特許拒絶査定不服審判
2015-020058
航空機に搭載される位置特定用リアルタイムRFIDのための方法及びシステム
- 審判番号
- 2015-020058
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-542227外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年11月09日
- 審決日
- 2016年11月16日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ・ボーイング・カンパニー
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (B64D) / P18 .574-Z (B64D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-542227号「航空機に搭載される位置特定用リアルタイムRFIDのための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月16日国際公開、WO2011/071781、平成25年 4月18日国内公表、特表2013-512824号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月7日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月18日に手続補正書が提出され、平成26年9月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年6月29日付け(同年7月7日発送)で拒絶査定がなされた。これに対し、平成27年11月9日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、手続補正がされたものである。
第2 平成27年11月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年11月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「航空機内の第1の固定位置に配置されたRFIDリーダー、
前記航空機内の第2の固定位置に配置された無線通信機器、並びに
前記RFIDリーダーと前記無線通信機器とに結合された分散型アンテナシステムと、
を備えた航空機通信及びアイテム追跡システムであって、
前記分散型アンテナシステムは、
無線分散システムと、
前記無線分散システムに別々に結合された複数の個別の送受信点であって、前記複数の個別の送受信点は、集合的に単一のケーブルに組み込まれていない、複数の個別の送受信点と、を備え、
前記無線分散システムが、前記RFIDリーダー、前記無線通信機器及び前記複数の個別の送受信点の各々から分離されていて、前記複数の個別の送受信点と前記RFIDリーダーと前記無線通信機器との間の通信が、前記無線分散システムを経由し、前記複数の送受信点は、前記航空機内部の複数のパッシブ型RFIDタグが、前記複数の送信点の少なくとも一つによって出力される信号によって活性化されるように、前記航空機内部に分散配置されており、
前記分散型アンテナシステムが、前記RFIDリーダー及び前記パッシブ型RFIDタグに関連する信号の送受信に対して操作可能であり、さらに、前記無線通信機器と関連する信号の送受信に対して操作可能である、システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成26年12月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「航空機(200)内の第1の固定位置に配置されたRFIDリーダー(310)、
前記航空機内の第2の固定位置に配置された通信機(660)、並びに
前記RFIDリーダ(310)と前記通信機(660)とに結合された分散型アンテナシステムと、
を備えた航空機通信及びアイテム追跡システムであって、
前記分散型アンテナシステムは、
無線分散システム(630)と、
前記無線分散システム(630)に別々に結合された複数の個別の送受信点であって、前記複数の個別の送受信点は、集合的に単一のケーブルに組み込まれていない、複数の個別の送受信点と、を備え、
前記無線分散システム(630)が、前記RFIDリーダー(310)、前記通信機(660)及び前記複数の個別の送受信点の各々から分離されていて、前記複数の個別の送受信点と前記RFIDリーダー(310)と前記通信機(660)との間の通信が、前記無線分散システム(630)を経由し、前記複数の送受信点は、前記航空機(200)内部の複数のパッシブ型RFIDタグ(320)が、前記複数の送信点の少なくとも一つによって出力される信号によって活性化されるように、前記航空機(200)内部に分散配置されており、
前記分散型アンテナシステムが、前記RFIDリーダー(310)及び前記パッシブ型RFIDタグ(320)に関連する信号の送受信に対して操作可能であり、さらに、前記通信機器(660)と関連する信号の送受信に対して操作可能である、システム。」
2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「通信機」について、「無線通信機器」と補正するものである。それに加えて、請求項1に記載した発明特定事項について、補正前には、参照記号が付されていたものを削除するものである。
まず、後者の補正は、本願各請求項に係る発明と発明の詳細な説明に記載された実施例との整合を図ることを目的とするものである。よって、特許法第17条の2第5項第4号に規定する、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
次に、前者の補正は、「通信機」を「無線通信機器」と技術的に限定するものといえ、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)刊行物1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2009-540753号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0006】
本発明の一態様は、1つ又は2つ以上のクライアント機器とワイヤレス通信する集中型光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステムにある。このシステムは、中央局に配置された複数のサービスユニットを有する。中央局は、それぞれ1つ又は2つ以上のダウンリンクマルチプレクサ及び1つ又は2つ以上のアップリンクマルチプレクサを介してサービスユニットに電気的に結合された複数の電気-光(E/O)変換器及び光-電気(O/E)変換器を有する。システムは、多数のトランスポンダを更に有し、各トランスポンダは、それぞれのダウンリンク光ファイバ及びアップリンク光ファイバを介して中央局のところで1つのE/O変換器及び1つのO/E変換器に光結合されている。各トランスポンダは、サービスユニットの1つ、幾つか又は全てを、対応のダウンリンク光ファイバ及びアップリンク光ファイバを介して所与のピコセル内の1つ又は2つ以上のクライアント機器との無線周波数(RF)通信関係に置くピコセルを形成している。」
「【0014】
I.汎用光ファイバ利用ワイヤレスシステム
図1は、本発明の光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステム10の一般化された実施形態の略図である。システム10は、ヘッドエンドユニット20、トランスポンダユニット(「トランスポンダ」)30及びヘッドエンドユニットをトランスポンダに光結合する光ファイバRF通信リンク36を有している。以下に詳細に説明するように、システム10は、中心が実質的にトランスポンダ30に位置するピコセル40を有している。ヘッドエンドユニット20は、多くの光ファイバによるRF用途の任意の1つ、例えば無線移動識別(RFID)、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)通信又はセルラー電話サービスを行い又はその使用を容易にするように構成されている。ピコセル40内には、コンピュータの形態をしたクライアント機器45が示されている。クライアント機器45は、電磁RF信号を受信すると共に(或いは)送信するようになったアンテナ46(例えば、ワイヤレスカード)を有する。
【0015】
図2は、図1のシステム10の例示の実施形態の概略詳細図である。例示の実施形態では、ヘッドエンドユニット20は、特定のワイヤレスサービス又は用途のための電気RFサービス信号を出すサービスユニット50を有している。例示の実施形態では、サービスユニット50は、電気RFサービス信号を以下に説明するように1つ又は2つ以上の外部ネットワーク223から送る(又は調整し、次に送る)ことによりかかる信号を提供する。特定の例示の実施形態では、これは、IEEE80.11規格で特定されている、即ち、2.4~2.5GHz及び5.0~6.0GHzの周波数範囲のWLAN信号分配を提供することを含む。別の例示の実施形態では、サービスユニット50は、電気RFサービス信号を直接発生させることによりかかる信号を提供する。別の例示の実施形態では、サービスユニット50は、ピコセルラーカバレージエリア44内のクライアント機器相互間の電気RFサービス信号の配信を協調させる。」
「【0019】
引き続き図2を参照すると、トランスポンダ30は、変換器対66を有し、この変換器対のE/O変換器60及びO/E変換器62は、RF信号方向づけ要素106、例えばサーキュレータによりアンテナ100に電気的に結合されている。信号方向づけ要素106は、以下に説明するようにダウンリンク電気RFサービス信号及びアップリンク電気RFサービス信号を方向づけるのに役立つ。
【0020】
図3は、トランスポンダ30に関する別の例示の実施形態の拡大図であり、このトランスポンドは、2つのアンテナ、即ち、O/E変換器62に電気的に結合された送信アンテナ100T及びO/S変換器60に電気的に結合された受信アンテナ100Rを有している。アンテナを2つにした実施形態により、RF信号方向づけ要素106が不要になる。」
「【0033】
II.中央ヘッドエンド局及び光ファイバケーブルを備えたシステム
図4は、中央ヘッドエンド局210を含む光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステム200の例示の実施形態の略図である。中央ヘッドエンド局210は、多数のサービスユニット50及び多数のトランスポンダ30を取り扱うようになった改良型ヘッドエンドユニット20として考えることができる。中央ヘッドエンド局210は、多数のトランスポンダ30を有する光ファイバケーブル220に光結合されている。光ファイバケーブル220は、多数の光ファイバRF通信リンク36によって構成され、各リンクは、対応のトランスポンダ30に光結合されている。例示の実施形態では、多数のトランスポンダ30は、実際には縁部が互いにオーバーラップするピコセル40で構成された所望のピコセルカバレージエリア44を作るよう光ファイバケーブル220の長さに沿って間隔をおいて(例えば、8メートル間隔で)配置されている。
【0034】
図5は、中央ヘッドエンド管理局210の例示の実施形態の詳細図である。図1の多数のヘッドエンドユニット20をヘッドエンド管理局210に直接組み込むのではなく、例示の実施形態では、ヘッドエンドユニットは、各サービスユニット50が所与のサービスユニットの特定の用途に応じて、トランスポンダ30の1つ、幾つか又は全てと通信することができるよう改造されている。サービスユニット50は各々、RF送信ライン230及びRF受信ライン232に電気的に結合されている。図5では、図面を分かりやすくするために、6つのサービスユニット50a~50fの3つが示されている。例示の実施形態では、システム200は、サービスユニット50に作動的に結合されていて、トランスポンダ30との通信の際にサービスユニットの動作を制御したり協調させたりするようになった主コントローラ250を更に有している。以下略」
「【0035】
中央ヘッドエンド局210は、コントローラ250に作動的に結合されたダウンリンクRF信号マルチプレクサ(「ダウンリンクマルチプレクサ」)270を更に有している。ダウンリンクマルチプレクサユニット270は、入力側272及び出力側274を有している。送信ライン230は、入力側272のところでダウンリンクマルチプレクサ270に電気的に接続されている。
【0036】
例示の実施形態では、ダウンリンクマルチプレクサ270は、以下に説明するようにサービスユニット50とトランスポンダ30との間の選択的な通信を可能にするRF信号方向づけ要素280(例えば、RFスイッチ)を有している。一例では、選択的通信は、対応のピコセル40をポーリングするためにトランスポンダ30を順次アドレス指定することを含む。かかる順次ポーリングは、例えば、サービスユニット50の1つがピコセル40(図4)内のRFIDタグ290を探索するRFIDリーダである場合に利用できる。例示の実施形態では、RFIDタグ290は、アイテム292に取り付けられており、このアイテムは、取り付け状態のRFIDタグにより追跡され又は違ったやり方でモニタされる。別の例示の実施形態では、選択的通信は、トランスポンダ30の幾つか又は全てを同時にアドレス指定することを含む。かかる同時アドレス指定は、例えば、サービスユニット50の1つがピコセル40の幾つか又は全ての同時カバレージを提供するセルラー電話送信機又はRF信号フィードスリーユニットである場合に利用できる。
【0037】
中央ヘッドエンド局210は、コントローラ250に作動的に結合されていて、入力側322及び出力側324を備えたアップリンクRF信号マルチプレクサ(「アップリンクマルチプレクサ」)320を更に有している。受信ライン232が、出力側324のところでアップリンクマルチプレクサ320に電気的に接続されている。例示の実施形態では、アップリンクマルチプレクサ320は、RF信号方向づけ要素328を含む。
【0038】
中央ヘッドエンド局210は、E/O変換器アレイ360を構成する多数のE/O変換器60及びO/E変換器アレイ362を構成する対応した数のO/E変換器62を更に有している。E/O変換器60は、電線路330を介してダウンリンクマルチプレクサ270の出力側274に電気的に結合されると共に対応のアップリンク光ファイバ36Dの入力端部138に結合されている。O/E変換器62は、電線路332を介してアップリンクマルチプレクサ320の入力側324に電気的に結合されると共に対応のアップリンク光ファイバ36Uの出力端部144に光結合されている。ダウンリンク光136Dは、ダウンリンク光ファイバケーブル378を構成し、アップリンク光ファイバ136Uは、アップリンク光ファイバケーブル380を構成している。
【0039】
図6は、ダウンリンク及びアップリンク光ファイバ36D,36U並びに6つのトランスポンダ30の2つを示す光ファイバケーブル220の概略拡大図である。トランスポンダ30に電気的に結合された電力ライン168も又示されている。例示の実施形態では、光ファイバケーブル270は、保護外側ジャケット344を有する。」
「【0040】
作動方法 ( 審決注:この行に限り、下線は公報に付されていたものである。)
図4、図5及び図6を参照すると、光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステム200は、次のように動作する。中央ヘッドエンド局210のところで、サービスユニット50,50b,...50fは各々、所与のサービスユニットの特定の用途に対応したそれぞれの電気信号SDを生じ又は1つ又は2つ以上の外部ネットワーク223から通す。電気信号SDは、RF送信ライン230によりダウンリンクマルチプレクサ270に送信される。次に、ダウンリンクマルチプレクサ270は、種々の信号SDを(周波数において)組み合わせ、これら信号をE/O変換器アレイ360の中のE/O変換器60に分配する。例示の実施形態では、ダウンリンクマルチプレクサ270及びこの中に設けられているRF信号方向づけ要素280は、制御信号S1を介してコントローラ250によって制御されて信号SDをE/O変換器アレイ360の中のE/O変換器60の1つ、幾つか又は全てに、特定のサービスユニット用途に基づいてトランスポンダ30の1つ、幾つか又は全てに差し向ける。例えば、サービスユニット50aがセルラー電話ユニットである場合、例示の実施形態では、このユニットからの信号SD(例えば、1つ又は2つ以上の外部ネットワーク223からこのユニットを通過した)は、RF信号方向づけ要素280により等しく分割され(そして、オプションとして、増幅され)、E/O変換器アレイ360の中の各E/O変換器60に提供される。この結果、各トランスポンダ30がアドレス指定される。他方、サービスユニット50fがWLANサービスユニットである場合、RF信号方向づけ要素280は、信号SDを差し向けてE/O変換器アレイ360の中のE/O変換器60を選択して選択されたトランスポンダ30だけがアドレス指定されるようにするように構成されている(例えば、プログラムされている)のが良い。
【0041】
E/O変換器アレイ360の中のE/O変換器60の1つ、幾つか又は全ては、ダウンリンクマルチプレクサ270から電気信号SDを受け取る。E/O変換器アレイ360中のアドレス指定されたE/O変換器60は、電気信号SDを対応の光信号SD′に変換し、この光信号SD′は、対応のダウンリンク光ファイバ136Dによって対応のトランスポンダ30に送信される。アドレス指定されたトランスポンダ30は、光信号SD′を変換してこれを電気信号SDに戻し、この電気信号SDは、次に、特定のサービスユニット用途に対応した電磁信号SD″に変換される。」
「【0044】
例示の実施形態では、サービスユニット50の幾つか又は全てからの種々のサービス(即ち、セルラー電話サービス、データ通信のためのWiFi、RFIDモニタ等)は、周波数多重化によりSR信号レベルで組み合わされる。」
「【0050】
IV.建物インフラストラクチャ用の集中型システム
図10は、建物インフラストラクチャ500の概略切除図であり、かかる建物インフラストラクチャは、一般に、本発明の光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステムが有用な任意形式の建物、例えばオフィスビルディング、学校、病院、大学建物、空港、倉庫等を表している。以下略」
「【0054】
例示の実施形態では、中央ヘッドエンド局210及び電力源160は、建物インフラストラクチャ500内に(例えば、クローゼット又は管理室内に)配置され、別の例示の実施形態では、これらは、建物の外部の遠隔な場所に配置される。」
特に、上記段落【0033】-【0038】及び図4-5の記載内容から、刊行物1の集中型光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステムのダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320は、多数のトランスポンダ30を間隔を置いて配置する光ファイバーケーブル220と結合されているものであると認められる。
また、上記段落【0036】の記載内容から、刊行物1に記載の集中型光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステムは、サービスユニット50がRFIDリーダである場合、トランスポンダ30を経由する選択的通信によってRFIDタグ290を探索するものであると認められる。
(3)刊行物1に記載された発明
以上より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「建物インフラストラクチャ500内に配置された中央ヘッドエンド局210を有し、
前記中央ヘッドエンド局210は各サービスユニット50を含み、前記サービスユニット50の一つは、RFIDリーダであり、及び、セルラー電話送信機ユニットであり、
前記中央ヘッドエンド局210はダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320を更に有しており、前記ダウンリンクマルチプレクサ270と前記アップリンクマルチプレクサ320は、多数のトランスポンダ30を間隔を置いて配置する光ファイバーケーブル220と結合されており、前記サービスユニット50がRFIDリーダである場合、前記トランスポンダ30を経由する選択的通信によって前記RFIDタグを探索する、
集中型光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステム。」
3 本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「集中型光ファイバーケーブル利用ワイヤレスピコセルラーシステム」は「建物インフラストラクチャ500内」に設置される無線(RF)システムであるのに対し、本件補正発明の「システム」は「航空機内」に設置される無線(RF)システムである。ここで両者は、「閉空間内」に設置される無線システムであるという限度で共通するといえる。
(イ)引用発明の「サービスユニット50」の一つである「RFIDリーダ」は本件補正発明の「RFIDリーダー」に相当する。そして、引用発明の「RFIDリーダ」は、中央ヘッドエンド局210に含まれており、その中央ヘッドエンド局210は「建物インフラストラクチャ500内に配置され」ているから、「RFIDリーダ」は建物内の第1の固定位置に配置されているといえる。
(ウ)同様に、引用発明の「サービスユニット50」の一つである「セルラー電話送信機ユニット」は、技術的あるいは機能的にみて本件補正発明の「無線通信機器」に相当する。そして、引用発明の「セルラー電話送信機ユニット」は、中央ヘッドエンド局210に含まれており、その中央ヘッドエンド局210は「建物インフラストラクチャ500内に配置され」ているから、「セルラー電話送信機ユニット」は建物内の第1の固定位置とは機能的及び物理的に別な位置、すなわち、第2の固定位置に配置されているといえる。
(エ)また、本件補正発明の「分散型アンテナシステム」は、アンテナスイッチングハブ機能を有する構成(ユニバーサル無線分散システム)と複数のアンテナ装置とを含むところ(本願明細書段落【0031】)、引用発明の「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」は、「サービスユニット50」と「多数のトランスポンダ30」との間の選択的な通信を可能にするものであり、アンテナスイッチングハブ機能を有するといえる。一方、引用発明の「多数のトランスポンダ30」は、アンテナ100を有し、ピコセル40内にあるクライアント機器45に対してあるいはこれから電磁RF信号を送受信するものであるから(段落【0014】、【0020】)、アンテナ装置(送受信点)であるといえる。
よって、引用発明の「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」と「多数のトランスポンダ30」は、本件補正発明の「分散型アンテナシステム」に相当する。
(オ)引用発明の「サービスユニット50」がセルラー電話送信機ユニットである場合、引用発明は、建物内通信システムを構成し、同様に、「サービスユニット50」が、RFIDリーダである場合、引用発明は、アイテム追跡システムを構成するものであるといえる。
(カ)結局、上記(ア)-(オ)より、引用発明の、
「集中型光ファイバ利用ワイヤレスピコセルラーシステム」は、
本件補正発明の、
「航空機内の第1の固定位置に配置されたRFIDリーダー、
前記航空機内の第2の固定位置に配置された無線通信機器、並びに
前記RFIDリーダーと前記無線通信機器とに結合された分散型アンテナシステムと、
を備えた航空機通信及びアイテム追跡システム」との対比において、
「閉空間内の第1の固定位置に配置されたRFIDリーダー、
前記閉空間内の第2の固定位置に配置された無線通信機器、並びに
前記RFIDリーダーと前記無線通信機器とに結合された分散型アンテナシステムと、
を備えた閉空間内通信及びアイテム追跡システム」の限度で共通する。
(キ)上記(エ)より、引用発明の「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」は本件補正発明の「無線分散システム」に相当する。また、引用発明の「多数のトランスポンダ30」は、ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320と別々に結合された複数の個別の送受信点であるといえ、本件補正発明の「複数の個別の送受信点」に相当する。
よって、引用発明の「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」と「多数のトランスポンダ30」とは、本件補正発明の、
「前記分散型アンテナシステムは、
無線分散システムと、
前記無線分散システムに別々に結合された複数の個別の送受信点であって、前記複数の個別の送受信点は、集合的に単一のケーブルに組み込まれていない、複数の個別の送受信点と、を備え」との対比において、
「前記分散型アンテナシステムは、
無線分散システムと、
前記無線分散システムに別々に結合された複数の個別の送受信点であって、複数の個別の送受信点と、を備え」の限度で共通する機能を有する。
(ク)引用発明の「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」(本件補正発明の「無線分散システム」に相当する)は、「RFIDリーダ」、「セルラー電話送信機ユニット」及び「多数のトランスポンダ30」とは機能的に、また、物理的に分離されているといえる。
また、引用発明の「多数のトランスポンダ30」と「RFIDリーダ」と「セルラー電話送信機ユニット」との間の通信は「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」経由して行われている(段落【0036】、【0040】)。さらに、引用発明の「多数のトランスポンダ30」は「建物インフラストラクチャ500」内部に分散配置されているといえる。
よって、引用発明の、「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」(本件補正発明の「無線分散システム」に相当する)は、本件補正発明の、
「前記無線分散システムが、前記RFIDリーダー、前記無線通信機器及び前記複数の個別の送受信点の各々から分離されていて、前記複数の個別の送受信点と前記RFIDリーダーと前記無線通信機器との間の通信が、前記無線分散システムを経由し、前記複数の送受信点は、前記航空機内部の複数のパッシブ型RFIDタグが、前記複数の送信点の少なくとも一つによって出力される信号によって活性化されるように、前記航空機内部に分散配置されており」との対比において、
「前記無線分散システムが、前記RFIDリーダー、前記無線通信機器及び前記複数の個別の送受信点の各々から分離されていて、前記複数の個別の送受信点と前記RFIDリーダーと前記無線通信機器との間の通信が、前記無線分散システムを経由し、前記複数の送受信点は、前記閉空間内部に分散配置されており」の限度で共通する機能をも有する。
(ケ)引用発明は、「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」による「サービスユニット50」と「多数のトランスポンダ30」との選択的通信によって、RFIDリーダによるピコセル内のRFIDタグ290の探索をするものであるから(段落【0036】)、引用発明の「多数のトランスポンダ30」と「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」が、RFIDリーダ及びRFIDタグ290に関連する信号の送受信に対して操作可能であるといえる。
また、同様に、引用発明は、「ダウンリンクマルチプレクサ270」が、「セルラー電話送信機ユニット」からの信号を、いくつかの又は全ての「多数のトランスポンダ30」に向けて差し向けるものであり(段落【0040】)、逆に、ピコセル内のクライアント機器(セルラー電話送信機)からの信号を「トランスポンダ30」を介し「アップリンクマルチプレクサ320」によって、「セルラー電話送信機ユニット」へ差し向けるものであるから(段落【0042】)、引用発明の「多数のトランスポンダ30」と「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」が、セルラー電話送信機ユニットと関連する信号の送受信に対して操作可能であるともいえる。
よって、引用発明の「多数のトランスポンダ30」と「ダウンリンクマルチプレクサ270とアップリンクマルチプレクサ320」とは、本件補正発明の、
「分散型アンテナシステムが、前記RFIDリーダー及び前記パッシブ型RFIDタグに関連する信号の送受信に対して操作可能であり、さらに、前記無線通信機器と関連する信号の送受信に対して操作可能である」との対比において、
「分散型アンテナシステムが、前記RFIDリーダー及び前記RFIDタグに関連する信号の送受信に対して操作可能であり、さらに、前記無線通信機器と関連する信号の送受信に対して操作可能である」の限度で共通する機能を有する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「閉空間内の第1の固定位置に配置されたRFIDリーダー、
前記閉空間内の第2の固定位置に配置された無線通信機器、並びに
前記RFIDリーダーと前記無線通信機器とに結合された分散型アンテナシステムと、
を備えた閉空間内通信及びアイテム追跡システムであって、
前記分散型アンテナシステムは、
無線分散システムと、
前記無線分散システムに別々に結合された複数の個別の送受信点と、を備え、
前記無線分散システムが、前記RFIDリーダー、前記無線通信機器及び前記複数の個別の送受信点の各々から分離されていて、前記複数の個別の送受信点と前記RFIDリーダーと前記無線通信機器との間の通信が、前記無線分散システムを経由し、前記複数の送受信点は、前記閉空間内部に分散配置されており、
前記分散型アンテナシステムが、前記RFIDリーダー及び前記RFIDタグに関連する信号の送受信に対して操作可能であり、さらに、前記無線通信機器と関連する信号の送受信に対して操作可能である、システム。」
【相違点1】
本件補正発明のシステムが設置されている閉空間が、「航空機」であるのに対し、引用発明の閉空間が「建物インフラストラクチャ500」である点。
【相違点2】
本件補正発明の「複数の個別の送受信点」が「集合的に単一のケーブルに組み込まれていない」の対し、引用発明の「多数のトランスポンダ30」は、光ファイバーケーブル220(つまり、単一のケーブルの態様の光ファイバーケーブル220)に間隔を置いて配置されているものである点。
【相違点3】
本件補正発明の「RFIDタグ」がパッシブ型であり、この「航空機内部の複数のパッシブ型RFIDタグが、複数の送信点の少なくとも一つによって出力される信号によって活性化され」るものであるのに対し、引用発明の「RFIDタグ290」は、「トランスポンダ30を経由する選択的通信によって」探索されるものであるものの、それがパッシブ型、すなわち、トランスポンダ30を経由する選択的通信(信号)によって活性化されるものであるか否かは特定されていない点。
(5) 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2007年1月4日に頒布された米国特許出願公開第2007/0001809号(以下、「刊行物2」という。)には、航空機内部でRFIDリーダとRFIDタグを用いてアイテムを追跡する技術が開示されている(段落[0050]-[0060]、第4-5図)。
上記刊行物2には、閉空間である航空機内部でRFIDリーダとRFIDタグを用いてアイテムを追跡するシステムが開示されているから、閉空間である建物インフラストラクチャ内でRFIDリーダとRFIDタグを用いてアイテムを追跡するシステムを含む引用発明を、航空機内部でのアイテムを追跡するシステムとして適用することは当業者であれば容易に想到し得たものである。
イ 相違点2について
分散アンテナシステムにおいて、複数のアンテナを分散配置する手段としては種々の手段が考えられ(例えば、複数のアンテナケーブルを束ねて単一化したものの使用、いわゆる漏洩同軸ケーブルような単一のケーブルに複数のアンテナを配置したものの使用、単一のケーブルに組み込まない複数のアンテナの使用)、そのいずれも当業者には周知の技術である。そして、その周知の技術のうちのどれを採用するかは、アンテナを配置する空間の大きさや、形状や複数のアンテナの配置のレイアウトなどに応じて当業者が適当なものを採用することができるものというべきである。ちなみに、刊行物2の第3図、段落[0034]には、4つのスレーブアンテナ308が単一化されていない同軸ケーブルによって外部アンテナ312に結合されている態様、つまり、集合的に単一のケーブルに組み込まない複数のアンテナの使用による複数のアンテナの分散配置の態様が開示されている。
したがって、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、上記周知の技術に基づき当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 相違点3について
RFIDリーダとRFIDタグを用いてアイテムを追跡する技術において、パッシブ型RFIDタグ、アクティブ型RFIDタグのどちらも周知の技術であり、置換可能なものとして当業者には認識されている(例えば、刊行物2の段落[0004]、参照。)。
よって、上記周知のパッシブ型RFIDタグを、引用発明のRFIDタグとして採用することは当業者が容易に想到し得たものである。ここで、パッシブ型RFIDタグの場合、パッシブ型RFIDタグが、複数の送信点の少なくとも一つによって出力される信号によって活性化され、それによってアイテムの追跡が可能となるるものであることは当業者には周知な技術的事項であるといえる。
したがって、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは上記周知のRFIDタグに基づき当業者であれば容易に想到し得たものである。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明および刊行物2に記載された技術や上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術や周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(6)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年11月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-14に係る発明は、平成26年12月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2009-540753号公報に記載の事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明における、「無線通信機器」という発明を特定する事項について、「通信機」とあるように技術的な限定を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(4)、(5)に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された技術や周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び刊行物2に記載された技術や周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-020058