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特許拒絶査定不服審判

2016-009139

半導体装置の故障位置解析方法及び装置

審判番号
2016-009139
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-244102外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年06月21日
審決日
2017年05月01日
公報発行日
2017年06月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-244102「半導体装置の故障位置解析方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101009、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許出願: 平成23年11月8日 拒絶査定: 平成28年3月25日(送達日:同年同月29日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成28年6月21日 手続補正: 平成28年6月21日 (以下、「本件補正」という。) 第2 本件補正の適否 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を以下のように補正するものである。 (補正前) 「 【請求項1】 半導体装置の基板の裏面側から、該基板の表面側のデバイス及び回路に、レーザー光を走査しながら照射して加熱すると共に、前記デバイス及び回路に電流を流し、電流の変化によって抵抗値変化を検出して、故障位置を解析する半導体装置の故障位置解析方法において、前記半導体装置が、NドープSiC基板を用いた半導体装置であり、前記レーザー光として、波長650~810nmのレーザー光を用いることを特徴とする半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項2】 前記基板の厚さが20~200μmとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行う請求項1記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項3】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、前記レーザー光の出力を高めて照射して、マーキングを施す請求項1又は2記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項4】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、波長455~470nm、又は1400~2000nmのレーザー光を照射して、マーキングを施す請求項1又は2記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項5】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、前記基板の透過率が2%以下となる波長のレーザー光を照射して、マーキングを施す請求項1又は2記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項6】 検査すべき半導体装置を載置する試料ステージと、前記半導体装置の基板の裏面側からレーザー光を走査しながら照射するレーザー光照射装置と、前記半導体装置のデバイス及び回路に電流を流す通電手段と、前記デバイス及び回路に流れる電流の変化によって抵抗値変化を検出する抵抗値測定手段とを備えた半導体装置の故障位置解析装置において、前記半導体装置が、NドープSiC基板を用いた半導体装置であり、前記レーザー光照射手段が、波長650~810nmのレーザー光を照射できるものであることを特徴とする半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項7】 前記半導体装置が、その基板の厚さが20~200μmとなるように、該基板の裏面側を加工して薄板化されたものである請求項6記載の半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項8】 特定された故障位置の近傍に、前記レーザー光の出力を高めて照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項6又は7記載の半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項9】 特定された故障位置の近傍に、波長455~470nm、又は1400~2000nmのレーザー光を照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項6又は7記載の半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項10】 特定された故障位置の近傍に、前記基板の透過率が2%以下となる波長のレーザー光を照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項6又は7記載の半導体装置の故障位置解析装置。」 (補正後) 「 【請求項1】 半導体装置の基板の裏面側から、該基板の表面側のデバイス及び回路に、レーザー光を走査しながら照射して加熱すると共に、前記デバイス及び回路に電流を流し、電流の変化によって抵抗値変化を検出して、故障位置を解析する半導体装置の故障位置解析方法において、前記半導体装置が、NドープSiC基板を用いた半導体装置であり、前記レーザー光として、波長650~810nmのレーザー光を用い、前記基板の厚さが20~200μmとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行うことを特徴とする半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項2】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、前記レーザー光の出力を高めて照射して、マーキングを施す請求項1記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項3】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、波長455~470nm、又は1400~2000nmのレーザー光を照射して、マーキングを施す請求項1記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項4】 故障位置が特定された場合は、その位置の近傍に、前記基板の透過率が2%以下となる波長のレーザー光を照射して、マーキングを施す請求項1記載の半導体装置の故障位置解析方法。 【請求項5】 検査すべき半導体装置を載置する試料ステージと、前記半導体装置の基板の裏面側からレーザー光を走査しながら照射するレーザー光照射装置と、前記半導体装置のデバイス及び回路に電流を流す通電手段と、前記デバイス及び回路に流れる電流の変化によって抵抗値変化を検出する抵抗値測定手段とを備えた半導体装置の故障位置解析装置において、前記半導体装置が、NドープSiC基板を用いた半導体装置であり、前記レーザー光照射手段が、波長650~810nmのレーザー光を照射できるものであり、前記半導体装置の前記NドープSiC基板の厚さが20~200μmであることを特徴とする半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項6】 特定された故障位置の近傍に、前記レーザー光の出力を高めて照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項5記載の半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項7】 特定された故障位置の近傍に、波長455~470nm、又は1400~2000nmのレーザー光を照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項5記載の半導体装置の故障位置解析装置。 【請求項8】 特定された故障位置の近傍に、前記基板の透過率が2%以下となる波長のレーザー光を照射して、マーキングを施すマーキング手段を更に備える請求項5記載の半導体装置の故障位置解析装置。」 2.補正の適否 上記のとおり、本件補正は実質的に、補正前の請求項1及び6を削除し、補正前の請求項2及び7を独立形式として補正後の請求項1及び5に繰上げ、これに伴って補正前の請求項3-5,8-10をそれぞれ補正後の請求項2-4,6-8に繰り上げるものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1-8に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1―8に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。) 第4 原査定の拒絶理由、拒絶査定の概要 (拒絶理由) 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-10 ・引用文献等 1-4 ・備考 (1)請求項1 引用文献1には、 半導体装置の基板の裏面側(【0020】,【0064】等)から、該基板の表面側のデバイス及び回路に、レーザー光を走査しながら照射して加熱すると共に、前記デバイス及び回路に電流を流し、電流の変化によって抵抗値変化を検出して、故障位置を解析する半導体装置の故障位置解析方法において、前記半導体装置に応じた前記レーザー光の波長などの条件を適宜選択(【0019】,【0026】-【0028】,【0081】。「半導体デバイス(DUT)21に応じた最適波長」、「レーザ光の波長やパワーなどの条件を適宜選択する」等)する半導体装置の故障位置解析方法、が記載又は示唆されている。 請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明は、 (相違点)半導体装置が、NドープSiC基板を用いたものであり、波長650~810nmのレーザー光を用いることが明らかではない点、 で相違する。 前記相違点について、検討する。 例えば引用文献2(【0001】-【0002】,【0027】)に開示されるように、半導体装置として、NドープSiC基板を用いたものは周知であり、当該半導体装置を解析することに格別の困難性はない。そして、裏面側から照射して解析を行うため、レーザ光の波長を650~810nmとすることは、設計的事項である(例えば引用文献1【0026】「最適波長」、【0081】「パワーデバイス」、「適宜選択」等、引用文献2【0027】等)。 (2)請求項2 基板の厚さを薄板化することは当業者ならば容易に想到し得たものである(例えば引用文献1【0020】「厚さを薄くした方がよい」等、引用文献3【0025】等、引用文献4【0035】,【0040】等)。そして、厚さの設定は設計的事項である。 (3)請求項3-5 例えば引用文献3(図4)に開示されるように、マーキングを施すことは周知技術であり、格別の困難性はない。そして、レーザ光の波長(例えば引用文献2【0027】「460nm」,「1000nmよりも長波長域」等)、出力の設定は設計的事項である。 (4)請求項6-10 前記(1)-(3)を参照のこと。 <引用文献等一覧> 1.特開2010-197051号公報 2.特開2011-222607号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2003-66115号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2009-509339号公報(周知技術を示す文献)」 (拒絶査定) 「この出願については、平成27年 7月 8日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ●理由(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-10 ・引用文献等 1-5 出願人は、引用文献1-4に対し、課題(引用文献1)及び作用効果が開示されておらず、また、目的が異なる(引用文献2)ものであるので、組合わせる蓋然性がない旨の主張をしている。 しかしながら、引用文献1(【0081】等)にはパワーデバイス等の半導体装置を検査することが示唆されており、また、この種のパワーデバイス等としてNドープSiC基板を用いた半導体装置(例えば引用文献2【0002】-【0003】等、引用文献5【0002】、【0013】、【0017】等)は周知な装置であることからみて、当該NドープSiC基板を用いた半導体装置に対して検査を行うことは当業者ならば容易になし得たものである。また、引用文献1(【0020】、【0027】-【0028】、【0081】等)にも記載又は示唆されているように、検査対象に応じて波長を好適なものとすることは当業者ならば容易になし得たものといえる。そして、本願明細書にも記載されるように数値範囲に臨界的意義はないことからも(【0079】等)、NドープSiC基板における周知なレーザ光の透過域(例えば引用文献2【0027】(本願図2における約10~15%以上の透過率に対応)、引用文献5【0038】)から、好適な範囲を設定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 <引用文献等一覧> 1.特開2010-197051号公報 2.特開2011-222607号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2003-66115号公報(周知技術を示す文献) 4.特表2009-509339号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2009-164445号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)」 第5 当審の判断 1 刊行物の記載事項、引用発明 ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-197051号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「故障解析装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。(下線は当審による。以下同様。) (a) 「【0001】 本発明は、故障解析装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、半導体素子の微細化、低消費電力化の進展に伴い、半導体集積回路(LSI)は高集積度化されている。高集積度化された論理回路や順序回路などを含むシステムLSIやSoC(System on a chip)では、不良モード及び不良箇所の特定が非常に重要となる。システムLSIやSoCの不良解析には、EMS(Emission Micro Scope)、OBIRCH(Optical Beam Induced Resistance Change)、EBAC(Electron Beam Absorbed Current)、SDL(Soft Defect Localization)、EBテスタ等が多用される。OBIRCHやEBACは被テストデバイスに発生する電流などを観察及び画像化して主に配線系の不良解析に適用される。SDLは、被テストデバイスにレーザ光を照射して被テストデバイスのPASS/FAILマップの変化をモニタして、主に被テストデバイスのFNC(Function)マージンの解析に適用される(例えば、特許文献1及び2参照。)。」 (b) 「【0018】 図2に示すように、不良調査部11には、半導体デバイス(DUT)21、DUTステージ22、プローバ23、アンプ24、顕微鏡部26、光学ステージ27、及びレーザ発生/光検出部28が設けられる。 【0019】 半導体デバイス(DUT)21は、DUTステージ22上に載置される。被テストデバイスである半導体デバイス(DUT)21とは、システムLSI、SoC(System on a Chip)、メモリLSIなどの高集積化され、多層配線化されたシリコンデバイスである半導体集積回路、シリコン半導体装置、化合物デバイスなどである。 【0020】 半導体デバイス(DUT)21には、X方向、Y方向、及びZ方向に走査されるレーザ光が表面或いは裏面に照射される。なお、X方向、Y方向を水平方向とし、Z方向を垂直方向とする。ここでは、半導体デバイス(DUT)21の表面にレーザ光を照射しているが、想定される半導体デバイス(DUT)21の不良モード或いは不良箇所に応じて表面或いは裏面が適宜選択される。半導体デバイス(DUT)21が、例えば、6層以上の金属配線を有するシステムLSI或いはSoC(System on a Chip)の場合、OBIRCH解析に使用されるレーザ光が厚い金属配線や積層された金属配線を透過しにくいので、半導体デバイス(DUT)21の裏面からレーザ光を照射するのが好ましい。なお、裏面からレーザ光を照射する場合、レーザ光が減衰しないように半導体デバイス(DUT)21のシリコン基板の厚さを薄くした方がよい。 【0021】 半導体デバイス(DUT)21の表面上に設けられた図示しない端子或いは評価用金属パターンとプローバ23とは電気的に接続され、一方のプローブ23側にはアンプ24が設けられ、他方のプローブ側には定電圧源が設けられる。アンプ24は、レーザ光照射時に半導体デバイス(DUT)21で発生し、プローブ23でモニタされた熱起電流を検出して、検出された信号を増幅する。アンプ24で検出及び増幅された熱起電流は、制御・解析部12で光加熱抵抗変化画像であるOBIRCH画像として表示部13に階調表示される。なお、制御・解析部12で光加熱抵抗変化画像を取得するための機能を具備したものを撮影手段とする。」 (c) 「【0026】 レーザ発生/光検出部28は、光学ステージ27上に設けられる。レーザ発生/光検出部28には、レーザ光を発生するレーザ発生部、半導体デバイス(DUT)21の発熱情報(赤外線など)などを高感度に検出するフォトダイオード(例えば、InSbフォトダイオード)或いは高感度CCDなどが搭載される。レーザ発生/光検出部28に送付された発熱情報(赤外線など)は、制御・解析部12でEMS画像として表示部13に階調表示される。レーザ発生部には、半導体デバイス(DUT)21に応じた最適波長を発生する複数のレーザが搭載される。ここでは、発熱情報や発光情報を検出する機能を搭載しているが省いてもよい。なお、少なくともレーザ発生部、光学ステージ機能を具備したものをレーザ照射手段とする。 【0027】 半導体デバイス(DUT)21が、例えばシリコンデバイスであるシステムLSIやSoCの場合、レーザ波長は1060nmから1400nmの波長範囲が選択される。トランジスタ系の不良解析には1060nmから1160nmの波長範囲が選択され、配線系の不良解析には1300nmから1400nmの範囲の波長が選択される。 【0028】 半導体デバイス(DUT)21が、例えばGaAs系デバイスの場合、レーザ波長は900nmから1400nmの波長範囲が選択される。トランジスタ系の不良解析には900nmから1000nmの波長範囲が選択され、配線系の不良解析には1300nmから1400nmの範囲の波長が選択される。 【0029】 なお、OBIRCH解析では、金属配線やゲート電極配線部分にレーザ光が照射されると熱抵抗変化(OBIRCH効果)による電流減少或いは電流増加が観察することができる。ビア周辺にレーザ光が照射されるとゼーベック効果による電流増加或いは電流減少が観察することができる。金属配線やゲート電極配線部分にレーザ光が照射されるとゼーベック効果による配線での電流増加或いは電流減少が観察することができる。金属と半導体基板が直接接触する箇所(ショットキーダイオード)では、光励起による電流の発生を観察することができる。」 (d) 「【0080】 本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々、変更してもよい。 【0081】 例えば、実施例では、被テストデバイス(DUT)がSoC或いはシステムLSI(シリコンデバイス)であるが、メモリLSI(シリコンデバイス)、アナログIC(シリコンデバイス)、アナログデジタルIC(シリコンデバイス)、パワーデバイスなどの半導体デバイス(シリコンデバイス)、或いはGaAs系化合物デバイスなどにも適用することができる。その場合、不良モード及び基板等を考慮してレーザ光の波長やパワーなどの条件を適宜選択するのが好ましい。」 上記記載(a)ないし(d)から、刊行物1には、 「半導体デバイス(DUT)21には、X方向、Y方向、及びZ方向に走査されるレーザ光が裏面に照射され(【0020】参照。)、レーザ光照射時に半導体デバイス(DUT)21で発生し、プローブ23でモニタされた熱起電流を検出して、光加熱抵抗変化画像であるOBIRCH画像として階調表示される(【0021】参照。)故障解析方法において、前記レーザ光は半導体デバイス(DUT)21に応じた最適波長(【0026】参照。)であり、また不良モード及び基板等を考慮してレーザ光の波長やパワーなどの条件が適宜選択(【0081】参照。)され、レーザ光が減衰しないように半導体デバイス(DUT)21のシリコン基板の厚さが薄くされ(【0020】参照。)て故障解析が行われる、故障解析方法。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 イ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-222607号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「SiC半導体素子の製造方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。 (a) 「【0001】 この発明は、SiC半導体素子の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 炭化珪素(SiC)は珪素(シリコン:Si)に比べてバンドギャップが大きく、Si半導体よりも高い耐電圧と高い使用温度を有する半導体装置を製作することが可能である。また、半導体自体の抵抗値もSi半導体と比べて小さいことから、半導体動作における接続時の抵抗値(オン抵抗値)の低抵抗化による低損失化が期待されている。 【0003】 しかし、SiC半導体でも更なる低損失化が求められている。ショットキーバリアダイオードの場合、オン抵抗はショットキー電極の接合抵抗、ショットキーバリア界面の抵抗、SiCエピタキシャル層内の導通抵抗、SiC基板の導通抵抗、オーミック電極とSiC基板の界面接合抵抗、および電極自体の抵抗からなる。このうち比較的大きな値をとるのが、SiC基板の抵抗値である。SiC基板の抵抗は、基板に対するn型不純物のドープ量で決まる値である。通常は窒素がドープされるが、抵抗値を下げるために標準値以上の高濃度にすると、結晶性が低下して、ショットキーバリアダイオードの特性が低下するため、それほど高濃度にすることは出来ない。そこで、基板結晶を薄板化することが検討されている。 【0004】 例えば特許文献1では、SiC基板を研削して厚さを250μmあるいは200μm以下とすることによって、縦型方向の基板結晶の抵抗成分を減らし、動作時のオン抵抗を大きく低減する方法が開示されている。」 (b) 「【0025】 内部応力層3は、SiC基体11を透過するレーザ光線を内部応力層3を発生させる部分に集光させて形成する。結晶内部に光を集光させるためには、結晶自体がレーザ光に対して透明である必要がある。透明であると光が透過するだけであるが、強度がある値を超えると、多光子吸収が起こって光吸収が発生し、集光部に熱が発生して結晶格子がアモルファス化した、内部応力層3が発生する。この部分は結晶格子が乱れるため膨張するが、周囲の結晶はそのままであるため、膨張応力として結晶内部に閉じ込められた状態で残存する。勿論、このような応力は点状態で発生するが、内部応力層3を多数分布させることによって、面全体に応力が発生する。SiC基体11内部における内部応力層3の3次元的な位置及び分布を調節することによって、SiC基体11の反りをコントロールすることができ、加工変質層2による応力を相殺することができる。 【0026】 すなわち、本実施の形態のSiC半導体素子の製造方法は、(a)表面側に素子活性領域が形成されたSiC基体11(SiC基板)を準備する工程と、(b)SiC基体11の表面を平坦面に固定し、裏面を研削する工程と、(c)SiC基体11の表面を平坦面に固定したまま、研削による反りを相殺する応力を付与する内部応力層3を、SiC基体11内部に形成する工程とを備える。これにより、薄板化に伴うSiC基板の反りを修正し、オン抵抗を低減することができる。 【0027】 SiCは不純物がない状態では、紫外線領域から赤外線領域の5000nm程度の波長まで光を透過する。SiC基体11はn型で導電率を高めるために窒素がドープされているが、この状態では1000nmよりも長波長域の赤外光は透過しない。また、可視光領域にも460nmをピークとして大きな光吸収を行うので、改質のためのレーザ光の透過域は500nmから1000nmが適当である。」 (c) 「【0029】 例えば、YAGレーザを用いてレーザ照射を行う。2倍波(2ω)波長532nm、周波数を30kHz、パルス幅を40ns、照射点でのパルスエネルギー密度を約10GW/cm2として、研削面(加工変質層2)から150μm内部に、200μm間隔のドットで表面と平行な直線状に内部応力層3を形成する。形成位置の深さ調節は、表面に焦点を合わせた後、屈折率から計算した深さに焦点位置をずらすことによって行う。レーザの入射面の表面状態は、平面度が1μm以内、Raが1nm以下であることが望ましい。これは、表面でレーザ光が散乱してパワーが変動することを防ぐためである。内部応力層3のドットラインを後工程で素子を分離するためのダイシングライン4(図10)に沿って形成すると、分離後の素子には内部応力層3が残存せず、素子特性に影響を及ぼさない。なお、内部応力層3は、パルス波のレーザ光によって深さ方向に1点のみの分布で形成されるため、最終の分離工程までは割れを生じさせない。」 上記記載(a)ないし(c)から、刊行物2には、 「SiC半導体素子の製造方法に関し(【0001】参照。)、結晶内部に光を集光させるために、結晶自体がレーザ光に対して透明である必要があり(【0025】参照。)、SiC基体11に窒素がドープされている状態では1000nmよりも長波長域の赤外光は透過せず、可視光領域にも460nmをピークとして大きな光吸収を行うので、改質のためのレーザ光の透過域は500nmから1000nmが適当である(【0027】参照。)、 SiC半導体素子の製造方法。」 の技術事項(以下、「周知技術」という。)が記載されている。 ウ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-66115号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「半導体装置の故障解析方法および故障解析装置」(発明の名称)に関し、次の事項(a)が図面とともに記載されている。 (a) 「【0025】まず、図2(a)に示すように、本実施形態において、半導体装置1は半導体基板裏面2と半導体基板表面3とを備えた半導体基板4の半導体基板表面3側に搭載されている。次に、図2(b)に示すように、半導体装置1の半導体基板4を紙やすりや研磨機により数100μmの厚さになるまで裏面から研磨し、さらに研磨材を用いて鏡面研磨を施す。」 エ 原査定の拒絶の理由に引用された特表2009-509339号公報(以下、「刊行物4」という。)には、「炭化ケイ素パワーデバイスを有する半導体ウェハを処理する方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(b)が図面とともに記載されている。 (a) 「【0035】 デバイス110には例えば、SiCショットキーダイオード、MOSFET、BJT、PiNダイオード、nチャネルIGBT、サイリスタおよび/または縦型JFETなどの炭化ケイ素ベースのパワー半導体デバイスを含めることができる。デバイス110はさらに、p型基板上の炭化ケイ素ベースのGTOおよびnチャネルIGBTを含むことができる。デバイス110は他のタイプのデバイスを含むことができ、したがって、上記のデバイスのリストは限定を意図したものではない。」 (b) 「【0040】 本発明に基づくいくつかの実施形態では、ウェハ100が、厚さ約150ミクロン未満まで薄くされる。本発明に基づく他の実施形態では、ウェハ100が、厚さ約120ミクロン未満まで薄くされる。本発明に基づく他の実施形態では、ウェハ100が、厚さ約80ミクロンないし約100ミクロン、あるいはそれよりも薄い厚さまで薄くされる。本発明に基づくいくつかの実施形態では、ウェハ100が、インフィード研削盤またはクリープフィード研削盤を使用して薄くされる。」 オ 原査定において、周知技術を示す文献として新たに引用された特開2009-164445号公報(以下、「刊行物5」という。)には、「エッチング処理方法および炭化珪素半導体装置の製造方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(e)が図面とともに記載されている。 (a) 「【0001】 本発明は、エッチング処理方法および炭化珪素(SiC)半導体装置の製造方法に関し、特に、SiC基板を用いた高耐圧・大電力用の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET)のエッチング処理方法およびその製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 パワーデバイスとしてシリコン(Si)を用いたMOSFETが広く用いられているが、更なるデバイスの高耐圧化や大電流化は、Siの物性限界により困難になってきた。そこで、Siに替わる新しい基板材料として、ワイドバンドギャップ半導体の1つであるSiCが注目されるようになってきた。SiCは、絶縁破壊強度がSiに比べ一桁大きく、耐圧に優れているだけでなく、オン抵抗も小さく、低損失なパワーデバイスが実現できる。熱伝導率もSiに比べ約3倍大きく、大電力用のパワーデバイスの基板材料に適している。」 (b) 「【0013】 <実施の形態1> 本実施の形態では、本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を用いて、図1に示すMOSFET50を形成する。このMOSFET50は、n-型エピ(エピタキシャル)層52と、p型ベース領域53と、n+型ソース領域54と、n-型チャネルエピ層55と、ゲート絶縁膜56と、ゲート電極57と、層間絶縁膜58と、ソース電極59と、ドレイン電極60とを備える。」 (c) 「【0017】 本実施の形態では、n+型SiC基板51、n-型エピ層52、n-型チャネルエピ層55は、全て炭化珪素からなる。そこで、以下、本実施の形態では、これらからなる炭化珪素基板を、SiC基板2と記述する。また、後に反応性プラズマでエッチング処理されるn-型チャネルエピ層55の表面をSiC基板2の表面と記述することもあり、それと反対側のn+型SiC基板51の表面をSiC基板2の裏面と記述することもある。また、n-型チャネルエピ層55をエッチング処理することを、SiC基板2をエッチング処理すると記述することもある。」 (d) 「【0034】 このように、本実施の形態に係るエッチング処理方法では、SiC基板2の表裏両面それぞれから反射したレーザ光14の光強度を検出し、当該検出した光強度が示す干渉波形に基づいてエッチング量を算出し、当該エッチング量が所望のエッチング量となった場合に、上述のエッチング処理を停止する。」 (e) 「【0038】 また、本実施の形態では、レーザ光14の波長は、633nmであるものとした。これにより、レーザ光14は、SiC基板2を透過することができる。なお、レーザ光14の波長は、633nmに限ったものではなく、SiC基板2を透過可能な370nm以上440nm以下、もしくは480nm以上であれば、上述と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、レーザ光発生装置8からのレーザ光14として、一般的なHe-Neレーザを用いたが、その他のレーザ光源、例えば、Arイオンレーザやダイオードレーザであってもよい」 2 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 まず、引用発明における「半導体デバイス(DUT)21には、X方向、Y方向、及びZ方向に走査されるレーザ光が裏面に照射され、レーザ光照射時に半導体デバイス(DUT)21で発生し、プローブ23でモニタされた熱起電流を検出して、光加熱抵抗変化画像であるOBIRCH画像として階調表示される故障解析方法」は、本願発明1の「半導体装置の基板の裏面側から、該基板の表面側のデバイス及び回路に、レーザー光を走査しながら照射して加熱すると共に、前記デバイス及び回路に電流を流し、電流の変化によって抵抗値変化を検出して、故障位置を解析する半導体装置の故障位置解析方法」に相当する。 また、本願発明1において「波長650~810nmのレーザー光を用い」るとされている点は、「NドープSiC基板の透過スペクトルに基づいて、照射するレーザー光の波長を種々選択」(本願明細書【0047】)されたことによるものであるから、引用発明において「前記レーザ光は半導体デバイス(DUT)21に応じた最適波長であり、また不良モード及び基板等を考慮してレーザ光の波長やパワーなどの条件が適宜選択され」ることと、本願発明1において「前記レーザー光として、波長650~810nmのレーザー光を用い」ることとは、「前記レーザー光として、基板に応じた波長のレーザー光を用い」る点で共通するといえる。 次に、本願発明1において「前記基板の厚さが20~200μmとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行う」とされている点は、「基板の厚さが20μm未満では、破損しやすくなるため、取り扱い性が悪くなる。基板の厚さが200μmを超えると、レーザー光の強さによっては、透過光量が不足して、効果的に加熱できなくなる可能性がある」(本願明細書【0049】)ことに対応したものであるから、引用発明において「レーザ光が減衰しないように半導体デバイス(DUT)21のシリコン基板の厚さが薄くされて故障解析が行われる」点と、本願発明1において「前記基板の厚さが20~200μmとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行う」点とは、「前記基板の厚さが透過光量が不足しない厚さとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行う」点で共通する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「半導体装置の基板の裏面側から、該基板の表面側のデバイス及び回路に、レーザー光を走査しながら照射して加熱すると共に、前記デバイス及び回路に電流を流し、電流の変化によって抵抗値変化を検出して、故障位置を解析する半導体装置の故障位置解析方法において、前記レーザー光として、基板に応じた波長のレーザー光を用い、前記基板の厚さが透過光量が不足しない厚さとなるように、前記基板の裏面側を加工して薄板化した後、前記故障位置の解析を行うことを特徴とする半導体装置の故障位置解析方法。」 (相違点) 相違点1:本願発明1は、対象とする半導体装置が、「NドープSiC基板を用いた半導体装置」であるのに対し、引用発明においては、該半導体装置は対象とされていない点。 相違点2:本願発明1は、用いられるレーザー光が「波長650~810nmのレーザー光」であるのに対し、引用発明においては、そのような波長範囲の特定はなされていない点。 相違点3:本願発明1は、対象とする基板の厚さが「20~200μmとなるように」前記基板の裏面側を加工して薄板化しているのに対し、引用発明においては、そのような厚さ範囲の特定はなされていない点。 3 判断 本願発明1の内容に鑑みて、上記相違点1及び相違点2についてまとめて検討する。 周知技術(上記「1 刊行物の記載事項、引用発明」イ)は、 「SiC半導体素子の製造方法に関し、結晶内部に光を集光させるために、結晶自体がレーザ光に対して透明である必要があり、SiC基体11に窒素がドープされている状態では1000nmよりも長波長域の赤外光は透過せず、可視光領域にも460nmをピークとして大きな光吸収を行うので、改質のためのレーザ光の透過域は500nmから1000nmが適当である、SiC半導体素子の製造方法。」 であって、これは上記相違点2に対し、SiC基体11に窒素がドープされている状態でレーザ光の透過域を「500nmから1000nmが適当である」とするものであり、上記相違点2の「波長650~810nm」という数値範囲を包含するものである。 しかしながら、周知技術は半導体素子の製造方法に関するものであって、具体的には、レーザ照射により、SiC基板内部に応力層を形成することを目的としたものであるから、主にシリコンデバイスやGaAs系デバイスを対象にした故障解析に関する引用発明とは、適切とされるレーザ光の透過率は異なるものであると考えられること、また、刊行物2においては、 「【0027】 ・・・SiC基体11はn型で導電率を高めるために窒素がドープされているが、この状態では1000nmよりも長波長域の赤外光は透過しない。また、可視光領域にも460nmをピークとして大きな光吸収を行うので、改質のためのレーザ光の透過域は500nmから1000nmが適当である。」 として、「1000nmよりも長波長域」及び「460nmをピーク」とする「大きな光吸収」については説明されているものの、本願の図2に示されている、おおよそ500nmから650nmの間に存在する光吸収については言及されておらず、刊行物2の実施例において採用されているレーザー光の波長も、本願明細書の比較例1に用いられた532nmである(刊行物2の【0029】)こと、を考慮すると、該周知技術の波長範囲を、SiCについて例示すらない引用発明に直ちに適用することはできず、ましてその数値を「波長650~810nm」という(532nmを除く)値に限定することは、当業者が容易に想到し得たものであるとは言えない。また、刊行物3ないし5にも上記相違点2に相当する技術事項の記載はない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本願発明5は本願発明1を装置発明としたものであり、本願発明2ないし4及び6ないし8は、それぞれ本願発明1または5を引用して、本願発明1または5をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-8に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-009139

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