商標拒絶査定不服審判
2026-001351
ネットフーヒョーヒガイタイサク、フーヒョーヒガイタイサク
- 審判番号
- 2026-001351
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2025-026577
- 請求日
- 2026年01月29日
- 審決日
- 2026年05月25日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ネット風評被害対策
- 【請求人代理人】野中 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 濱田 佐代子
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 佐藤 緋呂子
- 分類
- T18 .13 -Z (W45) / T18 .272-Z (W45)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、特許法第150条第5項、商標法第3条、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2025-26577拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和7年3月13日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和7年 5月 9日 :手続補正書の提出
令和7年 5月20日付け:拒絶理由通知書
令和7年 6月11日 :意見書の提出
令和7年11月13日付け:拒絶査定
令和8年 1月29日 :審判請求書の提出
令和8年 3月16日付け:証拠調べ通知書
令和8年 4月 3日 :意見書の提出
2 本願商標
本願商標は、「ネット風評被害対策」の文字を標準文字で表してなり、第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定役務については、上記1の手続補正書により、第45類「施設の警備,身辺の警備,個人の身元又は行動に関する調査,監視カメラの貸与,法規制遵守のための監査,法律的事項の監視,個人のニーズに合わせて手配や情報提供などを行うコンシェルジュの役務,インターネットドメイン名の貸与,身元調査,法令遵守のための監査」と補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「ネット風評被害対策」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ネット」の文字は「世界規模のコンピューターネットワーク。」の意味を有する「ネットワーク」の略語である。そして、その構成中「風評被害」の文字は「風評によって、売上げ減などの被害を受けること。」の意味を、「対策」の文字は「相手の態度や事件の状況に応じてとる方策」の意味を、それぞれ有し、いずれも一般に知られ、親しまれているものである。ところで、本願に係る指定役務の業界においては、インターネット上で情報発信される誹謗中傷や悪評等のネガティブな情報による風評被害への対策を目的とする役務が提供されている実情があり、さらに、そのような目的を表すものとして「ネット風評被害対策」の文字が一般に使用されている実情が見受けられる。そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その役務が「インターネット上における風評被害への対策のための役務」であること、すなわち、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するにとどまるというのが相当である。したがって、本願商標は、役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記意味合いに照応する役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
4 当審における証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲1ないし別掲6に掲げる事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき通知し、請求人の意見を求めた。
5 上記通知に対する請求人の意見(要旨)
(1)証拠調べ通知において示された使用例は、「ネット風評被害対策」の文字が特定の課題領域又は問題分野を指す語として用いられている実情にとどまり、本願の指定役務との関係において、具体的な役務の内容を直接表示するものとして一般に認識されていることを基礎づけるものではない。
(2)証拠調べ通知において示された使用例は、ITサービス事業者、SEO対策会社、弁護士、風評対策専門業者、警備会社などにおける役務に関するものであり、本願の指定役務と同一又は密接不可分な役務として一般的に提供されていることを示すものではない。
(3)証拠調べ通知において示された使用例は複数の異なる分野に及ぶところ、異なる業界における個別の使用例が存在することは、本願商標が特定の役務の質表示として明確性を欠くことを裏付けるものである。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法3条1項3号が、「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」について商標登録の要件を欠くと規定しているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、商標が、指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、商標が指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標が当該指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものであって、必ずしも当該商標が現実に当該指定役務に使用されていることを要しないと解される(知財高裁令和4年5月19日判決(令和3年(行ケ)第10100号)参照)。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、「ネット風評被害対策」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「ネット」の文字は、「インターネットの略」の意味を、「風評被害」の文字は、「風評によって、売上げ減などの被害を受けること」の意味を、「対策」の文字は、「相手の態度や事件の状況に応じてとる方策」の意味をそれぞれ有する語であって(いずれも「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)、いずれも広く一般に親しまれたものである。
ところで、近時、インターネットで流布された虚偽情報や誹謗中傷により企業や個人の信用・評判が毀損されるなど、インターネット上の風評被害があらゆる分野で問題となっているところ、そのような被害を指称する語として「ネット風評被害」の文字が一般的に使用されている(別掲1)。
また、インターネット上の風評被害への対策としては、法的対応やIT技術による対応など多様なアプローチがあるが、それらの対策を総称する語として「ネット風評被害対策」の文字が一般的に使用されている(別掲2)。
以上のことから、本願商標は、全体として「インターネット上の風評被害への対策」ほどの意味合いを容易に認識、理解させるものといえる。
そして、本願の指定役務中、「施設の警備,身辺の警備,監視カメラの貸与」に関連する業界においては、インターネット上の風評被害への対策のための役務や、インターネット上の危機への対策と実際の警備等を融合した役務が提供されている実情がある(別掲3)。
次に、本願の指定役務中、「個人の身元又は行動に関する調査,法規制遵守のための監査,法律的事項の監視,身元調査,法令遵守のための監査」に関連する業界においては、インターネット上の風評被害への対策のための役務が提供されている実情がある(別掲4)。
また、本願の指定役務中、「個人のニーズに合わせて手配や情報提供などを行うコンシェルジュの役務」に関連する業界においては、インターネット上の風評被害への対策に関する役務が提供されている実情がある(別掲5)。
さらに、本願の指定役務中、「インターネットドメイン名の貸与」との関係においては、インターネット上の風評被害への対策として、インターネットドメインの取得が紹介されている例がある(別掲6)。
そうすると、本願商標は、その指定役務に使用されたときには、「インターネット上の風評被害への対策」に関する役務であるという役務の質を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものである。
加えて、本願商標は、標準文字で構成されているから、「ネット風評被害対策」の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるといえる。
したがって、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標をその指定役務中、「インターネット上の風評被害への対策」に関する役務以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、「ネット風評被害対策」の文字は特定の課題領域又は問題分野を指す語として使用されているにとどまり、また、証拠調べ通知書において示された使用例からは、本願の指定役務が「ネット風評被害対策」という名称で一般に提供されているものではないから、本願商標は、その指定役務との関係において、役務の質を直接表示するものではない旨主張する。
しかしながら、前記(1)のとおり、本願商標が、本願の指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、本願商標がその指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定役務に使用された場合に、本願商標の取引者、需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものであって、必ずしも本願商標が現実に本願の指定役務に使用されていることを要しないと解される。
そして、本願商標については、「ネット風評被害」及び「ネット風評被害対策」の文字が一般的に使用されている実情や、本願の指定役務に関連する業界において、インターネット上の風評被害への対策のための役務が一般的に提供されている実情からすれば、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、自他役務の出所識別標識として認識するというよりもむしろ、「インターネット上の風評被害への対策」に関する役務であること、すなわち、役務の質を表示したものと認識するにとどまるとみるのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(4)結論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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