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特許拒絶査定不服審判

2016-004058

金属のプラズマ切断方法及び金属のプラズマ切断装置

審判番号
2016-004058
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-126436外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年03月16日
審決日
2017年05月22日
公報発行日
2017年07月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (B23K) / P18 .561-WY (B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第159条第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-126436「金属のプラズマ切断方法及び金属のプラズマ切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開,特開2013-248654,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成24年6月1日の出願であって,平成28年1月15日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成28年3月16日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。 第2 平成28年3月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否 1 補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を, 「プラズマを利用して金属を切断する金属のプラズマ切断方法において、 プラズマ化したガスに対して、酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンの少なくとも何れか一方で定義される、負に帯電した酸素負イオン類を供給する ことを特徴とする、金属のプラズマ切断方法。」 とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。 2 補正の適否 (1)本件補正の補正事項1は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「酸素分子及び電子、又は、酸素負イオン」を「酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンの少なくとも何れか一方で定義される、負に帯電した酸素負イオン類」とする補正である。 (2)願書に最初に添付された明細書の段落【0049】には「価数が-1である酸素の負イオンであるO-や、スーパーオキシドとも呼ばれるO2-等の酸素負イオンは、その化学式からも明らかなように電子(e-)を帯電しており、鉄イオンとイオン結合しやすい状態のイオン種である。また、酸素分子及び電子を共に供給することで、電子を帯電した酸素負イオンを形成させることができる。このように、酸素負イオンや酸素分子及び電子は負に帯電している物質であって、被溶削材である金属に対して電子を供給する正極性条件を実現するための物質である。以下、本明細書では、O-,O2-等の酸素負イオンや、酸素分子及び電子を総称して、酸素負イオン類と称することとする。」と記載されており,【0059】には「以上のようなメカニズムでプラズマ切断処理が進行することにより、本実施形態に係る金属のプラズマ切断方法では、プラズマ化したガスの有する熱エネルギーに加えて、酸素負イオン類に起因する酸化反応エネルギーを利用することが可能となる。その結果、プラズマ切断処理の切断性を更に向上させることが可能となる。また、プラズマ切断処理の切断性が向上することで、切断に要する時間を変えることなくプラズマ化のために要する電力を抑制することが可能となるため、ノズルの耐久性を向上させることが可能となる。」と記載されている。 (3)請求人は補正の根拠に関し,審判請求書の3.(b)補正の根拠の明示において「平成28年3月16日付けの手続補正書において、本願出願人は、補正前の請求項1に記載されていた『酸素分子及び電子、又は、酸素負イオン』との記載を更に限定することを目的として、『酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンの少なくとも何れか一方で定義される、負に帯電した酸素負イオン類』と補正した。 ここで、『酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンの少なくとも何れか一方』が『酸素負イオン類』である旨は、本願明細書[0049]段落における『O-,O2-等の酸素負イオンや、酸素分子及び電子を総称して、酸素負イオン類と称することとする。』との記載に基づくものである。また、上記のような『酸素負イオン類』が『負に帯電している』旨は、本願明細書[0049]段落における『酸素負イオンや酸素分子及び電子は負に帯電している物質であって、』との記載や、本願明細書[0057]段落における『本実施形態に係るプラズマ切断処理では、電気的に中性の状態であるプラズマ化したガスに対して、・・・(中略)・・・、負に帯電した酸素負イオン、又は、酸素分子とあわせて電子を、・・・(中略)・・・供給するものである。』との記載に基づくものである。」と説明している。 (4)補正事項1は「酸素分子及び電子」又は「酸素負イオン」の少なくとも何れか一方を「負に帯電した酸素負イオン類」と定義する補正であるから,補正事項1によって本件補正後の請求項1は, ア 「酸素分子及び電子」を「負に帯電した酸素負イオン類」とする定義 イ 「酸素負イオン」を「負に帯電した酸素負イオン類」とする定義 ウ 「酸素分子及び電子」と「酸素負イオン」の双方を「負に帯電した酸素負イオン類」とする定義 の3通りの定義を含むものとなった。 (5)本件補正前の請求項1に記載された「酸素分子及び電子」又は「酸素負イオン」については,請求項1の記載では限定が付されていないものの,上記(2)のとおり明細書において「酸素負イオン」や「酸素分子及び電子」の総称が「酸素負イオン類」であるという定義のみが記載されており,それ以外に「酸素負イオン類」についての定義は記載されていない。そうすると,願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(「当初明細書等」という。)に記載されていたのは,上記(4)ウの1種類の定義のみである。 (6)したがって,本件補正の補正事項1は,上記(4)ア及びイの2つの定義を追加するものであって,新たな技術的事項を導入する補正であり,当初明細書等の範囲内でなされたものでないから,特許法第17条の2第3項に違反してなされたものである。 3 補正の適否についてのむすび 本件補正は,特許法第17条の2第3項に違反してなされたものであるから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。 第3 本願発明について 1 本願発明 上記のとおり,平成28年3月16日付け手続補正書でなされた手続補正は却下されたので,本願の請求項1ないし7に係る発明は,願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 プラズマを利用して金属を切断する金属のプラズマ切断方法において、 プラズマ化したガスに対して、酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンを供給することを特徴とする、金属のプラズマ切断方法。 【請求項2】 前記酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンは、前記プラズマ化したガスを前記金属に噴射するノズルの外部から供給される ことを特徴とする、請求項1に記載の金属のプラズマ切断方法。 【請求項3】 前記酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンは、前記プラズマ化したガスを前記金属に噴射するノズルのカーテンガスとして供給される ことを特徴とする、請求項1に記載の金属のプラズマ切断方法。 【請求項4】 プラズマを利用して金属を切断する金属のプラズマ切断装置において、 電子、又は、酸素負イオンを発生させる発生装置を備え、 プラズマ化したガスに対して、前記発生装置で発生した前記電子及び酸素分子、又は、前記酸素負イオンの少なくとも何れか一方を供給する ことを特徴とする、金属のプラズマ切断装置。 【請求項5】 前記発生装置は、酸素ガスを供給する酸素ガス供給ライン上に設置されることを特徴とする、請求項4に記載の金属のプラズマ切断装置。 【請求項6】 前記プラズマ化したガスを前記金属に噴射するノズルを更に備え、 前記電子及び酸素分子、又は、酸素負イオンは、前記ノズルの外部から供給されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の金属のプラズマ切断装置。 【請求項7】 前記プラズマ化したガスを前記金属に噴射するノズルを更に備え、 前記電子及び酸素分子、又は、酸素負イオンは、前記ノズルのカーテンガスとして供給される ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の金属のプラズマ切断装置。」 2 引用例の記載事項 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に記載された特開昭59-229282号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の記載がある。 「作動ガスとして酸素を使用するプラズマアークで板体等を切断するプラズマ切断方法において、上記作動酸素ガスの周囲に更に酸素ガスを噴出させて酸素カーテンを形成し、この酸素カーテンによりプラズマアークと作動酸素ガスとを囲繞しながら板体等を切断することを特徴とする酸素カーテンプラズマ切断方法。」(第1ページ左欄第5-11行) 「第2図はこの発明の方法を実施している状態を示すものである。図中5は、上記方法の実施に使用する二重ノズルを示し、この二重ノズル5は、先端内部に電極6を設けた小径ノズル5aと、この小径ノズル5aとの間に酸素の流路lを形成して小径ノズル5aを覆い小径ノズル5aと同軸に配された大径ノズル5bとから成つている。この大径ノズル5bの先端は小径ノズル5aの先端より先に出されるとともに、大径ノズル5bの内側の流路は所要の酸素供給源に連絡されていて、大径ノズル5bの先端から酸素を噴出させることができるようになつている。なお、小径ノズル5aも所要の酸素供給源に連絡され作動用酸素ガスを噴出できるようになつている。 しかして、上記構成の二重ノズル5を用いて第2図に示す板体7等を溶断するには、まず小径ノズル5aの先端から作動用酸素ガスを吹き出し、電極6と板体7との間にアーク8を発生させるとともに、大径ノズル5bの先端からもアーク8の周囲を覆つて酸素を噴出させ、アーク8の周囲に酸素カーテンSを形成する。」(第2ページ左上欄第7行-右上欄第7行) 「また、この例では板体7として酸化反応熱の利用が容易と考えられてきた軟鋼板を用いた場合のみを示したが、この酸素カーテンプラズマ切断方法が酸化反応熱を利用し難いと従来は考えられていた銅合金などの高品質切断にも有効なことも勿論である。」(第3ページ左上欄第7-12行) そうすると,刊行物1には,「プラズマアークで軟鋼板である板体を切断するプラズマ切断方法において, 先端内部に電極を設けた小径ノズルと,この小径ノズルとの間に酸素の流路を形成して小径ノズルを覆い小径ノズルと同軸に配された大径ノズルとから成っている二重ノズルを用い, 小径ノズルの先端から作動用酸素ガスを吹き出し,電極と板体との間にプラズマアークを発生させるとともに, 大径ノズルの先端からもプラズマアークの周囲を覆って酸素を噴出させ,プラズマアークの周囲に酸素カーテンを形成する,軟鋼板のプラズマ切断方法」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 (2)引用例2 原査定の拒絶の理由に記載された米国特許出願公開第2009/0026179号明細書(以下「引用例2」という。)には,次の記載がある(仮訳は当審で付した。)。 「[0007]・・・The term plasma arc refers to an ionized and dissociated gas jet that is constricted by a cooled nozzle.・・・Oxygen is also added to the plasma gas in certain instances, wherein the oxygen can lead to oxidation with the material such that an additional energy input is realized. ・・・」([0007]・・・プラズマアークとは冷却ノズルで狭められ,イオン化して解離した気体流をいう。・・・場合によっては酸素もプラズマガスに供給され,そこで酸素は追加のエネルギー供給がなされて材料の酸化を引き起こす。・・・) そうすると,刊行物2には,プラズマアークとはイオン化した気体流であることと,プラズマガスに酸素が追加される場合があること,という技術的事項が記載されている。 (3)引用例3及び4 原査定の拒絶の理由に記載された特開平7-164152号公報(以下「引用例3」という。)及び特開2004-160552号公報(以下「引用例4」という。)には,電子発生手段についての技術的事項が記載されている。 3 対比 本願請求項1に係る発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「軟鋼板である板体」は,本願請求項1に係る発明における「金属」に相当し,引用発明において「作動用酸素ガスを吹き出し,電極と板体との間にアークを発生」させることによって生じた「プラズマアーク」は,本願請求項1に係る発明における「プラズマ化したガス」に相当する。また,引用発明において「プラズマアークの周囲を覆って酸素を噴出させ」る事項は,プラズマガスの周囲に酸素が供給されるものであるから,本願請求項1に係る発明における「プラズマ化したガスに対して、酸素を供給する」という事項に相当する。 したがって,本願請求項1に係る発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> プラズマを利用して金属を切断する金属のプラズマ切断方法において, プラズマ化したガスに対して,酸素を供給する金属のプラズマ切断方法。 <相違点> 本願請求項1に係る発明は「プラズマ化したガスに対して、酸素分子及び電子、又は、酸素負イオンを供給する」ものであるのに対し,引用発明は「酸素分子及び電子」のうちの電子と「酸素負イオン」のどちらも供給していない点。 4 判断 以下,相違点について検討する。 引用例2には,プラズマ化したガスにイオンが含まれるというプラズマガスの定義と,プラズマガスに酸素が供給される事項とが開示されているが,いずれもプラズマガスに対して「酸素分子及び電子」のうちの電子や「酸素負イオン」を供給するものではない。 また,原査定の拒絶の理由で提示された他の文献にも,プラズマ化したガスに対して,「酸素分子及び電子」や「酸素負イオン」を供給する事項は開示も示唆もされていない。 そうすると,プラズマガスに「酸素分子及び電子」や「酸素負イオン」を供給するという事項を有する本願の請求項1に係る発明が,引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして,本願請求項4に係る発明は,本願請求項1に対応した装置の発明であって上記相違点を含むものであり,本願請求項2及び3に係る発明と本願請求項5ないし7に係る発明はそれぞれ,本願請求項1に係る発明と本願請求項4に係る発明にさらに限定を付したものであるから,本願請求項1に係る発明と同じく,本願請求項2ないし7に係る発明は引用例1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 5 むすび 以上のとおり,本願の請求項1ないし7に係る発明は,いずれも引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-004058

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