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商標異議申立

2025-900006

デビルズリザーブ、デビルズ、デビル、リザーブ

審判番号
2025-900006
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2024-037203
登録番号
6858024
請求日
2025年01月06日
審決日
2025年08月26日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ベクレ,エス.エ-.ビ-.デ シ-.ブイ.
  • 【権利者代理人】佐藤 淳
  • 【権利者代理人】林 栄二
  • 【異議申立人】ビニヤ コンチャ イ トロ ソシエダード アノニマ
  • 【異議申立人代理人】杉村 憲司
  • 【異議申立人代理人】杉村 光嗣
  • 【異議申立人代理人】門田 尚也
  • 【異議申立人代理人】長嶺 晴佳
審判長/審判官
  • 審判長 高橋 幸志
  • 審判官 小俣 克巳
  • 審判官 白鳥 幹周
分類
T1651.261-Y (W33) / T1651.262-Y (W33) / T1651.263-Y (W33) / T1651.271-Y (W33)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6858024号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6858024号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6858024号商標(以下「本件商標」という。)は、「DEVIL‘S RESERVE」の文字を標準文字で表してなり、2024年3月22日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し令和6年4月8日に商標登録出願、第33類「アルコール飲料(ビールを除く。)」を指定商品として、同年10月11日に登録査定、同月24日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第6777565号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 DEVIL’S CARNAVAL(標準文字) 指定商品 第33類「ぶどう酒,発泡性のぶどう酒,洋酒,果実酒」 登録出願日 令和 5年 8月30日 設定登録日 令和 6年 2月 8日 (2)登録第5679608号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 別掲のとおり 指定商品 第33類「ぶどう酒,発泡性のぶどう酒,洋酒,果実酒」 登録出願日 平成26年 2月 6日 設定登録日 平成26年 6月20日 3 本件異議申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第44号証(以下、表記に当たっては「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出した。 (1)申立人及び同人の使用する商標の周知著名性について ア 申立人の「ビニヤ コンチャ イ トロ ソシエダード アノニマ」は、1883年に創設されたラテンアメリカ最大のワイン製造メーカーであり、その製品であるワインの輸出先は、140か国を超える。申立人は、チリ共和国の首都サンティアゴに本社を構えており、申立人が自社で保有するブドウ畑の総面積は、9,000ヘクタール以上である(甲5~甲7)。 近年、チリ産ワインは、コストパフォーマンスの良いワインとして、我が国において、絶大な人気を博している。これは、2007年に発効した日チリ経済連携協定で関税率が段階的に引き下げられたことや、チリ産ワインの品質が向上してきたことなどが理由として挙げられる。2015年には、チリ産ワインの我が国における輸入量は、ついにフランス産を抜き、初の首位となっている。その後、チリ産ワインは、2020年まで、輸入数量において6年連続で首位となった(甲8)。このように、我が国で長年にわたりワインの輸入数量で首位を維持しているチリ共和国の中で、申立人は、ワインの輸出量第1位を誇るワインメーカーである。 ワインの輸出額、売上額、ブドウ畑の面積等で世界有数の規模を誇る世界的ワインメーカーである申立人は、上述のとおり、140か国以上の地域で愛飲されており、世界各地で高く評価されており、例えば、申立人は、「世界で最も称賛されるワインブランド(THE WORLD’S MOST ADMIRED WINE BRAND)」に、2011以降、12年連続で選出されている(甲9)。 イ 世界的ワインメーカーである申立人の主力商品の一つが、「“悪魔の蔵”の伝説」と銘打って訴求される、「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」と呼ばれるプレミアムワインであり、これは、スペイン語で「悪魔の蔵」との意味であるが、当該ワインシリーズは、下記に紹介する物語性をもって、我が国及び世界の需要者に訴求する。 「その昔、チリの名門ワイナリー コンチャ・イ・トロには最高のワインを貯蔵しておく特別な蔵があった。しかし、そのワインのあまりの美味しさに密かに盗み飲みをする者が後を絶たなかった。そこで、創立者のドン・メルチョーは『この蔵には悪魔が棲んでいる』という噂を流した。噂は炎のように広がり、人々を恐れさせその美酒を守ったという。この蔵はのちに“悪魔の蔵”と呼ばれ今もなお大切なワインが静かに貯蔵されている。」(甲10) 甲第11号証から分かるとおり、「カッシェロ・デル・ディアブロ」のワインボトルには、ラベルの上部に、悪魔の顔の刻印マークが付されている。「カッシェロ・デル・ディアブロ」には、豊富なラインナップが揃えてあり、その全てのラインナップのボトルには、悪魔の顔の刻印マークがある(甲12)。そして、スタンダードシリーズの「RESERVA(レゼルバ)」の他に、「DEVIL’S CARNAVAL(デビルズ・カナバル)」シリーズや、「DEVIL’S COLLECTION(デビルズ・コレクション)」シリーズに加え、悪魔の顔の輪郭をブランドシンボルにした「DIABLO(ディアブロ)」(スペイン語で「悪魔」)シリーズなどがあり、「悪魔(DEVIL)」が全面的にフィーチャーされている(甲12)。 「カッシェロ・デル・ディアブロ」ワインは、世界140か国以上で販売される最もグローバルに展開されるワインブランドの一つであり、年間約500万ケースが販売され、当該ワインは、チリを代表するワインであるばかりでなく、世界各国で栄誉ある賞を受賞しており、「チリのブランド殿堂」入りも果たしている(甲13)。 以上のとおり、「悪魔(DEVIL)」をシリーズコンセプトの中心に据えた「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」シリーズは、申立人の主力商品の一つであり、我が国においてもグローバルでも人気が高く、申立人の商品である「ワイン」と、通常、ワインとは何の繋がりも連想され得ない「悪魔(DEVIL)」との組み合わせは、非常に新奇なものであり、申立人及び申立人の商品と、「悪魔(DEVIL)」との独創性の強い新奇な組み合わせは、取引者・需要者の印象・記憶等に強く残るものである。 したがって、「ワイン」の分野で「悪魔(DEVIL)」といえば、申立人若しくは申立人商品との連想の図式が、ワイン愛好家、取引者・需要者の間で当然に成り立っている。 なお、申立人は、主力商品の一つである「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」シリーズについて、14件の商標を所有している(甲14~甲27)。 上掲のとおり、申立人は、「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」シリーズに関連して、我が国において、非常に多くの商標登録出願を行っており、このことからも、申立人の主力商品「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」シリーズが、我が国において広く認識されており、我が国のワイン愛好家、取引者・需要者の間で、ワインに関して、「悪魔(DEVIL)」といえば、申立人若しくは申立人の商品であるとの強い印象、記憶、連想等が存在することがうかがえる。 ウ 小括 このように、我が国における国別ワイン輸入数量のトップを争うチリ共和国においてワイン輸出量第1位を誇る申立人のワインブランド「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」は、世界140か国以上で販売され、年間約500万ケースが販売される、申立人商品の中でも最も有名な主力ブランドの一つであり、ブランド名である「カッシェロ・デル・ディアブロ(Casillero del Diablo)」(悪魔の蔵)をはじめ、当該シリーズのワインボトルや広告等に使用される悪魔の顔の刻印マークやシリーズ名の「DEVIL’S CARNAVAL(デビルズ・カナバル)」、「DEVIL’S COLLECTION(デビルズ・コレクション)」等はすべて、申立人の商品の出所を識別する標識として、我が国のワイン愛好家、取引者・需要者の間で広く知られている。これらの「悪魔(DEVIL)」に係る申立人の使用する商標は、遅くとも本件商標の登録出願時において、我が国のワイン愛好家、取引者・需要者の間で、申立人のワインを表示するものとして広く認識されていた。 そして、申立人の弛まぬ営業努力により、申立人の使用する商標は、本件商標の登録査定時においても継続して、我が国の取引者・需要者の間において広く知られていた。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 (ア)本件商標は、欧文字「DEVIL’S RESERVE」を標準文字で横一列に書してなる。構成文字中前半の「DEVIL’S」(決定注:「’」(アポストロフィ)は「‘」(シングルクォテーション)の誤り。以下「3 本件異議申立ての理由」部分において同じ。)は、「悪魔」を意味する英単語「DEVIL」(甲28)に所有格を表す「’S」が付き、全体で「悪魔の~」ほどの意味合いを有し、構成文字中後半の「RESERVE」は、「蓄え,備え」ほどの意味を有する英単語(甲29)であり、本件商標の指定商品の分野においては、当該文字は、ブランド名に頻繁に使用される語であり、本件商標中後半の「RESERVE」の文字は、商標としての称呼及び観念は、以下の(イ)及び(ウ)の説明のとおり、生じ得ない。 (イ)ワインの分野における「RESERVE」の意味 ワインの分野において、「RESERVE(レゼルヴ、リザーヴ)」や「RISERVA(リゼルヴァ)」(イタリア)、「RESERVA(レセルヴァ、レゼルヴァ)」(スペイン、ポルトガル)は、特定の期間樽で熟成させたワインのことを指す。それぞれの国のワイン法によって熟成期間や樽の使用、アルコール度数に関する規定の内容は異なり、ワイン法によるレゼルヴ等の規定がない国も存在するなど、その実態に統一性はなく、ワイナリーが特別感を出したいワインに「RESERVE(レゼルヴ、リザーヴ)」等を冠する慣習がある(甲30)。 (ウ)ワインの分野において「RESERVE」等が慣習的に使用されていること 現に、「RESERVE(レゼルヴ、リザーヴ)」等をワインのブランド名に冠する例には、「Five’s Reserve」(甲31)、「DeMorgenzon Reserve Chenin Blanc」(甲32)、「Boizel Brut Reserve」(甲33)、「La Croisade Reserve Chardonnay」(甲34)、「DOMAINE DU MAGE RESERVE」(甲35)、「Corley Reserve Cabernet Sauvignon」(甲36)、「TARANI Reserve」(甲37)など、非常に多い。 (エ)以上より、本件商標の指定商品の分野において、「RESERVE」の文字は商品の出所を識別する機能はなく、本件商標において出所表示機能を発揮するのは、前半の「DEVIL’S」の文字部分である。 したがって、本件商標からは、要部の「DEVIL’S」の文字部分に相応して「デビルズ」との称呼が生じ、「悪魔の」ほどの観念が生じる。 イ 引用商標 (ア)引用商標1 引用商標1は、欧文字「DEVIL’S CARNAVAL」を標準文字で横一列に書してなり、上述のとおり、構成文字中前半の「DEVIL’S」は「悪魔の」ほどの意味を持つ。 構成文字中、後半の「CARNAVAL」の文字は、英語で「謝肉祭」を意味し(甲38)、これは、カトリックを主たる宗教とする国で行われている祭りであり(甲39)、その盛大な祝宴にはお酒、特に、ワインがつきものである。 したがって、引用商標1の構成文字中、後半の「CARNAVAL」は、出所識別標識としての機能は弱く、引用商標1の要部、すなわち、商品の出所を表示する機能を果たすのは、前半の「DEVIL’S」の部分である。 以上より、引用商標1からは、要部の「DEVIL’S」の文字に相応して「デビルズ」との称呼が生じ、「悪魔の」ほどの観念が生じる。 (イ)引用商標2 引用商標2は、「悪魔の蔵」を意味する「Casillero del Diablo」を3段組みで書したものと、「DEVIL’S Collection」を2段組みで書したものを、灰色から黒色のグラデーションで表示される大中小三つの長方形の中央部に、左記長方形を背景に配置してなる。 上記のとおり、「Casillero del Diablo」は、申立人の主力ワインブランドの名称の一つであり、我が国の取引者・需要者の間で広く知られている。また、その字体及び色(金色)も、3段組み表記ではあるものの、統一した字体及び色となっている。 したがって、「Casillero del Diablo」の文字部分は、不可分一体として看取され、引用商標2中、「Casillero del Diablo」を除いた文字部分である「DEVIL’S Colection」のうち、「Collection」の文字は、ワインの分野においては、ワイナリーが提供するシリーズのうち、ある特別なシリーズほどの意味合いで使用されることが多く、その一例として、「Prestige Collection」(甲40)、「LOUIS ROEDERER COLLECTION 244」(甲41)、「Spier Discover Collection Chenin Blanc/Chardonnay」(甲42)、「GLENELLY GLASS COLLECTION」(甲43)、「Edizione Collection」(甲44)がある。 上記例からも分かるとおり、「DEVIL’S Colection」のうち、「Collection」の文字は出所を識別する標識としての機能が非常に弱く、前半の「DEVIL’S」の文字が識別力を発揮する部分である。 なお、引用商標2中、「Casillero del Diablo」と「DEVIL’S Colection」の文字は、文字の字体やサイズ、色の相違及び段組みの表示態様により、これらを分離して観察することが不自然であるほど不可分的に結合してものではなく、「Casillero del Diablo」は、申立人の主力ワインブランドの名称の一つであり、我が国の取引者・需要者の間で、広く知られているので不可分一体であり、「Casillero del Diablo」と「DEVIL’S Colection」とは、分離して看取され、それぞれが引用商標2の要部となる。 したがって、引用商標2においては、要部の一つ「Casillero del Diablo」からは、構成文字に相応して「カッシェロデルディアブロ」の称呼が生じ、「申立人ワインのブランド名としての『カッシェロ・デル・ディアブロ』」の観念が生じる一方で、もう一つの要部「DEVIL’S Colection」からは、識別標識としての称呼及び観念を生じない「Collection」の文字部分が捨象され、「DEVIL’S」の文字部分から、構成文字に相応して「デビルズ」との称呼が生じ、「悪魔の」ほどの観念が生じる。 ウ 本件商標と引用商標の類否 (ア)本件商標と引用商標1の類否 本件商標と引用商標1は、構成文字において、「RESERVE」と「CARNAVAL」の相違があるものの、いずれもワインの分野においては出所を識別する機能を発揮し得ず、要部は「DEVIL’S」で共通する。 したがって、要部「DEVIL’S」の構成文字に相応して生じる称呼「デビルズ」及び観念「悪魔の」を共通にする。 そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観において近似し、称呼及び観念において共通なので、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある類似の商標である。 (イ)本件商標と引用商標2の類否 本件商標と引用商標2は、商標全体の外観において相違するが、本件商標と引用商標2の要部の一つである「DEVIL’S Colection」の文字部分とを比較した場合、両者は構成文字において、「RESERVE」と「Collection」の相違があるものの、いずれもワインの分野においては出所を識別する機能を発揮し得ず、要部は「DEVIL’S」で共通する。 したがって、要部「DEVIL’S」の構成文字に相応して生じる称呼「デビルズ」及び観念「悪魔の」を共通にする。 そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観において相違するものの、称呼及び観念において共通するといえるので、両者は類似の商標というべきものである。 エ 小括 上述のとおり、本件商標は引用商標に類似する商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似であるから、本件商標は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本件商標と引用商標との類似性の程度について 本件商標と引用商標とは、上記(2)ウのとおり、称呼及び観念を共通にする類似商標であり、本件商標と引用商標は類似性の程度が非常に高い。 イ 申立人商標の周知度について 申立人商標(申立人の主張の全趣旨から、「DEVIL」又は「DEVIL’S」の文字からなる商標を指すものと認める。以下同じ。)は、申立人の提供に係る商品「ワイン」の出所を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者・需要者に広く認識されていた。また、ワインの分野において「DEVIL(悪魔)」といえば、申立人若しくは申立人商品であるとの連想が、ワイン愛好家、取引者・需要者の間で確立されていた。 ウ 申立人商標の独創性等について ワインのブランド名として「DEVIL(悪魔)」を採択することは、ワインなどのアルコール飲料を取り扱う業界において、非常に独創的な発想であり、その新奇かつ独創的な発想により、ワインの分野において、「DEVIL(悪魔)」といえば、申立人若しくは申立人商品であるとの連想が、ワイン愛好家、取引者・需要者の間で確立されていたことから、申立人商標は、独創性を備えているといえる。 エ 申立人商標がハウスマークであるかについて 申立人商標はハウスマークではないが、申立人の提供に係る商品「ワイン」の主力ブランドの名称の一つとして、ハウスマークに準ずる。 オ 申立人における多角経営の可能性、商品間の関連性、商品等の需要者の共通性について 本件商標の指定商品は、申立人が取り扱うワインと同じアルコール飲料の部類に属するから、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは密接な関連性があり、また、商品の需要者も共通する。 カ 小括 以上をまとめると、本件商標は、混同を生ずるおそれのある判断基準の全ての要件において、商品の出所について誤認混同を生じるおそれが肯定される方向にあるから、本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標に係る商品について、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがある(広義の混同)。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)申立人の使用に係る商標の周知性について ア 申立人の提出した証拠及び職権による調査によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、1883年に創設されたチリ最大のワイン製造メーカーであり、その製品であるワインの輸出先は140か国を超え、申立人が自社で保有するブドウ畑の総面積は9,000ヘクタール以上である(甲5~甲7、甲13)。なお、我が国においては、申立人の業務に係るワインは「キリンホールディングス株式会社」の傘下企業である「メルシャン株式会社(以下「メルシャン社」という。)」が取り扱っている(甲5、職権調査)。 (イ)令和3年10月22日付け東京税関のウェブサイトに掲載の「特集 ボトルワインの輸入」と題する記事によれば、国別のボトルワイン輸入量で、チリ産のワインは2015年にフランスを抜いて首位となり、以後、2020年まで6年連続首位である。そして、2020年の国別シェアは1位のチリが30%、2位のフランスが27.6%である(甲8)。申立人は、チリでワインの輸出量第1位のワインメーカーであると主張している。 (ウ)申立人は、「世界で最も賞賛されるワインブランド(THE WORLD MOSTADAMIRED WINE BARND)に、2011年以降、12年連続で選ばれている(甲9)。 (エ)申立人は、申立人が製造するワインに「フロンテア」「サンライズ」「カッシェロ・デル・ディアブロ」「マルケス・デ・カーサ・コンチャ」「テルニーニョ」「アメリア」及び「ドン・メルチョー」のブランドを使用しており、これらのブランドを使用した商品が我が国ではメルシャン社又は「日本リカー株式会社」によって取り扱われている(甲7)。また、このうち「カッシェロ・デル・ディアブロ」では、「レゼルバ」「デビルズ・カルナバル」「デビルズ・コレクション」「レゼルバ・プリバダ」「ディアブロ」と称する異なるラインナップの商品があり、「デビルズ・カルナバル」では、これを英語表記した「DEVIL’S CARNAVAL」の文字をやや図案化したロゴマークが商品のボトルに使用され、また、「デビルズ・コレクション」では、これを英語表記した「DEVIL’S COLLECTION」の文字をやや図案化したロゴマークの下に、3本のワインボトルが紹介されており、そのうち「レッド」及び「ホワイト」のボトルには、引用商標2が使用されていると認められることから、「DEVIL’S」の文字と筆記体風に表された「Collection」の文字を上下に横書きした文字が使用されている(甲12)。 イ 上記アによれば、申立人は、永年にわたりワインを製造しており、現在では広大なブドウ畑を保有し、申立人が製造するワインは、140カ国を超える地域に輸出され、また、チリにおいてワインの輸出量第1位の事業者(申立人主張)であり、さらに、そのブランドが複数年にわたり賞を受けるなど評価されていることから、チリを代表するワインの製造業者ということができる。 また、チリ産のワインは、我が国の輸入ワインの国別統計で第1位となるほど、多くの輸入量があるところ、申立人の商品についても、我が国において、申立人の複数のブランドに係る商品が取り扱われていることが認められ、それらの中には、「DEVIL’S CARNAVAL」及び「DEVIL’S COLLECTION」(「DEVIL’S Collection」の表示を含む。)の文字が使用されていることが認められる。 そして、申立人は、「DEVIL’S CARNAVAL」「DEVIL’S COLLECTION」の文字のみならず、「DEVIL」又は「DEVIL’S」の文字についても、申立人の製造するワインを表すものとして、需要者の間に広く知られたものである旨主張するが、これらの文字が使用された商品に関する我が国への輸出量、我が国における商品の販売開始時期、販売数、販売額等の販売実績及び同商品に係る宣伝広告等、需要者の認識を推し量るための具体的事実に関する証拠の提出をしていない。また、「DEVIL」又は「DEVIL’S」の文字においては、申立人の商品を見ても、「DEVIL’S COLLECTION」の「レッド」及び「ホワイト」のボトルにおいて、「DEVIL’S」の文字が独立して看取される態様で使用されているといえるにすぎないものであり、ほかに申立人が提出する証拠から申立人の商品を表示するものとして「DEVIL」又は「DEVIL’S」の文字が単独で使用されている事実を認めるに足る証拠は見いだせない。 そうすると、申立人が製造する商品に「DEVIL’S CARNAVAL」及び「DEVIL’S COLLECTION」の文字が使用され、これらの表示を使用された商品が我が国で取り扱われていることが確認できるとしても、「DEVIL’S CARNAVAL」、「DEVIL’S COLLECTION」、「DEVIL」及び「DEVIL’S」の文字が、申立人の業務に係る商品「ワイン」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、上記1のとおり、「DEVIL‘S RESERVE」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中「DEVIL‘S」の文字は、「悪魔」などを意味する「DEVIL」に、名詞の所有格を表す「’S」に酷似する「‘S」を付したものであるから、「悪魔の」ほどの意味合いを理解させるものであり、また、「RESERVE」の文字は、「蓄え、備え」などを意味する語(いずれも出典は「プロブレッシブ英和中辞典 第5版」株式会社小学館)として、いずれも広く知られている英語である。 そして、本件商標は、同じ書体及び大きさで表してなり、特徴的な構成態様ではなく、これより生じる「デビルズリザーブ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであって、かつ、構成全体から「悪魔の蓄え」ほどの意味合いを理解させるものであることから、全体として一体不可分のものとみるのが相当である。 したがって、本件商標からは、その構成文字に相応して「デビルズリザーブ」の称呼のみが生じ、「悪魔の蓄え」ほどの観念が生じる。 なお、申立人は、本件商標の構成中「RESERVE」の文字は、ワイナリーが特別感を出したいワインに使用する慣習があり、本件商標の指定商品の分野において、「RESERVE」の文字は商品の出所を識別する機能はない旨主張する。 しかしながら、上記のとおり、本件商標は、全体として一体不可分のものとみるのが相当であって、また、上記(1)のとおり、「DEVIL’S」の文字が、申立人の製造する商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえないことから、本件商標は、その構成中「RESERVE」の文字が、申立人主張のごとき趣旨で「ワイン」に使用される場合があるとしても、本件商標の外観、称呼及び観念を併せ考慮すれば、その構成中の「DEVIL‘S」の文字部分が、本件商標の指定商品の需要者において、強く支配的な印象を与え、要部として認識されることはないというべきである。 イ 引用商標 (ア)引用商標1は、上記2(1)のとおり、「DEVIL’S CARNAVAL」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「DEVIL’S」の文字は、上記アと同様に、「悪魔の」ほどの意味合いを理解させ、また、同構成中の「CARNAVAL」の文字は、「カルナバル」と読まれる「謝肉祭」を意味するスペイン語(出典:「小学館 西和中辞典」株式会社小学館)であるところ、これは、「謝肉祭」を意味する語として我が国において親しまれている、「カーニバル」(Carnival)(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)の語に通じるものであるから、引用商標1よりは、その構成文字全体として、「悪魔の謝肉祭」ほどの一体的な意味合いを理解させるものといえる。 そして、上記構成からなる引用商標1は、同じ書体及び大きさで表してなり、特徴的な構成態様ではなく、これより生じる「デビルズカルナバル」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであって、かつ、構成全体から「悪魔の謝肉祭」ほどの意味合いを理解させるものであることから、全体として一体不可分のものとみるのが相当である。 そうすると、引用商標1からは、その構成文字に相応して「デビルズカルナバル」の称呼のみが生じ、「悪魔の謝肉祭」ほどの観念が生じる。 (イ)引用商標2は、別掲のとおり、濃い灰色及び当該枠線よりやや薄い灰色の枠線を有する灰色四角形の内側に、「Casillero」「del」及び「Diablo」の文字をややデザイン化された同じ書体でまとまりよく3段に書し(以下、これらをまとめて「上段の文字部分」という。)、その下部に「DEVILE’S」の文字と「Collection」の文字を書したもの(以下、これらをまとめて「下段の文字部分」という。)を配した構成からなるところ、上段の文字部分と下段の文字部分は、重なって表示されているものではなく、一体で特定の観念を生じるものでもないから、引用商標2は、上段の文字部分と下段の文字部分が、分離して看取され得るものである。 そうすると、引用商標2は、上段の文字部分と下段の文字部分が、それぞれ独立して自他商品の識別機能を果たし得るものといえる。 そこで、下段の文字部分について検討すると、構成中の「DEVIL’S」の文字は、ゴシック調の書体で白抜きされ、「Collection」の文字は、赤色の筆記体で比較的大きく表されているところ、その書体、色彩、大きさが異なることから、これらを分離して観察することが取引上の不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。 そして、その構成中の「Collection」の文字は、「収集物、所蔵品物」(出典:「プロブレッシブ英和中辞典 第5版」株式会社小学館)などを意味する、我が国においても知られている平易な単語であって、引用商標2の指定商品の分野においては、特定のシリーズ商品に使用されることの少なくない語といえるから、当該文字は、引用商標2の指定商品との関係において、自他商品の識別力がないか、または、弱い部分というのが相当である。 そうすると、下段の文字部分は、両文字を常に一体のものとして把握されるとはいえず、その構成中の「DEVIL’S」の文字部分が、独立して商品の出所を識別する部分といえることから、引用商標2は、その構成中の「DEVIL’S」の文字部分を要部として抽出し、当該文字部分より生じる称呼及び観念をもって取引に資する場合があるというのが相当である。 したがって、引用商標2からは、上段の文字部分に相応した「カッシェロデルディアブロ」の称呼及び下段の文字部分に相応した「デビルズコレクション」の称呼が生じるほか、「DEVIL’S」の文字部分に相応した「デビルズ」の称呼が生じ、また、「悪魔の」ほどの観念が生じる。 ウ 本件商標と引用商標との類否について (ア)本件商標と引用商標1を比較するに、外観においては、その構成中「RESERVE」と「CARNAVAL」の文字が相違するから、構成全体が相違し、明確に区別できるものである。 そして、称呼においては、本件商標から生じる「デビルズリザーブ」と引用商標1から生じる「デビルズカルナバル」とは、後半部の「リザーブ」と「カルナバル」の音の差異を有し、その構成音及び音数が異なるから、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念においては、本件商標から生じる「悪魔の蓄え」と引用商標1から生じる「悪魔の謝肉祭」とは、明確に異なるものである。 そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (イ)本件商標と引用商標2を比較するに、外観においては、構成全体が相違し、また、本件商標と引用商標2の要部との比較でも、「RESERVE」の文字の有無の差異があり、構成が相違することから、明確に区別できるものである。 そして、称呼においては、本件商標から生じる「デビルズリザーブ」と引用商標2から生じる「デビルズ」の称呼とは、後半部の「リザーブ」の音の有無の差異を有し、その構成音及び音数が異なるから、明瞭に聴別できるものである。また、本件商標から生じる称呼と引用商標2から生じるその他の称呼とも、構成音等が明らかに異なるものであるから、明瞭に聴別できるものである。 さらに、観念においては、本件商標から生じる「悪魔の備え」と引用商標2から生じる「悪魔の」とは、明確に異なるものである。 そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 エ 小括 上記のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 上記(1)のとおり、申立人が使用して需要者の間に広く知られたものと主張する商標を構成する「DEVIL’S CARNAVAL」、「DEVIL’S COLLECTION」、「DEVIL」及び「DEVIL’S」の文字は、申立人の業務に係る商品「ワイン」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、需要者の間に広く認識されていたと認めることができない。 そして、上記(2)のとおり、「DEVIL’S CARNAVAL」の文字は、本件商標と非類似であり、「DEVIL’S COLLECTION」の文字は、引用商標2の下段の文字部分を横一連に表してなるものであるから、本件商標と非類似であり、「DEVIL’S」の文字は、引用商標2の要部と同じつづりであることから、本件商標と非類似であり、「DEVIL」の文字は、「DEVIL’S」の文字から「’S」を取り除いた構成からなるものであるから、本件商標とは非類似の商標といえ、申立人が使用して需要者の間に広く知られたものと主張する商標は、いずれも本件商標と非類似の商標であり、類似性の程度は低い。 そうすると、申立人が商標を使用する商品が「ワイン」であり、本件商標の指定商品に包含され、「ワイン」以外の指定商品も商品との関連性が極めて高く、需要者が共通するといえることを考慮しても、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が、申立人の使用する商標を連想、想起し、申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-900006

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