特許拒絶査定不服審判
2015-019710
画像のためのIR信号捕捉
- 審判番号
- 2015-019710
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-535708外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年11月02日
- 審決日
- 2017年06月26日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (G01B) / P18 .537-WY (G01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-535708「画像のためのIR信号捕捉」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月10日国際公開、WO2013/066351、平成27年 1月15日国内公表、特表2015-501574、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月4日を国際出願日とする出願であって、平成26年10月6日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月14日付けで手続補正がなされたが、平成27年6月26日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成27年11月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年2月23日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年5月19日付けで手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成27年6月26日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。
本願請求項1-33に係る発明は、以下の引用文献A-Fに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2009-264862号公報
B.特開2004-110804号公報
C.特開2010-276607号公報
D.国際公開第2009/157129号
E.特開2007-256257号公報
F.特表2007-532929号公報
第3 当審拒絶理由の概要
1 本願請求項1-33に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2004-28874号公報 (当審において新たに引用した文献)
2.特開2004-110804号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2010-276607号公報(拒絶査定時の引用文献C)
4.特開2009-264862号公報(拒絶査定時の引用文献A)
5.国際公開第2009/157129号(拒絶査定時の引用文献D)
6.特表2007-532929号公報(拒絶査定時の引用文献F)
2 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項8
請求項8に記載された「前記第1のIR放射器から受け取られた前記第1のIR信号」、「前記第1の放射器から受け取った前記第1のIR信号」(2箇所)、「前記第1のIR放射器から受け取った前記第1のIR信号」及び「前記第2のIR放射器から受け取った前記第2のIR信号」は、請求項8に記載された「赤外線(IR)放射器であって、対象物にIR信号を放射し、水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向の少なくとも1つに移動するように構成された、IR放射器」と、IR放射器の数の点(前者は第1、第2の二つのIR放射器を有し、後者は一のIR放射器であれば足りる点)で対応しておらず不明確である。
・請求項9-17
請求項9-17は請求項8を引用していることから、同様に記載が不明確である。
・請求項23
請求項23に記載された「前記第1のIR放射器から受け取った前記第1のIR信号」(4箇所)及び「前記第2のIR放射器から受け取った前記第2のIR信号」は、請求項23に記載された「水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向のうちの、少なくとも1つに移動するように構成された」「IR放射器」と、IR放射器の数の点で同様に対応しておらず不明確である。
・請求項24-28
請求項24-28は請求項23を引用していることから、同様に記載が不明確である。
・請求項31
(1)請求項31に記載された「前記第1のIR放射器から受け取った前記第1のIR信号」(2箇所)、「前記第1の放射器から受け取った前記第1のIR信号」(3箇所)及び「前記第2のIR放射器から受け取った前記第2のIR信号」(2箇所)は、請求項31に記載された「水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向のうちの、少なくとも1つに移動するように構成された」「IR放射器」と、IR放射器の数の点で同様に対応しておらず不明確である。
(2)請求項31に記載された「前記命令は、実行するとそれに応じて、前記第1の放射器から受け取った前記第1のIR信号から前記影の領域が検出されると判定するとそれに応じて、前記コンピューティングデバイスが、前記第2のIR放射器から受け取った前記第2のIR信号に対応した画像を利用して前記影の領域の影響を前記第1のIR信号から低減させて、前記対象物の画像を形成することをさらに動作的に可能にし、および、
前記命令は、実行するとそれに応じて、前記第1の放射器から受け取った前記第1のIR信号から前記影の領域が検出されると判定するとそれに応じて、前記コンピューティングデバイスが、前記第2のIR放射器から受け取った前記第2のIR信号に対応した画像を利用して前記影の領域の影響を前記第1のIR信号から低減させて、前記対象物の画像を形成することをさらに動作的に可能にし、および」は、同じ記載が重複しており、不明確である。
・請求項32、33
請求項32、33は請求項31を引用していることから、同様に記載が不明確である。
よって、請求項8-17,23-28、31-33に係る発明は明確でない。
第4 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成29年5月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明6は以下のとおりのものである。
「【請求項6】
対象物の画像を補足するように構成された画像捕捉用デバイスにおいて、水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向のうちの、少なくとも1つに移動するように構成された、第1の位置におけるIR放射器から第1の赤外線(IR)信号を受け取ること、
前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定すること、
前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用すること、
前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ、前記影の領域の影響を低減させた前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像と、前記第2の位置で前記IR放射器から受け取った第2のIR信号に対応する前記対象物の画像とを利用すること、
を含む画像処理の方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体の3次元情報を取得可能なレンジファインダ装置に関する技術、およびその3次元情報から物体の位置を検出する技術に属する。」
b 「【0024】
広角カメラ用照明101a,101bはそれぞれ、光源としてのLED11が複数個配列された光源アレイ部によって構成されている。図1において、各LED11は○印で表されており、広角カメラ用照明101a,101bはそれぞれ11×11個のLED11によって構成されている。また、広角カメラ102はVGA画素数(横480画素×縦640画素)を有しており、縦長の視野が得られるように設置される。この広角カメラ102によって、図4に示すような人物PPの顔を含む上半身画像が撮影される。」
c 「【0040】
図10は広角カメラ102の露出タイミングと広角カメラ用照明101a,101bから投射される光パタンとの関係を示す図である。そして、照明101aから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像、および照明101bから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像の計4枚の輝度画像が得られる。画像処理部107は、この4枚の輝度画像から、距離画像を生成する」
d 「【0043】
このように、例えば被写体の凸形状の両側から照明を行うことによって、被写体の形状に起因する計測誤差の増大を抑えることができる。すなわち、複数の光源アレイ部を設けることによって、陰になって光パタンが適切に投射されずに距離を精度よく測定できない領域を、大幅に減少させることができる。
【0044】
画像処理部107は、以下のような処理によって、4枚の輝度画像から距離画像を生成する。
【0045】
まず、照明101aから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得る。同様に、照明101bから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得る。これらの原距離画像の取得方法は、特願2001-286646に示されたとおりである。
【0046】
そして、得られた2枚の原距離画像を合成して、1枚の距離画像を生成する。」
e 「【0049】
そして図11において、計測点Aでは、照明101bからの投射光による輝度値の方が、照明101aからの投射光による輝度値よりも、鼻NSによって遮られない分、大きくなると考えられる。そこで、生成しようとする距離画像の各座標について、各原距離画像の当該座標における距離値のうち、当該原距離画像の基になる輝度画像の当該座標における輝度値の平均値が大きい方の距離値を、採用する。そして、輝度値の平均値が大きい方の距離値を集めて、1個の距離画像を合成する。」
上記a~eより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「人物PPの顔を含む上半身の画像が撮影される広角カメラ102において(【0024】)、
陰になって光パタンが適切に投射されずに距離を精度よく測定できない領域を、大幅に減少させるために、被写体の凸形状の両側から照明を行い(【0043】)、
照明101aから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像、および照明101bから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像の計4枚の輝度画像が得られ(【0040】)、
照明101aから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得、照明101bから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得て(【0045】)、
各原距離画像の当該座標における距離値のうち、当該原距離画像の基になる輝度画像の当該座標における輝度値の平均値が大きい方の距離値を採用し、輝度値の平均値が大きい方の距離値を集めて、1個の距離画像を合成すること(【0049】)、
を含む方法。」
2 引用文献2について
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0016】
投光器104は,光源106と,マスクパターン107と,強度パターン108と,プリズム109とを有する。ここで光源106は,赤外もしくは紫外光を用いた不可視領域の光源を用いることができる。この場合,各カメラは図22に示すように構成される。すなわち,入射してきた光310は,プリズム301で2方向に分割され,一方は不可視領域(赤外あるいは紫外)透過フィルター302を通って撮像装置(例えばCCDカメラ)303に入射し,他方は不可視領域(赤外と紫外)遮断フィルター304を通って撮像装置305に入射する。」
3 引用文献3について
当審拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0062】
制御部130は、一番目の投影部すなわち、第1投影部110aを用いて格子パターン画像1を1回撮影する期間に、2番目の投影部すなわち、第2投影部110bの格子素子112を2π/nの位相に対応する距離だけに移送させる。その後、制御部130は、第2投影部110bを用いて格子パターン画像2を1回撮影する期間に、第1投影部110aの格子素子112を2π/nの位相に対応する距離だけ移送させる。すなわち、制御部130は、第1投影部110aを用いて格子パターン画像1を撮影した後、直ぐに続いて行われる第2投影部110bを用いた撮影期間に第1投影部110aの格子素子112を移送させる。続いて、制御部130は、第1投影部110aおよび第2投影部110bを通じて前記のような過程を数回繰り返し、格子パターン画像3から格子パターン画像8までの撮影を実行するように制御する。」
4 引用文献4について
当審拒絶理由で引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0070】
撮像部3は、縞パターンが投影された被計測物の計測領域10を撮像し(S22)、撮像された各画素の輝度データから成る輝度データIki(x,y)は、3次元計測処理部4のメモリ43に記録される(S23)。」
b 「【0081】
ところで、隠蔽によって縞パターンSPが投影されていない被計測領域(影の部分)の点や、撮像部3に向けて十分に光を反射しないような被計測領域の点の画素については、正しく3次元座標を求めることができない。そこで、次式(6)で定義される正弦波の振幅A(x,y)が一定値以下になる点を、このような計測不可能点として扱う。このような点の画素に対応する3次元座標は定義されないことになる。3次元座標が定義されない点については、記号NULLを用いて、Pk(x,y)=NULLのように表す。
【0082】
【数6】
A(x,y)=√((I3(x,y)-I1(x,y))2+(I0(x,y)-I2(x,y))2)」
上記a,bの記載より、引用文献4には、次の技術が記載されている。
「撮像された各画素の輝度データから成る輝度データIki(x,y)から、縞パターンSPが投影されていない影の部分を判断する技術。」
5 引用文献5について
当審拒絶理由で引用された引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明は、画像処理技術に関し、特に被写体の形状情報取得や画像合成の際に問題になる画像分割の精度を向上するための技術に関する。」
b 「【0140】
投光位置変化部112は投光位置変化装置213によって、発光装置207を移動させることで光源位置を変化させるようにしても構わない。投光位置変化装置213は、モータなどによって実現される。ロボットの稼動部に発光装置207を設置するようにしてもかまわない。図36は、本実施形態による領域分割を実施した撮像条件を示したシステム図である。図36において、図35と共通の構成要素には図35と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明は省略する。」
6 引用文献6について
当審拒絶理由で引用された引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0025】
センサ11は、光源14から所定の距離に置かれている。センサ11は、CCDカメラ、CMOSカメラ、または対象物の特徴を撮像するのに適した任意の他のカメラであってもよい。画像/信号処理ユニットは、センサ11に一体化するか、センサ11と同じハウジングに(カメラハウジングに)設けられた別個のユニットにするか、またはカメラハウジング外の完全に別個のユニットにしてもよい。センサ11は、本システムにおいて、二次元(2D、輝度)および三次元(3D、距離)情報の両方を検出することできる。すなわち、対象物12の輝度分布および幾何学的輪郭の両方を測定することができる。対象物12の幾何学的輪郭(3D形状)についての情報は、三角測量を用いて得ることができる。すなわち、光源14がセンサ11から所定の距離に置かれている場合に、センサ11における反射光の位置は、センサ11から対象物12までの距離を示す。2D情報は、それ自体、対象物12の検出に役立つが、しかしまた、3Dデータの質の信頼度測定として用いてもよい。時折、センサ11が反射光を少しも検出せず、このことが、対象物が存在することの表れである場合がある。この現象は、「欠測値」と呼ばれるが、以下でさらに説明する。」
第6 対比・判断
1 対比
本願発明6と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「人物PPの顔を含む上半身」、「広角カメラ102」は、それぞれ、本願発明6の「対象物」、「画像捕捉用デバイス」に相当する。
イ 本願発明6の方法が、赤外線(IR)を用いていることを除いて、引用発明の「輝度画像」、「原距離画像」は、それぞれ、本願発明6の「IR信号」、「IR信号に対応する対象物の画像」に相当し、
引用発明の「照明101a」、「照明101b」は、それぞれ、本願発明6の「第1の位置」の「IR放射器」、「第2の位置」の「IR放射器」に相当する。
ウ 引用発明の「人物PPの顔を含む上半身の画像が撮影される広角カメラ102」は、本願発明6の「対象物の画像を補足するように構成された画像捕捉用デバイス」に相当する。
エ 引用発明の「照明101aから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像」「の輝度画像が得られ」ることと、本願発明6の「水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向のうちの、少なくとも1つに移動するように構成された、第1の位置におけるIR放射器から第1の赤外線(IR)信号を受け取ること」は、「第1の位置における放射器から第1の信号を受け取ること」である点で共通する。
オ 引用発明の「陰になって光パタンが適切に投射されずに距離を精度よく測定できない領域を、大幅に減少させるため」は、本願発明6の「前記影の領域の影響を低減させた前記対象物の深さ情報を取得するために」に相当する。
そして、引用発明の「照明101aから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得、照明101bから照射された光パタンA,Bに対応する2枚の輝度画像から、距離画像を原距離画像として得て、各原距離画像の当該座標における距離値のうち、当該原距離画像の基になる輝度画像の当該座標における輝度値の平均値が大きい方の距離値を採用し、輝度値の平均値が大きい方の距離値を集めて、1個の距離画像を合成すること」と、本願発明6の「前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像と、前記第2の位置で前記IR放射器から受け取った第2のIR信号に対応する前記対象物の画像とを利用すること」とは、「前記第1の信号に対応する前記対象物の前記画像と、前記第2の位置で前記放射器から受け取った第2の信号に対応する前記対象物の画像とを利用すること」である点で共通する。
カ 引用発明の「方法」は、「照明101aから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像」「照明101bから光パタンA,Bがそれぞれ投射されたときの2枚の反射光画像の計4枚の輝度画像」を得て、「距離画像を合成」する「方法」あるから、本願発明6の「画像処理の方法」に相当する。
すると、本願発明6と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「対象物の画像を補足するように構成された画像捕捉用デバイスにおいて、
第1の位置における放射器から第1の信号を受け取ること、
前記影の領域の影響を低減させた前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1の信号に対応する前記対象物の前記画像と、前記第2の位置で前記放射器から受け取った第2の信号に対応する前記対象物の画像とを利用すること、
を含む画像処理の方法。」
(相違点1)
本願発明6は、赤外線(IR)を用いているのに対して、引用発明は、このような特定がない点。
(相違点2)
「放射器」が、本願発明6は、「水平方向、垂直方向、または水平および垂直方向のうちの、少なくとも1つに移動するように構成され」ているのに対して、引用発明は、被写体の凸形状の両側から照明を行うために、「照明101a」及び「照明101a」を有しているが、そのような特定がない点。
(相違点3)
本願発明6は、「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点4)
本願発明6は、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点5)
本願発明6は、「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」るのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
2 判断
事案に鑑み、上記相違点3,4及び5について検討する。
引用発明は、「陰になって光パタンが適切に投射されずに距離を精度よく測定できない領域を、大幅に減少させるために、被写体の凸形状の両側から照明を行い」「各原距離画像の当該座標における距離値のうち、当該原距離画像の基になる輝度画像の当該座標における輝度値の平均値が大きい方の距離値を採用し、輝度値の平均値が大きい方の距離値を集めて、1個の距離画像を合成」しているが、
引用発明は、「原距離画像」において影の領域が検出されるかどうかを判定していない。
一方、引用文献4には、撮像された各画素の輝度データから成る輝度データIki(x,y)から、縞パターンSPが投影されていない影の部分を判断する技術が記載されており(上記「第5 4」)、引用文献5には、被写体の形状情報を収得するものにおいて、発光装置を移動させる周知の技術が記載されている(上記「第5 5」)。
しかしながら、引用文献4及び5には、影の領域が検出されないと判定した場合、第1のIR信号に対応する画像を利用すること、及び、影の領域が検出されると判定した場合、IR放射器を移動させることは記載されていない。
したがって、引用発明において、「原距離画像」において影の領域が検出されるかどうかを判定し、影の領域が検出されないと判定した場合に、一方の照明101aから得られた原距離画像を採用すること、及び、影の領域が検出されると判定した場合に、照明101aを移動させることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、引用文献2,3及び6には、影の領域が検出されないと判定した場合、第1のIR信号に対応する画像を利用すること、及び、影の領域が検出されると判定した場合、IR放射器を移動させることは記載されていないので、上記相違点3,4及び5に係る本願発明6の構成は、引用発明、引用文献2ないし6に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、本願発明6は、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2ないし6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明1~5,7~10について
本願発明1~5,7~10についても、本願発明6の「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」及び「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」と同一の構成を備えるものであるから、 引用発明、引用文献2ないし6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原査定について
当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成29年5月19日付けの手続補正書により、請求項は、請求項1ないし10となるとともに、各請求項は、「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」及び「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」という発明特定事項を有するものとなった。当該「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」及び「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」は、原査定における引用文献AないしFには記載されておらず、本願の国際出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし10は、当業者であっても、拒絶査定における引用された引用文献AないしFに記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。
第8 当審拒絶理由について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成29年5月19日付けの手続補正書により、請求項は、請求項1ないし10となるとともに、各請求項は、「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」及び「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」という発明特定事項を有するものとなった。当該「前記第1の位置で前記IR放射器から受け取った前記第1のIR信号に対応する前記対象物の画像において影の領域が検出されるかどうかを判定する」、「前記影の領域が検出されないと判定した場合、前記対象物の深さ情報を取得するために、前記第1のIR信号に対応する前記対象物の前記画像を利用する」及び「前記影の領域が検出されると判定した場合、前記IR放射器を第2の位置に移動させ」は、当審拒絶理由における引用文献1ないし6には記載されておらず、本願の国際出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし10は、当業者であっても、当審拒絶理由における引用された引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。したがって、この拒絶の理由は解消した。
2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1)当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成29年5月19日付けの手続補正書により、補正前の請求項8、23及び31に記載された「第1のIR放射器」及び「第2のIR放射器」は、補正後の請求項1、6及び10に記載の「IR放射器」と補正された。
これにより、IR放射器の数の点で記載が明確となった。
(2)当審拒絶理由の通知に応答して提出された平成29年5月19日付けの手続補正書により、補正前の請求項31に対応する請求項10を補正することにより、同じ記載の重複は解消した。
したがって、この拒絶の理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-019710