商標異議申立
2025-900106
ハリボー
- 審判番号
- 2025-900106
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-086446
- 登録番号
- 6904890
- 請求日
- 2025年05月13日
- 審決日
- 2026年07月10日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社HARIBOW
- 【異議申立人】ハリボ ホールディング ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
- 【異議申立人代理人】佐藤 淳
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 正和
- 審判官 浜岸 愛
- 審判官 濱田 佐代子
- 分類
- T1651.23 -Y (W41) / T1651.271-Y (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項8号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の3第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6904890号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6904890号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6904890号商標(以下「本件商標」という。)は、「HARIBOW」の欧文字を標準文字で表してなり、令和6年8月8日に登録出願、第41類「インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,スポーツの興行の企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,写真の撮影,娯楽施設の提供,技芸・スポーツ又は知識の教授,放送番組の制作,放送番組の制作における演出,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,書籍の制作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),通訳,翻訳,運動施設の提供,録音又は録画済み記録媒体の複製,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,音響用又は映像用のスタジオの提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動用具の貸与」を指定役務として、同7年2月21日に登録査定、同年3月6日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標(以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続している。
(1)登録第2111940号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「HARIBO」の欧文字及びその下に「ハリボ」の片仮名を上下2段書き
指定商品:第30類「菓子及びパン」
登録出願日:昭和61年3月18日
設定登録日:平成元年2月21日
書換登録日:平成21年4月30日
(2)登録第5463884号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「HARIBO」
指定商品:第8類、第9類、第16類ないし第18類、第20類、第21類、第24類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成23年3月18日
設定登録日:平成24年1月20日
(3)登録第5792598号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
指定商品:第30類「菓子及びパン」
登録出願日:平成27年5月14日
設定登録日:平成27年9月11日
(4)登録第6221525号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「ハリボー」(標準文字)
指定商品:第30類「菓子」
登録出願日:令和元年5月14日
設定登録日:令和2年1月31日
(5)国際登録第1299489号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第30類「Confectionery.」
国際商標登録出願日:2016年(平成28年)3月1日
優先権主張日:2015年(平成27年)9月2日(Benelux)
設定登録日:平成28年12月22日
(6)国際登録第1299490号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第30類「Confectionery.」
国際商標登録出願日:2016年(平成28年)3月1日
優先権主張日:2015年(平成27年)9月2日(Benelux)
設定登録日:平成28年12月22日
(7)国際登録第1572483号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第25類「Clothing; footwear; headgear.」
国際商標登録出願日:2020年(令和2年)12月11日
優先権主張日:2020年(令和2年)7月1日(Benelux)
設定登録日:令和4年3月18日
(8)国際登録第1572484号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第25類「Clothing; footwear; headgear.」
国際商標登録出願日:2020年(令和2年)12月11日
優先権主張日:2020年(令和2年)7月1日(Benelux)
設定登録日:令和4年3月18日
(9)国際登録第1635754号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の構成:「HARIBO」
指定商品:第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類及び第28類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日:2021年(令和3年)7月13日
優先権主張日:2021年(令和3年)1月21日(Benelux)
設定登録日:令和5年8月4日
(10)国際登録第1652367号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類及び第28類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日:2021年(令和3年)7月13日
優先権主張日:2021年(令和3年)1月21日(Benelux)
設定登録日:令和5年11月17日
(11)国際登録第1652368号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第9類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類及び第28類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品
国際商標登録出願日:2021年(令和3年)7月13日
優先権主張日:2021年(令和3年)1月21日(Benelux)
設定登録日:令和5年12月8日
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として資料1ないし資料35(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は、1920年にドイツにおいて設立され、100年以上の歴史を持つ、世界最大級のグミ菓子の製菓会社であって、創業者であるハンス・リーゲルは、1922年に、現在、世界各国で販売されている熊型グミの原型となるフルーツグミ「ダンシングベア」を考案した。
1960年には、グミ菓子の「ゴールドベア」を発売し、市場で大ヒットした。それ以来、独自の新種スイーツを開発し、ドイツ国内や海外の有名製菓メーカーを買収するなど、常に商品のラインナップを拡大し、また、潤滑な供給を常に実現できるよう、販売と生産のネットワークも拡張している。その成功の秘密は、それぞれの国の好みに合わせた特別なスイーツの開発をしていることにある。
2020年時点においては、世界120か国以上において販売され、世界10か国(日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、欧州18か国、米国、ブラジル等)の16拠点で、HARIBO商品が生産、販売されている(資料2~資料4)。
日本においては、1985年に販売を開始し、2020年には、三菱食品株式会社(以下「三菱食品社」という。)を輸入代理店として日本市場に合わせて規格を変更し、日本向けフレーバ―も登場させて、販売を開始している。さらに、2023年には、日本法人であるHARIBO Japan株式会社(以下「HARIBO Japan社」という。)を設立し、日本における販売網の拡大及びTVコマーシャル等を用いた広告宣伝活動を行うことにより、拡大する日本のグミキャンディ分野において、販売・売上実績第一位の地位を確立している(資料5及び資料6)。
イ 引用商標の著名性について
(ア)「HARIBO」の社名と商品名の由来
「HARIBO」は、申立人の創業者であるハンス・リーゲル(Hans Riegel)の氏名と会社が創立されたドイツの都市の地名であるボン(Bonn)の頭文字を取って創造された独自の造語である。
そして、申立人の創立以来、申立人の名称の略称として、及び申立人の製造販売に係るグミキャンディの商品名として使用してきた。
現在ではドイツ、フランスに加えて、英国、デンマーク、オーストリア、スペイン、トルコ、ハンガリー等10か国で16工場が稼働しており、世界120か国以上にグミ製品を出荷し、グミキャンディ世界最大のメーカーとしての地位を築いており、世界的に著名なブランドであるといえる(資料7)。
(イ)商標登録の状況
「HARIBO」は、辞書にない新規な造語のため、日本においては「HARIBO」の欧文字及びその音訳である「ハリボー」又は「ハリボ」と同一の称呼が生じる登録商標は、申立て時点において、指定商品及び役務の全区分を通じて、申立人の登録商標合計19件と、本件商標1件のみである(資料8)。
海外においては、申立人及び関連会社名義の「HARIBO」及びこれを構成要素とする商標が世界各国・地域において、延べ886件登録されている(資料9)。
この情報を更に詳しく見ていくと、合計71の国・地域及び国際機関(WIPOマドリッド国際登録)において、第30類の指定商品を指定した「HARIBO」の文字のみからなる商標は、合計で223件有効に存続している(資料9の1)。
(ウ)日本における状況
「HARIBO」は、上述のとおり、1920年の採用以来100年以上にわたって、申立人の商品について使用されているところ、我が国においては、1985年の販売開始以来、40年の販売実績を有する。
その間、2000年からは、従来の輸入食料雑貨品店に加え、スーパーマーケットにおいても販売され、現在では国内大手のコンビニエンスストアにおいても販売がされている(資料10~資料12)。
前述したとおり、2020年には、三菱食品社を輸入代理店として日本市場に合わせて規格を変更し、日本向けフレーバ―も登場させて販売を開始し、さらに2023年には、HARIBO Japan社を設立し、日本における販売網の拡大及びTVコマーシャル等を用いた広告宣伝活動の強化を行うことにより、日本において拡大するグミキャンディの分野において、販売・売上実績第一位の地位を確立してきている(資料16)。
一般の消費者は、日々、スーパーマーケット、コンビニエンスストアにて、日用品、飲食料品、雑誌等の購入をはじめとして、各種の音楽コンサート、映画、演芸等のイベントのチケット購入や、電気・ガス・税金等の公共料金の支払も利用していることからすると、一般の消費者の日々の生活には密接な繋がりがあり、このことは、一般の消費者はほぼ毎日、申立人のグミキャンディ「HARIBO」を目にする機会があると推測され、また同時に容易に購入できる実情であることも推測できる(資料10~資料12、資料36(決定注:資料36は提出されていない))。
さらに近年、申立人は、日本におけるグミ菓子市場の成長、及び申立人の商品のシェア拡大を受けて、2021年に日本で初となるテレビコマーシャル(CM)を放映し、同年度の「消費者を動かしたCM展開 特別賞」を受賞した(資料13)。このCMの効果もあり、同社の販売売上は前年比120.5%を達成している(資料14)。
また、申立人は、2024年にも日本で第2弾となるCMを放映し、CM総合研究所が発表した9月度のCM好感度ランキングにおいて、菓子カテゴリー1位を獲得し、日本市場において、その人気を博しているといえる(資料15)。
加えて、申立人の製造販売するグミキャンディの業界は目覚ましい成長を遂げている。例えば、同種の商品として、グミの他、キャンディ・ソフトキャンディ、ガム、タブレット、ラムネといった5つのカテゴリーがあるが、POSによる分析「金額実績(100店舗当たりの金額(以下同じ。))」によれば、2021年12月~2022年11月の1年間でグミが前年比112.2%(113,050千円)と大幅に伸長しており、グミのカテゴリーにおいては、申立人の商品が最もその金額が高く、グミ全体の金額である23,257千円中、6,655千円となっている。
また、ハードグミの人気ランキングトップ10の中には、申立人の商品が9品も占めており、日本国内のハードグミ市場において、その地位、占有度は極めて高い。
そして、申立人の商品は、2000年から日本のスーパーマーケットにおいて販売開始されているところ、20年の間に、6.9倍もの実績推移があり、まさにハードグミ商品分野のけん引役ともいえるものである(資料16)。
以上の事実を踏まえれば、「HARIBO」は、世界的なグミ菓子メーカーである申立人のコーポレートブランドであり、申立人の名称の著名な略称として、海外のみならず、我が国においても一般消費者・取引者の間で広く知られている。
そして、申立人の「HARIBO」商標は、日本国内において、グミ菓子について使用されている著名な商標であり、独特のCM放映等を通じて、菓子の分野を超えて、一般の需要者の間において広く知られた周知商標ということができる。
ウ 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(ア)本件商標について
本件商標は「HARIBOW」の欧文字からなるものであり、その構成文字に相応して「ハリボー」の称呼が生ずるものである。
また「HARIBOW」の文字は一般の辞書に掲載のない造語で、特定の意味合いを理解、認識させるものではない。一方、申立人の商標である「HARIBO」は周知著名であるところ、本件商標は、その構成文字全部をその構成に含むものであり、かつ、両者とも「ハリボー」の称呼を共通にするものである。そうすると、一般需要者をして、申立人の著名商標である「HARIBO」を容易に想起、連想させるものといえる。
(イ)引用商標について
上述のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品「グミキャンディ」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の菓子を取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識されているものである。
そして、引用商標は、「HARIBO」の欧文字よりなり、その構成文字に相応して「ハリボー」又は「ハリボ」の称呼が生じるものである。観念についても、申立人の業務に係る商品「グミ菓子」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の菓子を取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識されているから、「ハリボーのグミキャンディのブランド名」の意味合いが生じるものである。
(ウ)本件商標と引用商標の類似の程度について
本件商標は、「HARIBOW」の欧文字からなるものであり、外観においては、本件商標を構成する7文字中、「H」「A」「R」「I」「B」「O」の6文字が、申立人の著名な商標である「HARIBO」の欧文字と共通しており、その差異は、語尾の「W」の有無にすぎない。
また、本件商標は、その構成文字に相応して「ハリボー」又は「ハリボウ」の称呼が生ずる。
さらに、本件商標の構成中「HARIBO」の欧文字は、申立人の周知著名な引用商標の欧文字部分と、上記のとおり、第1文字から第6文字までのつづりを共通にし、その差異は語尾における「W」の有無にすぎないから、申立人の著名商標である「HARIBO」を容易に連想、想起する。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼において類似し、観念においても紛らわしいものであるから、本件商標と引用商標との類似性は極めて高いといえる。
(エ)引用商標の独創性の程度とハウスマークとしての使用について
引用商標は、「HARIBO」の欧文字からなるところ、該語は一般の辞書等に掲載はなく、特定の意味を有しない造語である。
そして、「HARIBO」は、申立人の創業者であるハンス・リーゲル(Hans Riegel)の名前と会社が創立されたドイツの都市・ボン(Bonn)の頭文字を取って創造された独自の造語であり、申立人の創立以来、申立人の略称、ハウスマーク及び製品名として使用されてきた。
したがって、引用商標は、造語であり、独創性の程度は極めて高く、かつ、申立人の著名なハウスマークである。
(オ)本件商標の指定役務と引用商標に係る商品との関連性の程度並びに取引者、需要者の共通性その他取引の実情について
申立人が業務として取り扱う「菓子」とは、国語辞典によれば「食事以外に食べる甘味などの嗜好品」のように定義されている(資料17)。そして、「嗜好品」とは、「栄養をとるためでなく、その人の好みによって味わい楽しむ飲食物」や「栄養摂取を主要な目的とせず、香味や快い刺激などを楽しむため用いるもの」と定義されている(資料18)。
したがって、菓子は、趣味性や娯楽性の高い商品であり、幼児、子供から大人、さらに年配の方においても、それぞれの嗜好によって好みが分かれ、かつ、日々の食生活において味わい、楽しむことのできるものである。
他方、本件商標の指定役務は、第41類の役務であるところ、第41類は「類似商品・役務審査基準」によれば、「主として、あらゆる形態の教育又は訓練のサービス、娯楽又はレクリエーションを基本的な目的とするサービス、並びに文化又は教育のための視覚的美術品の展示及び文献の供覧を含む」区分とされている(資料19)。
そして、本件商標の第41類の指定役務には、娯楽や嗜好に関する役務が含まれ、これらの役務のうち、インターネット上で配信されるユーチューブ、映画、演芸、演劇、スポーツ、娯楽施設等は、まさに各人の娯楽や嗜好に左右されるものであり、日々の生活を楽しく、豊かにするものである。
そうすると「菓子」と第41類のこれらの役務とは、各人の趣味・趣向、求める娯楽等、人が楽しむ物事を提供するという点で、その目的・用途を共通にするものである。
そして、本件商標の指定役務中の「映画の上映・制作又は配給」や「映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供」については、映画館でポップコーン菓子が販売されているところ、ポップコーン菓子以外のグミ菓子等を量り売りしている、全国展開の映画館もある(資料21)。さらに映画館のみならず、オリジナル菓子を販売している劇場やライブ会場、スポーツスタジアムも多く存在する(資料22~資料31)。
そうすると「菓子」と第41類のこれらの役務とは、人が楽しむ物事を提供するという目的・用途の共通性に加え、販売場所・役務の提供場所を共通にする場合もあり、かつ、両者は需要者、取引者が共通する場合がある。
次に、第41類のその他の役務は、教育や文化に関するものであり、昨今では、製菓メーカーが、菓子の消費者である子供やその保護者等を対象とした食育活動に注力し、学校や菓子の製造工場等で出前授業・食育セミナーを開催しているという実情もある(資料32~資料35)。そうすると、本件商標の需要者は、子供も含む一般消費者であり、申立人の商品「グミキャンディ」は、主な消費者も子供を含む一般消費者である。加えて、このような出前授業や食育セミナーでは、動画やスライド、テキスト等が使用され、「菓子」と本件商標のこれらの指定役務の分野においても、需要者、取引者が共通するということができる。
また、実際に申立人は、企業による地域観光促進活動の一環として、体験型のイベントの企画・運営又は開催を行っている。このイベントでは、広告宣伝(菓子カテゴリー1位を獲得したハリボーグミ「鎧武者編」のTVCM)をみた子供はもちろん、その保護者等の一般の需要者が参加している(資料20)。
そうすると、本件商標の指定役務の分野においても、菓子の需要者と、本件商標の需要者は共通する場合があるということができる。
また、申立人は、企業によるスポーツ振興支援活動も行っている。例えば、世界的に知られている「ツール・ド・フランス」が2014年に英国にて開催された際には、企業スポンサーとして参画した。スポンサーによるキャラバンカーのパレードにおいては「HARIBO」の商標を付したキャラバンカーを出展するほか、グミキャンディを観客に配布する等、世界的競技運営の支援を通じて、スポーツの振興にも寄与して実績がある(資料20の1)。
したがって、申立人の行っている、このような地域観光振興支援活動や国際的スポーツ競技の振興支援活動は、第41類の本件商標の指定役務とも密接な関係を有しているものであり、参加者は一般の需要者であることから、菓子の需要者と共通にする場合があるといえる。
以上のとおり、本件商標の指定役務と申立人の業務にかかる菓子は、人が楽しむ物事を提供するという目的・用途の共通性に加えて、販売場所・役務の提供場所を共通にする場合もあり、また、子供を含む一般の消費者であるという点でも、需要者、取引者が共通する場合がある。
加えて、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品の主たる需要者は、子供を含む一般の消費者であるところ、その注意力はそれほど高いとはいえないものであり、サービスの提供を受ける際にあたり、それほど高い注意を払うともいえない。
(カ)出所混同のおそれ
前記のとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度、引用商標の周知著名性及び独創性の程度、商品等の関連性の程度、商品等の取引者、需要者の共通性その他取引の実情、及び本件商標の指定役務の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的にみると、本件商標権者がその指定役務について使用をした場合、これに接する取引者、需要者は、引用商標を連想又は想起し、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、「HARIBOW」の欧文字よりなるものである。
そして、上記のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「HARIBO」は、申立人の著名な略称であったというべきであるから、本件商標に接した需要者は、本件商標の構成中の「HARIBO」の文字部分から、申立人の著名な略称である「HARIBO」を認識するというのが相当である。
そして、本件商標権者は、本件商標に関して申立人の承諾を得ていない。
そうすると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の著名な略称を含むものであって、かつ、本件商標権者は、本件商標の出願及び登録について、その承諾を得ていなかったものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性
ア 申立人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)申立人について
申立人は、1920年にドイツに設立され、2020年に創設100年を迎えた製菓会社である。申立人の名称中の「HARIBO」の文字は、創業者のハンス・リーゲル(Hans Riegel)の氏名と会社の創設地のボン(Bonn)の頭文字から取って命名された。1922年に創業者のハンス・リーゲルが、熊型のグミキャンディを考案し、これが「ゴールドベア」と呼ばれる代表的な商品につながった。2020年においては、世界120か国以上において販売され、世界10か国16工場が稼働中とされる(資料2~資料4、資料7)。
(イ)日本における状況
a 販売経緯
日本においては、申立人の業務に係る商品「グミキャンディ」(以下「申立人商品」という。)を売り出したのは1985年とされる(資料5)。輸入総代理店の三菱食品社のウェブサイトには、「ハリボー」(引用商標4)及び「HARIBO」(引用商標5)の表示とともに、「・・子どもから大人まで浸透し、生活に密着したブランドで、100年以上の歴史を持つ世界最大のグミキャンディ製造メーカー」の記載があり、その下に、引用商標4~6を表示した申立人商品が紹介されている(資料7)。
また、申立人商品は、2000年頃からスーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアで販売されていたことがうかがえるところ、出願日前後の2024年7月末及び11月頃に、引用商標4~6を表示した申立人商品が、コンビニエンスストア3社で取り扱われていた(資料10~資料12、資料15及び資料16)。
しかしながら、スーパーマーケット、ドラッグストア等における2000年頃から本件商標の登録出願時及び登録査定時までの間の申立人商品の具体的な販売実績(2021年12月~2022年11月の期間を除く)に関する証拠は提出されていない。
b 広告宣伝
2021年12月に、申立人は、誕生100周年を迎えた「ゴールドベア」と呼ばれる商品のテレビコマーシャルを放映し、第30回「BRAND OF THE YEAR 2021」(主催:CM総合研究所)の「消費者を動かしたCM展開 特別賞」を受賞した(資料13及び資料14)。
2023年に設立された日本法人HARIBO Japan社が、2024年9月9日から第2弾のテレビコマーシャルを全国で放送開始したが、当該テレビコマーシャルは本件商標の登録出願後である(資料6及び資料15)。
c 2021年12月~2022年11月のグミ市場のトレンドについて
株式会社マーチャンダイジング・オンが提供する全国のスーパーマーケットやドラッグストアなどの小売店の販売実績データの分析によれば、以下のことがうかがえる(資料16)。
(a)上記1年間の「グミ、キャンディ・ソフトキャンディ、ガム、タブレット、ラムネ」の5つのカテゴリーでは、グミの累積実績が「133,050千円」で前年比112.2%と伸長した。一方、キャンディ・ソフトキャンディの累積実績は「391,235千円」で前年比101.5%であった。なお、当該カテゴリーに占めるグミとキャンディ・ソフトキャンディの構成比は、グミが20.2%でキャンディ・ソフトキャンディが59.3%である。
(b)同期間の「ハードグミ」(弾力のある固い食感のグミ)の8つのブランドの累積実績は「23,257千円」で、前年比は131.2%である。そして、当該「ハードグミ」の中で構成比が最も高いのは「ハリボー」で、累積実績は「6,655千円」で構成比は28.6%である。なお、(a)に記載したグミの累積実績「133,050千円」に占める「ハリボー」の累積実績の構成比を計算すると約5%である。
(c)「ハリボー」が日本のスーパーに顔を出し始めたのは上記販売実績データ上では2000年のことであり、2000年から20年間で実績が6.9倍に上がった。
(d)同期間における輸入品のグミは、国内品のグミと比べ、構成比6.7%と小さいが、前年比162.2%と大きく伸長した。人気があった輸入グミのランキング上位を「ハリボー」が独占していたが、2022年4月から他商品の進出が増え始め2022年10月には他社商品が一位となった。なお、国内品と輸入品の累積実績はそれぞれ「124,077千円」、「8,973千円」である。
イ 前記アで認定した事実によれば、申立人は、1920年にドイツに設立されたグミキャンディの製菓会社であるところ、日本において、1985年頃から販売が開始された申立人商品は、2000年頃にスーパーマーケットやコンビニエンスストア等でも販売され、2021年の「消費者を動かしたCM展開 特別賞」の受賞とグミ市場の伸長をきっかけに、引用商標が、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時には我が国のグミ菓子を取り扱う分野における取引者、需要者にある程度知られていたことがうかがえる。
しかしながら、2021年12月~2022年11月の1年間における申立人の販売実績や2000年から20年間の販売実績の推移は示されているが、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等での販売を開始した2000年頃から本件商標の登録出願時及び登録査定時までの間について、申立人の我が国における売上高、店舗数、販売地域等の販売規模を裏付ける客観的な証拠の提出はなく、申立人商品の販売規模やその推移を推し量ることができない。
また、広告宣伝については、1985年に日本での販売が開始されたにもかかわらず、本件商標の登録出願日までの広告宣伝は2021年のテレビコマーシャルに関するものだけであり、広告の頻度は高いといえず、また、広告宣伝を行った日本法人の設立は、本件商標の登録出願日のわずか約1年前の2023年であり、広告宣伝活動の期間も短いといわざるを得ない。その他、本件商標の登録出願時までの間について、申立人及び上記日本法人の我が国における広告宣伝活動の規模(媒体、回数や地域)等を裏付ける客観的な証拠の提出もなく、引用商標の浸透度を推し量ることができない。
さらに、引用商標は、種々の菓子等について使用される商標ではなく、グミという単一の商品に使用される商標であって、その需要者もある程度限定されているといえる。
以上のことからすると、引用商標は、申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
そして、「HARIBO」又は「ハリボー」の文字が申立人名称として使用されている事実は散見されるものの、引用商標が、申立人の略称を表示するものとして広く知られていたと認めるに足りる証拠はないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の略称として、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたとも認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 引用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠によれば、上記(1)のとおり、引用商標は、2022年頃までには我が国のグミ菓子を取り扱う分野の取引者・需要者の間においては、ある程度知られていたことがうかがえるものの、引用商標が申立人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとまで認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は、上記1のとおり、「HARIBOW」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「ハリボー」又は「ハリボウ」の称呼を生じ、また、その構成文字は、辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
他方、引用商標においては、上記2のとおり、「ハリボー」の片仮名からなる引用商標4以外の商標は、「HARIBO」の欧文字を有し、又は当該欧文字からなるものであるところ、それぞれの構成文字に相応して「ハリボ」又は「ハリボー」の称呼を生じ、また、その構成文字は、辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
そこで、両者の類否を検討するに、外観においては、本件商標と引用商標(引用商標4を除く。)とは、語尾における「W」の欧文字の有無の差異を有するが、語頭から6文字の「HARIBO」の欧文字を共通にするものであるから、外観において近似するといえる。
また、本件商標の称呼は、「ハリボー」又は「ハリボウ」の称呼を生じ、引用商標からは、「ハリボ」又は「ハリボー」の称呼を生じるから、両者は、「ハリボー」の称呼を共通にし、また、語尾の長音の有無、又は語尾の「ボ」に帯同する「ウ」の音と長音の差異があるが、これらを一連に称呼するときは相紛らわしく聞き誤るおそれがあり称呼上、類似するものといえる。
さらに、本件商標及び引用商標からは、特定の観念は生じないから、両者は、観念上比較することができない。
以上のことからすると、本件商標と引用商標(引用商標4を除く。)とは、観念において比較することができないとしても、外観が近似し、称呼において類似する商標というべきであり、その類似性の程度は高いといえる。
次に、本件商標と引用商標4「ハリボー」との類否を検討する。
本件商標は、先に述べたとおり、「HARIBOW」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「ハリボー」又は「ハリボウ」の称呼を生じ、また、その構成文字は、辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
一方、引用商標4は、「ハリボー」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「ハリボー」の称呼を生じ、また、その構成文字は辞書等に載録されていないものであるから、特定の観念は生じない。
そこで、本件商標と引用商標4を比較すると、外観においては欧文字と片仮名という文字種の相違があるものの、商標の使用においては、その構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記することが一般的に行われているところ、「ハリボー」を「HARIBO」の欧文字に変換し表記する場合は、本件商標の「HARIBOW」と語尾「W」以外の欧文字を共通とし、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえないものである。そして、称呼においては「ハリボー」の称呼を共通にし、観念においては、いずれも特定の観念は生じないことから観念上比較することができない。
そうすると、本願商標と引用商標4とは、観念において比較することができないとしても、外観上の差異は、両者を別異のものであることを認識させるほど強い印象を与えるとまではいえないものであり、また、両者は称呼を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきであり、その類似性は比較的高いといえる。
ウ 標章が造語よりなるものであるか
上記(1)のとおり、「HARIBO」の文字は、申立人の創業者のハンス・リーゲル(Hans Riegel)の氏名と会社の創設地のボン(Bonn)の頭文字から取って命名されたものであって、「HARIBO」及び「ハリボー」の文字は辞書等に載録されていないものであることから、引用商標は、造語よりなるものといえる。
エ 本件商標の指定役務と申立人商品との関連性及び商品等の需要者の共通性その他の取引実情
本件商標の指定役務は、上記1のとおり、第41類に属する役務を指定役務とするものであって、「主として、あらゆる形態の教育又は訓練のサービス、娯楽又はレクリエーションを基本的な目的とするサービス、並びに文化又は教育のための視覚的美術品の展示及び文献の供覧を含む」区分とされている(資料19)。
他方、申立人商品は、種々の菓子類がある中のグミキャンディという単一の商品である。
そうすると、引用商標が使用されている申立人商品と本件商標の指定役務とは、商品の製造・販売者と役務の提供が同一事業者によって行われていることが一般的とはいえないこと、また、商品と役務の用途が必ずしも一致するとはいえないことから、仮に、映画館において、商品の販売場所と役務の提供場所、需要者が一致することがあるとしても、その業界が明らかに相違するものといえるから、その指定役務と申立人商品とは関連性があるとはいえない。
オ 出所混同のおそれについて
上記アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されているとはいえず、また、上記エのとおり、本件商標の指定役務と引用商標が使用される申立人商品とは、その業界を明らかに異にする関連性のない役務と商品であることからすれば、上記イのとおり、本件商標が引用商標と類似性の程度は高い、もしくは比較的高いものであって、また、上記ウのとおり、引用商標が造語よりなるものであるとしても、本件商標に接する需要者等が引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
上記(1)のとおり、「HARIBO」及び「ハリボー」の文字が申立人名称として使用されている事実が散見されるものの、引用商標が、申立人の略称を表示するものとして広く知られていたと認めるに足りる証拠はないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称として我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
そうすると、本件商標は、「HARIBO」の文字を含むとしても当該文字は他人の名称の著名な略称とはいえないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-900106