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特許拒絶査定不服審判

2025-005221

人工呼吸器用フィルタ

審判番号
2025-005221
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-145114
請求日
2025年04月04日
審決日
2025年12月16日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日本無機株式会社
  • 【請求人代理人】清水 善廣
  • 【請求人代理人】西村 公芳
  • 【請求人代理人】殿元 基城
  • 【請求人代理人】野田 薫央
  • 【請求人】国立大学法人神戸大学
  • 【請求人代理人】清水 善廣
  • 【請求人代理人】西村 公芳
  • 【請求人代理人】殿元 基城
  • 【請求人代理人】野田 薫央
審判長/審判官
  • 審判長 岩間 直純
  • 審判官 米倉 明日香
  • 審判官 梅本 章子
分類
P18 .121-Z (A61M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-145114「人工呼吸器用フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月17日出願公開、特開2023- 38419〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年9月7日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 6年11月20日付け:拒絶理由通知書 令和 7年 1月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和 7年 1月29日付け:拒絶査定 令和 7年 4月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 6月 3日 :上申書の提出 第2 令和7年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和7年4月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と、前記患者から排出された空気を外部に排出する排気回路と、を有する人工呼吸器回路の前記排気回路に配置され、前記一酸化窒素を除去するフィルタであって、 吸気口と、排気口と、を有する筐体と、 前記筐体内の前記吸気口側に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材と、 前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材とを有し、該第二ろ材は添着剤である炭酸カリウムが二酸化窒素を吸着する活性炭からなる基材に添着された吸着剤である、人工呼吸器用フィルタ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和7年1月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と、前記患者から排出された空気を外部に排出する排気回路と、を有する人工呼吸器回路の前記排気回路に配置され、前記一酸化窒素を除去するフィルタであって、 吸気口と、排気口と、を有する筐体と、 前記筐体内の前記吸気口側に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材と、 前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材とを有し、該第二ろ材は添着剤である炭酸カリウムが二酸化窒素を吸着する基材に添着された吸着剤である、人工呼吸器用フィルタ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第二ろ材」の「基材」について、「活性炭からなる基材」とするものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 1 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2010-46107号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、人工呼吸器等に使用した一酸化窒素を含有する呼気ガスを安全に排出するための呼気ガスの処理装置に関するものである。」 「【0023】 図1は、本発明の呼気ガスの処理装置1の一実施形態を示す図である。この例では、上記呼気ガスの処理装置1は、人工呼吸器2の呼吸弁3から排出され、除去対象成分として一酸化窒素(NO)を含む呼気ガスを処理する装置である。 【0024】 この呼気ガスの処理装置1は、除去対象成分としてNOを含む呼気ガスを冷却手段10により冷却して呼気ガス中に含まれる水分を結露させて除去する水分除去手段4と、上記水分除去手段4で水分が除去された呼気ガスを吸着剤に接触させて除去対象成分としてのNOを除去するための吸着筒5とを備えて構成されている。」 「【0031】 上記吸着筒5は、この例では、導入側すなわち上流側に化学吸着剤が充填された化学吸着層20が形成され、排出側すなわち下流側に物理吸着剤が充填された物理吸着層21が形成されている。上記化学吸着剤による化学吸着で主として一酸化窒素(NO)を吸着除去し、上記物理吸着剤による物理吸着で主として二酸化窒素(NO2)を吸着除去する。このように、除去対象成分として一酸化窒素を含有する呼気ガスを、水分除去手段4によって水分除去したのち、化学吸着剤に接触させて一酸化窒素を除去する。 【0032】 上記化学吸着剤としては、例えば、アルミナ,過マンガン酸カリウム,水等を主成分とする化学吸着剤である「Purafil(登録商標) Select Chemisorbant」(Purafil.inc製)を好適に用いることができる。 【0033】 上記物理吸着剤としては、例えば、活性炭等を用いることができる。 【0034】 上述した化学吸着剤では、下記の式(1)(2)に示すような吸着反応で窒素酸化物の吸着を行なう。これらの式からわかるように、この吸着反応にはH2Oが必要で、ある程度の水分が存在した状態で効果的な窒素酸化物の除去作用を発揮するのである。 3NO+2KMnO4+H2O→3NO2↑+2MnO2↓+2KOH↓・・・(1) 3NO2+KMnO4+2KOH→3KNO3↓+MnO2↓+H2O・・・(2)」 「図1 [図:0001432940000001.jpg] 」 (イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「人工呼吸器に使用した一酸化窒素を含有する呼気ガスを安全に排出するための呼気ガスの処理装置1であって、 呼気ガスを吸着剤に接触させて除去対象成分としての一酸化窒素を除去するための吸着筒5とを備え、 吸着筒5は、導入側すなわち上流側に化学吸着剤が充填された化学吸着層20が形成され、排出側すなわち下流側に物理吸着剤が充填された物理吸着層21が形成されており、 上記化学吸着剤による化学吸着で主として一酸化窒素を吸着除去し、上記物理吸着剤による物理吸着で主として二酸化窒素を吸着除去し、 物理吸着剤としては、活性炭を用いることができ、 化学吸着剤では、下記の式(1)(2)に示すような吸着反応で窒素酸化物の吸着を行う 3NO+2KMnO4+H2O→3NO2↑+2MnO2↓+2KOH↓・・・(1) 3NO2+KMnO4+2KOH→3KNO3↓+MnO2↓+H2O・・・(2) 呼気ガスの処理装置1。」 2 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献であり、周知技術を示す文献である、特開平9-262274号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0036】 本発明では、活性炭素に各種の酸性物質、塩基性物質、酸化材を添着し、または酸化剤と酸性物質、或いは酸化剤と塩基性物質を添着してなる添着活性炭素材に、所定量の水分を補給する加湿手段を設けることを必須とするが、ここに言う「酸性物質」、「塩基性物質」、「酸化剤」の各々は、必ずしも単独のものを意味しない。例えば、無機酸と有機酸とを組み合わせて「酸性物質」として用いることができる。 【0037】 添着薬剤としては、一般には、吸着除去したい成分(除去目的物質)の物理、化学的特性に合わせて1又は2以上の薬剤が選択され、例えば、除去目的物質がアンモニア、トリメチルアミン、アニリンなどの塩基性ガスである場合には、添着薬剤としては硫酸、リン酸等の無機酸や、脂肪酸類、スルファニル酸等の有機酸、更には柿果汁液等の有機天然物からなる酸などが使用される。また、除去目的物質が二酸化イオウ、二酸化窒素、酢酸等の酸性ガスである場合には、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基や、トルイジン、アニリン等のアミノ基を有する有機化合物などが使用される。更に、除去目的物質が硫化水素、メルカプタン類、二酸化イオウ等のイオウ化合物を含む極性物質である場合には、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、臭素などの酸化剤が使用される。」 (イ)引用文献2の認定 引用文献2には、「二酸化窒素を除去するために、活性炭素に塩基性物質を添着してなる添着活性炭素材の添着薬剤として、炭酸カリウムが使用される」ことが記載されていると認める。 3 引用文献3 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献であり、周知技術を示す文献である、特開2001-219022号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0034】以上説明したとうり、実施の形態1によるNOx除去フィルターはセルロース繊維と活性炭を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に金属錯体あるいはアルカリ金属塩を添着処理することにより、圧力損失を極めて低く抑えると共にNO2ガスの高い除去効率を発現することができた。また、このNOx除去フィルターの風路4は多数の小さい穴からなるが、ハニカムのセル数を300以上とし、フィルターの厚さ、すなわち風路の長さを20mm以下として、通風量に対し風速0.6m/秒で、圧損が2mmAq以下とし、 NO2ガスに対する除去効率が50%以上で寿命半年以上を実現できた。」 「【0037】また、アルカリ金属塩として例えば、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを用いられ、添着した炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属塩はアルカリ性であり、酸性のNO2ガスと中和反応を起こし、人体に有害なNO2ガスを除去することができる。」 (イ)引用文献3の認定 引用文献3には、「二酸化窒素を除去するために、活性炭ペーパーを基材としたものに炭酸カリウムを添着処理したものを用いる」ことが記載されていると認める。 4 引用文献4 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2002-113075号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【0018】本発明に係わる基材としてエレクトレットフィルター、HEPAフィルター、芳香剤を担持したフィルター、吸着剤や触媒が熱可塑性樹脂に練り込み担持されながらその一部が表面に露出しているフィルター、酵素系などの脱臭剤を担持したフィルター、あるいは消臭剤や抗菌剤などを担持したフィルターを用いることが出来る。」 「【0022】本発明に係わる窒素酸化物脱臭剤とは吸着及び触媒作用によって窒素酸化物を除去する目的で用いられる薬剤の総称であり、具体的には、活性炭、添着活性炭、ゼオライト、活性アルミナ、活性白土、イオン交換樹脂、鉄アスコルビン酸、鉄フタロシアニン誘導体などの吸着脱臭剤、マンガン系酸化物やペロブスカイト型触媒などの低温酸化触媒、酸化チタンや酸化亜鉛などの光触媒、植物抽出成分に含まれる化合物であるカテキン、タンニン、フラボノイド等を用いた消臭剤などを挙げることができる。これらの脱臭剤は必要に応じて複数のものを併用しても良く、また、これらの脱臭剤を複合化したハイブリット脱臭剤としても良い。 【0023】本発明に係わる窒素酸化物の再生処理剤としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶性のアルカリ薬剤が好ましい。しかし、吸着剤と混合された状態で封入されたフィルターとして使用される場合に、何らかの再生処理を行うことによって窒素酸化物の除去能力が回復するものであれば良く、特にこれらに限定されるものではない。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「呼気ガスの処理装置1」は、「人工呼吸器に使用した一酸化窒素を含有する呼気ガスを安全に排出する」ための装置であるから、「患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路」と、「前記患者から排出された空気を外部に排出する排気回路」を有する「人工呼吸器回路」であることは明らかである。 (イ)引用発明の「吸着筒5」は、「呼気ガス」に含まれる「一酸化窒素」を除去するためのものであるから、上記(ア)における「排気回路」に配置されるものであることは明らかであり、本件補正発明の「前記一酸化窒素を除去するフィルタ」に相当する。 (ウ)引用発明の「吸着筒5」の「導入側」及び「排出側」は、それぞれ、本件補正発明の「吸気口」及び「排気口」に相当し、引用発明の「吸着筒5」は、本件補正発明の「筐体」にも相当する。 (エ)引用発明の「化学吸着層20」は、(1)の化学式によれば、一酸化窒素から二酸化窒素を生成しているものであるとわかるから、引用発明の「導入側すなわち上流側に化学吸着剤が充填された化学吸着層20」は、本件補正発明の「前記筐体内の前記吸気口に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材」に相当する。 (オ)引用発明の「物理吸着剤としは、活性炭を用いることができ」と本件補正発明の「該第二ろ材は添着剤である炭酸カリウムが二酸化窒素を吸着する活性炭からなる基材に添着された吸着剤」とでは、「活性炭」を用いる点で共通する。 (カ)上記(ア)から(オ)を踏まえれば、引用発明の「排出側すなわち下流側に物理吸着剤が充填された物理吸着層21」及び「物理吸着剤としては、活性炭を用いることができ」と本件補正発明の「前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材」及び「該第二ろ材は添着剤である炭酸カリウムが二酸化窒素を吸着する活性炭からなる基材に添着された吸着剤」は、「第二ろ材」は、「筐体内の第一ろ材よりも排気口側に配置され、二酸化窒素を除去し」、「活性炭」である点で一致する。 (キ)上記(ア)から(カ)を踏まえれば、引用発明の「吸着筒5」は、本件補正発明の「人工呼吸器用フィルタ」であるといえる。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「患者に一酸化窒素を吸入させる吸気回路と、前記患者から排出された空気を外部に排出する排気回路と、を有する人口呼吸回路の前記排気回路に配置され、前記一酸化窒素を除去するフィルタであって、 吸気口と、排気口と、を有する筐体と、 前記筐体内の前記吸気口側に配置され、前記一酸化窒素を酸化し二酸化窒素を生成する第一ろ材と、 前記筐体内の前記第一ろ材よりも前記排気口側に配置され、前記二酸化窒素を除去する第二ろ材とを有し、該第二ろ材は活性炭である、人工呼吸器用フィルタ。」 【相違点】 本件補正発明は、第二ろ材が、添着剤である炭酸カリウムが二酸化窒素を吸着する活性炭からなる基材に添着された吸着剤であるのに対して、引用発明は、第二ろ材が、活性炭であるものの、炭酸カリウムが添着された吸着剤であることが特定されない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点について フィルターの性能を長く持続させたいという課題は、一般的なものであり、活性炭に炭酸カリウムを添着させ、二酸化窒素を吸着除去するようにすることは、引用文献2及び引用文献3に記載されているように周知技術であるから、引用発明に上記周知技術を適用して、引用発明の物理吸着層の、活性炭を用いた物理吸着剤に、さらに炭酸カリウムを添着させるようにすることは、当業者が容易にできたことである。 イ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明に記載された技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 エ 請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、「本願請求項1記載の発明における炭酸カリウムの働きは、引用文献2乃至4に記載の吸着剤や再生処理材料の働きとは異なるものである。本願請求項1記載の発明における炭酸カリウムの働きは、第一ろ材で除去すべき一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化させることを前提に、下記化学式に記載の通り、第一ろ材で酸化された二酸化窒素(2NO2)と空気中の水(H2O)との反応で硝酸(HNO3)と亜硝酸(HNO2)とを生成させ、亜硝酸(HNO2)と炭酸カリウム(K2CO3)との反応で亜硝酸カリウム(2KNO2)と水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を生成させ、また、硝酸(2HNO3)と炭酸カリウム(K2CO3)との反応で硝酸カリウム(2KNO3)と水(H2O)と二酸化炭素を(CO2)生成させることで基材の活性炭に吸着される二酸化窒素(NO2)の量を軽減させることで、第二ろ材の二酸化窒素(NO2)の吸着能を維持するようにしたものである。」旨を主張している(以下、「主張1」とする)。 主張1について、本願発明において、炭酸カリウムを用いた化学反応は、審判請求人が示すような化学式であるものであるとしても、炭酸カリウムの働きとしては、二酸化窒素を除去するものと認められる。一方、引用文献2乃至4における炭酸カリウムの働きも、本願発明の炭酸カリウムの働きと同様に、二酸化窒素を除去するものであるから、本願発明と引用文献2乃至4における炭酸カリウムの働きは同様のものであると認められるため、主張1を採用することはできない。 また、審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1に記載の呼気ガスの処理装置は水分除去手段で呼気ガス中に含まれる水分を積極的に除去するようにしたものであり、水分を除去した状態で一酸化窒素(NO)を化学吸着剤に接触させるようにしたものである。これに対して、本願発明では加温加湿器や患者から排出された空気中に含まれる水分を上記炭酸カリウムの反応の利用するものであり、水分除去手段を利用する引用文献1に引用分文献2乃至4の周知技術を適用することは不合理である」旨を主張している(以下、「主張2」とする)。 主張2について、引用文献1の【0034】には、「この吸着反応にはH2Oが必要で、ある程度の水分が存在した状態で効果的な窒素酸化物の除去作用を発揮するのである。」とあり、水分除去手段で水分は除去されているものの、ある程度の水分は存在した状態で、窒素酸化物を除去しているものであるから、主張2を採用することはできない。 さらに、審判請求人は、上申書において、「第一ろ材で生成された二酸化窒素をそのまま第二ろ材の活性炭で吸着させようとした場合に活性炭による二酸化窒素の吸着量が早く飽和してしまうことに鑑み、第一ろ材で生成した二酸化窒素の量を第二ろ材の活性炭で吸着する前に軽減させるために第二ろ材において化学吸着剤である炭酸カリウムを用いるようにしたもの」である旨を主張している(以下、「主張3」とする。)。 主張3について、上記アで述べたように、フィルターの性能を長く持続させたいという課題は、一般的なものであり、活性炭に炭酸カリウムを添着させ、二酸化窒素を吸着除去するようにすることは、周知技術であるから、主張3を採用することはできない。 加えて、審判請求人は、上申書において、「引用文献1は上流側と下流側とに化学吸着剤を配する点を何ら開示も示唆もしておらず、また、引用文献1は発生した二酸化窒素の量を軽減する点についても何ら開示も示唆もしていない」旨を主張している(以下、「主張4」とする。)。 主張4について、上記アおよび上記主張3において述べたように、フィルターの性能を長く持続させたいという課題は、一般的なものであり、引用文献1の吸着筒5の性能を長く持続させるために、物理吸着剤としての活性炭として、炭酸カリウムを添着させた活性炭を用いるようにすることは、当業者であれば容易になし得たことであり、その際、上流側と下流側とに化学吸着剤が配置されること、上流側で生成された二酸化窒素の量が軽減されるようになるから、主張4を採用することはできない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和7年4月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和7年1月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1から引用文献4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2019-58640号公報 引用文献2:特開平9-262274号公報 引用文献3:特開2001-219022号公報 引用文献4:特開2002-113075号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1から引用文献4の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第二ろ材」の「基材」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-005221

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