特許拒絶査定不服審判
2016-008372
フラットケーブル
- 審判番号
- 2016-008372
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-146551外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月07日
- 審決日
- 2017年04月03日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】特許業務法人 楓国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-146551「フラットケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月20日出願公開、特開2014- 11013、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月29日の出願であって、平成27年11月17日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月12日付けで手続補正がされ、同年4月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-2に係る発明は、平成28年1月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
比誘電率εr1を有する第1基材シートと、
前記第1基材シートの第1面に形成された長尺状の第1グランド導体パターンと、
前記第1基材シートの第2面側に、その第2面が対向するように積層され、比誘電率εr2(>εr1)を有する第2基材シートと、
前記第2基材シートの第1面に形成され、長手方向に沿って複数の開口部を有し、前記第1グランド導体パターンに対向した長尺状の第2グランド導体パターンと、
前記第1グランド導体パターンに対向するとともに、前記第2グランド導体パターンの開口部がその一部に重なるように、前記第1基材シートと前記第2基材シートとの間に設けられた長尺状の信号伝送用導体パターンと、
を備えるフラットケーブル。」
第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
引用文献1(特に、段落【0011】、【0021】乃至【0025】、【0047】の記載を参照)には、
接地導体層(2)、ベース誘電体層(1)、信号線(10、11)、上部誘電体層(5)、シールド接地線(21)の順に積層されたシールド線付き伝送線路に関して、
シールド接地線(21)は信号線(10、11)の上にはないこと、
「ベース誘電体層(1)」とは別に「上部誘電体層(5)」を設けること、
上部誘電体層(5)は、ベース誘電体層(1)と同じ材料でもよく、又は異なる材料でも良いこと、
各誘電体層を構成する誘電体の誘電率は任意であること、
積層された上部誘電体層(5)は、周囲の開放空間(空気)より誘電率が大きいので、信号線の電流に基づく電界が上部誘電層(5)の部分に集中し、開放空間に出る電界が小さくなること、
が開示されている。
引用文献1には「各誘電体層を構成する誘電体の誘電率は任意であること」は開示されているものの、上部誘電体層(5)の誘電率が、ベース誘電体層(1)の誘電率より大きくすることについては明記されていない。
しかしながら、「積層された上部誘電体層(5)は、周知の開放空間(空気)より誘電率が大きいので、信号線の電流に基づく電界が上部誘電層(5)の部分に集中し、開放空間に出る電界が小さくなること」から、上部誘電体層(5)の誘電率はより大きくした方が好ましいことを示唆しているといえ、周囲の開放空間(空気)の誘電率より大きくするために態々「上部誘電体層(5)」を設けているのであるから、元からある「ベース誘電体層(1)」より誘電率が低い「上部誘電体層(5)」を設けて周囲の開放空間(空気)との誘電率の差を小さくするようなことを行う理由はない。
つまり、周囲の開放空間(空気)より誘電率を大きくするために態々「上部誘電体層(5)」を設ける以上、「ベース誘電体層(1)」の誘電率と同じかそれ以上の誘電率を有する「上部誘電体層(5)」を設けることは容易である。
また、シールド接地線(21)の構造を引用文献2乃至3にあるような梯子型の構造とすることによって、シールド接地線(21)ができるだけ信号線(10、11)の上にないようにするか否かは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
<引用文献等一覧>
1.特開平11-068414号公報
2.国際公開第2012/073591号
3.国際公開第2012/074100号
第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-068414号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
「【請求項5】ベース誘電体層の一方の面に複数の信号線を設けてなる伝送線路に対して、
前記ベース誘電体層の信号線を設けた面上に上部誘電体層を積層するとともに、該上部誘電体層上の信号線間の位置にシールド接地線を設けてなることを特徴とするシールド線付き伝送線路。
【請求項6】前記ベース誘電体層の前記信号線を設けた面と反対側の面上の前記信号線間の位置に下部シールド接地線を設けてなることを特徴とする請求項5記載のシールド線付き伝送線路。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、シールド線付き伝送線路に係り、特に、高周波回路用の印刷配線基板に適用して好適なシールド線付き伝送線路に関する。」
「【0011】 この発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、高周波回路用印刷配線基板に適用して好適な信号伝送線路であって、信号線間の漏話を減少し、回路の誤動作を防止できるとともに、配線密度を向上し、回路の小型化、高密度化を実現することがが可能な、シールド線付き伝送線路を提供することを目的としている。
【0022】この例のシールド線付き伝送線路は、図1に示されるように、ベース誘電体層1の一方の面に接地導体層2を設け、他方の面に信号線10,11を設けた、図9に示された従来のマイクロストリップ伝送線路の上部に、上部誘電体層5を積層し、さらに上部誘電体層5の上に、信号線10,11の中間に、シールド接地線21を設けた構成を有している。この場合、新たに設ける上部誘電体層5は、ベース誘電体層1と同じ材料でもよく、又は異なる材料でもよい。
【0023】次に、図1を参照して、この例のシールド線付き伝送線路の機能を説明する。積層された上部誘電体層5は、周囲の解放空間(空気)より誘電率が大きいので、信号線の電流に基づく電界が、上部誘電体層5の部分に集中する。従って、解放空間へ出る電界は小さくなり、解放空間を介する隣接する信号線への電磁結合が弱められる。上部誘電体層5の上に設けられたシールド接地線21は、上部誘電体層5を介する隣接する信号線への電磁結合を抑制するとともに、解放空間を回り込む電磁結合も小さくし、さらに信号線間の静電結合を減少させる。これらのことからシールド効果が強化され、そのため、図9に示された従来のマイクロストリップ伝送線路の場合より、信号線間の漏話が低減される。」
上記下線部の記載によれば、引用文献1には、
「ベース誘電体層の一方の面に複数の信号線を設けてなる伝送線路に対して、
前記ベース誘電体層の信号線を設けた面上に上部誘電体層を積層するとともに、該上部誘電体層上の信号線間の位置にシールド接地線を設け、
前記ベース誘電体層の前記信号線を設けた面と反対側の面上の前記信号線間の位置に下部シールド接地線を設け、
ベース誘電体層と上部誘電体層とは、異なる材料でもよい、
印刷配線基板用シールド線付き伝送線路。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ベース誘電体層」、「上部誘電体層」、「信号線」は、それぞれ、本願発明の「第1基材シート」、「第2基材シート」、「信号伝送用導体パターン」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「第1基材シートと、
第1基材シートの第1面に形成された長尺状の第1グランド導体パターンと、
前記第1基材シートの第2面側に、その第2面が対向するように積層された第2基材シートと、
前記第2基材シートの第1面に形成され、前記第1グランド導体パターンに対向する第2グランド導体パターンと、
前記第1グランド導体パターンに対向し、前記第1基材シートと前記第2基材シートとの間に設けられた長尺状の信号伝送用導体パターンと、
を備える伝送線路。」
[相違点1]
本願発明が「フラットケーブル」であるのに対し、引用発明が「印刷配線基板用シールド線付き伝送線路」である点。
[相違点2]
第2グランド導体パターンが、本願発明では、長手方向に沿って複数の開口部を有するのに対し、引用発明では、単なる線である点。
[相違点3]
第1基材シートの比誘電率εr1と第2基材シートの比誘電率εr2について、本願発明では、第2基材シートの比誘電率εr2が、第1基材シートの比誘電率εr1より大きいの対し、引用発明では、異なってもよいが、大小関係は特定されていない点。
3.当審の判断
上記相違点について検討する。
[相違点3]について
引用文献1の段落【0023】には、上部誘電体層について、「周囲の解放空間(空気)より誘電率が大きいので」、「解放空間へ出る電界は小さくなり、解放空間を介する隣接する信号線への電磁結合が弱められる」との記載はあるものの、ベース誘電体層の誘電率との関係は記載がなく、上部誘電体層の比誘電率をベース誘電体層の比誘電率より高くすることは記載も示唆もされていない。
また、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/073591号、国際公開第2012/074100号のいずれにも、第2基材シートの比誘電率を第1基材シートの比誘電率より高くすることは記載も示唆もされていない。
そして、本願発明は、信号伝送用導体パターンと第2グランド導体パターンとの間に形成されるキャパシタ成分による特性インピーダンスと、信号伝送用導体パターンと第2グランド導体パターンとの距離による第2グランド導体パターンの開口部からの輻射との両者を調整するために、第2基材シートの比誘電率を考慮したものであるから、このようなフラットケーブル特有の課題のない引用発明から、相違点3に係る構成を当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願の請求項2に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-2に係る発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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