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特許異議申立

2026-700061

プラズマエッチング装置用部材等に好適な成膜材料およびその製造方法

審判番号
2026-700061
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-066355
登録番号
7714081
請求日
2026年01月20日
審決日
2026年06月05日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】トーカロ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 利之
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 酒井 英夫
  • 審判官 富永 泰規
分類
P1652.113-Y (C23C) / P1652.121-Y (C23C) / P1652.536-Y (C23C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条
データ出所
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特許第7714081号発明「プラズマエッチング装置用部材等に好適な成膜材料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7714081号の請求項1、2、5~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7714081号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(特願2024-66355号。以下「本願」という。)は、2022年(令和 4年)12月 8日(優先権主張 令和 3年12月10日)を国際出願日とする特願2023-566353号の一部を、令和 6年 4月16日に新たな特許出願としたものであって、令和 7年 7月17日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月28日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 8年 1月20日に、その請求項1、2、5~9に係る特許について、特許異議申立人である鈴木 利之(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項1~11に係る発明をそれぞれ「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体を含む成膜材料であって、前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%であり、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%であり、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%であり、且つ該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有することを特徴とする成膜材料。 【請求項2】 前記金属酸化物がZrO2である場合、ZrO2の含有量が8~11モル%である請求項1に記載の成膜材料。 【請求項3】 前記金属酸化物がHfO2である場合、HfO2の含有量が10~16モル%である請求項1に記載の成膜材料。 【請求項4】 前記金属酸化物がNb2O5である場合、Nb2O5の含有量が3~7モル%である請求項1に記載の成膜材料。 【請求項5】 前記固溶体に含まれる、Y原子に対するZr、Hf又はNb原子の比率が、成膜材料に含まれる固溶体の無作為に選んだ5点において、絶対値に対して±5%以内である請求項1~4のいずれかに記載の成膜材料。 【請求項6】 前記固溶体が、X線回折(XRD)において、Y2O3の正六面体結晶構造のピークのみが生じる請求項1~4のいずれかに記載の成膜材料。 【請求項7】 請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜材料を用いて物理蒸着する成膜方法。 【請求項8】 請求項7に記載の成膜方法によって基材上に保護被膜を形成するプラズマエッチング装置用部材の製造方法。 【請求項9】 請求項1~4のいずれかに記載の成膜材料の製造方法であって、ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物粉末と、Y2O3粉末と、の混合粉末であり、前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%である混合粉末を1000~1600℃で熱処理して固溶体を形成し、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%である混合粉末を1200~1600℃で熱処理して固溶体を形成し、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%である混合粉末を1200~1600℃で熱処理して固溶体を形成することを特徴とする成膜材料の製造方法。 【請求項10】 前記固溶体を形成した後、15~40μmの平均粒径を有する粒子に造粒し、1200~1500℃の温度で熱処理する請求項9に記載の成膜材料の製造方法。 【請求項11】 請求項1~4のいずれかに記載の成膜材料の製造方法であって、 ZrO2、HfO2又はNb2O5を含む金属酸化物ゾルと、Y2O3粉末と、を含む混合液を原料としてスプレードライ造粒し、得られたZrO2微粒子、HfO2微粒子又はNb2O5微粒子とY2O3微粒子との一次粒子から構成される球状粒子を酸化雰囲気中で1000~1500℃の温度で熱処理することにより、固溶体を形成することを特徴とする成膜材料の製造方法。 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」等という。)を提出し(下記4参照。)、以下の理由により、本件特許の請求項1、2、5~9に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 1 申立理由1(新規性) (1) 申立理由1-1 本件発明1、2、7、8、9は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2) 申立理由1-2 本件発明1、2、6は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) (1) 申立理由2-1 本件発明1、2、6は、甲2に記載された発明と甲3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2) 申立理由2-2 本件発明5は、甲1に記載された発明と甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3) 申立理由2-3 本件発明5は、甲2に記載された発明と甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(実施可能要件) 本件発明5の「前記固溶体に含まれる、Y原子に対するZr、Hf又はNb原子の比率が、成膜原料に含まれる固溶体の無作為に選んだ5点において、絶対値に対して±5%以内である」との発明特定事項について、本件明細書の発明の詳細な説明には、「絶対値に対して±5%以内」を実現するための具体的な方法が記載されていないから、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 証拠方法 甲1:特表2016-516887号公報 甲2:特開2002-249864号公報 甲3:米国特許出願公開第2014/0263272号明細書 甲4:特開2006-206966号公報 甲5:国際公開第2019/167564号 第4 当審における判断 1 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-2(進歩性):甲1を主たる引用文献とするもの (1) 甲1に記載された発明 甲1には、【0039】~【0044】に記載される一実施形態のうち、特にセラミックスコーティングCC2に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「Y2O3、Al2O3、及びZrO2の原料セラミックス粉末が混合され、 原料セラミックス粉末が混合された後、約1200~1600℃の焼成温度で、約5~10日間の焼成時間で焼成され、 約53モル%のY2O3と、約37モル%のAl2O3と、約10モル%のZrO2から形成されたセラミックスコーティングのX線回折結果が、100%立方晶、微量のアモルファスである、 混合され焼成された原料セラミックス粉末。」(以下「甲1発明」という。) (2) 本件発明1について ア 本件発明1と、甲1発明とを対比する。 (ア) 甲1発明の「混合され焼成された原料セラミックス粉末」は、「セラミックスコーティング」を「形成」するためのものであるから、本件発明1の「成膜材料」に相当する。 (イ) 甲1発明の「混合され焼成された原料セラミックス粉末」に含まれる「ZrO2」は、金属酸化物であるから、本件発明1の「ZrO2」「からなる金属酸化物」に相当する。 (ウ) 甲1発明の「混合され焼成された原料セラミックス粉末」は、「Y2O3、Al2O3、及びZrO2の原料セラミックス粉末」が、「混合された後、約1200~1600℃の焼成温度で、約5~10日間の焼成時間で焼成され」るから、焼成温度及び焼成時間を踏まえると、原料セラミックス粉末に含まれる各成分間の固溶体が形成されているものと認められる。 そうすると、甲1発明の「Y2O3、Al2O3、及びZrO2の原料セラミックス粉末」が「混合され」「焼成され」ることで得られた「混合され焼成された原料セラミックス粉末」は、原料セラミックス粉末に含まれるY2O3とZrO2との固溶体が形成されているものと認められるから、上記(ア)、(イ)も踏まえると、本件発明1の「ZrO2」「からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体を含む成膜材料」に相当する。 (エ) そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体を含む成膜材料。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 成膜材料の組成について、本件発明1が「前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%であり、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%であり、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%であ」るのに対して、甲1発明は、「約53モル%のY2O3と、約37モル%のAl2O3と、約10モル%のZrO2」である点 <相違点1-2> 本件発明1では、「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体」について、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のに対して、甲1発明では、「形成されたセラミックスコーティングのX線回折結果」については、「100%立方晶、微量のアモルファス」であるものの、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」に形成されたY2O3とZrO2との固溶体については、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のかどうか不明である点 イ 上記相違点について、事案に鑑みて、相違点1-2から検討する。 (ア) 「結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」ことについて、本件明細書の発明の詳細な説明(【0026】)によれば、「固溶体が有する結晶構造がY2O3の正六面体結晶を有する場合、固溶体のX線回折(XRD)は、Y2O3の正六面体結晶構造のピークのみが生じる」とされ、「Y2O3の正六面体結晶構造のピークのみが生じるとは、Y2O3の正六面体結晶構造と同じピークを有する一方で、Y2O3に固溶させた金属酸化物のピークを有しないことを意味する」とされ、また、「換言すれば、本発明のY2O3含有固溶体をX線回折した場合の線図は、Y2O3の正六面体結晶構造の線図と同じ位置(それが平行移動した位置)にピークが見られる、すなわち、Y2O3の正六面体結晶構造の線図と同形となることを意味する」とされている。 (イ) また、本件明細書の発明の詳細な説明(【0018】~【0025】、【図2】、【図3】、【図4】)によれば、本件発明は、金属酸化物の結晶格子構造における酸素が8配位または10配位し、金属酸化物をY2O3に対して1モル%以上添加してもY2O3の正六面体結晶構造が維持されるような金属酸化物として、ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物を選択するとともに、ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物とY2O3との二元系状態図において、Y2O3の正六面体結晶構造が維持される組成域である、金属酸化物がY2O3に固溶する組成域を選択したものと認められる。 (ウ) 上記(ア)を踏まえて、甲1発明について検討すると、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」に形成されたY2O3とZrO2との固溶体について、甲1には、どのような結晶構造を有しているか記載されていない。 また、形成されたセラミックスコーティングのX線回折結果が「100%立方晶、微量のアモルファス」であることは特定されているものの、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」が同様のX線回折の結果を示すとはいえない。 仮に、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」が、形成されたセラミックスコーティングと同様のX線回折の結果を示すとしても、立方晶となる物質はY2O3のみではないから、X線回折結果が100%立方晶であったとしても、他の立方晶を示す物質のピークを含む可能性を排除できず、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」に形成されたY2O3とZrO2との固溶体が、「Y2O3の正六面体結晶構造」であるとまではいえない。 (エ) また、甲1発明の原料粉末は、「約53モル%のY2O3と、約37モル%のAl2O3と、約10モル%のZrO2の混合セラミックス原料粉末」であるから、Y2O3とZrO2の他に「約37モル%のAl2O3」をさらに含むものであって、Al2O3に起因するピークが生じる可能性を排除できず、「Y2O3の正六面体結晶構造と同じピークを有する一方で、Y2O3に固溶される金属酸化物のピークを有しない」とまではいえない。 (オ) さらに、甲1発明の原料粉末の混合比について、「約53モル%のY2O3と、約37モル%のAl2O3と、約10モル%のZrO2の混合セラミックス原料粉末」は、Y2O3とZrO2の総量に対するZrO2のモル比を計算すると、以下のとおり、約15.9モル%であることがわかる。 10/(53+10)≒0.15873 そうすると、甲1発明のY2O3とZrO2の総量に対するZrO2のモル比は、本件発明1の「前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%」の範囲から外れるものであって、上記(イ)の記載も踏まえると、「Y2O3の正六面体結晶構造と同じピークを有する一方で、Y2O3に固溶される金属酸化物のピークを有しない」とまではいえない。 (カ) 申立人は、特許異議申立書(p11)において、CC2では、Y2O3のモル比が約53モル%であり、Y2O3のモル比が最も高いことから、X線回折において、Y2O3の立方晶構造が検出されている蓋然性が高い旨主張しているが、上記(エ)、(オ)で検討したとおり、「Y2O3の正六面体結晶構造と同じピークを有する一方で、Y2O3に固溶される金属酸化物のピークを有しない」とまではいえない。 (キ) そうすると、甲1発明が「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体」を含むとしても、この固溶体の結晶構造が、「Y2O3の正六面体結晶構造を有する」とはいえないから、相違点1-2は、実質的な相違点である。 ウ 以上によれば、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。 (3) 本件発明2について ア 本件発明2は、本件発明1において、「前記金属酸化物がZrO2である場合、ZrO2の含有量が8~11モル%である」ことをさらに特定するものである。 イ そうすると、上記(2)の検討を踏まえて、本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、対比する本件発明が本件発明2である点及び本件発明2のZrO2の含有量の範囲が本件発明1のものより狭い点を除いて、上記相違点1-1及び上記相違点1-2と同様の以下の相違点1-1’及び相違点1-2’で相違する。 <相違点1-1’> 成膜材料の組成について、本件発明2が「前記金属酸化物がZrO2である場合、ZrO2の含有量が8~11モル%であり、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%であり、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%であ」るのに対して、甲1発明は、「約53モル%のY2O3と、約37モル%のAl2O3と、約10モル%のZrO2」である点 <相違点1-2’> 本件発明2では、「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体」について、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のに対して、甲1発明では、「形成されたセラミックスコーティングのX線回折結果」については、「100%立方晶、微量のアモルファス」であるものの、「混合され焼成された原料セラミックス粉末」に形成されたY2O3とZrO2との固溶体については、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のかどうか不明である点 ウ 上記(2)のイの検討を踏まえると、上記相違点1-2’は、実質的な相違点である。 エ 以上によれば、本件発明2は、甲1発明であるとはいえない。 (3) 本件発明5について ア 本件特許の請求項5は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明5は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 イ そうすると、上記(2)の検討を踏まえると、本件発明5は、甲1発明と、少なくとも相違点1-2と同様の相違点において相違する。 ウ そこで、相違点1-2と同様の相違点について、甲1発明において、甲1、甲4及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に想到することができるかについてさらに検討する。 (ア) 「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体」の結晶構造を「Y2O3の正六面体結晶構造を有する」ものとすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。 そうすると、甲1発明において、相違点1-2と同様の相違点に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえない。 (イ) また、甲4、甲5のいずれの証拠にも、「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体」の結晶構造を「Y2O3の正六面体結晶構造を有する」ものとするという技術思想は記載されておらず、また、このことが技術常識であるとも周知技術であるともいえない。 そうすると、甲4、甲5の記載事項を考慮しても、甲1発明において、相違点1-2と同様の相違点に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 エ 以上によれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明と甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) 本件発明7、8について ア 本件発明7は、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜材料を用いて物理蒸着する成膜方法の発明である。 イ ここで請求項3及び4の成膜材料については、特許異議の申立てがされておらず、請求項1及び2の成膜材料、すなわち、本件発明1及び2については、上記(2)及び(3)で検討したとおり、甲1発明であるとはいえないから、これらの成膜材料を用いて物理蒸着する成膜方法である本件発明7も同様に、甲1発明であるとはいえない。 ウ また、本件特許の請求項8は、請求項7の記載を引用するものであるから、本件発明8は、本件発明7の発明特定事項をすべて備えたものである。 そうすると、上記イのとおり、本件発明7が甲1発明であるとはいえない以上、同様に、本件発明8も、甲1発明であるとはいえない。 (5) 本件発明9について ア 本件発明9は、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜材料の製造方法の発明である。 イ ここで請求項3及び4の成膜材料については、特許異議の申立てがされておらず、請求項1及び2の成膜材料、すなわち、本件発明1及び2については、上記(2)及び(3)で検討したとおり、甲1発明であるとはいえないから、これらの成膜材料の製造方法の発明である本件発明9も同様に、甲1発明であるとはいえない。 (6) 申立理由1-1(新規性)、申立理由2-2(進歩性)のまとめ 以上によれば、本件発明1、2、7~9は甲1に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明5は甲1に記載された発明と甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-1(新規性)、申立理由2-2(進歩性)によって、本件発明1、2、5、7~9に係る特許を取り消すことができない。 2 申立理由1-2(新規性)、申立理由2-1(進歩性)、申立理由2-3(進歩性):甲2を主たる引用文献とするもの (1)甲2に記載された発明 ア 甲2には、【0085】~【0090】に記載される実験Fのうち、特に【表6】の下から6行目の耐食膜に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した材料であって、 プラズマ溶射し、耐蝕膜を形成した後の試料を1600℃で熱処理した耐食膜の組成が、90mol%Y2O3・10mol%ZrO2である 希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した材料。」(以下「甲2発明」という。) (2)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア) 甲2発明の「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混合した材料」は、プラズマ溶射し、耐蝕膜を形成するものであるから、本件発明1の「成膜材料」に相当する。 (イ) そうすると、両者は、 「成膜材料」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 成膜材料について、本件発明1が「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体を含」み、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のに対して、甲2発明が「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した」材料であって、この材料から形成した耐蝕膜の組成が「90mol%Y2O3・10mol%ZrO2」である点 <相違点2-2> 本件発明1が、「前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%であり、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%であり、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%であ」るのに対して、甲2発明が「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した材料」から形成した耐蝕膜の組成が「90mol%Y2O3・10mol%ZrO2である」点 イ 相違点2-1について検討する。 (ア) 甲2発明の材料は、「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した」材料であって、酸化ジルコニウムは、希土類酸化物に混入、つまり、単に混合された状態であると認められるから、酸化ジルコニウム(ZrO2)と希土類酸化物(Y2O3)との固溶体が形成されるものではない。 そうすると、相違点2-1は、実質的な相違点である。 (イ) 上記(ア)の点について、申立人は、特許異議申立書(p16)において、甲2の表6に記載されているような、90mol%Y2O3、10mol%のZrO2の組成を有する耐蝕膜は、Y2O3のモル比が高いため、Y2O3の立方晶構造を有している蓋然性が高い旨主張する。 しかしながら、プラズマ溶射による成膜後に耐蝕膜となった場合において仮にY2O3の立方晶構造を有している蓋然性が高いとしても、上記(ア)で検討したように、プラズマ溶射を実施する前の甲2発明の材料は、単に混合された状態であり、酸化ジルコニウム(ZrO2)と希土類酸化物(Y2O3)との固溶体が形成されるものではないから、この主張は採用できない。 (ウ) 次に甲2発明において、「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した」材料について、これを「酸化ジルコニウム(ZrO2)と希土類酸化物(Y2O3)との固溶体」を含むものとすることについて検討すると、甲2には、甲2発明において、プラズマ溶射を実施する前に、上記のような固溶体が形成されるように処理することについて、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲2発明において、相違点2-1に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 (エ) また、甲3にも、プラズマ溶射を実施する前に、「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した」材料について、これを「酸化ジルコニウム(ZrO2)と希土類酸化物(Y2O3)との固溶体」を含むものとするという技術思想は記載されておらず、また、このことが技術常識であるともいえないから、甲3の記載事項を考慮しても、甲2発明において、相違点2-1に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 (オ) 上記(エ)の点について、申立人は、特許異議申立書(p17)において、甲3の記載に基づいて、立方晶イットリア結晶構造を有する構成を採用することは当業者によって容易に想到できたものである旨主張する。 しかしながら、上記(エ)で検討したとおり、甲3の記載をみても、同構成を採用する動機付けを見いだせないから、この主張は採用できない。 ウ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明と甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3) 本件発明2について ア 本件発明2は、本件発明1において、「前記金属酸化物がZrO2である場合、ZrO2の含有量が8~11モル%である」ことをさらに特定するものである。 イ そうすると、上記(2)の検討を踏まえて、本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、対比する本件発明が本件発明2である点及び本件発明2のZrO2の含有量の範囲が本件発明1のものより狭い点を除いて、上記相違点2-1及び上記相違点2-2と同様の以下の相違点2-1’及び相違点2-2’で相違する。 <相違点2-1’> 成膜材料について、本件発明2が「ZrO2、HfO2又はNb2O5からなる金属酸化物と、Y2O3と、を含む固溶体を含」み、「該固溶体の結晶構造がY2O3の正六面体結晶構造を有する」のに対して、甲2発明が「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した」材料であって、この材料から形成した耐食膜の組成が「90mol%Y2O3・10mol%ZrO2」である点 <相違点2-2’> 本件発明2が、「前記金属酸化物がZrO2である場合は、ZrO2の含有量が7~12モル%であり、前記金属酸化物がHfO2である場合は、HfO2の含有量が4~16モル%であり、前記金属酸化物がNb2O5である場合は、Nb2O5の含有量が1~8モル%であ」るのに対して、甲2発明が「希土類酸化物に酸化ジルコニウムを混入した材料」から形成した耐食膜の組成が「90mol%Y2O3・10mol%ZrO2である」点 ウ 上記(2)イの検討を踏まえると、上記相違点2-1’は、実質的な相違点であって、甲2発明において、甲2及び甲3の記載事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 エ 以上によれば、本件発明2は、甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明と甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (4) 本件発明5について ア 本件特許の請求項5は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明5は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 イ そうすると、上記(2)の検討を踏まえると、本件発明5は、甲2発明と、少なくとも上記相違点2-1と同様の相違点において相違する。 ウ そして、上記相違点2-1と同様の相違点については、上記(2)の検討を踏まえると、甲2発明において、甲2及び甲3に記載された事項から、相違点2-1と同様の相違点に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 エ また、甲4及び甲5に記載された事項をみても、甲2発明において、相違点2-1と同様の相違点に係る発明特定事項を備えさせることが動機づけられるとはいえず、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 オ 以上によれば、本件発明5は、甲2発明及び甲4及び甲5の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5) 本件発明6について ア 本件特許の請求項6は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明6は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 イ そうすると、上記(2)の検討を踏まえると、本件発明6は、甲2発明であるとはいえず、甲2発明及び甲3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (6)申立理由1-2(新規性)、申立理由2-1(進歩性)、申立理由2-3(進歩性)のまとめ 以上によれば、本件発明1、2、6は甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明と甲3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。また、本件発明5は甲2に記載された発明と甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1-2(新規性)、申立理由2-1(進歩性)、申立理由2-3(進歩性)によって、本件発明1、2、5、6に係る特許を取り消すことができない。 3 申立理由3(実施可能要件)について (1)本件発明5の「前記固溶体に含まれる、Y原子に対するZr、Hf又はNb原子の比率が、成膜原料に含まれる固溶体の無作為に選んだ5点において、絶対値に対して±5%以内である」との発明特定事項について、本件明細書には以下の記載がある(なお、下線は強調のため当合議体において付した。) ア 「【0029】 本発明のY2O3含有固溶体成膜材料では、添加された金属酸化物が、成膜材料中において均一に固溶されていることが好ましく、以下の製造方法によれば、均一な成膜材料を得ることができる。 本発明で得られる均一な成膜材料は、成膜材料に含まれる固溶体粒子について無作為に5点選び、各点毎にY原子に対する添加された金属酸化物を構成する金属原子の含有量比を求め、かかる値における、全5点の金属原子/Y原子のばらつきが絶対値に対して、±5%以内のものを指す。なお、ここにおける絶対値とは、添加金属酸化物が成膜材料中に均一に固溶していると仮定したときの金属原子/Y原子の理論値のことである。 例えば、Y2O3に対して10モル%のZrO2を固溶させてなる成膜材料の場合、絶対値は0.111であり、Y2O3に対して10モル%のZrO2を固溶させてなる成膜材料が均一であるとは、無作為に選んだ5点の全てにおいて、Zr原子/Y原子の値が0.111±0.00555の範囲にあることを意味する。 【0030】 なお、固溶体における金属原子の含有率を求める方法としては、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いる方法が挙げられる。このように、成膜材料の段階で均一に固溶していることにより、成膜後の被膜においても均一に固溶している状態を保てるため、被膜中の耐プラズマ性のばらつきを抑制することができる。 【0031】 以下、Y2O3含有固溶体成膜材料の製造方法について、金属酸化物がZrO2である場合を例にとって説明する。金属酸化物がHfO2またはNb2O5である場合も、これに準じた製造方法にて作製することができる。 Y2O3粉末とZrO2粉末とを粉砕・混合する際に用いる粉末の純度は99.5重量%以上が好ましい。また、粉砕・混合工程に供されるこれらの粉末の平均粒子径(D50)は4μm以下であることが好ましく、粉砕・混合を行った混合粉の平均粒子径は2μm以下とすることが好ましい。 【0032】 熱処理前のZrO2粉末の平均粒子径は、Y2O3粉末の平均粒子径の好ましくは1/3以下、より好ましくは1/5である。ZrO2粉末の混合比は、Y2O3粉末に比べて少ないため、Y2O3粉末とZrO2粉末との接点はその分少なくなる。そこで、ZrO2粉末の平均粒子径を、Y2O3粉末の平均粒子径を上記の範囲にすることによって、Y2O3粉末とZrO2粉末との接触機会を増やすことができる。このように、Y2O3粉末とZrO2粉末との接触機会が多い状態で熱処理を行うことにより、固相反応が促進され、短時間でY2O3粉末に対してZrO2粉末を固溶させることが可能となる。 【0033】 Y2O3粉末とZrO2粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理は、好ましくは1100℃~1600℃、より好ましくは1300~1500℃で行われる。これにより、Y2O3粉末とZrO2粉末との固相反応速度を十分速くすることが可能となり、かつ、熱処理後の焼結体の粒度調整が可能となる。なお、Y2O3粉末とHfO2粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理、或いは、Y2O3粉末とNb2O5粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理は、いずれも、好ましくは、1200~1600℃、より好ましくは1400~1600℃で行われる。これにより、Y2O3粉末とHfO2粉末との固相反応速度、或いは、Y2O3粉末とNb2O5粉末との固相反応速度を十分速くすることが可能となり、かつ、熱処理後の焼結体の粒度調整が可能となる。 なお、上記範囲より低い温度で熱処理を行った場合、組織の均一化を十分に行えず、また、固相反応速度が遅くなるため、製造時間が非常に長くなる。一方、上記範囲よりも高い温度で処理を行った場合、Y2O3粒子同士の焼結が活発となり、固結が進行することによって、以降の粒度調整などが困難となる。なお、熱処理時間は、好ましくは3~12時間、より好ましくは5~8である。」 イ 「【実施例】 【0042】 以下、実施例によって本発明について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明において、平均粒径は、特に言及のない限り、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味する。 【0043】 (実施例1) 平均粒径が3.3μmのY2O3粉末と、平均粒径が1.0μmのZrO2粉末を準備した。ZrO2粉末の含有量が、得られるY2O3粉末とZrO2粉末との混合物中、2モル%となるように、両者の粉末を乾式で遊星ミル(ジルコニアボールとジルコニアポットを使用)を用いて混合した。得られた混合粉末を、電気炉により、1500℃で10時間加熱し、固溶体の合成化処理に供した。次いで、合成化処理後の粉末をアルミナ乳鉢と乳棒を用いて解砕し、解砕後の粉末を用いて放電プラズマ焼結装置により焼結体(固溶体)を作製した。 【0044】 次に、作製した焼結体の表面を湿式エメリー紙(SiC砥粒)で#1200まで研磨し、X線回折法(XRD)によって結晶相を同定した。 最後に、X線回析法に供した焼結体をプラズマ曝露試験に供し、消耗速度を測定した。ここで、消耗速度は、焼結体の表面のうち、プラズマに曝露されないようマスキングを行った部位とプラズマに暴露された部位との段差を、レーザー顕微鏡を用いて測定した段差の大きさにより、以下のように定義した。 消耗速度=段差の大きさ(μm)/エッチング時間(分) 【0045】 プラズマ曝露試験には、ドライエッチング装置を用い、4インチのSiウエハ上に焼結体を静置し、プラズマに曝露した。プラズマの生成は、下記の条件で行った。 プラズマガス種と流量: CF4・・50sccm、 O2・・・10sccm、 Ar・・・50sccm RF出力・・800W、 バイアス・・600W 【0046】 (実施例2) Y2O3粉末とZrO2粉末との混合物中のZrO2粉末の含有量を5モル%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、焼結体の作製、結晶相の同定、プラズマ曝露試験、および消耗速度の測定を行った。 【0047】 (実施例3) Y2O3粉末とZrO2粉末との混合物中のZrO2粉末の含有量を10モル%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、焼結体の作製、結晶相の同定、プラズマ曝露試験、および消耗速度の測定を行った。 実施例3で、得られた焼結体粉末粒子1つの中で無作為に5点選び、各点毎にY原子に対するZr原子の含有量比を調べた結果、それぞれ0.1123、0.1088、0.1075、0.1115、0.1135であった。Y2O3に対してZrO2を10モル%固溶させてなる材料の絶対値は0.111であるため、本実施例で得られた粉末では、ZrO2が粉末材料中において均一に固溶されていることが分かった。ここで、実施例3の固溶体の結晶相の同定に使用したXRD図を図5(a)に示す。図5(a)から、実施例3の固溶体は、Y2O3の正六面体結晶構造のピークのみが生じていることが分かる。」 (2)ア 上記(1)アの記載によれば、「成膜材料に含まれる固溶体粒子について無作為に5点選び、各点毎にY原子に対する添加された金属酸化物を構成する金属原子の含有量比を求め、かかる値における、全5点の金属原子/Y原子のばらつきが絶対値に対して、±5%以内のもの」である「添加された金属酸化物が、成膜材料中において均一に固溶されている」「均一な成膜材料」は、以下の方法により得ることができるとされている。 ・Y2O3粉末と金属酸化物粉末の純度が99.5重量%以上が好ましいこと ・粉砕・混合工程に供されるこれらの粉末(Y2O3粉末と金属酸化物粉末)の平均粒子径(D50)は4μm以下であることが好ましく、粉砕・混合を行った混合粉の平均粒子径は2μm以下とすることが好ましいこと ・熱処理前のZrO2粉末の平均粒子径は、Y2O3粉末の平均粒子径の好ましくは1/3以下、より好ましくは1/5であること ・Y2O3粉末とZrO2粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理は、好ましくは1100℃~1600℃、より好ましくは1300~1500℃で行われ、Y2O3粉末とHfO2粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理、或いは、Y2O3粉末とNb2O5粉末との混合粉末を焼結させる際の熱処理は、いずれも、好ましくは、1200~1600℃、より好ましくは1400~1600℃で行われること イ また、上記(1)イの特に実施例3として、上記アの条件と合致する、以下の方法で焼結体を作成したことが具体的に記載されている。 <方法> 平均粒径が3.3μmのY2O3粉末と、平均粒径が1.0μmのZrO2粉末を準備した。ZrO2粉末の含有量が、得られるY2O3粉末とZrO2粉末との混合物中、10モル%となるように、両者の粉末を乾式で遊星ミル(ジルコニアボールとジルコニアポットを使用)を用いて混合した。得られた混合粉末を、電気炉により、1500℃で10時間加熱し、固溶体の合成化処理に供した。次いで、合成化処理後の粉末をアルミナ乳鉢と乳棒を用いて解砕し、解砕後の粉末を用いて放電プラズマ焼結装置により焼結体(固溶体)を作製した。 ウ そして、上記イの方法で得られた焼結体粉末粒子1つの中で無作為に5点選び、各点毎にY原子に対するZr原子の含有量比を調べた結果、材料の絶対値が0.111に対し、それぞれ0.1123(+1.17%)、0.1088(-1.98%)、0.1075(-3.15%)、0.1115(+0.45%)、0.1135(+2.25%)であり、5点において、絶対値に対して5%以内となったことが具体的に記載されている。(なお、括弧書きの「%」は、結果の値と材料の絶対値の値から合議体において計算した。) エ 以上によれば、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、「前記固溶体に含まれる、Y原子に対するZr、Hf又はNb原子の比率が、成膜原料に含まれる固溶体の無作為に選んだ5点において、絶対値に対して±5%以内である」「添加された金属酸化物が、成膜材料中において均一に固溶されている」「均一な成膜材料」を製造し使用できることは明らかである。 したがって、本件発明5について、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するものである。 オ 申立人は、特許異議申立書において、本件明細書の発明の詳細な説明には、「絶対値に対して±5%以内」を実現するための具体的な方法は記載されていない旨主張しているが、上記ア~エで検討したように、具体的な方法が記載され、その方法によって実現できることが実施例として裏付けられているから、この主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、2、5~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、5~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700061

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