特許無効審判
2025-800039
少なくとも二つの隣接した金属メッシュを有するヒーター
- 審判番号
- 2025-800039
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-504771
- 登録番号
- 7171887
- 請求日
- 2025年05月09日
- 審決日
- 2026年06月17日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】工藤 嘉晃
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 山本 崇昭
- 分類
- P1123.121-Y (A24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7171887号発明「少なくとも二つの隣接した金属メッシュを有するヒーター」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第7171887号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本審判の請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
(1)特許第7171887号(以下「本件特許」という。)の出願から設定登録までの経緯
本件特許の出願から設定登録までの手続の経緯は、大略次のとおりである。
2019年(令和元年)7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年8月1日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願
令和4年 9月28日付け 特許査定
令和4年11月 7日 設定登録
(2)本無効審判事件の手続の経緯
本無効審判事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和7年 5月 9日 審判請求書の提出
令和7年 9月 8日 審判事件答弁書の提出
令和8年 1月28日付け 審理事項通知
令和8年 2月26日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和8年 3月27日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和8年 4月22日 口頭審理
第3 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
エアロゾル発生装置で吸入可能なエアロゾルを発生するためのヒーターであって、前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備え、前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている、ヒーター。」
第4 両当事者の主張
1 請求人の主張及び証拠方法
(1)無効理由の概要
審判請求書及び口頭審理陳述要領書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2017/167647号
2 被請求人の主張及び証拠方法
審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書によれば、被請求人の無効理由に対する主張は以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
第5 当審の判断
1 甲第1号証の記載事項等
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、摘記箇所で示す行数の数え方については、甲1の本文側方にある番号によるものとし、空行も行数に含んでいる。また、訳は、甲第1号証訳文として提出された特表2019-516349号公報の記載及び段落を参照している。下線は、当審において付した。
(1)「According to a first aspect of the present invention, a vaporizing assembly suitable for an aerosol-generating system is presented. The vaporizing assembly comprises a sheet heating element and a delivery device for delivering a liquid aerosol-forming substrate from a liquid storing portion to the sheet heating element, wherein the sheet heating element is spaced apart from the delivery device and is configured for heating the delivered liquid aerosol-forming substrate to a temperature sufficient to volatilize at least a part of the delivered liquid aerosol-forming substrate. The sheet heating element is fluid permeable and comprises a plurality of electrically conductive filaments.」(1ページ23行ないし30行)
(訳:「【0004】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生システムに適した気化組立品が提供されている。気化組立品は、シート発熱体と、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分からシート発熱体に送達するための送達装置とを備え、ここでシート発熱体は送達装置から間隙を介し、かつ送達された液体エアロゾル形成基体を、送達された液体エアロゾル形成基体の少なくとも一部を揮発するのに十分な温度に加熱するように構成されている。シート発熱体は流体透過性であり、複数の導電性フィラメントを備える。」)
(2)「The sheet heating element comprises a plurality of electrically conductive filaments. Preferably, the sheet heating element is a mesh heating element, comprising the plurality of electrically conductive filaments. The plurality of electrically conductive filaments configures a mesh of the mesh heating element. The mesh is heated by applying electric power to the plurality of electrically conductive filaments. The sheet heating element may comprise a plurality of filaments which can be made of a single type of fibers, such as resistive fibers, as well as a plurality of types of fibers, including capillary fibers and conductive fibers.」(3ページ37行ないし4ページ6行)
(訳:「【0019】
シート発熱体は複数の導電性フィラメントを備える。シート発熱体は複数の導電性フィラメントを備えるメッシュ発熱体であることが好ましい。複数の導電性フィラメントは、メッシュ発熱体のメッシュを構成する。メッシュは複数の導電性フィラメントに電力を加えることによって加熱される。シート発熱体は複数のフィラメントを備えることができ、これは抵抗性の繊維などの単一タイプの繊維で作製されるか、また毛細管作用のある繊維と導電性の繊維を含む複数タイプの繊維で作製されることができる。」)
(3)「The electrically conductive filaments may define interstices between the filaments and the interstices may have a width of between 10 micrometer and 100 micrometer. Preferably the filaments give rise to capillary action in the interstices, so that in use, liquid to be vaporized is drawn into the interstices, increasing the contact area between the heater assembly and the liquid.」(4ページ31行ないし35行)
(訳:「【0022】
導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、隙間の幅は10マイクロメートル~100マイクロメートルとしうる。フィラメントは、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせることが好ましい。」)
(4)「In embodiments where the sheet heating element is a mesh heating element, the mesh heating element may comprise a plurality of mesh layers stacked in an intended direction of airflow through the mesh heating element. Each mesh layer can be easily handled during manufacture and provides for a robust construction. Moreover, the stacked mesh layers improve vaporization of the liquid aerosol-forming substrate.」(5ページ19行ないし23行)
(訳:「【0027】
シート発熱体がメッシュ発熱体である実施形態において、メッシュ発熱体は、メッシュ発熱体を通して、意図される気流の方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を含みうる。それぞれのメッシュ層は、製造中に簡単に取り扱うことができ、丈夫な構造を提供する。その上、積み重ねられたメッシュ層は、液体エアロゾル形成基体の気化を改善する。」)
(5)「Preferably, the delivery device is configured to deliver a predetermined amount of the liquid aerosol-forming substrate to the sheet heating element upon performing one activation cycle. The predetermined amount of the liquid aerosol-forming substrate is delivered via the air gap from the delivery device to the sheet heating element. By depositing the liquid aerosol-forming substrate onto the sheet heating element directly, the liquid aerosol-forming substrate may remain substantially in its liquid state until it reaches the sheet heating element, although small droplets near the element may aerosolize before contacting it. The predetermined amount of the liquid aerosol-forming substrate may be a dose equivalent to produce a desired volume of aerosol in the sheet heating element.」(5ページ33行ないし6ページ4行)
(訳:「【0030】
送達装置は、一回の起動サイクルの実行に伴い、所定の量の液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に送達するように構成されることが好ましい。所定の量の液体エアロゾル形成基体は、空気ギャップを介して送達装置からシート発熱体に送達される。液体エアロゾル形成基体をシート発熱体に直接的に蒸着することによって、液体エアロゾル形成基体は、シート発熱体に達するまで実質的に液体の状態のままでありうるが、シート発熱体付近の小滴はそれに接触する前にエアロゾル化しうる。所定の量の液体エアロゾル形成基体は、シート発熱体中で望ましい量のエアロゾルを生成するための当量でありうる。」)
(6)「Fig. 1 is a schematic view of a vaporizing assembly in accordance with an embodiment of the present invention. The vaporizing assembly 1 comprises a sheet heating element 2 and a delivery device 3 incorporated into a common housing 10. The delivery device 3 is configured by a micropump 6 and a spray nozzle 5 connected by a tubing segment 12. The micropump 6 is adapted to receive via a tubing segment 11 liquid aerosol- forming substrate from a replaceable liquid storing portion 8. The delivery device 3 is provided spaced apart from the mesh heater element 2. In detail, delivery device 3 and the mesh heater element 2 are separated by an air gap of distance D between an outlet 5A of the spray nozzle 5 and the upstream surface 2A of the sheet heating element 2 facing the spray nozzle 5. The spray nozzle 5 is adapted to receive an amount of liquid aerosol-forming substrate pumped from the micropump 6 via tubing segment 12 and to spray this amount of liquid aerosol-forming substrate as a spraying jet 4S onto the upstream surface 2A of the sheet heating element 2. The spray nozzle 5 is configured to generate the spraying jet 4S such that the amount of liquid aerosol-forming substrate is completely received by the sheet heating element 2 and covers the entire upstream surface 2A of the sheet heating element 2. The housing 10 comprises an air inlet 4 allowing air 15 to pass from outside the housing 10 into the vaporizing assembly 1 towards the upstream surface 2A of the sheet heating element 2. The sheet heating element 2 is adapted to allow passing through of the air 15 having entered from air inlet 4 towards a downstream surface 2B of the sheet heating element 2 opposite from the spray nozzle 5. Having passed through the sheet heating element 2, the air 15 combines with the aerosol-forming substrate vaporized by the sheet heating element 2 to form an aerosol 16.」(9ページ32行ないし10ページ16行)
(訳:「【0053】
図1は、本発明の一実施形態による気化組立品の概略図である。気化組立品1は、共通のハウジング10に組み込まれたシート発熱体2および送達装置3を備える。送達装置3は、管セグメント12によって接続されたマイクロポンプ6およびスプレーノズル5によって構成されている。マイクロポンプ6は、管セグメント11を介して、交換可能な液体貯蔵部分8から液体エアロゾル形成基体を受けるように適合されている。送達装置3は、メッシュヒーター要素2から間隙を介して提供されている。詳細には、送達装置3およびメッシュヒーター要素2は、スプレーノズル5の出口5Aと、スプレーノズル5に面したシート発熱体2の上流表面2Aとの間の距離Dの空気ギャップによって分離されている。スプレーノズル5は、マイクロポンプ6から管セグメント12を介してポンピングされる、ある量の液体エアロゾル形成基体を受けて、この量の液体エアロゾル形成基体を吹き付けジェット4Sとしてシート発熱体2の上流表面2A上に吹き付けるように適合されている。スプレーノズル5は、その量の液体エアロゾル形成基体がシート発熱体2によって完全に受けられて、シート発熱体2の上流表面2A全体を覆うように、吹き付けジェット4Sを発生するように構成されている。ハウジング10は、空気15がハウジング10の外側から気化組立品1内へと、シート発熱体2の上流表面2Aに向かって通ることを可能にする空気吸込み口4を備える。シート発熱体2は、空気吸込み口4から入った空気15が、スプレーノズル5の反対側のシート発熱体2の下流表面2bに向かって通過することを可能にするように適合されている。空気15はシート発熱体2を通過することで、シート発熱体2によって気化されたエアロゾル形成基体と混合し、エアロゾル16を形成する。」)
(7)「Fig. 3 is a schematic view of an aerosol-generating system in accordance with an embodiment of the present invention. The aerosol-generating system 20 comprises the vaporizing assembly 1 illustrated in Fig. 1 adapted to generate a spraying yet as illustrated in Fig. 2. Moreover, the aerosol-generating system 20 comprises a liquid storing portion embodied by a replaceable container 8, an electronic control unit 9, a battery unit 13, wiring components 14 for electrically connecting the battery unit 13, the electronic control unit 9 and the electrically driven components of the vaporizing assembly 1 , i.e. the sheet heating element 2 and the micropump 6. Coupled to the housing 10 is a replaceable mouth piece 17 having an air flow outlet 18 provided for a user (not shown) in order to inhale the generated aerosol 16.」(10ページ24行ないし33行)
(訳:「【0055】
図3は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。エアロゾル発生システム20は、図2に図示された吹き付けジェットを発生させるように適合された、図1に図示された気化組立品1を備える。その上、エアロゾル発生システム20は、交換可能な容器8によって具体化された液体貯蔵部分と、電子制御ユニット9と、電池ユニット13、その電池ユニット13、電子制御ユニット9、気化組立品1(すなわちシート発熱体2およびマイクロポンプ6)の電動式コンポーネントを電気的に接続するための配線コンポーネント14とを備える。ハウジング10に結合されているものは、ユーザー(図示せず)が発生されたエアロゾル16を吸入するために提供された気流出口18を有する交換可能なマウスピース17である。」)
(8)「
[図:0001438225000001.jpg]
」(図1)
(9)「
[図:0001438225000002.jpg]
」(図3)
(10)上記記載事項(1)、(5)及び(7)から、シート発熱体2は、エアロゾル発生システム20で吸入可能なエアロゾルを発生するものといえる。
以上より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「エアロゾル発生システム20で吸入可能なエアロゾルを発生するためのシート発熱体2であって、
前記シート発熱体2が導電性フィラメントを備えるメッシュ発熱体であって、メッシュ発熱体は、メッシュ発熱体を通して、意図される気流の方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を含み、導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせる、シート発熱体2。」
2 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「エアロゾル発生システム20」は、本件発明の「エアロゾル発生装置」に相当し、以下同様に、「シート発熱体2」及び「メッシュ発熱体」は「ヒーター」に、「メッシュ層」は「メッシュ」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「前記シート発熱体2が導電性フィラメントを備えるメッシュ発熱体であって、メッシュ発熱体は、メッシュ発熱体を通して、意図される気流の方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を含み、導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されてヒーター組立品と液体の間の接触面積が増えるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせる」ことと、本件発明の「前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備え、前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」こととは、「前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備え」ること、という限りにおいて一致する。
よって、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「エアロゾル発生装置で吸入可能なエアロゾルを発生するためのヒーターであって、前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備える、ヒーター。」
〔相違点〕
「前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備える」ことに関して、本件発明は「前記ヒーターが少なくとも二つのメッシュを備え、前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」のに対して、甲1発明は「シート発熱体2が導電性フィラメントを備えるメッシュ発熱体であって、メッシュ発熱体は、メッシュ発熱体を通して、意図される気流の方向に積み重ねられた複数のメッシュ層を含み、導電性フィラメントはフィラメント間の隙間を画定でき、使用時に気化されることになる液体が隙間内に引き出されるように、隙間内に毛細管作用を引き起こさせる」点。
3 相違点についての判断
本件発明の「前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」との相違点に係る発明特定事項は、2以上のメッシュが、その両端で液体貯蔵部と接触するように配置され、相互から距離を置くように配設されている2以上のメッシュの間を、メッシュの両端が接触している液体貯蔵部内の液体状のエアロゾル形成基体が、毛細管作用によって吸い出されるとの技術的意味に解される。この点は、口頭審理において請求人も認めているように、当事者間で争いはない。
一方、甲1発明のシート発熱体2は、上記2(6)の訳文の段落【0053】の「送達装置3は、管セグメント12によって接続されたマイクロポンプ6およびスプレーノズル5によって構成されている。マイクロポンプ6は、管セグメント11を介して、交換可能な液体貯蔵部分8から液体エアロゾル形成基体を受けるように適合されている。送達装置3は、メッシュヒーター要素2から間隙を介して提供されている。詳細には、送達装置3およびメッシュヒーター要素2は、スプレーノズル5の出口5Aと、スプレーノズル5に面したシート発熱体2の上流表面2Aとの間の距離Dの空気ギャップによって分離されている。スプレーノズル5は、マイクロポンプ6から管セグメント12を介してポンピングされる、ある量の液体エアロゾル形成基体を受けて、この量の液体エアロゾル形成基体を吹き付けジェット4Sとしてシート発熱体2の上流表面2A上に吹き付けるように適合されている。」との記載及び上記(8)、(9)の図1、3の図示事項から、液体貯蔵部分8からマイクロポンプ6が液体エアロゾル形成基体を受け、スプレーノズル5によって当該液体エアロゾル形成基体が吹き付けジェット4Sとしてシート発熱体2の上流表面2A上に吹き付けられるものであることが理解でき、かかる理解に基づけば、その両端に液体貯蔵部を有しない甲1発明のシート発熱体2について、2以上のメッシュが、その両端で液体貯蔵部と接触するように配置され、相互から距離を置くように配設されている2以上のメッシュの間を、メッシュの両端が接触している液体貯蔵部内の液体状のエアロゾル形成基体が、毛細管作用によって吸い出される構成、すなわち「前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」構成とはなり得ない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
4 請求人の主張について
請求人は、口頭審理陳述要領書において以下のように主張する。
「・・・甲1発明は、スプレーノズルにより噴霧された液体エアロゾル形成基体が、導電性フィラメントの隙間に毛細管作用で引き出されるものであり、毛細管作用を使用するために、吸収体(ここでは導電性フィラメント)の隙間を画定する技術が記載されています。また、メッシュ発熱体はシート構造をしていることから、シート同士に間隙を設けて、当該間隙に液体を吸収させるということに特段の阻害要因はないといえます。従って、「ア」で述べたような構成c2に対する変更を行うという動機づけは存在するといえます。」(3ページ)
上記主張について検討する。
上記3で説示したように、本件発明の「前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」との発明特定事項は、2以上のメッシュが、その両端で液体貯蔵部と接触するように配置され、相互から距離を置くように配設されている2以上のメッシュの間を、メッシュの両端が接触している液体貯蔵部内の液体状のエアロゾル形成基体が、毛細管作用によって吸い出されるとの技術的意味に解されるところ、甲1発明は、液体貯蔵部分8の液体エアロゾル形成基体は、スプレーノズル5によってシート発熱体2の上流表面2A上に吹き付けられるものであり、シート発熱体2の両端に液体貯蔵部分8を有するものではないから、本件発明のように「前記メッシュが、前記メッシュ間のエアロゾル形成基体の吸い出しを可能にするよう構成されるように、相互から距離を置くように配設されている」との構成にはなり得ない。
よって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、無効理由には理由がなく、本件発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-800039