鈍ってしまったとしても、弁閉力が変化してしまうものではありません。
このように、本願発明1や引用文献1の電動弁のように、能動的に開閉させる構成では、受動的に開閉する引用文献2の発明が有する上記課題(A)、(B)が存在しません。引用文献2の発明ではこのような課題が存在するからこそ二段面取りの構成を採用しているのであって、引用文献1の発明がこのような課題を有していない以上、引用文献2の二段面取りの構成を採用する動機づけはありません。
また、引用文献1、2には、流体の剥離によって弁体に作用する力のバランスが崩れるといった課題は一切記載されておらず、即ちこのような課題は認識されていないことから、流体の剥離を抑制することにより弁体に作用する力をバランスさせることを目的として、引用文献1の発明に引用文献2の構成を採用することには想到し得ません。」と主張している(以下、「第1の主張」という。)。
しかしながら、仮に審判請求人が主張するとおり、本件補正発明や引用発明のような電動弁においては、弁部材が弁座に強く押し付けられにくいとしても、弁部材が弁座に押し付けられることに変わりはない。さらに、エッジ部に応力集中することが技術常識であることを考慮すれば、引用発明も、オリフィス16の弁室14側の開口部の縁部から構成されている弁座18に変形が生じ得るものである。そうすると、引用発明は、弁部材を移動させる力がバネ長(弁部材の位置)によって変化するものではないとしても、先に検討したとおり、弁座部の変形を防止するという課題が内在しているものであって、引用例1、2に流体の剥離によって弁体に作用する力のバランスが崩れるといった課題が記載されていなくとも、引用発明に引用例2に記載された技術を適用することは当業者が容易になし得る事項である。したがって、審判請求人の前記第1の主張は、採用することができない。
審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の5.(1)(iii)において、「上記のように引用文献1の発明において引用文献2の構成を採用することには想到し得ませんが、仮に採用したとしても、本願発明1のような構成とはなりません。その理由を以下に詳述します。
引用文献1の発明では、弁部材の下面に対して弁座の角部が当接しています。従って、仮に変形が生じるとしても弁座の角部であり、この変形を防ぐためには弁座側に二段面取りの構成を採用する必要があります。また、弁座側に二段面取りの構成を採用すれば、弁部材は従来のものを流用することができます。一方、弁部材側に二段面取りの構成を採用するとともに、弁座をすり鉢形状にすると、弁部材および弁座の両方を設計変更しなければなりません。
従って、仮に引用文献1の発明において引用文献2の構成を採用したとしても、弁座側が二段面取りとなるだけであり、本願発明1のように弁部材側を二段面取りとするとともに弁座をすり鉢形状とする合理的理由はありません。」とも主張している(以下、「第2の主張」という。)。
しかしながら、引用例2に記載された技術は、弁部材(弁体380)の先端に設けられた傾斜部82が弁閉時に弁ポート(オリフィス16)の弁室14側の開口部の縁部から構成されている弁座部(弁座18)に着座する点において引用発明と同様である従来の開閉弁が有する弁座部が変形しやすいという課題を解消するため、前記相違点に係る本件補正発明を特定する事項を備えるものであるから、仮に引用発明において引用例2の構成を採用したとしても弁座側が二段面取りとなるだけである旨の審判請求人の前記第2の主張も、採用することができない。
さらに、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】の5.(1)(iv)において、「本願発明1は、「第1の面と第2の面との連接箇所内側の平面視面積がシリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材が形成されている」ものです。
一方、引用文献1の発明においては、ガイド部(シリンダ部)の内径が弁座の内径に等しく、弁部材の下面と側面との間の角部(連接箇所に相当)の径が弁座の内径よりも大きくなっています。即ち、弁部材を下方から見た角部内側の平面視面積は、ガイド部の内側の横断面積よりも大きくなっており、この点において本願発明1と相違します。
さらに、上述のように引用文献1の発明に引用文献2の構成を採用することには想到し得ず、仮に組み合わせたとしても弁座側が二段面取りとなって弁座の角部が弁部材の下面に当接します。このとき、弁部材を下方から見た角部内側の平面視面積は、ガイド部の内側の横断面積よりも大きいままです。従って、平面視面積と横断面積との関係を本願発明1のようなものとすることには想到し得ません。
また、本願発明1では、平面視面積と横断面積とが上記のような関係を有することから、弁閉状態だけでなく弁開状態においても弁部材の軸心方向に加わる力をバランスさせることができるという、引用文献1、2の発明からは得られない効果が奏されます。」とも主張している(以下、「第3の主張」という。)。
しかしながら、先に検討したとおり、本件補正発明の「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」は、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積であって、引用発明において、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積である点において本件補正発明の「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」に相当するのは、弁部材を下方から見た角部内側の平面視面積ではなく、「弁座18の内径寸法D1」によって代表される、弁座18の開口の平面視面積である。そして、本件補正発明及び引用発明は、いずれも、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積である「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」(「弁座18の内径寸法D1」によって代表される、弁座18の開口の平面視面積)を、弁部材の背圧室側の流体圧力に対する受圧面積である「前記シリンダ部の内側空間の横断面積」(「弁体380が収容されるガイド部352aの内径寸法」によって代表される、円筒部352の内側空間の横断面積)と略同一にし、かつ前記背圧室と前記弁ポートとを連通するように均圧路を設けることにより、弁部材の軸心方向に加わる力をバランスさせるものである。
また、審判請求人が主張するとおり「引用発明に引用例2の構成を採用することには想到し得ず、仮に組み合わせたとしても弁座側が二段面取りとなって弁座の角部が弁部材の下面に当接する」ということにはならないことは、先に検討したとおりである。
さらに、本願明細書及び図面、特に第2実施形態及び第3実施形態に係る記載を参照すると、本件補正発明は、「前記第1の面と前記第2の面との連接箇所内側の平面視面積」や「前記シリンダ部の内側空間の横断面積」に対応する面以外の面からも、流体圧力に基いて、弁部材の軸心方向の力が弁部材に加わるものを包含するものである(例えば第2実施形態及び第3実施形態においては、第1の面と第2の面との連接箇所外側に位置する第2の面には、弁閉時及び弁開時のいずれにおいても、弁室内の流体圧力が作用しており、当該流体圧力が弁部材に加える力は弁部材の軸心方向の成分を有する。)。そうすると、「前記シリンダ部内の空間が前記弁部材に区画されて形成された当該シリンダ部内における他方の端部側の背圧室と前記弁ポートとを連通するように、前記弁ハウジング又は前記弁部材に設けられた均圧路」を備え、「第1の面と第2の面との連接箇所内側の平面視面積がシリンダ部の内側空間の横断面積と略同一になるように、弁部材が形成されている」というだけでは、弁閉状態だけでなく弁開状態においても弁部材の軸心方向に加わる力をバランスさせることができるという効果が完全に奏されるとはいえない。さらに、引用発明において、弁座18の内径寸法D1によって代表される、弁座18の開口の平面視面積は、先に検討したとおり、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積におおむね等しく、一方、引用発明に引用例2に記載された技術を適用したものにおいては、弁部材の弁ポート側の流体圧力に対する受圧面の平面視面積は、弁閉時に全周にわたって着座面(テーパー孔面7)に当接する、第1の面(第1のテーパー面)と第2の面(第2のテーパー面)との連接箇所内側の平面視面積により規定される。そうすると、引用発明に引用例2に記載された技術を適用したものにおいては、第1の面(第1のテーパー面)と第2の面(第2のテーパー面)との連接箇所内側の平面視面積をシリンダ部の内側空間の横断面積(ガイド部352aの内径寸法によって代表される、円筒部352の内側空間の横断面積)と略同一とすることになる。その場合、弁部材(弁体380)の形状及びシリンダ部(円筒部352)との関係が本件補正発明の第3実施形態と同様となることは明らかである。以上のことからしても、本件補正発明が奏する効果と引用発明並びに引用発明に引用例2に記載された技術を適用したものが奏する効果との間に実質的な差異は見いだせない。
したがって、審判請求人の前記第3の主張も、採用することができない。
2-4.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年7月5日付けの手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年10月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1-2.」に記載のとおりのものである。
2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び2並びにその記載事項は、前記第2[理由]2-2.に記載のとおりのものである。
3.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2-3.」で検討した本件補正発明から、弁部材に関して、モータによって移動させられる旨の限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2-3.に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-010130