商標異議申立
2025-900020
デンショクフォーシーズンズトゥユアキッチン、デンショク、フォーシーズンズトゥユアキッチン
- 審判番号
- 2025-900020
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-035773
- 登録番号
- 6863090
- 請求日
- 2025年01月17日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社伝食
- 【権利者代理人】弁理士法人小笠原国際特許事務所
- 【異議申立人】フォー シーズンズ ホテルズ(ネザーランズ)ビー.ヴイ.
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】石田 昌彦
- 【異議申立人代理人】右馬埜 大地
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 勉
- 審判官 真鍋 伸行
- 審判官 吉沢 恵美子
- 分類
- T1652.261-Y (W43) / T1652.262-Y (W43) / T1652.263-Y (W43) / T1652.271-Y (W43)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6863090号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6863090号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6863090号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和6年4月4日に登録出願、第43類「飲食物の提供」並びに第29類、第33類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年10月21日に登録査定され、同年11月8日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、まとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3246765号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定役務:第42類「宿泊施設の提供,日本料理を主とする飲食物の提供,イタリア料理の提供,中華料理の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供,入浴施設の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,宴会のための施設の提供」
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成9年1月31日(特例商標)
(2)登録第6076964号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定役務:第43類「宿泊施設の提供及びこれらに関する情報の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ及びこれらに関する情報の提供,飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供,ケータリング及びこれらに関する情報の提供,宴会のための飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,ホテル及びリゾートにおける宿泊施設の提供,ホテルの予約の取次ぎ,レストランにおける飲食物の提供・ケータリング,宴会における飲食物の提供,アパートメント及びコンドミニアムにおける長期及び短期宿泊の予約の取次ぎ,会議施設の貸与,特別な日のための社交行事用の施設の貸与」
登録出願日:平成29年9月12日
設定登録日:平成30年8月31日
3 登録異議の申立ての理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第43類「全指定役務」(以下「本件申立役務」という場合がある。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(証拠の表記にあたっては「甲○」と表記する)を提出した。
(1)引用商標の周知・著名性について
引用商標は、申立人が、ホテル宿泊施設の提供及びホテル内のレストランにおける飲食物の提供について使用し、日本及び世界において広く知られるに至っている著名商標である。
申立人は、1960年にカナダで設立され、1961年3月21日に創業後、第1号となるフォーシーズンズ・モーターホテルをトロントに開業し、開業後はカナダとアメリカを中心に進出した。
1992年1月にアジア進出第1号として開業したフォーシーズンズ・ホテル椿山荘東京(現、ホテル椿山荘東京)を皮切りに、カナダとアメリカ以外の国にも積極的に進出し、50年以上にわたり、国際的に名高い「FOUR SEASONS」ブランドのもと、ラグジュアリーホテルやリゾートを経営・運営してきた。
日本おいては、1992年1月に「フォーシーズンズ・ホテル椿山荘東京」を開業した。すなわち、「宿泊施設の提供」、「飲食物の提供」等の役務について、「Four Seasons」の文字を、1991年1月頃から表示していた(甲3)。
2002年に行われた、米国の旅行雑誌「コンデ・ナスト・トラベラー」のアジア太平洋地区読者調査では、最高級ホテルブランドランキングにおいて、4位となるなど、2000年初めにはすでに、世界のホテルブランドとして高い知名度となっていた(甲4)。
申立人は、現在、世界47か国で133のホテルとリゾート、55のレジデンスを運営しており、日本では東京、京都、大阪という、日本の観光産業の主要都市で展開している(甲5)。
各都市のホテル名と開業日は以下のとおりである。
2002年10月、東京都千代田区丸の内に「フォーシーズンズ・ホテル丸の内東京」を開業。
2016年10月、京都市東山区に「フォーシーズンズ・ホテル京都」を開業。
2020年9月、東京都千代田区大手町に「フォーシーズンズ・ホテル東京大手町」を開業。
2024年12月、大阪市北区に「フォーシーズンズ・ホテル大阪」を開業。
上記日本国内の各ホテル・レジデンシャル施設では、「FOUR SEASONS」の商標をホテル名として使用している。
また、各ホテルやレジデンシャル施設には、複数のレストランが設置されており、宿泊客やビジターを誘致するための重要な施設となっている(甲6)。
ほとんどすべてのフォーシーズンズ・ホテルはレストランを併設し、ケータリングサービスを提供し、日本を含む客室内での食事など、飲料や食に関連するサービスを提供している。申立人は、ミシュランの星を獲得したシェフが率いる極上のレストランと料理体験で広く認知されている。申立人は2019年、フォーシーズンズ・ホテル内の17のレストランに与えられたミシュランの星獲得数で最多の25個という新記録を樹立した。2024年11月には、その数は20のホテルとリゾートの25のレストランで34のミシュランの星獲得数に増加した。
フォーシーズンズの施設は、そのレストランやダイニングサービスを含め、国際的な称賛と評価を受けており、それは、国際的な賞を数多く受賞していることからも明らかである。例えば、2005年、2006年、2008年、2009年には、フランス、パリに所在する、フォーシーズンズホテル・ジョルジュ5世パリのレストラン「ル・サンク」がミシュラン5つ星を獲得し、ベストホテル/リゾートキュイジーヌワールドワイド賞を受賞した。2016年、フォーシーズンズ・ホテル・ジョージ5世・パリは、ガリヴァンター誌のエディターズ・チョイス賞の最優秀ホテル料理賞と最優秀ホテル・スパ賞も受賞した。
申立人は、近年においても「アジアのベスト・バー50」(2021、2022、2023、2024年)、「アジアのベスト・レストラン50」(2022、2023、2024年)、「世界のベスト・レストラン40」(2022、2023、2024年)、DestinAsian Readers『Choice Awards(2017、2018、2019、2020年)、Travel+Leisure』s Luxury Awards Asia Pacific(2023年)を受賞している。
我が国に所在するフォーシーズンズ・ホテルにおいても、ミシュラン星獲得レストランや、バー、800年の歴史がある池庭に面した茶室ラウンジを併設しているなど、高い評価を得ている。
なかでも、フォーシーズンズ・ホテル東京丸の内のホテル施設内にある「セザン」は、フォーブス社が公表している「世界ベストレストラン50」(2024年版)に15位にランクされた(甲7)。
申立人の「FOUR SEASONS」商標の著名性は、日本を含む多くの国でなされた裁判等によって認められている。
我が国においては、申立人が過去に行った特許庁の審判手続(不服2002-6567、平成11年審判第35765号)の審決によれば、「FOUR SEASONS」標章は、「宿泊施設の提供、飲食物の提供」に関して使用されており、日本だけでなく世界中の消費者の間で広く認識されている」とされている(甲8)。
上記各証拠を総合して勘案すれば、申立人の名称及び同人が世界各国で営業するホテルチェーンの名称は「FOUR SEASONS(フォーシーズンズ)」と呼ばれ、これが、遅くとも1992年1月に請求人が我が国でホテル業を開業する頃には、役務「宿泊施設の提供」の取引者・需要者の間において、広く認識されていたということができるものであり、その後も、2002年の「フォーシーズンズ・ホテル丸の内東京」の開業を皮切りに、合計4つのホテルを開業させたことにより、その著名性は、本件商標の出願時、登録時及び現在においても継続しており、むしろその著名性は高まっている。
さらに、先に述べたように、各ホテルには、複数のレストランが併設され(甲6)、それらレストランは、国内外で高く評価され(甲7)、宿泊客やビジターを誘致するための、重要なコンテンツともなっている。
このように、本件商標の出願前から「FOUR SEASONS」は申立人の名称及び同人が世界各国で営業するホテルチェーンの名称として広く知られており、それにともになって「飲食物の提供」に使用される商標として、我が国を含む世界的に周知又は著名な商標としての地位を獲得していた事実は疑いようがないのであり、本件商標の査定時においても継続してその周知著名性を維持していたと優に推認できるものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標の構成
本件商標は、上段に「denshoku」の文字を、下段に「four seasons to your kitchen」の文字を配して構成されてなるところ、これらは既成語や馴染まれた熟語等ではなく、「denshoku」、「four seasons to your kitchen」という、複数の文字を組み合わせた結合商標を構成するものである。
本件商標を構成する「denshoku」、「four seasons to your kitchen」の各段を構成する文字は、馴染まれた熟語的意味合いを有しているなど、密接或いは自然なけんれん性はなく、その他本件商標を常に一体のものとして把握されなければならない格別の事情も見当たらない。特に上段の「denshoku」の文字が、大きく表示されている関係で、下段の「four seasons to your kitchen」の文字とは視覚上、分離独立して看取されるとみるのが自然である。
また、「four seasons to your kitchen」にあっては、これ全体より生ずると認められる「フォーシーズンズトゥーユアキッチン」の称呼が14音と極めて冗長なものである。そして、前半部を構成する「four seasons」の文字が、上記(1)に述べたとおり、申立人が長年にわたって使用を継続し、我が国において周知著名なものになっているという実情を併せ考慮すれば、これをその指定役務に使用する場合、取引者、需要者は「four seasons」の文字部分を捉え、印象付けられるのであり、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分といえる。
他方、その余の「to your kitchen」の文字部分は、英語の前置詞「to」、二人称所有格を示す「your」、「台所、調理場」を意味する平易な英語「kitchen」であり(三省堂「初級クラウン英和辞典」)、おおむね「あなたの調理場へ」、「あなたの調理場のために」のような意味合いが理解できるが、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」との関係では、役務の質(内容)を端的に示すものにすぎない。
よって、当該文字部分は、出所識別標識としての機能を果たさないか、極めて弱いといわざるを得ない。
したがって、本件商標の構成にあっては、「four seasons」の部分が着目されて、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部となり、これより生ずる称呼、観念をもって取引にあたる場合も多いものと判断するのが相当である。
イ 引用商標の構成
引用商標は「Four Seasons」「FOUR SEASONS」の欧文字よりなるところ、上記(1)に述べたとおり、申立人によって長年にわたって使用を継続され、我が国において周知著名なものになっているという取引の実情に鑑みれば、引用商標からは構成文字に照応した「フォーシーズンズ」の称呼、「四季」の意味合いとともに、「申立人が運営する世界的ホテルチェーン」を想起、連想する。
ウ 本件商標と引用商標の対比
そこで、本件商標と引用商標とを比較対照して観察すると、まず、本件商標は「four seasons(FOUR SEASONS)」の文字列を含んでいることが明らかであり、外観において引用商標と類似している。
また、本件商標の下段部分のうち、「four seasons」の部分が需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部といえるのに対し、「to your kitchen」の部分が本件商標の指定役務との関係で、役務の質を表すものであって、自他役務の識別機能を有しないかその機能が極めて弱いことに照らすと、本件商標にあっては「four seasons」の文字が着目され、単に「フォーシーズンズ」とのみ称呼される場合も少なくないものといえる。したがって、本件商標の称呼は、引用商標の称呼「フォーシーズンズ」と類似する。
さらに、観念においても、本件商標は既成語ではなく、特定の観念を生じるとはいえないが、共に「four seasons(FOUR SEASONS)」を要部としており、これが「四季」を意味する英語であるとともに、申立人の周知・著名商標を示すものであるから、「申立人が運営する世界的ホテルチェーン」を想起、連想する点において、観念上も、引用商標と相当程度類似する。
加えて、両商標は、いずれも、同一の役務、「飲食物の提供」に使用される商標であるので、取引の実情に照らしても彼此紛れるおそれが極めて高いといえ、さらに、その需要者が一般消費者であって、特別高い注意力を以って常に商標に接するとはいえない点をも考慮すれば、本件商標が引用商標と全体として類似していることは明らかであり、混同の生じさせるおそれが極めて高いものである。
(3)商標法第4条第1項第11号について
前記詳述したとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
そして、本件商標に係る指定役務「飲食物の提供」は、引用商標に係る指定役務「日本料理を主とする飲食物の提供」、「飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供」等と同一又は類似の役務である。
よって、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は「denshoku」、「four seasons to your kitchen」を二段にした文字構成よりなるが、両者は視覚上、分離独立して看取されるとみるのが自然であり、下段の「four seasons to your kitchen」は馴染まれた意味合いを想起させる熟語ではなく、観念上、密接なけんれん性を見いだすことができないものである。
むしろ、本件商標の構成に含まれる「four seasons」の文字が、我が国において周知・著名な商標であることに鑑みれば、これに接する需要者・取引者をして、本件商標が「four seasons」の文字を顕著に含むことを容易に理解させるだけでなく、これが強く印象付けられて特に注目される場合も少なくない。
よって、引用商標からは「四季」の意味合いとともに、「申立人が運営する世界的ホテルチェーン」である「four seasons」を想起、連想するので、称呼上、観念上も引用商標と類似する。
よって、本件商標と引用商標の類似性は高いといわなければならない。
イ 引用商標の著名性及び独創性
引用商標に係る「Four Seasons(FOUR SEASONS)」及びその日本語表記である「フォーシーズンズ」の文字が、「申立人が運営する世界的ホテルチェーン」を示す商標として日本はもちろんのこと世界中で著名である事実は前述したとおりである(甲3~甲8)。
しかも、引用商標の指定役務との関係で何ら直接的に役務の質等の内容を示唆するものではなく、このような文字を採択すること自体、高い顕著性を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。
ウ 本件商標と引用商標の指定役務の関連性の程度
本件商標の指定役務は「飲食物の提供」である。
上記指定役務は、特許庁審査基準(「類似商品・役務審査基準」)において、引用商標1の指定役務中の「日本料理を主とする飲食物の提供,イタリア料理の提供,中華料理の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・コーヒー・ココア・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」、引用商標2の指定役務中の「飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供,ケータリング及びこれらに関する情報の提供,宴会のための飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供,レストランにおける飲食物の提供・ケータリング,宴会における飲食物の提供」との関係で「同一又は類似の役務」として取扱われており、非常に関連性の高いものである。
また、上記指定役務「飲食物の提供」は、審査基準において、引用商標の指定役務に含まれる「宿泊施設の提供」とは相互に類似しないものとして取り扱われているが、審査基準は、特許庁内部における、商標審査実務を円滑に遂行するための「推定」とされているところ、「宿泊施設の提供」を行うホテルにおいては、ほぼ例外なく、ホテル施設内に「飲食物の提供」を行うレストランやカフェが併設されていることは、明らかな事実である。
申立人が我が国で展開しているホテル、レジデンス施設においても、すべてのホテル施設において、複数のレストランが併設されていることは先に述べたとおりである。
そして、それらのレストランは、ミシュランの星を獲得したシェフが率いる極上のレストランと料理を体験できる場として広く認知されていることから、宿泊客やビジターを誘致するための、重要なコンテンツともなっているといい得るところである。
してみると、本件商標の指定役務「飲食物の提供」との関係を考慮したときには、上記「推定」を打ち破るほどに関連性が強く、また、取引者及び需要者の共通性も高いものであることが明らかである。
したがって、本件商標の上記指定役務は、引用商標が周知・著名となっている「宿泊施設の提供」、「飲食物の提供」との関係において、役務の提供場所、提供方法、目的を共通にしており、関連性が非常に高いといえる。
エ 取引者、需要者の共通性
本件商標の商標権者の取引者、需要者は、レストランで食事をとることを希望する者であり、老若男女を含む一般消費者が想定され、他方、申立人の取引者、需要者についても、老若男女を含む一般消費者であり、両商標の取引者、需要者は完全に同じとなる。
オ まとめ
以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者に対して、引用商標を連想させて役務の出所について、あたかも、申立人又は申立人と経済的、組織的に関係する者により提供される役務であるかのごとく誤認を生じさせ、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
すなわち、申立人は、本件商標の登録によって損害を受ける一方、本件商標権者は、申立人の「FOUR SEASONS」商標の業務上の信用や名声から不当に利益を得ることになる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」にあたるというべきである。
4 当審の判断
(1) 引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)毎日新聞(1992年1月8日付)、日本経済新聞(1990年4月16日付、1991年12月27日付)、及び東京読売新聞(1991年9月4日付)の記事には、申立人がカナダを本拠とする世界的な高級ホテルチェーンであり、1992年1月に「フォーシーズンズ・ホテル椿山荘東京」を開業する旨の記載、及び当該ホテルには、イタリア料理のレストラン「ビーチェ」が導入される旨の記載がある(甲3)。
(イ)日本経済新聞(2003年11月28日付)によれば、2002年に行われた、米国の旅行雑誌「コンデ・ナスト・トラベラー」のアジア太平洋地区読者調査では、最高級ホテルブランドランキングにおいて、申立人は4位であった(甲4)。
(ウ)朝日新聞(2012年9月20日付、2016年10月8日付、2021年4月9日付)及び日本経済新聞(2016年7月13日付、2019年7月27日付)の記事には、高級ホテルである申立人が、日本において、2016年に京都市に、2020年に東京都に、及び2024年に大阪市に「フォーシーズンズ・ホテル」を開業する旨の記載がある(甲5)。
(エ)上記(ウ)の各ホテルには、複数のレストランが設置されており(甲6)、例えば、フォーシーズンズホテル東京丸の内ホテルには、ビストロ「MAISON MARUNOUCHI(メゾンマルノウチ)」、フランス料理「SEZANNE(セザン)」が、同ホテル京都には「鮨 銀座おのでら」及びティーラウンジ「楓樹」がある。
(オ)申立人のウェブサイトには、樹木図形の下部に「FOUR SEASONS」の文字を配したものが表示されているところ、これは、別掲3のとおりの構成からなる引用商標2と同一視できるものである(甲7)。
イ 上記アによれば、申立人は、カナダを本拠とする世界的な高級ホテルチェーンであり、我が国においては、1992年に「フォーシーズンズ・ホテル椿山荘東京」を開業し、その後、現在までに、東京に2軒、大阪、京都にそれぞれ1軒のホテルを開業したことが認められ、一般紙において、1990年から2021年に申立人のホテルが世界的な高級ホテルであることが複数回報じられていることからすれば、申立人に係るホテルが世界的な高級ホテルとして継続して運営されているものということができ、さらに、申立人が我が国において上記新規ホテルを開業することも報じられていることなどからすれば、申立人が同人のホテルに使用している「FOUR SEASONS」の文字からなる引用商標1及び当該文字と樹木図形からなる引用商標2のいずれも、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人に係る業務である「宿泊施設の提供」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているといい得るものである。
しかしながら、申立人の提出した証拠において、申立人のホテル施設等に存在する飲食物の提供は、申立人の名称とは異なるそれぞれ固有の名称が使用されており、当該レストランにおいて、引用商標が使用されている事実は確認できない。
また、その他、申立人の提出に係る証拠では、申立人が引用商標を飲食物の提供に使用している事実は確認できず、引用商標を使用した「飲食物の提供」に係る役務の提供実績(提供(販売)額の多寡及びシェア等)並びに広告の規模(広告の配布数及び広告エリア等)を客観的に確認できる証拠は見いだせない。
したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時に、本件申立役務「飲食物の提供」の需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。
(2) 商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、左側に図形を配し、当該図形の右側に「denshoku」の文字を大きく、その下部に、「four seasons to your kitchen」の文字を、上段の文字全体よりやや狭い幅で小さな文字で表してなるものであり(以下、これらをまとめて「文字部分」という。)、図形部分と文字部分とは接することなく配置されているものである。
そして、文字部分についてみるに、上段と下段の文字は、全く異なる大きさの文字で、横幅を異にして2段に表されていることから、視覚上分離して看取されるものであり、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいい難いものである。
また、構成中上段の「denshoku」の文字は辞書等に掲載がない語である一方、下段の「four seasons to your kitchen」の文字のうち、「four」の文字は「4つ」の意味を、「seasons」の文字は「季節、季(四季のひとつ)」の意味を有する「season」の複数形を、「to」の文字は「…まで、…へ、…に」の意味を、「your」の文字は「あなた(たち)の、君(ら)の」の意味を、「kitchen」の文字は「台所、キッチン、調理場、厨房」(「新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典」株式会社研究社参照)の意味を有する平易な英単語であって、全体として「あなたの台所に四季を」ほどの意味合いを容易に理解させるものであり、下段の文字部分全体として一つの文章を表したと理解されるものの、上段と下段の文字が一体となって特定の意味合いを想起させるものではない。
そうすると、本件商標の文字部分は、その構成文字全体の他、「denshoku」及び「four seasons to your kitchen」の文字部分も各々自他役務の出所識別標識として機能するものといえる。
してみれば、本願商標は、その構成文字に相応して、「デンショクフォーシーズンズトゥーユアキッチン」、「デンショク」及び「フォーシーズンズトゥーユアキッチン」の称呼を生じるものであり、その構成文字全体及び「denshoku」の文字部分からは、特定の観念を生じないが、「four seasons to your kitchen」の文字部分からは、「あなたの台所に四季を」ほどの観念を生じるものである。
なお、申立人は、本件商標の構成中の「four seasons to your kitchen」の文字部分において、「four seasons」の文字部分が、申立人が長年にわたって使用を継続し、我が国において周知著名なものになっていること、「to your kitchen」の文字部分は、本件商標の指定役務である「飲食物の提供」との関係では、役務の質(内容)を端的に示すにすぎないから出所識別標識としての機能を果たさないか極めて弱いものであることから、「four seasons」の文字部分が着目されて、独立して自他役務の識別標識としての機能を果たす要部となる旨主張している。
しかしながら、「four seasons to your kitchen」の文字部分は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されており、構成全体から生じる「フォーシーズンズトゥーユアキッチン」の称呼もよどみなく一連に称呼できるものであり、その構成全体から「あなたの台所に四季を」ほどの意味合いを容易に理解させることからすれば、当該文字部分全体として一つの文章を表したと理解され、構成全体をもって一体不可分のものと認識されるというのが相当である。また、上記(1)のとおり「four seasons」の文字は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、「飲食物の提供」の需要者の間に広く認識されているとは認められず、「to your kitchen」の文字が、上記役務との関係において、役務の質(内容)を表示するものとして使用されている証拠の提出はなく、また、そのような事情も見いだせない。
したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。
イ 引用商標について
引用商標1は、別掲2のとおり、「FOUR」及び「SEASONS」の文字を上下2段に書した構成からなるものであり、その構成文字に相応し「フォーシーズンズ」の称呼を生じ、当該文字は「四季」の意味を容易に想起させる語であるから、これより「四季」の観念を生じるものである。
引用商標2は、別掲3のとおり、「FOUR SEASONS」の文字を横書きし、その上部に樹木の図形を配した構成からなるものであり、「FOUR SEASONS」の文字に相応し、「フォーシーズンズ」の称呼を生じ、「四季」の観念を生じるものであり、また、樹木の図形は、特定の樹木を表したと直ちに認識されるものではないから、特定の称呼及び観念は生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較してみるに、両者全体の比較、及び本件商標の文字部分と引用商標の比較においては、図形の有無及び文字構成が明確に異なるものであり、また、本件商標の構成中の「four seasons to your kitchen」と引用商標の比較においては、外観において「to your kitchen」の文字の有無の差異があり、明確に区別できるものである。
そして、本件商標から生じる、「デンショクフォーシーズンズトゥーユアキッチン」、「デンショク」及び「フォーシーズンズトゥーユアキッチン」の称呼と引用商標から生じる「フォーシーズンズ」の称呼とは、構成音及び構成音数が異なるから相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標はその構成文字全体及び「denshoku」からは観念を生じず、また、「four seasons to your kitchen」の文字から生じる「あなたの台所に四季を」と、引用商標から生じる「四季」とは、明確に区別できるものであり、両者は観念において相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、本件申立役務と引用商標の指定役務とが類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり引用商標は、申立人に係る業務である「宿泊施設の提供」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているといい得るものの、本件申立役務である「飲食物の提供」との関係においては、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものである。
また、「FOUR SEASONS」の文字は、「四季」の意味を有する成語であるから、その独創性は高いとはいえない。
さらに、上記(2)のとおり本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、その類似性の程度は極めて低いものである。
申立人は、「宿泊施設の提供」を行うホテルにおいては、ほぼ例外なく、ホテル施設内に「飲食物の提供」を行うレストランやカフェが併設されており、申立人が我が国で展開しているホテル、レジデンス施設においても、すべてのホテル施設において、複数のレストランが併設され、宿泊客やビジターを誘致するための、重要なコンテンツともなっていることなどから、本件商標の指定役務「飲食物の提供」と申立人の業務に係る「宿泊施設の提供」とは、関連性が非常に高いといえる旨主張している。
しかしながら、「宿泊施設の提供」の役務において、夕食及び朝食を提供するなど、併せて飲食物の提供が行われることがあるとしても、「飲食物の提供」の役務全般において、宿泊施設がともに提供されることは極一部にとどまり、また、ホテルの施設内にレストランやカフェが併設されることがあるとしても、それらが通常同一の営業主又は系列会社によって提供されていると認め得る実情も見いだせないから、上記役務の関連性の程度が高いということはできない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれを本件申立役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標等を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が引用商標等と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4) むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務中、本件申立役務である、第43類「飲食物の提供」についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-900020