特許拒絶査定不服審判
2016-006372
ニュートンリング防止シート
- 審判番号
- 2016-006372
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-034150外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月28日
- 審決日
- 2017年03月07日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 34150「ニュートンリング防止シート」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 2日出願公開、特開2013-171126、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月20日の出願であって、平成27年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年9月16日に手続補正がなされたが、平成28年2月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成27年9月16日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は次のとおりである。
「 【請求項1】
透明プラスチックフィルム(但し、環状オレフィン系樹脂製透明プラスチックフィルムを除く。)の片面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b1)を含むハードコート層を有し、且つ、該透明プラスチックフィルムの他方の面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b2)を含むニュートンリング防止層を有し、下記要件(I)~(IV)を満たす、ニュートンリング防止シート。(I)前記ニュートンリング防止層における、JIS B 0601-1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さ(Ry)が0.5μm~1.4μmである。
(II)前記ハードコート層の厚み(z1)と、前記ニュートンリング防止層の厚み(z2)との差〔|z1-z2|〕が5.0μm未満である。
(III)前記ハードコート層における微粒子(b1)の含有率(r1)と、前記ニュートンリング防止層における微粒子(b2)の含有率(r2)との差〔|r1-r2|〕が5.0質量%以下である。
(IV)前記ハードコート層における微粒子(b1)の含有率(r1)と、前記ニュートンリング防止層における微粒子(b2)の含有率(r2)との和〔r1+r2〕が10~35.0質量%である。
【請求項2】
前記ニュートンリング防止層における、微粒子(b2)の下記式で表される粒子径分布の変動係数(CV値)が、30%未満である、請求項1に記載のニュートンリング防止シート。
変動係数(CV値)(%)=(粒径の標準偏差/平均粒径)×100
【請求項3】
有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)の原料組成物が、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)の原料組成物と同じである、請求項1または2に記載のニュートンリング防止シート。
【請求項4】
有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)及び/又は有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)の原料組成物が、活性エネルギー線硬化型化合物(i)、平均粒径が0.5~500nmのシリカ微粒子(ii)、及び光重合開始剤(iii)を含む活性エネルギー線感応型組成物である、請求項1~3のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
【請求項5】
有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)及び/又は有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)の原料組成物が、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
【請求項6】
微粒子(b1)及び/又は微粒子(b2)が、有機系微粒子である、請求項1~5のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。
【請求項7】
前記有機系微粒子が、アクリル系微粒子である、請求項6に記載のニュートンリング防止シート。
【請求項8】
前記ニュートンリング防止シートにおける、JIS K 7136-2000に準じて測定されるヘーズ値が40%以下である、請求項1~7のいずれかに記載のニュートンリング防止シート。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
第3 原査定の理由の概要
原査定の理由は、概ね、本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
1.特開2007-230208号公報
2.特開2010-42671号公報
第4 当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定において引用文献1として引用された特開2007-230208号公報(以下、単に「刊行物1」という。)には、次のアないしカの事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム表面に順に、粒子含有保護層、透明導電層が積層されて構成される導電性透明フィルムであって、
透明フィルムが、環状オレフィン系樹脂からなり、
粒子含有保護層が、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物および50~600nmの平均粒径を有する粒子を含む保護層形成用組成物を光硬化させて得られる層であって、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)アクリロイル基を3以上有する多官能モノマー40~60重量%と、(B)グリシジル(メタ)アクリレート系重合物にアクリル酸を付加反応させてなるポリマー10~60重量%と、(C)任意にその他のアクリルオリゴマー0~50重量%(但し、成分(A)、(B)および(C)の合計が100重量%である)とを含有することを特徴とする導電性透明フィルム。
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂が、下記式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られた樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の導電性透明フィルム。
【化1】
・・・(略)・・・
【請求項3】
粒子含有保護層が、一層あたり12%以下のヘイズ値を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性透明フィルム。
【請求項4】
透明フィルムの両表面に前記粒子含有保護層が積層されてなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の導電性透明フィルム。
【請求項5】
保護層が、1300nm以上の粒径を有する粒子を全粒子中の1.5~7重量%含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の導電性透明フィルム。
【請求項6】
1300nm以上の粒径を有する粒子が、一次粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載の導電性透明フィルム。
【請求項7】
さらに偏光板が積層されて構成され、該偏光板が感圧性接着剤により貼り合わされてなる請求項1~6のいずれかに記載の導電性透明フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の導電性透明フィルムを少なくとも一方の透明電極として有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項9】
請求項8に記載のタッチパネルを表示面側に有することを特徴とする表示装置。」
イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性透明フィルムおよびその用途に関する。詳しくは、本発明は、環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムに、順に、粒子含有保護層、透明導電層が積層された導電性透明フィルム、およびこれを用いたタッチパネル、ならびにこのタッチパネルを用いた表示装置に関する。」
ウ「【背景技術】
【0002】
従来から、光学用途の成形材料として、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが広く使用されているが、PCは複屈折が大きく、PMMAは吸水性が高く、耐熱性も不十分であるため、これら性能を改善した新規な成形材料の開発が求められている。
【0003】
そこで、近年、環状オレフィン系樹脂が注目され、広く用途展開が進められている。
しかし、環状オレフィン系樹脂フィルムは、低複屈折、低吸湿、高透明性、高耐熱性を有している反面、表面がやや脆く、傷が付きやすいという課題がある。
【0004】
一般に、各種プラスチック材料にハードコート性を付与するために、そのプラスチック材料表面に、活性エネルギー線硬化樹脂が被覆される。
従って、環状オレフィン系樹脂フィルムの表面にも、活性エネルギー線硬化樹脂を適用することが考えられるが、汎用の樹脂は、環状オレフィン系樹脂フィルムへの接着性が不十分であるという問題がある。
【0005】
これに対して、活性エネルギー線硬化性コート剤中に非反応成分であるポリマーを含有させる方法(例えば、特許文献1)、重合性化合物として脂環系(メタ)アクリル化合物を配合する方法(例えば、特許文献2)、特定の光重合開始剤を用いる方法(例えば、特許文献3)などが提案されており、これらの方法によって、接着性を改善することができる。
【0006】
しかし、これらの方法では、これらポリマー等の添加により、活性エネルギー線硬化性コート剤の架橋密度が低下したり、得られる硬化皮膜の耐擦傷性が低下したり、カールが発生したり、さらには、環状オレフィン系樹脂フィルム上での硬化皮膜の硬度が不十分であるなどの問題がある。
【0007】
また、光学用途の成形材料は、特に、プラズマ表示装置や、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、ビデオカメラ等の液晶表示装置などの各種ディスプレイへの適用において、より鮮明な画像を映し出すとともに、画面に入射又は画面から出射した光の反射、散乱などによって表示画像に生じるギラツキを抑制し、さらに、表示画像による光の干渉作用に起因して発生する、いわゆるニュートンリングと呼ばれる虹色のモアレ等を生じないなど、さらなる高性能化が厳しく求められている。
【0008】
また、表示装置の前面に配置され、入力端末として使用されるタッチパネルについても、表示画像の光学特性を損なわないために、上記の高性能化が必須である。また、タッチパネルの高性能化に関しては、導電性透明フィルムの光学特性に負うところが大きい。そして、このような高性能化に対して、種々の反射防止処置及び防眩処置等が採られているが、それらの全ての要求を満足させるものは未だ得られていないのが現状である。
【0009】
このような状況において、本発明者は、いわゆる反射防止フィルム及び防眩フィルム等の光学用途の成形材料の特性について鋭意研究を行ったところ、低複屈折、低吸湿、高透明性、高耐熱性等の基本的な特性を確保することに加えて、いわゆる白ぼけ及び/又は黒浮きというような部分的な表示むら又は背景画像の不鮮明な表示、ギラツキ及び/又はグレア等の不均一な表示、ニュートンリングという光の干渉作用という主に3種の不具合があり、それらをバランスよく解消することが必要であることを見出した。そして、硬化性、耐擦傷性、硬度、接着性、透明性等の特性を有する環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムの表面に、優れた防眩効果を発揮し得る粒子含有保護層が形成され、さらに透明導電層を積層した導電性透明フィルムが、これらの不具合をバランスよく解消しうることを見出し、本発明を完成するに至った。」
エ「【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムを用いることにより、低複屈折、低吸湿、高透明性、高耐熱性等の基本的な特性を確保した透明性導電フィルムを提供することができる。そして本発明によれば、特定の粒子を特定の樹脂組成物と組み合わせて用いた粒子含有保護層を形成することにより、上述した透明フィルムに対して、密着性を良好にして、ハードコート機能を付与した透明性導電フィルムを提供することができる。また本発明によれば、特定の平均粒径を有する粒子を用いることによって透明性を確保し、いわゆる白ぼけ、黒浮きというような部分的な表示むらを防止しながら、透明性が高くなると発生しやすくなる光の干渉によるニュートンリングを有効に防止し、かつ、画像のちらつき、ギラツキという現象を防止した良好な写像性を十分に発揮させるという、互いにトレードオフの関係となる特性の全てをバランスよく満足させた粒子含有保護層を有する透明性導電フィルムを提供することができる。
【0018】
本発明によれば、前記保護層の上に透明導電層を積層することにより、上記特性の全てを満足し、特にタッチパネル用透明電極として用いた場合に、鮮明な画像が得られる導電性透明フィルムを提供することができる。」
オ「【0111】
保護層は、その表面の最大高さ粗さRy(μm)が、通常、1.8~3.2程度に設定されていることが好ましく、特に2.0~3.2程度、2.0~2.6程度がより好ましい。このような最大高さ粗さに調整することにより、上述した粒子の平均粒径及び/又は比較的大きな粒子の含有割合等と相まって、アンチニュートンリング性を有効に発揮させることができる。表面高さ粗さRyは、JIS B0601’94に規定されている基準長さにおける輪郭曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和である。最大高さ粗さRyは、例えば、表面粗さ形状測定機、ハンディサーフE-35A(東京精密社製)を用いて測定することができる。」
カ「【0132】
実施例
以下に、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下「部」はいずれも重量基準である。
【0133】
(B)成分の製造
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAという)250部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1,000部及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に該混合液を約2時間を要して系内に滴下し、同温度で3時間保温した後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。得られたアクリルポリマーの重量平均分子量は19,000(GPCによるスチレン換算)であった。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)507部、メトキノン2.0部及びトリフェニルフォスフィン5.4部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温した後、メトキノン1.4部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、ワニスB1を得た。
【0134】
なお、(B)成分として、上述した製造例において初期仕込みの単量体使用量をGMA175部、メチルメタクリレート(以下、MMAという)75部、後仕込みでの単量体使用量をGMA525部、MMA225部に変え、AAの使用量を355部に変化させた他は、上述した製造例と同様に反応を行い、不揮発分が50%であるワニスB2を得た。AA反応前のアクリルポリマーの重量平均分子量は20,000であった。
【0135】
また、(B)成分として、上述した製造例において初期仕込みの単量体使用量をGMA125部、メチルメタクリレートMMA125部、後仕込みでの単量体使用量をGMA375部、MMA375部に変え、AAの使用量を254部に変化させた他は、上述した製造例と同様に反応を行い、不揮発分が50%であるワニスB3を得た。AA反応前のアクリルポリマーの重量平均分子量は23,000であった。
【0136】
活性エネルギー線硬化樹脂組成物の調製
(A)トリメチロールプロパントリアクリレート(表面張力36.2mN/m)を50部、(B)上述のワニスB1を25部、および、(C)多官能ウレタンアクリレートを25部を混合して、酢酸エチルにより固形分を50%になるよう調整し、これに、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュアー184」)を配合物の固形分に対し5%添加し、溶解させることにより、紫外線硬化性組成物を調製した。
【0137】
なお、(B)成分の配合量はいずれも固形分換算である。(A)成分の表面張力は、協和CBVP式表面張力計を用いた垂直板法(wilhemy method)により測定した。(C)成分の多官能ウレタンアクリレートは、荒川化学社工業株式会社製、商品名「ビームセット557」とした。
【0138】
[実施例1]
紫外線硬化性組成物(酢酸エチルにより固形分を80%になるよう調整、さらにMEKにより固形分が70%になるよう調整)65.1部
メチルエチルケトン(MEK) 10.0部
シリカ(アエロジル(平均粒径:約12nm)、日本アエロジル社製)9.17部
上記の成分を、ロールミル分散機に3回通した。その後、MEKで希釈し、固形分48%の保護層用の塗料Aを得た。
・・・(略)・・・
【0146】
[実施例5]
紫外線硬化性組成物(酢酸エチルにより固形分を80%になるよう調整、さらにMEKにより固形分が70%になるよう調整)50.0部
MEK 10部
シリカ(K-500(平均粒径:約2.0μm)、東ソーシリカ(株)社製)10部
上記の成分を、ロールミル分散機に3回通した。その後、MEKで希釈し、固形分48%の保護層用の塗料Cを得た。
【0147】
実施例1で得られた塗料Aを95部、塗料Cを5部混合し、グラビアリバース法にて、環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルム、アートン(登録商標)(ジェイエスアール株式会社製、膜厚100μm)に塗布した。70℃で40秒間乾燥し、300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化させて、膜厚3.0μmの保護層を有するフィルムを得た。
【0148】
得られた保護層を有するフィルムの保護層の面とは反対面に、同様に保護層を形成し、膜厚3μmの保護層を両面に有するフィルムを形成した。
後から形成した保護層の表面にAr流量200sccm、出力1040V/0.02Aにてプラズマ処理を施した後、アルゴンガスおよび酸素ガス流入下でターゲットとしてIn2O3/SnO2=90/10(重量比)の合金を用いたスパッタリングによりITOからなる透明導電層を厚さ200オングストロームで積層し、導電性透明フィルム3を得た。」
キ「【0158】
上記各実施例および比較例で得られた導電性透明フィルムについて、以下の評価を行った。その結果を表1にそれぞれ示す。
(平均粒径)
大塚電子製FPAR-1000を用いて測定し、キュムラント解析により平均粒径を算出した。
・・・(略)・・・
【0162】
(最大高さ粗さRyの測定)
JIS B0601’94に準拠して、最大高さ粗さ形状測定機(東京精密株式会社製HANDYSURF E-35A)を用いて測定した。
(アンチニュートンリング性の評価)
3波長の蛍光灯の下、黒い台紙の上にガラス板を乗せ、コーティング面を指で押し当てた時の干渉ムラを目視により観察し、「A」は干渉ムラが全く見られない、「B」は干渉ムラが少し見える、「C」は干渉ムラが見えるとして評価した。
・・・(略)・・・
【0167】
【表1】
」
ク 上記アないしキの記載事項から、刊行物1には、上記ウに掲げたような技術的背景の下に、実施例5として、次の発明が記載されていると認められる。
「下記工程(a)ないし(f)により得られた、保護層の最大高さ粗さRy(JIS B0601’94に準拠して測定)が2.33μmである、導電性透明フィルム。
(a)撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAという)250部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1,000部及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温し、
次いで、あらかじめGMA750部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に該混合液を約2時間を要して系内に滴下し、同温度で3時間保温した後、AIBN10部を仕込み、1時間保温し、その後、120℃に昇温し、2時間保温し、重量平均分子量が19,000(GPCによるスチレン換算)のアクリルポリマーを得、
得られたアクリルポリマーを60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)507部、メトキノン2.0部及びトリフェニルフォスフィン5.4部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温し、同温度にて8時間保温した後、メトキノン1.4部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるよう酢酸エチルを加え、ワニスB1を得る。
(b)トリメチロールプロパントリアクリレート(表面張力36.2mN/m)を50部、上述のワニスB1を25部、および、多官能ウレタンアクリレートを25部を混合して、酢酸エチルにより固形分を50%になるよう調整し、これに、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュアー184」)を配合物の固形分に対し5%添加し、溶解させることにより、紫外線硬化性組成物を調製する。
(c)上述の紫外線硬化性組成物(酢酸エチルにより固形分を80%になるよう調整、さらにMEKにより固形分が70%になるよう調整)65.1部と、メチルエチルケトン(MEK)10.0部と、シリカ(アエロジル(平均粒径:約12nm)、日本アエロジル社製)9.17部とからなる成分を、ロールミル分散機に3回通し、その後、MEKで希釈し、固形分48%の保護層用の塗料Aを得、
また、上述の紫外線硬化性組成物(酢酸エチルにより固形分を80%になるよう調整、さらにMEKにより固形分が70%になるよう調整)50.0部と、MEK10部と、シリカ(K-500(平均粒径:約2.0μm)、東ソーシリカ(株)社製)10部とからなる成分を、ロールミル分散機に3回通し、その後、MEKで希釈し、固形分48%の保護層用の塗料Cを得る。
(d)得られた塗料Aを95部、塗料Cを5部混合し、グラビアリバース法にて、環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルム、アートン(登録商標)(ジェイエスアール株式会社製、膜厚100μm)に塗布し、70℃で40秒間乾燥し、300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化させて、膜厚3.0μmの保護層を有するフィルムを得る。
(e)得られた保護層を有するフィルムの保護層の面とは反対面に、同様に保護層を形成し、膜厚3.0μmの保護層を両面に有するフィルムを形成する。
(f)後から形成した保護層の表面にAr流量200sccm、出力1040V/0.02Aにてプラズマ処理を施した後、アルゴンガスおよび酸素ガス流入下でターゲットとしてIn2O3/SnO2=90/10(重量比)の合金を用いたスパッタリングによりITOからなる透明導電層を厚さ200オングストロームで積層して導電性透明フィルムを得る。」(以下「引用発明」という。)
(2)刊行物2の記載事項
本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定において引用文献2として引用された特開2010-42671号公報(以下、単に「刊行物2」という。)には、次のアないしエの事項が記載されている。
ア「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ニュートンリング防止性に優れ、かつ高精細化されたカラーディスプレイを用いたタッチパネルに使用した際にも、スパークルが発生しにくいニュートンリング防止シート、およびこれを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のニュートンリング防止シートは、透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂、および微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有し、前記透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有することを特徴とするものである。
【0008】
また好ましくは、前記ニュートンリング防止層の微粒子の含有量がニュートンリング防止層の全固形分中の0.1重量%~1.0重量%であることを特徴とするものである。
【0009】
また好ましくは、前記ニュートンリング防止層の微粒子の平均粒子径は0.5μm~3.0μmであることを特徴とするものである。
【0010】
また好ましくは、前記ニュートンリング防止層の微粒子の粒子径分布の変動係数が20%~80%であることを特徴とするものである。
【0011】
また好ましくは、前記ニュートンリング防止層の厚みは、0.2μm~3.5μmであることを特徴とするものである。
【0012】
また好ましくは、前記ハードコート層の微粒子の粒子径分布の変動係数が20%~80%であることを特徴とするものである。
【0013】
また好ましくは、JIS K7136:2000におけるヘーズが20%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のタッチパネルは、導電性膜を有する一対のパネル板の前記導電性膜同士が対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式のタッチパネルであって、前記導電性膜のいずれか一方または両方の導電性膜が上記いずれかのニュートンリング防止シートのニュートンリング防止層上に形成されてなることを特徴とするものである。」
イ「【0047】
また、微粒子の含有量は、特に限定されないが、ニュートンリング防止層を構成する全固形分中の0.1重量%~1.0重量%程度とすることが好ましい。微粒子の含有量を0.1重量%以上とすることにより、良好なニュートンリング防止性を付与することができる。1.0重量%以下としたのは、それ以上含有させてもニュートンリング防止性は変わらず、透明性の低下とスパークルの発生を招くのみという理由からである。このような本発明のニュートンリング防止シートは、JIS K7136:2000におけるヘーズが、3.0%未満とすることが好ましい。」
ウ「【0054】
本発明のニュートンリング防止シートは、上述した透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有するものである。このようなハードコート層を有することにより、タッチパネルとした際に、爪等により表面が傷つくのを防止すると共に、上述したニュートンリング防止層との相乗効果で蛍光灯等の光の映り込みを効果的に防止することができる。
【0055】
微粒子としては、上述したニュートンリング防止層に用いられる微粒子と同様のものを1種または2種以上を混合して用いることができる。また微粒子の大きさ、粒子径分布の変動係数についても、スパークルの発生を抑制するという観点から、上述と同様の範囲とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。微粒子の含有量は、後述する微粒子を含有するためのバインダー成分の種類、ハードコート層の厚みによって異なり、特に限定されるものではないが、バインダー成分の固形分100重量部に対して2重量部~20重量部、さらには4重量部~18重量部、さらには6重量部~16重量部とすることが好ましい。このような範囲とすることにより、ニュートンリング防止シートとした際に、JIS K7136:2000におけるヘーズが20%以下、さらには10%以下とすることができ、透明性を維持しつつ映り込み防止性の効果を発揮することができる。」
エ「【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0071】
1.ニュートンリング防止シートの仕掛品の作製
[実施例1]
透明支持体として厚み188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方のニュートンリング防止層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み1.5μmのニュートンリング防止層を形成し、実施例1のニュートンリング防止シートの仕掛品を作製した。
【0072】
<実施例1のニュートンリング防止層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂 100部
(固形分50%)(無機成分38%)
(デソライト7503:JSR社)
・微粒子(アクリル系樹脂粒子) 0.2部
(平均粒子径2μm)(変動係数50%)
・イソプロピルアルコール 150部
【0073】
[実施例2]
実施例1のニュートンリング防止層用塗布液の微粒子を、平均粒子径2μm、変動係数33%のアクリル系樹脂粒子に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のニュートンリング防止シートの仕掛品を作製した。
【0074】
[実施例3]
実施例1のニュートンリング防止層用塗布液の微粒子を、平均粒子径9μm、変動係数22%のアクリル系樹脂粒子に変更し、厚み7μmのニュートンリング防止層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のニュートンリング防止シートの仕掛品を作製した。」
オ「【0098】
[実施例4]
実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムの一方の面にニュートンリング防止層を形成し、もう一方の面には下記処方のハードコート層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み約5μmのハードコート層を形成し、実施例4のニュートンリング防止シートを作製した。
【0099】
<実施例4のハードコート層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂 100部
(固形分50%)(デソライト7503:JSR社)
・微粒子(シリカ) 5部
(平均粒子径3.5μm)(変動係数60%)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 15部
【0100】
[実施例5]
実施例4のハードコート層用塗布液を、下記処方のハードコート層用塗布液に変更した以外は、実施例4と同様にして、実施例5のニュートンリング防止シートを作製した。
【0101】
<実施例5のハードコート層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分100%) 30部
(ダイヤビームUR6530:三菱レイヨン社)
・微粒子(シリカ) 1.5部
(平均粒子径4.5μm)(変動係数60%)
・微粒子(シリカ)(平均一次粒子径30nm) 1.5部
(アエロジル50:日本アエロジル社)
・光重合開始剤 0.15部
(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 30部」
カ 上記アないしウの記載事項から、刊行物2には、次の(ア)ないし(ウ)の事項が記載されていると認められる。
(ア)「透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂、および微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有し、前記透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、
前記ニュートンリング防止層の微粒子の含有量がニュートンリング防止層の全固形分中の0.1重量%~1.0重量%である、
ニュートンリング防止シート。」
(イ)「ニュートンリング防止シートにおいて、ニュートンリング防止層における微粒子の含有量は、ニュートンリング防止層を構成する全固形分中の0.1重量%~1.0重量%程度とすることが好ましく、それは、微粒子の含有量を0.1重量%以上とすることにより良好なニュートンリング防止性を付与することができるからであり、また、1.0重量%を超えて含有させてもニュートンリング防止性は変わらず、透明性の低下とスパークルの発生を招くのみという理由からであること。」
(ウ)「ニュートンリング防止シートにおいて、微粒子を含有してなるハードコート層における微粒子の含有量は、バインダー成分の固形分100重量部に対して2重量部~20重量部、さらには4重量部~18重量部、さらには6重量部~16重量部とすることが好ましく、それは、このような範囲とすることにより、ニュートンリング防止シートとした際に、JIS K7136:2000におけるヘーズが20%以下、さらには10%以下とすることができ、透明性を維持しつつ映り込み防止性の効果を発揮することができるからであること。」
また、上記エ及びオの記載事項から、刊行物2には、実施例4及び5として、次の(エ)及び(オ)の発明も記載されていると認められる。
(エ)「透明支持体として厚み188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方のニュートンリング防止層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み1.5μmのニュートンリング防止層を形成し、さらに、前記ポリエステルフィルムのもう一方の面には、下記処方のハードコート層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み約5μmのハードコート層を形成して作製した、ニュートンリング防止シート。
<ニュートンリング防止層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂 100部
(固形分50%)(無機成分38%)(デソライト7503:JSR社)
・微粒子(アクリル系樹脂粒子) 0.2部
(平均粒子径2μm)(変動係数50%)
・イソプロピルアルコール 150部
<ハードコート層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂 100部
(固形分50%)(デソライト7503:JSR社)
・微粒子(シリカ) 5部
(平均粒子径3.5μm)(変動係数60%)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 15部」
(オ)「透明支持体として厚み188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方のニュートンリング防止層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み1.5μmのニュートンリング防止層を形成し、さらに、前記ポリエステルフィルムのもう一方の面には、下記処方のハードコート層用塗布液を塗布、乾燥し、高圧水銀灯で紫外線を照射して厚み約5μmのハードコート層を形成して作製した、ニュートンリング防止シート。
<ニュートンリング防止層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂 100部
(固形分50%)(無機成分38%)(デソライト7503:JSR社)
・微粒子(アクリル系樹脂粒子) 0.2部
(平均粒子径2μm)(変動係数50%)
・イソプロピルアルコール 150部
<ハードコート層用塗布液の処方>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分100%) 30部
(ダイヤビームUR6530:三菱レイヨン社)
・微粒子(シリカ) 1.5部
(平均粒子径4.5μm)(変動係数60%)
・微粒子(シリカ)(平均一次粒子径30nm) 1.5部
(アエロジル50:日本アエロジル社)
・光重合開始剤 0.15部
(イルガキュア651:チバスペシャルティケミカルズ社)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 30部」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「塗料C」の成分である「シリカ(K-500(平均粒径:約2.0μm)、東ソーシリカ(株)社製)」は、本願発明の「平均粒径が500nmを超える微粒子(b1)」及び「平均粒径が500nmを超える微粒子(b2)」に相当する。
(2)刊行物1の段落【0111】(上記1(1)オ参照。)の、保護層は、JIS B0601’94に規定されている基準長さにおける輪郭曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和である表面最大高さ粗さRy(μm)を通常1.8~3.2程度、好ましくは2.0~3.2程度、より好ましくは2.0~2.6程度に調整することによりアンチニュートンリング性を有効に発揮させることができる旨の記載からみて、引用発明の最大高さ粗さRyが2.33μmである「保護層」が、アンチニュートンリング性を有する層であることは明らかであり、また、同段落【0017】(上記1(1)エ参照。)の特定の粒子を特定の樹脂組成物と組み合わせて用いた粒子含有保護層を形成することにより透明フィルムに対してハードコート機能を付与した透明性導電フィルムを提供することができる旨の記載からみて、当該「保護層」が、ハードコート性を有する層でもあることは明らかであるから、引用発明の環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムのいずれか一方の面に形成された「保護層」を本願発明の「ハードコート層」に相当させることができ、その反対面に形成された「保護層」を本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当させることができる。
そうすると、引用発明の「導電性透明フィルム」は、「保護層」(本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当。)を有するフィルムなのであるから、本願発明の「ニュートンリング防止シート」に相当するといえる。
(3)引用発明の「塗料A」は、紫外線硬化性組成物(トリメチロールプロパントリアクリレートを50部、ワニスB1を25部、多官能ウレタンアクリレートを25部混合して酢酸エチルにより固形分50%になるよう調整し、これに、光重合開始剤としてイルガキュアー184を配合物の固形分に対し5%添加し、溶解させることにより調製し、酢酸エチルにより固形分を80%になるよう調整、さらにMEKにより固形分が70%になるよう調整たもの)65.1部と、メチルエチルケトン(MEK)10.0部と、シリカ(アエロジル(平均粒径:約12nm)、日本アエロジル社製)9.17部とからなる成分を、ロールミル分散機に3回通し、その後、MEKで希釈した、固形分48%の塗料であるから、本願発明の「有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)」及び「有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)」に相当する。
(4)引用発明の「環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルム」と、本願発明の「透明プラスチィックフィルム」とは、「透明プラスチックフィルム」である点で一致する。
(5)引用発明は、「塗料A」(本願発明の「有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)」に相当。)を95部、塗料Cを5部混合し、グラビアリバース法にて、「環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルム」(本願発明の「透明プラスチックフィルム」に相当。)、アートン(登録商標)(ジェイエスアール株式会社製、膜厚100μm)に塗布し、70℃で40秒間乾燥し、300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化させて、膜厚3.0μmの「保護層」(本願発明の「ハードコート層」に相当。)を有するフィルムを得ており、塗料Cはその成分に「シリカ(K-500(平均粒径:約2.0μm)、東ソーシリカ(株)社製)」(本願発明の「平均粒径が500nmを超える微粒子(b1)」に相当。)を含むのであるから、引用発明の「導電性透明フィルム」と本願発明の「ニュートンリング防止シート」とは、「透明プラスチックフィルムの片面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b1)を含むハードコート層を有」する点で一致する。
(6)さらに、引用発明は、「塗料A」(本願発明の「有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)」に相当。)を95部、塗料C(その成分に「シリカ(K-500(平均粒径:約2.0μm)、東ソーシリカ(株)社製)」(本願発明の「平均粒径が500nmを超える微粒子(b2)」に相当。)を含む。)を5部混合し、グラビアリバース法にて、「環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルム」(本願発明の「透明プラスチックフィルム」に相当。)の保護層の面とは反対面に塗布し、70℃で40秒間乾燥し、300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化させて、膜厚3.0μmの「保護層」(本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当。)を有するフィルムを得ているのであるから、引用発明の「導電性透明フィルム」と本願発明の「ニュートンリング防止シート」とは、「透明プラスチックフィルムの他方の面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b2)を含むニュートンリング防止層を有」する点で一致する。
(7)引用発明の「導電性透明フィルム」の一方の面に形成された「保護層」(本願発明の「ハードコート層」に相当。)と、反対面に形成された「保護層」(本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当。)とは、共に膜厚が3.0μmであるから、その膜厚の差は0である。したがって、引用発明の「導電性透明フィルム」と、本願発明の「ニュートンリング防止シート」とは、「要件(II)前記ハードコート層の厚み(z1)と、前記ニュートンリング防止層の厚み(z2)との差〔|z1-z2|〕が5.0μm未満である。」を満たす点で一致する。
また、引用発明の「導電性透明フィルム」の一方の面に形成された「保護層」(本願発明の「ハードコート層」に相当。)と、反対面に形成された「保護層」(本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当。)とは、共に、塗料A95部と塗料C5部の混合物を塗布、乾燥、硬化させて形成した層であるから、両層における「シリカ」(本願発明の「微粒子」に相当。)の含有率はまったく同じ(すなわち、その差は0)である。したがって、引用発明の「導電性透明フィルム」と、本願発明の「ニュートンリング防止シート」とは、「要件(III)前記ハードコート層における微粒子(b1)の含有率(r1)と、前記ニュートンリング防止層における微粒子(b2)の含有率(r2)との差〔|r1-r2|〕が5.0質量%以下である。」を満たす点で一致する。
(8)引用発明(刊行物1の実施例5)における、「保護層」(本願発明の「ハードコート層」に相当。)における「シリカ」(本願発明の「微粒子(b1)」に相当。)の含有率(「r1」とする。)と、「保護層」(本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当。)における「シリカ」(本願発明の「微粒子(b2)」に相当。)の含有率(「r2」とする。)との和〔r1+r2〕を計算すると、次のようになる。
塗料Aの粒子分:0%(500nmを超える微粒子無し)
塗料Cの粒子分:10/(50.0×70/100)×100=28.6%
塗料A:塗料Cの混合比=95部:5部
塗料Aと塗料Cの混合物における全固形分:48/100×95+48/100×5=48部
全固形分中該当粒子分:28.6/100×48/100×5=0.69部
〔r1〕:0.69/48×100=1.44質量%
〔r2〕:〔r1〕と同様であることから、1.44質量%
〔r1+r2〕:1.44+1.44=2.88質量%
(9)上記(1)ないし(8)からみて、本願発明と引用発明とは、
「透明プラスチックフィルムの片面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a1)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b1)を含むハードコート層を有し、且つ、該透明プラスチックフィルムの他方の面に、有機・無機ハイブリッド硬化樹脂(a2)及び平均粒径が500nmを超える微粒子(b2)を含むニュートンリング防止層を有し、下記要件(II)及び(III)を満たす、ニュートンリング防止シート。
(II)前記ハードコート層の厚み(z1)と、前記ニュートンリング防止層の厚み(z2)との差〔|z1-z2|〕が5.0μm未満である。
(III)前記ハードコート層における微粒子(b1)の含有率(r1)と、前記ニュートンリング防止層における微粒子(b2)の含有率(r2)との差〔|r1-r2|〕が5.0質量%以下である。」
の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:
前記「透明プラスチックフィルム」が、
本願発明では、「環状オレフィン系樹脂製透明プラスチックフィルムを除く」ものであるのに対し、
引用発明では、環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムである点。
相違点2:
前記「ニュートンリング防止層」における、「JIS B 0601-1994に準拠して測定される粗さ曲線より求められる最大高さ(Ry)」が
本願発明では、「0.5μm~1.4μm」であるのに対し、
引用発明では、2.33μmである点。
相違点3:
前記「ハードコート層」における「微粒子(b1)の含有率(r1)と、前記ニュートンリング防止層における微粒子(b2)の含有率(r2)との和〔r1+r2〕」が、
本願発明では、「10~35.0質量%」であるのに対し、
引用発明では、2.88質量%である点。
3 判断
(1)相違点1について
ア 刊行物1の段落【0002】、【0003】には、従来から光学用途の成形材料として用いられていたポリカーボネート(PC)は複屈折が大きく、また、ポリメチルメタクリレート(PMMA)は吸水性が高く耐熱性も不十分であるため、環状オレフィン系樹脂が注目され、広く用途展開が進められている旨が記載されており(上記1(1)ウ参照。)、このことからみて、刊行物1には、当該刊行物1の記載に接した当業者に対し、上記透明フィルムとして環状オレフィン系樹脂以外の樹脂からなるフィルムを用いる本願発明の構成から遠ざかる方向への教唆を与える記載(いわゆるティーチング・アウェイ)があるといえる。
また、刊行物1の段落【0003】ないし【0009】の記載(上記1(1)ウ参照。)からみて、引用発明は、「低複屈折、低吸湿、高透明性、高耐熱性等の基本的な特性を確保する」ために、ベースとなる透明フィルムとして「環状オレフィン系樹脂フィルム」を用いることを前提とし、当該「環状オレフィン系樹脂フィルム」の課題であるハードコート性を付与するための被覆(保護層)との接着性を耐擦傷性の低下等を招くことなく改善するために、当該被覆の材質を工夫したものと理解される。透明フィルムとして「環状オレフィン系樹脂フィルム」を用いることを前提としていることは、特許公開公報である刊行物1の特許請求の範囲(上記1(1)ア参照。)に記載されたすべての請求項が「透明フィルムが、環状オレフィン系樹脂からな」るという発明特定事項を含んでいること、並びに、刊行物1に記載されたすべての実施例及び比較例(実施例1ないし9、比較例1、2)において、環状オレフィン系樹脂フィルムが上記透明フィルムとして用いられていることからみても、明らかである。
したがって、引用発明の「導電性透明フィルム」のベースとなる透明フィルムを、環状オレフィン系樹脂以外の樹脂からなるフィルムに替えることは、引用発明の技術的意義を失わせる結果になるから、当該構成の変更には阻害要因があるというべきである。
イ 刊行物2には、透明支持体として厚み188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)を用いたニュートンリング防止シートの発明が記載されており(上記1(2)オ(エ)及び(オ)参照。)、このことから、本件出願前に、タッチパネル用の導電性透明フィルムのベースフィルムとして環状オレフィン系樹脂以外の樹脂からなるフィルムを用いることが周知技術であったといえるかも知れない。しかしながら、仮にそうであったとしても、刊行物1には、上記アで述べたとおりの阻害要因となる記載があることから、引用発明の「導電性透明フィルム」のベースとなる透明フィルムを環状オレフィン系樹脂以外の樹脂からなるフィルムに替えることが容易想到であったとはいえない。
ウ 上記ア及びイからみて、引用発明において、透明フィルムを、環状オレフィン系樹脂以外の樹脂からなる透明フィルムとなすこと、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成となすことが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(2)相違点2について
ア 刊行物1の段落【0111】には、「保護層」の表面の最大高さ粗さRy(μm)が、「通常、1.8~3.2程度に設定されていることが好ましく、特に2.0~3.2程度、2.0~2.6程度がより好ましい」と記載されており、また、上記の範囲が好ましい理由として、「このような最大高さ粗さに調整することにより、上述した粒子の平均粒径及び/又は比較的大きな粒子の含有割合等と相まって、アンチニュートンリング性を有効に発揮させることができる」と記載されている(上記1(1)オ参照。)。
イ 引用発明は、そもそも、上記1(1)ウに掲げたような技術的背景(ニュートンリングの解消が課題として認識されている。)の下になされた発明であるところ、上記アに掲げた刊行物1の段落【0111】の記載からみて、Ryが2.33μmである「保護層」にはアンチニュートンリング性の発揮が期待されていることが明らかである。
そうすると、刊行物1の記載に接した当業者が、引用発明において、「保護層」のRyを「アンチニュートンリング性を有効に発揮させることができる」好適な範囲の下限とされている1.8μm未満に変更しようとする動機付けは生じないというべきである。
ウ 刊行物1に記載されている、「保護層」の表面の最大高さ粗さRy(μm)の値の記載があるすべての実施例、比較例(実施例1、2、5ないし7、比較例1、2)において、当該Ryの最小値は1.52μmであり(上記1(1)キの表1参照。)、このことからみて、刊行物1の記載には、上記Ryを1.52μm未満の値となすことについての教唆はないというべきである。
エ また、刊行物2には、「ニュートンリング防止層」の表面最大高さ粗さについての記載は、どこにもない(上記1(2)参照。)。
オ 上記アないしエからみて、引用発明において、本願発明の「ニュートンリング防止層」に相当する「保護層」のRyを「0.5μm~1.4μm」の範囲内の値となすこと、すなわち相違点2に係る本願発明の構成となすことが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)からみて、相違点3について検討するまでもなく、当業者が、引用発明及び刊行物2の記載に基づいて、本願発明を容易に発明することができたとはいえない。
(4)本願の請求項2ないし8に係る発明について
本願の請求項2ないし8に係る発明は、いずれも、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明及び刊行物2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 刊行物2について
(1)刊行物2(原査定の引用文献2)は、原査定において、請求項1に係る発明に対して引用された文献ではないが、念のために、当該刊行物2の記載事項についても検討しておく。
(2)刊行物2には、ニュートンリング防止シートの発明についての記載があり、当該ニュートンリング防止シートは、「透明支持体の一方の面に電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂、および微粒子から形成されてなるニュートンリング防止層を有し、前記透明支持体のもう一方の面に微粒子を含有してなるハードコート層を有するニュートンリング防止シートであって、前記ニュートンリング防止層の微粒子の含有量がニュートンリング防止層の全固形分中の0.1重量%~1.0重量%である、ニュートンリング防止シート。」であり(上記1(2)オ(ア)参照。)、より具体的には、上記1(2)オ(エ)及び(オ)に掲げた構成を有するものである。
また、上記3(2)エにも述べたとおり、刊行物2には、「ニュートンリング防止層」の表面最大高さ粗さについての記載は、どこにもない。
(3)上記(2)からみて、刊行物2に記載された各発明において、「ニュートンリング防止層」の表面最大高さ粗さを本願発明の「0.5μm~1.4μm」の範囲内の値となすことが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(4)上記1(2)オ(エ)及び(オ)に掲げた発明の、「ニュートンリング防止層」における平均粒子径が500nmを超える微粒子の全固形分中の含有量(率)、及び、「ハードコート層」における平均粒子径が500nmを超える微粒子の全固形分中の含有量(率)を計算すると、それぞれ、次のようになる。
<上記1(2)オ(エ)の発明>
・ニュートンリング防止層
0.2/(100×50/100+0.2)×100=0.4重量%
・ハードコート層
5/(100×50/100+5)×100=9.1重量%
・ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との差
9.1-0.4=8.7重量%
・ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和
9.1+0.4=9.5重量%
<上記1(2)オ(オ)の発明>
・ニュートンリング防止層
0.2/(100×50/100+0.2)×100=0.4重量%
・ハードコート層
1.5/(30×100/100+1.5+1.5+0.15)×100=4.5重量%
・ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との差
4.5-0.4=4.1重量%
・ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和
4.5+0.4=4.9重量%
(5)上記(4)からみて、刊行物2に記載された、上記1(2)オ(エ)の発明においては、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との差が5.0重量%を超えており、本願発明の要件(III)を充足せず、また、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和が10重量%に満たず、本願発明の要件(IV)を充足しない。
さらに、刊行物2に記載された、上記1(2)オ(オ)の発明においては、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和が10重量%に満たず、本願発明の要件(IV)を充足しない。
(6)刊行物2には、ニュートンリング防止シートにおいて、ニュートンリング防止層における微粒子の含有量は、ニュートンリング防止層を構成する全固形分中の0.1重量%~1.0重量%程度とすることが好ましく、それは、微粒子の含有量を0.1重量%以上とすることにより良好なニュートンリング防止性を付与することができるからであり、また、1.0重量%を超えて含有させてもニュートンリング防止性は変わらず、透明性の低下とスパークルの発生を招くのみという理由からである旨の記載があり(上記1(2)オ(イ)参照。)、当該記載に接した当業者が、ニュートンリング防止層における微粒子の含有率の調整を試みる場合、その調整は、良好なニュートンリング防止性を付与しつつ透明性の低下とスパークルの発生を招かない0.1重量%~1.0重量%の範囲内において行われることとなる。
また、刊行物2には、ニュートンリング防止シートにおいて、微粒子を含有してなるハードコート層における微粒子の含有量は、バインダー成分の固形分100重量部に対して2重量部~20重量部、さらには4重量部~18重量部、さらには6重量部~16重量部とすることが好ましく、それは、このような範囲とすることにより、ニュートンリング防止シートとした際に、JIS K7136:2000におけるヘーズが20%以下、さらには10%以下とすることができ、透明性を維持しつつ映り込み防止性の効果を発揮することができるからである旨の記載もあり(上記1(2)オ(ウ)参照。)、ハードコート層における微粒子の含有量を上記範囲内で調整することもできる。
しかしながら、刊行物2に記載された各発明において、ニュートンリング防止層における微粒子の含有率を0.1重量%~1.0重量%の範囲内において調整するとともに、同時にハードコート層における微粒子の含有率も調整したとしても、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との差が5.0重量%以下とする本願発明の要件(III)と、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和が10重量%以上とする本願発明の要件(IV)を同時に充足することはできない。なぜなら、ニュートンリング防止層における微粒子の含有量の上限が1.0重量%であるから、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との和を10重量%以上にしようとすると、ハードコート層における微粒子の含有量は少なくとも9.0重量%なければならず、その場合、ハードコート層における微粒子の含有率とニュートンリング防止層における微粒子の含有率との差が5.0重量%以下になることはないからである。
(7)上記(1)ないし(6)からみて、本願発明は、当業者が刊行物2に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明及び刊行物2の記載に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-006372