特許無効審判
2025-800030
加熱式タバコ用カートリッジ
- 審判番号
- 2025-800030
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2021-548684
- 登録番号
- 6982925
- 請求日
- 2025年04月15日
- 審決日
- 2026年03月30日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【請求人代理人】小林 浩
- 【請求人代理人】江幡 奈歩
- 【請求人代理人】岩間 智女
- 【請求人代理人】藤 拓也
- 【請求人代理人】石原 俊秀
- 【請求人代理人】末広 尚也
- 【請求人代理人】大川 亮
- 【被請求人】Future Technology株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 竹下 和志
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P1113.113-Z (A24F) / P1113.121-Z (A24F) / P1113.537-Z (A24F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法61条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6982925号発明「加熱式タバコ用カートリッジ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6982925号の請求項1~8に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨
特許第6982925号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~8に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和2年11月11日 出願(特願2021-548684号)
(優先日:令和元年12月12日、令和元年12月16日、令和2年3月31日)
令和3年 9月 1日付け 拒絶理由通知
同年 9月21日付け 応対記録
同年10月 6日 意見書及び手続補正書の提出
同年10月18日付け 特許査定
同年11月25日 設定登録
2 本件無効審判事件の手続の経緯
本件無効審判事件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和7年 4月15日 審判請求書の提出
同年 6月25日 手続補正書(方式)の提出
同年 7月 9日付け 答弁指令
同年11月25日付け 書面審理通知
同年12月 1日付け 審決の予告
なお、上記答弁指令において、被請求人に対して、審判請求書及び手続補正書を送付し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答はなく、また、上記審決の予告に対して、被請求人からは何らの応答はなかった。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、請求項の番号に従って、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
加熱体により加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体と、
フィルタと、
前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置され、前記加熱体が前記タバコ充填物集積体の中に挿入されるときに前記タバコ充填物集積体が前記フィルタ側へ移動することを防止する支持部材と、
前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材と、を備え、
前記支持部材は、外側の表面に複数の凹凸部を有する外周部を有し、
前記複数の凹凸部の各々は、前記支持部材の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成され、
前記複数の凹凸部は、9個以上の凸部を含む、
加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項2】
前記凸部は、前記支持部材の中心から径方向に向かって幅が狭くなる先端部を有する、
請求項1に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項3】
前記複数の凹凸部は、周方向に沿って設けられる、
請求項1または2に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項4】
前記複数の凹凸部は、周方向に沿って全体に設けられる、
請求項1または2に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項5】
前記複数の凹凸部は、150個以下の凸部を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項6】
前記支持部材の外径は、前記凹凸部の高さの10倍以上である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項7】
前記複数の凹凸部は、断面形状が略三角溝形状を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。
【請求項8】
前記複数の凹凸部の各々は、曲面を有する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加熱式タバコ用カートリッジ。」
第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
令和7年6月25日付け手続補正書により補正された審判請求書によれば、請求人が主張する無効理由1~5は、概略以下のとおりである。
(無効理由1) 本件特許の本件発明1~8は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由2) 本件特許の本件発明1~8は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由3) 本件特許の本件発明1~6は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由4) 本件特許の本件発明1~8は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由5) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
・甲第1号証:登録実用新案第3212228号公報
・甲第2号証:特表2015-519915号公報
・甲第3号証:特表2014-515933号公報
・甲第4号証:特表2011-521634号公報
・甲第5号証:特表2012-510261号公報
(以下「甲1」などという。)
第5 当審の判断
事案に鑑み、無効理由2について判断する。
1 甲1記載事項
甲1には、次の記載事項、図示事項がある。なお、下線は当審において付した。以下同様。
(1)「【0001】
本考案は、タバコ植物または非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジおよびその支持部材に関する。」
(2)「【0006】
本考案は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、エアロゾルが電子タバコカートリッジ内を移送される流路を確保しつつ、加熱要素の挿入時にエアロゾル形成基材を安定的に支持可能である支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本考案は、タバコ植物または非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジ用の支持部材である。支持部材は、前記電子タバコカートリッジの長手方向の中心軸に沿って位置する中心部と、当該中心部から外方へ延伸して前記電子タバコカートリッジの周縁に位置する包装部材と接する側部と、を有し、前記電子タバコカートリッジの一端部に位置するエアロゾル形成基材に隣接して、または当該エアロゾル形成基材との間に他の部材を挟んで配置され、当該エアロゾル形成基材を支持する。
【0008】
また、上記目的を達成するための本考案は、前記エアロゾル形成基材と、前記支持部材と、を有する、タバコ植物または非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジである。
【発明の効果】
【0009】
本考案によれば、支持部材の中心部と支持部材を覆う包装部材の内面との間に空間が形成されるので、エアロゾルが移送される流路を確保しつつ、エアロゾル形成基材への加熱要素の挿入時に中心部によってエアロゾル形成基材を安定的に支持できる。」
(3)「【0013】
<電子タバコカートリッジ100>
図1および図2(A)、(B)に示すように、電子タバコカートリッジ100は、エアロゾル形成基材110、支持部材120、冷却部材130(図2(B)に例示する場合)、マウスピース140および包装部材150を有する。電子タバコカートリッジ100の外形は、たとえば棒状または円筒形状を呈する。
【0014】
エアロゾル形成基材110は、加熱によりエアロゾルを生成する。本実施形態では、エアロゾルは、非タバコ植物由来の芳香成分を含みうる。図2(A)、(B)に示すように、エアロゾル形成基材110、支持部材120、冷却部材130(図2(B)に例示する場合)およびマウスピース140は、X方向にこの順序で配置され、包装部材150によって包装されている。包装部材150は、たとえば紙を含む。
【0015】
<エアロゾル形成基材110>
エアロゾル形成基材110は、固体化合物および液体化合物の少なくともいずれかを含みうる。エアロゾル形成基材110は、タバコを含むエアロゾル形成材料を含みうる。また、エアロゾル形成基材110は、グリセリンおよびプロピレングリコールを含むエアロゾルフォーマをさらに含みうる。エアロゾル形成基材110は、固体である場合、たとえば、棒状、短冊状、粉体状、顆粒状、ペレット状、小片状、シート状、繊維状、多孔質状またはブロック状の形態をとりうる。エアロゾル形成基材110は、上記のいずれかの形態で所定量または所定数がまとめられ、電子タバコカートリッジ100の一端部に充填される。図3に示すように、たとえば、エアロゾル形成基材110は、棒状の形態の充填物111が所定数束ねられた状態で電子タバコカートリッジ100の一端部に配置される。」
(4)「【0025】
図4に示すように、電子タバコカートリッジ100は、ユーザーの使用時に電子タバコ本体200に装着される。電子タバコ本体200には、電子タバコカートリッジ100を差し込むための差し込み部210が設けられている。
【0026】
さらに、差し込み部210内の底の中央部には、加熱要素211が設けられており、加熱要素211は、先端が尖っているピン状またはブレード状の部材を有し、エアロゾル形成基材110内に挿入され、エアロゾル形成基材110を加熱する。より具体的には、加熱要素211は、電子タバコカートリッジ100が電子タバコ本体200の差し込み部210に刺し込まれる際に、エアロゾル形成基材110の中央部に刺さる。
【0027】
加熱要素211は、電子タバコ本体200内に設けられているバッテリー(不図示)から供給される電力よって直接的または間接的に発熱する。この加熱要素211の熱によってエアロゾル形成基材110が温められることにより、芳香成分を含むエアロゾルが発生する。そして、発生したエアロゾルは、以下で説明する支持部材120および冷却部材130(図2(B)に例示する場合)を経てマウスピース140へ移送され、ユーザーがマウスピース140側から吸い込むことで、芳香成分がユーザーの口内へ届くことになる。
・・・
【0029】
<支持部材120>
支持部材120は、エアロゾル形成基材110を支持する。支持部材120は、エアロゾル形成基材110に隣接して配置され、中心部121および複数の側部122を有する。中心部121は、電子タバコカートリッジ100の長手方向(X方向)の中心軸に沿って位置する。複数の側部122は、中心部121から外方へ延伸して電子タバコカートリッジ100の周縁に位置する包装部材150と接する。側部122は、たとえば接着剤により包装部材150の内面に固定されている。
【0030】
また、エアロゾル形成基材110と支持部材120との間に他の部材が配置されてもよい。すなわち、支持部材120は、エアロゾル形成基材との間に他の部材を挟んで配置されうる。他の部材は、たとえば充填物111の微粒子を除去する薄いフィルターや、エアロゾル形成基材110を支持する別の支持部材などを含みうる。
【0031】
図4に示すように、支持部材120は、エアロゾル形成基材110内へ電子タバコ本体200の加熱要素211が挿入される際に電子タバコカートリッジ100が受ける力に抗し、エアロゾル形成基材110がX方向に移動することを防止または抑制する。
【0032】
より具体的には、支持部材120は、側部122が包装部材150の内面に固定されているため、エアロゾル形成基材110の周縁部分を確実に支持できる。また、支持部材120は、中心部121を有するため、エアロゾル形成基材110に挿入される加熱要素211によってエアロゾル形成基材110の中央部の充填物111がX方向に押し出されるのを防止できる。このように、本実施形態の支持部材120では、加熱要素211による力が働く中央部ではなく、周縁部にエアロゾルの流路が設けられている。」
(5)「【0040】
(実施例4)
また、図8A~図8Cに示すように、支持部材120の直径は、たとえばD0=7mmに設定され、支持部材120のX方向の長さは、たとえば、L4=8~26.5mm程度に設定されうる。また、第1側部122Aと第4側部122Dとの間隔と、第2側部122Bと第3側部122Cとの間隔と、第1側部122Aと第3側部122Cとの間隔と、第2側部122Bと第4側部122Dとの間隔とは、たとえばd5=1~2mm程度に設定されることが好ましい。」
(6)「【0045】
<マウスピース140>
マウスピース140は、冷却部材130または支持部材120に隣接し、電子タバコカートリッジ100の他端部に配置される。マウスピース140は、微粒子を取り除くフィルターとして、たとえばセルロースアセテートフィルタを含む。マウスピース140のフィルターを通過した芳香成分は、ユーザーによって吸引される。マウスピース140は、たとえば接着剤により包装部材150の内面に固定されている。」
(7)「【0051】
また、上述の実施例1~4では、支持部材の断面が、円板の周縁部を矩形状に2ヵ所または4ヵ所切り取った形状である場合について説明した。しかしながら、支持部材の断面は、このような形状に限定されず、円板の周縁部を矩形状に3ヵ所または5ヵ所以上切り取った形状であってもよいし、矩形状ではなく三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成されるいかなる態様で切り取った形状でもよい。」
(8)「【図2】
[図:0001436112000001.jpg]
」
(9)「【図4】
[図:0001436112000002.jpg]
」
(10)「【図8A】
[図:0001436112000003.jpg]
」
(11)「【図8B】
[図:0001436112000004.jpg]
」
(12)「【図8C】
[図:0001436112000005.jpg]
」
2 上記1から認められる事項
(1)記載事項(3)から、電子タバコカートリッジ100は、エアロゾル形成基材110と、マウスピース140と、支持部材120と、包装部材150と、を有するものであるところ、エアロゾル形成基材110は、記載事項(4)及び図示事項(9)から、タバコを含み、加熱要素211の熱によって温められることにより、エアロゾルを発生するものである。
(2)記載事項(6)から、マウスピース140は、微粒子を取り除くフィルターとして機能するものといえる。
(3)記載事項(4)及び図示事項(8)、(9)から、支持部材120は、エアロゾル形成基材110と微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140との間に配置され、エアロゾル形成基材110内へ加熱要素211が挿入される際に電子タバコカートリッジ100が受ける力に抗し、エアロゾル形成基材110が、微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140側(X方向)に移動することを防止または抑制するものといえる。
(4)記載事項(4)及び図示事項(8)、(9)から、包装部材150は、エアロゾル形成基材110、微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140及び支持部材120の外周に巻かれたものといえる。
(5)記載事項(5)、(7)及び図示事項(10)~(12)から、支持部材120は、その断面が円板の周縁部の5ヵ所以上を、矩形状、三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成される形状により切り取った形状としたものといえる。
また、図示事項(11)、(12)から、支持部材120における上記の切り取った形状は、支持部材120の図面の上方側にある面(以下「第1端面」という。)から支持部材120の図面の下方側にある面(以下「第2端面」という。)までの長さ方向全長に渡るように形成されたものといえる。
3 甲1発明
上記1及び2を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「加熱要素211の熱によって温められることにより、エアロゾルを発生するタバコを含むエアロゾル形成基材110と、
微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140と、
前記エアロゾル形成基材110と前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140との間に配置され、前記エアロゾル形成基材110内へ前記加熱要素211が挿入される際に電子タバコカートリッジ100が受ける力に抗し、前記エアロゾル形成基材110が、前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140側に移動することを防止または抑制する支持部材120と、
前記エアロゾル形成基材110、前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140及び前記支持部材120の外周に巻かれた包装部材150と、を備え、
前記支持部材120は、断面が円板の周縁部の5ヵ所以上を、矩形状、三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成される形状により切り取った形状とし、
支持部材120における前記切り取った形状は、支持部材120の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成されている、
電子タバコカートリッジ100。」
4 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「加熱要素211」及び「タバコを含むエアロゾル形成基材110」は、それぞれ、本件発明1の「加熱体」及び「タバコ充填物集積体」に相当する。
そして、甲1発明の「加熱要素211の熱によって温められることにより、エアロゾルを発生するタバコを含むエアロゾル形成基材110」は、「加熱要素211」により加熱されることにより、エアロゾルを発生する「タバコを含むエアロゾル形成基材110」を意味するから、本件発明1の「加熱体により加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体」に相当する。
また、甲1発明の「微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140」は、本件発明1の「フィルタ」に相当する。
また、甲1発明の「支持部材120」は、本件発明1の「支持部材」に相当する。
そして、甲1発明の「前記エアロゾル形成基材110内へ前記加熱要素211が挿入される際に電子タバコカートリッジ100が受ける力に抗し、前記エアロゾル形成基材110が、前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140側に移動することを防止または抑制する」ことは、本件発明1の「前記加熱体が前記タバコ充填物集積体の中に挿入されるときに前記タバコ充填物集積体が前記フィルタ側へ移動することを防止する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明の「前記エアロゾル形成基材110と前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140との間に配置され、前記エアロゾル形成基材110内へ前記加熱要素211が挿入される際に電子タバコカートリッジ100が受ける力に抗し、前記エアロゾル形成基材110が、前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140側に移動することを防止または抑制する支持部材120」は、本件発明1の「前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置され、前記加熱体が前記タバコ充填物集積体の中に挿入されるときに前記タバコ充填物集積体が前記フィルタ側へ移動することを防止する支持部材」に相当する。
また、甲1発明の「包装部材150」は、本件発明1の「包装部材」に相当する。
そうすると、甲1発明の「前記エアロゾル形成基材110、前記微粒子を取り除くフィルターとして機能するマウスピース140及び前記支持部材120の外周に巻かれた包装部材150」は、本件発明1の「前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材」に相当する。
また、甲1発明の「前記支持部材120は、断面が円板の周縁部の5ヵ所以上を、矩形状、三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成される形状により切り取った形状」であることは、「支持部材120」が、外側の表面を構成する「周縁部」の「5ヵ所以上」を切り取った円板状の断面を有することで、その外側の表面(周縁部)に複数の凹凸部を有する外周部を有するものとなることを意味するから、本件発明1の「前記支持部材は、外側の表面に複数の凹凸部を有する外周部を有」することに相当する。
また、甲1発明の「支持部材120における前記切り取った形状は、支持部材120の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成されている」ことは、「支持部材120」における外側の表面を構成する「周縁部」の「5ヵ所以上」を「切り取った形状」が、各々「支持部材120の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成されている」ことを意味するから、本件発明1の「前記複数の凹凸部の各々は、前記支持部材の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成され」ていることに相当する。
また、甲1発明の「電子タバコカートリッジ100」は、本件発明1の「加熱式タバコ用カートリッジ」に相当する。
してみると、本件発明1と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「加熱体により加熱されることにより、エアロゾルを発生するタバコ充填物集積体と、
フィルタと、
前記タバコ充填物集積体と前記フィルタとの間に配置され、前記加熱体が前記タバコ充填物集積体の中に挿入されるときに前記タバコ充填物集積体が前記フィルタ側へ移動することを防止する支持部材と、
前記タバコ充填物集積体、前記フィルタ、及び前記支持部材の外周に巻かれた包装部材と、を備え、
前記支持部材は、外側の表面に複数の凹凸部を有する外周部を有し、
前記複数の凹凸部の各々は、前記支持部材の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成される、
加熱式タバコ用カートリッジ。」
〔相違点〕
支持部材について、本件発明1は、「前記複数の凹凸部は、9個以上の凸部を含む」のに対して、甲1発明は、「断面が円板の周縁部の5ヵ所以上を、矩形状、三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成される形状により切り取った形状」である点。
(2)相違点に対する判断
甲1発明の支持部材120について、「断面が円板の周縁部の5ヵ所以上を、矩形状、三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成される形状により切り取った形状」は、例えば、円板の周縁部の隣り合う2ヵ所を三角形状で切り取った形状を含むものであり、その場合、隣り合う2ヵ所の切り取られた三角形状の間は凸部となることから、「凸部を含む」ものといえる。
また、支持部材120の周縁部を切り取る個数について、甲1には、その段落【0051】に「また、上述の実施例1~4では、支持部材の断面が、円板の周縁部を矩形状に2ヵ所または4ヵ所切り取った形状である場合について説明した。しかしながら、支持部材の断面は、このような形状に限定されず、円板の周縁部を矩形状に3ヵ所または5ヵ所以上切り取った形状であってもよいし、・・・。」と記載されていることに鑑みれば、2ヵ所以上の適宜の個数を切り取ることが記載されているといえる。
そうすると、支持部材120の周縁部を切り取る個数を9ヵ所以上とすることは、甲1の記載から当業者が容易になし得る事項に過ぎない。
したがって、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の「前記複数の凹凸部は、9個以上の凸部を含む」構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
また、本件発明1の効果について検討しても、本件発明1が、甲1発明に比して、当業者の予測を超えた格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明2について
上記4(2)で説示したとおり、甲1発明の支持部材は、例えば、円板の周縁部の隣り合う2ヵ所を三角形状で切り取った形状を含むものであり、その場合、隣り合う2ヵ所の切り取られた三角形状の間は凸部となるものであって、さらに、当該凸部は、径方向に向かって幅が狭くなる先端部であるといえることから、本件発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明3、4について
甲1発明の支持部材120は、その周縁部の5ヵ所以上が、切り取られるものである。
よって、本件発明3、4は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 本件発明5について
上記4(2)で説示したとおり、甲1には、甲1発明の支持部材120の周縁部を切り取る個数について、2ヵ所以上の適宜の個数を切り取ることが記載されているといえる。
そうすると、150ヵ所以下とすることは、甲1の記載から当業者が容易になし得る事項に過ぎないから、本件発明5は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 本件発明6について
甲1の段落【0032】に「支持部材120では、加熱要素211による力が働く中央部ではなく、周縁部にエアロゾルの流路が設けられている。」と記載されていることを踏まえると、甲1には、支持部材120において、加熱要素211による力が働く中央部には、エアロゾルの流路を形成せず、周縁部に、流路を形成することが記載されているといえる。このことから、甲1には、支持部材120において、流路となる切り取られる部分の深さを浅くすることの示唆があるといえる。
そうすると、甲1発明の支持部材120において、流路となる切り取られる部分の深さを浅くすることにより、支持部材120の外径が、当該流路となる切り取られる部分の深さの10倍以上とされることは、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明6は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 本件発明7、8について
甲1の段落【0051】には、「・・・支持部材の断面は、・・・、矩形状ではなく三角形状、多角形状、半円形状、半楕円形状等、曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせによって構成されるいかなる態様で切り取った形状でもよい。」と記載されている。
よって、本件発明7、8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
10 小括
以上から、本件発明1~8は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、無効理由2は理由がある。
11 その他の無効理由について
無効理由1、3~5についても検討する。
無効理由1について、本件発明1~8は、少なくとも、上記4(1)で示した相違点で甲1発明と相違するから、無効理由1は理由がない。
また、無効理由3、4については、甲2の段落【0043】、【0074】等の記載、甲3~甲5の記載、並びに審判請求書及び手続補正書における請求人の主張を参酌しても、甲2における、ひだ付き紙から形成した支持要素(段落【0043】)が、本件発明1で「前記支持部材は、外側の表面に複数の凹凸部を有する外周部を有し、前記複数の凹凸部の各々は、前記支持部材の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成され、前記複数の凹凸部は、9個以上の凸部を含む」と特定された「支持要素」に相当するとはいえないし、甲2の記載から当該本件発明1の「支持要素」とすることが、当業者に容易になし得たということもできないから、無効理由3、4も理由がない。
さらに、無効理由5については、本件発明1において、凹凸部の大きさが特定されていないとしても、「前記支持部材は、外側の表面に複数の凹凸部を有する外周部を有し、前記複数の凹凸部の各々は、前記支持部材の第1端面から第2端面までの長さ方向全長に渡るように形成され、前記複数の凹凸部は、9個以上の凸部を含む」ことが特定されていることに鑑みれば、支持部材において、気流の流動性とエアロゾル形成基材の支持機能の両立を図るとの課題(段落【0008】)を解決できないとまではいうことができないから、無効理由5も理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、無効理由2は理由があり、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とするべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-800030