商標取消審判
2025-300280
スイートシーズン、シーズン、エス
- 審判番号
- 2025-300280
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2020-161371
- 登録番号
- 6408072
- 請求日
- 2025年03月21日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スウィート シーズンズ,エルエルシー
- 【請求人代理人】弁理士法人東海特許事務所
- 【被請求人】株式会社明実
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 山田 和彦
- 分類
- T131 .1 -Y (W31)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6408072号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6408072号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年12月16日に登録出願、第31類「果実,野菜」を指定商品として、同3年6月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和7年4月7日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和4年(2022年)4月7日から同7年(2025年)4月6日までを、以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和7年7月28日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年9月2日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
なお、以下、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」のように簡略して表記する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人が答弁書において提出した乙第1号証ないし乙第9号証をもってしては、本件商標が日本国内において使用されたことを証明するには至っていない。
(1)乙1について
スマートフォンにおけるチャットのスクリーンショットと認識されるが、乙1からはスマートフォンのユーザー(受信者)を確認することができない。そして、スマートフォンの操作によって送信者名なども後から変更できることから、日付、チャットの送受信者を客観的に特定できず、客観的な証拠とはいえない。
また、このチャット履歴によれば、送信者が「とりあえず委託で結構ですが売ってみては如何ですか?」と質問しており、受信者が「とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」と送信者と同様の質問をしており、会話が成立していない。さらに、受信者が「とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」という自らの質問に対して即座に「了解です」と回答しており、意味が不明である。
(2)乙2について
本件商標を使用した果実の写真であるものの、撮影日について客観的証拠がない。
(3)乙3~乙6について
東京千住青果株式会社(以下「千住青果社」という。)と株式会社明実(以下「明実社」又は商標権者という。)との果実の販売契約を示す証拠であると認識されるものの、乙3~乙5には、本件商標の記載が一切ない。また、乙6の陳述書には、本件商標が表示されたスマートフォンのチャット履歴や写真が示されてはいるものの、上記(1)及び(2)に記載のとおり、チャットの日付や送受信者、写真の撮影日が客観的に証明されていないため、客観的な証拠とはいえない。
(4)乙7~乙9について
株式会社スカイブリッジ(以下「スカイブリッジ社」という。)と明実社との果実の販売契約を示す証拠であるものの、乙7及び乙8には、本件商標の記載が一切ない。また、乙9に示される写真は、撮影日について客観的証拠がないため、客観的な証拠とはいえない。
(5)テスト販売であること
上記(1)~(4)に記載のとおり、乙1~乙9は客観的証拠とはいえないものの、仮にこれらの証拠が信ぴょう性のある証拠であったとしても、乙1、乙4及び乙7から本件商標を付した商品の販売は、本格的な販売ではなく、テスト的な販売であると認定される。
まず、乙1のチャット履歴から、送受信者ともに、売れる分だけとりあえず売ってみるという内容のチャットを送っており、本件商標を付した商品の販売が、本格的な商品の販売ではなく、テスト販売であることが明確に認定される。
また、乙1から1箱(ケース)12パック入りと推定されるが、乙4によれば6ケース(12パック×6ケース=72パック)が販売され、乙7によれば4ケース(12パック×4ケース=48パック)が販売されており、本件商標を付した商標の販売は120パックであると認定される。そして、このような極めて少量な商品の販売は、仮に、実際に本件商標を付した商品が販売又は提供されたとしても、そのことをもって、本件商標の使用として評価するには足りないと認定されるべきものである(甲3)。
(6)まとめ
以上により、被請求人の答弁書は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明するものではない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書及び令和7年11月19日付け審尋及び弁駁書に対する同年12月22日付け審判事件回答書(以下「回答書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第80号証を提出した。
1 答弁書における主張
(1)本件商標の使用の事実
商標権者である明実社は、本件審判の請求の前に請求に係る指定商品に本件商標を付して日本国内で使用していた。
使用の態様は、青果物取扱い業者などへの販売である。
使用の証拠として、令和6年10月に本件商標を使用した青果物「ユカン」を、千住青果社及びスカイブリッジ社へ販売した際の販売伝票と相手方が作成した陳述書等の関連書類を提出する(乙1~乙9)。
2 令和7年11月19日付け審尋に対する回答
(1)乙1、乙2及び乙4について
乙1のチャット履歴の発信者が商標権者の代表者であることを裏付ける客観的な証拠として、連絡先の千住青果担当者の携帯電話機器に乙1と同じやりとりが記録されていることを示すチャット履歴(乙10)を提出する。
また、乙3の契約確認メモ及び乙4の請求書に記載の単価及び価格と、乙1のチャット履歴に記載の単価及び価格が一致しない正当な理由としては、青果物は価格変動が大きく、品質不良などによるロスも随時大きく発生する。卸売市場での販売は、商品が実際完売してから仕入れ先と値決めすることも多々あり、そのため最終的に精算決済する金額は変わることがある。千住青果社の販売原始票(乙11)によると、同社は、商標権者から仕入れたユカン果実を、2024年10月17日に単価1440円で4ケース販売し、当日に2ケースの売り残りとして在庫した(乙11の1)。その翌日に残荷分を単価1320円で1ケース、さらに単価1440円で最後の1ケースを売り終え(乙11の2)、最終的に約200円/ケースの利益を残し、商標権者と単価1200円で6ケース分の代金を精算決済した(乙3、乙4)。経緯は陳述書(乙16)のとおりである。
(2)乙2について
乙2の写真の撮影日を裏付ける客観的な証拠として、被請求人(商標権者)代表者の携帯電話機器の保存写真と写真アプリのスクリーンショット(乙12、乙13)を提出する。
(3)被請求人(商標権者)による本件商標の使用についての新たな証拠
使用の態様は、商標法第2条第3項第2号に該当する商標を付した商品の譲渡等の使用、すなわち本件商標を付した商品の各青果物取扱業者への販売である。
使用の証拠として、下記4件の取引チャット履歴、商品写真、配送明細、販売伝票等の関連書類を提出する。
ア 令和6年11月1日に本件商標を付した青果物キヌサヤとスナップえんどうを株式会社徳声商事に販売(乙18~乙33)
イ 令和7年3月26日に本件商標を付した青果物サトウキビ、マコモダケ、キヌサヤ等を有限会社八治商店に販売(乙34~乙52)
ウ 令和6年11月1日に本件商標を付した青果物ユカン果実を有限会社八治商店に販売(乙53~乙65)
エ 令和6年11月9日に本件商標を付した青果物キヌサヤ等を株式会社アンドブリッジに販売(乙66~乙80)
3 弁駁書に対する反論
(1)乙1について
チャットの日付はチャット履歴にそのまま自動で記録、記載されるため、送受信した日付の客観的な証拠となる。また、乙1のチャット履歴の送受信者の特定については、送信先側の携帯電話機器のチャット履歴(乙10)から確認できる。
そして、受信者が「とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」と質問したのは、被請求人(商標権者)の代表者の携帯電話機器に残る令和6年10月10日のチャット履歴(乙14)において価格記載してある同じ内容の文言をそのままコピーして引用し、乙1の2に記載のサトウキビ3ケースの価格を確認するためである。その直後の「了解です」という回答は、乙1の2の「今晩サトウキビ3ケース、ユカン6ケース配送かけます」という文書に対する回答である。詳細については、令和7年12月19日付けの陳述書(乙16)を確認されたい。
(2)乙2について
上記2(2)のとおりである。
(3)乙3~乙6について
乙3~乙6の取引書類に本件商標の記載がない理由は、会社ごとの商習慣が異なるからであり、令和7年12月19日付けの陳述書(乙16)において説明されたとおりである。
(4)乙7~乙9について
乙7、乙8の取引書類に本件商標の記載がない理由は、上記(3)の説明のとおりである。
また、乙9の陳述書内の写真の撮影日についての客観的証拠は、上記2(2)と同様である(乙12、乙13)。
(5)テスト販売であるという請求人の主張について
請求人の「テスト販売」及び「極めて少量」という主張は、あくまで請求人の一方的な認識と基準であり、請求人が引用した審決例(甲3)は、その被請求人が市場性調査の目的でテスト販売した、かつ、テスト販売した数量も極めて少量だと自身で認めて答弁したものであり、清涼飲料と本件における果物野菜の数量ボリューム基準は全く異なるものと思われることから、当該審決例の引用及び請求人の主張は当を得ないものと思料する。
また、上記2(3)のとおり、被請求人が新たに提出した販売実績及びその関連の証拠書類から確認できるように、被請求人(商標権者)は、本件商標を付した複数の商品を他社に数量多く販売している。
したがって、請求人のテスト販売という主張は認定されるべきではない。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙1について
乙1は、青果物の販売交渉のチャット履歴のスクリーンショットであり、最上部左側にチャットの連絡相手先の「千住青果」の文字とその担当者名が表示されており、「2024年10月16日(水)」の見出しの下に、「本日新入荷がある予定で、先日申し上げた「ユカン」という果実があり、今晩2ケース配送かけますのでとりあえず委託で結構ですが売ってみては如何ですか?2600円/箱です。300g/パックの12パック入りです。」の会話の文字と本件商標を付したユカン果実商品の写真(乙2)が表示され、「音声通話」の文字の下に、「今晩サトウキビ3ケース、ユカン6ケース配送かけます。」、「こちらの卸値は、2700円/箱ですが、とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」、「了解です」等の会話の文字が表示されている。
(2)乙2について
乙2は、複数のユカン果実が透明なプラスチック製の包装容器に納められた様子を上方から撮影した写真であり(別掲2参照。)、その容器の天面(ふた)部分には鶯色のシールが貼付してあり、中央にユカンの果実と葉とおぼしき図形、その上方に欧文字「S」を図案化したような図形部分と「Sweet」及び「Season」の文字を上下二段に横書きした文字部分からなる商標(以下「使用商標」という。別掲3参照。)が記載されている。
(3)乙3について
乙3は、2024年(令和6年)10月17日付けの「契約確認メモ」である。左上には「株式会社 明実 御中」の記載、右上には「東京千住青果株式会社 本社」及び千住青果担当者の名前及び押印がある。中段の明細の欄に記載の「ユカン」部分に、数量が「6」、単価が「1,200」(円)、金額が「7,200」(円)の記載がある。最下部には、「上記確認致します。」、「2024年10月17日」、「(株)明実」の記載及びその担当者の確認印がある。
(4)乙4について
乙4は、2024年(令和6年)11月1日を請求日とする「請求書」であり、左上には「東京千住青果株式会社 御中」、右上には「株式会社明実」及びその住所の記載がある。中段には同年10月11日から同月29日までを納品日とする品目が記載されており、納品日を10月17日とする「サトウキビ10kg/箱※」部分に、単価が「1,800」(円)、数量が「3」、価格が「5,400」(円)の記載、納品日を同日とする「ユカン(油甘)3.6kg※」部分に、単価が「1,200」(円)、数量が「6」、価格が「7,200」(円)の記載がある。
また、この請求書の請求金額の合計部分に「319,744円」の記載がある。
(5)乙5について
乙5は、千住青果社の果実第二部の課長の名刺であり、乙1及び乙3の千住青果担当者の氏名と同一の氏名の記載がある。
(6)乙10について
乙10は、青果物の販売交渉のチャット履歴のスクリーンショットであり、最上部左側にチャットの連絡相手先の「明実」の文字及びその担当者名が表示されており、その下には、乙1と同一の日付、会話の文字及び写真が同じ順番で表示されている。
(7)乙11について
乙11は、「販売原始票」であるところ、乙11の1の上部左側の出荷者の欄に「株式会社 明実」、その右側の買付の欄に仕入年月日として「06・10・17」、中央付近の売番2の欄にユカンの入荷数が6(ケース)であり、内4(ケース)を単価1440円で販売した旨が記載されている。
また、乙11の2の売番2の欄にユカンの入荷数が2(ケース)、1(ケース)は単価1320円、もう1(ケース)は単価1440円で販売した旨が記載されている。
(8)乙12について
乙12は、携帯電話機器に保存された写真を表示した画面のスクリーンショットであり、画面上部に「2024年10月16日」の文字が表示され、中央に乙2と同じ写真と認められるものが表示されている。また、中央の写真の下に、この携帯電話機器に保存された写真の一部が横一列に表示されているところ、これらが乙13の画面に表示された写真の一部と、同じ順番で並んでいる。
なお、携帯電話機器の持ち主を特定する情報は見当たらない。
(9)乙13について
乙13は、携帯電話機器の写真アプリのライブラリを表示した画面のスクリーンショットであり、画面の左上に「ライブラリ」及び「2024年10月13日~17日」の文字が表示され、写真の概要が確認できる写真表示の上から2段目の左側から2つ目に乙2と同じ写真と認められるものが表示されている。
なお、携帯電話機器の持ち主を特定する情報は見当たらない。
(10)乙14について
乙14は、携帯電話機器に保存された青果物(サトウキビ)の販売交渉のチャット履歴のスクリーンショットであり、最上部左側にチャットの連絡相手先の「千住青果」の文字とその担当者名が表示されており、「2024年10月10日(木)」の見出しの下に、「サトウキビはどうでしたか?」、「10ケース送りましょうか?10kg/箱です」、「こちらの卸値は、2700円/箱ですが、とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」、「すみません3ケースでお願い致します」等の会話の文字が表示されている。
(11)乙15について
乙15は、携帯電話機器に保存された青果物(サトウキビ)の販売交渉のチャット履歴のスクリーンショットであり、最上部左側にチャットの連絡相手先の「明実」の文字とその担当者名が表示されており、その下には、乙14と同一の日付及び会話の文字が同じ順番で表示されている。
(12)乙16について
乙16は、令和7年12月19日作成の「陳述書」であり、乙5の名刺の人物と同一の者の自署及び押印がある。
また、本陳述書には、「添付書類1は、株式会社明実から仕入れた、「SWEET SEASON」の商標が付されたユカン商品における弊社社内の販売原始票です。弊社社内の書類では、果実の一般名称を用いて記載することが慣習で、「SWEET SEASON」の商標が付されたユカン商品は「ユカン」と記載します。弊社は当該ユカン商品を、2024年10月17日に単価1440円で4ケース販売し、当日に2ケース売り残りとして在庫した。その翌日に残荷分を単価1320円で1ケース、さらに単価1440円で最後の1ケースを売り終えた。弊社は最終的に約200円/ケースの利益を残し、株式会社明実と単価1200円にて6ケース分の代金を精算決済した。すなわち上記が添付書類3の契約確認メモ及び添付書類4の株式会社明実から弊社宛の請求書に記載の単価及び価格が、添付書類2のチャット履歴に記載の単価及び価格と一致しない理由となります。青果物卸売業界において、青果物は価格変動が大きく、品質不良などによるロスも随時大きく発生する。卸売市場での販売は、商品が実際完売してから仕入れ先と値決めすることも多々あり、そのため最終的に精算決済する金額は変わることがあります。また、添付書類2にある「こちらの卸値は2700円/箱ですが、とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」という文書は、サトウキビの価格を再度確認するために、その数日前(10月10日)のチャット履歴(添付書類5)で言及したサトウキビの値段に関する文書をそのままコピーして引用したのみです。その直後の「了解した」という文書は、直前の「今晩サトウキビ3ケース、ユカン6ケース配送かけます」という文書に対する回答です。」の記載があり、乙11の「販売原始票」(添付書類1)、乙1のチャット履歴のスクリーンショット(添付書類2)、乙3の「契約確認メモ」(添付書類3)、乙4の「請求書」(添付書類4)、乙14のチャット履歴のスクリーンショット(添付書類5)を引用している。
(13)乙17について
乙17は、銀行口座の通帳であり、令和6年11月19日部分に、入金者名の「トウキヨウセンジユセイ」の文字と、入金額の「319,744」の記載がある。
2 認定事実
(1)被請求人は、商標権者が乙2の写真に写っているユカン果実(以下「使用商品」という。)に、使用商標(別掲3参照)を付して販売したとして、これをもって本件商標の使用と主張する。
(2)職権による調査によれば、被請求人が使用商品と主張するユカンは、「中国南西部の雲南省やチベットの少数民族が抗炎症薬として利用し、果実は薬用及び食用にされるトウダイグサ科の木本植物」(「長崎大学大学院医歯薬学総合研究か天然物化学研究室」のウェブサイト参照、https://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/natpro/research/CMP.html)であるから、果実の一種と認められる。
(3)乙1のチャット履歴には、チャットの発信者の情報は含まれていないが、最上部左側にチャットの連絡相手と考えられる「千住青果」及びその担当者名が表示されている。また、乙10のチャット履歴には、チャットの発信者の情報は含まれていないが、最上部左側にチャットの連絡相手と考えられる「明実」及びその担当者名が表示されている。そして、この二つのチャット履歴は、「2024年10月16日(水)」の見出しの下、同一のユカン果実6ケースの販売交渉を内容とする会話の文字及び乙2の写真が同じ順番で表示されていることから、「明実」と称する者と「千住青果」と称する者の間で交わされたユカン果実の販売交渉を内容とする真正なチャット履歴であることが推認できる。
(4)被請求人が提出した請求書(乙4)には、「株式会社明実」及びその住所の記載があり、その所在地は、職権により調査した現在の商標登録原簿に記載の商標権者の住所と同一であるから、上記(3)のチャットの「明実」及び明実社は、被請求人である商標権者と認めることができる。
(5)被請求人が提出した名刺(乙5)の課長名と、乙1のチャット履歴の連絡相手の担当者名が同一であるから、上記(3)のチャットの「千住青果」は、千住青果社と認めることができる。
(6)被請求人が令和6年10月16日に被請求人(商標権者)の代表者が撮影したと主張する乙2の写真は、乙12及び乙13のスクリーンショット画面に乙2の写真と同一の写真が見受けられ、画面に表示された「2024年10月16日」(乙12)及び「2024年10月13日~17日」(乙13)の各記載から、「2024年10月16日」に撮影、保存されたものと認めることができ、乙2の写真が上記(3)のチャットで用いられていることからすると、撮影者は被請求人(商標権者)の代表者であると推認できる。
(7)令和6年10月17日付けの契約確認メモ(乙3)及び令和6年10月17日の販売原始票(乙11)、請求日を令和6年11月1日とする請求書(乙4)は、書類の作成者や宛先に明実社と千住青果社を理解させる記載があるため、両社の取引書類と認めることができ、これらにはユカン果実の取引数量が「6」である旨記載されており、上記(3)のチャット履歴に示された取引数量と一致し、また、請求書(乙4)に記載の請求額「319,744円」は、商標権者の銀行口座の通帳(乙17)の令和6年11月19日の入金額「319,744」の記載と一致し、入金者名に千住青果社と理解できる「トウキヨウセンジユセイ」の記載があることからすると、上記(3)のチャットにおける販売交渉により決定した、ユカン果実6ケースの販売が要証期間である令和6年10月17日に行われたと認めることができる。
(8)上記(7)の各取引書類(乙3、乙4、乙11)には本件商標は付されていないが、上記(3)のとおり、チャット履歴(乙1、乙10)が真正なものと認められることから、商標権者が千住青果社に販売したユカン果実は、乙2の写真の態様であったと推認できる。
3 判断
(1)使用商標
本件商標は、別掲1のとおりの構成であるのに対し、使用商標は、別掲3のとおり、色彩の違いはあるものの、外観において同視される図形及び文字からなる構成であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用商品
使用商品(ユカン果実)は、本件審判の取消請求に係る指定商品「果実,野菜」中の「果実」の範ちゅうに属する商品である。
(3)使用者、使用時期
被請求人である商標権者は、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付したプラスチック製の包装容器に収められた使用商品と同一の商品を、要証期間である令和6年10月16日に千住青果社より発注を受け、翌17日に同社に納品し、もって販売した。
(4)小括
以上によれば、商標権者が、本件要証期間に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付した使用商品を千住青果社に販売したと認めることができる。上記の行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
(5)請求人の主張について
請求人は、乙1のチャットの送信者と受信者が同様の質問をしており、会話が成立しておらず、意味が不明である旨主張する。
しかしながら、上記1(1)及び(10)ないし(12)のとおり、令和6年10月16日の商標権者代表者と千住青果社担当者によるチャット内の「こちらの卸値は2700円/箱ですが、とりあえず売れる分だけで結構ですので、売ってみませんか?」との会話の文字(乙1)は、同月10日の商標権者代表者と千住青果社担当者によるチャット内で行われたサトウキビの交渉における会話の文字(乙14、乙15)と同一であり、被請求人が回答書で主張するように、サトウキビの卸値を同月16日のチャットで引用して確認したと考えるのが自然であるから、請求人の主張を採用することはできない。
また、請求人は、ユカン果実の販売は、テスト的な販売で、極めて少量な販売であるから、本件商標の使用として評価するには足りないと主張する。
しかしながら、請求人が引用した審決例(甲3)は、その審決例の被請求人がテスト販売と自認したものである上、上記ユカンの販売がテスト販売であることを客観的に証明する証拠の提出もないから、この主張も採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の請求に係る指定商品について使用していたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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