特許拒絶査定不服審判
2015-014312
熱可塑性樹脂製燃料タンク
- 審判番号
- 2015-014312
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-526352外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年07月30日
- 審決日
- 2017年04月10日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コーテックス テクストロン ジーエムビーエイチ アンド シーオー ケージー
- 【請求人代理人】佐藤 勝
- 分類
- P18 .121-WY (B60K) / P18 .537-WY (B60K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-526352号「熱可塑性樹脂製燃料タンク」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月15日国際公開、WO2012/031705、平成25年10月17日国内公表、特表2013-538728号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2010年(平成22年)9月7日 ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年4月10日 :翻訳文提出
平成26年2月14日付け :拒絶理由の通知
平成26年5月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成26年10月17日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成27年1月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年3月19日付け :平成27年1月20日付けの手続補正についての補正却下の決定、拒絶査定
平成27年7月30日 :審判請求書の提出
平成28年5月16日付け :拒絶理由の通知
平成28年8月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年11月21日 :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の通知
平成29年3月10日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、平成29年3月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものである。
その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
燃料タンクであって、タンク壁に接続され、当該燃料タンクのベース材よりも高弾性係数を有する材料からなり、その外側で当該燃料タンクに噛み合わせて接続され、少なくとも1つのシート状の硬化部材を有し、
前記硬化部材は、繊維合成材料からなり、
前記硬化部材は、プリプレグ繊維パネルの形式の熱硬化性高分子母材に繊維材料を有したものとされ、金型に形成された凹部に挿入可能な突出部を備え、
前記突出部の縦方向長さを前記凹部の縦方向長さよりも長くすることにより、前記硬化部材は外側タンク壁のベース材によっては完全に閉じられるものではないことを特徴とする熱可塑性樹脂材料製の燃料タンク。」
第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
刊行物1:特表2001-510138号公報
刊行物2:特表2009-537359号公報
刊行物1には、タンク壁に接続され、当該燃料タンクのベース材よりも高弾性係数を有する材料からなり、その外側で当該燃料タンクに噛み合わせて接続され、少なくとも1つのシート状の硬化部材を有し、前記硬化部材は、繊維合成材料、金属メッシュ、網目プレートからなる熱可塑性樹脂材料製の燃料タンクの発明が記載され(請求項15、段落【0007】~【0038】、図1~5を参照)、刊行物2には、燃料タンクのタンク壁を構成する材料について、熱可塑性樹脂、及び、熱硬化性樹脂からなるものであって、ベース材に接続される硬化部材を有し、当該硬化部材が、プリプレグ繊維パネルの形式の熱硬化性高分子母材に繊維材料を有したものである燃料タンク(段落【0040】、【0060】~【0064】、【0094】を参照)の発明が記載されている。そして、刊行物1に記載された発明(特に、請求項15、段落【0007】~【0038】、図1~5を参照)に、当該発明を適用し、本願発明とすることに格別困難性はない。
2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(1a)「【請求項10】
熱可塑性物質を含む少なくとも一層を含む複合材料であって、前記層がその中にファブリックを埋込んでおり、前記ファブリックが昇華材料及び泡沸材料からなる群から選択された能動的熱保護材料で被覆されている複合材料。
【請求項11】
請求項10の複合材料であって、前記ファブリックが平方センチメートル当り0.5から30の開口部を有する開いたウィーブメッシュを含んでいる複合材料。
【請求項12】
請求項10の複合材料であって前記ファブリックが約850℃より高い軟化点を有する繊維ガラス製繊維を含んでいる複合材料。
【請求項13】
請求項10の複合材料であって前記能動的熱保護材料が前記ファブリックのウィーブに於いて開口部を残しており、前記熱可塑性材料が前記開口部に延在し前記ファブリックとの物理的な固定を形成している複合材料。
【請求項14】
請求項10の複合材料で形成された容器。
【請求項15】
請求項14の容器であって、トランクベース及び燃料タンクからなる群から選択された構造を有する自動車用容器。」
(1b)「【0015】
本発明のもう一つの局面によれば、概して、少なくとも一部が熱可塑性樹脂で形成された部材に、能動的(泡沸又は昇華)熱保護被覆材料で予め処理されて前記の熱可塑性材料に埋込まれるファブリック又はメッシュを組み込むことによって前記部材は、強化され、長期間火炎又はその他の極端な高熱から保護される。ファブリックは、好ましくは、前記の元々の用途の方法によって製造された高温繊維ガラスであるが、通常の繊維ガラス、その他の無機材料、合成ポリマー材料及び綿などの天然の有機材料を含むその他のファブリックも用いられる。好ましくは、ファブリックは、平方センチメートル当り0.5から30の開口部を有する開いたウィーブメッシュを含んでいる。ファブリック材料又はファブリック上に被覆される表面には、能動的難燃材料をしみ込ませることができる。好ましくは、平方メートル当り100から1000グラムの被覆が適用される。被覆は、完全に硬化し剛性体又は弾性体の形態とすることができる。処理過程中においては、被覆は、硬化前の状態、又は、硬化されることとなる半硬化状態において供給される。処理された又はしみ込まされた繊維ガラスのセルは、好ましくは、開いた状態とできるが、充填されていてもよい。ポリプロピレンなどのいくつかの材料については、セルが開いているほうが、軟化されたポリプロピレンが係る開口部を貫通し、機械的な固定を形成することができるので好ましい。予め処理されたファブリックは、好ましくは、基材の表面、即ち、概して言えば、火炎又はその他の高熱状態に直接的に曝されると予想される表面に埋込まれるか結合される。
【0016】
本発明の方法によれば、能動的熱保護材料でファブリックを予め処理し、鋳型内にその予め処理されたファブリックを配置し、基材を鋳型内で形成しながら該基材へ予め処理されたファブリックを結合することによって、複合構造が形成される。好ましい実施例においては、基材は、その成形過程において鋳型内で或る軟化温度まで加熱されて予め処理されたファブリックへ化学的に且機械的に接着するポリオレフィンの如き熱可塑性樹脂で少なくとも部分的に形成される。」
以上より、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「熱可塑性物質を含む少なくとも一層を含む複合材料であって、前記層がその中に開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリックを表面に埋込んでおり、前記ファブリックが昇華材料及び泡沸材料からなる群から選択された能動的熱保護材料で被覆されている複合材料、で形成された自動車用燃料タンク。」
(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「自動車用燃料タンク」は「熱可塑性樹脂を含む少なくとも一層を含む複合材料」「で形成されている」から、熱可塑性樹脂材料製の燃料タンクといえ、本願発明の「熱可塑性樹脂製燃料タンク」に相当する。
イ 引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」は、技術常識からみて、シート状であるといえるし、また、「昇華材料及び泡沸材料からなる群から選択された能動的熱保護材料で被覆されて」いるものであるところ、この被覆は、硬化し剛体又は弾性体の形態である((1b)の段落【0015】)から、弾性係数を有する材料からなる硬化部材であるといえる。よって、引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」は、本願発明の「少なくとも1つのシート状の硬化部材」に相当する。
ウ さらに、引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」は、「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリックを」自動車用燃料タンクを形成する複合材料の「表面に埋込んで」いるから、自動車用燃料タンクのタンク壁の表面に噛み合わせて接続されているといえる。よって、引用発明の「前記層がその中に開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリックを表面に埋込んで」いることは、本願発明の「少なくとも1つのシート状の硬化部材」が、「タンク壁に接続され、」「その外側で当該燃料タンクに噛み合わせて接続され」ていることに相当する。
エ 引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス」は、技術的にみて本願発明の「繊維合成材料」に相当する。
オ 以上ア~エより、本願発明と引用発明の一致点および相違点は次のとおりである。
<一致点>
「燃料タンクであって、タンク壁に接続され、弾性係数を有する材料からなり、その外側で当該燃料タンクに噛み合わせて接続され、少なくとも1つのシート状の硬化部材を有し、
前記硬化部材は、繊維合成材料からなる熱可塑性樹脂材料製の燃料タンク。」
<相違点1>
硬化部材に関し、本願発明の硬化部材の弾性係数が「当該燃料タンクのベース材よりも高弾性係数を有する」ものであるのに対し、引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」の弾性係数が、燃料タンクを形成する複合材料の弾性係数より高弾性係数であるか否かは明らかでない点。
<相違点2>
硬化部材に関し、本願発明では、「プリプレグ繊維パネルの形式の熱硬化性高分子母材に繊維材料を有したものとされ、金型に形成された凹部に挿入可能な突出部を備え、前記突出部の縦方向長さを前記凹部の縦方向長さよりも長くすることにより、前記硬化部材は外側タンク壁のベース材によっては完全に閉じられるものではない」ものであるのに対し、引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」はそのような構成を有していない点。
(3)判断
事案に鑑み上記<相違点2>について検討する。
引用発明の「開口部を有する開いたウィーブメッシュである繊維ガラス製繊維ファブリック」は鋳型(金型)内に配置されるものであるものの、鋳型の凹部に挿入可能な突出部を備えるものではない((1b)段落【0016】、図3、4、参照。)。また、刊行物2にも、相違点2に係る本願発明の構成は記載も示唆もされていない。
よって、引用発明、あるいは、引用発明および刊行物2に記載の事項に基づいて相違点2に係る本願発明の構成となすことが当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本願発明は、相違点2に係る本願発明の構成を有することにより、「タンク壁への硬化部材の個々の固定点がリベット接続の方法で形成される」という(明細書段落【0013】)、顕著な作用効果を奏するものであるといえる。
(4)小括
したがって、本願発明は、相違点1について検討するまでもなく、当業者が引用発明、あるいは、引用発明および刊行物2に記載の事項に基いて容易に発明を得することができたとはいえない。
また、本願の請求項2~4に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が当業者が引用発明、あるいは、引用発明および刊行物2に記載の事項に基いて容易に発明を得することができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1に係る発明の発明を特定事項する事項として「硬化部材は、・・・金型に形成された凹部に挿入可能な突出部を備え、前記突出部の縦方向の長さは前記凹部の縦方向の長さよりも長い」と記載しているが、請求項1に係る発明である「燃料タンク」そのものには金型は構成要素として存在しないことからすれば、上記記載によって結局どのような燃料タンクの構成を規定しているのか不明である。
よって、請求項1および請求項1を引用する請求項2~4に係る発明は明確でない。
2.当審拒絶理由の判断
平成29年3月10日にされた手続補正によって、本願の請求項1は、
「【請求項1】
燃料タンクであって、タンク壁に接続され、当該燃料タンクのベース材よりも高弾性係数を有する材料からなり、その外側で当該燃料タンクに噛み合わせて接続され、少なくとも1つのシート状の硬化部材を有し、
前記硬化部材は、繊維合成材料からなり、
前記硬化部材は、プリプレグ繊維パネルの形式の熱硬化性高分子母材に繊維材料を有したものとされ、金型に形成された凹部に挿入可能な突出部を備え、
前記突出部の縦方向長さを前記凹部の縦方向長さよりも長くすることにより、前記硬化部材は外側タンク壁のベース材によっては完全に閉じられるものではないことを特徴とする熱可塑性樹脂材料製の燃料タンク。」
と補正された(下線は、補正箇所であり、当審で付した。)。このことにより、当審拒絶理由は解消した。
第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由および当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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