特許拒絶査定不服審判
2016-002992
ヒータ加工品
- 審判番号
- 2016-002992
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-188241
- 請求日
- 2016年02月29日
- 審決日
- 2017年03月09日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日星電気株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 結城 健太郎
- 分類
- P18 .121-WZ (H05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-188241「ヒータ加工品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日出願公開、特開2013- 51110〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月31日の出願であって、平成27年12月14日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成28年2月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審より平成28年11月7日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成28年12月27日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。
「芯材上に横巻きした発熱線に絶縁体を施したヒータ線を使用した加工品について、該発熱線の巻きピッチは、ヒータ部位により可変にすることで、ワット密度を可変、すなわち不均一化し、所望の発熱量を得られるよう部分的に加熱分布を不均一に、すなわち過不足なく制御できるヒータ加工品であって、
該発熱線の巻きピッチは、該発熱線の外径に対して50倍以下、かつ、該発熱線の巻きピッチの変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下であると共に、
該発熱線の巻密度が密な部分と疎の部分の間に、巻密度が緩やかに変化する一定長さの移行部分を有することを特徴とするヒータ線の位置ずれ防止効果を備えるヒータ加工品。」
2 引用例
(1) 引用例
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特公昭47-979号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「本発明はコード状電気ヒーターの抵抗線巻きピツチを部分的に変えることを自動的に反覆して行なう抵抗線連続横巻装置に関するものである。
電気毛布、電気温床、電気冷蔵庫除霜装置などの発熱体にはガラス繊維、テトロンなどで造つた紐を巻芯とし、その外面に細い抵抗線を第1図の如く一定のピツチでらせん状に横巻きしたのち、塩化ビニル樹脂、シリコーンゴムその他の可とう性絶縁物で被覆したコード状ヒーターが使われている。」(1欄19~28行)
(イ)「一般にコード状ヒーターでは全長にわたる発熱量を均一にするため、抵抗線の巻きピツチは常に一定に保つことが必要である。巻きピツチが変動すると部分的に発熱が不均一になり、ヒーターとして不都合を生じる。たとえば巻きピツチの密な部分は疎の部分より単位長さ当りの発熱量が多くなり、局部過熱、早期断線、絶縁物の早期劣化を引き起こす故に好ましくない。
しかし、ヒーターの種類によつては故意に巻きピツチに変化をつける方が好都合の場合が多い。たとえば、ヒーターの両端にはリード線が接続されるが、この場合リード線との接続部附近は発熱を少くするために第2図の如く巻きピッチを荒くすることか望ましい。また、ヒーターの中間部に発熱量の異る部分を設ける必要がある場合も考えられる。」(2欄14~29行)
(ウ)「直径0.7ミリメートルのガラス繊維製紐を巻芯とし、これに径0.18ミリメートルの銅ニツケル抵抗線を横巻きするに当つて、巻き上がりの長さ2メートル当り100オームになるように巻芯の送り速度を調節した。別にピツチ変更用の駆動軸の回転速度を定速横巻の回転の約4倍とした。第5図に示した形状のカムを第4図のリレー8に装備した結果、定速横巻部分の長さ2メートルごとに約230ミリメートルのピツチの疎の部分を生じた。この疎の部分の巻きピツチ間隔は定速部分の約4倍であつた。
この定速部分の2メートルを中心として、その両端に115ミリメートルづつの疎なる部分をつけて切断し、その両端にリード線を接続することにより、リード線接続部の発熱が極めて小さいコード状ヒーターを作ることができた。」(4欄10~25行)
(2) 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「直径0.7ミリメートルのガラス繊維製紐を巻芯とし、これに径0.18ミリメートルの銅ニツケル抵抗線を横巻きしたものを使用したコード状ヒーターについて、定速部分の2メートルを中心として、その両端に115ミリメートルづつの疎なる部分をつけて切断し、その両端にリード線を接続することにより作られた、リード線接続部の発熱が極めて小さいコード状ヒーターであって、
この疎なる部分の巻きピツチ間隔は定速部分の約4倍であるコード状ヒーター。」
3 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「巻芯」である「直径0.7ミリメートルのガラス繊維製紐」は、その機能から、本願発明の「芯材」に相当する。以下、同様に、「径0.18ミリメートルの銅ニツケル抵抗線」は「発熱線」に、「コード状ヒーター」は「加工品」及び「ヒータ加工品」に、「定速部分」は「密な部分」に、「疎なる部分」は「疎の部分」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明の「径0.18ミリメートルの銅ニツケル抵抗線」は、ガラス繊維製紐の巻芯上に横巻きした銅ニツケル抵抗線であるから、本願発明の「芯材上に横巻きした発熱線」に相当する。
(ウ)引用発明の「定速部分の2メートルを中心として、その両端に115ミリメートルづつの疎なる部分をつけて切断し、その両端にリード線を接続することにより作られた、リード線接続部の発熱が極めて小さいコード状ヒーター」は、定速部分と疎なる部分とで巻きピッチを変化させることで、定速部分に比べて疎なる部分の発熱を極めて小さくしたもの、すなわちワット密度を可変ないし不均一化し、部分的に加熱分布を不均一としたものであって、上記2(1)の摘記事項(イ)から巻きピッチの変化は、ヒータの種類によって故意に設けたものであるから、所望の発熱量を得られるように、すなわち過不足なく制御できるものであるといえる。したがって、引用発明の当該構成は、本願発明の「該発熱線の巻きピッチは、ヒータ部位により可変にすることで、ワット密度を可変、すなわち不均一化し、所望の発熱量を得られるよう部分的に加熱分布を不均一に、すなわち過不足なく制御できるヒータ加工品」に相当する。
(エ)引用発明の「この疎なる部分の巻きピツチ間隔は定速部分の約4倍である」ことは、本願発明の「該発熱線の巻きピッチの変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下である」ことに相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「芯材上に横巻きした発熱線を使用した加工品について、該発熱線の巻きピッチは、ヒータ部位により可変にすることで、ワット密度を可変、すなわち不均一化し、所望の発熱量を得られるよう部分的に加熱分布を不均一に、すなわち過不足なく制御できるヒータ加工品であって、
該発熱線の巻きピッチは、該発熱線の巻きピッチの変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下であるヒータ加工品。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、「発熱線に絶縁体を施したヒータ線」であるのに対して、引用発明は、巻芯に銅ニツケル抵抗線を横巻きしたものである点。
<相違点2>
本願発明は、発熱線の巻きピッチが、「発熱線の外径に対して50倍以下」であり、「発熱線の巻密度が密な部分と疎の部分の間に、巻密度が緩やかに変化する、一定長さの移行部分を有する」ものであって、「ヒータ線の位置ずれ防止効果を備える」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
4 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
ヒータにおいて、漏電、感電対策として、絶縁体を施すことは慣用手段であり、引用発明の巻芯に銅ニツケル抵抗線を横巻きしたものにおいて、安全性の向上は当然の課題であるから、漏電、感電対策として、適宜絶縁体を施すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
芯材上に横巻きした発熱線からなるヒータ加工品において、発熱線の巻きピッチを発熱線の外径に対して50倍以下程度とすることは、周知(例えば、当審の拒絶理由で示した特開2000-77172号公報の【0014】の線径0.11mm、巻きピッチ0.5mm、特許3867937号公報の【0020】及び【0023】の金属抵抗線の外径0.06mm、ピッチ2.0mm参照。)である。
そして、引用発明の巻きピッチと発熱線の外径との関係として、周知の範囲のものを適用することは当業者が容易に想到し得たことであり、ピッチを可変とすることを考慮しても、50倍以下という広範な範囲内とすることに困難性はない。
また、引用発明の「定速部分」と「疎なる部分」との間には、その製造方法から、ピッチが変化する部分が多少なりとも生じていることは明らかである。そして、本願発明の「巻密度が緩やかに変化する、一定長さの移行部分」とは、移行部分の巻密度の変化の程度や長さを具体的に特定するものでなく、本願明細書を参酌しても、移行部分の巻密度の変化の程度や長さについて何ら説明がないことを踏まえると、引用発明の上記ピッチが変化する部分は本願発明の「移行部分」に相当するといえる。
さらに、本願発明の「ヒータ線の位置ずれ防止効果」は、【0004】、【0006】、【0009】及び【0010】の記載から、発熱線の外径に対して50倍以下であること、発熱線の巻きピッチ幅の変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下であること、及び発熱線の巻密度が密な部分と疎の部分の間に、巻密度が緩やかに変化する、一定長さの移行部分を設けることで達成されるものであると解され、特に実施例の記載によれば、移行部分に特定の構成を採用しなくとも上記効果が得られるといえるから、引用発明において、ピッチ幅の変化量を5倍以下としたものは、同様にヒータ線の位置ずれ防止効果を備えると認められる。
したがって、引用発明において、上記周知の事項を適用することで、相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<本願発明の相違する効果について>
請求人は、平成28年12月27日の意見書において、「『発熱線の外径に対して50倍以下』かつ『発熱線の巻きピッチ幅の変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下』であることに加え、さらに、『巻きピッチの変化点において、巻密度が緩やかに変化する一定長さの移行部分を有する』ことによる相乗効果によって、より一層の巻きピッチの位置ずれ効果を備える」(<相違点2について>の欄)と主張する。
しかし、発明の詳細な説明の実施例(【0014】~【0016】、【0022】)は、特定の発熱線の外径に対する巻きピッチの大きさとピッチ変化量を有する実施例1~3について、【0022】に「図4の評価結果より、発熱線の巻きピッチは、該発熱線の外径に対して50倍以下、あるいは、該発熱線の巻きピッチの可変部において、該ピッチの変化量が5倍以下の場合では、発熱線の位置ずれは生じなかった。」と記載されているが、その移行部分について巻密度が緩やかに変化する程度や一定長さが特定されていないことから、本願発明の奏する位置ずれ防止効果は、専ら、発熱線の外径に対して50倍以下かつ発熱線の巻きピッチ幅の変化点である可変部において、ピッチ幅の変化量が5倍以下であることによって奏されるものと解され、相乗効果を有するとまではいえない。
よって、本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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