特許拒絶査定不服審判
2016-007468
排ガス浄化装置
- 審判番号
- 2016-007468
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-056111外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月23日
- 審決日
- 2017年02月07日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (F01N) / P18 .575-Z (F01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011- 56111「排ガス浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月11日出願公開、特開2012-193620〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月15日の出願であって、平成26年3月10日に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年2月18日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月20日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年9月24日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年11月5日に意見書(2通)が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年3月11日付けで平成27年11月5日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定がされ、同日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されものである。
第2 平成28年5月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年5月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年5月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年4月20日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし3の記載を下記の(2)に示す請求項1ないし3の記載に補正するものである。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
エンジン(11)の排気管(16)に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元型触媒(19)と、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側の排気管(16)に臨む流体噴射ノズル(23)を有しこの流体噴射ノズル(23)から前記選択還元型触媒(19)で還元剤として機能する尿素系流体(22)を前記排気管(16)に供給する流体供給手段(21)と、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズル(23)より排ガス上流側の排気管(16)に臨むオゾン噴射ノズル(43)を有しこのオゾン噴射ノズル(43)から前記排ガス中のNOをNO2に酸化可能なオゾン(42)を前記排気管(16)に供給するオゾン供給手段(41)と
を備えた排ガス浄化装置であって、
前記流体供給手段(21)は、前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側の排気管(16)に臨む流体噴射ノズル(23)と、前記尿素系流体(22)が貯留されたタンク(26)と、このタンク(26)内の前記尿素系流体(22)を前記流体噴射ノズル(23)に圧送するポンプ(27)と、前記流体噴射ノズル(23)から噴射される前記尿素系流体(22)の供給量を調整する流体供給量調整弁(31)とを有し、
前記流体供給量調整弁(31)は、前記流体噴射ノズル(23)への前記尿素系流体(22)の供給圧力を調整する流体圧力調整弁(32)と、前記流体噴射ノズル(23)の基端を開閉する流体用開閉弁(33)とからなり、
前記オゾン供給手段(41)は、前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズル(23)より排ガス上流側の排気管(16)に臨むオゾン噴射ノズル(43)と、先端が前記オゾン噴射ノズル(43)に接続され基端が大気中に開放されたオゾン供給管(44)と、エアを前記オゾン供給管(44)に圧送するコンプレッサ(46)と、このエアに含まれる酸素の一部をオゾン(42)に変換するオゾン発生器(47)と、前記オゾン噴射ノズル(43)から噴射されるオゾン(42)の供給量を調整するオゾン供給量調整弁(48)とを有し、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側に設けられこの選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガスの温度を検出する温度センサ(51)と、 前記エンジン(11)の回転速度を検出する回転センサ(52)と、前記エンジン(11)の負荷を検出する負荷センサ(53)と、前記温度センサ(51)、前記回転センサ(52)及び前記負荷センサ(53)の各検出出力に基づいて前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)、前記流体用開閉弁(33)、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)をそれぞれ制御するコントローラ(54)とを更に備え、
前記エンジン(11)の始動直後又は前記エンジン(11)の軽負荷運転時の前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が100~200℃と低いとき、前記コントローラ(54)は、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)を駆動して、前記オゾン(42)を前記オゾン噴射ノズル(43)から間欠的に前記排気管(16)に噴射するとともに、前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)及び前記流体用開閉弁(33)を駆動して、前記尿素系流体(22)を前記流体供給管(24)を通って前記排気管(16)に間欠的に噴射し、
前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が200℃を越えると、コントローラ(54)は、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)の駆動を停止して、前記オゾン(42)の前記オゾン噴射ノズル(43)からの間欠的な前記排気管(16)への噴射を停止するとともに、前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)及び前記流体用開閉弁(33)を駆動して、前記尿素系流体(22)を前記流体供給管(24)を通って前記排気管(16)に間欠的に噴射するように構成された
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記尿素系流体(22)がアンモニアガス又は尿素水のいずれかである請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記選択還元型触媒(19)がハニカム担体にゼオライト又はジルコニアをコーティングして構成された請求項1記載の排ガス浄化装置。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3
「【請求項1】
エンジン(11)の排気管(16)に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元型触媒(19)と、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側の排気管(16)に臨む流体噴射ノズル(23)を有しこの流体噴射ノズル(23)から前記選択還元型触媒(19)で還元剤として機能する尿素系流体(22)を前記排気管(16)に供給する流体供給手段(21)と、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズル(23)より排ガス上流側の排気管(16)に臨むオゾン噴射ノズル(43)を有しこのオゾン噴射ノズル(43)から前記排ガス中のNOをNO2に酸化可能なオゾン(42)を前記排気管(16)に供給するオゾン供給手段(41)と
を備えた排ガス浄化装置であって、
前記流体供給手段(21)は、前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側の排気管(16)に臨む流体噴射ノズル(23)と、前記尿素系流体(22)が貯留されたタンク(26)と、このタンク(26)内の前記尿素系流体(22)を前記流体噴射ノズル(23)に圧送するポンプ(27)と、前記流体噴射ノズル(23)から噴射される前記尿素系流体(22)の供給量を調整する流体供給量調整弁(31)とを有し、
前記流体供給量調整弁(31)は、前記流体噴射ノズル(23)への前記尿素系流体(22)の供給圧力を調整する流体圧力調整弁(32)と、前記流体噴射ノズル(23)の基端を開閉する流体用開閉弁(33)とからなり、
前記オゾン供給手段(41)は、前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズル(23)より排ガス上流側の排気管(16)に臨むオゾン噴射ノズル(43)と、先端が前記オゾン噴射ノズル(43)に接続され基端が大気中に開放されたオゾン供給管(44)と、エアを前記オゾン供給管(44)に圧送するコンプレッサ(46)と、このエアに含まれる酸素の一部をオゾン(42)に変換するオゾン発生器(47)と、前記オゾン噴射ノズル(43)から噴射されるオゾン(42)の供給量を調整するオゾン供給量調整弁(48)とを有し、
前記選択還元型触媒(19)より排ガス上流側に設けられこの選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガスの温度を検出する温度センサ(51)と、 前記エンジン(11)の回転速度を検出する回転センサ(52)と、前記エンジン(11)の負荷を検出する負荷センサ(53)と、前記温度センサ(51)、前記回転センサ(52)及び前記負荷センサ(53)の各検出出力に基づいて前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)、前記流体用開閉弁(33)、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)をそれぞれ制御するコントローラ(54)とを更に備え、
前記エンジン(11)の始動直後又は前記エンジン(11)の軽負荷運転時の前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が100~200℃と低いとき、前記コントローラ(54)は、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)を駆動して、前記オゾン(42)を前記オゾン噴射ノズル(43)から間欠的に前記排気管(16)に噴射するとともに、前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)及び前記流体用開閉弁(33)を駆動して、前記尿素系流体(22)を前記流体噴射ノズル(23)から前記排気管(16)に間欠的に噴射し、
前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が200℃を越えると、コントローラ(54)は、前記コンプレッサ(46)、前記オゾン発生器(47)及び前記オゾン供給量調整弁(48)の駆動を停止して、前記オゾン(42)の前記オゾン噴射ノズル(43)からの間欠的な前記排気管(16)への噴射を停止するとともに、前記ポンプ(27)、前記流体圧力調整弁(32)及び前記流体用開閉弁(33)を駆動して、前記尿素系流体(22)を流体噴射ノズル(23)から前記排気管(16)に間欠的に噴射し、
前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、前記排ガス中のNOx低減率が70~99%になって前記選択還元型触媒(19)が十分に活性するように構成された
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記尿素系流体(22)がアンモニアガス又は尿素水のいずれかである請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記選択還元型触媒(19)がハニカム担体にゼオライト又はジルコニアをコーティングして構成された請求項1記載の排ガス浄化装置。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
2 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についてみると、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「選択還元型触媒(19)」について、「前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、前記排ガス中のNOx低減率が70~99%になって前記選択還元型触媒(19)が十分に活性する」という事項を追加して限定する補正を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
3 独立特許要件
(1) 刊行物
(1-1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-16635号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、車両の内燃機関からの排ガスを浄化するための排気浄化装置に関する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0013】
図1において、本発明の実施形態の内燃機関の排気浄化装置1は、エンジン2から延びる排気経路3と、この排気経路3中に直列に設けられたDPF4、NOx触媒5、および酸化触媒6とを有する。酸化触媒6の下流側は、不図示の消音器などを経て外気に連通している。エンジン2は自然着火式のディーゼルエンジンであって、ターボ過給機を備えることができる。
【0014】
DPF4は、容器内にハニカム構造体20(図2参照)を備えたPM捕集装置である。ハニカム構造体20は、多孔質のセラミックス材料(例えばコーディエライトや炭化珪素SiC)からなり、多孔質の隔壁21により仕切られた多数のセル22すなわち排ガス通路を備えており、排ガス通路はいずれも排ガスの流入方向に平行である。各セル22は詰栓23によって交互に閉塞され、且つ前端開放のセル22と後端開放のセル22とが交互に隣り合うように配置されている。前端開放のセル22に流入した排ガスが隔壁21を通過して、後端開放のセル22から排出され、その際に隔壁21によってPMが濾過される。ハニカム構造体20の表面には、酸化触媒などの触媒物質が担持されていてもよい。
【0015】
NOx触媒5は、排ガス中の窒素酸化物NOxを還元して、無害の窒素ガスN2として排出する触媒装置である。NOx触媒5の触媒物質としては、選択還元触媒(SCR)を用いることができる。選択還元触媒は、排ガス中のNO2に対して還元剤を添加してガス混合物を形成し、このガス混合物によりNOxをN2に転化させるものである。SCR触媒には、V2O5/WO3/TiO2触媒を用いることができる。還元剤としては、アンモニア・尿素のほか、HCを含んだ軽油を用いることができる。
【0016】
酸化触媒6は、CO、NOxなどの物質を処理してH2O、CO2、N2等にする触媒装置であり、触媒物質としては、例えばPt/CeO2、Mn/CeO2、Fe/CeO2、Ni/CeO2、Cu/CeO2等を用いることができる。
【0017】
本実施形態では、DPF4とNOx触媒5とに、酸化剤としてオゾンO3を供給するために、リアクタ7が設けられている。リアクタ7は、図3に示されるように、円筒状の外周電極31の軸心に、直線状の中心電極32を配置したものである。外周電極31はリアクタ7の外装容器を兼ねることができる。外周電極31の上流側には、外気を導入するためのポンプ8が設けられている。外周電極31は接地され、中心電極32は高電圧電源9に接続されている。高電圧電源9は、インバータ回路・トランス・整流用のダイオード・平滑回路等を含んでおり、不図示のバッテリからの直流を昇圧して、リアクタ7に給電する。高電圧電源9からの給電の方式は、直流パルス波、交流、交流パルス波、または直流と直流パルスとの重畳など任意の波形および電圧のうちから選択することができる。内外の電極31,32間に電圧が印加されると、これら電極31,32間にコロナ放電などの放電が生じ、ポンプ8によって導入される外気のうちのO2が分解され、オゾンO3が吐出される。
【0018】
再び図1において、リアクタ7の下流側の排出経路10は、2つに分岐しており、一方の分岐はDPF4の直前に接続された第1分岐路11となっており、他方の分岐はNOx触媒5の直前に接続された第2分岐路12となっている。第1分岐路11の途中には、流量すなわちDPF4への酸化剤の供給量を調節するための手動バルブ11aが設けられている。高電圧電源9は、不図示の電子制御ユニット(ECU)からの制御出力によって制御される。
【0019】
NOx触媒5の直前には、還元剤供給装置13が接続されている。還元剤供給装置13は、その詳細は図示しないが、液相の還元剤を貯蔵する還元剤タンクと、この還元剤タンクからの還元剤を排気通路3内に噴霧できるポンプおよび還元剤噴射弁とを備えている。本実施形態では還元剤として液相のアンモニアNH3が用いられる。なお、還元剤として走行用の軽油燃料を用いる場合には、還元剤タンクに代えて走行用の燃料タンクを用いることができる。
【0020】
以上のとおり構成された第1実施形態の内燃機関の排気浄化装置1の動作について説明する。ユーザは予め、DPF4への酸化剤の供給量を調節するための手動バルブ11aによって、第2分岐路12によるNOx触媒5へ酸化剤の供給量が、第1分岐路11によるDPF4への酸化剤の供給量よりも大となるように設定する。
【0021】
手動バルブ11aの開度は、第2分岐路12によるNOx触媒5への酸化剤の供給量が、NOx触媒5の所定の必要酸化剤量を上回るように設定するのが好適である。この必要酸化剤量は、NOx触媒5の出口側のいずれかの排気経路中におけるNOx浄化率またはNOx濃度の測定値が、所定の環境基準における規制値や所定の目標値を下回るように、実験的に定めることができる。また、NOx触媒5の必要酸化剤量、ないしDPF4およびNOx触媒5に供給される酸化剤供給量の比率は、NOx触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が例えば1/5~2/1になるように、実験的に定めてもよい。
【0022】
エンジン2から排出されたPMを含む排ガスが、排気経路3を通ってDPF4に導かれると、排ガス中のPMが、DPF4によって濾過される。
【0023】
他方、高電圧電源9がオンされ、リアクタ7に高電圧が印加されると、ポンプ8の動作によって供給された空気に作用して、活性種または酸化促進剤であるオゾンO3が生成される。より詳細には、空気中の酸素分子O2に電子が衝突して酸素原子が生じ(O2⇒O+O+e-)、この酸素原子が酸素分子と結合してオゾンO3が生成される(O+O2+O2⇒O3+O2)。このようにして生成されたオゾンは、第1分岐路11からDPF4の直前に、また第2分岐路12からNOx触媒5の直前に、それぞれ供給される。
【0024】
第1分岐路から供給されたオゾンO3は、DPF4の直前の排気経路3において、排ガス中の一酸化窒素NOに作用する。その結果、3NO+O3→3NO2の反応が生じて、DPF4には二酸化窒素NO2が供給される。DPF4では、C+2NO2→CO2+2NOの反応が生じ、ハニカム構造体に付着したPM(炭素Cを主成分とする)の酸化ないし燃焼が促進される。その結果、本実施形態では、オゾンO3が用いられない場合(約650~700°C)に比べて低温(例えば300°C以下)でPMを燃焼ないし酸化させることが可能になる。
【0025】
他方、第2分岐路から供給されたオゾンO3が、NOx触媒5の直前の排気経路3において、排ガス中の一酸化窒素NOに作用することにより、3NO+O3→3NO2の反応が生じる。また、還元剤供給装置13から、NOx触媒5の直前の排気経路3に、還元剤であるアンモニアNH3が供給される。NOおよびNO2を含んだ排ガスに、還元剤であるアンモニアNH3が添加されたガス混合物は、NOx触媒5に導入されると、NOxからN2への転化率が増加し、NOxがN2に高効率で転化されて浄化される。
【0026】
以上のとおり、本実施形態では、第2の酸化剤供給手段である第2分岐路12による酸化剤の供給量を、第1の酸化剤供給手段である第1分岐路11による酸化剤の供給量よりも大とした。酸化剤が供給された場合にDPFでは、供給されたNO2に対して、炭素CからなるPMがC+2NO2→CO2+2NOのように反応し、PMが酸化される一方、NO2はNOに還元される。すなわち、DPF4における反応に起因して、その下流側のNOx触媒5に供給されるNO2が不足することになる。この点、本実施形態では、第2分岐路(第2の酸化剤供給手段)によるNOx触媒5への酸化剤の供給量を、第1分岐路(第1の酸化剤供給手段)によるDPF4への酸化剤の供給量よりも大としたので、第2分岐路12によって供給された酸化剤により、3NO+O3→3NO2の反応によって十分な量のNO2がNOx触媒5に供給されて、好適な量ないし割合のNO2によりNOx触媒5の活性化を促進することができる。
【0027】
また、本実施形態では、第2分岐路12による酸化剤の供給量を、NOx触媒5の所定の必要酸化剤量を上回るように設定したので、所定の環境基準や所定の基準値を満たすことが可能になる。
【0028】
また、本実施形態では、第1分岐路11および第2分岐路12による酸化剤の供給量を可変する手動バルブ11aを更に備えたので、浄化を更に適正に行うことが可能になる。
【0029】
また、本実施形態では、NOx触媒5の直前に還元剤を供給する還元剤供給装置13を更に備えたので、還元剤の作用により、NOx触媒5による浄化を更に促進できる。また、還元剤の供給点をNOx触媒5の直前としたので、還元剤の供給点をDPF4の直前とする場合に比べ、DPF4に還元剤が付着しないという利点がある。
【0030】
なお、上記実施形態では、本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【0031】
例えば、上記実施形態では、第2分岐路12による酸化剤の供給量を、第1分岐路11による酸化剤の供給量よりも大に設定するために、手動バルブ11aを用いたが、両分岐路11,12による供給量は設計段階で定めることができるため、第1分岐路11に固定的な絞り手段ないし流量制限手段を設けることによって両分岐路11,12の流量または流量比を設定してもよい。具体的には、図4および図5に示されるように、リアクタ7の下流側の分岐部分の断面積を、第1分岐路111よりも第2分岐路112が大になるように設計することができる。また、図6に示されるように、第1分岐路211と排気経路3との合流点に、第1分岐路211の流量を制限するための小径の絞りノズル211aを設けてもよい。また、図7に示されるように、第1分岐路311に、第1分岐路311の流量を制限するための狭窄部311aを設けてもよい。さらに、第1分岐路と第2分岐路との断面積を異ならせる構成に代えて、図8に示されるとおり、第1分岐路411と第2分岐路412の取り付け位置を互いに異ならせ、第2分岐路412の上流側の端部をリアクタ7の軸心の近傍に配置する一方で、第1分岐路411の上流側の端部をそれよりもリアクタ7の外周部側に配置することにより、リアクタ7における軸心の近傍と外周縁の近傍との流量差または流速差を利用して、両分岐路411,412の流量を、互いに異なるように設定してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、第1分岐路11および第2分岐路12による酸化剤の供給量を可変する制御手段として手動バルブ11aを用いたが、このような手動の制御手段に代えて、自動絞り弁を設けてもよい。
【0033】
また、この自動絞り弁を、車両の状態に応じて制御する電子制御装置を設けてもよい。このような電子制御装置を設ける場合には、制御の入力パラメータとして、DPF4におけるPMの堆積量、および/またはDPF4の温度を用い、これに基づいて自動絞り弁の動作位置すなわち両分岐路11,12への酸化剤の供給量を可変することができる。具体的には、例えば、PMの堆積量が所定値より大であり、且つDPF4の温度が所定値より大であるときにのみ、電子制御装置によって自動絞り弁をステップ的に駆動して第1分岐路11に酸化剤を供給することとしたり、あるいは、PMの堆積量が多いほど、またDPF4の温度が高いほど、第1分岐路11への酸化剤の供給量が多くなるように、電子制御装置によって自動絞り弁を駆動してその動作位置を連続的に可変するのが好適である。この場合のPMの堆積量は、例えばDPF4の直前および直後に設けた圧力センサの検出値の差分に基づいて検出することができ、また、光学的または電気的なPMセンサを用いて検出することができる。また、DPF4の温度は、DPF4に設置した温度センサの検出値を利用したり、あるいはエンジン2の水温やエンジン2の始動後の累積の燃料噴射量などに基づいて推定することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、第1および第2の酸化剤供給手段として、単一の酸化剤供給源(リアクタ7)から分岐した2つの分岐路11,12を用いたが、本発明ではDPF4の直前に接続された第1リアクタと、NOx触媒5の直前に接続された第2リアクタを用いてもよい。また、図9に示されるように、DPF4の直前の排気経路3に第1リアクタ507aを設置し、またNOx触媒5の直前の排気経路3に第2リアクタ507bを設置し、これらリアクタ577a,507bを個別に駆動して、排ガス中のO2から酸化剤としてのオゾンO3を生成させてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では酸化剤をオゾンO3としたが、本発明における酸化剤は、オゾンO3、原子状酸素O、スーパーオキシドアニオンラジカルO2-、ヒドロキシルラジカルOH-、アルコキシルラジカルR-O2、二酸化窒素NO2、酸素O2からなる群のうちから選択された一または二以上のものとすることができる。また、本発明における酸化剤は、それが用いられない場合(約650~700°C)に比べて低い温度でPMの燃焼ないし酸化を可能にするものとするのが特に好適である。
【0036】
また、本発明における酸化剤の供給源の構造は、上記リアクタ7の構造のものに限られない。例えば、外周電極31および中心電極32からなる筒状の構造に代えて、メッシュ状の電極を用いるなど、各電極の形状および構造について種々の変形が可能である。また、電極の極性については、上記実施形態のものと逆極性であってもよい。また、電圧印加を常時でなく、PMの捕集要求や燃焼処理要求の必要性に応じて所望の時期に行うようにしてもよい。
【0037】
さらに、本発明における酸化剤の供給源は、上述したリアクタ7のように空気を処理することによって酸化剤を生成する処理装置を含む構成のほか、空気以外の物質を処理することによって酸化剤を生成する処理装置を含む構成であってもよく、また、酸化剤を貯蔵するタンクを含む構成であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では本発明をディーゼルエンジンの排ガス処理に適用したが、本発明はガソリンエンジンや気体燃料エンジンの排ガス処理にも適用できる。また、上記実施形態では本発明を車両の内燃機関の排ガスの浄化のために適用したが、本発明は車両のほか船舶、航空機、発電機など各種内燃機関の排ガスの浄化のために適用することも可能であり、いずれも本発明の範疇に属するものである。」(段落【0013】ないし【0038】)
イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(ア) 刊行物1の段落【0034】(上記ア(イ)参照。)等の記載をみると、DPF4の直前の排気経路3に接続されるリアクタ(第1リアクタ)とは別に、NOx触媒5の直前の排気経路3にリアクタ(第2リアクタ)を接続こと、及び、両リアクタは個別に駆動され得ることが記載されており、リアクタ(第2リアクタ)から排出経路10を介してNOx触媒5の直前の排気経路3にオゾンを供給する構成が開示ないし示唆されていることが分かる。
なお、刊行物1においては、NOx触媒5の上流にDPF4を設けているところ、本願補正発明においては、このようなDPFを設けないことを発明特定事項としているものではなく、DPFを設けるか否かは任意的事項である。
ウ 刊行物1発明
上記ア、イ及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
<刊行物1発明>
「エンジン2の排気経路3に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元触媒5と、
選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続され、還元剤としての液相のアンモニアを排気経路3に供給する還元剤供給装置13と、
選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続され、排気中のNOをNO2に酸化可能な酸化剤としてのオゾンを排気経路3に供給するオゾン供給装置と、
を備えた排気浄化装置であって、
前記還元剤供給装置13は、タンク、ポンプ及び還元剤噴射弁を有し、
前記オゾン供給装置は、外気を導入するポンプ8と、放電により外気のうちのO2を分解しオゾンO3を吐出するリアクタと、リアクタの下流側の排出経路10であって、選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続された排出経路10とを有し、
前記選択還元触媒5の必要オゾン量を、NOx濃度が所定の規制値や目標値を下回るように、ないし前記選択還元触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が1/5~2/1になるように設定する手段を更に備え、
前記ポンプ8及び前記リアクタ7を駆動して、前記オゾンO3を前記排気経路3に供給するとともに、前記ポンプ及び前記還元剤噴射弁を駆動して、液相のアンモニアを排気経路3に供給し、
排気経路3に供給されるオゾンにより選択還元触媒5の活性化を促進するように構成された排気浄化装置。」
(1-2) 刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-281294号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に係り、特に還元剤としてのアンモニアにより排気中のNOx(窒素酸化物)を選択的に浄化する選択還元型触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)を採用した排気浄化システムに好適に適用されるものである。なお、本システムは、一般に還元剤として尿素水溶液が用いられることから、尿素SCRシステムとして知られている。」(段落【0001】)
(イ) 「【0026】
尿素水添加弁15は、ガソリン噴射用の既存の燃料噴射弁(インジェクタ)とほぼ同様の構成を有するものであり、公知の構成が採用できるため、ここでは構成を簡単に説明する。尿素水添加弁15は、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、先端噴孔部を開閉するためのニードルを有する弁体部とを備えた電磁式開閉弁として構成されており、ECU40からの噴射駆動信号に基づき開弁又は閉弁する。すなわち、噴射駆動信号に基づき電磁ソレノイドが通電されると、該通電に伴いニードルが開弁方向に移動し先端噴孔部15aから尿素水が添加(噴射)される。
【0027】
尿素水添加弁15に対しては、尿素水タンク21から尿素水が逐次供給されるようになっており、次に、尿素水供給系の構成について説明する。
【0028】
尿素水タンク21は給液キャップ付きの密閉容器にて構成されており、その内部に所定濃度(32.5%)の尿素水が貯蔵されている。尿素水タンク21内には、尿素水に浸漬した状態で尿素水ポンプ22が設けられている。尿素水ポンプ22は、ECU40からの駆動信号により回転駆動される電動式ポンプである。尿素水ポンプ22には尿素水供給管23の一端が接続されており、同尿素水供給管23の他端は尿素水添加弁15に接続されている。尿素水供給管23により尿素水通路が形成されている。尿素水ポンプ22が回転駆動されることにより、尿素水が汲み上げられ尿素水供給管23を通じて尿素水添加弁15側に吐出される。
【0029】
尿素水ポンプ22は、例えば駆動源として電動機(モータ)を備えるタービン式ポンプであり、電動機の駆動に伴いインペラが回転するとともにインペラ外周部に設けられた多数の羽根溝から尿素水が圧送されるようになっている。なお、尿素水ポンプ22としてはロータ式ポンプ等、他のポンプが適用されてもよい。また、本システムには、尿素水の圧力を調整するための圧力調整弁24が設けられており、尿素水ポンプ22の吐出圧力は圧力調整弁24によって適宜調整される。その他、尿素水ポンプ22の吐出口部分には、尿素水を濾過するためのフィルタ(図示略)が設けられており、逐次吐出される尿素水はフィルタにより異物が除去された後、尿素水供給管23に吐出される。
【0030】
上記システムの中で電子制御ユニットとして主体的に排気浄化に係る制御を行う部分がECU40である。ECU40は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備え、各種センサの検出値に基づいて所望とされる態様で尿素水添加弁15をはじめとする各種アクチュエータを操作することにより、排気浄化に係る各種の制御を行うものである。具体的には、例えば尿素水添加弁15の通電時間(開弁時間)や尿素水ポンプ22の駆動量等を制御することにより、適切な時期に適正な量の尿素水を排気管11内に添加供給する。」(段落【0026】ないし【0030】)
(ウ) 「【0040】
図4は、アンモニア吸着量の算出処理を示すフローチャートであり、本処理はECU40により所定の時間周期で繰り返し実行される。
【0041】
図4において、ステップS11では、その時の排気流量Vexと酸化触媒温度TdocとSCR触媒温度Tscrとを取り込む。本実施形態では、これら各パラメータ(Vex、Tdoc、Tscr)を図示しない別処理にて逐次算出することとしており、ステップS11では各パラメータの最新値が逐次取り込まれる。なお、排気流量Vexはエンジン運転状態に基づいて算出され、より具体的にはエンジン回転速度及び燃料噴射量等に基づいて算出される。また、酸化触媒温度Tdocは酸化触媒12上流の温度センサ20の検出結果に基づいて算出され、SCR触媒温度TscrはSCR触媒13上流の温度センサ17の検出結果に基づいて算出されるようになっている。排気流量Vexの算出に関し、排気管11に流量センサを設け、その流量センサの検出結果に基づいて排気流量Vexを算出したり、吸気管に設けたエアフロメータの検出結果に基づいて排気流量Vexを算出することも可能である。」(段落【0040】ないし【0041】)
(1-3) 刊行物3
ア 刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-262852号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種ボイラー、デイーゼルエンジンなどから出る排ガス中の一酸化窒素(NO)の50%以上を酸化剤を用いて二酸化窒素(NO2)に酸化し、これをアンモニア(NH3)、尿素などのアンモニア性還元剤、および被酸化物である還元助剤を用いて、200℃以下という低温域で無害な窒素、水に還元する低温脱硝方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の典型的なボイラー排煙脱硝システムのフローシートを図5に示す。この施設は、主として、ボイラー(1) と、ボイラー(1) から煙突(5) への煙道に設置された前流側の熱交換器(2) と後流側の脱硝反応装置(3) とから構成されている。脱硝反応装置(3) には脱硝触媒(4) が充填され、その前流側にはグリッド状のアンモニア注入装置(8) が設けられている。
【0003】上記構成の排煙脱硝施設において、ボイラー(1) で発生した排ガスは、熱交換器(2) で温度250~400℃まで冷却された後、脱硝反応装置(3) に入り、アンモニア注入装置(8) よりNH3などの還元剤の注入が行われて、脱硝触媒(4) によりガス中の窒素酸化物(NOx)が無害な窒素と水に還元された後、煙突(5) から系外に排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本来、NH3を用いた脱硝反応は、250℃以上、特に300℃以上で行われることが好ましい。しかしながら、
[1](審決注:原文は、丸付き数字の1)既設の設備に脱硝装置を付設する際、高温の排ガスが得られる上流側に脱硝設備スペースが確保できない場合、
[2](審決注:原文は、丸付き数字の2)新設の設備に脱硝装置を付設する際、設計上、上流側に脱硝設備スペースが確保できない場合、
[3](審決注:原文は、丸付き数字の3)ボイラー設備の関係上、高温の排ガスが得にくい場合等では、200℃以下という、より低温で脱硝を行う必要がある。
【0005】本発明は、上記課題に対し、低温でも高い脱硝性能を発揮する低温脱硝方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による低温脱硝方法は、排ガス中の一酸化窒素の50%以上を酸化剤を用いて二酸化窒素に酸化し、生じた二酸化窒素および残存した一酸化窒素をアンモニア性還元剤および還元助剤の存在下に200℃以下の温度域で窒素および水に還元することを特徴とする方法である。
【0007】本発明による低温脱硝方法の処理対象である排ガスは、各種ボイラー、デイーゼルなどの排ガスである。
【0008】上記酸化剤として、オゾン(O3)を用いることが好ましい。」(段落【0001】ないし【0008】)
(イ) 「【0030】本発明による低温脱硝方法のフローシートを図1に示す。ボイラー排煙脱硝施設は、主として、ボイラー(1) と、ボイラー(1) から煙突(5) への煙道に設置された前流側の熱交換器(2) と後流側の脱硝反応装置(3) とから構成されている。脱硝反応装置(3) には脱硝触媒(4) が充填され、その前流側に硫安類の捕集設備(7) が設けられ、その前流側にNH3を脱硝反応装置(3) 内に注入するグリッド状のアンモニア注入装置(8) が設けられ、その前流側にオゾン発生装置(6) からO3を脱硝反応装置(3) 内に注入するオゾン注入管(9) が設けられている。」(段落【0030】)
(1-4) 刊行物4
ア 刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-281061号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、排ガス脱硝方法および装置に係り、特に発電プラント用ボイラ、ガスタービン、ゴミ焼却炉などの各種燃焼炉から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)のうち一酸化窒素(NO)の一部を二酸化窒素(NO2 )にあらかじめ酸化することにより、低温から効率よくアンモニア(NH3 )で接触還元することが可能な排ガス脱硝方法および装置に関する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0018】
【実施例】図1に本発明の一実施例である排ガス脱硝装置の基本系統図を示す。この脱硝装置はNOx濃度測定装置9、酸化剤注入装置10、NH3 注入装置11、触媒反応器2とからなり、酸化剤注入装置10とNH3 注入装置11はNOx測定装置9からの濃度信号12と流量信号13とにより、両者の注入量のモル比が常時所定の一定割合になるように制御される。
【0019】ここで、酸化剤とNH3 の注入モル比の一定量とは酸化剤の種類により、次のような範囲のものを意味する。
(A)酸化剤がO3 およびH2 O2 の場合
NH3 注入量/酸化剤注入量=2.0±0.2モル/モル
(B)酸化剤がHNO3 の場合
NH3 注入量/酸化剤注入量=3.0±0.3モル/モル
また、酸化剤注入装置10とはオゾン発生器、過酸化水素または硝酸吹込み装置など酸化剤を排ガスに注入するための手段のほか、それら酸化剤の発生装置からの流量を制御するための制御弁、放電によるオゾン発生器の加電電圧の制御による発生量の制御などの、いわゆる制御手段をも含むものである。」(段落【0018】ないし【0019】)
(1-5) 刊行物5
ア 刊行物5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-264285号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0022】
排気通路15には、内燃機関10に近い側から、酸化触媒20およびNOx触媒21がこの順で設置されている。酸化触媒20とNOx触媒21との間には、オゾン供給ノズル22が設置されている。オゾン供給ノズル22には、複数のオゾン供給口23が設けられている。オゾン供給ノズル22には、オゾン供給通路24を介して、オゾン発生器25が接続されている。図示の構成では、オゾン供給ノズル22は、NOx触媒21と共通のケーシング26の内部であって、NOx触媒21の前方側(上流側)に配置されている。本実施形態では、上述したオゾン発生器25、オゾン供給通路24およびオゾン供給ノズル22により、オゾン供給装置27が構成されている。
【0023】
オゾン発生器25としては、高電圧を印加可能な放電管内に、原料となる乾燥した空気または酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や、他の任意の形式のものを用いることができる。ここで原料となる乾燥した空気または酸素は、排気通路15外から取り込まれる気体、例えば外気に含まれる気体である。
【0024】
上述したようなオゾン供給装置27によれば、オゾン発生器25によってオゾン(O3)を生成させ、このオゾンをオゾン供給ノズル22のオゾン供給口23から噴射することができる。これにより、酸化触媒20とNOx触媒21との間において、排気ガス中にオゾンを添加することができる。」(段落【0022】ないし【0024】)
(ウ) 「【0043】
[実施の形態1における具体的処理]
図7は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンによれば、まず、酸化触媒20およびNOx触媒21の温度が、低温領域(例えば200℃未満)、中温領域(例えば200℃~300℃)、高温領域(例えば300℃以上)のうちの何れにあるかが判別される(ステップ100)。本実施形態では、このステップ100の判断は、温度センサ28および29の出力に基づいてなされる。なお、本実施形態では、酸化触媒20およびNOx触媒21の両方に温度センサを設けているが、本発明では、酸化触媒20およびNOx触媒21の何れかに設けた温度センサの出力に基づいてこのステップ100の判断を行ってもよい。また、本発明では、温度センサによらず、内燃機関10の運転状態(エンジン回転数、負荷、排気ガス温度等)に基づいて酸化触媒20およびNOx触媒21の温度を推定することにより、ステップ100の判断を行うようにしてもよい。
【0044】
上記ステップ100で、低温領域であると判別された場合には、次に、HCを浄化するために必要なオゾンの量が算出される(ステップ102)。本実施形態において、ECU50には、内燃機関10の運転状態(エンジン回転数、負荷、冷却水温等)と、排気ガス中のHC量との関係を予め調べて作成されたHC排出量マップが記憶されている。このステップ102では、まず、そのHC排出量マップに基づいて、内燃機関10から排出されるHC量が算出される。次いで、そのHC量に基づいて、これと反応させるために添加することが必要なオゾンの量が所定の計算方法により算出される。
【0045】
上記ステップ102の処理に続いて、NOxを浄化(吸収)するために必要なオゾンの量が算出される(ステップ104)。本実施形態において、ECU50には、内燃機関10の運転状態(エンジン回転数、負荷、冷却水温等)と、排気ガス中のNOx量との関係を予め調べて作成されたNOx排出量マップが記憶されている。このステップ104では、まず、そのNOx排出量マップに基づいて、内燃機関10から排出されるNOx量が算出される。次いで、そのNOx量に基づいて、これと反応させるために添加することが必要なオゾンの量が所定の計算方法により算出される。
【0046】
HCを浄化するために必要なオゾンの量が上記ステップ102で算出され、NOxを浄化するために必要なオゾンの量が上記ステップ104で算出されると、それらを合計した量のオゾンが排気ガス中に添加されるように、オゾン供給装置27を駆動する制御が実行される(ステップ106)。
【0047】
一方、上記ステップ100で、中温領域であると判別された場合には、次に、HCを一部浄化するために必要なオゾンの量が算出される(ステップ108)。本実施形態において、ECU50には、酸化触媒20の温度と、酸化触媒20でのHC浄化率との関係を予め調べて作成されたHC浄化率マップと、NOx触媒21への最適なHC流入量(NOx浄化率が最大となるようなHC流入量)とが記憶されている。このステップ108では、まず、前述したHC排出量マップに基づいて、内燃機関10からのHC排出量が算出される。次いで、上記HC浄化率マップに基づいて算出される酸化触媒20でのHC浄化量と、NOx触媒21への最適なHC流入量とを、上記HC排出量から差し引くことにより、オゾンによって浄化するべきHC量が算出される。そして、その量のHCと反応させるために添加することが必要なオゾンの量が所定の計算方法により算出される。
【0048】
上記ステップ108の処理に続いて、NOxを浄化(吸収)するために必要なオゾンの量が算出される(ステップ110)。本実施形態において、ECU50には、NOx触媒21の温度と、その温度の下でオゾンを用いずに浄化可能なNOx浄化率との関係を予め調べて作成されたマップが記憶されている。ステップ110では、まず、そのマップに基づいて、オゾンを用いずに浄化可能なNOx量が算出される。次いで、前述したNOx排出量マップに基づいて算出されるNOx排出量から、オゾンを用いずに浄化可能なNOx量を差し引くことにより、オゾンによって浄化するべきNOx量が算出される。そして、その量のNOxと反応させるために添加することが必要なオゾンの量が所定の計算方法により算出される。
【0049】
HCを一部浄化するために必要なオゾンの量が上記ステップ108で算出され、NOxを浄化するために必要なオゾンの量が上記ステップ110で算出されると、それらを合計した量のオゾンが排気ガス中に添加されるように、オゾン供給装置27を駆動する制御が実行される(ステップ112)。
【0050】
また、上記ステップ100で、高温領域であると判別された場合には、オゾン供給装置27を停止させることにより、排気ガス中へのオゾン添加が停止される(ステップ114)。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、酸化触媒20やNOx触媒21の温度が、活性が発現していない低温領域や、活性化が十分でない中温領域にある場合であっても、オゾン供給装置27によってオゾンを排気ガス中に添加することにより、HCやNOxを十分に浄化することができる。このため、内燃機関10の始動直後など、酸化触媒20やNOx触媒21の温度が十分に上昇していない場合であっても、HCやNOxを大気中へ放出することを確実に抑制することができる。
【0052】
また、酸化触媒20やNOx触媒21の温度に応じてオゾン供給量や供給停止を制御することにより、オゾンを無駄なく効率的に利用することができる。このため、オゾンの生成に消費される電力を抑制することができ、燃費を改善することができる。
【0053】
更に、本実施形態では、中温領域のときにNOx触媒21に流入するHC量(HC濃度)が、低温領域のときにNOx触媒21に流入するHC量(HC濃度)より高くなるように、オゾンの供給を制御している。これにより、低温領域、中温領域のそれぞれにおいて、NOx浄化率を更に高めることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、内燃機関10が圧縮着火式であるものとして説明したが、本発明は、火花点火式の内燃機関にも適用可能である。
【0055】
また、本実施形態のオゾン供給装置27では、オゾン発生器25により生成されたオゾンをそのまま排気通路15内に供給するように構成されているが、本発明では、オゾンを予め生成、貯留しておき、その貯留されたオゾンを必要時に排気通路15内に供給するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、高温領域においてオゾンの供給を停止するようにしているが、本発明では、高温領域においてオゾンの供給を完全に停止せず、オゾン供給量を低下させるだけにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、活性酸素としてオゾンを排気ガス中に添加しているが、本発明では、オゾンに代えて、他の種類の活性酸素(例えば、O-,O2-,O2-,O3-,On-等で表される酸素マイナスイオン)を排気ガス中に添加するようにしてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、NOx触媒21が吸蔵還元型NOx触媒であるものとして説明したが、本発明では、NOx触媒21が選択還元型のNOx触媒(SCR: Selective Catalytic Reduction)である場合にも適用可能である。選択還元型NOx触媒としては、例えば、ゼオライトの表面にFeを担持したものなどを好ましく用いることができる。選択還元型NOx触媒の場合には、尿素等の還元剤が好ましく使用される。選択還元型NOx触媒においては、NOの量とNO2の量との比が1:1である場合に、最良の浄化率が得られる。そこで、選択還元型NOx触媒の場合には、低温領域あるいは中温領域において、その内部のNOの量とNO2の量との比が1:1となるように、活性酸素供給量を制御することが好ましい。」(段落【0043】ないし【0058】)
(1-6) 刊行物6
ア 刊行物6の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-255583号公報(以下、「刊行物6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。」(段落【0001】)
(イ) 「【0022】
Ag触媒34の上流側には、オゾン注入ノズル36が設けられている。オゾン注入ノズル36には、オゾンを含むガスを噴出するための複数の噴出孔が設けられている。図示の構成では、オゾン注入ノズル36は、Ag触媒34と共通のケーシング内において、Ag触媒34の前方に配置されている。オゾン注入ノズル36には、オゾン供給装置38が接続されている。オゾン供給装置38は、エアポンプ、オゾン発生器、流量調整弁等から構成されている。エアポンプで取り込まれた空気は、オゾン発生器に送られ、高圧放電を受ける。これにより、空気中の酸素からオゾン(O3)が生成される。オゾン供給装置38は、このオゾンを含むガスをオゾン注入ノズル36に送ることにより、Ag触媒34の上流側の排気ガス中にオゾンを注入することができる。」(段落【0022】)
(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「排気経路3」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「排気管」に相当し、以下同様に、「選択還元触媒5」は「選択還元型触媒」に、「選択還元触媒5の直前の排気経路3」は「選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管」に、「還元剤としての液相のアンモニア」は「還元剤として機能する尿素系流体」に、「還元剤供給装置13」は「流体供給手段」に、「選択還元触媒5の直前の排気経路3」は「選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管」に、「オゾン供給装置」は「オゾン供給手段」に、「排気浄化装置」は「排ガス浄化装置」に、「ポンプ8」は「コンプレッサ」に、「放電により外気のうちのO2を分解しオゾンO3を吐出するリアクタ7」は「酸素の一部をオゾンに変換するオゾン発生器」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1発明における「還元剤噴射弁」と本願補正発明における「流体供給量調整弁」とは、「流体供給弁」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「前記選択還元触媒5の必要オゾン量を、NOx濃度が所定の規制値や目標値を下回るように、ないし前記選択還元触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が1/5~2/1になるように設定する手段」と本願補正発明における「前記選択還元型触媒より排ガス上流側に設けられこの選択還元型触媒に流入する直前の排ガスの温度を検出する温度センサと、 前記エンジンの回転速度を検出する回転センサと、前記エンジンの負荷を検出する負荷センサと、前記温度センサ、前記回転センサ及び前記負荷センサの各検出出力に基づいて前記ポンプ、前記流体圧力調整弁、前記流体用開閉弁、前記コンプレッサ、前記オゾン発生器及び前記オゾン供給量調整弁をそれぞれ制御するコントローラ」とは、「選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管へのオゾンの供給量を調整する手段」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「前記ポンプ8及び前記リアクタ7を駆動して、前記オゾンO3を前記排気経路3に供給するとともに、前記ポンプ及び前記還元剤噴射弁を駆動して、液相のアンモニアを排気経路3に供給し、」と本願補正発明における「前記エンジンの始動直後又は前記エンジンの軽負荷運転時の前記選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が100~200℃と低いとき、前記コントローラは、前記コンプレッサ、前記オゾン発生器及び前記オゾン供給量調整弁を駆動して、前記オゾンを前記オゾン噴射ノズルから間欠的に前記排気管に噴射するとともに、前記ポンプ、前記流体圧力調整弁及び前記流体用開閉弁を駆動して、前記尿素系流体を前記流体噴射ノズルから前記排気管に間欠的に噴射し、」とは、「前記コンプレッサ及び前記オゾン発生器を駆動して、前記オゾンを前記排気管に供給するとともに、前記ポンプを駆動して、前記尿素系流体を排気管に供給し、」という限りにおいて一致する。
また、刊行物1発明における「排気経路3に供給されるオゾンにより選択還元触媒5の活性化を促進するように構成された」と本願補正発明における「前記選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、前記排ガス中のNOx低減率が70~99%になって前記選択還元型触媒が十分に活性するように構成された」とは、「選択還元型触媒の活性に資するように構成された」という限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「エンジンの排気管に設けられ排ガス中のNOxをN2に還元可能な選択還元型触媒と、
前記選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に、還元剤として機能する尿素系流体を供給する流体供給手段と、
前記選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に、前記排ガス中のNOをNO2に酸化可能なオゾンを供給するオゾン供給手段と
を備えた排ガス浄化装置であって、
前記流体供給手段は、タンクと、ポンプと、流体供給弁とを有し、
前記オゾン供給手段は、コンプレッサと、酸素の一部をオゾンに変換するオゾン発生器とを有し、
選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管へのオゾンの供給量を調整する手段を更に備え、
前記コンプレッサ及び前記オゾン発生器を駆動して、前記オゾンを前記排気管に供給するとともに、前記ポンプを駆動して、前記尿素系流体を排気管に供給し、
選択還元型触媒の活性に資するように構成された排ガス浄化装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明においては、「前記選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に臨む流体噴射ノズルを有しこの流体噴射ノズルから前記選択還元型触媒で還元剤として機能する尿素系流体を前記排気管に供給する流体供給手段」を備え、「前記流体供給手段は、前記選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管に臨む流体噴射ノズルと、前記尿素系流体が貯留されたタンクと、このタンク内の前記尿素系流体を前記流体噴射ノズルに圧送するポンプと、前記流体噴射ノズルから噴射される前記尿素系流体の供給量を調整する流体供給量調整弁とを有し、前記流体供給量調整弁は、前記流体噴射ノズルへの前記尿素系流体の供給圧力を調整する流体圧力調整弁と、前記流体噴射ノズルの基端を開閉する流体用開閉弁とから」なるのに対し、
刊行物1発明においては、「選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続され、還元剤としての液相のアンモニアを排気経路3に供給する還元剤供給装置13」を備え、「前記還元剤供給装置13は、タンク、ポンプ及び還元剤噴射弁」を有する点(以下、「相違点1」という。)。
<相違点2>
本願補正発明においては、「前記選択還元型触媒より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に臨むオゾン噴射ノズルを有しこのオゾン噴射ノズルから前記排ガス中のNOをNO2に酸化可能なオゾンを前記排気管に供給するオゾン供給手段」を備え、「前記オゾン供給手段は、前記選択還元型触媒より排ガス上流側であって前記流体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に臨むオゾン噴射ノズルと、先端が前記オゾン噴射ノズルに接続され基端が大気中に開放されたオゾン供給管と、エアを前記オゾン供給管に圧送するコンプレッサと、このエアに含まれる酸素の一部をオゾンに変換するオゾン発生器と、前記オゾン噴射ノズルから噴射されるオゾンの供給量を調整するオゾン供給量調整弁とを」有するのに対し、
刊行物1発明においては、「選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続され、排気中のNOをNO2に酸化可能な酸化剤としてのオゾンを排気経路3に供給するオゾン供給装置」を備え、「前記オゾン供給装置は、外気を導入するポンプ8と、放電により外気のうちのO2を分解しオゾンO3を吐出するリアクタと、リアクタの下流側の排出経路10であって、選択還元触媒5の直前の排気経路3に接続された排出経路10とを」有する点(以下、「相違点2」という。)。
<相違点3>
「選択還元型触媒より排ガス上流側の排気管へのオゾンの供給量を調整する手段」に関し、
本願補正発明においては、「前記選択還元型触媒より排ガス上流側に設けられこの選択還元型触媒に流入する直前の排ガスの温度を検出する温度センサと、 前記エンジンの回転速度を検出する回転センサと、前記エンジンの負荷を検出する負荷センサと、前記温度センサ、前記回転センサ及び前記負荷センサの各検出出力に基づいて前記ポンプ、前記流体圧力調整弁、前記流体用開閉弁、前記コンプレッサ、前記オゾン発生器及び前記オゾン供給量調整弁をそれぞれ制御するコントローラ」とを更に備えるのに対し、
刊行物1発明においては、「前記選択還元触媒5の必要オゾン量を、NOx濃度が所定の規制値や目標値を下回るように、ないし前記選択還元触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が1/5~2/1になるように設定する手段」を更に備える点(以下、「相違点3」という。)。
<相違点4>
本願補正発明においては、「前記エンジンの始動直後又は前記エンジンの軽負荷運転時の前記選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が100~200℃と低いとき、前記コントローラは、前記コンプレッサ、前記オゾン発生器及び前記オゾン供給量調整弁を駆動して、前記オゾンを前記オゾン噴射ノズルから間欠的に前記排気管に噴射するとともに、前記ポンプ、前記流体圧力調整弁及び前記流体用開閉弁を駆動して、前記尿素系流体を前記流体噴射ノズルから前記排気管に間欠的に噴射し、前記選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が200℃を越えると、コントローラは、前記コンプレッサ、前記オゾン発生器及び前記オゾン供給量調整弁の駆動を停止して、前記オゾンの前記オゾン噴射ノズルからの間欠的な前記排気管への噴射を停止するとともに、前記ポンプ、前記流体圧力調整弁及び前記流体用開閉弁を駆動して、前記尿素系流体を流体噴射ノズルから前記排気管に間欠的に噴射し、前記選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、前記排ガス中のNOx低減率が70~99%になって前記選択還元型触媒が十分に活性するように構成された」のに対し、
刊行物1発明においては、「前記ポンプ8及び前記リアクタを駆動して、前記オゾンO3を前記排気経路3に供給するとともに、前記ポンプ及び前記還元剤噴射弁を駆動して、液相のアンモニアを排気経路3に供給し、排気経路3に供給されるオゾンにより選択還元触媒5の活性化を促進するように構成された」点(以下、「相違点4」という。)。
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
刊行物2には、排気への尿素水の添加について、(1)先端噴孔部15a、(2)尿素水タンク21、(3)尿素水ポンプ22、(4)尿素水ポンプ22の吐出圧力を適宜調整する圧力調整弁24、(5)先端噴孔部15aを開閉するためのニードルを有する弁体部を備えた電磁開閉弁であって、各種センサの検出値に基づいて開弁又は閉弁する尿素水添加弁15を備えた排気への尿素水の添加手段が開示されている(以下、「刊行物2技術」という。)。
そして、上記の尿素水添加弁15等の構成からすれば、尿素水添加弁15は先端噴孔部15aの略基端部位を開閉するといえる。
また、刊行物2の段落【0026】(上記(1)(1-2)ア(イ)参照。)にも記載されているように、尿素水等の流体の供給装置は、一般に、上記の各要素を備えており、特別なものではない。
以上からすると、刊行物1発明に刊行物2技術を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
なお、本願補正発明においては、流体圧力調整弁と流体用開閉弁とからなる流体供給量調整弁という事項を別に設けているが、刊行物2技術において、該流体圧力調整弁に相当する圧力調整弁24と該流体用開閉弁に相当する尿素水添加弁15を合わせた包括的事項を別途想定することは、各構成要素の適宜のまとめ方ないし名称の問題にすぎない。
<相違点2>について
まず、刊行物1の図1をみると、還元剤供給装置13との接続部の下流側の排気経路3にオゾンの排出経路10(ないしその分岐路12)が接続されているが、刊行物1をみても、その上下流関係及びその技術的意義に特に言及した記載は見当たらない。
一方、本願補正発明においても、オゾン噴射ノズルを流体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に設けたことの技術的意義について、本願明細書に特に説明がなく、また、格別の技術的意義があるとは認められない。
なお、本願の出願当初の明細書には、「【0024】・・・。また、上記実施の形態では、オゾン噴射ノズルを流体噴射ノズルより排ガス上流側の排気管に設けたが、オゾン噴射ノズルを流体噴射ノズルより排ガス下流側の排気管に設けてもよい。」と記載されていた。
さらに、オゾン供給手段を、尿素系流体を供給する流体供給手段の上流に配置した構成は、刊行物3及び刊行物4にみられるように本願の出願前に周知の設計(以下、「周知の設計」という。)である。
以上からすると、刊行物1発明において、周知の設計を考慮して、還元剤供給装置13との接続部の上流側の排気経路3にオゾンの排出経路10を接続することは、必要に応じて適宜なし得る程度のことであって、格別のことではない。
次に、刊行物1発明におけるオゾン供給装置の構成について検討する。
刊行物4には、オゾン発生器からの流量を制御するための制御弁、放電によるオゾン発生器の加電電圧の制御による発生量の制御などの制御手段を備えたオゾン供給装置が開示されており(以下、「刊行物4技術」という。)、刊行物5には、オゾン供給ノズル22、オゾン供給ノズル22にオゾン供給通路24を介して接続されるとともに外気から空気を取り込むオゾン発生器25を備え、オゾン供給量を制御するように駆動されるオゾン供給装置が開示されており(以下、「刊行物5技術」という。)、また、刊行物6には、コンプレッサ、オゾン流量調整弁を備えたオゾン供給装置が開示されている(以下、「刊行物6技術」という。)。
一方、刊行物1発明は、選択還元触媒5の必要オゾン量を、NOx濃度が所定の規制値や目標値を下回るように、ないし前記選択還元触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が1/5~2/1になるように設定するものであって、供給オゾン量の調整ないし制御が想定されているとともに、環境への影響を考慮すれば、このような調整ないし制御が望ましいことは明らかである。
また、刊行物1の段落【0021】及び【0033】(上記(1)(1-1)ア(イ)参照。)並びに図1等には、間接的にではあるものの、電子制御装置による自動絞り弁の可変制御によって選択還元触媒5への供給オゾン量が調整ないし制御され得ることが開示ないし示唆されており、供給オゾン量を調整ないし制御するという点では、刊行物5技術及び刊行物6技術と相通じるところがあるといえる。
以上を総合すると、刊行物1発明において、周知の設計を考慮する一方、刊行物4技術、刊行物5技術及び刊行物6技術を適用する際、外気から空気を取り込む具体化手段として外気に開放する管を用いるようにして、相違点2における本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
<相違点3>について
刊行物1発明は、オゾンについては、選択還元触媒5の必要オゾン量を、NOx濃度が所定の規制値や目標値を下回るように、ないし前記選択還元触媒5に導入されるNOxにおけるNO/NO2のモル比が1/5~2/1になるように設定するものであるところ、還元剤については、還元剤噴射弁によりどのような量の還元剤を供給するかについて、特に限定されていない。
しかしながら、排ガスの性状・組成等は、通常、エンジンの運転状態及び車両の走行状態等に依存するから、上記の還元剤量及び必要オゾン量がこれらの状態、例えば、エンジンの回転速度及び負荷、排ガス温度等ないしこれらの関連量に基づいて設定されるべきことはいうまでもない。
このことに関して、刊行物2には、ECU(電子制御ユニット)40を備え、エンジンの回転速度及び燃料噴射量、排ガス温度等に基づいてアンモニア吸着量(アンモニア供給量に関連する。)を算出することが記載されており(以下、「刊行物2技術2」という。)、刊行物5には、ECU50を備え、エンジン回転数及び負荷、触媒温度等に基づいて必要なオゾン量を算出することが記載されている(以下、「刊行物5技術2」という。)。
なお、前述のとおり、刊行物1にも、間接的にではあるものの、電子制御装置による自動絞り弁の可変制御によって選択還元触媒5への供給オゾン量が調整ないし制御され得ることが開示ないし示唆されている。
以上を総合すると、刊行物1発明において、刊行物2技術2及び刊行物5技術2を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
<相違点4>について
刊行物1発明において、電子制御装置を備え、コンプレッサ、オゾン発生器及びオゾン供給量調整弁等を駆動して、オゾンをオゾン噴射ノズルから排気経路3に供給ないし噴射するとともに、ポンプ、流体圧力調整弁及び電磁開閉弁である尿素水等の添加弁を駆動して、尿素系流体である液相のアンモニアを先端噴孔部から排気経路3に供給ないし噴射することが容易になし得ることであることは上述したとおりである。
ここで、エンジンないし車両の分野において、各種流体を間欠的に供給ないし噴射することは普通にみられる技術であり、上記のオゾン供給量調整弁及び電磁開閉弁である尿素水等の添加弁を間欠的に供給ないし噴射し得る構成とすること、あるいは、そのような弁とすることは適宜の設計的事項にすぎない。
次に、刊行物1発明は、排気経路3に供給されるオゾンにより選択還元触媒5の活性化を促進するものであるところ、一般に、このような触媒の活性(ないし浄化率・低減率)が排ガス等の温度に依存することは、例えば、特開2006-2662号公報(特に、図3)、特開2006-212591号公報(特に、図5ないし図7)、及び、特開2009-13930号公報(特に、段落【0005】)に開示されているように本願の出願前に広く知られている技術(以下、「周知技術1」という。)であるから、排ガス等の温度に応じて所望の活性状態に至ればオゾンの供給等を停止することは、技術的にみて至極合理的であって、刊行物1発明においても、当然に内在する技術思想であるともいえる。
本願補正発明はさらに、オゾンの供給等を停止する排ガス温度について、選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が200℃であること、また、選択還元型触媒に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、排ガス中のNOx低減率が70~99%になって選択還元型触媒が十分に活性するという数値限定をしているが、このような排ガス温度やそのときのNOx低減率(及びそれに基づく該触媒の選択等)は、該触媒に流入する排ガスのNOx濃度ないしNOx量、NOx濃度等の規制値等に応じて適宜設定されるものであって、上記の数値ないし数値範囲(特に、上限値及び下限値)が普遍的に格別顕著な技術的意義を有するとする客観的実証的な根拠は特に示されていないとともに、そのような格別顕著な意義を有するとは到底考えられない。
一方、オゾンの供給がなくても、排ガス温度が略200℃付近で、十分な活性ないしNOx低減率を示す選択還元型触媒は、刊行物3(段落【0001】等には、オゾン等の酸化剤を用いて200℃以下の低温域で高い脱硝性能を発揮する脱硝触媒が開示されている。)、上記の特開2006-2662号公報(特に、段落【0005】及び【0020】並びに図3)、及び、特開2009-13930号公報(特に、段落【0005】)に開示されているように本願の出願前に広く知られている技術(以下、「周知技術2」という。)である。
また、上記の特開2006-2662号公報(特に、図3の従来例Y)及び特開2006-212591号公報(特に、図5ないし図7の比較例D1、D2等)には、入側排気温度が200℃において相当高いNOx低減率を示す選択還元型触媒が開示されており(図をみる限り、従来例Y、比較例D1、D2ともにNOx低減率70%以上であるように描かれている。以下、「周知技術3」という。)、また、これらの選択還元型触媒にオゾンを供給すれば、それ以上の略70%~略99%程度のNOx低減率を奏し得ることは明らかである(なお、刊行物3の図4の実施例1参照。)。
以上を総合すると、刊行物1発明において、周知技術1を考慮する一方、周知技術2及び周知技術3の選択還元型触媒を採用して、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
そして、本願補正発明は全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計及び周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
(3) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年5月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成27年4月20日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に示した請求項1に記載したとおりのものである。
2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物1ないし刊行物6には、図面とともに、上記第2[理由]3に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。
3 対比・判断
上記第2[理由]2で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そして、本願発明の発明特定事項を限定した本願補正発明が上記第2[理由]3(2)のとおり、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計、周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、周知技術3は本願発明において審判請求時の補正において追加限定された「前記選択還元型触媒(19)に流入する直前の排ガス温度が200℃であるとき、前記排ガス中のNOx低減率が70~99%になって前記選択還元型触媒(19)が十分に活性する」等の事項について検討した技術であることに留意すると、本願発明は、実質的に同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明は全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物4ないし6技術、刊行物2技術2、刊行物5技術2、周知の設計並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-007468