商標異議申立
2025-900069
フグノカミ、カミ
- 審判番号
- 2025-900069
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-113158
- 登録番号
- 6889964
- 請求日
- 2025年03月28日
- 審決日
- 2025年10月20日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社JR西日本イノベーションズ
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】勝見 元博
- 【権利者代理人】渡辺 大仁
- 【権利者】株式会社陸水
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】勝見 元博
- 【権利者代理人】渡辺 大仁
- 【異議申立人】木村 一徳
- 【異議申立人代理人】川島 祥一
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 勉
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 真鍋 伸行
- 分類
- T1651.22 -Y (W29303143) / T1651.23 -Y (W29303143) / T1651.255-Y (W29303143) / T1651.271-Y (W29303143) / T1651.222-Y (W29303143)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6889964号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6889964号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6889964号商標(以下「本件商標」という。)は、「ふぐの神」の文字を標準文字で表してなり、第29類ないし第31類及び第43類に属する商標登録原簿の記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和6年10月22日に登録出願、同年12月27日に登録査定、同7年1月27日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、申立人が役務「飲食物の提供」及び商品「ポン酢」に使用する別掲1ないし3のとおりの商標(以下、別掲の番号順に「引用商標1」「引用商標2」、「引用商標3」という。)及び普通に用いられる方法で表示される「ふぐの神」の文字からなる商標(以下「引用商標4」という。)である(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある)。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)本件商標と引用商標
申立人は、「ふぐ料理」及び「はも料理」を提供する飲食店を経営し、標章「ふぐの神」をその飲食店の屋号に付すなどしており、飲食物の提供について引用商標を使用している(甲2~甲4)。
また、引用商標には、「ふぐの神」の文字が含まれているところ、本件商標は、「ふぐの神」の文字を標準文字で表してなるから、本件商標は引用商標と同一又は類似である。
申立人の役務は「ふぐ料理の提供」又は「はも料理の提供」であるところ、本件商標の指定役務のうち、第43類の役務と同一又は類似である。
また、申立人の商品は「ポン酢」であるところ、本件商標の指定商品のうち、第30類の「調味料」は、その申立人の商品を含んでおり、本件商標の指定商品は申立人の商品と同一である。
(2)申立人の引用商標の使用状況
申立人は、2003年10月より前には、大阪市内でふぐ料理チェーン「ふぐ政」の長柄店を経営していた。申立人は、ふぐ料理に合うポン酢を独自に開発し、申立人の店舗のみで提供したところ、そのポン酢が話題となり、申立人の店舗が注目を集めるようになった。申立人は、それを機に当該チェーン店から円満に離脱し、2003年10月10日、大阪市北区長柄に、ふぐ料理を提供する飲食店を自ら開業した。その店舗が、現在まで申立人が経営を続けているふぐ料理店であり、申立人はその独立開業の際、屋号に「ふぐの神」を付して使用を開始した(甲9)。
独立開業後、申立人の店舗「ふぐの神」(以下、単に「店舗「ふぐの神」」という場合がある。」は、繁盛し、2007年9月17日には2号店である「神ぷく亭」をオープンさせ、申立人は、その「神ぷく亭」においても、「ふぐの神」グループであることを示すため、引用商標2を看板及びのれんに付して使用していた(甲10)が、テナントビルの老朽化に伴う建物取り壊しのため、2018年3月31日に閉店した。
申立人の店舗「ふぐの神」は、従前から人気店であったことによる良好な財務体質、及び、申立人が長年にわたり引用商標を使用したことによって、その引用商標に化体した業務上の信用に基づく関係者からの支援により、新型コロナウィルスが蔓延した際の厳しい経営環境を耐え抜いて、現在も存続している(甲2、甲3)。
また、申立人は、店舗「ふぐの神」の独立開業前から人気のあったポン酢を「一徳ぽんず」の名称で販売し、その容器には、少なくとも2013年の年末には、引用商標2が付されており(甲11)、「ふぐの神」ブランド「一徳ぽんず」として需要者に親しまれている。
以上のように、申立人は、引用商標を20年以上にわたって、一貫して使用している。
(3)引用商標の独創性
ア 店舗の名称の由来
店舗の名称「ふぐの神」は、大阪市北区長柄に古くから伝わり地元住民に親しまれている鶯塚と呼ばれる社に由来する。鶯塚は、申立人のふぐ料理店の斜め向かいの大樹のふもとにあり(甲12)、申立人は、独立開業の際、その鶯塚に着想を得て、ご利益にあやかり吉祥を感じさせる名称を屋号に採用することを思いつき、福を呼ぶ縁起物の象徴として親しまれている魚の「ふぐ」と幸福をもたらす象徴である「福の神」に基づいた造語「ふぐの神」を自ら創作した。当該語は、辞書には掲載されていないことからも、独創的な造語であることは明らかである。
イ 「ふぐの神」の完全一致検索の結果
2025年4月16日にGoogleでキーワード「ふぐの神」を完全一致で検索した結果(甲13)、第1ページから第10ページまでの91件の検索結果において、申立人の店舗「ふぐの神」に関するウェブサイトが72件、本件商標に関連するウェブサイト(本件商標権者である株式会社JR西日本イノベーションズ(以下「JR西日本イノベーションズ」という。)の親会社である西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)のウェブサイトを含む。)が12件、本件商標にも申立人の店舗にも関連しないウェブサイトが7件である。そのどちらにも関連しないウェブサイトは、「ふぐの神捌き」の語に含まれる「ふぐの神」の文字に基づいて抽出されたものであるから、「ふぐの神」の語とは全く別である。言い換えると、申立人の店舗に関連する以外に本件商標と関連のあるウェブサイトだけである。
そうすると、JR西日本あるいはJR西日本イノベーションズが本件商標の使用を開始する前には、申立人だけが「ふぐの神」の語を使用しており、申立人以外に標章「ふぐの神」を使用する者は存在しなかったことは疑いの余地がない。
ウ JR西日本による本件商標の使用開始時期
本件商標権者は、2024年12月6日に、本件商標が付された大阪産トラフグの販売開始をプレスリリースしている(甲14の1・2)。また、JR西日本イノベーションズは、それよりも前の2022年11月30日及び2024年2月8日にも、本件商標権者である株式会社陸水(以下「陸水」という。)が養殖する大阪産トラフグに関する事業情報をプレスリリースしている(甲14の3・4)。当該プレスリリースでは、「PROFISH」、「陸水トラフグ」の名称を使用しており、「ふぐの神」の語の使用は認められない。
したがって、上記プレスリリースよりも前には、本件商標権者は、本件商標を使用していなかったと推認され、少なくとも2024年2月8日以前には、本件商標を使用していなかったことは明白である。
これらの事実と上記イの完全一致検索の結果に基づけば、2024年2月8日以前には、申立人だけが引用商標を使用しており、申立人以外に標章「ふぐの神」を使用する者は、存在しなかったことは明らかである。以上のことからも、申立人が創作した「ふぐの神」の語が、独創性の高い造語であることは、紛れもない事実である。
(4)引用商標の周知性
ア テレビ放送
申立人の店舗「ふぐの神」は、2006年12月16日に、毎日放送(MBS)の情報番組「せやねん」の人気企画「どこいこ?」で「冬のボーナス出た!こだわりの贅沢グルメ食べにいこ!」に取り上げられ、申立人の店舗「ふぐの神」が4分以上にわたり特集された(甲15)。
また、申立人の店舗「ふぐの神」は、2019年7月20日に、再び毎日放送(MBS)の同番組、同企画で「夏祭りのごちそう!鱧料理食べにいこ!」に取り上げられ、申立人の店舗「ふぐの神」が4分以上にわたり特集され(甲16)、店舗の紹介の際には、音声でも「フグノカミ」と発音されている。
同番組「せやねん」は、2001年4月から現在まで続く長寿番組であり、近畿2府4県に加えて徳島県及び福井県でも放送されており、関西地方の在住の者にはよく知られた高視聴率の番組である。
2023年9月6日には、TBS系列で全国放送されている情報番組「ラヴィット」にて、申立人が「ふぐの神」のブランドで販売している調味料「一徳ぽんず」が紹介され、動画ファイルにおいては、0分56秒以降に「一徳ぽんず」が映っており、1分10秒以降にその「一徳ぽんず」の紹介がなされている。特に1分17秒には、出演者から「大阪にふぐの神っていうふぐの名店があるんですけど、そのふぐの神さんと一緒に作らしてもらってる」と紹介されるとともに、「一徳ぽんず」の瓶のラベルに付された引用商標2が映し出されている(甲17)。そして、その放送日には「一徳ぽんず」の注文が急増し、同日だけで、298本が売れ、その販売量の発送先トップ10には、申立人の店舗が存在する大阪府やそれに隣接する兵庫県、京都府だけでなく、東京都、神奈川県、愛知県、埼玉県、岡山県、北海道、山口県が含まれていた(甲18)。したがって、全国の視聴者が「ふぐの神」を申立人のポン酢を表示するものと認識したことは明白である。
イ 雑誌
申立人の店舗「ふぐの神」は、当時角川書店から刊行されていた情報誌「関西ウォーカー(2006年)」に取り上げられた(甲19)。同誌の特集「新春あっぱれ!スペシャル ぜ~んぶ半額!!カニ・寿司・フグ・カキ」において、「評判のポン酢で良質フグを食す」という見出しとともに、申立人の店舗「ふぐの神」の情報が掲載された。当該特集は、同号のメイン特集であり、表紙及び目次には大きな文字で当該特集のタイトルが記載されていることからも、多くの購読者が申立人の店舗「ふぐの神」の記事を精読し、引用商標をその申立人の店舗を表示するものと認識したと推認される。
ウ インターネット記事
申立人の店舗「ふぐの神」は、飲食店支援サービス「ぐるなびPRO」のウェブサイトのなかで、2号店「神ぷく亭」とともに紹介されている(甲10の1)。当該記事は、2012年9月19日に公開されている。
また、申立人の店舗「ふぐの神」は、インターネットメディア「ねとらぼ」、「aumo」、「macaroni」にふぐ料理店のランキングとして1位ないし4位、あるいはふぐ料理のおすすめ店などと掲載されている(甲20~甲22)。
エ SNS(ソーシャルネットワークサービス)
申立人の店舗「ふぐの神」は、TikTokでフォロワー数6万人以上を有し、グルメ情報を発信するアカウント「bossgourmet」で紹介されている。当該店舗に関する動画は、本件商標の出願前の2022年1月9日に投稿されていて、投稿の動画開始から4秒後及び最後には、「ふぐの神 大阪・天六」の文字がテロップで明示されている。2025年3月28日において、この投稿の再生回数は、約5.8万回に達している(甲23)。
また、申立人の店舗「ふぐの神」は、インスタグラムでフォロワー数13万人以上を有し、グルメ情報を発信するアカウント「masaki.gurume」で紹介されている。当該店舗に関する動画は、本件商標の出願前の2023年9月19日に投稿されていて、当該投稿の文章には、「ふぐの神」の文字が明示され、トップ写真には、引用商標2が付された「一徳ぽんず」が掲載されている。2025年3月28日において、この投稿の再生回数は、約17万回に達している(甲24)。
さらに、申立人の店舗「ふぐの神」は、TikTokでフォロワー数4万人以上を有し、グルメ情報を発信するアカウント「osaka_b_kyu_gourmet」で紹介されている。当該店舗に関する動画は、本件商標の出願前の2023年10月15日に投稿されていて、当該投稿の文章には、「ふぐの神」の文字が明示され、動画開始から49秒後には引用商標2が付された「一徳ぽんず」が紹介され、動画開始から1分後には「ふぐの神」の文字がテロップで表示されるとともに、引用商標が付された店舗外観が映し出されている。2025年3月28日において、この投稿の再生回数は、約2.5万回に達している(甲25)。
SNSの再生回数は、通常の投稿形態であれば、投稿直後に大きな伸びを示し、数週間後にはその伸びは鈍化しほぼ一定になる。上記アカウントにおける投稿日は、いずれも本件商標の出願日の1年以上も前であり、本件商標の出願時又は登録査定時(以下「本件商標の出願時等」という。)以降に、それらの投稿自体がメディアに取り上げられるなどの特段の事情もない。以上のことから、本件商標の出願時等には、おおよそ上記の再生回数に達していたと推察される。
オ ウェブサイトのアクセス数
申立人の店舗「ふぐの神」は、グルメサイト「食べログ」、「ぐるなび」、「ホットペッパーグルメ」、「Googleビジネスプロフィール」に登録されており(甲26~甲29)、また、申立人の自店舗の「公式ホームページ」を運用しており(甲2)、各媒体におけるアクセス数の累計は、2023年2月から2023年12月までの11ヶ月間の合計のPVは、334,186PVであり、2024年1月から2024年12月までの12ヶ月間の合計のPVは、473,760PVである(甲30、甲31)。
カ 広告宣伝費
申立人は、「食べログ」、「ホットペッパーグルメ」及び「ぐるなび」に対して、広告宣伝費を支払っている(甲32~甲34)。この広告宣伝費は、グルメサイトによって、多少の差異はあるものの、主にサイト内検索において自店舗ページを上位に表示するための費用、利用者がそのグルメサイト経由で来店予約を可能とするための費用などを含んでいる。申立人は、その広告宣伝費を支払うことにより、自店舗の周知性向上及び来店予約の利便性向上を図っており、その結果として、各グルメサイトにおける申立人の店舗ページへのアクセス数が増加する。
また、申立人は、「公式ホームページ」にもSEO対策として、広告宣伝費を支出している(甲35)。
申立人が支払った広告宣伝費をまとめると、2023年2月から2023年12月までの11か月間で3,095,654円、2024年の12か月間で3,523,363円となっている(甲36)。
キ リスティング広告(検索連動型広告)
申立人は、リスティング広告を出稿しており、Googleへのリスティング広告の表示回数の総計は、2023年2月からの11か月間で約1,250万回であり、2024年の12か月間で約1,350万回である。特に2023年3月、同6月及び2024年3月には、表示回数の合計が月間で200万回を越えている。
このように、Googleを利用する多くの者に申立人の店舗「ふぐの神」の広告を見る機会が与えられ、多数の需要者が引用商標を申立人の商品又は役務を表示するものとして認識したことは明白である。
ク 検索サイトにおける検索結果
Googleでキーワード「ふぐの神」を検索した場合、第1ページから第3ページまでの検索結果の95%が申立人の店舗に関するウェブサイトである。申立人の店舗「ふぐの神」の公式ページが第1位に表示されているだけでなく、その店舗に関連するウェブサイトが、検索結果の上位に、かつ、支配的に表示されている。この状況は、申立人が本件商標の出願前から長年にわたって広告宣伝費を投じてSEO対策を行った結果であり、言い換えると、検索エンジンが申立人の店舗の「ふぐの神」の公式ホームページ及びそれと密接に関連するウェブサイトであると判断した結果である。また、Googleでキーワード「大阪 ふぐ 安い」を検索した場合、Googleビジネスプロフィールの第1位に申立人の店舗が表示され、通常の検索結果としても9番目に公式ホームページが表示されている(甲41)。
ケ 来客数及び予約電話のお断り率
申立人が利用する予約台帳システム「トレタ」は、顧客からの電話の着信履歴と予約の成否とを関連付けて記録及び管理しているもので、その履歴データに基づけば、例えば、2023年11月における予約電話の受電数は、452回である(甲43)。その受電数のうち、予約が成立しなかったお断り数は、271回であり、その割合は、60%である。繁忙期である2023年12には、73%、2024年1月は、68%、同年2月は76%であった。
このように、申立人の店舗「ふぐの神」は、予約の難しい人気店であることは紛れもない事実である。
コ グルメサイトの口コミ
申立人の店舗「ふぐの神」は、グルメサイトの口コミで、「ホットペッパーグルメ」では、5点満点中4.7点、「食べログ」では、3.62点、「Googleビジネスプロフィール」では、4.5点の高評価を受けており(甲44)、本件商標の出願時には、すでに高評価の口コミが多数投稿されている。
サ 申立人が経営した2号店
申立人は、2007年から2018年まで、大阪心斎橋に「ふぐの神」の2号店である「神ぷく亭」を経営し、「ふぐの神」のグループであることを示すため、店頭に設置された看板及び入り口に掲げたのれんに引用商標2を付して使用していた(甲10)。「神ぷく亭」を訪れる人が引用商標を申立人の商品又は役務を表示するものとして認識したことは明白である。
シ 申立人の商品と取引先との関係
申立人は、大阪の有名焼肉店「焼肉ごりちゃん」グループの4店舗、及び神戸の人気焼肉店「焼肉じゅんちゃん」グループの2店舗に、申立人がプロデュースするポン酢「一徳ぽんず」を卸している。この「一徳ぽんず」は、申立人の「ふぐの神」のブランドで流通している。
「焼肉ごりちゃん」及び「焼肉じゅんちゃん」は、店長のおすすめ料理・こだわりとして、「タンの森」と称する塩タン料理を提供している(甲45)。また、「タンの森」及び「一徳ぽんず」は、情報番組「ラヴィット」でも紹介されている(甲17)。
申立人は、「タンの森」に「ふぐの神」ブランドの「一徳ぽんず」が使用されていることを宣伝するためのポスターを作成し、2021年に「焼肉ごりちゃん」及び「焼肉じゅんちゃん」に提供した(甲46)。「焼肉ごりちゃん」では、冊子タイプのメニューにそのポスターが挿入されて掲示されている。なお、店舗によっては、メニューデザインが異なる(甲6、甲46)。
焼肉店を訪れた客は、冊子タイプのメニューに一通り目を通してから注文するから、「焼肉ごりちゃん」を訪れたほぼ全員が、申立人の「一徳ぽんず」とそれに付された引用商標とを視認したと推察される。
(5)商標法第4条第1項第10号について
ア 申立人は、本件商標権者とは何ら関係がなく、商標法第4条第1項第10号の「他人」に該当する。
また、上記(1)のとおり、本件商標の指定役務は、申立人の役務と同一又は類似である。本件商標は、申立人の役務について使用する引用商標のうちいずれかと同一又は類似の商標である。また、本件商標は、申立人の商品について使用する引用商標1、引用商標2及び引用商標4のうちいずれかと同一又は類似の商標である。
さらに、上記(2)のとおり、申立人は、引用商標を2003年10月以降、20年以上にわたって継続使用しており、上記(3)のとおり、引用商標に含まれる「ふぐの神」という語は、申立人が独自に創作した造語であることは紛れもない事実である。そして、本件商標の権利者であるJR西日本イノベーションズが本件商標の使用開始前には、申立人だけが、「ふぐの神」の語を含む標章を使用していたことは明白である。
そして、上記(4)のとおり、引用商標は、本件商標の出願時等には、申立人の業務に係る商品「調味料」又は役務「飲食物の提供」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。
イ 「ふぐ」は、大阪を中心に食されており、ふぐの消費量の6割は大阪といわれている(甲48の1・2)。本件商標の権利者、陸水も、トラフグの最大の消費地が大阪であることを断定している(甲48の3)。また、大阪府におけるふぐ調理に関する資格者数は、10万人を越えており、その数は、東京都の約5倍、山口県の15倍である(甲48の1・2)。よって、大阪府のふぐの消費量が他の都道府県のそれを圧倒していることが推察される。事実として、大阪では、ふぐ鍋を「てっちり」、ふぐの刺身を「てっさ」と呼ぶなど、「ふぐ料理」は冬を代表する象徴的な料理として、地元大阪の住人だけでなく大阪を訪れる観光客にも人気である。
また、「トラフグの消費者評価とトラフグ市場」と題する論文(甲48の4)には、ふぐ食に関するアンケートが行われており、当該論文の図2及び3には、関東よりも関西でふぐを食べる人が多く、特に、関西では年に1回未満であるものの、外食でふぐを食べる人が多いという結果が示されている。また、図4には、ふぐを食べるときの場面として、暦行事、忘新年会・歓送迎会が多いという結果が示されていることから、ふぐ料理は、日常的に頻繁に食されるような商品ではないことが読みとれる。ふぐを食する機会に関するこのような傾向は、グルメサイトにおける口コミからも確認される(甲44)。
したがって、ふぐ料理が全国に平均して流通しているとはいえず、地域的嗜好性の極めて高い商品であり、日常使用の一般商品ではないことは明白である。それに加えて、大阪市が政令都市の中で2番目の人口を有するという事実をもってすれば、関西地方の中でも「ふぐ料理」について一商圏を形成している大阪市における周知性が重視されるべきである。
ウ 小括
以上のことから、引用商標は、本件商標の出願時等において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、当該商品又は当該役務の需要者の間に広く認識されていた。そして、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標である。また、本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品「調味料」と同一であり、本件商標の指定役務は、申立人の業務に係る「飲食物の提供」と同一である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(6)商標法第4条第1項第15号について
申立人は、上記(2)のとおり、大阪府大阪市北区にふぐ料理を提供する店舗を構え、20年以上にわたって、店舗名に「ふぐの神」を付して使用している。申立人の店舗では、主に佐賀産又は長崎産のふぐを提供しており、また、ふぐ料理に合うポン酢「一徳ぽんず」を「ふぐの神」のブランドで販売することで経営を多角化してきた(甲11の1)。さらに、申立人は、丁寧な接客を行うことでお客様との信頼関係を構築してきた。このような経営努力により業務上の信用を獲得し、さらにその信用を長年にわたって蓄積してきた。その結果が、上記(4)のとおり、テレビ、雑誌、インターネット記事及びSNSにも取り上げられるなどして、引用商標は、需要者の間に広く認識されるようになった。
本件商標の権利者は、2024年12月6日に、本件商標が付された大阪産トラフグの販売開始をプレスリリースしている(甲14)。そのプレスリリースによれば、本件商標が付された大阪産トラフグは、大阪府泉南郡岬町で陸上養殖されており、関西の量販店や飲食店等で販売された。また、JR西日本が運営するウェブサイトによれば、陸水が大阪市内の心斎橋に店舗を構える「生産者直営 海鮮居酒屋 Rikusui」にて、大阪府内に合わせて20店舗を有する「近商ストア」及び「Harves」にて、本件商標が付された大阪産トラフグが販売されることが紹介されている(甲49)。
すなわち、本件商標が付された大阪産トラフグは、すでに申立人の引用商標が周知性を獲得している大阪府内で流通することが明記されており、本件商標の権利者の業務に係る商圏と、申立人の業務に係る商圏とは、互いに大阪府で同一である。
このような状況によれば、本件商標が申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる商標であることは明白である。実際に、申立人の店舗「ふぐの神」では、2025年4月11日までに3件の出所混同が生じた事象があったことより、本件商標が申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせていたことは明らかである。
このような出所混同を生じさせる本件商標の登録査定処分は、申立人が経営努力により長年をかけて蓄積した業務上の信用を毀損するものである。
また、本件商標の指定商品について、第29類の商品は、魚を主原料とする食品に関するものであり、第30類は、そのうち「調味料」を除く商品は、食用のために加工した穀物、加工された穀物を主原料とする穀物の加工品に関するものであり、第31類では、食用の加工をしていない海産物又は飼料に関するものである。これらの指定商品は、申立人の業務に係る役務「ふぐ料理の提供」又はそのふぐ料理の提供における商品「ふぐ」と密接に関連しており、本件商標が商品及び役務の類似範囲を超えて申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(7)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品もしくは役務を表示する引用商標と同一又は類似の商標である。申立人は、20年以上にわたって一貫して、引用商標の使用を継続しており、上記(4)のとおり、引用商標は、本件商標の出願時等には、申立人の商品役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されていた。
また、ふぐを取り扱う業界は限定的であるため、20年以上にわたって経営を続ける申立人の店舗「ふぐの神」は、取引者の間でも広く認識されている。
そうすると、申立人と同じ大阪でふぐを商品として取り扱う本件商標の権利者が、申立人の引用商標を知る機会がなかったという特別な事情は考えられず、特に、ふぐを自ら養殖して販売するとともに、大阪の心斎橋で海鮮居酒屋を経営している陸水が、申立人の業務に係る引用商標を全く知らなかったという合理的な理由は存在しない。
さらに、「ふぐの神」の語は、上記(3)のとおり、申立人が創作した極めて独創性の高い造語であるにもかかわらず、本件商標の権利者が、大阪産トラフグの名称として、本件商標を採用する過程において、大阪市内に店舗を構える申立人の引用商標と偶然に一致することは極めて不自然である。
また、本件商標の使用の開始前には、申立人以外に標章「ふぐの神」を使用する者は存在しなかったことは疑いの余地がない。
商標登録出願の際、周知商標の存在の有無を確認することは極めて通常の手順であり、JR西日本ほどの大手企業が使用する商標を出願するにあたって、その手順が省略されることなどあり得ない。
以上のことから、本件商標の権利者が、本件商標の出願時に申立人の引用商標の存在を十分に認識していたことは明白であり、引用商標に化体した業務上の信用及び顧客吸引力にフリーライドする悪意があったことがうかがえる。そして、JR西日本イノベーションズ及びその親会社であるJR西日本は、すでに本件商標の使用を開始している。周知性を獲得している引用商標と同一又は類似の本件商標の使用行為は、上記(6)のような出所混同を惹起するものである。
以上のとおり、本件商標は、引用商標の出所表示機能を稀釈化し、その業務上の信用を毀損させるなど不正の目的をもって使用されるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(8)商標法第4条第1項第7号について
上記(7)のとおり、本件商標の権利者は、本件商標を不正の目的をもって剽窃的に出願したことが推認される。
本件商標の出願の経緯には、社会的妥当性を欠くものが認められ、本件商標の登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない。本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(9)商標法第4条第1項第8号について
申立人は、屋号「ふぐの神」を、20年以上の長年にわたって一貫して使用しており著名である。したがって、申立人の屋号「ふぐの神」は、商標法第4条第1項第8号に規定される「他人の名称」又は「著名な略称」に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)大阪・天神橋筋六丁目駅近くのふぐ・鱧の店「ふぐの神」のウェブサイト(2025年3月8日出力:甲2)には、引用商標1、引用商標2及び引用商標4が表示されている。
(イ)2025年3月5日を撮影日とする店舗の外観写真(甲3、甲12の2)には、店舗入り口の上部看板に引用商標2及び引用商標3が表示され、また、2003年10月10日頃を撮影日とする開店当時の写真(甲9)には、店舗入り口上部看板に引用商標3が表示され、左横の看板に引用商標2が表示されている。
(ウ)平成15年から同20年頃を発注日とする店舗「ふぐの神」に関するチラシ(甲4)には、「踊りとらふぐ専門店」、引用商標1、引用商標2及び引用商標4が表示され、当該店舗の住所が「大阪市北区長柄中2丁目5-39 シャトー第一マンション1階」と記載がある。
(エ)美味しい高級ポン酢のお取り寄せ・通販|ギフトやプレゼント、お歳暮に人気のウェブサイト(2025年3月8日出力:甲5)には、「すだち香る一徳ぽんず」の表示の下、ポン酢容器写真には、ラベルに引用商標2が表示されるとともに「一徳ぽんず」の文字が表示されているほか、引用商標4が表示されている。
(オ)令和2年12月を作成日とするポン酢調味料「一徳ぽんず」に関するチラシ(甲6)には、右上方に「ITTOKUPONZU」、中央上方に「ふぐ屋の主人だからこそ作れた【三味の黄金比】。とことんこだわりぬいた究極の『ぽんず』です。」の文字が表示され、容器写真のラベル及び下方に引用商標2が表示されるとともに「一徳ぽんず」の文字が表示されている。左側下方には、「踊りとらふぐ・天然はも専門店 ふぐの神/大阪市北区長柄中2丁目5-39/シャトー第一マンション1階」と表示されている。
(カ)ぐるなびPROのウェブサイト(甲10の1)には、「ふぐとはもの2枚看板で、年2回の常連客を確実に獲得」(2012年9月19日)の見出しの下、「天然金鱧 個室料理 神ぷく亭」、「24年前に大阪・天神筋六丁目駅の近くにふぐ専門店「ふぐの神」を構え、2007年9月に満を時して2店舗目の同店を心斎橋にオープン。・・・代表の木村・・・氏は、・・・」の記載がある。そして、神ぷく亭に関するGoogleマップのストリートビュー(甲10の2~6)には、入り口看板やのれんに引用商標2が表示されている。なお、申立人は、2号店について、2018年までの経営であると主張している。
(キ)「一徳ぽんず」の通信販売ページ(甲11の1)には、ページの上方中央部に引用商標1及び引用商標2が上下2段に記載された下に、「すだち香る/一徳ぽんず」及び「食のプロが認めた/高級ポン酢」の文字の間に引用商標2がラベルに付された容器の写真が掲載されているとともに、「ふぐ料理店「ふぐの神」」の文字が表示されている。
(ク)「ふぐの神」についてのGoogle検索(甲13)には、「ふぐの神」について、「大阪・天神橋筋六丁目『ふぐの神』で久々にふぐを食す!2020年10月20日」(甲13の3)、「冬はてっちり@ふぐの神 [天神橋筋6丁目/大阪](2014年2月1日:甲13の4)、「【地元在住者が選ぶ】大阪府に来たら一度は食べてほしいと・・・第2位:ふぐの神・・・」(2023年9月14日:甲13の5)等の記載が認められるものの、本件商標の登録出願後のものや掲載日が不明なものもある。
(ケ)読売新聞のテレビ番組欄(2006年12月16日及び2019年7月20日:甲15、甲16)には、毎日テレビ及びMBSテレビにおいて「せやねん!」という番組の中で「豪快てっちりコース」及び「夏が旬ハモ鍋」として店舗「ふぐの神」が取り上げられた。
(コ)GMOパペポ株式会社が作成した2023年9月6日を受注日とする申立人の商品「一徳ほんず」に関する通信販売の売上実績の表(甲18)からは、各都道府県から85件ほどの発注があったことが認められるものの、当該商品の年次別の販売数量や市場シェアなどの全売上高等に関する内容については、不明である。
(サ)2006年1月5日発行の「関西ウォーカー」(甲19)の「赤字覚悟の全61店」、「新春あっぱれ!スペシャル ぜ~んぶ半額!!カニ・寿司・フグ・カキ」のページには、「大阪◆天六 フグ料理専門店 ふぐの神」が掲載され、写真とともに「店主の木村・・・さん」と記載がある。
(シ)「ねとらぼ」のウェブサイトにおいて、「ふぐの神」は、「大阪府のふぐ料理の名店」ランキングTOP10!」の2022年9月版にて、第2位(甲20の1)、「大阪府で人気のてっちり(ふぐ料理)店」ランキングTOP10!」の2023年1月版及び同年2月版にて、第4位(甲20の2・3)、「【地元在住者が選ぶ】大阪府に来たら一度は食べてほしいと思う「ふぐ料理店」ランキングTOP7!」の2023年最新調査結果にて、第2位(甲20の4)となっている。
(ス)「aumo」のウェブサイト(甲21)には、「【大阪】ふぐ料理店おすすめ12選!有名店からランチの人気店まで紹介」(2024年10月30日更新)の見出しの下、「大阪ふぐ刺身料理「てっさ」のおすすめ店3選」の欄に「1.ふぐの神」と紹介され、また、「macaroni」のウェブサイト(甲22)には、「大阪のおすすめフグ料理店TOP12!人気のミシュラン掲載店や老舗など」(2024年11月19日更新)の見出しの下、「【1位】デートや会食にも「ふぐの神」(天六):4.5pt/171クチコミ」と記載されている。
(セ)TikTokのアカウント「bossgourmet」(2022年1月9日)及び「osaka_b_kyu_gourmet」(2023年10月15日)には、引用商標4及び引用商標3が付された店舗の写真が掲載され(甲23の1、甲25の1)、Instagramのアカウント「masaki.gurume」(甲24の1)には、「【ふぐの神】大阪・天六」が掲載され、2023年9月19日の「いいね!915件」となっている。なお、申立人主張の当該アカウントに関するフォロワー数、再生回数については、本件商標の登録査定後のものである。
(ソ)店舗「ふぐの神」について、「食べログ」、「楽天ぐるなび」、「ホットペッパーグルメ」、「Googleビジネスプロフィール」に掲載(甲26~甲29)し、申立人代理人が作成した同ウェブサイト及び公式ホームページのアクセス数の集計結果(甲31)を提出している(2023年次は合計334,186PV、2024年次は合計473,760PVと記載されている)。
また、申立人は、2023年2月からの11ヶ月間で3,095,654円、2024年1月からの12ヶ月間で3,523,363円を同ウェブサイトに関する広告宣伝費として支払ったとして、「木村・・・」又は「ふぐの神」宛ての振替金額、領収証等(甲32~甲36)を提出している。
さらに、申立人は、リスティング広告を出稿しており、Googleへのリスティング広告の表示回数の総計について、例えば、2023年2月からの11か月間で約1,250万回、2024年1月から12ヶ月間で約1,350万回であり、特に2023年3月、同年6月及び2024年3月には、表示回数の合計が月間で200万回を越えているとして、株式会社ぐるなび作成の広告表示回数一覧表(甲38)及び申立人作成の広告表示回数一覧表(甲40)を提出している。
(タ)申立人代理人の作成(2025年4月5日)に係る来店客数のまとめ及び予約電話のお断り率の表(甲42、甲43)には、2023年2月からの11ヶ月間で5,126人、2024年1月からの12ヶ月間で7,083人の来店客数が示され、また、2023年11月からの予約電話お断り率として、60%以上が示されている。
(チ)ふぐの神(和食)の口コミ ホットペッパーグルメには、4.7の評価(甲44の1)、口コミ一覧:ふぐの神[食べログ]には、3.62の評価(甲44の2)、ふぐの神クチコミ-Google検索には、4.5の評価(甲44の3)が表示されているが、本件商標の登録出願前のクチコミの投稿数については、証拠から確認できない。
(ツ)「焼肉ごりちゃん」について、「Dinii」のウェブサイト(甲45の1)には、「テレビ取材20回以上!「ごりちゃん」」等の見出しの下、「「ふぐの神」という友達のフグ屋さんに作ってもらっているオリジナルぽん酢を使っているんです。」の記載があるほか、「楽天ぐるなび」のウェブサイト(甲45の3)には、「塩タン+タンの森 こだわりの塩タンとネギと大葉の薬味盛りに天神橋六丁目のふぐ屋さん、「ふぐの神」さんのポン酢を使用したタンの森」の記載があるが、その他の「焼肉ごりちゃん」に関するウェブサイトにおいては、引用商標は表示されていない(甲45の2・4)。
(テ)「アント・グラフィック」から、「ふぐの神」宛ての請求書(令和3年8月31日)には、品名及び型番の欄には、「ぽんずB5メニュー製作〈修正版〉」等記載され、備考欄には、「焼肉ごりちゃん」又は「焼肉じゅんちゃん」の記載があり(甲46の2・4)、当該メニューには、右下方に「製造・販売元」として「踊りとらふぐ・天然はも専門店 ふぐの神」の記載、ポン酢容器のラベルには、引用商標2が表示されている(甲46の1・3)。そして、「焼肉ごりちゃん」又は「焼肉じゅんちゃん」の店舗では、一徳ぽんずについて容器ラベルに引用商標2が表示されたメニューが使用されている(甲47)。
イ 上記(ア)ないし(テ)の事実によれば、申立人は、ふぐ料理専門店「ふぐの神」(大阪市北区長柄中2丁目5-39 シャトー第一マンション1階。店舗「ふぐの神」。)の店主であって(甲4、甲10、甲19)、遅くとも、2003年10月10日頃撮影とする開店当時の写真(甲9)には、店舗入り口の左側、同上部看板に引用商標2及び引用商標3が表示され、2007年9月に2店舗目「神ぷく亭」をオープンし、入り口看板やのれんに引用商標2が表示されており(甲10)、併せて引用商標4が使用されている場合もあることが認められる。なお、2号店については、2018年までの経営であった。
(ア)申立人の経営する店舗「ふぐの神」について
店舗「ふぐの神」のインターネットメディアにおける人気等のランキングは、「ねとらぼ」、「aumo」及び「macaroni」のウェブサイトにて上位に位置していることが認められるものの(甲20~甲22)、その対象が「ふぐ料理店」に限定された中でのものであり、地域も大阪府に限られている。
また、テレビ放送には、店舗「ふぐの神」が2006年及び2019年の2回取り上げられたのみであり(甲15、甲16)、雑誌の掲載も2006年1月5日発行の「関西ウォーカー」の一誌のみであって、かつ、その掲載も特集された特定のテーマにおいて複数店が紹介された(全61店)中の1つとして掲載されたものであって、店舗「ふぐの神」単独で特集された記事ではない(甲19)。したがって、テレビ放送及び雑誌において、いずれも長年にわたって継続的に放送又は掲載されていたものとはいえず、また、数回の掲載等で周知性を獲得するほど店舗単独で大々的に取り上げられ、報道されたものであるとも認められない。
さらに、店舗「ふぐの神」について、2023年2月から「食べログ」、「楽天ぐるなび」、「ホットペッパーグルメ」、「Googleビジネスプロフィール」への掲載や、リスティング広告を出稿しており、上記ア(ソ)によれば、そのページ閲覧者数(PV)やリスティング広告の表示回数が示されているが、その周知性を考察するうえで、これらの閲覧者数や広告表示回数について比較の対象とする同業他社の数値等を客観的に把握する証拠は提出されていないことから、飲食店が多数存在する中で、引用商標を使用した申立人の業務に係る役務(飲食物の提供)が、どの程度の需要者に知られているかを評価することができない。
(イ)申立人の商品「一徳ぽんず」について
申立人は、商品名「一徳ぽんず」を付したポン酢(以下、単に「一徳ぽんず」という。)を販売しており、引用商標2をそのポン酢容器のラベルに付すなどして、商品「ポン酢」について引用商標を使用していることが認められる。さらに、一徳ぽんずについて、店舗「ふぐの神」が製造、販売元である旨を記載した内容のウェブサイトやチラシが作成されており、それらに関するウェブサイト上のページやチラシの誌面には引用商標1、引用商標2及び引用商標4が使用されているとともに、その商品が入った容器(ボトル)の写真が掲載されており、その容器のラベルには、引用商標2が表示されている(甲5、甲6、甲11)。
また、一徳ぽんずは、2023年に全国から受注を受け、その商品が発送されていることが認められるほか(甲18)、焼き肉店においても使用され、メディア等にも取り上げられていることが認められるが(甲45~甲47)、一徳ぽんずの我が国及び外国における市場シェア、継続的な売上高等、その周知性を把握するため同種商品と比較できる証拠は提出されていない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、同業他社の同種商品と比較することができる販売実績の数値等を客観的に把握できないことから、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品(ポン酢)が、どの程度の需要者に知られているかを評価することができない。
ウ 小括
したがって、提出された証拠からは、本件商標の登録出願時等において、引用商標が、申立人の業務に係る商品(ポン酢)及び役務(飲食物の提供)を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条1項第10号該当性について
ア 商標法第4条第1項第10号は、先使用未登録商標に他の商標登録出願を排除する効力を認めるものであるから、同号にいう「広く認識されている」に該当するといえるための地理的範囲としては、必ずしも全国的に知られている必要まではないが、1都道府県内で知られているだけでは足りず、少なくとも関西一円などの数県にわたる相当広い範囲で、取引者・需要者に知られていることを要するというべきである。また、「広く認識されている」といえるための取引者・需要者の範囲としても,同様の趣旨から、すべての取引者・需要者に知られている必要まではないが、相当程度の取引者・需要者に知られていることを要するというべきである(平成26年(行ケ)第10118号参照)。
イ これを本件についてみると、上記(1)のとおり、ふぐ料理専門店として店舗・ふぐの神がおすすめ店などとして各種媒体において紹介されているとしても、いずれもその「おすすめ」や「ランキング」等の対象が「ふぐ料理店」に限定された範囲のものであって、数ある飲食物の提供に関する種類(ジャンル)の中の1つにすぎず、その地域も大阪府に限られたものである。
また、引用商標の周知性を考慮するうえで、比較の対象とする同業他社の数値等を客観的に把握する証拠は提出されていないことから、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品(ポン酢)又は役務(飲食物の提供)が、どの程度の需要者に知られているかを評価することができない。
以上の実情とともに、商品「ポン酢」及び役務「飲食物の提供」に関する需要者は、一般の消費者であって、阪神地域における一般の消費者は相当な数に及ぶことも併せて考慮すると、引用商標が相当程度の需要者の目に触れ、申立人の業務に係る商品又は役務であることを表すものとして記憶されていたと認めることはできないことから、上記の申立人の主張及び立証からは、本件商標の出願時等において、引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものであると阪神地域等の関西圏において相当程度の需要者に知られているとは認められない。
なお、申立人は、「ふぐ」が大阪を中心に食されているなど(ふぐの消費量の6割)、ふぐ料理は地域的嗜好性の極めて高い商品であり、日常使用の一般商品ではなく、それに加えて、大阪市が政令都市の中で2番目の人口を有するという事実をもってすれば、関西地方の中でも「ふぐ料理」について一商圏を形成している大阪市における周知性が重視されるべきである旨主張している。
しかしながら、ふぐ料理は、大阪市以外でも我が国において広く一般に提供されているものであるうえ、その大阪市を中心とする関西圏のおいての周知性についても、比較の対象とする同業他社の同種の商品又は役務に関する数値等を客観的に把握する証拠は提出されていないことから、本件商標の出願時等において、引用商標が申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものであると阪神地域等の関西圏において相当程度の需要者に知られているとは認められないことは、上記で述べたとおりであって、その申立人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、標準文字で「ふぐの神」と表してなるところ、引用商標は、「ふぐの神」の文字を含むものであって類似の商標といえるから、本件商標と引用商標との類似性の程度は高い。
しかしながら、引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務にかかる商品(ポン酢)、役務(飲食物の提供)について使用する商標として、本件商標の登録出願時等において、我が国の需要者等の間に広く認識されているものとは認められない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、需要者等が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が引用商標の使用者あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時等において、申立人の業務に係る商品(ポン酢)又は役務(飲食物の提供)を表示するものとして日本国内又は外国における需要者等の間に広く認識されているとは認められないものである。
そして、申立人が提出した本件商標権者のニュースリリース(2022年11月30日:甲14の3、2024年2月8日:甲14の4、2024年12月6日:甲14の1及び2)によれば、本件商標権者は、2022年11月には陸上養殖されたトラフグの販売を開始しており(甲14の3)、遅くとも2024年12月には、そのトラフグに「ふぐの神」の商標を付して使用していることが認められ、その商標を採択した由来も「フグは「幸ふく(福)」を呼ぶ縁起のよい魚と言われており、多くのお客様に召し上がっていただき幸せになって欲しいという思いから、幸福をもたらすと信じられている神の「「福の神」になぞらえて、「ふぐの神」と名付けました。」と紹介されているとおり(甲14の1)、本件商標権者自らが生産、販売している商品に対して本件商標が採択、使用されていることが認められる一方、申立人を含め他の事業者に対して本件商標に基づく権利行使をするなど、本件商標が、不正の利益を得る目的、あるいは、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足る実情を示す具体的な証拠は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品(ポン酢)、役務(飲食物の提供)を表示するものとして、需要者等の間に広く認識されている商標とはいえず、本件商標を登録出願したことが、直ちに本件商標権者が不正の目的をもって剽窃的に出願したものと推認することはできない。
そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが、社会の一般道徳観念に反するものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
してみると、本件商標は、引用商標の周知性にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできず、また、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせないものであるから、本件商標権者が、本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第8号該当性について
引用商標4である「ふぐの神」の文字は、申立人など他人の氏名又は名称を表すものであるとはいえず、また、上記(1)のとおり、「ふぐの神」の文字が含まれる引用商標には、申立人の業務に係る商品(ポン酢)又は役務(飲食物の提供)を表示するものとして、需要者等の間に広く認識されている商標とはいえないことから、「ふぐの神」の語が申立人などの他人を表す著名な略称であるとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-900069