特許拒絶査定不服審判
2015-017869
生化学的用途での超低電流測定のためのノイズ遮蔽技術
- 審判番号
- 2015-017869
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-556549外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月01日
- 審決日
- 2017年03月22日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ジニア・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人明成国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G01N) / P18 .536-WY (G01N) / P18 .537-WY (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-556549「生化学的用途での超低電流測定のためのノイズ遮蔽技術」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日国際公開、WO2013/122672、平成27年 3月30日国内公表、特表2015-509658、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月14日(パリ条約による優先権主張 2012年2月14日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成26年12月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年3月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
これに対して、同年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、当審において平成28年8月4日付けで拒絶の理由(以下、「当審最初拒絶理由」という。)が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出され、当審において同年同月25日付けで最後の拒絶の理由(以下、「当審最後拒絶理由」という。)が通知され、平成29年2月21日に意見書及び手続補正書が提出された。
第2 本願発明
本願の請求項1-19に係る発明は、平成29年2月21日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
一体型ノイズシールドを有するデバイスであって、
第1の導電水平層および第2の導電水平層と、
半導体デバイスを実質的に囲む複数の垂直シールド構造であって、前記半導体デバイスは、生物サンプルを検知するためのナノ細孔半導体デバイスを備え、垂直シールド構造は、前記第1の導電水平層および前記第2の導電水平層を接続する垂直ビアを備える、垂直シールド構造と、
前記半導体デバイスの上方にあり、導電性流体で実質的に満たされた開口部と、
前記第1の導電水平層と、前記第2の導電水平層と、前記垂直シールド構造と、を前記導電性流体から絶縁する酸化物層と、を備え、
前記複数の垂直シールド構造および前記導電性流体は、前記半導体デバイスを周囲放射から遮蔽している、デバイス。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表平03-505785号公報
引用文献2:特開2007-047135号公報
引用文献3:特開2011-003584号公報
引用文献4:特開2010-238925号公報
引用文献1には内部電極を囲んで内部電極をシールドする外部電極と電解質溶液で満たされる開口部とを備えるデバイスが記載されており、また、個々の電極を貫通接触体により基板の反対側で接触部に接続することも記載されている。
センサにおける導電性流体に周囲放射に対する遮蔽性を持たせることは引用文献2に記載されており、周囲放射を遮蔽するために基板にシールド層を設けることは引用文献3、4に記載されている。
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
2 原査定の理由の判断
(1) 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は参考のため当審が付与した。)。
(ア) 「1.電極(1,2,3)が1つの基板(5)の上に配設された、電気的に活性な種の電気化学的な計測および生成用のマイクロ多電極構造において、1つの内部電極(1)と少くとも2つの他の電極(2,3)が設けられると共に、内部の電極(1)は参照電極として接続され、他の電極(2,3)は内部電極(1)を投影的に見て基板(5)を少くとも部分的に囲んでいること、を特徴とする、マイクロ多電極構造。」(第1頁左欄第2行-第8行)
(イ) 「マイクロ多電極構造
本発明は、電気的活性の種の電気化学的な測定および成生用の、1つの基板上に複数の電極を配設した、マイクロ多電極構造に関するものである。
微少な量の電気的活性の種の確実な検出および生成用として、従来はまだ適当なマイクロ多電極構造は知られていない。電気的活性の種の測定および生成のための電気化学的プロセスの試験における基本的な問題は、特に生物学の分野において、用いられる陽極あるいは電極材料の適当な表面性質および幾何学的配列を得ることである。一様で、かつ極めて再生性の高い均一な形態学的構成のみが、統一的に経過する電極反応を可能にしており、これが微小な電流の計測や空間的に著しく狭い状態での計測に重要である。
このような応用目的のための小形化された電極は、平方ミクロン領域の表面が、所定の表面材料性質を有する必要がある。生物学領域における計測では、対応する僅かな物質代謝によって電気化学システムが妨害されないようにし、これによって電極にできるだけ小さい電流が流れるようにする必要がある。ポテンショダイナミックな計測では、このようなマイクロ電極構造は、ポテンシャルの上昇速度が100mV/sになると、拡散制御の電流が可能になり、その高さは、ポーラログラフィの場合の現象と同じように、試験される電解質溶液の電気活性の種の濃度に直接に比例する。」(第2頁右上欄第2行-第5行)
(ウ) 「図4および5の構成では、同じように、不活性基板材料5上に個々の電極1~3が設けられ、かつこの場合も、参照電極1は測定電極もしくは作業電極2で同心的に囲まれている。さらに対向電極3がこの測定電極2を囲んでいる。口出し、および接続は、不活性の基板5を貫通する貫通接触体6を用いて行われる。この構成によって、閉じられた電極構造が可能となる。
図6および7による構成の場合は、不活性の基板5の上の構造の中心に参照電極1が取り付けられる。参照電極1は次に絶縁層4で囲まれ、同時にこの絶縁層は、電気的に接触する、概略的に記号15で示す導体路を、詳細に図示していない外部の端子に達するまで絶縁する。この絶縁層4の上には次の工程で、少くとも1つの測定電極2が取り付けられ、この電極と接触導体路も同時に絶縁層4で囲まれるようにする。さらにこの絶縁層4上に、対向電極3が同心状に設けられる。従って、基板5の上方から見ると、内部の電極1が他の電極2および3で囲まれている。これによって、図6に示す構成も、中断されない電極構造を可能にする。
また各電極は互に電気的に絶縁されると共に、口出しを用いて通電され、差込み用の接触に接続されている。このような構成では、内部電極は各外部電極によって準シールドされ、これによって、種々の測定プロセスにおいて、微小な計測量の場合にも、極めてノイズの少い測定が可能となる。」(第4頁左上欄第22行-右上欄第15行)
(エ) 図4及び5には、以下の図面が示されている。
(オ) 図6及び7には、以下の図面が示されている。
イ 引用文献1に記載された発明の認定
引用文献1の上記ア(ア)-(オ)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電解質溶液の電気的に活性な種の電気化学的な計測および生成用のマイクロ多電極構造であって、
不活性の基板5の上の構造の中心に参照電極1が取り付けられ、参照電極1は次に絶縁層4で囲まれ、同時にこの絶縁層は、電気的に接触する導体路を、外部の端子に達するまで絶縁し、この絶縁層4の上には次の工程で、少くとも1つの測定電極2が取り付けられ、この電極と接触導体路も同時に絶縁層4で囲まれるものであり、さらにこの絶縁層4上に、対向電極3が同心状に設けられ、基板5の上方から見ると、内部の電極1が他の電極2および3で囲まれており、これによって、中断されない電極構造を可能にし、また各電極は互に電気的に絶縁されると共に、口出しを用いて通電され、差込み用の接触に接続されており、このような構成では、内部電極は各外部電極によって準シールドされ、これによって、種々の測定プロセスにおいて、微小な計測量の場合にも、極めてノイズの少い測定が可能となる、
マイクロ多電極構造。」
(2) 本願発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「マイクロ多電極構造」は、本願発明の「デバイス」に相当し、引用発明の「内部電極」が「各外部電極によって準シールドされ」た「極めてノイズの少い測定が可能となる」「マイクロ多電極構造」は、上記(1)ア(オ)の図面を参酌すれば、一体的に形成されたものであることが明らかであるから、本願発明の「一体型ノイズシールドを有するデバイス」に相当する。
(イ) 引用発明の「参照電極1」及び「対向電極3」は、上記(1)ア(オ)の図面を参酌すれば、「基板5の上」に水平層として形成されたものであることが明らかであるから、本願発明の「第1の導電水平層」及び「第2の導電水平層」にそれぞれ相当する。
(ウ) 引用発明の「マイクロ多電極構造」を構成する「電気的に活性な種」を「計測」するための「測定電極2」は、「内部の電極1」、すなわち「参照電極1」を「囲」むものであり、上記(1)ア(オ)の図面も参酌すれば、同心状であり中心に細孔が形成された構造といえるから、引用発明の当該「測定電極2」と、本願発明の「生物サンプルを検知するためのナノ細孔半導体デバイス」とは、「サンプルを検知するための細孔デバイス」という点で共通する。
そして、引用発明の「参照電極1」である「内部電極」は、「測定電極2」及び「対向電極3」による「各外部電極によって準シールド」されるものであって、「測定電極2」を「同心状」に「囲」む「対向電極3」も、同様に、「測定電極2」を「準シールド」することになるのは明らかであるから、引用発明の「測定電極2」を「囲」む「準シールド」のための「対向電極3」からなる構造と、本願発明の「半導体デバイスを実質的に囲む複数の垂直シールド構造であって、前記半導体デバイスは、生物サンプルを検知するためのナノ細孔半導体デバイスを備え、垂直シールド構造は、前記第1の導電水平層および前記第2の導電水平層を接続する垂直ビアを備える、垂直シールド構造」とは、「細孔デバイスを実質的に囲むシールド構造であって、前記細孔デバイスは、サンプルを検知するための細孔デバイスを備える、シールド構造」という点で共通する。
(エ) 引用発明の「電解質溶液」は、本願発明の「導電性流体」に相当する。
そして、引用発明の「マイクロ多電極構造」は、上記(1)ア(オ)を参酌すれば、「測定電極2」の上方に開口部が存在し、ここに「計測」対象である「電解質溶液」が満たされるものであることが明らかであるから、引用発明の当該開口部と、本願発明の「前記半導体デバイスの上方にあり、導電性流体で実質的に満たされた開口部」とは、「前記細孔デバイスの上方にあり、導電性流体で実質的に満たされた開口部」という点で共通する。
(オ) 引用発明の「参照電極1」を「囲」む「絶縁層4」、及び、「対向電極3」が「設けられ」る「絶縁層4」からなる層と、本願発明の「前記第1の導電水平層と、前記第2の導電水平層と、前記垂直シールド構造と、を前記導電性流体から絶縁する酸化物層」とは、「前記第1の導電水平層と、前記第2の導電水平層と、を絶縁する層」という点で共通する。
(カ) 引用発明の「準シールド」は、「種々の測定プロセスにおいて、微小な計測量の場合にも、極めてノイズの少い測定が可能となる」ものであって、周囲放射のノイズに対するシールドを行うものであることは明らかであるから、引用発明の「対向電極3」が、「測定電極2」を「囲」み、「準シールド」を行うことと、本願発明の「前記複数の垂直シールド構造および前記導電性流体は、前記半導体デバイスを周囲放射から遮蔽している」こととは、「前記シールド構造は、前記細孔デバイスを周囲放射から遮蔽している」という点で共通する。
(キ) したがって、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「一体型ノイズシールドを有するデバイスであって、
第1の導電水平層および第2の導電水平層と、
細孔デバイスを実質的に囲むシールド構造であって、前記細孔デバイスは、サンプルを検知するための細孔デバイスを備える、シールド構造と、
前記細孔デバイスの上方にあり、導電性流体で実質的に満たされた開口部と、
前記第1の導電水平層と、前記第2の導電水平層と、を絶縁する層と、を備え、
前記シールド構造は、前記細孔デバイスを周囲放射から遮蔽している、デバイス。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「細孔デバイス」について、本願発明は、「生物サンプル」を検知するための「ナノ」細孔「半導体」デバイスであるのに対して、引用発明は、「電解質溶液」を検知するための「マイクロ」多電極構造としての細孔デバイスである点。
(相違点2)
「シールド構造」について、本願発明は、「半導体デバイスを実質的に囲む複数の垂直シールド構造」であって、「垂直シールド構造は、前記第1の導電水平層および前記第2の導電水平層を接続する垂直ビアを備える」ものであるのに対して、引用発明は、「対向電極3」がシールド構造を兼ねているのみであり、垂直ビアを有していない点。
(相違点3)
「絶縁する層」について、本願発明は、「前記第1の導電水平層と、前記第2の導電水平層と、前記垂直シールド構造と、を前記導電性流体から絶縁する酸化物層」であるのに対して、引用発明は、「参照電極1」と「対向電極3」を絶縁しているものの、「垂直シールド構造」を絶縁するものではなく、また、「酸化物層」であるのか不明である点。
(相違点4)
「細孔デバイスを周囲放射から遮蔽」することについて、本願発明は、「複数の垂直シールド構造」と「導電性流体」により遮蔽を行うものであるのに対して、引用発明は、「対向電極3」により遮蔽を行うものである点。
イ 判断
上記(相違点2)を検討する。
引用文献1の上記(1)ア(ウ)及び(エ)には、本願発明である上記(1)ア(ウ)及び(オ)の実施例とは別の実施例として、「基板5を貫通する貫通接触体6」を用いて、各電極の「口出し、および接続」を行うことが記載されている。しかしながら、この「貫通接触体6」は、垂直方向に延びているものの、各電極を垂直方向に接続するものではないし、シールドを行うものかどうかも明らかでない。したがって、引用発明において、引用文献1の上記(1)ア(ウ)及び(エ)に記載された「貫通接触体6」に関する構成を採用しても、上記(相違点2)の構成とはならない。
また、引用文献2(段落[0020])には、ゲル状物質により、電極外部から侵入する背景ノイズを遮蔽することが記載され、引用文献3(段落[0027]、図4)には、スタックビアによって囲まれた領域内に電磁ノイズが侵入することを抑制することが半導体装置が記載され、引用文献4(段落[0016])には、第1シールド層の下層に第2シールド層を設けてノイズの抑制や遮断効果を一層向上させることが記載されているものの、引用文献2、4には、上記(相違点2)に関する構成は記載されていない。また、引用文献3は、生物サンプルを検知するデバイスに関するものではないし、引用発明が半導体デバイスといえるものではないから、引用発明において、引用文献3に記載の半導体装置に関する技術を採用する動機がない。
さらに、本願発明に関連する周知技術を示す特開2004-258018号公報(以下、「周知文献1」という。)及び国際公開第2011/097028号(以下、「周知文献2」という。)に鑑みても、周知文献1には、複数の導電性トラックを絶縁性二酸化ケイ素33の領域中に形成する周知技術が記載され(段落[0032]、図7)、周知文献2には、生物サンプルを検知するための従来周知のナノ細孔デバイスが記載されているのみであり(CLAME 1、FIG.1)、上記(相違点2)に関する構成は記載されていない。
したがって、引用発明において、引用文献2-4に記載された事項及び周知技術を採用しても、上記(相違点2)に関する構成とはならない。
そして、引用発明において、上記(相違点2)に関する構成を採用することが単なる設計的事項ともいえない。
ウ 小括
よって、本願発明は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が引用発明、引用文献2-4に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願請求項2-12に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献2-4に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願請求項13に係る発明は、デバイスに関する本願発明を方法に関する発明として表現し直したものであって、本願発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献2-4に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願請求項14-19に係る発明については、本願請求項13に係る発明をさらに限定したものであるから、本願請求項13に係る発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献2-4に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1 当審最初拒絶理由の概要
(1) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
発明の詳細な説明には、「ナノ細孔膜デバイスを用いた分子の特性評価」において、「ナノ細孔を通るイオン電流の大きさ」が「数十ないし数百ピコアンペア(pA)のオーダー」と非常に小さく、この「低レベル電流の任意の変化を検出することは、非常に困難」であることを課題とし(段落[0010]-[0011])、当該課題を解決する手段として、「ナノ細孔デバイス」を「バイオセンサ半導体」として構成し、当該「バイオセンサ半導体」の測定電極の周囲を各種シールド構造で遮蔽することしか実質的に記載されていない(段落[0013]-[0035])。
しかしながら、本願の請求項1には「半導体デバイス」と記載されているのみで、「ナノ細孔デバイス」を「バイオセンサ半導体」として構成するという上記課題解決手段が反映されていない。
請求項2-19においても同様である。
したがって、請求項1-19に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
(2) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
ア 請求項1において、「導電性流体」と生物サンプル等の測定対象物との関係が不明である。
イ 請求項11において、「コンデンサを形成」する「前記酸化物層」が、請求項1に記載された「垂直シールド構造」を「導電性流体から絶縁」するための「酸化物層」を意図しているのか、請求項11に記載された「2以上の導電水平層の間の酸化物層」を意図しているのかが、不明確である。
ウ 請求項2-19は、上記アと同様の記載不備を有している。
したがって、請求項1-19に係る発明は、明確でない。
(3) この出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
発明の詳細な説明には、「ナノ細孔デバイス」としての「測定電極204」が記載されているが、図2を参照すると、当該「測定電極204」は「導電層206B」の上に直接形成されているように視認される。
ナノ細孔型(いわゆるナノポア型)DNAシーケンサの技術分野において、「ナノ細孔」は、DNA分子がその細孔を上下に通過できるように構成される必要があることが技術常識であるところ、本願の「測定電極204」(ナノ細孔)は、その直下に「導電層206B」が形成されているため、DNA分子がどのようにナノ細孔を上下に通過することになるのかが不明である。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、請求項1-19に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
2 当審最後拒絶理由の概要
(1) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
発明の詳細な説明には、「ナノ細孔膜デバイスを用いた分子の特性評価」において、「ナノ細孔を通るイオン電流の大きさ」が「数十ないし数百ピコアンペア(pA)のオーダー」と非常に小さく、この「低レベル電流の任意の変化を検出することは、非常に困難」であることを課題とし(段落[0010]-[0011])、当該課題を解決する手段として、「ナノ細孔デバイス」の測定電極の周囲を各種シールド構造で遮蔽することしか実質的に記載されていない(段落[0013]-[0035])。
しかしながら、本願の請求項1には、補正で追加された「バイオセンサ半導体デバイス」が「ナノ細孔デバイス」を含むものであることが特定されていないため、デバイスの全体構造が特定できず、上記課題を有するデバイスであることが明らかでない。本願の請求項2-8、10-18においても、同様である。
したがって、請求項1-8、10-18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
(2) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
ア 請求項1の「前記第1の導電水平層と前記垂直シールド構造とを前記導電性流体から絶縁する酸化物層と、を備え」との記載では、「第2の導電水平層」が「酸化物層」により「前記導電性流体から絶縁」されることになるのかどうか、不明である。
また、請求項1の「第1の導電水平層」と「第2の導電水平層」が、それぞれ、図2のM5の導電層とM6の導電層のどちらを意図したものであるのかも、請求項1の記載では不明であるし、「第2の導電水平層」を絶縁せずに、「第1の導電水平層」を絶縁するとした請求項1に記載の技術的意味も、不明でもある。
請求項13も同様である。
イ 請求項2-12、14-19は、上記アと同様の記載不備を有している。
したがって、請求項1-19に係る発明は、明確でない。
3 当審最初拒絶理由及び当審最後拒絶理由の判断
平成29年2月21日付けの手続補正書によって、請求項1及び13において、「生物サンプルを検知するためのナノ細孔半導体デバイス」を含むことが特定され、「生物サンプル」と「導電性流体」がそれぞれ特定され、「酸化物層」が「第1の導電水平層」と「第2の導電水平層」と「垂直シールド構造」とを「導電性流体から絶縁する」ことが特定され、請求項11において、「第2の導電水平層」と「第3の導電水平層」の間で「コンデンサを形成」することが特定された。また、平成28年11月8日付けの意見書において、請求項1は、「生物サンプル」を検知対象とするものであって、「電解質濃度を測定するセンサ」は含まれないこと、及び、「ナノ細孔」と「電極」の構造について釈明がなされた。
したがって、当審最初拒絶理由及び当審最後拒絶理由はいずれも解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由、当審最初拒絶理由及び当審最後拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-017869