商標異議申立
2025-900285
セールマリーン、セール、マリーン
- 審判番号
- 2025-900285
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2025-010987
- 登録番号
- 6976855
- 請求日
- 2025年12月23日
- 審決日
- 2026年07月16日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】広州丹尼尓時計有限公司
- 【異議申立人】ロレックス ソシエテ アノニム
- 【異議申立人代理人】鈴木 秀彦
- 【異議申立人代理人】寺前 翔平
- 【異議申立人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 滝口 裕子
- 分類
- T1651.261-Y (W14) / T1651.262-Y (W14) / T1651.263-Y (W14) / T1651.271-Y (W14)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6976855号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6976855号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6976855号商標(以下「本件商標」という。)は、「Sail Marine」の欧文字を標準文字で表してなり、令和7年2月4日に登録出願、第14類「時計,腕時計,身飾品,キーホルダー」を指定商品として、同年9月2日に登録査定、同年10月15日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録第462952号商標(以下「引用商標」という。)は、「SUBMARINER」の欧文字を横書きしてなり、昭和29年6月22日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同30年3月23日に設定登録され、その後、平成17年8月17日に指定商品を第14類「時計,時計の部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされ、令和7年1月8日に最新の商標権の存続期間の更新登録がなされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。
(1)商標法第4条第1項第11号
本件商標は、「Sail Marine」との英文字からなる文字商標であるところ、英語において「Sail Marine」との熟語はなく、「sail」は「帆」「帆走する・航海する」など、帆、帆船を使った航行を指す。「marine」は「海の・海事の」を意味し、船舶・海運・海洋関連を指す形容詞であって、「Sail Marine」はこれらを組み合わせた造語であり、ヨット、帆船のレンタルや販売などのセーリング関連事業、セーリングスクールやツアーなどのマリンスポーツ事業、帆船のメンテナンスや関連サービスなどを指定商品・指定役務とするならばともかくとして、「時計」にかかる造語を用いる必然性は全くない。同じような意味を有する造語であるならば、Ocean Marine、Aqua Marine、Cruise Marineなど、「Sail」を使用しない造語で、類似の意味を有するものはいくらでも考えられる。「Sail」を冒頭につけて、「Sail Marine」という造語を「時計」に用いる意図はただ一つしか考えられない。すなわち、ダイバーウォッチとして著名である「SUBMARINER」(平成9年審判第17392号平成11年12月14日審決(甲3)など)に似せて混同を生ぜしめるということである。
また、両者は、その構成が大文字・小文字で異なるが、前記審決が適切に認定するとおり、一般的に宣伝広告などで実際に使用される商標の態様は、その構成文字を大文字のみあるいは小文字のみで統一したものなど、その時々に応じた使い方をしているのを見かけることから、ある程度柔軟に使用している。両者は10文字からなる点でも共通しており、全体としてその綴りが長いことに加え、特に、両者を冒頭のみ大文字表記にして筆記体で記載した場合、英語が通常使用される言語ではない日本においては、冒頭の大文字のs、それに続くaiとu、その次のlとbとは、筆記体では極めて紛らわしく判別が困難であり、筆記体が崩されれば崩されるほど違いが判別できなくなる。
したがって、本件商標と引用商標とは、互いに指定商品が類似し、指定商品中、「時計」の点で共通するところ、当該指定商品に係る前記の取引の実情を踏まえて検討すると少なくとも外観と観念が類似しているといえ、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者がその出所につき誤認混同するおそれがあるものというべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号
前記平成11年12月14日審決(甲3)が適切に認定するとおり、申立人は腕時計の製造販売会社として世界的に著名であり、我が国の全国主要都市に営業所を置く日本ロレックス株式会社を通じて腕時計を販売するとともに、活発な宣伝活動を行ってきたものと認められ、1953(昭和28)年に世界初のダイバーズウオッチを発売して以来現在に至るまで「SUBMARINER」の商標を使用してきており、その結果、引用商標は本件商標の商標登録出願前に我が国においても、すでに需要者間に著名になっていたのであって、その著名性の程度は極めて高度であるといえる。
また、本件商標と引用商標との共通の指定商品である「時計」に係る取引の実情を踏まえれば、両者は類似することは前記のとおりであって、本件商標が引用商標の指定商品中の「時計」に使用された場合、これに接する需要者は、本件商標が付された商品が申立人又は申立人と何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
さらに、前記(1)で述べたとおり、本件商標「Sail Marine」という造語を、引用商品と共通の指定商品である「時計」に用いる意図はただ一つしか考えられない。すなわち、ダイバーウォッチとして著名である引用商標に似せて混同を生ぜしめるということである。なお、本件商標の出願人は、わが国で登録している商標は現時点で本件商標のみのようであるが、同人が所在する中華人民共和国においては、様々な分野における著名商標と類似する商標を出願しているようであり(甲4)、申立人は、同国においても、現在本件商標と同様の商標出願に対して、異議申立て手続中である。以上からすれば、本件商標の出願は、極めて高度に著名な引用商標へのただ乗りを目的としてなされたことが推認され、本件商標の登録が維持されれば、引用商標の希釈が生ずる高度の蓋然性がある。
(3)まとめ
ア 商標法第4条第1項第11号
本件商標と引用商標とは、互いに指定商品が類似し、指定商品中、「時計」の点で共通するところ、当該指定商品に係る前記の取引の実情を踏まえて検討すると少なくとも外観と観念が類似しているといえ、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者がその出所につき誤認混同するおそれがあるものというべきである。したがって、本件商標登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
イ 商標法第4条第1項第15号
本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の需要者が申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、「Sail Marine」の欧文字を横書きしてなるところ、「Sail」の文字が、「帆、帆船」等の意味を、また、「Marine」の文字が、「海の、海洋の」等のいずれの意味(いずれも「新英和中辞典第7版」研究社)を有するとしても、両語が結びついて、一般に知られた熟語等を形成するものではないから、本件商標は全体として、直ちに特定の意味合いを認識、理解させるものとはいい難い。
したがって、本件商標は、当該文字部分を英語読みした「セイルマリン」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、「SUBMARINER」の欧文字を横書きしてなるところ、これは「潜水艦乗組員」(前掲書)の意味を有する語であるから、「サブマリーナー」の称呼を生じ、「潜水艦乗組員」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、両商標は、外観において、その構成文字及び構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「セイルマリン」の称呼と引用商標から生じる「サブマリーナー」の称呼を比較すると、両商標は、明瞭に聴別できるものである。
次に、観念においては、本件商標からは特定の観念が生じないのに対し、引用商標は「潜水艦乗組員」の観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において区別できることから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。
エ 小括
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似するとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知著名性について
申立人が引用商標を使用した申立人の業務に係る商品の売上高、市場シェア、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を判断するための証拠は提出されていない。
そうすると、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者にどの程度認識されているかを評価することができないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと判断することはできない。
イ 本件商標と引用商標との類似性について
上記(1)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であって、別異の商標といえるものであるから、その類似性の程度は低い。
ウ 出所の混同のおそれについて
本件商標は、上記イのとおり、引用商標等とは、非類似の商標であって、全体の印象が大きく異なる別異の商標であるから、両者の類似性の程度は低い。
加えて、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者にどの程度認識されているかを評価することができないから、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと判断することはできない。
そうすると、引用商標と本件商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、過去の審決の写し(甲3)を提出し、引用商標は本件商標の商標登録出願前に我が国においても、すでに需要者間に著名になっていたのであって、その著名性の程度は極めて高度である旨主張する。
しかしながら、申立人が引用商標を使用した申立人の業務に係る商品の売上高、市場シェア、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を判断するための証拠は提出されておらず、申立人提出の過去の審決例から約30年経っており、商標の周知性は、審決時に事案毎に事実、証拠に基づき個別具体的に判断すべきものであるから、それをもって上記判断が左右されるものではない。
イ 申立人は、本件商標の商標権者が所在する中華人民共和国においては、様々な分野における著名商標と類似する商標を出願しているようであり(甲4)、本件商標の出願は、極めて高度に著名な引用商標へのただ乗りを目的としてなされたことが推認される旨主張する。
しかしながら、中華人民共和国における出願の状況をもって、本件商標がその指定商品に使用された場合に、その商品の需要者が申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがあると認めることはできない。
ウ したがって、申立人の上記主張はいずれも採用することはできない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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