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意匠無効審判

2025-880006

団扇

審判番号
2025-880006
法域
意匠
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
意願2009-017652
登録番号
1381138
請求日
2025年10月06日
審決日
2026年06月22日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】フレンド 株式会社
  • 【請求人代理人】野末 寿一
  • 【請求人代理人】坂野 史子
  • 【被請求人】廣川ホールディングス株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 綿貫 浩一
  • 審判官 前畑 さおり
  • 審判官 清野 貴雄
分類
D1113.113-Z (B3-7) / D1113.121-Z (B3-7)
条文(本文から自動抽出・参考)
意匠法第3条、意匠法第3条第1項第3号、意匠法第3条第2項、意匠法第52条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の意匠登録第1381138号「団扇」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 意匠登録第1381138号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件意匠登録1381138号の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、平成21年(2009年)7月31日に意匠登録出願(意願2009-017652)されたものであって、平成21年(2009年)12月11日付けで登録査定がなされ、平成22年(2010)1月29日に意匠権の設定の登録がされた後、同年3月1日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。 令和7年(2025年)10月 6日付け 審判請求書の提出 令和8年(2026年) 2月 4日付け 請求書副本の送達通知 同年 4月24日付け 書面審理通知書の送付 同年 6月 5日付け 審理終結通知書の送付 第2 請求人による請求の趣旨及び理由 請求人は、請求の趣旨を 「意匠登録第1381138号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と請求し、その理由を、審判請求書で以下のとおり主張した。 1 請求の理由 「6 請求の理由 (1)手続の経緯 出 願 平成21年 7月31日 登 録 平成22年 1月29日 (2)意匠登録無効の理由の要点 イ 本件登録意匠は、甲第1号証の1の意匠と同一乃至類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 ロ 本件登録意匠は、甲第1号証の1の意匠に、甲第2号証の1乃至甲第3号証の1の意匠を組み合わせることにより容易に創作をすることができるものであり、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 (3)本件意匠登録を無効とすべき理由 イ 意匠法第3条第1項第3号について (イ)本件登録意匠の説明(要旨等) a 基本的構成態様 A:全体が、扇面を収納するために上方が開口した有底中空であって、略半円盤状に形成された態様のものである。 b 具体的構成態様 B:略半円板状の表面部材と、その表面部材と同じ半円板状の裏面部材と、これらの部材の周縁間に設けられた帯状の周面部材によって、上方が開口した有底中空の半円盤状に形成されている。 C:表面部材と裏面部材が略平行に形成されている。 D:周面部材において、扇面を枢着する軸部とは反対側である一端側に扇面を緩嵌する凹状の切欠が形成されている。 E:周面部材の一端側が表面部材と裏面部材の上辺まで形成されている。 (ロ)甲第1号証の1の意匠の説明(要旨等) a 基本的構成態様 A’:全体が、扇面を収納するために上方が開口した有底中空であって、略半円盤状に形成された態様のものである。 b 具体的構成態様 B’:略半円板状の表面部材と、その表面部材と同じ半円板状の裏面部材と、これらの部材の周縁間に設けられた帯状の周面部材によって、上方が開口した有底中空の半円盤状に形成されている。 C’:表面部材と裏面部材が略平行に形成されている。 (ハ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の物品の対比 本件登録意匠の物品は、扇面をひねって折りたたみ、コンパクトに収容可能な団扇である。 甲第1号証の1の意匠の物品も扇面をひねって折りたたみ、コンパクトに収容可能な団扇である。 本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の物品は同一である。 (ニ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙 a 共通点 本登録意匠の形態において、上記A乃至Cは、甲第1号証の1の意匠の形態の上記A’乃至C’と同一であり、共通する。 b 差異点 本登録意匠の形態において、上記D及びEは、甲第1号証の1の意匠の形態に明示されていないので、一応差異点としてあげることはできる。 (ホ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の評価 a 共通点の評価 共通点A乃至Cは、扇面を収納する持ち手において大きな面積を占める表面部材、裏面部材及び周辺部材の骨格の形態に係るものである。 したがって、当然ながら、共通点A乃至Cの形態が団扇の持ち手の骨格の構成に係るものであること、及び団扇は看者において正面・裏面から見ることが多いこと等に鑑みれば、これらの共通点A乃至Cは、本件登録意匠及び甲第1号証の1の意匠において、看者の美感に対して大きな影響力を持つものといえる。そして、甲第1号証の1の意匠は当該A乃至Cと共通する形態A’乃至C’を有するものである から、本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠は、看者の美感において、多くの共通の印象をもつものと評価せざるを得ない。 b 差異点の評価 (a)上記差異点である「D:周面部材において、扇面を枢着する軸部とは反対側である一端側に扇面を緩嵌する凹状の切欠が形成されている。」及び「E:周面部材の一端側が表面部材と裏面部材の上辺まで形成されている。」については、扇面をひねって折りたたみ、コンパクトに収容可能な団扇において、扇面を開いた際に、周辺部材の一端においては切欠を形成し、扇面を当該切欠に差し込んで固定し、他方、対向する周辺部材の他端においては、切欠を形成する必要がないため、表面部材と裏面部材の上辺まで形成されているものである。 これらD及びEについては、甲第2号証の1の意匠、甲第3号証の1の意匠にも記載されており、かつ甲第4号証の1乃至甲第4号証の5(なお、甲第4号証の1乃至甲第4号証の5については本件登録意匠の出願日よりも後のものも含まれているが、これは当該物品の分野においてD及びEの形態が当然引き継がれていることを示すための証拠である。)にも記載されているところ、折りたたんだ団扇の端部の一部を持ち手に固定する必要があるという物品の性質上当然に備えているものといえる。 すなわち、扇面を円板状に広げて持ち手に固定するためには、甲第2号証の1・甲第3号証の1・甲第4号証の1乃至甲第4号証の5に同様の物品について全てD及びEに係る形態が記載されていることからしても、甲第1号証の1の意匠が当該D及びEと同様の形態を備えていなければ扇面を持ち手に固定できず、団扇を仰ぐことができない。したがって、甲第1号証の1には、たまたま周面部材を示す図面が示されていないが、広げた扇面を持ち手部分の周辺部材の一端に設けられた切欠に差し込んで固定する形態(D及びE)を、甲第1号証の1の意匠も備えていることは、甲第1号証の1に記載されている事項(A’乃至C’)から、本願の出願時のその意匠の属する分野の通常の知識に基づいて当然に当業者が導き出すことができる事項である。 (b)また、万が一、甲第1号証の1の意匠において、D及びEとは異なる形態や機構によって扇面が持ち手に固定されている可能性があったとしても、A乃至Cという持ち手部分の骨格に係る形態が共通していることからすれば、共通点が顕著であるといえる。 そして、D及びEは持ち手の周辺部材の上方の極小さな形態であり、看者が注目しない形態である。 したがって、仮に甲第1号証の1の意匠において、周辺部材にD及びEと異なる形態・機構が設けられており、これによって扇面が持ち手に固定されていて、結果的に甲第1号証の1の意匠がD及びEを備えていない場合があったとしても、A乃至C・A’乃至C’という美感において大きな影響を与える部分が共通点であることからすれば、本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠において、共通点(A乃至CとA’乃至C’)が顕著であるといえる。 そして、本件登録意匠と甲第1号証の1の差異点であるD及びEは、意匠としては殆ど注目されない部分の軽微な点のみであるから、当該差異点は差異点として評価するに価しない程度の微差といえる。 (c)以上によれば、本件登録意匠は甲第1号証の1の意匠に類似する意匠といえる。 (ヘ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論 上述のとおり、本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の物品は同一であり、かつ本件登録意匠は甲第1号証の1の意匠に類似する意匠であるから、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 ロ 意匠法第3条第2項について (イ)本件登録意匠の説明(要旨等) 上記イ(イ)に記載のとおりである。 (ロ)甲第1号証の1の意匠の説明(要旨等)(本件登録意匠と甲第1号証の意匠との対比) 上記イ(ロ)に記載のとおりである。 (ハ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の物品の対比 上記イ(ハ)に記載のとおりである。 (ニ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙 上記イ(ニ)に記載のとおりである。 (ホ)本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の評価(甲第1号証の1の意匠と甲第2号証の1乃至甲第3号証の1の意匠を組み合わせることがありふれた手法であるか否か) 上記本件登録意匠と甲第1号証の1の意匠の形態の差異点である「D:周面部材において、扇面を枢着する軸部とは反対側である一端 側に扇面を緩嵌する凹状の切欠が形成されている。」及び「E:周面部材の一端側が表面部材と裏面部材の上辺まで形成されている。」については、甲第2号証の1の意匠及び甲第3号証の1の各意匠が備えているものである(特に甲2の2・甲3の2参照)。 そして、甲第2号証の1と甲第3号証の1の意匠の物品は本件登録意匠・甲第1号証の意匠と同一の扇面をひねって折りたたみ、コンパクトに収容可能な団扇である。 このように同一の物品の意匠を組み合わせることはありふれた手法であるから、甲第1号証の1の意匠と甲第2号証の1の意匠乃至甲第3号証の1の意匠を組み合わせることはありふれた手法であるといえる。 (ヘ)本件登録意匠と甲第1号証の1、甲第2号証の1及び甲第3号証の1の意匠の物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論 以上によれば、本件登録意匠は甲第1号証の1、甲第2号証の1及び甲第3号証の1の意匠に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 (4)むすび 本件登録意匠は甲第1号証の1の意匠に記載された意匠乃至これに類似する意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 また、仮に意匠法第3条第1項第3号の規定に該当しないとしても、本件登録意匠は甲第1号証の1、甲第2号証の1及び甲第3号証の1の意匠に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。」 2 証拠方法 (1)甲第1号証の1 中国実用新案出願説明書(出願番号92209255.9) (2)甲第2号証の1 登録実用新案公報(実用新案登録第3097710号) (3)甲第3号証の1 意匠公報(意匠登録第587860号) (4)甲第4号証の1 特許公報(公告番号昭57-5521) (5)甲第4号証の2 公開実用新案公報(公開番号昭63-66921) (6)甲第4号証の3 中国意匠公報(公告番号CN308563584S) (7)甲第4号証の4 中国意匠公報(公告番号CN308589976S) (8)甲第4号証の5 中国実用新案公報(公告番号CN2742820Y) 第3 答弁の趣旨及び理由 審判長は、被請求人に対し、審判請求書の副本を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。 第4 書面審理及び審理終結 当審は、本件審判について、両当事者に対し、令和8年4月24日付けで書面審理に付する旨を通知し、同年6月5日付けで審理を終結する旨を通知した。 第5 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「団扇」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、本件登録意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本件意匠部分」という。)は、「実線で表した部分及び登録を受けようとする部分を示す各参考図において網点を施す部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。図中の一点鎖線は、登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界である。」としたものである。 (1)本件登録意匠の意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は、団扇の不使用時に扇面をひねって折り畳んで柄の部分に収納することができる「団扇」である。 (2)本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分は団扇の一部である柄の部分であり、使用時には扇面を支え、不使用時にはひねって折り畳んだ扇面を収納し、携帯することができる用途及び機能を有しているものであって、位置、大きさ及び範囲は、柄の軸受け部と中空内面部を除く部分であって、正面図において、高さ方向約1/5下方中央の位置で、縦は全高の約1/5、横は全幅の約1/3とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/16の大きさ及び範囲とするものである。 (3)本件意匠部分の形態 ア 基本的構成態様 全体は、中空の半円盤状であり、弧状部を下方とし、弦部を上方とし、弦部に扇面を収納するための開口部を形成したものである。 全体の長さの比率は正面の縦(高さ)、横及び奥行きの長さの比率は、約4.3:7:1である。 各部の態様として、 イ 柄 柄は、略半円板状の正面部材と、正面部材と同じ略半円板状の背面部材を平行に設け、これら部材の弧状部周縁間に垂直に帯状の周面部材を設け、弦部である上方には周面部材を設けないことにより開口部を形成している。 ウ 周面部材 周面部材は、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部を正面部材と背面部材の上辺の高さまで形成し、その上端部に使用時の扇面をはめ合わせるための凹状の切り欠きを形成している。 エ 開口部 開口部は、平面視略横長長方形とし、縦方向の長さは周面部材の幅とし、横方向の長さは柄の弦部と同程度(軸受け部を除いた略半円盤状の直径)としている。 2 無効理由の要点 請求人が主張する無効理由の要旨は、以下のとおりである。 (1)無効理由1 本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、1992年10月28日に中華人民共和国特許局が公告した、中国実用新案出願説明書(出願番号92209255.9)(甲第1号証の1)に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前、1992年10月28日に中華人民共和国特許局が公告した、中国実用新案出願説明書(出願番号92209255.9)(甲第1号証の1)に記載された意匠、日本国特許庁が、2004年2月5日に発行した登録実用新案公報(実用新案登録第3097710号)(甲第2号証の1)及び1982年11月15日に発行した意匠公報(意匠登録第587860号)(甲第3号証の1)に記載された意匠に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作をすることができたものであり、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法48条1項1号により、無効とすべきである。 3 無効理由の判断 (1)無効理由1 請求人は、前記に示すとおり、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された甲第1号証の1に記載された意匠と類似するものであり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるので、同法48条1項1号により、無効とすべきであると主張しているから、以下、本件登録意匠が、甲第1号証の1の意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。 ア 証拠の説明 甲第1号証の1に記載された意匠(以下「甲1意匠」という。別紙第2参照)は、審判請求書に添付された甲1意匠の訳文によれば、中華人民共和国特許局が1992年10月28日に公告した、中国実用新案出願説明書に記載の意匠(実用新案名称:「折り畳み扇子」、出願番号92209255.9)で、甲1意匠のうち本件意匠部分に相当する部分(以下「甲1部分」という。)を、本件意匠部分との対比の対象とする。 なお、甲1部分は、本件意匠部分の図の向きに合わせて認定する。 (ア)意匠に係る物品 甲1意匠の意匠に係る物品は、扇子の不使用時に扇面をひねって柄の部分に収納し、携帯することができる「折り畳み扇子」である。 (イ)甲1部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 甲1部分は扇子の一部である柄の部分であり、使用時には扇面を支え、不使用時にはひねって折り畳んだ扇面を収納し、携帯することができる用途及び機能を有しているものであって、位置、大きさ及び範囲は、柄の軸受け部と中空内面部を除く部分であって、正面図において、高さ方向約1/5下方中央の位置で、縦は全高の約1/5、横は全幅の約1/2とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/11の大きさ及び範囲とするものである。 (ウ)甲1部分の形態 a 基本的構成態様 全体は、中空の半円盤状であり、弧状部を下方とし、弦部を上方とし、弦部に扇面を収納するための開口部を形成したものである。 全体の長さの比率は正面の縦(高さ)、横及び奥行きの長さの比率は、約3:6:1である。 各部の態様として、 b 柄 柄は、略半円板状の正面部材と、正面部材と同じ略半円板状の背面部材を平行に設け、これら部材の弧状部周縁間に垂直に帯状の周面部材を設け、弦部である上方には周面部材を設けないことにより開口部を形成している。 c 周面部材 周面部材は、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部を正面部材と背面部材の上辺の高さまで形成している。 d 開口部 開口部は、平面視略横長長方形とし、軸受け部側端部はわずかに絞った形状としている。また、縦方向の長さは周面部材の幅とし、横方向の長さは柄の弦部と同程度(軸受け部を除いた略半円盤状の直径)としている。 イ 本件登録意匠と甲1意匠の対比 (ア)本件登録意匠と甲1意匠の意匠に係る物品 本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という)の意匠に係る物品は、本件登録意匠は「団扇」であり、甲1意匠は「折り畳み扇子」であるが、いずれも、扇面であおいで涼をとるためのものであり、不使用時に扇面をひねって折り畳んで柄の部分に収納することができるものであるから意匠に係る物品は一致する。 (イ)本件意匠部分と甲1部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分と甲1部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は、どちらも、柄の部分であり、使用時には扇面を支え、不使用時にはひねって折り畳んだ扇面を収納することができる用途及び機能を有しているものであるから、両部分の用途及び機能は、一致する。 位置、大きさ及び範囲は、柄の軸受け部と中空内面部を除く部分であって、位置について、どちらも、正面図において、高さ方向約1/5下方中央であるから一致するが、大きさ及び範囲については、本件意匠部分は、縦は全高の約1/5、横は全幅の約1/3とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/16の大きさ及び範囲であるのに対し、甲1部分は、縦は全高の約1/5、横は全幅の約1/2とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/11で、本件意匠部分の方が甲1部分より若干小ぶりである点において相違する。しかしながら、その差は僅かであり、さほど目立つものではないから、微弱なものといわざるを得ず、両部分の位置、大きさ及び範囲は、類似する。 (ウ)両部分の形態 両部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点及び相違点がある。 A 形態の共通点 (共通点1)全体は、中空の半円盤状であり、弧状部を下方とし、弦部を上方とし、弦部に扇面を収納するための開口部を形成した点、 (共通点2)柄について、略半円板状の正面部材と、正面部材と同じ略半円板状の背面部材を平行に設け、これら部材の弧状部周縁間に垂直に帯状の周面部材を設け、弦部である上方には周面部材を設けないことにより開口部を形成した点、 (共通点3)周面部材について、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部を正面部材と背面部材の上辺の高さまで形成した点、 (共通点4)開口部について、平面視略横長長方形とし、縦方向の長さは周面部材の幅とし、横方向の長さは柄の弦部と同程度(軸受け部を除いた略半円盤状の直径)とした点、 において共通する。 B 形態の相違点 (相違点1)全体の長さの比率について、本件意匠部分は、正面の縦(高さ)、横及び奥行きの長さの比率は、約4.3:7:1であるのに対し、甲1部分は、約3:6:1で、縦の長さにおいて本件意匠部分の方がやや長く、奥行きにおいて、甲1部分の方がやや幅広である点、 (相違点2)周面部材について、本件意匠部分は、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部に使用時の扇面をはめ合わせるための凹状の切り欠きを形成しているのに対し、甲1部分は、凹状の切り欠きがない点、 (相違点3)開口部について、甲1部分は、軸受け部側端部をわずかに絞った形状としているのに対し、本件意匠部分は、軸受け部側端部は平行であり、絞り込みはない点、 において相違する。 ウ 両意匠の類否判断 (ア)両意匠の意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、一致するから、同一である。 (イ)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能は一致するから、同一である。 両部分の位置、大きさ及び範囲は、類似する。 (ウ)両部分の形態の類否判断 A 共通点の評価 (共通点1)の全体を、中空の半円盤状で、半円盤状の下方を弧状とし、弦部を上方とし、弦部に扇面を収納するための開口部を形成し、柄兼収納部とした態様のものは、両部分以外には見られない特徴的な構成態様であって、両部分の基調をなすものであるから、格別、需要者の注意を強く引くものといえ、(共通点2)から(共通点4)の各部の態様も相まって共通点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。 B 相違点の評価 全体の長さの比率について、本件意匠部分の方が、縦の長さにおいてやや長く、また、甲1部分の方が、奥行きがやや幅広であるが、いずれもその差はわずかであり、また、奥行きについては、収納される扇面の大きさに応じて変更されることから、格別、需要者の注意を引くものではないといえ、(相違点1)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点2)周面部材について、すなわち、軸受け部の反対側の上端部の凹状の切り欠きの有無による違いであるが、それ自体、わずかであるためさほど目立つものではなく、また、使用時に扇面を支えやすくするために、扇面をはめ合わせるための凹状切り欠きであるため、需要者の関心は一定程度高いものといえるが、この種折り畳み可能な団扇の分野では、略半円弧状の柄の一端に扇面を支えるための凹状切り欠きを設けているもの(実用新案登録第3097710号の図4に表された意匠、意匠登録第587860号の意匠)は、本件登録意匠の出願前から公然知られており、この凹状切り欠きが、本件意匠部分のみが有する特徴とはいえないものであって、微弱であることから、(相違点2)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点3)開口部について、軸受け部側端部をわずかに絞った形状としているか否かについては、それ自体、(意匠登録を受けようとする部分ではないが)軸受け部に隠れてさほど目立つものではなく、その差もわずかであって、格別、需要者の注意を引くものではないから、(相違点3)が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 そうすると、共通点が、両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、(相違点1)から(相違点3)が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであって、相違点全体として、両部分の類否判断を決定付けているというまでには至らないから、両部分の形態は、類似する。 (エ)両意匠の類否判断 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能は同一で、位置、大きさ及び範囲は相違する点はあるものの、類似するといえ、形態についても、相違点が、両部分の類否判断を左右するほどの影響を与えるには至らないものであるのに対して、共通点は、需要者に共通の印象を強く与えるものであるから、意匠全体として見た場合、両意匠は類似する。 エ 小括 以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠と類似するから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当する。 したがって、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由1には、理由がある。 (2)無効理由2 請求人は、前記に示すとおり、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された甲第1号証の1に記載された意匠(甲1意匠)、甲第2号証の1及び甲第3号証の1に記載された意匠に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に創作をすることができたものであり、意匠法3条2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法48条1項1号により、無効とすべきであると主張しているから、以下、本件登録意匠が、甲1意匠、甲第2号証の1及び甲第3号証の1の意匠に基づいて、当業者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。 ア 証拠の説明 (ア)甲1意匠 甲1意匠の認定については、前記(1)アにおいて認定したとおりである。 (イ)甲第2号証の1に記載された意匠 甲第2号証の1に記載された意匠(以下「甲2意匠」という。別紙第3参照)は、日本国特許庁が、2004年2月5日に発行した登録実用新案公報(実用新案登録第3097710号)に記載の意匠(考案の名称:「団扇」)で、甲2意匠のうち本件意匠部分に相当する部分(以下「甲2部分」という。)を、本件意匠部分との対比の対象とする。 なお、甲2部分は、本件意匠部分の図の向きに合わせて認定する。 a 意匠に係る物品 甲2意匠の意匠に係る物品は、不使用時に羽根部(当審注:本件登録意匠の「扇面」と同義。以下「扇面」に置き換えて記載する。)を折り畳んで柄の部分に収納保持することができる「団扇」である。 b 甲2部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分は団扇の一部である柄の部分であり、使用時には扇面を支え、不使用時には折り畳んだ扇面を収納保持することができる用途及び機能を有しているものであって、位置、大きさ及び範囲は、正面図において、高さ方向約1/6下方中央の位置で、縦は全高の約1/6、横は全幅の約1/3とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/19の大きさ及び範囲とするものである。 c 甲2部分の形態 c-1 基本的構成態様 全体は、外側弧状部を下方とした上方開口型の半円弧状であり、上方開口部に折り畳んだ扇面を収納するための開口溝を形成したものである。 全体の長さの比率は正面の縦(高さ)、横の長さの比率は、約2:3である。 各部の態様として、 c-2 柄 柄は、略半円弧状の正面部材と、正面部材と同じ略半円弧状の背面部材を平行に設け、これら部材の下方の外側弧状部周縁間に垂直に帯状の周面部材を設け、上方には周面部材を設けないことにより開口溝を形成している。 c-3 周面部材 周面部材は、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部を正面部材と背面部材の上辺の高さまで形成し、その上端部に使用時の扇面をはめ合わせるための凹状の切り欠きを形成している。 (ウ)甲第3号証の1に記載された意匠 甲第3号証の1に記載された意匠(以下「甲3意匠」という。別紙第4参照)は、日本国特許庁が、1982年11月15日に発行した意匠公報(意匠登録第587860号)に記載の意匠(意匠に係る物品:「うちわ」)で、甲3意匠のうち本件意匠部分に相当する部分(以下「甲3部分」という。)を、本件意匠部分との対比の対象とする。 なお、甲3部分は、本件意匠部分の図の向きに合わせて認定するが、「使用状態の一例を示す参考図」も適宜参酌するものとする。 a 意匠に係る物品 甲3意匠の意匠に係る物品は、不使用時にうちわ本体(当審注:本件登録意匠の「扇面」と同義。以下「扇面」に置き換えて記載する。)を折り畳んで柄の部分に収納保持することができる「うちわ」である。 b 甲3部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 本件意匠部分はうちわの一部である柄の部分であり、使用時には扇面を支え、不使用時には折り畳んだ扇面を収納保持することができる用途及び機能を有しているものであって、位置、大きさ及び範囲は、正面図において、高さ方向約1/6下方中央の位置で、縦は全高の約1/6、横は全幅の約1/3とする略半円形状であり、全体の面積に対し約1/15の大きさ及び範囲とするものである。 c 甲3部分の形態 c-1 基本的構成態様 全体は、外側弧状部を下方とした上方開口型の半円弧状であり、上方開口部に折り畳んだ扇面部を収納するための開口溝を形成したものである。 全体の長さの比率は正面の縦(高さ)、横及び奥行きの長さの比率は、約4:6:1である。 各部の態様として、 c-2 柄 柄は、略半円弧状の正面部材と、正面部材と同じ略半円弧状の背面部材を平行に設け、これら部材の下方の外側弧状部周縁間に垂直に帯状の周面部材を設け、上方には周面部材を設けないことにより開口溝を形成している。 c-3 周面部材 周面部材は、扇面を連結する軸受け部とは反対側の上端部を正面部材と背面部材の上辺の高さまで形成し、その上端部に使用時の扇面をはめ合わせるための凹状の切り欠きを形成している。 c-4 開口溝部 開口溝部は、平面視略横長長方形とし、縦方向の長さは周面部材の幅とし、横方向の長さは柄の横幅(軸受け部を除いた略半円弧状の直径)としている。 イ 創作容易性の判断 本件意匠部分の形態は、甲1部分をほとんどそのまま表し、その上で、周面部材の軸受け部とは反対側の上端部に凹状切り欠きを形成したものであるが、その凹状切り欠きは、扇面をはめ込んで簡易に固定するための形状として、甲2部分の前記(2)ア(イ)c-3及び甲3部分の前記(2)ア(ウ)c-3にも同様な態様の凹状切り欠きが設けられていることから公然知られた態様といえ、その位置も柄の周面部材の軸受け部とは反対側の上端部であって一致するため、つまり、甲1部分の軸受け部とは反対側の周面部材上端部の形状を甲2部分及び甲3部分の同じ位置に見られる凹状切り欠きとしたものにすぎないから、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさや独創性があるとはいえない。また、甲1から甲3各意匠の当該部分の意匠全体に対する長さ比率や当該部分の構成比率等との相違については、支えたり収納する扇面の大きさにともなって適宜変更されるといえるため、ありふれた手法による変更であるか、あるいは、軽微な改変にすぎないものであるといえるため、意匠全体の美感にほとんど影響を与えないわずかな変更であるといえる。 以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠、甲2意匠及び甲3意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができた意匠といわざるを得ず、意匠法3条2項に規定する意匠に該当する。 したがって、請求人が主張する本件登録意匠の無効理由2には、理由がある。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2について理由があり、本件登録意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠及び同条2項に規定する意匠に該当し、その登録は、同法48条1項1号により無効とすべきものである。 審判に関する費用については、意匠法52条で準用する特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-880006

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