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特許拒絶査定不服審判

2014-017978

アトポビウム種により生じる感染を治療するためのニフラテルの使用

審判番号
2014-017978
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-506454外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2014年09月09日
審決日
2016年03月17日
公報発行日
2017年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-506454「アトポビウム種により生じる感染を治療するためのニフラテルの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日国際公開、WO2010/121980、平成24年10月11日国内公表、特表2012-524117〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 本願は、2010年4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年4月20日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月6日付け拒絶理由通知書に対して平成26年3月28日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成26年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年9月9日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審からなされた平成27年11月16日付け拒絶理由通知に対して、平成28年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1~17に係る発明は、平成28年1月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。それらのうち請求項1及び3に係る発明は次のとおりである。 「【請求項1】 ニフラテルまたはその生理学的に許容される塩を含む、Atopobium vaginaeにより生じる感染症の治療に用いるための薬剤配合物。」 「【請求項3】 前記感染症が、女性の細菌性膣炎または複合膣感染から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤配合物。」 したがって、請求項1を引用する請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「ニフラテルまたはその生理学的に許容される塩を含む、Atopobium vaginaeにより生じる感染症の治療に用いるための薬剤配合物であって、前記感染症が、女性の細菌性膣炎または複合膣感染から選択されることを特徴とする薬剤配合物。」 3.当審の拒絶理由 当審において平成28年1月28日付けで通知した拒絶の理由2.の概要は、本願発明は、2002年に頒布された「Arzneimittelforschung, 2002, Vol.52, No.10, p.725-730」(以下、「引用例1」という。)及び2006年に頒布された「J.Infect. Dis., 2006, Vol.194, No.6, p.828-836」(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 4.引用例の記載事項 引用例1には以下の事項(1-1)~(1-7)が記載され、引用例2には(2-1)~(2-5)が記載されている。 なお、引用例1及び2はいずれも英語文献であるため、以下には当審による翻訳文を示す(下線部は当審による)。 (1-1)「ドキソルビシンと異なり、ニフラテルはLactobacillus属に対して活性を有しない。膣感染症において、Lactobacillus属を完全に根絶してしまうと、膣内細菌叢や膣内pHが変化してしまうことから、この事実は重要である。」(第727頁左欄第13~17行参照) (1-2)「ニフラテルは非常に安全な毒性プロフィールを有しており、催奇作用を有していない。さらに、過去と最近の臨床研究の比較は、ニフラテルによる処置に対して抵抗性が生じるという現象が報告されていないことを確認している[11]。その治療効果は12,000人以上の患者において評価されており、1965年以降、欧州内外の多くの国において販売されている。これまで、ニフラテルを用いた広範囲な薬理試験によって、ニフラテルがトリコモナス症、細菌性膣炎、カンジダ症、及び、特に複合膣感染の治療に有効であることが確認されている。」(第727頁左欄第18~29行参照)。 (1-3)「1050の症例において、ニフラテルの有効性(経口600mg/日及び経膣250mg/日を10日間)とメトロニダゾールの有効性(経口750mg/日及び経膣500mg/日を10日間)を対比した。治癒率は、T.v.単独による感染患者においては、ニフラテル79%、メトロニダゾール90%、T.v.及びfungiによる感染患者においては、それぞれ58%及び45%、T.v.及び混合細菌叢による感染患者においては、それぞれ75%及び65%であった。初期治療によって治癒しなかった患者に対する二次治療における治癒率は、T.v.単独による感染患者においては、それぞれ80%及び96%、T.v.及びfungiによる感染患者においては、それぞれ90%及び81%、T.v.及び混合細菌叢による感染患者においては、それぞれ100%及び95%であった[19]。」(第727頁右欄第40~51行参照)(なお、「T.v.」は、「Trichomonas Vaginalis」を意味する(第727頁右欄第5行参照)。) (1-4)「T.v.、カンジダ、細菌、又は複合感染による膣炎の患者140人を、経口ニフラテル600mg/日を7日間+経膣ニフラテル250mg/日を10日間(70症例)、又は経口メトロニダゾール600mg/日を7日間+経膣ニスタチン200000 IU/日を7日間(70症例)のいずれかにランダムに指定した。治癒率はそれぞれ75%と69.2%であった[20]。」(第727頁右欄第52~57行参照) (1-5)「T.v.、Candida albicans、又は非特定の混合細菌感染による膣炎の患者36人[21]をニフラテル(経口200mgを1日3回7日間及び経膣250mgを10日間)又はメトロニダゾール(経口250mgを1日3回及びニスタチン経膣ペッサリー1つを7日間)で処置した。治癒率はそれぞれ54.5%及び50%であった。」(第727頁右欄第58行~最下行参照) (1-6)「ニフラテルは、Trichomonas Vaginalis、好気性又は嫌気性細菌、Gardnerella vaginalis、及びカンジダのように外陰性膣感染症の原因となる微生物に対して広いスペクトルを有する薬剤である。」(第729頁左欄「4. Discussion」第1~5行参照。) (1-7)「さらに、いくつかの比較研究及び広範な臨床経験から、Trichomonas Vaginalis+カンジダ又はTrichomonas Vaginalis+細菌による複合感染の患者や、細菌性膣炎及び混合細菌叢の患者におけるニフラテルによる治癒率は、ニフラテルの広範な活性スペクトルに起因して、メトロニダゾールより高いことが示された。」(第729頁右欄20~26行参照) (2-1)「BVを有する女性においては、G. vaginalisはほぼ例外なく存在しており(99%)、大部分はA. vaginaeによる感染を有していた(96%)。G. vaginalisは通常の膣内細菌叢を有する女性においても一般的に存在していたが(60%)、A. vaginaeはそのような女性においては一般的ではなかった(12%)(P.001)」(第830頁右欄第5~9行参照)(なお、「BV」は、「細菌性膣炎(Bacterial Vaginosis)」を意味し(第828頁左欄第1行参照)、「G. vaginalis」及び「A. vaginae」はそれぞれ、「Gardnerella vaginalis」及び「Atopobium vaginae」を意味する(Abstract参照)。) (2-2)「A. vaginaeとG. vaginalisは、96%(95%CI、91%-98%)及び99%(95%CI、97%-100%)と、BV患者において共に高い割合で検出された。しかしながら、A. vaginaeはBV患者(77% [95%CI,71-82%])及び正常でない膣内細菌叢の患者(NS4-10,88% [95%CI,83-93%])において、G. vaginalis(それぞれ、35% [95%CI,29-42%]及び41% [95%CI,33-48%])よりも、より特異的であった。」(第831頁左欄下3行から右欄第3行参照) (2-3)「A. vaginae及びG. vaginalisの検出におけるメトロニダゾールの効果 1ヶ月間の経口メトロニダゾールによる治療後、それぞれの微生物が検出される女性の割合や細菌量は減少することが観察されたが(P.01)、メトロニダゾールは、G. vaginalisよりもA. vaginaeにおいて、顕著な減少をもたらすことが明らかとなった(図1)(P.001)。12ヶ月のフォローアップ期間の終了後、それぞれの微生物が検出される女性の割合や細菌量は上昇したが、依然として治療の開始前よりも低いレベルを維持しており、研究のエンドポイントにおいては、G. vaginalisは集団の92%で検出され、A. vaginaeは55%で検出された。」(第832頁右欄第15~25行参照) (2-4)「インビトロのデータにおいては、G. vaginalis、Mobiluncus、性器マイコプラズマを含む、BVを有する女性から単離された多くの微生物がメトロニダゾールに対して弱い感受性しか有していないが、クリンダマイシンに対して感受性を有することが示されている[23]。A. vaginaeについても、メトロニダゾールに対してMICs>32μg/mlという強い抵抗性を有する一方、クリンダマイシンに対して感受性を有することが報告されている[7]。このため、本研究において、メトロニダゾール治療後にA. vaginaeの有意が減少が観察されたことは、非常に予想外であった。インビトロのデータによれば、もしA. vaginaeやG. vaginalisがBVの原因菌であるか、発病における統合的な役割を担っているのであれば、クリンダマイシンに基づく治療によって、優れた治癒率が得られることを期待するはずである。しかしながら、メトロニダゾールとクリンダマイシンはBVの治療において、同程度の短期有効性を示すこと[24]、及び、3ヶ月の治療によって、同程度のG. vaginalis量の減少をもたらすことが示されている[25]。」(第834頁左欄下6行~右欄第10行参照) (2-5)「A. vaginaeはBVを再発する全ての女性に存在するわけではないが、A. vaginae及びG. vaginalisの両方が検出された女性において、より高い再発率が観察されたことは、この微生物がBVに対して重要な影響を及ぼしていることを示している。」(第835頁左欄下7行~下3行参照) 5.対比 引用例1における、ニフラテルが細菌性膣炎の治療に有効であるとの記載(上記記載事項(1-2)参照)、ニフラテルをTrichomonas Vaginalis及び混合細菌叢による感染患者に投与した場合の治癒率が75%であったとの記載(上記記載事項(1-3)参照)、細菌による膣炎の患者を含む患者群70名にニフラテルを投与した場合に、治癒率が75%であったとの記載(上記記載事項(1-4)参照)、及び、非特定の混合細菌感染による膣炎の患者を含む患者群にニフラテルを投与した場合に、治癒率が54.5%であったとの記載(上記記載事項(1-5)参照)から、引用例1には、「ニフラテルを含む、細菌性膣炎の治療に用いるための薬剤」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 ここで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「薬剤」は、本願発明における「薬剤配合物」に相当するので、両者は、「ニフラテルを含む、細菌性膣炎の治療に用いるための薬剤配合物」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明においては、細菌性膣炎が「Atopobium vaginaeにより生じる感染症」であることが特定されているのに対し、引用発明においては、そのことが特定されていない点 6.当審の判断 (1)相違点について 上記相違点について検討する。 引用例1には、ニフラテルの有効性に関し、「Trichomonas Vaginalis、好気性又は嫌気性細菌、Gardnerella vaginalis、及びカンジダのように外陰性膣感染症の原因となる微生物に対して広いスペクトルを有する薬剤である。」と記載されており(上記記載事項(1-6)参照)、「Gardnerella vaginalis」に対して有効であることは明記されているものの、「Atopobium vaginae」に対して有効であるか否かについては明記されていない。 しかしながら、引用例2には、細菌性膣炎患者の大部分(96%)がAtopobium vaginaeによる感染を有していたことが記載されており(上記記載事項(2-1)参照)、他方、引用例1には、実際にニフラテルが細菌性膣炎の治療に有効であることが記載されている(上記記載事項(1-2)~(1-5)参照)。そうすると、従来ニフラテルによる治療が有効であった細菌性膣炎患者も、その大部分がAtopobium vaginaeによる感染を有していたと理解するのが自然であり、Atopobium vaginaeに感染している細菌性膣炎患者に対しても、ニフラテルの投与が有効であり得ることが理解できる。したがって、ニフラテルを有効成分とする引用発明を、Atopobium vaginaeにより生じる細菌性膣炎の治療にも適用してみることは、当業者が容易になし得た事項であると認められる。 (2)効果について 本願明細書の実施例2(【0023】~【0025】段落)には、インビトロにおける最小抑制濃度(MIC)測定の結果に基づき、Atopobium vaginaeがニフラテルに対して感受性であることが示されている。しかしながら、上記(1)に記載のとおり、引用例1及び2の記載から、Atopobium vaginaeに感染している細菌性膣炎患者に対しても、ニフラテルの投与が有効であり得ることが理解できるので、Atopobium vaginaeに対してニフラテルが感受性を有することが確認されたとしても、そのことが引用例1及び2から予測し難い格別な効果であるとはいえない。 (3)審判請求人の主張について 審判請求人は、平成28年1月28日提出の意見書において、以下a~dを主張している。 a.「当業者であれば、Lactobacillus属に対して活性ではないニフラテルが、Atopobium vaginaeにより生じる感染症の治療に有効であるとは期待しません。なぜなら、Lactobacillus属とAtopobium vaginaeとは、表現学的に非常に類似しているからであります。」 b.「単にGardnerella vaginalisによって生じる感染症の治療に有効であることから、Atopobium vaginaeにより生じる感染症の治療においてニフラテルが有効であることを当業者が期待するものではありません。なぜなら、これら2種の微生物は、異なるものであるからです。」 c.「Atopobium vaginaeは、メトロニダゾールに対して抵抗性であるのに対し、ニフラテルに対して感受性であります。この事項は、…全く驚くべきものであります。」 d.「審判請求書の添付資料6は、ニフラテルがLactobacillus類(>256μg/mLのMIC50)に対して有効ではないことも示しており、この内容は引用文献1の開示内容と矛盾するものではありません。この結果は、ニフラテルは、細菌性膣炎を引き起こすと認識されている一群の微生物に対して高い活性を示すと同時に、Lactobacillus属の通常の細菌叢には影響を与えないという特異な効果を奏するのであります。」 以下、上記主張a~dについて検討する。 主張aについて、Lactobacillus属は細菌性膣炎等の外陰性膣感染症に影響を及ぼすものではなく、他方、引用例2には、Atopobium vaginaeが細菌性膣炎に重要な影響を及ぼしていることが記載されている(上記記載事項(2-1)~(2-5)参照)。すなわち、両菌株は、細菌性膣炎への関与においては大きく相違しているのであるから、Lactobacillus属に対してニフラテルが活性ではないことが知られており、Lactobacillus属とAtopobium vaginaeとが、表現学的に非常に類似していたとしても、上記(1)において記載した理由で引用例1と2を組み合わせるに当たっての特段の阻害要因となるとは認められず、出願人の主張aを採用できない。 主張bについて、Gardnerella vaginalisとAtopobium vaginaeという2種の微生物が、異なるものであったとしても、上記(1)において記載した理由で引用例1と2を組み合わせるに当たっての特段の阻害要因となるとは認められず、出願人の主張bを採用できない。 主張cについて、引用例1には、細菌性膣炎の患者におけるニフラテルによる治癒率は、ニフラテルの広範な活性スペクトルに起因して、メトロニダゾールより高いことが記載されている(上記記載事項(1-7)参照)。したがって、メトロニダゾールに対して抵抗性であるAtopobium vaginaeが、ニフラテルに対して感受性であったとしても、当業者が予測し難い効果とはいえず、出願人の主張cを採用できない。 仮にそうでないとしても、引用例2には、Atopobium vaginaeはメトロニダゾールに対して抵抗性を有するが、実際に細菌性膣炎患者に対してメトロニダゾールを投与した結果、Atopobium vaginaeの減少が確認されたことが示されている(上記記載事項(2-3)、(2-4)参照)。すなわち、本願発明における医薬用途である「Atopobium vaginaeにより生じる細菌性膣炎の治療」においては、メトロニダゾールを投与した場合にも治療効果は奏されるのであり、そもそも、ニフラテルを用いた場合に、メトロニダゾールを用いた場合よりも優れた効果が奏されるということはできない。したがって、いずれにしても出願人の主張cを採用できない。 主張dについて、ニフラテルがLactobacillus属の通常の細菌叢には影響を与えないこと、及び細菌性膣炎の治療に有効であることは、いずれも引用例1に記載されている(上記記載事項(1-1)、及び同(1-2)~(1-5)参照)。したがって、出願人が主張する効果は引用例1の上記記載から当業者が予測可能なものであり、出願人の主張dを採用できない。 (4)検討結果 上記検討のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 7.むすび したがって、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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