特許拒絶査定不服審判
2016-005285
口臭制御方法及び製品
- 審判番号
- 2016-005285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-513165外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月08日
- 審決日
- 2017年06月19日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベル-エアー フレグランシズ インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】秋山 敦
- 【請求人代理人】城田 百合子
- 分類
- P18 .121-Z (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-513165「口臭制御方法及び製品」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日国際公開、WO2011/152923、平成25年 7月11日国内公表、特表2013-528618〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年6月1日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年7月2日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され、同年12月1日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、平成28年4月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1~13に係る発明は、平成27年7月2日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「基剤となる口腔ケア製品と、
該基剤となる口腔ケア製品に組み込まれる臭い中和化合物と、を含み、
該臭い中和化合物は、亜鉛塩を添加したイオノン、イロン、及びシクラメンアルデヒドの組合せと、天然物と、を含み、
前記シクラメンアルデヒドは、前記臭い中和化合物中に、0.02~10.00パーセントで含まれ、
前記天然物は、カルダモンの油、スミレの葉の油、及びオリス精油から成る群から選択され、
前記カルダモンの油、前記スミレの葉の油、及び前記オリス精油は、前記臭い中和化合物中に、0.002~0.10パーセントで含まれ、
前記臭い中和化合物は、口腔ケア製品中に0.0025~5.00パーセントで含まれ、硫黄成分を含む臭い生成化合物によって生じる臭いを中和するために、前記臭い生成化合物と接触して分子求核置換を提供する化学構造を有し、
前記口腔ケア製品の使用時に口気悪臭を排除するように効果的に作用し、
前記臭い中和化合物には殺菌剤が含有されていないことを特徴とする口腔ケア製品。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、要するに、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1:特開昭61-263912号公報
第4 合議体の認定・判断
1.引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項(1-1)~(1-7)が記載されている。(なお、下線は当審による。)
(1-1)「1)1mlの水に約0.1mg以上の亜鉛イオンを放出する量の非毒性亜鉛塩とイオノンケトン誘導体からなり、亜鉛塩/前記イオノンケトン誘導体の重量比が約1000/1乃至5/1である口腔用組成物。
・・・
4)前記のイオノンテルペンケトンが、アルフア-イオノン、ベータ-イオノン、ガンマ-イオノン、ジヒドロイオノン、アルフア-メチルイオノンおよびイロンからなる群から選択される特許請求の範囲第1項に記載の口腔用組成物。
・・・
12)水性ベヒクル、ならびに約0.01~5重量%の亜鉛イオンを放出する亜鉛塩および約0.005~1重量%のイオノンケトンテルペン誘導体からなり、亜鉛イオン/イオノンケトンテルペンの重量比が約1000/1乃至5/1である口腔用調製物を実質的に口腔内に分散させることからなる気息臭気を消去する方法。
・・・」(特許請求の範囲参照)
(1-2)「先行技術には、防腐剤としての塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、フツ化亜鉛、フエノールスルホン酸亜鉛などの亜鉛塩および膿漏剤としての口腔状態補正剤を含有する口腔用組成物が多数存在する。塩化亜鉛は、その収れん性のため口腔用配合物に広く用いられてきた。フエノールスルホン酸亜鉛は、口腔内で起る発酵作用および腐敗作用の臭気禁止剤としてはもとより、抗歯苔剤および抗結石剤としても先行技術の歯磨組成物に使用されてきた。」(第2頁右上欄第8~16行参照)
(1-3)「脱臭性テルペン類は、英国特許第1,311,060号に記載されている。斯かるテルペン類には、ケトンテルペン類、アルフア-イオノンおよびベータ-イオノンが含まれる。」(第2頁左下欄下6~下3行参照)
(1-4)「(発明が解決しようとする問題点)
本発明の一目的は、亜鉛イオンおよびイオノンを付与する化合物を含有する物質を口腔組成物中に添入することにより、気息臭気の抑制を相乗的に改善することである。」(第2頁左下欄下2行~右下欄第3行参照)
(1-5)「適当な香料または甘味料も、本発明のイオノン成分を補完するものとして使用される。イオノンケトンテルペンは香油の添加物として、それに含めることが好ましく、香油が存在すると亜鉛含有製品の味感を改善する。」(第6頁左上欄第2~6行参照)
(1-6)「ゆすぎ液の配合は下記のA、B、CおよびDであつた。
製品配合
A C
塩化亜鉛 亜鉛を含む高ハツ
口ゆすぎ カ、α-イオノン
成 分 パーセント パーセント
エタノール 10.000 10.000
プルロニツク108 1.000 1.000
ナトリウムサツカリン 0.045 0.045
グリセリン 8.000 8.000
塩化亜鉛 0.250 2.500
香料(ハツカ油) 0.218 0.218
水(イオン交換/蒸留) 80.487 (1%α-
イオノンを)
含む
100.000 」
(第6頁右下欄第4行~最下行参照)
(1-7)「結果を下表に要約する。(ベータ-イオノンは、亜鉛が存在する場合もせぬ場合も、アルフア-イオノンと同様な結果を与える)VSC水準は、唾液を密閉容器内で一夜培養したあとの腐敗した唾液系にある硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)およびジメチルスルフイド(CH3)2Sの揮発性硫黄化合物の上部空間の量をGC-炎光法で測定したものである。
・・・
臨床試験の結果は以下の通りであった。
(1)亜鉛は3時間まで有効である。(IA)
(2)亜鉛/高セイヨウハツカ/α-イオノン香料は一夜有効であり、高セイヨウハツカ/α-イオノン(亜鉛含すず)の有効性は、一夜保たない。(2Cと3C)
(3)亜鉛/高セイヨウハツカ/α-イオノンはプラセボより著るしく効果的である。(Zn/高ハツカ)の組合せ物は、相乗的かつ顕著な効果を有し、他のいずれよりも有効である。」(第7頁右上欄第2行~第8頁左上欄第10行参照)
2.引用発明の認定
上記記載事項(1-1)及び(1-4)によれば、引用文献1には、亜鉛塩及びイオノンテルペンケトンを含有する口腔用組成物を、気息臭気を消去するために用いることが記載されており、そのような組成物の具体的な例として、上記記載事項(1-6)に示す製品配合Cの組成物が記載されている。
そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「以下の組成を有する、気息臭気を消去するために用いる口ゆすぎ液。
成 分 パーセント
エタノール 10.000
プルロニツク108 1.000
ナトリウムサツカリン 0.045
グリセリン 8.000
塩化亜鉛 2.500
香料(ハツカ油) 0.218(1%α-イオノンを含む)
水(イオン交換/蒸留) 残部
100.000 」
3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明に配合される成分のうち、「塩化亜鉛」及び「α-イオノン」の組合せからなるものが本願発明における「臭い中和化合物」に相当し、引用発明に配合されるそれ以外の成分が本願発明における「基剤」に相当するものと認められる。そうすると、引用発明のうち、「臭い中和化合物」に相当する成分の配合量の合計は、組成物全体の約2.5%となるので、本願発明における「前記臭い中和化合物は、口腔ケア製品中に0.0025~5.00パーセント」に相当する。また、引用発明における「口ゆすぎ液」及び「塩化亜鉛」はそれぞれ、本願発明における「口腔ケア製品」及び「亜鉛塩」に相当する。また、引用発明の「口ゆすぎ液」は、「気息臭気を消去するために用い」られるものであるから、本願発明と同様に、「使用時に口気悪臭を排除するように効果的に作用」するものであるといえる。さらに、引用発明には「殺菌剤」に相当する成分は含有されていない。
したがって、両者は次の点で一致し、次の点で相違すると認められる。
<一致点>
「基剤となる口腔ケア製品と、
該基剤となる口腔ケア製品に組み込まれる臭い中和化合物と、を含み、
該臭い中和化合物は、亜鉛塩を添加したイオノンを含み、
前記臭い中和化合物は、口腔ケア製品中に0.0025~5.00パーセントで含まれ、
前記口腔ケア製品の使用時に口気悪臭を排除するように効果的に作用し、
前記臭い中和化合物には殺菌剤が含有されていないことを特徴とする口腔ケア製品。」
<相違点>
相違点1:
本願発明においては、臭い中和化合物中に「イロン」が含まれていることが特定されているのに対し、引用発明ではそのことが特定されていない点。
相違点2:
本願発明においては「シクラメンアルデヒド」が「臭い中和化合物中に、0.02~10.00パーセントで含まれ」ることが特定されているのに対し、引用発明ではそのことが特定されていない点。
相違点3:
本願発明においては「カルダモンの油、スミレの葉の油、及びオリス精油から成る群から選択され」る「天然物」が「臭い中和化合物中に、0.002~0.10パーセントで含まれ」ることが特定されているのに対し、引用発明ではそのことが特定されていない点。
相違点4:
本願発明においては、臭い中和化合物について、「硫黄成分を含む臭い生成化合物によって生じる臭いを中和するために、前記臭い生成化合物と接触して分子求核置換を提供する化学構造を有」することが特定されているのに対し、引用発明ではそのことが特定されていない点。
4.相違点についての判断
(1)相違点1について
引用文献1には、イオノンテルペンケトンとして、α-イオノンのみならず、イロンをも選択してよいことが記載されているのであるから(上記記載事項(1-1)、特に請求項4参照)、引用発明において、α-イオノンに加えてイロンを添加すること、又はα-イオノンの一部をイロンに置き換えることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)相違点2、3
「シクラメンアルデヒド」、「カルダモンの油」、「スミレの葉の油」((バイオレットリーフの油)及び「オリス精油」は、いずれも口腔組成物に使用される香料や香油として周知の成分である(必要があれば、以下の参考文献も参照されたい。)。そして、引用文献1には、香料を添加してもよいこと、及び、香油が存在することによって、亜鉛含有製品の味感が改善することも記載されているのであるから(上記記載事項(1-5)参照)、引用発明において、味感の改善を意図して、周知の成分である「シクラメンアルデヒド」、「カルダモンの油」、「スミレの葉の油」及び「オリス精油」などを配合することは、当業者が適宜なし得た事項であると認められる。
またその際に、配合量を適切な値に設定することも、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。
参考文献:
・特開2004-018431号公報(特に請求項52、65、【0093】段落参照)
・特開2007-254396号公報(特に請求項3、【0016】及び【0023】段落参照)
・特開2003-235497号公報(特に【0016】及び【0024】段落参照)
(3)相違点4について
本願明細書【0020】段落には、「本製品のO.M.複合体オーラル成分は、臭い生成化学物質、特に、硫黄成分を含む化学物質の分子求核置換を提供する働きをする。」と記載されている(下線は当審による。)。この記載によると、本願発明における「硫黄成分を含む臭い生成化合物によって生じる臭いを中和するために、前記臭い生成化合物と接触して分子求核置換を提供する化学構造を有」するとの特定は、単に本願発明における「臭い中和化合物」が本来的に有する特性を説明しているに過ぎず、本願発明の成分や用途をさらに特定するものではないものと解される。
実際、本願明細書には、「臭い生成化合物と接触して分子求核置換を提供する化学構造」が具体的にどのような構造であるかについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、本願発明における上記特定は、発明を特定するための事項として意味のあるものではないので、この点は実質的な相違点とはならない。
5.効果についての判断
本願発明の効果に関し、本願明細書【0015】段落には、「亜鉛錯体とともに天然及び関連芳香族化合物を含有する口腔用合成物(O.M.複合体オーラル)は、口気悪臭を排除するように相乗的に作用する。」との記載がある。しかしながら、本願明細書においては、本願発明が口臭改善効果を有することを裏付ける実施例等は何ら示されていない。
他方、引用文献1には、引用発明の口ゆすぎ液を用いることにより、唾液を密閉容器内で一夜培養したあとの唾液系において、上部空間の揮発性硫黄化合物(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィド)の量が減少したことが示されている(上記記載事項(1-7)参照)。
そして、審判請求書等での審判請求人の主張を参酌しても、本願発明が引用発明と比して、特に優れた口臭改善効果を有すると認めるに足る根拠は示されていないことから、本願発明の効果が、引用文献1及び技術常識から予測し難い格別なものであると認めることはできない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、本願の米国ファミリー出願の審査過程で提出された宣誓書及びその和訳を添付しつつ、本願発明は、当業者によって予測できない格別な効果を奏するものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない旨主張をしている。ここで、上記宣誓書において主張されている内容は、要するに、本願発明は悪臭分子の液体から蒸気への蒸発を防ぐ働きをしており、そのことは当業者によって予測できない格別な効果である、というものである。
しかしながら、上述のとおり、引用文献1には、引用発明の口ゆすぎ液を用いることにより、唾液を密閉容器内で一夜培養したあとの唾液系において、上部空間の揮発性硫黄化合物(硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルスルフィド)の量が減少したことが示されている(上記記載事項(1-7)参照)。この結果は、引用発明の口ゆすぎ液を用いることによって、悪臭分子である揮発性硫黄化合物の蒸発が減少したことを意味しているものと解されるため、出願人主張の上記効果は、引用文献1から予測可能なものに過ぎないものと認められる。
また、そもそも、本願発明と引用発明は、いずれも口臭改善に有効であることが公知である亜鉛塩(上記記載事項(1-2)参照)及びイオノン(上記記載事項(1-3)参照)を含有している点で共通していることから、両発明は同一又は類似のメカニズムによって、同一又は類似の口臭改善効果を有するものである蓋然性が高いと考えられる。
そうすると、仮に本願発明における口臭改善のメカニズムが引用文献1から予測できないものであったとしても、そのことは、本願発明による口臭改善効果が、引用発明における口臭防止効果よりも優れたものであることを裏付ける根拠とはならない。そして、上述のとおり、本願発明が引用発明と比して特に優れた口臭改善効果を有すると認めるに足る根拠が示されていない以上、本願発明の効果が、引用発明1及び技術常識から予測し難い格別ものであると認めることはできない。
よって、いずれにしても出願人の上記主張を採用できない。
6.小括
上記のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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