商標異議申立
2025-900002
フユーチャーラーニング、ヒューチャーラーニング
- 審判番号
- 2025-900002
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-006564
- 登録番号
- 6853937
- 請求日
- 2024年12月23日
- 審決日
- 2025年07月17日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社アルファコード
- 【異議申立人】フューチャーラーン リミテッド
- 【異議申立人代理人】山田 強
- 【異議申立人代理人】廣田 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大島 康浩
- 分類
- T1651.23 -Y (W093542) / T1651.251-Y (W093542) / T1651.252-Y (W093542) / T1651.253-Y (W093542) / T1651.222-Y (W093542)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項8号商標法4条1項10号商標法4条1項19号商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6853937号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6853937号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6853937号商標(以下「本件商標」という。)は、「Future Learning」の欧文字を標準文字で表してなり、令和6年1月12日に登録出願、第9類、第35類及び第42類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月21日に登録査定、同年10月15日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する商標は、「FutureLearn」(以下「引用商標」という。)の欧文字からなり、申立人の商品及び役務を示す商標として需要者の間に広く認識されていると主張するものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第19号及び同項第8号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標について
ア 引用商標は、英国の通信制公立大学「The Open University」によって2012年に設立され、各種オンライン講座や学習者同士の学びの場を提供する教育プラットフォームの名称として使われている(甲3)(以下、当該プラットフォームを、「FL」という。)。FLは、世界のいわゆるMOOC(Massive Open Online Courses、大規模公開オンライン講座)の中で主要プラットフォームの一つに数えられ、2023年11月には、ブリティッシュ・カウンシル(英国政府により設立された非営利公的国際文化交流機関)、大英図書館、UNESCO、世界有数の大学・研究センター・専門教育機関等を含む260のパートナーがコースを提供し、そのユーザー登録者数は1900万人以上に上っている(甲3)。
イ 我が国においては、慶応義塾大学、ブリティッシュ・カウンシル及びグロービス経営大学院大学が、FLを利用して、オンライン講座を提供している(甲2~甲5)。
特に、慶応義塾大学では、FLにおいて、同大学独自のオンライン講座として全11コースを用意し、同大学が所有する貴重書・芸術作品等のアーカイヴや、同大学の研究に基づいた日本文化の紹介を、英語及び日本語の2か国語で公開して世界に発信している。そして、2023年には、同コースの登録者数が10万人に達した(甲6)。
また、ブリティッシュ・カウンシルは、日本事務所開設から70年以上にわたって質の高い英語教育プログラムを提供していることで名高く(甲7)、英語学習者の間では広く知られており、グロービス経営大学院大学は日本最大のビジネススクールとして知られている(甲8)。
これらの事実により、FLは、本件商標の商標登録出願時前から、国内及び外国の学習者の間では優良なコンテンツを提供するプラットフォームとして広く知られるに至っており、国内のユーザー登録者数は63,338人に上っていた(甲9)。
ウ 以上のように、引用商標は、本件商標の商標登録出願時前から、申立人の商品及び役務を表示するものとして国内及び外国の需要者の間に広く知られており、また、現在では、その周知性の程度がさらに大きくなっている。
(2)本件商標の指定商品及び使用役務と引用商標の使用商品及び使用役務との類否について
ア 引用商標は、上記(1)アで述べたとおり、各種オンライン講座を提供する教育プラットフォームの名称として使われており、そこでは各パートナーが提供するコースの電子データが保存されている。
このように引用商標が使用されている商品及び役務を、本件商標の商標登録出願時に適用されていた「類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2024版対応〕」の基準に従って分類すると、以下のとおりになると考える。
第9類「ダウンロード可能な画像・動画・音楽・文字情報」(オンライン講座のうちダウンロードが可能なもの(甲10))
第41類「オンラインによる知識の教授,オンラインによる画像・動画・音楽・文字情報の提供」
第42類「電子データの保存用記憶領域の貸与」
イ 本件商標の指定商品及び指定役務のうち、下記のものは、引用商標の使用商品及び使用役務と類似する。
(ア)第9類「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,ダウンロード可能な動画」は、「オンライン購座のうちダウンロードが可能なもの」に類似する。
(イ)第42類「電子データの保存用記憶領域の貸与」は、引用商標の使用役務と共通する。
(ウ)第42類「仮想現実用ソフトウエアの提供」における「仮想現実用ソフトウェア」は、学習をサポートする仮想現実用ソフトウエアも含むところ、教育機関や学習コンテンツ提供業者等では「オンライン講座の提供」の中で「仮想現実用ソフトウエアの提供」を行うケースが増えており(甲11、甲12)、いずれも対象が学生や学習者等で需要者が共通することから、「仮想現実用ソフトウエアの提供」と「オンライン講座の提供」は類似する。
ウ 以上のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と、引用商標の使用商品及び使用役務とは、類似するものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
引用商標は、「未来」等の意味を持つ英単語「Future」と、「学習する」等の意味を持つ英単語「Learn」とを組み合わせて横一列に表した構成からなる。この構成から、全体として「フューチャーラーン」の称呼を生じ、また「未来学習」ほどの意味を生じ得るものの、商品及び役務との関係では特定の意味合いを表す語として一般に使用されているような特別な事情はなく、一種の造語として認識されるものである。
一方、本件商標は、引用商標の前半の語「Future」と、後半の語「Learn」をいわゆる「ing」形にして「Learning」としたものとを組み合わせて標準文字で横一列に表した構成からなる。この構成から、全体として「フューチャーラーニング」の称呼を生じ得るものである。
ここで、いわゆる「ing」形とは、英語の動詞を現在分詞又は動名詞にしたものであるが、本件商標において、「Learning」は、「Future」という名詞の後に置かれているため、動名詞的な用法であると考えられ、「学習すること」ほどの意味を生じ、もとの動詞の意味が大きく変化することはない。このように、「ing」形は、現在分詞及び動名詞のいずれであっても、もとの動詞の意味を大きく変化させるものではなく、それが商標の一部として使われたとしても、需要者及び取引者は、「ing」以外の部分から主として全体の印象及び観念を認識し、商品の選択を行い、「ing」に特段の注意を払わないため、その識別力は非常に弱いものであるといえる。
そして、本件商標の前半部分と引用商標の前半部分は全く同一の英単語であるから、本件商標全体としては、引用商標と同様に「未来学習」ほどの観念が生ずる得るものの、商品及び役務との関係では特定の意味合いを表す語として一般に使用されているような特別な事情はなく、一種の造語として認識されるものである。
さらに、上記(2)で述べたとおり、本件商標の指定商品及び指定役務も引用商標の使用商品及び使用役務も学習系コンテンツに関連するものであるところ、「Learn」又は「Learning」の語は、学習系コンテンツに関連して自他商品等識別力が弱いともいえ、本件商標及び引用商標の前半の語と後半の語を比較すると、相対的には前半の語「Future」の自他商品等識別力が強いと把握される。すなわち、両商標は、それぞれの要部と考えられる前半の語を共通に有するものである。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼及び外観に「ing」の有無から生じる相違があるとはいえ、それぞれの要部を共通にし、観念を同じくするため、類似の商標であるといえる。
(4)小括
以上より、本件商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして本件商標の商標登録出願時前から国内の需要者の間に広く知られていた引用商標に類似し、かつ、その指定商品及び指定役務も、申立人の業務に係る商品及び役務と同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の周知性、及び本件商標と引用商標との類似性について
本件商標の商標登録出願時前から引用商標が国内及び外国の需要者に広く知られていることは、上記1(1)で述べたとおりである。また、本件商標が、引用商標と類似し、その指定商品及び指定役務が申立人の業務に係る商品及び役務と同一又は類似であることは、上記1(2)及び(3)で述べたとおりである。
(2)「不正の目的」について
本件商標は、現実に、商標権者によって、仮想現実コンテンツの企画・開発、サーバシステム開発、アプリケーションソフトウェア開発、仮想現実用デバイスの調達及び配信プラットフォームサービス等について使用されており、その対象ジャンルとして教育関連事業を含む(甲13、甲14)。本件商標が使用されているこれらの商品及び役務は、オンラインで提供されるものであり、申立人が本件商標の商標登録出願時前からFLで提供してきた商品及び役務と類似するものである。
このような本件商標の使用は、商標登録出願時前から需要者に広く知られていた引用商標に化体した信用及び名声にただ乗りするものである。また、同時に、造語である引用商標の顧客吸引力を希釈化し、そのブランド価値を低下させるものである。
したがって、このような商標を使用することは、商標法の目的が、商標を保護することにより、商標の使用する者の業務上の信用の維持を図るものである以上、商標法の目的にそぐわない。言い換えれば、本件商標は、不正の目的をもって使用されるものといえる。
(3)小括
以上より、本件商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして商標登録出願時前から日本国内及び外国における需要者に広く知られていた引用商標と類似であり、不正の目的をもって使用をするものに該当するから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、以下の理由から、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(1)引用商標が申立人の著名な略称であること
申立人の名称の英語表記は「FutureLearn Limited」であるところ(甲15)、引用商標はその略称である。
また、引用商標が国内の需要者の間に広く知られていることは、上記1(1)で述べたとおりである。
(2)本件商標が引用商標を含むこと
本件商標は、前半の語「Future」と、後半の語「Learning」とを組み合わせた構成からなる。この構成は、前半の語「Future」と、後半の語「Learn」とを組み合わせた構成からなる引用商標を、一部に含むものである。
(3)引用商標が申立人の承諾を得ているものではないこと
申立人は、引用商標につき、承諾を与えていない。
(4)小括
以上より、本件商標は、申立人の著名な略称を含むものであり、商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第19号又は同項第8号のいずれかに該当し、登録を受けることができなかったものである。
よって、本件商標の登録は、上記理由に基づいて取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
ア 引用商標は、2012年に英国の「Open University」によって創設されたオンライン教育プラットフォーム(以下「引用プラットフォーム」という。)の名称として使用されている。2022年において、全世界から1,900万人以上の学習者が登録・受講している(甲3)。
イ 我が国では、慶應義塾大学において、引用プラットフォームにより配信するコースの登録者数が、2023年に累計10万人を突破した。同大学は、2015年から引用プラットフォームに参加し、2023年8月現在、11コースを英語・日本語の2カ国語で公開している(甲6)。
(2)上記(1)によれば、引用商標を名称とする引用プラットフォームは、2022年以降、全世界において1,900万人以上の登録者ないし受講者を有していること、また、我が国においては、本件商標の登録出願前から、慶應義塾大学により、引用プラットフォームを使用した、当該大学が所有する貴重書や芸術作品等のアーカイブの公開や、オンラインによる知識の教授等、各種コースの配信等が行われており、2023年には配信するコースの登録者数が累計10万人を超えたことがうかがえる。
しかしながら、引用プラットフォームが外国において、上記のとおりの登録者数(受講者数)を有し、我が国において大学における使用実績を有するとしても、同様のプラットフォームや学習系のコンテンツが多数存在する中において、引用プラットフォームの我が国及び外国における市場シェア、継続的な売上高、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を客観的に把握することができる具体的な証拠は提出されていない。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、引用プラットフォームに係る販売実績や広告実績を客観的に把握できないことから、引用プラットフォームが、どの程度の需要者に知られているかを評価することができない。
したがって、提出された証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用プラットフォームの名称に通じる引用商標が、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性
(1)引用商標の周知性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「Future Learning」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これは、辞書類に掲載されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないから、一種の造語として把握されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「フューチャーラーニング」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用商標
引用商標は、上記第2のとおり「FutureLearn」の欧文字よりなるところ、各構成文字は、同じ大きさ、同じ書体、同じ間隔で横一連に表してなるところ、これは、辞書類に掲載されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないから、一種の造語として把握されるものである。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「フューチャーラーン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観については、本件商標の語尾部分において「ing」の有無において相違するから、外観上判然と区別し得る。
次に、称呼については、本件商標から生じる「フューチャーラーニング」の称呼と引用商標から生じる「フューチャーラーン」の称呼は、語尾における「ニング」と「ン」の明確な差異を有するから、一連に称呼するときは互いに聴き誤るおそれはない。
さらに、観念については、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を有しないから、比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれはないから、これらを総合して判断すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(3)小括
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標である。
また、上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものではない。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同項同号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性
上記2のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標である。
また、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものであって、かつ、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号該当性
申立人は、申立人の英語表記が「FutureLearn Limited」であり、引用商標はその略称であること、また、本件商標は、「Future」の文字と「Learning」の文字を組み合わせた構成からなるため、国内及び外国の需要者の間に広く知られている引用商標をその一部に含むものであること、申立人が、本件商標権者に対し承諾を与えていないことから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張している。
しかしながら、申立人より提出された証拠資料からは、「FutureLearn」の文字が、他人の著名な略称に該当するといった証拠は見当たらない。
そうすると、本件商標は、その構成中に「Future」及び「Learn」の文字を有しているとしても、申立人の英語表記(名称)若しくはその著名な略称を含むものと認識し、把握されることはなく、本件商標は、他人の名称若しくは他人の著名な略称を含む商標であるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条1項第8号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第19号及び同項第8号に該当するとはいえず、他に同法の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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