特許拒絶査定不服審判
2015-015759
被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた媒体の分析用のデバイス
- 審判番号
- 2015-015759
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-552935外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年08月26日
- 審決日
- 2017年03月01日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (A61B) / P18 .537-WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-552935「被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた媒体の分析用のデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月10日国際公開、WO2010/101621、平成24年 8月23日国内公表、特表2012-519051、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年3月2日(パリ条約による優先権主張 2009年3月2日 米国(US)、2009年11月3日 米国(US)、2010年1月13日 米国(US)、2009年6月24日 米国(US)、2009年3月26日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成26年5月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
これに対して、同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、当審において平成28年6月9日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出された。
第2 本願発明
本願の請求項1-27に係る発明は、平成28年12月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-27に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「 【請求項1】
被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた体液の分析用のデバイスであって、該デバイスは、
該被検体の該皮膚の上に接触して設置されるように構築および配設される支持構造と、
アクセス部位における該被検体の該皮膚から、および/または該皮膚の下から該体液にアクセスする、該支持構造と関連付けられる1本以上の極微針と、
該アクセス部位の少なくとも一部分において大気圧に対する負圧を生成することが可能である圧力調節器であって、該圧力調節器は、該デバイスが該皮膚に適用される前に大気圧よりも小さい内圧を有する、製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバを備える、圧力調節器と、
該被検体からの該体液の少なくとも1つの状態を決定するセンサと、
該センサによって決定される該体液の該状態に関する信号を発生させる信号発生器と
を備え、
該支持構造は、該1本以上の極微針を該皮膚と接触させるよう移動させ、そして該皮膚との接触後に該1本以上の極微針を該皮膚から後退させるように構築および配設される、
デバイス。」
第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願(優先権主張日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先権主張日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:国際公開第2009/011138号
引用文献2:国際公開第2007/108519号
引用文献3:実願平4-13663号(実開平5-63506号)のCD-ROM
引用文献4:特開平7-255706号公報
引用文献5:特開2004-8413号公報
引用文献6:特表2009-504273号公報
引用文献7:特開2005-211189号公報
引用文献8:特表2005-525141号公報
本願発明は、引用文献1又は2に記載された発明及び引用文献3-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
2 原査定の理由の判断
原査定において主引例とされている引用文献1又は2において、引用文献2の方が本願発明に技術的に近い文献であるため、引用文献2を主引例として以下検討する。
(1) 引用文献の記載事項、及び、引用文献に記載された発明
ア 引用文献2の記載事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている(下線は参考のため当審が付与した。)。
(ア) 「[0001] 本発明は、血液の成分検査などに用いる血液検査装置に関する。」
(イ) 「[0011] 本発明の血液検査装置は、開口部を有する本体;前記開口部に保持された血液センサ;前記本体内部に設けられた、皮膚を穿刺する穿刺手段;前記血液センサに接続された電気回路部;および前記電気回路部に電気を供給する電源部を備える。穿刺手段は、針であっても、レーザであっても構わない。血液センサは、装置本体に着脱可能な血液センサユニットの一部材とされる。
前記血液センサユニットは、穿刺対象である皮膚と接触する部位を有する。皮膚と接触することにより、血液センサユニットの内部空間が塞がれることが好ましい。
[0012] さらに本発明の血液検査装置は負圧手段を有していてもよい。前述の通り血液センサユニットの内部空間は、穿刺対象である皮膚によって塞がれるので、皮膚で塞がれた血液センサユニットの内部を負圧手段が負圧することができる。負圧により、穿刺対象である皮膚が吸引されうる。
[0013] 針穿刺の血液検査装置の全体
本発明の血液検査装置は、穿刺手段として針を用いてもよい。針を穿刺手段とする装置の一例を図1に示す。図1は血液検査装置220の断面図である。血液検査装置220は、樹脂で形成されたハウジング221を有する。ハウジング221は装置の枠体であって、装置の主要部材を収納する。ハウジング221には、電気回路232が収納される。電気回路232は、血液センサ42 (後述)での血液成分の検出結果を受信して当該血液成分を測定する。
[0014] ハウジング221の一方(図中右上)は、装着部221aとされている。装着部221aの端から、血液センサユニット222が挿入される。詳細は後述するが、血液センサユニット222は、ホルダ223;ホルダ223の内部に装着された血液センサ42;ホルダ223 の内部を自在に滑動できるランセット225;ランセット225の端部に装着された採血針226を有する。血液センサ42は検査電極と、検査電極に接続された接続電極を含む (後述)。接続電極には、コネクタ227が接触する。
[0015] 血液センサユニット222の一部材であるランセット225の一方端の近傍に形成された被把持部225fは、装着部221aの内部を滑動するプランジャ230の一方に設けられた把持部230aに把持される。プランジャ230の把持部230aが、ランセット225の被把持部225fを把持することにより、採血針226で皮膚を穿刺するときに、採血針226がぶれずに直進性がよくなり、安定して採血針226を皮膚に穿刺することができる。
[0016] プランジ230は、クランク形状をしたハンドル231に連結されている。ハンドル231の端231bには係止凸部231cが形成されている。ハンドル231はハウジング221に 形成された孔221cを通り、係止凸部231cが係止凹部221dと嵌合することにより係止する。係止を解除すると、パネ240に付勢されたプランジャ230が、穿刺針226を有するランセット225を押し出す。
[0017] ハウジング221には電気回路232に電源を供給する電源部234も収納される。さらに負圧手段282も収納され、負圧手段282は負圧路283を介して血液センサユニット222の内部を負圧することができる。 」
(ウ) 「[0025] 血液センサについて
本発明の血液検査装置は、穿刺された皮膚から流出した血液を取り込み、その血液成分などを検査するための血液センサを有する。血液センサは、血液センサユニットの内部に配置される。
[0026] 図5は、血液センサの第一の例の断面図が示される。図5に示される血液センサ42-1は、外形形状が円形である。血液センサ42を構成する基体45は、基板46;基板46の上面に貼り合わされたスぺーサ47;スぺーサ 47の上面に貼り合わされたカバー48で構成される。
[0027] 基体45の略中央に、血液の貯留部49が設けられる。貯留部49は、基板46に設けられた孔46aと、スぺーサ47に設けられた孔47aとが連通して形成される。貯留部49 は、皮膚からの血液を採取するため、下方 (皮膚が配置される側)に向かって開口している。貯留部49の容積は特に限定されないが、例えば 0.904μLとすればよい。 貯留部49には、供給路50の一方の端が連結される。供給路50の容積は特に限定されないが、例えば 0. 144μLとすればよい。供給路50の内部には検出部51が配置される。
[0028] 貯留部49に溜められた血液は毛細管現象で供給路50に浸入し、検出部51に導 かれる。供給路50の他端は空気孔52に連結されている。空気孔52の直径は、50μm程度とすればよい。空気孔52の直径を小さくすれば、空気孔52からの血液の過剰な流出が抑えられる。また負圧手段が血液センサユニットの内部を負圧する場合には、貯留部49の内部も、皮膚が密着した状態において、空気孔52を介して負圧される。
[0029] 検出部51上に載置された試薬53は、検査対象に応じて適宜調製すればよい。例 えば、0. 01~2. Owt%CMC (カルボキシルメチルセルロース)水溶液に、酵素PQQ-GDH)を 0. 1~5.0U/センサ;フェリシアン化カリウムを10~200mM;マルチトールを l~50mM;タウリンを 20~200mMとなるように添加して溶解させて調製した試薬溶液を、基板46に配置された検出部上に滴下して、乾燥させて試薬53とする。
[0030] 血液センサ42-1の貯留部49は、面49a (「天面」ともいう)で封鎖されている。したがって穿刺手段として針を用いる場合には、針でカバー48を穿孔して皮膚を穿刺すればよい。」
(エ) 「[0078] 血液センサユニットについて
血液センサは、装置本体に着脱可能な血液センサユニットに含まれていることが好ましい。つまり、血液センサは血液センサユニットの一部材として装置本体に交換可能である。
[0079] 穿刺手段が針の血液センサユニットについて
穿刺手段として針を用いた血液検査装置の血液センサユニットには、血液センサに加えて、針などを含むことが好ましい。
図12は、穿刺手段として針を用いた血液検査装置(図 1参照)の血液センサユニット222の一例の分解斜視図である。図12に示される血液センサユニット222は、第二のホルダ238とホルダ223と血液センサ42とランセット225と採血針226とを有する。ランセット225と採血針226は、容易に分離しないように一体的に形成されるが;一方、ホルダ223とランセット225は、それぞれ別個に製造された後に一体化されてもよく、互いに分離可能でありうる。第二のホルダ238の先端238aに、穿刺される皮膚が配置される。後述の通り、先端238aには吸収手段が配置される。
[0080] 図1にはプランジャ230が後方へ引き込まれた状態が示され、採血針226は血液センサユニット222の内部にある。つまり穿刺前の状態を示している。患者の皮膚を穿刺するには、後方に引き込まれたプランジャ230を前方へ突出させ、採血針226を血液センサ42から突出させる。穿刺後にプランジャ230は再び後方へ引き込まれ、採血針226を血液センサユニット222内に収納する。プランジャ230が前方へ突出した状態を除いて、採血針226は血液センサユニット222内に収納されている。よって、採血針226で皮膚を誤って刺すことはなく安全である。また、患者に恐怖心を与えることもない。」
(オ) 図1には、以下の図面が示されている。
(カ) 図12には、以下の図面が示されている。
イ 引用文献2に記載された発明の認定
引用文献2の上記ア(ア)~(カ)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「血液の成分検査などに用いる血液検査装置であって、
血液検査装置220は、樹脂で形成されたハウジング221を有し、ハウジング221は装置の枠体であって、装置の主要部材を収納するものであり、ハウジング221には、電気回路232が収納され、電気回路232は、血液センサ42での血液成分の検出結果を受信して当該血液成分を測定するものであり、ハウジング221の一方は、装着部221aとされており、装着部221aの端から、血液センサユニット222が挿入され、
血液センサユニット222は、ホルダ223;ホルダ223の内部に装着された血液センサ42;ホルダ223の内部を自在に滑動できるランセット225;ランセット225の端部に装着された採血針226を有し、
ハウジング221には電気回路232に電源を供給する電源部234も収納され、さらに負圧手段282も収納され、負圧手段282は負圧路283を介して血液センサユニット222の内部を負圧することができるものであり、
前記血液センサユニットは、皮膚と接触することにより、血液センサユニットの内部空間が塞がれ、皮膚で塞がれた血液センサユニットの内部を負圧手段が負圧することができ、負圧により、穿刺対象である皮膚が吸引されるものであり、さらに、血液センサユニット222は、第二のホルダ238を有し、第二のホルダ238の先端238aに、穿刺される皮膚が配置され、患者の皮膚を穿刺するには、後方に引き込まれたプランジャ230を前方へ突出させ、採血針226を血液センサ42から突出させ、穿刺後にプランジャ230は再び後方へ引き込まれ、採血針226を血液センサユニット222内に収納するものである、
血液検査装置。」
ウ 引用文献3の記載事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。(下線は参考のため当審が付与した。)
(ア) 「 【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、簡易採血器に関する。」
(イ) 「【0005】
本考案の特徴は次の通りである。
生体皮膚表面局所に対し、集中的に減圧吸引を行なう。局所減圧吸引と共に、皮膚表面内部は充血し表皮の膨大・盛り上がりが生ずる。この盛り上がった皮膚は、予め所定の位置に設置された穿刺手段と接触する。盛り上がった皮膚は十分膨張状態にある為、穿刺手段は皮膚(表皮)を容易に刺通する。穿刺手段が皮膚を刺通すると内部の充血した血液が吸出され、採血が行なわれる。局所的に吸引を行なう為、穿刺手段が皮膚を刺通しても瞬時であり且つ吸引による刺激と相殺される為に痛みを感じることがない。また充血状態で穿刺・切開手段が刺通・切開する為、血液を無痛で確実に採血できるものである。
本考案で示す減圧室とは、生体皮膚表面を吸引する為の手段であり、機械的乃至化学的に減圧行為を行なうもの等が例示され、特に限定されるものではないが、気密材により予め減圧状態に成形されたアンプル乃至カセット状物等も例示できる。また、穿刺・切開手段とは、針、中空針、側面が鋸波状の針、鍼灸用針微細刃等々が複数乃至単数例示されるものである。
穿刺・切開手段の長さは、数100(μm)乃至数(mm)程度が好ましいが特に限定されない。また、その配置構造は吸引部中央部あるいはその周縁部に配置され、減圧吸引による表皮の膨張運動を利用して無痛・効果的に表皮穿通・切開可能なものであれば足りる。
【0006】
【実施例】
図1は本考案の一実施例を示す図である。
(11)は減圧室であり、減圧駆動部を内蔵している。減圧室(11)の上部にスイッチ(16)が設けられており、このスイッチ(16)を押すことにより、減圧動作を行なうものである。
(100)は孔部であり、減圧室の底部に複数乃至単数穿設されている。
(12)は穿刺手段であり、微細針より形成されており、減圧室(11)の底部、孔部(100)の近傍に設置されている。
(13)は、支持部材であり、柔軟性を有するプラスチック、ゴム、紙等の素材で同心円筒フィルム状に形成され、減圧室が支持部材(13)の同心部略中央付近周縁上部と接合している。
(14)は粘着剤であり、主に絆創膏に使用される素材等生体と反応しない素材が使用されている。粘着剤(14)は、支持部材(13)の底部の外周縁面に配設されている。
(15)はストッパーであり、減圧時、支持部材(13)の伸縮を押さえると共に、皮膚の盛り上がりを助長させるものである。ストッパー(15)は、支持部材(13)の底部同心略中央周縁下部に配設されている。素材は、皮膚との摩擦を大きくさせる為、ゴムやプラスチック等が好ましい。
(17)は吸引部であり、支持部材(13)の同心内側面及び穿刺手段(12)及び孔部(100)を含む減圧室底部に覆われる様にして形成された部分である。」
(ウ) 図1には、以下の図面が示されている。
エ 引用文献4の記載事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。(下線は参考のため当審が付与した。)
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、簡易採血装置に関する。」
(イ) 「【0008】図2は、本発明のより具体的な実施例を示す図である。(1)は穿刺針であり、上述した長さ、太さ等を有するものである。(2)は穿刺針用支持体であり、磁性材よりなる。穿刺針用支持体(2)は穿刺針(1)と結合し、穿刺針(1)との結合面に対し、反対の面(21)の極が、例えば(+)極を有するものとする。(3)は摺動用筐体であり、底部に穿刺針用孔(31)両側面に通気用孔(32)(33)が電磁石ユニット(5)よりに設けられている。摺動用筐体(3)の内部には、穿刺針用支持体(2)が収容され、摺動空間(34)を上下に摺動可能となっている。穿刺針用支持体(2)が上下に摺動することにより、穿刺針(1)も連動して上下に摺動可能となっている。(4)は弁体であり、摺動用筐体(3)の側面に形成された通気用孔(32)(33)の上下に摺動することにより行うものである。弁体(4)は、電磁石ユニット(5)をまたぐ様に配置され、そのまたぐ部分(連結部(41))は磁性を有する。その磁性を例えば電磁石ユニット(5)に対向する面を(+)極とするものである。(5)は電磁石ユニットであり、外部からの電気エネルギーによって(51)と(52)の部分が磁化する。(51)が(+)極である時は(52)が(-)極、及びその逆といった具合である。(6)は制御ユニットであり、乾電池、ボタン電池、2次電池等の電気エネルギー供給源、及び電磁石ユニットの極性を調整する電気回路、穿刺針を抜くタイミングを計るマイコンを含む演算回路等よりなる。(7)は減圧室であり、皮膚表面との接触面を形成する。減圧室(7)の周縁は第1接触体(8)と第2接触体(9)の2重の凸起が形成され、第1接触体(8)は、第2接触体(9)よりも高くなるように設定されている。(10)は減圧連絡路であり、減圧室(7)と減圧手段(12)とを連結するものであって、電磁石ユニット(5)、弁体(4)の摺動用筐体(3)の周辺を含む様に形成されている。(11)は減圧弁であって自動乃至手動で開閉する弁である。(12)は減圧手段であって、減圧管、若しくは動力源を有する減圧ポンプ等によって形成されている。これらの構成部を含む全体(001)の大きさは、手持ち使用ができる程度である。尚減圧手段、駆動手段の大きさによっては、更に小さく或は、採血に時間を要する場合等は、卓上程度の大きさとなる場合もある。」
(ウ) 図2には、以下の図面が示されている。
オ 引用文献5の記載事項
引用文献5には、以下の事項が記載されている。(下線は参考のため当審が付与した。)
(ア) 「【0001】
【産業状の利用分野】
本発明は、実質無痛で、皮膚から血液を採取可能な簡易採血器に関する。」
(イ) 「【0011】
【実施例】
本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
1は、減圧室形成体であり、半球状のドーム型であり、この場合は、直径22mm、高さ12mmである。2は、穿刺用針であり、長さ(L2)4mm(場合によっては3mm) 太さ (L3 )0.81mm (場合によっては0.3mm )程度のもので、針先は(a)、(b)で示すようなものが好適に利用される。
穿刺用針の周辺は、図1(c)で示すように同心円状に連結部吸引口4が形成される。
3は、減圧体であり、減圧空間が 2500mm3位の大きさで形成されている。
5は、減圧体3と、減圧室形成体1を連結する連結部7に設けられた連結開閉部であり、外部操作入力部8により、開閉の程度を調整できる他、減圧室形成体1と、減圧体3との接続を、減圧室形成体1と開閉口6との間の接続に切り替えることを可能とする。この部分を、瞬間に開くことにより、減圧状態が、減圧室形成体1に素早く伝達し、皮膚と、減圧室形成体の間に形成された空間を1秒以内に十分な穿刺が行われる。その後、減圧を解除して、穿刺状態を解除する。」
(ウ) 図1(a)には、以下の図面が示されている。
カ その他の引用文献として、引用文献1には、「穿刺装置、血液検査装置及び穿刺方法」に関する事項が記載されており、引用文献6には、「体内流体監視用一体型検査システム」に関する事項が記載されており、引用文献7には、「採血装置」に関する事項が記載されており、引用文献8には、「微細針輸送装置」に関する事項が記載されている。
(2) 本願発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「血液」は、本願発明の「体液」に相当し、引用発明の「採血針226」で「皮膚」を「穿刺」する「血液の成分検査などに用いる血液検査装置」は、本願発明の「被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた体液の分析用のデバイス」に相当する。
(イ) 引用発明の「穿刺される皮膚が配置され」る「血液センサユニット222」の「第二のホルダ238」、「血液センサユニット222」の「ホルダ223」、及び、当該「血液センサユニット222」を保持する「ハウジング221」からなる支持のための構造は、引用発明の「該被検体の該皮膚の上に接触して設置されるように構築および配設される支持構造」に相当する。
(ウ) 引用発明の「採血針226」が「皮膚」に「穿刺」する部位は、本願発明の「アクセス部位」に相当する。
そして、引用発明の「採血針226」は、「ホルダ223の内部を自在に滑動できるランセット225」の「端部に装着された」ものであって、「ホルダ223」と関連付けられたものといえるから、引用発明の当該「採血針226」と、本願発明の「アクセス部位における該被検体の該皮膚から、および/または該皮膚の下から該体液にアクセスする、該支持構造と関連付けられる1本以上の極微針」とは、「アクセス部位における該被検体の該皮膚から、および/または該皮膚の下から該体液にアクセスする、該支持構造と関連付けられる1本以上の針」という点で共通する。
(エ) 引用発明の「負圧手段」は、「皮膚で塞がれた血液センサユニットの内部」を「負圧」にするものであり、この「負圧」が、大気圧に対しての「負圧」であることは明らかであるから、引用発明の当該「負圧手段」と、本願発明の「該アクセス部位の少なくとも一部分において大気圧に対する負圧を生成することが可能である圧力調節器であって、該圧力調節器は、該デバイスが該皮膚に適用される前に大気圧よりも小さい内圧を有する、製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバを備える、圧力調節器」とは、「該アクセス部位の少なくとも一部分において大気圧に対する負圧を生成することが可能である圧力調節器」という点で共通する。
(オ) 引用発明の「血液成分を測定する」ための「血液センサ42」は、本願発明の「該被検体からの該体液の少なくとも1つの状態を決定するセンサ」に相当する。
(カ) 引用発明の「血液センサ42での血液成分の検出結果を受信して当該血液成分を測定する」ための「電気回路232」は、本願発明の「該センサによって決定される該体液の該状態に関する信号を発生させる信号発生器」に相当する。
(キ) 引用発明は、「患者の皮膚を穿刺する」際に、「後方に引き込まれたプランジャ230を前方へ突出させ、採血針226を血液センサ42から突出させ、穿刺後にプランジャ230は再び後方へ引き込まれ、採血針226を血液センサユニット222内に収納するもの」であるから、引用発明の「採血針226」を直接又は間接的に支持する「ホルダ223」、「第二のホルダ238」及び「ハウジング221」からなる構造が、「プランジャ230」を介して「採血針226」を移動させる構成と、本願発明の「該支持構造は、該1本以上の極微針を該皮膚と接触させるよう移動させ、そして該皮膚との接触後に該1本以上の極微針を該皮膚から後退させるように構築および配設される」こととは、「該支持構造は、該1本以上の針を該皮膚と接触させるよう移動させ、そして該皮膚との接触後に該1本以上の針を該皮膚から後退させるように構築および配設される」という点で共通する。
(ク) したがって、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた体液の分析用のデバイスであって、該デバイスは、
該被検体の該皮膚の上に接触して設置されるように構築および配設される支持構造と、
アクセス部位における該被検体の該皮膚から、および/または該皮膚の下から該体液にアクセスする、該支持構造と関連付けられる1本以上の針と、
該アクセス部位の少なくとも一部分において大気圧に対する負圧を生成することが可能である圧力調節器と、
該被検体からの該体液の少なくとも1つの状態を決定するセンサと、
該センサによって決定される該体液の該状態に関する信号を発生させる信号発生器と
を備え、
該支持構造は、該1本以上の針を該皮膚と接触させるよう移動させ、そして該皮膚との接触後に該1本以上の針を該皮膚から後退させるように構築および配設される、
デバイス。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「針」について、本願発明は「極微」針あるのに対して、引用発明はそのような構成を有するものか不明である点。
(相違点2)
「圧力調節器」について、本願発明は、「該デバイスが該皮膚に適用される前に大気圧よりも小さい内圧を有する、製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバを備える」ものであるのに対して、引用発明は、そのような構成を有するものか不明である点。
イ 判断
上記(相違点2)を検討する。
針で皮膚を穿刺することで皮膚下の血液を採取するための皮膚の吸引手段として、引用文献3には、「予め減圧状態に成形された」「減圧室」が記載され、引用文献4には、「減圧管」で形成された「減圧手段」が記載され、引用文献5には、「減圧体」がそれぞれ記載されているものの、引用文献5の「減圧体」は、上記(1)オの引用文献5の記載事項から、本願発明の「製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバ」とはいえないものである。
さらに、引用文献3の「予め減圧状態に成形された」「減圧室」、及び、引用文献4の「減圧管」で形成された「減圧手段」は、「製造時に真空排気され」、「事前同梱」されたものかどうかは不明であり、仮に、本願発明の「製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバ」に相当するとしても、引用発明は、上記(1)ア(エ)の段落[0078]に、「血液センサは血液センサユニットの一部材として装置本体に交換可能である」と記載されているように、デバイスの製造後に、穿刺及び測定を複数回繰り返すことを前提としたものであって、負圧手段もまた、繰り返し真空状態を形成する必要があるものであることは明らかであるから、引用発明において、「製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバ」を採用するには動機がない。
また、引用文献1、6-8には、「製造時に真空排気された事前同梱真空チャンバ」に関する事項は記載されていない。
したがって、引用発明において、上記(相違点2)の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 小括
よって、本願発明は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が引用発明、引用文献1、3-8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願請求項2-26に係る発明についても、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献1、3-8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願請求項27に係る発明は、実質的に、本願請求項1の表現を変えただけのものであって、本願請求項27に係る発明と引用発明を対比すると、両者は、上記(相違点1)及び(相違点2)と同じ相違点を有するから、本願請求項27に係る発明も、本願発明と同様に、当業者が引用発明、引用文献1、3-8に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
(1) 請求項1には、「被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から引き抜かれた媒体」と記載されているが、「媒体」との記載では「血液などの体液」以外の固体等を含むことになり、発明が不明確である。
(2) 請求項1には、「該被検体の皮膚に近接して設置されるように構築および配設される支持構造」と記載されているが、この記載の後には、「圧力調整器」により「支持構造」と「皮膚」との間で「圧力差を形成」することが特定されている。ここで、皮膚に接することなく「近接」するのみでは、「支持構造」と「皮膚」の間が大気圧である外部と連通する状態を含むことになり、「圧力差」が形成されることにならないため、発明が不明確である。
(3) 請求項1には、「初期の圧力差を形成するための作動を要求することなしに、…圧力差を生成することが可能である圧力調節器」と記載されているが、まず「初期の圧力差を形成するための作動」が具体的に何を意図しているのか不明確である。特に「作動」の意図する技術的事項が明確でない。また、「初期の圧力差を形成するための作動を要求することなしに」という否定的な記載では、「作動を要求すること」をせずに、具体的に何をすることを意味するのかが明確とならない。
(4) 請求項1の「該皮膚をわたる圧力差」との記載が不明瞭である。特に、「皮膚をわたる」がどのような状況を想定しているのか、日本語として不明瞭である。
(5) 請求項1のデバイスにおいて、「アクセス部位」、「内蔵式真空チャンバ」及び「圧力調節器」の関係が明確に特定されていない。
(6) 請求項14には、「前記抽出起動部」と記載されているが、請求項14が請求項10を引用しない場合、「抽出起動部」が前記されないことになり、発明が不明確である。
(7) 請求項20には、「前記1本以上の極微針は、前記支持構造に対して固定化される」と記載されているが、請求項20が引用する請求項1では、「極微針」を「皮膚と接触させるよう移動」させたり、「皮膚から後退」させたりすることが特定されているため、請求項20の前記記載は不明確である。
(8) 請求項22には、「前記1本以上の極微針は、前記被検体によって起動可能である」と記載されているが、「極微針」が「起動」されるとは、どのような状態を意図しているのか、不明確である。また、「被検体によって起動」とは、被検体のどのような作用によって極微針が動くことを意図しているのかも、不明確である。
(9) 請求項27には、「アクセス部位における該被検体の該皮膚から、および/または該皮膚の下から抽出可能な媒体にアクセスするための1本以上の極微針」と記載されているとともに、「該アクセス部位における該被検体の皮膚から、および/または該皮膚の下から該媒体にアクセスする流体輸送器」と記載されているが、「流体輸送器」と「極微針」との関係が明確に特定されていない。
(10) 請求項27について、「媒体」の記載に関して、上記(1)と同様な点が不明確である。
(11) 請求項27について、「初期の圧力差を形成するための作動を要求することなしに、…圧力差を生成することが可能である圧力調節器」の記載に関して、上記(3)と同様な点が不明確である。
(12) 請求項27のデバイスにおいて、「アクセス部位」及び「圧力調節器」の関係が明確に特定されていない。
(13) 上記各請求項で指摘した事項について、それらの請求項に従属項がある場合には、その従属項においても、その指摘が該当する。
したがって、請求項1-27に係る発明は明確でない。
2 当審拒絶理由の判断
平成28年12月12日付けの手続補正書によって、請求項1において、分析対象が「体液」であること、「支持構造」は「皮膚の上に接触」されること、「圧力調節器」が「大気圧に対する負圧」を生成する「製造時に真空排気された事前同梱チャンバ」を備えることが特定され、請求項14は請求項10を引用するように補正され、請求項22において、「極微針」が「該被検体の前記皮膚に挿入可能」であることが特定され、請求項27において、分析対象が「体液」であること、「圧力調節器」が「大気圧に対する負圧」を生成する「製造時に真空排気された事前同梱チャンバ」を備えることが特定され、「流体輸送器」は削除された。そして、請求項20については、平成28年12月12日付け意見書で釈明がなされた。
したがって、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-015759