特許拒絶査定不服審判
2015-019176
矯味されたオーラルケア組成物
- 審判番号
- 2015-019176
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-553413外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月23日
- 審決日
- 2017年06月12日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
- 【請求人代理人】村井 康司
- 分類
- P18 .121-Z (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第162条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-553413「矯味されたオーラルケア組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月23日国際公開、WO2012/112141、平成26年 2月27日国内公表、特表2014-505101〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
本願は,国際出願日である平成23年2月15日にされたとみなされる特許出願であって,平成26年8月28日付けで拒絶理由が通知され,平成27年2月3日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され,同年7月30日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年10月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,平成28年1月29日付けで同法164条3項の規定による報告がされ,同年6月16日に上申書が提出されたものである。
第2 本願発明について
1 平成27年10月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について
(1) 本件補正の内容
本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ,特許請求の範囲全体の記載のうち,いわゆる独立項である本件補正前の請求項1及び当該請求項に対応する本件補正後の請求項1の記載を掲記すると,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(平成27年2月3日の手続補正書)
「【請求項1】
a)i)シンナムアルデヒド;オイゲノール;およびユーカリプトールを含む矯味剤;および
ii)L-メントール;N-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;アネトール;ペパーミント油;スペアミント油;コーンミントオイル;およびそれらの2種またはそれを超える組合せから選択される1種またはそれを超える香味付け剤
を含むフレーバー成分;
b)酸化亜鉛;硫酸亜鉛;塩化亜鉛;クエン酸亜鉛;乳酸亜鉛;グルコン酸亜鉛;マレイン酸亜鉛;酒石酸亜鉛;炭酸亜鉛;リン酸亜鉛;およびそれらの2種またはそれを超える組合せから選択される1種またはそれを超える亜鉛塩;および
c)口腔的に許容し得る不活性成分
を含むオーラルケア組成物であって,ここにフレーバー成分が0.5から2.5重量%の濃度で存在し;該1種またはそれを超える亜鉛塩の全体濃度が組成物の0.01から5重量%であり;
フレーバー成分が
35から45重量%のL-メントール;
5から8重量%のN-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;
8から12重量%のアネトール;
0.5から0.9重量%のシンナムアルデヒド;
0.5から0.9重量%のオイゲノール;
2から4重量%のユーカリプトール;および
22から27重量%のペパーミント油
を含む,該組成物。」
・ 本件補正後
「【請求項1】
a)i)シンナムアルデヒド;オイゲノール;およびユーカリプトールを含む矯味剤;および
ii)L-メントール;N-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;アネトール;ペパーミント油;スペアミント油;コーンミントオイル;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の香味付け剤
を含むフレーバー成分;
b)酸化亜鉛;硫酸亜鉛;塩化亜鉛;クエン酸亜鉛;乳酸亜鉛;グルコン酸亜鉛;マレイン酸亜鉛;酒石酸亜鉛;炭酸亜鉛;リン酸亜鉛;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の亜鉛塩;および
c)口腔的に許容し得る不活性成分
を含むオーラルケア組成物であって,ここにフレーバー成分が0.5から2.5重量%の濃度で存在し;該1種以上の亜鉛塩の全体濃度が組成物の0.01から5重量%であり;
フレーバー成分が
35から45重量%のL-メントール;
5から8重量%のN-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;
8から12重量%のアネトール;
0.5から0.9重量%のシンナムアルデヒド;
0.5から0.9重量%のオイゲノール;
2から4重量%のユーカリプトール;および
22から27重量%のペパーミント油
を含む,該組成物。」
(2) 本件補正の目的など
ア 本件補正は,請求項1の記載に係る発明を特定するために必要な事項である「香味付け剤」及び「亜鉛塩」について,選択的な表現として,補正前において「2種またはそれを超える」あるいは「1種またはそれを超える」と特定していたものを,「2種以上の」あるいは「1種以上の」と特定する補正事項を含むものである。
これについて,請求人は,本件補正は読みづらさを解消するためのもの,すなわち明りょうでない記載の釈明(特許法17条の2第5項4号)を目的とするものである旨主張する(審判請求書5頁)。
そこで,本件補正の目的について検討するに,明りょうでない記載の釈明を目的とする場合について,法17条の2第5項4号は,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」と規定するところ,本件においては,本件補正前の請求項1の「2種またはそれを超える」等の記載が明りょうでないことを趣旨とする拒絶の理由は通知されていない。そうすると,本件補正は,厳密には,法17条の2第5項4号に掲げる事項を目的とするものであるということはできない。(なお,本件補正は,同項に掲げる他の事項を目的とするものであると認めることができないのは明らかである。)
イ しかし,当合議体は,本件補正について,上記アで述べた違法性は問わないこととし,本件補正は明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当するものと認めることとする。
なお,本件補正は,いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。
(3) 小括
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2各項所定の要件をいずれも満たす。
2 本願発明
上記1のとおり,本件補正にはその要件に違法性はないので,本願の請求項1~11に係る発明は,平成27年10月23日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「a)i)シンナムアルデヒド;オイゲノール;およびユーカリプトールを含む矯味剤;および
ii)L-メントール;N-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;アネトール;ペパーミント油;スペアミント油;コーンミントオイル;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の香味付け剤
を含むフレーバー成分;
b)酸化亜鉛;硫酸亜鉛;塩化亜鉛;クエン酸亜鉛;乳酸亜鉛;グルコン酸亜鉛;マレイン酸亜鉛;酒石酸亜鉛;炭酸亜鉛;リン酸亜鉛;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の亜鉛塩;および
c)口腔的に許容し得る不活性成分
を含むオーラルケア組成物であって,ここにフレーバー成分が0.5から2.5重量%の濃度で存在し;該1種以上の亜鉛塩の全体濃度が組成物の0.01から5重量%であり;
フレーバー成分が
35から45重量%のL-メントール;
5から8重量%のN-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;
8から12重量%のアネトール;
0.5から0.9重量%のシンナムアルデヒド;
0.5から0.9重量%のオイゲノール;
2から4重量%のユーカリプトール;および
22から27重量%のペパーミント油
を含む,該組成物。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。
引用文献1: 特開2003-137755号公報
第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 査定の理由で引用された引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は審決による。)
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅,亜鉛,アルミニウム,鉄,スズから選ばれる1種又は2種以上の金属イオンを放出する化合物を含有する口腔用組成物において,L-メントール誘導体及びN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を配合してなることを特徴とする口腔用組成物。…」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,銅,亜鉛,アルミニウム,鉄,スズなどの金属イオンを放出する化合物を含有した口腔用組成物において,L-メントール誘導体及びN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を配合することにより,その金属味を改善し,使用感を良好にした口腔用組成物に関する。」
・「【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者らは上記要望に応えるために鋭意検討を重ねた結果,銅,亜鉛,アルミニウム,鉄,スズから選ばれる1種又は2種以上の金属イオンを放出する化合物を含有する口腔用組成物において,L-メントール誘導体及びN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を配合することにより,金属味が改善され,その使用感が向上して,上記目的が達成されることを見出し,本発明をなすに至ったものである。
【0006】なお,L-メントール誘導体及びN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドは清涼化成分として口腔用組成物に配合されている(特願2000-373583号)が,金属味の改善としての知見は,本発明が初めてである。」
・「【0007】以下,本発明につき更に詳しく説明する。本発明に係る口腔用組成物は,上述したように,銅,亜鉛,アルミニウム,鉄,スズから選ばれる1種又は2種以上の金属イオンを放出する化合物を含有するものである。…亜鉛化合物としては,塩化亜鉛,フッ化亜鉛,フルオロケイ酸亜鉛,硫酸亜鉛,硝酸亜鉛,水酸化亜鉛,酸化亜鉛,臭素酸亜鉛,ヨウ素酸亜鉛,フルオロリン酸亜鉛,酢酸亜鉛,ギ酸亜鉛,安息香酸亜鉛,クエン酸亜鉛,酒石酸亜鉛,乳酸亜鉛,リンゴ酸亜鉛,マンデル酸亜鉛,ピロリン酸亜鉛,ソルビン酸亜鉛,パントテン酸亜鉛,グルコン酸亜鉛,フィチン酸亜鉛,グリセロリン酸亜鉛,ケイ皮酸亜鉛,酪酸亜鉛,プロピオン酸亜鉛,ラウリン酸亜鉛,シュウ酸亜鉛,サリチル酸亜鉛,グリシン亜鉛,アスパラギン酸亜鉛,グルタミン酸亜鉛などが挙げられる。…
【0008】なお,前記金属化合物の配合量は,使用する金属化合物の種類,組成物の目的とする効能効果によるが,通常組成物全体の0.001~5%(質量百分率,以下同じ)配合されるが,特に0.01~5%で使用されることが好ましい。配合量が0.001%に満たないと目的とする効果の発現が低くなり,また,5%を超えると,金属による着色などにより組成物の外観が損なわれる場合がある。本発明においては,これらの金属化合物の1種を含有していても,2種以上を含有していてもよい。また,これらの化合物はそれぞれの配合目的によって種々の配合量において適宜配合使用される。」
・「【0019】香料としては,ペパーミント油,スペアミント油,アニス油,ユーカリ油,ウインターグリーン油,カシア油,クローブ油,タイム油,セージ油,レモン油,オレンジ油,ハッカ油,カルダモン油,コリアンダー油,マンダリン油,ライム油,ラベンダー油,ローズマリー油,ローレル油,カモミル油,キャラウェイ油,マジョラム油,ベイ油,レモングラス油,オリガナム油,パインニードル油,ネロリ油,ローズ油,ジャスミン油,イリスコンクリート,アブソリュートペパーミント,アブソリュートローズ,オレンジフラワー等の天然香料,これら天然香料の加工処理(前溜部カット,後溜部カット,分留,液液抽出,エッセンス化,粉末香料化等)した香料,及び,メントール,カルボン,アネトール,シネオール,サリチル酸メチル,シンナミックアルデヒド,オイゲノール,チモール,リナロール,リナリールアセテート,リモネン,メントン,メンチルアセテート,N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド,ピネン,オクチルアルデヒド,シトラール,プレゴン,カルビールアセテート,アニスアルデヒド,エチルアセテート,エチルブチレート,アリルシクロヘキサンプロピオネート,メチルアンスラニレート,エチルメチルフェニルグリシネート,バニリン,ウンデカラクトン,へキサナール,エチルアルコール,プロピルアルコール,ブタノール,イソアミルアルコール,へキセノール,ジメチルサルファイド,シクロテン,フルフラール,トリメチルピラジン,エチルラクテート,エチルチオアセテート等の単品香料,更に,ストロベリーフレーバー,アップルフレーバー,バナナフレーバー,パイナップルフレーバー,グレープフレーバー,マンゴーフレーバー,バターフレーバー,ミルクフレーバー,フルーツミックスフレーバー,トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等,口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ,実施例の香料に限定されない。
【0020】また,配合量も特に限定されないが,上記の香料素材は,組成物中に0.000001~1%使用することが好ましい。また,上記香料素材を使用した賦香用香料としては,組成物中に0.005~50%,特に好ましくは0.01~2%使用することが好ましい。」
・「【0024】
【実施例】以下,実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが,本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお,各例中の%はいずれも質量百分率である。また,下記例中の香料は表1に示す組成で調製した。」
・「【0025】
【表1】
*調合香料(フルーツミックスフレーバーFM3000)
ストロベリーフレーバー 400質量部
アップルフレーバー 150
メロンフレーバー 170
バナナフレーバー 100
ピーチフレーバー 50
オレンジ油 25
ラズベリーフレーバー 20
パイナップルフレーバー 15
グレープフレーバー 10
トロピカルフルーツフレーバー 15
ミルクフレーバー 10
グレープフルーツ油 5
レモン油 5
ローズ油 2
溶剤 残
合計 1000質量部」(審決注:【0025】中に記載されている「*調合香料(フルーツミックスフレーバーFM3000)」については,配合されている各種成分を含め,以下,単に「*調合香料」という。)
・「【0026】[実施例1~9,比較例1~6]表3に示す処方の練歯磨を調製し,その金属味を10名の専門パネルにて官能評価した。結果を表3に併記する。…」
・「【0028】
【表3】
」
(2) 上記(1)の摘記によれば,引用文献1にはさまざまな発明が記載されているといえるところ,特に実施例6に係る記載から,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「以下の成分からなる練歯磨。
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド 0.3
グルコン酸亜鉛 1
無水ケイ酸 20
グリセリン 35
キサンタンガム 0.6
カラギーナン 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
香料A 1.5
精製水 残部
(なお,香料Aは,次の成分からなる。
ペパーミント油 30
ペパーミント前溜部30%カット油 17
スペアミント油 3
スペアミント前溜部,後溜部15%カット油 2
メントール 15
カルボン 5
アニス油 2
アネトール 5
ウィンターグリーン油 1
カシア油 1
クローブ油 2
オレンジ油 2
*調合香料 5
エタノール 残部)」(審決注:引用発明中の数値の単位は,練歯磨全体の質量を100としたときの質量%(香料Aを構成する成分については,香料A全体の質量を100としたときの質量%)である。)
2 対比
(1) 本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「グルコン酸亜鉛」は本願発明の「亜鉛塩」に,「香料A」は「フレーバー成分」に,「練歯磨」は「オーラルケア組成物」にそれぞれ相当するといえる。そして,引用発明の「グルコン酸亜鉛」は練歯磨中に1質量%配合されているところ,このことは本願発明の「亜鉛塩の全体濃度が組成物の0.01から5重量%」との条件を満足する。
また,引用発明の「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド」は,引用文献1の記載を総合すると,一義的には,練歯磨におけるグルコン酸亜鉛による金属味の改善のために配合されるものではあるといえるものの,口腔用組成物における清涼化成分として普通に知られているといえるし(【0006】),香料の例として「N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド」が挙げられていることから(【0019】),本願発明の「フレーバー成分」を構成する「香味付け剤」としての「N-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド」に相当するともいえる。そして,引用発明の「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド」は練歯磨中に0.3質量%,「香料A」は1.5質量%,両成分合計で1.8質量%配合されているところ,このことは本願発明の「フレーバー成分が0.5から2.5重量%の濃度で存在」するとの条件を満たすといえる。
また,引用発明の「無水ケイ酸」や「グリセリン」などは,本願発明の「口腔的に許容し得る不活性成分」に相当する。
また,引用発明の「香料A」には「メントール」が配合されてなるところ,メントールには異性体としてL体,D体及びラセミ体が存在すること,引用文献1には香料Aに配合されているメントールの異性体について何ら言及がされていないことなどを総合すると,引用発明の香料Aに配合されている「メントール」には「L-メントール」が含まれていると解することができる。このような解釈は,引用文献1が比較例(比較例5及び6)として「L-メントール」を配合したものを挙げて説明していることによっては影響を受けない(比較例5と6の「L-メントール」は,金属味の改善のために配合された実施例に係る「L-メントール誘導体」との対比において配合されたものであるし(【0029】),引用文献1には,香料Aに配合されているメントールについて,特に「L-メントール」が除かれる旨の記載もない。)。しかも,引用発明の「香料A」には「ペパーミント油」が配合されてなるところ,ペパーミント油を構成する成分にL-メントールや1,8-シネオール(ユーカリプトール)が含まれることは技術常識であるから(当該技術常識について,要すれば,特許庁公報「周知・慣用技術集(香料)第III部香粧品用香料」,平成13年6月15日,26~42頁(2・1・1植物性香料の項)を参照できる。),その意味においても,引用発明の「香料
A」には「L-メントール」,さらにいうと「ユーカリプトール」が含まれていると解することができる。
さらに,引用発明の「香料A」には「カシア油」及び「クローブ油」がそれぞれ配合されてなるところ,カシア油を構成する成分にシンナムアルデヒドが,またクローブ油を構成する成分にオイゲノールが含まれることは技術常識であるから(同特許庁公報を参照。),引用発明の「香料A」には「シンナムアルデヒド」及び「オイゲノール」が含まれていると解することができる。
(2) そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
「シンナムアルデヒド;オイゲノール;およびユーカリプトールを含む矯味剤;およびL-メントール;N-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド;アネトール;ペパーミント油;スペアミント油;コーンミントオイル;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の香味付け剤を含むフレーバー成分;
酸化亜鉛;硫酸亜鉛;塩化亜鉛;クエン酸亜鉛;乳酸亜鉛;グルコン酸亜鉛;マレイン酸亜鉛;酒石酸亜鉛;炭酸亜鉛;リン酸亜鉛;およびそれらの2種以上の組合せから選択される1種以上の亜鉛塩;および
口腔的に許容し得る不活性成分
を含むオーラルケア組成物であって,
ここにフレーバー成分が0.5から2.5重量%の濃度で存在し;該1種以上の亜鉛塩の全体濃度が組成物の0.01から5重量%である組成物。」である点。
・ 相違点
フレーバー成分を構成する各成分の割合について,本願発明は「35から45重量%のL-メントール; 5から8重量%のN-エチル-パラ-メンタン-3-カルボキサミド; 8から12重量%のアネトール; 0.5から0.9重量%のシンナムアルデヒド; 0.5から0.9重量%のオイゲノール; 2から4重量%のユーカリプトール;および 22から27重量%のペパーミント油を含む」と特定するのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しない点。
3 相違点についての判断
(1) 上記2(1)で述べたように,引用発明は,フレーバー成分(N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドを含む。)として,香料A中にL-メントール,アネトール,シンナムアルデヒド,オイゲノール,ユーカリプトール及びペパーミント油を含むものである。
そして,引用発明に含まれる香料素材の配合割合をその使用感などを考慮して適宜に設定することに何ら格別なことはなく,その設定にあたり,香料を構成する各成分の割合を相違点に係る構成とすることは単なる設計事項にすぎない。しかも,本願の明細書をみても,本願発明が相違点に係る構成を有することの技術的意義を何ら見いだすことができない。
(上記2(1)で述べたように,ペパーミント油を構成する成分にはL-メントールやユーカリプトールが含まれる。そうすると,本願発明における,フレーバー成分を構成する各成分の割合についての「35から45重量%のL-メントール; …2から4重量%のユーカリプトール;および 22から27重量%のペパーミント油を含む」との数値範囲の特定は不明確といえそうではあるものの,そもそもフレーバー成分を構成する各成分の配合割合を特定の範囲に設定することに何らの技術上の意義を見いだすことはできないことからすれば,本願発明に上述のような明確でない特定事項が存在するとしても,上述の想到容易性の判断には何ら影響を及ぼさない。)
(2) なお,仮に,引用発明がシンナムアルデヒド,オイゲノール及びユーカリプトールを含むものでないといえるとしても,引用文献1は,口腔用組成物に使用できる香料素材の例として,引用発明において配合されているメントール,アネトール,N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド,ペパーミント油のほか,シンナミックアルデヒド(シンナムアルデヒド),オイゲノール,シネオール(ユーカリプトール)などの各種単品香料を挙げる(【0019】)。
さすれば,引用発明における香料Aの素材として,引用文献1に例示のあるシンナミックアルデヒド(シンナムアルデヒド),オイゲノール,シネオール(ユーカリプトール)も併せて使用することは,当業者であれば想到容易であるといえる。
そして,上述の併用にあたっては,引用発明の香料(香料A及びN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド)の配合割合を設定すべきところ,当該香料を構成する各成分の割合を相違点に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。しかも,本願の明細書をみても,本願発明が相違点に係る構成を有することの技術的意義を何ら見いだすことができないのは,上記(1)でも述べたとおりである。
4 小括
以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
第5 むすび
したがって,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明を主たる引用発明として,この引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2015-019176