商標異議申立
2025-900058
ニッポンホシュトー、ニホンホシュトー、ホシュトー
- 審判番号
- 2025-900058
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2023-077180
- 登録番号
- 6883286
- 請求日
- 2025年03月17日
- 審決日
- 2026年07月06日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本保守党
- 【異議申立人】松岡 裕子
- 【異議申立人】高橋 易資
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 正和
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 浜岸 愛
- 分類
- T1651.14 -Y (W36) / T1651.16 -Y (W36) / T1651.21 -Y (W36) / T1651.23 -Y (W36) / T1651.25 -Y (W36) / T1651.271-Y (W36) / T1651.272-Y (W36) / T1651.222-Y (W36)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項4号商標法3条1項6号商標法4条1項6号商標法4条1項8号商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項16号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第6号、商標法第4条第2項、商標法第3条第1項第4号、商標法第4条第1項第8号、商標法第3条第1項第6号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第43条の2第1号、商標法第4条第1項第15号、商標法第43条の2、商標法第32条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6883286号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6883286号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6883286号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「日本保守党」の文字を横書きしてなり、令和5年7月11日に登録出願、第36類に属する別掲2のとおりの役務を指定役務として、同6年11月28日に登録査定、同7年1月8日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
令和7年3月17日付け登録異議申立書(以下「申立1」という。)における登録異議申立人「松岡裕子」(以下「申立人1」という。)及び同日付け登録異議申立書(以下「申立2」という。)における登録異議申立人「高橋易資」(以下「申立人2」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、「石濱哲信」氏(以下「A」という。)が率いる政治団体の名称として使用して周知であると主張する「日本保守党」の文字よりなる標章である(以下、Aが党首を務める政治団体を「日本保守党A」という場合がある。)。
第3 登録異議の申立ての理由
1 申立1の理由
申立人1は、本件商標は、商標の先使用権、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第6号、同項第8号、同条第2項、憲法第21条、同法第29条、不正競争防止法第2条第1項第1号、同項第2号及び同項第14号の観点により、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べた。
(1)先使用権について
Aは、2021年5月27日に「日本保守党」を総務省に届出し、これにより、「日本保守党A」は「日本保守党」という名称を使用する権利を有しており、「百田尚樹」氏(以下「B」という場合がある。)を代理する立場の、政党活動とは無関係の第三者別会社「株式会社ウィンウィン」(以下「W社」という。)による商標登録出願(2023年7月11日)以前からその名称を用いて活動を行ってきた。
(2)商標法第4条第1項第6号及び同項第8号について
2021年5月27日に総務大臣に届出をした「日本保守党A」は、B・「有本香」両氏ら(以下「Bら」という。)が2023年9月1日に総務大臣に届出をした「日本保守党」(以下、Bが党首を務める政治団体を「日本保守党B」という場合がある。)以前も、継続的に全国的な講演活動・YouTube配信・街頭演説を頻繁に行っており、他国の脅威から日本を守りたいと考えている愛国保守の人々の間では著名な存在である。Bらが政党届出をしたのは、既に2年も前に届出をされて著名な存在となっていた、Aが党首を務める「日本保守党」と全く同じ「日本保守党」という名称であり、公表前にBらから承認を求められたこともなく、商標法第4条第1項第6号及び同項第8号に違反している。
(3)商標法第4条第2項について
Bらは、2023年9月1日、Aが党首を務める「日本保守党」と全く同じ党名「日本保守党」の名をもって大々的にメディアを使い大ニュースとして公表し、実は党名公表の1月以上も前である2023年7月17日(合議体注:「17日」は「11日」の誤記と思われる。以下同じ。)に「日本保守党」の名称と、その略称と、関わるサービス等につき、政党活動とは全く無関係の第三者別会社「W社」による商標登録出願をしたが、「日本保守党B」が党名を用いて活動を行ったのは2023年9月1日以降であり、出願日である2023年7月17日時点では活動は行われていないから、商標法第4条第2項に違反している。
(4)商標法第3条第1項第6号について
Bらの行為を知ったAはBに対し、話し合いをしたい旨何度も申し出たが、未だ何の返答もないままである。
主張が同じ、又は似ているのであればまだしも、同じ党名でありながら、「日本保守党B」の主張は全く相容れず、「日本保守党A」の主張とは明らかにかけ離れている。
「日本人による日本人の為の日本の政治」という「日本保守党A」の中心を貫く誇り高い思想が、世の人々から「日本保守党ってこんな思想なのか?」と勘違いされてしまうことは、「日本保守党A」にとって非常に不名誉なことであり、大きな損害である。
先に活動していた「日本保守党A」は末だ国政政党ではなく、派手に取り上げられることこそないが、日本を愛し、日本を守りたいと考えている愛国者達には広く知られており、強い応援を受けている。彼らにとっては「日本保守党」は当然のことながら「日本保守党A」を意味し、「日本保守党」名でなされる発言はA又はその代理人によるものと認識される。これまで「日本保守党A」では国会議員の輩出はできていないが、2025年1月には市議を輩出しており(埼玉県戸田市議選トップ当選、「日本保守党A」副代表 河合ゆうすけ氏)、7月の参議院選挙においても候補者を擁立する予定である。
このまま同じ名前で全く別の主張を繰り広げられるのでは、「日本保守党A」の信頼性に対する不利益が生じることは自明の理であり、Bらは、即刻党名変更をすべきである。既に活動中であった「日本保守党A」と同じ党名をもって出願され、そもそも出願適格を有していない状況で、さらに出願適格を有していない第三者別会社「W社」によって出願・登録された内容は無効である。
(5)憲法の観点
ア 表現の自由(憲法第21条)
この条文は、集会、結社、言論、出版など、あらゆる表現の自由を保障している。
「日本保守党A」は「日本保守党B」より2年も前から「日本保守党」の名称を使用して活動しており、その名称は愛国者達の間では広く知られている。「日本保守党A」にはその商標の先使用権があるものと解される。
しかし、主張が大きく違う「日本保守党B」のメディアを利用した目立つ活動は、「日本保守党A」の思想を誤解させる可能性が大きく、先使用権を有する「日本保守党A」の権利を侵害する行為といえ、同じ党名の使用は制限されるべきである。
イ 財産権の保障(憲法第29条)
この条文は、財産権を保障しており、正当な補償なしにこれを侵してはならないと定めている。
商標権は財産権の一種であり、「日本保守党A」が先に名称を使用していたことによって「日本保守党A」に党名の先使用権が生じているものと解されるべきであり、「日本保守党」という党名は「日本保守党A」の財産であると解するべきである。
「日本保守党A」の存在を知った上で、もしくは容易に知り得る状況にありながら、同名の商標登録を出願した「日本保守党B」は、「日本保守党A」の財産権を侵害するものであり、許されざる行為である。
(6)不正競争防止法の観点
ア 不正競争防止法第2条第1項第1号(周知表示混同惹起行為)
「日本保守党A」が2021年5月27日総務省に政党届出を行い、その後2023年9月1日、「日本保守党B」が新党名を「日本保守党」と大々的に公表するまでの期間においても、「日本保守党A」は全国的な講演活動・YouTube配信・街頭演説等を頻繁に行い、Aが党首を務める「日本保守党」の党名は需要者(有権者)の間に広く認識されていた。
Bらが政党届出をする2年も前から政治活動をしていた「日本保守党A」と同一の党名を使用したことは、有権者が両党を誤認・混同する原因となり、同号に該当する。
イ 不正競争防止法第2条第1項第2号(著名表示冒用行為)
「日本保守党A」は総務省に政党届出をして以来、全国的な講演活動・YouTube配信・街頭演説を頻繁に行っており、規模の大小の差こそあれど、「日本保守党A」も「広く認識」されている。
著名性とは、認知度だけでなく、活動の質や範囲なども考慮して判断されるものである。
ウ 不正競争防止法第2条第1項第14号(不正競争)
「日本保守党B」が、「日本保守党A」の存在を知りながら、もしくは容易に知り得る状況にありながら、意図的に同一の党名を使用し、政党活動とは全く無関係の第三者別会社「W社」を出願人として商標登録まで行った行為は、「不正の競争の目的」があったと認められるべきである。また、Bが事前に「他にも日本保守党を名乗るものがいるようだが、国政政党ではないので問題はないだろう」と発言していたとの多数の情報もあり、不正競争の目的があったことの裏付けである。
2 申立2の理由
申立人2は、「本件商標の文字列「日本保守党」は、既に存在するA率いる「日本保守党」と同一であり、他人の業務に関わる商標であり、人格権の侵害である。そして、社会に混乱・混同・誤認を与えることは公共の福祉に反する。また政治問題に関わる故、言論の自由を脅かす事態にも発展し、商標法第3条第1項第4号、同項第6号、同法第4条第1項第6号、同項第8号、同項第10号、同項第15号、同項第16号、同項第19号、同条第2項、不正競争防止法第2条第1項にも該当するものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第20号証を提出した。以下、甲第〇号証を「甲〇」のように記載する。
(1)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
Aが届け出た政治団体「日本保守党」は、総務大臣に届出がなされ、官報にて告示された団体であり(甲1)、コロナワクチン問題をはじめ、現在の日本政府のあり方に関して、数々の情報発信活動を行うこと(甲2~甲10)により、保守系の界隈では広く知られた存在である。Bは、この事実を知り得る立場にありながら、Aと同名の政治団体を届出し、使用した。Aは、「日本保守党」の党名に関する問題を解決するために呼びかけているが(甲11)、Bは一切返答していない。
現在、2つの「日本保守党」に関して、世間に戸惑いや混乱が生じ、懸念が高まっている。ウィキペディア日本語版では、「日本保守党(2021-)」「日本保守党(2023-)」と区分けされ、「日本保守党(曖昧の回避)」のページまである(甲12)。
またYouTubeやニュースで取り上げられる機会が増えている(甲13~甲18)。
したがって、「日本保守党」の文字列を使用した本件の登録商標は、商標法第4条第1項第10号や同項第15号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第6号について
本件商標は、ゴシック体と思われる書体で横書きされた「日本保守党」の5文字からなる文字列であるが、この商標が「書体を限定した商標」なのか、それとも「単なる文字列としての商標」なのか、多くの人は区別できない状況にある。その結果、「日本保守党」というすべての表記が登録商標であるかのような誤解が広まっている。例えば、日本保守党の商標問題を取り上げている前述のYouTubeやニュース(甲13~甲18)においても、商標の範囲について正確に理解されていないものと思料される。
商標は財産権の一部として認められたものであるが、それは憲法第29条第1項が示すように、公共の福祉に適合するものでなければならない。しかし、特徴が曖昧な故に誤解や混乱が生じるのであるならば、その商標は公共の福祉に適合するものとはいえない。
「日本保守党」の名を冠した政治団体等は複数存在している(甲1)。このような状況においては、特徴が曖昧な故に誤解や混乱を招く商標は、有権者(需要者)が、当該名称が誰(何人か)の政治活動(業務)に係る役務であるかを認識することを困難にしている。政治の世界でこの様な状況を引き起こすことは、憲法第21条で保障されている「言論の自由」を脅かすものである。商標法では第3条第1項第6号「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当する。
(3)商標法第4条第1項第6号及び同条第2項について
そもそも政治団体は、公益に関する団体であり、営利を目的としないものである。そして、政治団体届出制度によってその存在は公知となっている(甲1)。したがって、新たに保守系の政治団体を設立しようとする人々の間では、Aが党首を務める「日本保守党」という名称は広く知られ、著名な存在となっている。例えば、水島総氏は自身の新党設立時に、「日本保守党」が既に届出され、使用されていたことを理由として、党名を「新党くにもり」とした旨を話している(甲19)。
以上のことから、単に「日本保守党」の文字列からなる本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当し、商標登録を受けることができない。
もっとも、商標法第4条第2項においては、「公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者が前項第6号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。」と規定されている。ここで注目すべきは、「行うことを予定している者」との文言がなく、既に「行っている者」に限定されている点である。
本件商標の出願日は2023年7月11日であり、Bによる政治団体の届出日は2023年9月1日であった(甲1)。さらに、本件商標の出願人は第三者である「W社」であった。この事実に照らせば、出願時点において出願人は「公益に関する事業を行っている者」には該当せず、したがって商標法第4条第2項の適用は認められない。よって、本件商標は登録を受けることができない。
なお、商標登録の可否を判断する時点について、出願日と登録査定日のいずれを基準とすべきかについて議論があると聞く。しかし、日本の商標法は先願主義を採用しており、すべての判断基準は出願日であることは明らかである。
(4)商標法第4条第1項第8号について
Aが「日本保守党」を設立した趣旨は、「日本古来の価値を重視した「日本人による日本人のための日本の政治」を実現するため」である(甲2)。そして、Aはこれまで、街宣、勉強会、YouTube等を通じて、政治・経済・外交・防衛・選挙・宗教・歴史など多岐にわたる情報提供活動を継続して行ってきた。
このような状況下において、BがAの「日本保守党」と全く同一の名称を名乗ったことは、たとえ政治団体の届出上許されるものであったとしても、道義的には到底許されるものではない。
さらに、Aの「日本保守党」と同名を用いて、全く異なる主義・主張を掲げることは、Aの人格権を侵害する行為でもある。人格権は憲法第13条を根拠に様々な法律で尊重されているが、商標法においても第4条第1項第8号において「他人の名称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は禁止されており、本件商標はこの規定にも該当する。
(5)商標法第3条第1項第4号について
Bは、「日本保守党なんて別にオリジナリティーのある党名ではない」と発言している(甲20)。彼の発言に従えば、「日本保守党」は一般的でありふれた名称である。また、本件商標は、この名称をゴシック体と思われる書体で横書きし、それ以外に特筆すべき特徴がない。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
不正競争防止法では第2条第1項に「不正競争」のとして、「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、・・・)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、・・・、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を揚げ、防止の対象と指定している。したがって、本件商標は、不正競争防止法違反である。
商標法では「不正」に関し、第4条第1項第19号「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの」は登録できない。Aの「日本保守党」と同一名称を名乗り、Aと異なる主張を行い活動することは、社会全体に混同・混乱・誤認を引き起こし、結果として社会全体に損害を与えるものであるから、本件商標は「不正の目的」に該当する。更にその状況は容易に予見可能であるから、不正の目的をもって使用をするものにも該当する。
(7)商標法第4条第1項第16号について
Bには、いわゆる「保守」を名乗る政党の主張とは著しくかけ離れた言論が多数存在する。その発言が政治的主張なのか、冗談なのか、あるいは別の意図があるのかは不明であるが、日本の保守政党として提供されるべき情報(役務の質)に対して、社会一般に疑問や不信を抱かせるものとなっている。
このような言動により、「日本保守党」という名称自体がおとしめられ、その結果、「日本保守党」と名乗る団体が提供する情報(役務)の質について、世間に誤った印象を与えるおそれがある。すなわち、役務の質に関する誤認を生じさせるものであり、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人1及び申立人2(以下、両者をまとめていうときは「申立人」という。)が引用する「日本保守党A」の周知性について
(1)申立人1の主張、申立人2の主張及び提出された証拠並びに職権による調査によれば、以下のとおりである。
ア 総務省への届出について
総務省のウェブサイトにおいて、「政治団体とは」の見出しの下、「2 政治団体の種類」として、「政党」「政治資金団体」「その他の政治団体」「資金管理団体」の4つが掲載されており、「その他の政治団体」の説明として、「政党・政治資金団体以外の政治団体(主義主張団体、推薦団体、後援団体、特定パーティー開催団体等)」の記載がある(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/naruhodo04_2.html)。
加えて、総務省のウェブサイトには、「政治団体名簿(総務大臣届出分)」の見出しの下、「政党」「政党の支部」「政治資金団体」「その他の政治団体」等の名簿が掲載されている(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/naruhodo04.html)。
その中の「その他の政治団体」を開くと、「その他の政治団体一覧(2867団体)」の見出しの下、「■注意事項」として「令和6年12月31日における総務大臣届出の政治団体であり、内容については、令和7年3月31日までに官報告示されたもの」との記載があり、また、当該名簿には、「名称:日本保守党、代表者氏名:A、設立届届出日:R3.5.27」及び「名称:日本保守党、代表者氏名:B、設立届届出日:R5.9.1」との記載がある
(甲1:https://www.soumu.go.jp/main_content/000718003.pdf)。
イ 「日本保守党A」の法的性格
上記アのとおり、「日本保守党A」は、本件商標の出願日(2023年(令和5年)7月11日)以前の、2021年(令和3年)5月27日、総務大臣に届出を行った「その他の政治団体」である。
なお、一般的には、政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第3条第1項に規定する政治団体は、当該政治団体が個別の法律の規定により法人とされる場合を除き、いわゆる「権利能力なき社団」に該当するものと考えられることから、「日本保守党A」は、「権利能力なき社団」といい得るものである。
(参考:衆議院での政治団体の法的性格に関する質問に対する答弁
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b174201.htm)
ウ 「日本保守党A」の活動
Aは、2021年5月22日、「日本保守党A」の創立趣旨について紹介し、その内容は「日本保守党A」のウェブサイトに掲載された(甲2)。甲4(作成年月日:2025年3月2日)によると、「日本保守党A」は、「日防隊・日本保守党チャンネル」(チャンネル登録者数3.23万人、118本の動画)や「Aチャンネル」(チャンネル登録者数8320人、62本の動画)で、政治や政府に関する情報発信を行った。また、「Lizzyチャンネル」(2023年11月23日配信、1.4万回視聴)、「JAPANjpFIRST!!チャンネル」(2024年3月21日配信、チャンネル登録者数2370人)において、「日本保守党A」に関する動画が配信された。
「日本保守党A」は、自身のウェブサイト(甲3)、新橋駅前と渋谷駅前での街頭演説(甲6。YouTubeでの配信日:2024年1月10日)、蕨市民会館で行った2024年12月15日の勉強会(甲7)等を通じて、情報提供活動を行った。
しかしながら、上記チャンネルの登録者数や視聴回数が示されたウェブサイトの日付(甲4)や上記勉強会の開催日(甲7)は、本件商標の登録出願日以降であり、また、甲6及び甲7以外の街頭演説や勉強会の開催回数、開催場所、参加者数等、当該団体の活動範囲や活動期間、活動規模を表す客観的な資料は提出されていない。
エ 「日本保守党A」は、2022年の参議院選挙(2022年7月10日投開票)で、埼玉県選挙区から無所属で出馬する申立人2を応援した(甲8)が、当選には至らなかった。
2024年の衆議院選挙(2024年10月27日投開票)において、埼玉14区及び15区から各1名の「日本保守党A」公認候補が出馬したところ(甲9)、当選には至らなかったが、埼玉県戸田市の市議会議員選挙(2025年1月26日投開票)において、(当時)「日本保守党A」の河合ゆうすけ氏が当選した(甲10)。
オ 「日本保守党」をめぐる記事等
2025年2月26日、Aは、「日本保守党B」に対し、「日本保守党」の政党名について会談の申し入れを行った(甲11)。また、「日本保守党」が2つ存在していることについて、ウィキペディア(甲12)、ヤフーニュース(甲13)、YouTube(甲14~甲17、甲19、甲20)、ネット上のブログ(甲18)で取り上げられたことがうかがえる。
しかしながら、そのほとんどのインターネット記事や動画等の日付は、本件商標の登録出願日及び登録査定日以降(甲11、甲13、甲16、甲17、甲19)又は、登録出願日以降(甲14、甲15、甲18、甲20)である。
(2)判断
上記(1)ア及びイによれば、本件商標の出願日(2023年(令和5年)7月11日)以前の、2021年(令和3年)5月27日、総務大臣に届出を行った「その他の政治団体」である「日本保守党A」は、「権利能力なき社団」といい得るものであり、また、上記(1)エによれば、国会議員は擁していない。
上記(1)ウに示された「日防隊・日本保守党チャンネル」のチャンネル登録者数や動画の本数等を踏まえると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「日本保守党A」は、需要者(有権者)により一定の関心が持たれていたことは推認されるが、街頭演説(2回)や勉強会(1回)以外、「日本保守党A」の活動範囲、活動期間、活動規模等、需要者の間に広く認識されている事実を客観的に示す証拠の提出はない。
そして、インターネット等で「日本保守党」を名乗る団体が2つ存在していることが取り上げられたことは認められるが、提出された記事や動画の日付のほとんどは、本件商標の登録出願日及び登録査定日以降であることから、これらを考慮しても、「日本保守党A」が、我が国において、需要者にどの程度認識されるに至ったかをうかがい知ることはできない。
以上を踏まえると、申立人2の提出に係る証拠及び当審における職権調査によっても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「日本保守党」は、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標とAが党首を務める「日本保守党」は、同一の文字からなり、両者は、同一又は類似する。
しかしながら、「日本保守党」は、上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、同号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標とAが党首を務める「日本保守党」とは、同一の文字からなり、類似性の程度は高い。
しかしながら、上記1のとおり、「日本保守党」は、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、「日本保守党A」を連想、想起することはなく、その役務が他人(日本保守党A)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように認識することはないから、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標とAが党首を務める「日本保守党」とは、同一の文字からなり、同一又は類似の商標であるとしても、「日本保守党」は、上記1のとおり、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
また、本件商標権者が、「日本保守党A」の存在を知りながら、商標登録出願を行っていたとしても、申立人2の提出証拠から、本件商標権者が、本件商標を利用して、申立人2又はAの事業活動を阻害したり、何らかの金銭的な利益を要求したりするなど、具体的な行為に及んだことは確認できない。
そうすると、申立人2の提出した証拠からは、本件商標の登録出願について、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的)、著名商標にフリーライドする目的又は申立人の事業活動を阻害する目的があったものとまでは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第6号該当性について
(1)商標法第4条第1項第6号は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標」とされており、これに該当する商標は、商標登録を受けることができない。
そして、商標法第4条第1項第6号の趣旨は、同号所定の公的機関、非営利公益団体及び非営利公益事業(以下「公的機関等」という。)を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標が商標登録を受けると、当該商標の使用状況等によっては、公的機関等の権威や信用が損なわれたり、また、当該商標に関する業務が公的機関等に関わるものであるなどの誤解を招き、需要者・取引者に損害を与えるという弊害が生じ得ることから、そのような商標の登録を禁じることによって、上記弊害の発生を阻止し、公的機関等の権威及び信用を保持するとともに、出所混同の防止により需要者・取引者の利益を保護するものと解される(知的財産高等裁判所平成26年(行ケ)第10090号、平成26年9月17日判決)。
(2)「日本保守党A」は、本件商標の出願日(2023年(令和5年)7月11日)以前の、2021年(令和3年)5月27日、総務大臣に届出を行った政治団体であるところ、一般的には、政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第3条第1項に規定する政治団体は、公益のために活動する団体であるから、商標法第4条第1項第6号に規定する「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」といえる。
しかしながら、「日本保守党」は、上記1のとおり、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(3)そうすると、本件商標とAが党首を務める「日本保守党」が、同一の文字からなり、同一又は類似の商標であるとしても、商標法第4条第1項第6号にいう「公益に関する団体であって、営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)申立人は、本件商標は、Aが党首を務める「日本保守党」と同じ名称であり、商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張している。
(2)商標法第4条第1項第8号の趣旨は、人の氏名、名称、略称等に対する人格的利益を保護することにあるところ、商標中に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられるから、他人の略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解される(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10074号、平成21年10月20日判決)。
また、上記1(1)イのとおり、「日本保守党A」は、法人格を有しない権利能力なき社団といい得るところ、「権利能力なき社団の名称については、法人との均衡上、その名称は、商標法第4条第1項第8号の略称に準ずるものとして、同条項に基づきその名称を含む商標の登録を阻止するためには、著名性を要するものと解すべきである。」と判示されている(東京高等裁判所平成12年(行ケ)第344号、同第345号、平成13年4月26日判決)。
(3)上記(2)のとおり、権利能力なき社団の名称については、「略称」に準じて著名性を要すると解されるところ、権利能力なき社団の名称といえる「日本保守党A」は、上記1のとおり、Aが党首を務める政治団体の事業活動を表すものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
(4)してみれば、本件商標は、その構成中に「日本保守党」の文字を含むものであるとしても、他人(日本保守党A)を想起・連想させるとまではいえず、本件商標は、他人の名称の著名な略称を含む商標であるとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
7 商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)商標法第4条第1項第16号でいう「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」とは、指定商品又は役務に係る取引の実情の下で、公益性を担保するという観点から、取引者又は需要者において、当該商標が表示していると通常理解される品質又は質と、指定商品が有する品質又は役務が有する質とが異なるため、商標を付した商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すものというべきである(知的高等裁判所平成20年(行ケ)第10086号 平成20年11月27日判決)。
そして、同号でいう商品の品質又は役務の質とは、抽象的な内容のものを指すのではなく、取引者又は需要者が当該商標から看取する直接的、具体的な商品の品質又は役務の質をいうものとみるのが相当である。
(2)これを本件についてみれば、「日本保守党」の文字は、例えば、一般名称のように本件商標の指定役務の質として取引者、需要者に認識されていない以上、本件商標をその指定役務に使用したとしても、これに接する取引者、需要者が、その構成から直接的、具体的な役務の質を看取するとはいい難く、その誤認を生ずるおそれがあるともいえない。
そうすると、本件商標は、その指定役務に使用しても、役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
8 商標法第3条第1項第4号該当性について
商標法第3条第1項第4号にいう「ありふれた氏または名称」とは、原則として、同種のものが多数存在するものをいうところ、申立人2が提出した「その他の政治団体一覧」(甲1)によると、「日本保守党」と名乗る政治団体は、A、B並びにA及びB以外の第三者が党首を務める3つの政治団体が存在するが、この事実をもって「日本保守党」が「ありふれた名称」といえるほど多数存在するとはいえない。
その他に「日本保守党」の文字を「ありふれた名称」とすべき事実を発見することができない。
したがって、「日本保守党」の文字は、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に該当しない。
9 商標法第3条第1項第6号該当性について
申立人は、「「日本保守党」の名を冠した政治団体等は複数存在している(甲1)が、このような特徴が曖昧な故に誤解や混乱を招く商標は、有権者(需要者)が、当該名称が誰(何人か)の政治活動(業務)に係る役務であるかを認識することを困難にしている。」旨主張している。
しかしながら、申立人は、本件商標が自他役務の識別標識としての機能を有さないとする具体的な証拠を提出していない。加えて、本件商標を構成する「日本保守党」の文字は、本件商標の指定役務の具体的な質等を表すものではなく、また、本件商標をその指定役務について使用した場合に、これに接する需要者が、それを自他役務の識別標識としては認識し得ないというべき事情も発見することはできなかった。
そうとすれば、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
10 その他
上記2から9以外に、申立人1は、本件商標は、先使用権(商標法第32条)、商標法第4条第2項、不正競争防止法第2条第1項第1号、同項第2号、同項第14号、憲法第21条及び同法第29条、また、申立人2は、本件商標は、商標法第4条第2項及び不正競争防止法第2条第1項の観点により、商標登録を受けることができない旨述べているが、上記の内容は、商標法第43条の2各号に該当しないものであるから、申立人の当該主張は採用できない。
11 申立人の主張について
(1)申立人は、本件商標の出願人は第三者であるW社であったことに照らせば、出願時点において出願人は「公益に関する事業を行っている者」には該当しないから、商標法第4条第2項の適用は認められず、本件商標は登録を受けることができない旨述べている。
しかしながら、商標法第4条第2項は、同法第4条第1項第6号に該当する場合に、例外として登録を認めるものであるところ、本件商標は、上記5のとおり、そもそも、同法第4条第1項第6号に該当しないものであるから、申立人の主張は採用することができない。
(2)申立人1は、「Bらは、既に活動中であった「日本保守党A」と同じ党名をもって出願し、そもそも出願適格を有していない状況で、さらに出願適格を有していない第三者別会社(W社)によって出願・登録された内容は無効である」旨述べている。
本件商標は、出願時(2023年7月11日)、W社により登録出願されたものであるが、その後、「日本保守党B」は、2024年10月27日執行の衆議院選挙において、比例代表の得票率が有効投票総数の2%以上となったことから、政党交付金の交付の対象となる政党となった。これにより、本件商標の出願人は、本件登録査定日前に「政党交付金の交付を受ける政党に対する法人格の付与に関する法律に基づく法人」となり、その名義は、現在の「日本保守党」に変更されたものであるから、出願適格がないとの申立人1の主張は採用することができない。
(3)申立人2は、商標登録の可否を判断する時点について、日本の商標法は先願主義を採用しており、すべての判断基準は出願日であることは明らかである旨述べている。
しかしながら、行政処分(商標登録の許否が一の行政処分であることはいうまでもない。)の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合におけると同じく、特別の規定の存しない限り、行政処分時、すなわち査定時又は審決時(査定不服の審判)を基準とすべきものと解される(東京高等裁判所昭和45年(行ケ)第5号、昭和46年9月9日判決)。このことは、商標法第4条第3項において同条第1項第8号、同項第10号、同項第15号、同項第17号及び同項第19号については出願時をも基準とすべき例外規定をおいていることからも首肯し得るものである。
したがって、申立人2の主張は採用することができない。
12 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第4号、同項第6号、同法第4条第1項第6号、同項第8号、同項第10号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号のいずれにも該当するとはいえず、その登録が同法第3条及び第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見い出せない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-900058