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特許拒絶査定不服審判

2016-005091

線輪部品

審判番号
2016-005091
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-104282外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年04月06日
審決日
2017年04月10日
公報発行日
2017年06月30日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H01F) / P18 .537-WY (H01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-104282「線輪部品」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日出願公開、特開2012-235051、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月9日の出願であって、平成27年2月24日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年4月28日付けで手続補正がなされたが、同年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年4月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされた。 その後、当審の平成28年12月20日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成29年2月15日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願の特許請求の範囲について 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年2月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 軟磁性粉と結合材を主に含有するコンポジット磁性体と、前記コンポジット磁性体に埋設された巻線と、前記コンポジット磁性体に埋設され、前記巻線の内周面全面に接して配置する円筒状の伝熱軟磁性体を備え、前記伝熱軟磁性体は、内部に前記コンポジット磁性体が充填され、前記コンポジット磁性体外部への放熱経路と接続され、前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする線輪部品。 【請求項2】 前記巻線に通電する交流電流の周波数が1kHz以上、100kHz以下であり、前記巻線に通電する電流のうち、100kHzより高い周波数成分を除くピーク値が20A以上、500A以下であることを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。 【請求項3】 前記巻線から前記放熱経路へと流れる熱流路と垂直な前記伝熱軟磁性体の断面の最小幅が1mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線輪部品。 【請求項4】 前記巻線から前記放熱経路へと流れる熱流路と垂直な前記伝熱軟磁性体の断面積は、前記巻線の内周面または外周面全体の面積の少なくとも2%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線輪部品。 【請求項5】 前記放熱経路として前記コンポジット磁性体と前記伝熱軟磁性体を収容するケースを備え、前記伝熱軟磁性体は前記ケースと接し、前記巻線は前記伝熱軟磁性体により支持され、前記ケースには前記伝熱軟磁性体を固定する手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の線輪部品。」 第3 当審の拒絶の理由について 1.当審拒絶理由の概要 当審において平成28年12月20日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.請求項1において、『・・前記巻線の内周面全面及び外周面全面のうち少なくとも一方に接して配置する円筒状の伝熱軟磁性体を備え、・・』とあるが、 かかる記載によれば、伝熱軟磁性体は、巻線の外周面全面に接する円筒状のものであっても良いと解されるが、そのような伝熱軟磁性体については発明の詳細な説明に記載されておらず(特に図2には、巻線の内周面全面に接する円筒状のものが示されるのみであり、また、図3,4には、巻線の外周面の一部にも接するものが示されているものの、円筒状ではなく、外周面全面に接するものではない点に注意されたい。)、この点において請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。 (下線を付した『及び外周面全面のうち少なくとも一方』なる記載部分を削除されたい。) 2.請求項1において、『・・前記コンポジット磁性体に少なくとも一部が埋設された巻線と、前記巻線の内周面全面または外周面全面のうち少なくとも一方に接して配置する円筒状の伝熱軟磁性体を備え、・・』とあるが、 (a)巻線は、少なくともどの部分がコンポジット磁性体に埋設されていればよいのか、 (b)また、円筒状の伝熱軟磁性体については、巻線と同様にコンポジット磁性体に埋設されてなるものであるのかあるいは埋設されなくてもよいものであるのか、特に円筒内にはコンポジット磁性体が充填されるのか、あるいは充填されなくてもよいのか、 が明らかでなく、これらの点において請求項1に係る発明は明確なものでない。 〔審判請求書で主張しているように、引用文献1との構成、効果の違いをより明確にするためにも、請求項1において、下線を付した『少なくとも一部が』なる記載部分を削除するとともに、円筒状の伝熱軟磁性体についてもコンポジット磁性体に埋設され、その円筒内にはコンポジット磁性体が充填されていることが明確に理解し得るような記載とされたい。〕 3.請求項4において、『前記巻線表面と近接する前記伝熱軟磁性体の表面積と、・・・・断面積は、前記巻線の内周面または外周面全体の面積の少なくとも2%以上である・・』とあるが、 かかる記載によれば、巻線表面と近接する伝熱軟磁性体の『表面積』は、巻線の内周面全体の面積の『少なくとも2%以上』であれば、例えば100%未満でも良いかのようにも解されるが、引用する請求項1では、『・・前記巻線の内周面全面及び外周面全面のうち少なくとも一方に接して配置する円筒状の伝熱軟磁性体・・』とあり、巻線表面と近接する伝熱軟磁性体の『表面積』は、100%以上となるはずであり、この点において記載内容の対応がとれていない。 よって、請求項4に係る発明は明確なものでない。 (下線を付した『前記巻線表面と近接する前記伝熱軟磁性体の表面積と、』なる記載部分は削除されたい。)」 2.当審拒絶理由についての判断 これに対して、平成29年2月15日付け手続補正により特許請求の範囲が補正され、具体的には、 (1)上記「1.」の指摘に対して、請求項1において、「・・前記巻線の内周面全面及び外周面全面のうち少なくとも一方に接して・・」なる記載を、「・・前記巻線の内周面全面に接して・・」とする補正、すなわち、円筒状の伝熱軟磁性体が接するのは、巻線の「内周面全面」であることを特定する補正がなされた。 (2)上記「2.(a)」の指摘に対して、請求項1において、「・・前記コンポジット磁性体に少なくとも一部が埋設された巻線と、・・」なる記載を、「・・前記コンポジット磁性体に埋設された巻線と、・・」とする補正がなされ、 また、上記「2.(b)」の指摘に対して、請求項1において、円筒状の伝熱軟磁性体は、「前記コンポジット磁性体に埋設され」、「内部に前記コンポジット磁性体が充填され」てなるものであることを明確にする補正がなされた。 (3)上記「3.」の指摘に対して、請求項4において、「前記巻線表面と近接する前記伝熱軟磁性体の表面積と、」なる記載部分を削除する補正がなされた。 したがって上記(1)ないし(3)によれば、当審の拒絶理由で指摘した不備な点はすべて解消され、本件出願は、特許法第36条第6項第1号・第2号に規定する要件を満たしているものと認められる。 3.当審拒絶理由についてのむすび 以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 この出願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.国際公開第2011/013394号 2.特開2008-210820号公報 3.特開2009-33051号公報 4.特開2009-99596号公報 5.特開2010-182941号公報 6.特開2010-225840号公報 7.特開2010-225841号公報 8.特開2008-305854号公報 2.原査定の理由についての判断 2-1.本願の請求項1に係る発明について (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された国際公開第2011/013394号(以下、「引用例」という。)には、「リアクトル」について、図面とともに以下の各記載がある(下線は当審で付与した。)。 ア.「[請求項1] 巻線を巻回してなるコイルと、このコイル内に挿通された内側コア部、及び前記コイルの外周の少なくとも一部を覆う連結コア部の両コア部により閉磁路を形成する磁性コアとを具えるリアクトルであって、 前記内側コア部の断面積をS1、前記内側コア部の飽和磁束密度をB1、前記連結コア部の断面積をS2、前記連結コア部の飽和磁束密度をB2、両コア部の飽和磁束密度の比を(B1/B2)、両コア部の磁束比を(S1×B1)/(S2×B2)とするとき、 1<(B1/B2)、及び0.17×(B1/B2)+0.42≦(S1×B1)/(S2×B2)≦0.50×(B1/B2)+0.62を満たすことを特徴とするリアクトル。」 イ.「[請求項4] 前記内側コア部は、圧粉成形体から構成されており、 前記連結コア部は、鉄基材料と樹脂との混合物から構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリアクトル。」 ウ.「[請求項11] 前記コイルと前記磁性コアとの組合体を収納するケースを具え、 前記連結コア部は、磁性材料と樹脂との混合物から構成されており、   前記コイル及び前記内側コア部は、前記連結コア部を構成する樹脂により前記ケースに封止されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のリアクトル。」 エ.「[0019] 本発明の一形態として、上記内側コア部は圧粉成形体から構成されており、上記連結コア部は、鉄基材料と樹脂との混合物から構成されている形態が挙げられる。 [0020] 本発明リアクトルに具える内側コア部の構成材料には、連結コア部の構成材料よりも飽和磁束密度が高いものを利用する。上記形態の連結コア部は、一般的に非磁性材料である樹脂を含むことから、この連結コア部よりも飽和磁束密度が高い材料として、圧粉成形体を好適に利用することができる。圧粉成形体は、三次元形状の部材を簡単に形成できるため、例えば、コイルの内周面の形状に適合した外形を有する内側コア部を容易に形成することができる。内側コア部の外形がコイルの内周面の形状に近似していることで、内側コア部の外周面にコイルの内周面を接近させて配置できるため、リアクトルを更に小型にすることができる。」 オ.「[0045] (実施形態1) 主として、図1~3を参照して、実施形態1のリアクトル1αを説明する。リアクトル1αは、巻線2wを巻回してなる一つのコイル2αと、コイル2αが配置される磁性コア3αとを具える所謂ポット型形態である。磁性コア3αは、コイル2α内に挿通された内側コア部3iと、コイル2αの実質的に全周を覆う連結コア部3oとを有し、内側コア部3iと連結コア部3oとが連結されて、これら両コア部3i,3oにより閉磁路を形成する。リアクトル1αの特徴とするところは、磁性コア3αの構成材料、その形態、及び電磁気的特性にある。以下、各構成を詳細に説明する。」 カ.「[0049] 《内側コア部》 内側コア部3iは、コイル2αの内周面の形状に沿った円柱状の外形を有しており、その全体が圧粉成形体から構成されて、ギャップ材やエアギャップ、接着剤が介在していない中実体である。 [0050] 圧粉成形体は、代表的には、表面に絶縁被膜を具える軟磁性粉末を成形後、上記絶縁被膜の耐熱温度以下で焼成することにより得られる。・・・・・(以下、略)」 キ.「[0056] ここでは、上記連結コア部3oは、その全体が磁性材料と樹脂との混合物(成形硬化体)により形成されている。成形硬化体は、代表的には、射出成形、注型成形により形成することができる。 [0057] 射出成形は、通常、磁性材料からなる粉末(必要に応じて更に非磁性粉末を加えた混合粉末)と流動性のあるバインダ樹脂とを混合し、この混合流体を、所定の圧力をかけて成形型に流し込んで成形した後、バインダ樹脂を硬化させる。注型成形は、射出成形と同様の混合流体を得た後、この混合流体を、圧力をかけることなく成形型に注入して成形・硬化させる。 [0058] いずれの成形手法も、磁性材料には、上述した内側コア部3iに利用する軟磁性粉末と同様のものを利用することができる。特に、連結コア部3oに利用する軟磁性粉末は、平均粒径が10μm以上500μm以下の純鉄粉末やFe基合金粉末といった鉄基材料が好適に利用できる。軟磁性材料からなる粒子の表面に燐酸鉄などからなる被膜を具える被覆粉末を利用してもよい。」 ク.「[0073] 更に、リアクトル1αではケース5を具えることで、上記コイル2αと磁性コア3αとの組合体を粉塵や腐食といった外部環境から保護したり、機械的に保護したりすることができる。また、連結コア部3oが樹脂成分を具えることで、ケース5が開口していても、コイル2αや内側コア部3iに対する外部環境からの保護や機械的保護を図ることができる。更に、リアクトル1αでは、コイル2αの全体が連結コア部3oにより覆われる形態とすることで、連結コア部3oの形成が容易である上に、コイル2の保護を十分に図ることができる。加えて、ケース5を金属製にすることで、放熱経路に利用することができ、リアクトル1αは、放熱性にも優れる。特に、コイル2αが配置された内側コア部3iがケース5に接していることで、コイル2αの熱を効果的に放出できる。」 ・上記引用例に記載の「リアクトル」は、上記「ア.」、「オ.」の記載事項、及び図1によれば、巻線2wを巻回してなるコイル2αと、このコイル2α内に挿通された内側コア部3i、及びコイル2αの実質的に全周を覆う連結コア部3oの両コア部により閉磁路を形成する磁性コア3αとを具えるリアクトルに関し、 さらに、上記「ア.」、「エ.」の段落[0020]の記載事項によれば、内側コア部3iの構成材料は、連結コア部3oの構成材料よりも飽和磁束密度が高いものが用いられてなるものである。 ・上記「ウ.」、「ク.」の記載事項、及び図1によれば、リアクトルは、コイル2αと磁性コア3αとの組立体を収納する、例えば金属製のケース5を具えている。 ・上記「イ.」、「エ.」、「カ.」、「キ.」の記載事項によれば、内側コア部3iは、コイル2αの内周面の形状に沿った円筒状の外形を有し、その全体が表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体から構成された中実体であり、 さらに、上記「ク.」の記載事項、及び図1によれば、内側コア部3iは、コイル2αの内周面全面に接するとともに、その底面が金属製のケース5に接しており、コイル2αの熱をケース5に伝えて効果的に放出することができるものである。 ・上記「イ.」~「エ.」、「キ.」の記載事項によれば、連結コア部3oは、軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成されてなり、コイル2α及び内側コア部3iは、連結コア部3oのバインダー樹脂によりケース5に封止されてなるものである。 したがって、特に実施形態1に係るものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「巻線を巻回してなるコイルと、 前記コイル内に挿通された内側コア部、及び前記コイルの実質的に全周を覆い、軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成された連結コア部の両コア部により閉磁路を形成する磁性コアと、 前記コイルと前記磁性コアとの組立体を収納する金属製のケースと、を備え、 前記コイル及び前記内側コア部は、前記連結コア部の前記バインダー樹脂により前記金属製のケースに封止されてなり、 前記内側コア部は、前記連結コア部の構成材料よりも飽和磁束密度が高い構成材料が用いられ、前記コイルの内周面の形状に沿った円筒状の外形を有し、その全体が表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体から構成された中実体であって、前記コイルの内周面全面に接するとともに、その底面が前記金属製のケースに接し、前記コイルの熱を前記金属製のケースに伝えて効果的に放出することができるものである、リアクトル。」 (2)対比 そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と引用発明とを対比すると、 ア.引用発明における「・・軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成された連結コア部の両コア部により閉磁路を形成する磁性コアと」によれば、 引用発明における「軟磁性粉末(鉄基材料)」、「バインダー樹脂」、それらの混合物(成形硬化体)から構成された「連結コア部」は、それぞれ本願発明1でいう「軟磁性粉」、「結合材」、「コンポジット磁性体」に相当するといえ、 本願発明1と引用発明とは、「軟磁性粉と結合材を主に含有するコンポジット磁性体と」を備える点で一致する。 イ.引用発明における「巻線を巻回してなるコイルと、・・・・及び前記コイルの実質的に全周を覆い、軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成された連結コア部・・・・前記コイルと前記磁性コアとの組立体を収納する金属製のケースと、を備え、前記コイル及び前記内側コア部は、前記連結コア部の前記バインダー樹脂により前記金属製のケースに封止されてなり」によれば、 引用発明における「コイル」は、本願発明1でいう「巻線」に相当し、 引用発明の「コイル」にあっても、軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成された連結コア部によって実質的に全周が覆われ、当該連結コア部のバインダー樹脂により金属製のケースに封止されてなるものであることから、連結コア部に埋設されてなるものであるということができ(引用例の図1(B)も参照)、 本願発明1と引用発明とは、「前記コンポジット磁性体に埋設された巻線と」を備える点で一致する。 ウ.引用発明における「前記コイル内に挿通された内側コア部、・・・・前記コイルと前記磁性コアとの組立体を収納する金属製のケースと、を備え、前記コイル及び前記内側コア部は、前記連結コア部の前記バインダー樹脂により前記金属製のケースに封止されてなり、前記内側コア部は、前記連結コア部の構成材料よりも飽和磁束密度が高い構成材料が用いられ、前記コイルの内周面の形状に沿った円筒状の外形を有し、その全体が表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体から構成された中実体であって、前記コイルの内周面全面に接するとともに、その底面が前記金属製のケースに接し、前記コイルの熱を前記金属製のケースに伝えて効果的に放出することができるものである、」によれば、 (a)引用発明における「金属製のケース」は、本願発明1でいう「放熱経路」に相当し、 (b)引用発明における「内側コア部」にあっても、表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体であって、コイルの内周面全面に接するとともに、その底面が金属製のケースに接し、コイルの熱を金属製のケースに伝えて効果的に放出することができるものであることから、本願発明1でいう「伝熱軟磁性体」に相当するといえ、 (c)また、引用発明における「内側コア部」にあっても、連結コア部のバインダー樹脂により金属製のケースに封止されてなるものであることから、連結コア部に埋設されてなるものであるとみることができる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記コンポジット磁性体に埋設され、前記巻線の内周面全面に接して配置する所定形状の伝熱軟磁性体を備え、前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体外部への放熱経路と接続され」ている点で共通するということがてきる。 ただし、所定形状の伝熱軟磁性体について、本願発明1では、「円筒状」であり、その「内部に前記コンポジット磁性体が充填され」てなるものであるのに対し、引用発明では、円柱状の中実体である点で相違している。 エ.引用発明における「・・軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成された連結コア部・・・・前記内側コア部は、・・・・その全体が表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体から構成された中実体であって、前記コイルの内周面全面に接するとともに、その底面が前記金属製のケースに接し、前記コイルの熱を前記金属製のケースに伝えて効果的に放出することができるものである、・・」によれば、 引用発明における「連結コア部」は軟磁性粉末(鉄基材料)とバインダー樹脂との混合物(成形硬化体)から構成されてなるものであるのに対し、引用発明における「内側コア部」はその全体が表面に絶縁被膜を備える軟磁性粉末を成形・焼成して得られる圧粉成形体から構成されてなるものであることに加えて、引用発明における「内側コア部」はコイルの熱を金属製のケースに伝えて効果的に放出することができるものであることからして、引用発明における「内側コア部」にあっても、その熱伝導率が連結コア部の熱伝導率より高いことは自明といえることである。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体外部への放熱経路と接続され、前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体よりも熱伝導率が高い」ものである点で一致するということができる。 オ.そして、引用発明における「リアクトル」は、本願発明1でいう「線輪部品」に相当するものである。 よって、本願発明1と引用発明とは、 「軟磁性粉と結合材を主に含有するコンポジット磁性体と、前記コンポジット磁性体に埋設された巻線と、前記コンポジット磁性体に埋設され、前記巻線の内周面全面に接して配置する所定形状の伝熱軟磁性体を備え、前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体外部への放熱経路と接続され、前記伝熱軟磁性体は、前記コンポジット磁性体よりも熱伝導率が高いことを特徴とする線輪部品。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 所定形状の伝熱軟磁性体について、本願発明1では、「円筒状」であり、その「内部に前記コンポジット磁性体が充填され」てなるものであるのに対し、引用発明では、円柱状の中実体である点。 (3)判断 上記相違点について検討すると、 上記相違点によれば、コイルの内側部分については、本願発明1にあっては、円筒状の熱軟磁性体とその内側のコンポジット磁性体の構成材料が異なる2つ磁性体が設けられてなるものであるのに対し、引用発明にあっては、内部コア部のみが設けられてなるものである点で相違すると言い替えることができるところ、 そもそも引用発明は、「内部コア部」について、連結コア部の構成材料よりも飽和磁束密度が高い構成材料を用い、中実体であることを前提とするものであって、本願発明1のように、当該内部コア部を、連結コア部の構成材料よりも飽和磁束密度が高い構成材料と、連結コア部の構成材料と同じ飽和磁束密度の構成材料の異なる2つの構成材料で構成すること自体に阻害要因があるといえ、たとえ原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2008-210820号公報(特に段落【0044】、【0134】、図7を参照)には、巻線内包絶縁物3(コイル)の内側部分に、コイルのほぼ内周面全面と接してトロイダル形状の特定透磁率部材4を配置するとともに、その内部に磁性体粉末と樹脂との混和物2を充填してなる構成(なお、トロイダル形状の特定透磁率部材4はケースと接しておらず、「伝熱」を目的としたものではない)が記載されているとしても、本願発明1における、コイルの内周面全面に接して配置される伝熱軟磁性体を「円筒状」とし、その「内部にコンポジット磁性体が充填され」てなる発明特定事項を導き出すことはできない。 なお、原査定の拒絶の理由に引用された他の引用文献である引用文献3~8(特開2009-33051号公報、特開2009-99596号公報、特開2010-182941号公報、特開2010-225840号公報、特開2010-225841号公報、及び特開2008-305854号公報)のいずれにも、本願発明1における上記発明特定事項については記載も示唆もない。 よって、本願発明1は、引用発明及び引用例2~8に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2-2.本願の請求項2ないし5に係る発明について 請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に従属する請求項であり、請求項2ないし5に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定するものであるから、上記「2-1.(3)」と同じ理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3.原査定の理由についてのむすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、当審で通知した拒絶理由、及び原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-005091

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  • 2025-015504拒絶査定不服審判 / 2026-06-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物
    共通の審決分類: 121・H01F、537・H01F

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