特許訂正審判
2026-390040
雪下ろし装置
- 審判番号
- 2026-390040
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2023-052464
- 登録番号
- 7325150
- 請求日
- 2026年02月26日
- 審決日
- 2026年05月28日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】舟橋 達夫
- 【請求人代理人】飯田 昭夫
- 【請求人代理人】安藤 敏之
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 家田 政明
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P141 .851-Y (E04D) / P141 .854-Y (E04D) / P141 .855-Y (E04D) / P141 .841-Y (E04D) / P141 .856-Y (E04D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7325150号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7325150号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7325150号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和5年3月28日に出願(優先権主張 令和5年2月9日)されたものであって、同年8月3日にその特許権の設定登録がされ、同月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和8年2月26日付けで訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がされた。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7325150号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
本件訂正審判の請求に係る訂正事項は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
1 訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記繰出巻取装置は、回転装置により回転可能とされ、又は、棟側移動装置により前記棟に沿って移動可能とされ、若しくは、周縁部側移動装置により前記屋根の周縁部に沿って移動可能とされている」とあるのを、
訂正後に、「前記繰出巻取装置は、回転装置により回転可能とされ、又は、棟側移動装置により前記棟に沿って移動可能とされ、若しくは、周縁部側移動装置により前記屋根の周縁部に沿って移動可能とされ、
前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、
又は、
前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」に訂正する。
2 訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、「前記繰出巻取装置は、回転装置により回転可能とされ、又は、棟側移動装置により前記棟に沿って移動可能とされ、若しくは、周縁部側移動装置により前記屋根の周縁部に沿って移動可能とされている」とあるのを、
訂正後に、「前記繰出巻取装置は、回転装置により回転可能とされ、又は、棟側移動装置により前記棟に沿って移動可能とされ、若しくは、周縁部側移動装置により前記屋根の周縁部に沿って移動可能とされ、
前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、
又は、
前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」に訂正する。
第3 本件明細書及び図面の記載
1 【0006】~【0017】
「【0006】
請求項1記載の発明では、屋根の周縁部側、又は、棟側に配設される雪下ろし装置であって、
長尺薄板状であって、短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成され、直線移動可能な直立性と、繰り出し巻き取り可能な柔軟性と、を有する滑落板を備え、繰り出し方向において前記屋根上に積もった雪に進入して、上に乗った雪を前記屋根外に滑落させる滑落体と、
前記滑落体を、前記屋根の屋根面の上方において、繰り出し巻き取り可能とする繰出巻取装置と、
を備え、
前記繰出巻取装置は、回転装置により回転可能とされ、又は、棟側移動装置により前記棟に沿って移動可能とされ、若しくは、周縁部側移動装置により前記屋根の周縁部に沿って移動可能とされている。
・・・
【0011】
また、前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成されている。
【0012】
滑落体をこのように形成しても、雪を屋根外に滑落させることができる。
【0013】
また、前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有している。
【0014】
滑落体をこのような構成としても、雪を屋根外に滑落させることができる。また、滑落板を小さくでき、加工費用を少なくできるので、繰出巻取装置の駆動源を低出力で小さなものとできる。よって、雪下ろし装置全体の価格と重量を低減させることに寄与する。
【0015】
また、前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている。
【0016】
これによれば、滑落板が屋根に積もった雪に進入するときに、切断部により屋根に積もった雪が切断されるので、雪を屋根外に滑落させることに寄与する。
【0017】
また、一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている。」
2 【0045】~【0047】
「【0045】
滑落体20は、本実施形態では、一つの滑落板21で構成されている。滑落板21は、金属製で、図6に示すように、長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、直線移動可能な直立性と、繰り出し巻き取り可能な柔軟性と、を有している。滑落板21は、コンベックス(鋼製巻尺)のメジャー部分を大型化したようなものである。また、滑落板21は、長手方向において屈曲すると短手方向に直線状となり、巻き取られるときには平たくなり、コンパクトになる。
【0046】
滑落板21の先端部21aの上面側には、滑落板21の上方に延設され、屋根101に積もった雪Sを、厚さ方向及び屋根面102に沿った方向において切断する切断部22が配設されている。
【0047】
本実施形態では、切断部22は、L字状に形成された一対のフレーム部22aと、一対のフレーム部22aの自由端どうしと連結するばね部22bと、を備えている。」
3 【0296】~【0305】
「【0296】
滑落体の変形例について説明する。図41に示す、滑落体20Fは、一対の滑落板21Fと、可撓性を有する合成樹脂製で、一対の滑落板21F間に架け渡されるシート状部材23Fと、一対の滑落板21Fの先端部21Fa間に架け渡されるとともに、シート状部材23Fと連設され、屋根101に積もった雪Sを、屋根面102に沿った方向において切断する連結切断部材24Fと、巻き取り可能な可撓性を有する金属製薄板で、滑落板21Fの長手方向において、所定の間隔が設けられ、一対の滑落板21F間に架け渡され、シート状部材23Fを補強するブリッジ25Fと、を有している。
【0297】
滑落体20Fは、滑落体20(図3、図6参照)と同様な直立性、柔軟性を有している。
【0298】
滑落体20Fをこのような構成としても、雪Sを屋根101外に滑落させることができる。また、滑落板21Fを小さくでき、加工費用を少なくできるので、例えば、合成樹脂製の軽いシート状部材23Fを使用して、滑落体20Fを軽くできるのと相まって、繰出巻取装置の駆動源を低出力で小さなものとできる。よって、雪下ろし装置全体の価格と重量を低減させることに寄与する。
【0299】
また、一対の滑落板21Fのそれぞれの先端部21Faの上面側には、滑落板21Fの上方に延設され、屋根101に積もった雪Sを少なくとも厚さ方向において切断する切断部22Fが配設されている。
【0300】
本変形例では、切断部22Fは、一対の滑落板21Fから略コの字状に形成されたフレーム部22Faが延設されて構成されている。
【0301】
これによれば、滑落板21Fが屋根101に積もった雪Sに進入するときに、切断部22Fにより屋根101に積もった雪Sが切断されるので、雪Sを屋根101外に滑落させることに寄与する。
【0302】
また、図42に示す、滑落体20Gは、滑落体20Fと比べて、シート状部材23Gが鋼板で形成され、ブリッジ25Fがない構成とされている。滑落体20Fと対応する構成については、同一符号にGを付加し、全部又は一部の説明を省略する。
【0303】
滑落体20Gは、滑落体20Fと同様の効果を奏する。
【0304】
また、図43に示す、滑落体20Hは、一つの滑落板21Hで構成され、滑落板21Hの短手方向からみて、波形状に形成されている。滑落体20Aと対応する構成については、同一符号にHを付加し、全部又は一部の説明を省略する。
【0305】
滑落体20Hをこのように形成しても、直立性を確保して、雪Sを屋根101外に滑落させることができる。また、滑落体20Hは、巻き取り時に、柔軟性により平らになり、コンパクトに巻き取ることができる。なお、滑落板21Hの波形状の、凹凸の数、凹凸の形態は適宜変更することができる。」
4 【0318】~【0330】
「【0318】
滑落板の変形例について説明する。図44は、滑落板の変形例の短手方向における断面の説明図である。以下の説明では、屈曲は、曲率半径が小さくて折れ線として視認可能なもの、湾曲は、曲率半径が屈曲より大きく、緩やかに曲がっているものとする。
【0319】
図44(a)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が湾曲して形成され、両端部が直線状に形成され、中央部と両端部の境界部分が屈曲して形成され、両端部が斜め上方に延びるように形成されている。図44(a)では上が凹であるが、下が凹とすることもできる。
【0320】
図44(b)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が直線上に形成され、両端部が直線状に形成され、中央部と両端部の境界部分が屈曲して形成され、両端部が斜め上方に延びるように形成されている。図44(b)では上が凹であるが、下が凹とすることもできる。
【0321】
図44(c)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が直線状に形成され、両端部が直線状に形成され、中央部と両端部の境界部分が屈曲して形成され、左端部が斜め上方に延び、右端部が斜め下方に延びるように形成されている。図44(c)の滑落板21を、上下反転させた形状に形成することもできる。
【0322】
図44(d)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が直線状に形成され、両端部が上側に湾曲して形成されている。図44(d)では上が凹であるが、下が凹とすることもできる。
【0323】
図44(e)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が直線状に形成され、左端部が上側に湾曲し、右端部が下側に湾曲して形成されている。図44(e)の滑落板21を、上下反転させた形状に形成することもできる。
【0324】
図44(f)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が直線状に形成され、左端部が上側に湾曲し、右端部が直線状に形成され、中央部と右端部の境界部分が屈曲して形成され、右端部が斜め上方に延びるように形成されている。図44(f)の滑落板21を、上下反転させて形成したり、左右逆に形成したりすることもできる。
【0325】
図44(g)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が波形状に形成され、両端部が直線状に形成され、中央部と両端部の境界部分が屈曲して形成されて、左端部が斜め下方に延び、右端部が斜め上方に延びるように形成されている。図44(e)の滑落板21を、上下反転させた形状に形成することもできる。
【0326】
図44(h)に示すように、滑落板21は、滑落板21の短手方向における、中央部が波形状に形成され、両端部が直線状に形成され、中央部と両端部の境界部分が屈曲して形成され、両端部が斜め上方に延びるように形成されている。図44(h)の滑落板21を、上下反転させた形状に形成することもできる。
【0327】
滑落板21は、屋根上に積もった雪内に直線状に繰り出し可能な直立性と、かつ、雪Sを滑落させた後に直線状に戻るときに巻き取り可能な柔軟性と、を有するのであれば、上記変形例には限定されない。
【0328】
滑落板21A、・・・21F、21G、21Hにおいても、同様である。
【0329】
また、滑落板の中央部と両端部との境界部分は、湾曲、屈曲どちらでも適用することができる。
【0330】
滑落板をこのように形成しても、軽量化され、かつ、コンパクトな雪下ろし装置とすることができる。」
5 【図6】
「
[図:0001438245000001.jpg]
」
上記【図6】から、一つの滑落板21で構成された滑落体20において、滑落板21が長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、滑落板21の先端部21aの上面側には、滑落板21の上方に延設された切断部22が配設されている点が看取できる。
6 【図16】
「
[図:0001438245000002.jpg]
」
上記【図16】から、一つの滑落板21Aで構成された滑落体20Aにおいて、滑落板21Aが長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、滑落板21Aの先端部21Aaの上面側には、滑落板21Aの上方に延設された切断部22Aが配設されている点が看取できる。
7 【図41】
「
[図:0001438245000003.jpg]
」
上記【図41】から、一対の滑落板21Fと、一対の滑落板21F間に架け渡されるシート状部材23Fと、一対の滑落板21Fの先端部21Fa間に架け渡されるとともに、シート状部材23Fと連設される連結切断部材24Fと、一対の滑落板21Fのそれぞれの先端部21Faの上面側には、滑落板21Fの上方に延設される切断部22Fを有し、各滑落板21Fは長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成されていることが看取できる。
8 【図42】
「
[図:0001438245000004.jpg]
」
上記【図42】から、一対の滑落板21Gと、一対の滑落板21G間に架け渡されるシート状部材23Gと、一対の滑落板21Gの先端部21Ga間に架け渡されるとともに、シート状部材23Gと連設される連結切断部材24Gと、一対の滑落板21Gのそれぞれの先端部21Gaの上面側には、滑落板21Gの上方に延設される切断部22Gを有し、各滑落板21Gは長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成されていることが看取できる。
9 【図43】
「
[図:0001438245000005.jpg]
」
上記【図43】から、一つの滑落板21Hで構成されている滑落体20Hにおいて、滑落板21Hが長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、波形状に形成され、滑落板21Hの先端部21Haの上面側には、滑落板21Hの上方に延設された切断部22Hが配設されている点が看取できる。
10 【図44】
「
[図:0001438245000006.jpg]
」
段落【0319】~【0326】の記載をふまえると、上記【図44】(a)~(h)から、滑落板の変形例であって、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成された「滑落板21」が看取できる。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「滑落体」について、
「前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、
又は、
前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている」ものに限定して特定するものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)において検討したとおり、訂正前の請求項1に係る発明について減縮を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
ア 訂正事項1に係る訂正について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「長尺薄板状であって、短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成され」る「滑落板」において、以下の構成1A及び構成1Bを択一的に含むものに減縮する訂正である。
<構成1A>
「前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」
<構成1B>
「前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」
イ 検討
(ア)構成1Aについて
a 本件明細書等の段落【0006】には、「長尺薄板状であって、短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成され、直線移動可能な直立性と、繰り出し巻き取り可能な柔軟性と、を有する滑落板を備え、繰り出し方向において前記屋根上に積もった雪に進入して、上に乗った雪を前記屋根外に滑落させる滑落体」と記載され、同段落【0011】には、「また、前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成されている。」と記載され、さらに、同段落【0015】には、「また、前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている。」と記載されている(下線部は、当審合議体が付与した。以下、同様である。)。
b また、本件明細書等の段落【0045】には、「滑落体20は、・・・一つの滑落板21で構成されている。滑落体21は、・・・長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、直線移動可能な直立性と、繰り出し巻き取り可能な柔軟性と、を有している。」と記載され、段落【0046】には、「滑落板21の先端部21aの上面側には、滑落板21の上方に延設され、屋根101に積もった雪Sを、厚さ方向」に「おいて切断する切断部22が配設されている」ことが記載されるとともに、【図6】から、一つの滑落板21で構成された滑落体20において、滑落板21が長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、滑落板21の先端部21aの上面側には、滑落板21の上方に延設された切断部22が配設されている点を看取できる。また、【図16】からも、前記【図6】に記載されている「滑落体20」と同様の、一つの滑落板21Aで構成された滑落体20Aにおいて、滑落板21Aが長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成され、滑落板21Aの先端部21Aaの上面側には、滑落板21Aの上方に延設された切断部22Aが配設されている点を看取できる。
c さらに、本件明細書等の段落【0304】には、「また、図43に示す、滑落体20Hは、一つの滑落板21Hで構成され、滑落板21Hの短手方向からみて、波形状に形成されている。滑落体20Aと対応する構成については、同一符号にHを付加し、全部又は一部の説明を省略する。」と記載されているとともに、【図43】から、一つの滑落板21Hで構成されている滑落体20Hにおいて、滑落板21Hが長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、波形状に形成され、滑落板21Hの先端部21Haの上面側には、滑落板21Hの上方に延設された切断部22Hが配設されている点を看取できる。
d 構成1Aについてのまとめ
上記a乃至cの記載をふまえると、本件明細書等には、「長尺薄板状であって、短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成され」る「滑落板」であって、構成1Aを満たすものが記載されているといえる。
(イ)構成1Bについて
a 本件明細書等の段落【0006】には、「長尺薄板状であって、短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成され、直線移動可能な直立性と、繰り出し巻き取り可能な柔軟性と、を有する滑落板を備え、繰り出し方向において前記屋根上に積もった雪に進入して、上に乗った雪を前記屋根外に滑落させる滑落体」と記載され、上記段落【0006】の後の、同段落【0013】には、「また、前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有している。」と記載され、さらに、同段落【0017】には、「また、一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている。」と記載されている。
b また、本件明細書等の段落【0296】には、「図41に示す、滑落体20Fは、一対の滑落板21Fと、可撓性を有する合成樹脂製で、一対の滑落板21F間に架け渡されるシート状部材23Fと、一対の滑落板21Fの先端部21Fa間に架け渡されるとともに、シート状部材23Fと連設され、屋根101に積もった雪Sを、屋根面102に沿った方向において切断する連結切断部材24Fと、・・・を有している。」と記載され、段落【0299】には、「また、一対の滑落板21Fのそれぞれの先端部21Faの上面側には、滑落板21Fの上方に延設され、屋根101に積もった雪Sを少なくとも厚さ方向において切断する切断部22Fが配設されている。」と記載されているとともに、【図41】から、一対の滑落板21Fと、一対の滑落板21F間に架け渡されるシート状部材23Fと、一対の滑落板21Fの先端部21Fa間に架け渡されるとともに、シート状部材23Fと連設される連結切断部材24Fと、一対の滑落板21Fのそれぞれの先端部21Faの上面側には、滑落板21Fの上方に延設される切断部22Fを有し、各滑落板21Fは長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成されていることを看取できる。また、【図42】からも、前記【図41】に記載されている「一対の滑落板21F」を備えた同様の構造、すなわち、一対の滑落板21Gと、一対の滑落板21G間に架け渡されるシート状部材23Gと、一対の滑落板21Gの先端部21Ga間に架け渡されるとともに、シート状部材23Gと連設される連結切断部材24Gと、一対の滑落板21Gのそれぞれの先端部21Gaの上面側には、滑落板21Gの上方に延設される切断部22Gを有し、各滑落板21Gは長尺薄板状とされ、短手方向における断面が、上が凹である円弧状に形成されていることを看取できる(部材名については、段落【0331】を参照。「23G 連結切断部材」は、「24G 連結切断部材」と記載すべきところの誤記と認める。)。
c 構成1Bについてのまとめ
上記a及びbの記載をふまえると、本件明細書等には、構成1Bが記載されているといえる。
ウ 小括
上記イのとおりであるから、構成1A及び構成1Bを択一的に追加する訂正、すなわち、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項1に係る訂正は、上記(1)で検討したとおり、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、特許法第126条第7項の規定により、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該要件について検討すると、訂正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2に記載の「滑落体」について、
「前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、
又は、
前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている」ものに限定して特定するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて
訂正事項2に係る訂正は、上記(1)において検討したとおり、訂正前の請求項2に係る発明について減縮を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
ア 訂正事項2に係る訂正について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2に係る発明の「長尺薄板状であって、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成され」る「滑落板」が、以下の構成2A及び構成2Bを択一的に含むものに減縮する訂正である。
<構成2A>
「前記滑落体は、一つの前記滑落板で形成され、
前記滑落板の先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」
<構成2B>
「前記滑落体は、一対の前記滑落板と、一対の前記滑落板間に架け渡されるシート状部材と、一対の前記滑落板の先端部間に架け渡されるとともに、前記シート状部材と連設され、前記屋根に積もった雪を、前記屋根面に沿った方向において切断する連結切断部材と、を有し、
一対の前記滑落板のそれぞれの先端部の上面側には、前記滑落板の上方に延設され、前記屋根に積もった雪を少なくとも厚さ方向において切断する切断部が配設されている、」
イ 検討
(ア)本件明細書等の段落【0318】には、「滑落板の変形例について説明する。図44は、滑落板の変形例の短手方向における断面の説明図である。以下の説明では、屈曲は、曲率半径が小さくて折れ線として視認可能なもの、湾曲は、曲率半径が屈曲より大きく、緩やかに曲がっているものとする。」と記載されている。また、段落【0319】~【0326】及び、【図44】(a)~(h)には、滑落板の変形例について説明がされており、その内容からみて、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成された「滑落板21」が記載されている。
(イ)上記(ア)のとおり、本件明細書等において、「滑落板21」についての変形例を示しているところ、当該記載の後の段落【0328】に、「滑落板21A、21B、21C、21D、21E、21F、21G、21Hにおいても、同様である。」と記載されているとともに、段落【0330】に「滑落板をこのように形成しても、軽量化され、かつ、コンパクトな雪下ろし装置とすることができる。」とも記載されている。
そうすると、上記記載をふまえると、本件明細書等において開示された「雪下ろし装置」が備える「滑落体」の「滑落板」を、「滑落板21」、「滑落板21A」、「滑落板21F」、「滑落板21G」又は「滑落板21H」のように「短手方向における断面が、上が凹である円弧状、又は、波形状に形成」することに換えて、上記段落【0319】~【0326】及び、【図44】(a)~(h)に記載された、滑落板の変形例のように形成すること、すなわち、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成することが示唆されているといえる。
(ウ)そうすると、本件明細書等において開示された「雪下ろし装置」が備える「滑落体」の「滑落板」のうち、「滑落板21」、「滑落板21A」又は「滑落板21H」のように形成した例(滑落体が一枚の滑落板で形成された例)の「滑落板」を上記変形例に換えたものは、「長尺薄板状であって、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成され」る「滑落板」において、構成2Aを追加したものに相当する。
また、本件明細書等において開示された「雪下ろし装置」が備える「滑落体」の「滑落板」のうち、「滑落板21F」又は「滑落板21G」のように形成した例(滑落体が、一対の滑落板等を有して形成された例)の「滑落板」を上記変形例に換えたものは、「長尺薄板状であって、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成され」る「滑落板」において、構成2Bを追加したものに相当する。
以上のとおり、本件明細書等においては、「長尺薄板状であって、短手方向における断面の少なくとも一部が、屈曲、又は/及び、湾曲して形成され」る「滑落板」において、構成2A及び構成2Bを追加したもの、それぞれが示唆されているといえる。
ウ 小括
上記イのとおりであるから、構成2A及び構成2Bを択一的に追加する訂正、すなわち、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項2に係る訂正は、上記(1)で検討したとおり、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、特許法第126条第7項の規定により、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該要件について検討すると、訂正後の請求項2に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しない。
したがって、訂正後の請求項2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
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2026-390040