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特許拒絶査定不服審判

2016-000430

タイヤ

審判番号
2016-000430
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-224537外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年01月08日
審決日
2017年04月10日
公報発行日
2017年05月26日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (B60C) / P18 .537-WY (B60C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-224537号「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月7日出願公開、特開2015- 85754号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月29日の出願であって、平成26年8月29日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月1日に意見書が提出され、同年10月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年12月13日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年2月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成27年10月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-9に係る発明は、以下の引用文献A-Iに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2001-233019号公報 B.特開2005-225493号公報 C.特開2010-254249号公報 D.特開2013-139193号公報 E.特開2005-350001号公報 F.特開2006-321406号公報 G.国際公開第2013/065319号 H.特開2010-179777号公報 I.特開2011-011690号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 理由1.本願請求項1、3、5-9に係る発明は、以下の引用文献1-5に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるところ、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載されている発明及び引用文献2~4に示された周知技術に基いて当業者が容易に発明し得たものである。 引用文献等一覧 1.特開2010-179778号公報(当審において新たに引用した文献) 2.特開2006-321406号公報(拒絶査定時の引用文献F) 3.特開2010-179777号公報(拒絶査定時の引用文献H) 4.特開2011-011690号公報(拒絶査定時の引用文献I) 5.国際公開第2013/065319号(拒絶査定時の引用文献G) 理由2.本願出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願発明は、明細書の段落【0006】に記載されているように、騒音性能を悪化させることなく、操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤを提供することを課題とするところ、同段落【0024】の「タイヤ赤道CLを含む領域のタイヤ周方向の剛性を高めたタイヤでは、トレッドの接地長が、タイヤ幅方向外側よりもタイヤ赤道CL付近で短くなってコーナリングパワーが低減し、トレッドのパターン形状によっては所期した操縦安定性能が得られない場合があることが分かった。特に、タイヤ赤道CL上またはその付近に周方向溝を配置すると(図5参照)、当該領域におけるトレッドの剛性が低下して、該周方向溝を区画する陸部における接地長が極端に短くなることが判明した。 そこで、タイヤ赤道CL付近にてタイヤ周方向の剛性を高めたタイヤにおいては、コーナリングパワーを低減させることなく騒音性能を改善する観点から、タイヤ赤道CLを含む一定領域にわたって、タイヤ周方向に連続する陸部R(リブ状陸部)を配置することが必須となる。」との知見から、トレッドの陸部Rの幅(mm)を段落【0038】の【表1】の各実施例に示された数値(本願発明2として特定されているように概ね20mm以上40mm以下)に規定してコーナリングパワー、RRC、騒音性能に関し、所定の効果をあげているものである。 しかしながら、本願発明1は、「前記トレッドは、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道を含む領域に、タイヤ周方向に連続する陸部を有する」ことを特定事項としているが、「タイヤ周方向に連続する陸部」の幅寸法を特定していないため、当該特定事項では、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。 そうすると、本願発明1及び本願発明2の特定事項が含まれない本願発明3~9(請求項2を引用しない請求項3~9に係る発明)は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 第4 本願発明 本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年2月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 1対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する少なくとも1層の、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在する傾斜ベルト層からなる傾斜ベルト及び、タイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、該周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置されるトレッドと、を具える空気入りタイヤであって、 前記傾斜ベルト層のコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、55°以上85°以下であり、 前記周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む中央領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、その他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、 前記トレッドは、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道を含む領域に、タイヤ周方向に連続する陸部を有し、 前記タイヤ周方向に連続する陸部のタイヤ幅方向の幅は、20mm以上40mm以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。 【請求項2】 前記中央領域では、前記その他の領域と比較して前記周方向ベルト層のタイヤ径方向の層数が多い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。 【請求項3】 前記トレッドは、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の周方向溝を具え、前記中央領域のタイヤ幅方向端縁が、当該周方向溝の開口幅の範囲内に位置する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。 【請求項4】 前記傾斜ベルト層を1層または2層具え、前記周方向ベルト層を前記中央領域では2層および前記その他の領域では1層具える、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 250kPa以上の内圧を充填した際のタイヤの断面幅SWが165mm未満であり、該タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとの比SW/ODが0.26以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 250kPa以上の内圧を充填した際のタイヤの断面幅SWが165mm以上であり、該タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとが、OD≧2.135×SW+282.3を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 前記トレッドに設ける、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が2本である、請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。 【請求項8】 前記中央領域のタイヤ幅方向幅は、タイヤ赤道CLを中心として、前記周方向ベルトのタイヤ幅方向幅の0.2倍以上0.6倍以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。」 第5 理由1.について 1.引用文献、引用発明等 (1)引用文献1について 平成28年12月13日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1(当審拒絶理由において新たに引用した文献)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。) ア.「【0033】 次に、空気入りタイヤ1の内部を含む構成について説明する。本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図2に示すように、トレッド部2の両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。この空気入りタイヤ1は、カーカス6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを含み構成されている。 【0034】 ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス6の端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されている。 【0035】 カーカス6は、一対のビード部5に対して各タイヤ幅方向端部が折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス6は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのカーカスコードが、ゴム材で被覆されたものである。カーカスコードは、空気入りタイヤ1のタイヤ赤道線Cに直交してタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されている。なお、カーカスコードは、タイヤ赤道線C(タイヤ周方向)に対する角度が実質的に90[度]であって、タイヤ赤道線Cに対する90度を基準に-5[度]から+5[度]の範囲の角度を含む。また、カーカス6は、図2で示すように1層で構成されているが、タイヤ剛性を向上するために多層構造としてもよい。【0036】 ベルト層7は、少なくとも2つのベルト71,72を積層した多層構造をなし、カーカス6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、トレッド部2においてカーカス6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。また、ベルト71,72は、タイヤ赤道線Cに対して、相互にコードを反対方向に傾けて配置されている。 【0037】 ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)のコードがゴム材で被覆されたもので、該コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して実質的に0度(タイヤ周方向に対する角度が±5[度]以下)の角度となるように配置されている。このベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップをタイヤ周方向に巻き付けたものである。ストリップのタイヤ幅方向の端部は、互いに重ね合わされていても、互いに接触していてもよい。また、ベルト補強層8は、1層で構成されていてもよいが、ベルト層7の端部をさらに補強するために、タイヤ幅方向両端側において多層構造としてもよい。」 イ.「【0040】 また、ベルト補強層8において、タイヤ幅方向中央領域のベルト補強層81の引張剛性指数Ecを、タイヤ幅方向外側領域のベルト補強層82の引張剛性指数Esに比較して大きくするには、タイヤ幅方向中央領域のベルト補強層81をなすストリップの巻き数(重ね合わせ量)を、タイヤ幅方向外側領域のベルト補強層82をなすストリップに比して多くすることにより実現できる。また、タイヤ幅方向中央領域のベルト補強層81をなすストリップでのコードの打ち込み本数を、タイヤ幅方向外側領域のベルト補強層82をなすストリップに比して多くすることにより実現できる。さらに、タイヤ幅方向中央領域のベルト補強層81をなすストリップの弾性率を、タイヤ幅方向外側領域のベルト補強層82をなすストリップに比して大きくすることにより実現できる。さらにまた、タイヤ幅方向中央領域においてベルト補強層8を複数積層することにより実現することができる。」 ウ.「【0046】 また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、主溝22によりトレッド部2に区画形成される陸部23が、タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部である。」 エ.記載事項ア.(段落【0035】)の記載内容及び【図2】から、空気入りタイヤ1は、1対のビード部5間にトロイダル状に跨るカーカス6を具えることが理解できる。 オ.記載事項ア.(段落【0036】)の記載内容及び【図2】から、空気入りタイヤ1は、カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する2つの、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在するベルト71,72からなるベルト層7を具えることが理解できる。 カ.記載事項ア.(段落【0037】)の記載内容及び【図2】から、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に沿って延びるコードがゴム材で被覆されたベルト補強層8と、該ベルト補強層8のタイヤ径方向外側に配置されるトレッド2を具えることが理解できる。 キ.記載事項ウ.の記載内容及び【図1】から、空気入りタイヤ1は、トレッド部2に、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道線Cを含む領域に、タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23を有することが理解できる。 上記各記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。。 「1対のビード部5間にトロイダル状に跨るカーカス6と、該カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する2つの、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在するベルト71,72からなるベルト層7及び、タイヤ周方向に沿って延びるコードがゴム材で被覆されたベルト補強層8と、該ベルト補強層8のタイヤ径方向外側に配置されるトレッド2と、を具える空気入りタイヤ1であって、 前記ベルト補強層8は、タイヤ幅方向中央領域の引張剛性指数Ecを、タイヤ幅方向外側領域の引張剛性指数Esに比較して大きくし、 前記トレッド部2は、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道線Cを含む領域に、タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23を有する空気入りタイヤ1。」 (2)引用文献2~4について 平成28年12月13日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2~4には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・引用文献2の段落【0015】及び【図2】の記載からみて、引用文献2には、ベルトプライ24,25が有するスチールコード26,27のタイヤ周方向に対する傾斜角度を、45°以上75°以下にするという技術的事項が記載されていると認められる。 ・引用文献3の段落【0045】及び【図3】の記載からみて、引用文献3には、中間ベルトプライ72が有するコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を、50°以上90°以下にするという技術的事項が記載されていると認められる。 ・引用文献4の段落【0019】の記載からみて、引用文献4には、補強材10が有するコードCのタイヤ周方向に対する傾斜角度を、75°以上90°以下にするという技術的事項が記載されていると認められる。 (3)引用文献5について 平成28年12月13日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 引用文献5の[0011]及び[0053]の記載からみて、引用文献5には、250kPa以上の内圧を充填した際のタイヤの断面幅SWが165mm未満であり、該タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとの比SW/ODが0.26以下であり、タイヤの断面幅SWが165mm以上であり、該タイヤの断面幅SWとタイヤの外径ODとが、OD≧2.135×SW+282.3を満たすという技術的事項が記載されていると認められる。 3.対比・判断 (1)本願発明1について (1-1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、 ア.後者の「1対のビード部5間」は前者の「1対のビード部間」に相当し、後者の「カーカス6」は前者の「カーカス」に相当する。 イ.後者の「ベルト71,72」 は「傾斜ベルト層」に相当するところ、後者の「該カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する2つの、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在するベルト71,72からなるベルト層7」は前者の「該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する少なくとも1層の、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在する傾斜ベルト層からなる傾斜ベルト」に相当する。 ウ.後者の「タイヤ周方向に沿って延びるコードがゴム材で被覆されたベルト補強層8」は前者の「タイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルト」に相当し、後者の「該ベルト補強層8のタイヤ径方向外側に配置されるトレッド2」は前者の「該周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置されるトレッド」に相当し、後者の「空気入りタイヤ1」は前者の「空気入りタイヤ」に相当する。 エ.後者の「前記ベルト補強層8は、タイヤ幅方向中央領域の引張剛性指数Ecを、タイヤ幅方向外側領域の引張剛性指数Esに比較して大きく」することは前者の「前記周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む中央領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、その他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く」することに相当する。 オ.前者の「タイヤ周方向に連続する陸部」は、本願明細書の段落【0024】に「『タイヤ周方向に連続する陸部』とは、タイヤ周方向にわたって溝が介在することなく延在する陸部をいう。すなわち、タイヤ周方向に沿って陸部を切断した際に、切断面のどの位置にも溝(サイプ等を除く)が介在しない部分をいう。例えば、2本のジグザグ状の周方向溝によってリブ状陸部が区画される場合、トレッド平面視で、当該リブ状陸部のうち、一方の周方向溝のタイヤ幅方向最内側の点と、他方の周方向溝の同最内側の点との間の最小幅部分を、タイヤ周方向に連続させてなる陸部をいう。」と定義されているところ、後者の「タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23」は、引用文献1の【図1】を参酌すると、リブ状の陸部23の両側に設けられた各突起溝24のタイヤ赤道線C寄りの各端部間では溝は存在していないから、前者の「タイヤ周方向に連続する陸部」に相当する。 そうすると、両者は、本願発明1の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 (一致点) 「1対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に設けられ、タイヤ周方向に対し傾斜して延びるスチールコードを有する少なくとも1層の、タイヤ赤道面を含むタイヤ幅方向領域に延在する傾斜ベルト層からなる傾斜ベルト及び、タイヤ周方向に沿って延びるコードを有する少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、該周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置されるトレッドと、を具える空気入りタイヤであって、 前記周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む中央領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、その他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、 前記トレッドは、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道を含む領域に、タイヤ周方向に連続する陸部を有する空気入りタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) (相違点1) 本願発明1は、「傾斜ベルト層のコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、55°以上85°以下であ」るのに対し、 引用発明は、ベルト71,72のコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1は、「タイヤ周方向に連続する陸部のタイヤ幅方向の幅は、20mm以上40mm以下である」のに対し、 引用発明は、「タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23」のタイヤ幅方向の幅が特定されていない点。 (1-2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 上記相違点2に係る本願発明1の「タイヤ周方向に連続する陸部のタイヤ幅方向の幅は、20mm以上40mm以下である」との構成の技術的意味は、騒音性能を悪化させることなく、操縦安定性能を向上させという課題(明細書の段落【0006】を参照。)を解決するために、明細書の段落【0024】に記載されているように、騒音性能の向上のためにタイヤ赤道CLを含む領域のタイヤ周方向の剛性を高めたタイヤにおいて、さらに操縦安定性能の向上を図るために、該領域での接地長を増加させることである。 他方、引用文献1には、「タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23」のタイヤ幅方向の幅に関し、段落【0041】に「かかる空気入りタイヤ1によれば、ベルト補強層8において、タイヤ幅方向中央領域での引張剛性指数Ecを、タイヤ幅方向外側領域での引張剛性指数Esに比較して大きくしたことにより、タイヤ幅方向中央領域でのベルト補強層8の拘束力が高まる。このため、主溝22をタイヤ赤道線C側に近づいた位置に設けて高い排水性を有するようにトレッド部2のパターンを構成していても、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧(例えば230KPa)を充填するとともに正規荷重の70%をかけた場合に、タイヤ赤道線C上に配置された第一陸部23aの接地長さが長くなる事態を防ぎ、各陸部23a,23b,23cのタイヤ周方向の接地長さを揃えることができる。この結果、センター摩耗を抑制することができるので、高い排水性を維持しつつ、耐摩耗性を向上することが可能になる。」と記載されているように、高い排水性を維持しつつ、耐摩耗性を向上することを解決するために、「タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23」の接地長が長くなる事態を防ぐこと、つまりタイヤ幅方向の幅を減少することが好ましいことが記載ないし示唆されている。 そうすると、引用発明において、引用発明の「タイヤ周方向に延びるリブ状の陸部23」のタイヤ幅方向の幅を20mm以上40mm以下という比較的大きい値での数値範囲に設定することには阻害要因があるといえる。 したがって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2~4に示された周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本願発明2-8について 本願発明2-8は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者であっても引用発明、引用文献2~4に示された周知技術、及び引用文献5に記載されている技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 理由2.について 平成29年2月2日に提出された手続補正書による補正により、本願発明1を特定するために必要な事項である「タイヤ周方向に連続する陸部」に関し、「タイヤ幅方向の幅は、20mm以上40mm以下である」との限定を付加されたので、理由2.は解消された。 第7 原査定についての判断 本願発明1は、転がり抵抗性能及び騒音性能に加え操縦安定性性能の向上を課題として「前記傾斜ベルト層のコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、55°以上85°以下であり、前記周方向ベルトは、タイヤ赤道を含む中央領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性が、その他の領域の単位幅あたりのタイヤ周方向剛性より高く、前記トレッドは、該トレッドの踏面の少なくともタイヤ赤道を含む領域に、タイヤ周方向に連続する陸部を有し、前記タイヤ周方向に連続する陸部のタイヤ幅方向の幅は、20mm以上40mm以下である」との発明特定事項を有するものであり、原査定における引用文献A-Iを組み合わせても、当該特定事項を導き出すことができない。 よって、本願発明1-8は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Iに基いて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-000430

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