特許拒絶査定不服審判
2025-001598
包装材料用積層体および包装材料
- 審判番号
- 2025-001598
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-060481
- 請求日
- 2025年02月03日
- 審決日
- 2026年06月30日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】浅野 真理
- 【請求人代理人】伏見 俊介
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 佐藤 秀之
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P18 .121-Z (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-60481「包装材料用積層体および包装材料」拒絶査定不服審判事件〔令和5年6月27日出願公開、特開2023-89053〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成30年9月7日に出願した特願2018-168347号(以下「原出願」という。)の一部を令和5年4月3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 5月27日付け 特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知書
令和6年 7月29日 意見書および手続補正書の提出
令和6年10月25日付け 令和6年7月29日提出の手続補正の却下の決定
令和6年10月25日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和6年11月 1日 原査定の謄本の送達)
令和7年 2月 3日 審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 6月11日 上申書の提出
第2 令和7年2月3日提出の手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和7年2月3日提出の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1 本件補正について
(1)本件補正は、特許請求の範囲の全文を補正するものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備え、
前記基材が、基材本体、蒸着膜およびバリアコート層(無機層状化合物を含むバリアコート層を除く)をこの順に備え、
前記ヒートシール層が、蒸着膜およびポリオレフィン樹脂層を備え、
前記ヒートシール層が備える蒸着膜は、前記ポリオレフィン樹脂層に接して設けられており、
前記基材本体がポリオレフィンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体を構成するポリオレフィンはポリプロピレンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレンから構成され、
前記バリアコート層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンおよび(メタ)アクリル樹脂から選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂を含み、
前記バリアコート層の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく、
前記ヒートシール層が備える蒸着膜の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さく、
前記包装材料用積層体全体における前記ポリプロピレンの含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
本件補正前の、本件の出願時の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
基材と、ヒートシール層とを備え、
前記基材が、基材本体、蒸着膜およびバリアコート層をこの順に備え、
前記ヒートシール層が、蒸着膜およびポリオレフィン樹脂層を備え、
前記基材本体がポリオレフィンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体を構成するポリオレフィンと、前記ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンとが、同一のポリオレフィンであり、
前記バリアコート層の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく、
前記ヒートシール層が備える蒸着膜の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいことを特徴とする、包装材料用積層体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「バリアコート層」、「ヒートシール層」、「基材本体」及び「ポリオレフィン樹脂層」について、上記のとおり限定を付加するとともに、「包装材料用積層体」のポリプロピレンの含有量を特定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
<引用文献等一覧>
1:特開2003-277676号公報
6:特開2015-58568号公報(周知技術を示す文献)
7:特開2000-25148号公報(周知技術を示す文献)
13:大日本印刷、リサイクルに適した単一素材(モノマテリアル)のフィルムパッケージ2種を開発、日本経済新聞、2018年9月6日、[検索日:2026.5.22]、インターネット: <URL: https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP489810_W8A900C1000000/>(周知技術を示す文献)
14:特開2005-255190号公報(周知技術を示す文献)
15:特開2011-189540号公報(周知技術を示す文献)
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。なお、文献にない下線については当審において付与した。また、「・・・」は文章の省略を示す。以下、同じ。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医薬品、食品、化粧品、煙草、トイレタリー分野などの包装用途などに用いられ、酸素、水蒸気、その他の内容物を変質させるガスの透過を阻止するのに有効なガスバリアコーティング組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、医薬品、食品、化粧品、煙草、トイレタリー分野などの包装用途などに用いられる包装材料は、例えば食品用であれば蛋白質、油脂類の酸化などの内容物の変質を防止し、味などの品質保持のために、酸素、水蒸気、その他の内容物を変質させるガスを透過させないガスバリア性を有する材料が用いられている。・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の技術的課題を背景になされたもので、多湿条件下でも酸素や水蒸気などの気体に対するバリア性が低下することなく、また、メラミン、ホルムアルデヒド、有機スズなどの人体への有害性が懸念される化合物を含まず、人体に無害なガスバリアコーティング組成物を提供することを目的とする。」
「【0037】コーティングフィルム
本発明のコーティング組成物は、特に、ガスバリア性コート材に有用である。すなわち、基材樹脂フィルム上に、本発明のコーティング組成物からなる硬化塗膜を、あるいは、無機酸化物の蒸着膜と本発明のコーティング組成物からなる硬化塗膜を積層することにより、ガスバリア性に優れたコーティングフィルムが得られる。」
「【0053】合成樹脂フィルムなどの基材(上記蒸着膜が積層された基材を含む)上に、本発明のガスバリアコーティング組成物から形成される硬化塗膜(以下「本発明の塗膜」ともいう)を積層するには、基材の表面に、グラビアコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾燥膜厚が0.01~30μm、好ましくは0.1~10μmの本発明の塗膜を形成することができ、通常の環境下、50~300℃、好ましくは70~200℃の温度で、0.005~60分間、好ましくは0.01~10分間、加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、本発明の塗膜を形成することができる。また、ガスバリアコーティング組成物から形成される硬化塗膜を積層するに先立ってアンカーコート剤などの接着改良剤などをコートすることもできる。上記アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。また、必要ならば、本発明のガスバリアコーティングフィルム上に、印刷絵柄層を設け、さらに必要ならば、この印刷絵柄層上に、ヒートシール性樹脂層を形成させることができる。
・・・
【0055】次にまた、上記のヒートシール性樹脂層を形成するヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、・・・その他の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂を使用することができる。・・・」
「【0061】本発明のガスバリアコーティングフィルムおよびその積層材は、これを使用して製袋、製函して、種々の形態の物品を充填包装するに適した包装用容器の製造を可能とする。本発明のガスバリアコーティングフィルムを使用して得られる包装用容器は、酸素、水蒸気などに対するガスバリア性、透明性、耐熱性、耐衝撃性などに優れ、ラミネート加工、印刷加工、製袋、製函加工などの後加工適性を有し、例えば、飲食品、医薬品、洗剤、シャンプー、オイル、歯磨き、接着剤、粘着剤などの化学品、化粧品、その他種々の物品の充填包装適性、保存適性などに優れているものである。上記製袋、製函する方法について説明すると、例えば、軟包装袋の場合、上記ガスバリアコーティングフィルムの積層材を使用し、その内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、またはその2枚を重ね合わせ、さらにその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。その製袋方法としては、上記積層材をその内層面を対向させて折り曲げるか、またはその2枚を重ね合わせ、さらにその外周の周辺端部を、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付きシール型、平底シール型、角底シール型、その他のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の包装用容器を製造する。また、上記積層材は、自立性包装袋(スタンダップパウチ)、チューブ容器なども製造することが可能である。上記ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。さらに、上記包装用容器には、例えばワンピースタイプ、ツーピースタイプ、その他の注出口、開閉用ジッパーなどを任意に取り付けることができる。」
「【0063】
【実施例】・・・
【0067】参考例2(ジルコニウムキレート化合物の調製)
還流冷却器、攪拌機を備えた反応器に、テトラ-n-ブトキシジルコニウム(純度100%)100部、アセト酢酸エチル68部を加え、60℃で30分間攪拌し、ジルコニウムキレート化合物(b-2)を得た。この反応生成物の純度は77%であった。
【0068】実施例1
(a)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体〔日本合成化学(株)製、ソアノールD2908、ケン化度;98%以上、エチレン含量;29モル%、メルトフローインデックス;8g/10分〕の4%(水/n-プロピルアルコール重量比=40/60)溶液100部を調製した。次いで、参考例1で調製したチタンキレート化合物(b-1)2部、テトラエトキシシラン1部、n-プロピルアルコール20部、および水6部を混合して室温で30分間共加水分解(縮合)した(b)成分と上記(a)成分を室温で混合し、本発明のコーティング組成物(A)を得た。コーティング組成物(A)の加熱ゲル化率は30%であった。
・・・
【0072】実施例5
実施例1において、(b-1)に代えて(b-2)を用いた以外は実施例1に従い、本発明のガスバリアコーティング組成(E)を得た。このコーティング組成物(E)の加熱ゲル化率は60%であった。
・・・
【0085】実施例14
(1)基材として、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(二村化学工業株式会社製、商品名、GH-I、片面コロナ処理品)を使用し、これを巻き取り式真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、上記フィルムをコーティングドラムの上に繰り出して、アルミニウムを蒸着源に用い、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による酸化反応真空蒸着法により、上記2軸延伸ポリプロピレンフィルムの上に、膜厚0.02μmの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着源:アルミニウム
真空チャンバー内の真空度:8.2×10-6mbar
蒸着チャンバー内の真空度:1.0×10-6mbar
EB出力:40kW
フィルムの搬送速度:500m/分
(2)次に、上記で酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムの酸化アルミニウムの蒸着膜面に、下記条件でコロナ処理を施した。その結果、酸化アルミニウムの蒸着膜表面の表面張力は、47dynから62dynに向上した。
出力:10kW
処理速度:100m/min
(3)次に、上記でコロナ処理した酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、その酸化アルミニウムの蒸着膜のコロナ処理面に、グラビア印刷機を使用し、その第1色目にグラビアコート用ロールを配置し、実施例5により得られたガスバリアコーティング組成物(E)を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、厚さ0.5g/m2(乾燥状態)のコーティング膜を形成した。次いで、100℃で3分、加熱処理してコーティング硬化膜を形成して、本発明のガスバリアコーティングフィルムを製造した。次に、上記ガスバリアコーティングフィルムのコーティング硬化膜の上に、引き続き上記グラビア印刷機を用い、グラビアインキ組成物を使用して、所望の多色印刷絵柄層を形成した。
(4)次いで、上記で印刷絵柄層を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート機の第1送り出しロールに装着し、その印刷絵柄層面に、グラビアロールコート法を用いて2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤を4.5g/m2(乾燥状態)の割合で塗工して、ラミネート用接着剤層を形成した。次いで、上記ラミネート用接着剤層面に、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして、積層材を製造した。この積層材の酸素透過率は、0.4cm3/m2・atm・24hrであった。また、耐水密着性は良好であった。」
(イ)上記記載から、引用文献1には、その実施例14として記載されている積層材として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(二村化学工業株式会社製、商品名、GH-I、片面コロナ処理品)の上に、膜厚0.02μmの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、次に、酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムの酸化アルミニウムの蒸着膜面に、コロナ処理を施し、次に、コロナ処理した酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、その酸化アルミニウムの蒸着膜のコロナ処理面に、グラビア印刷機を使用し、(a)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体〔日本合成化学(株)製、ソアノールD2908、ケン化度;98%以上、エチレン含量;29モル%、メルトフローインデックス;8g/10分〕の4%(水/n-プロピルアルコール重量比=40/60)溶液100部を調製し、次いで、還流冷却器、攪拌機を備えた反応器に、テトラ-n-ブトキシジルコニウム(純度100%)100部、アセト酢酸エチル68部を加え、60℃で30分間攪拌し、ジルコニウムキレート化合物(b-2)2部、テトラエトキシシラン1部、n-プロピルアルコール20部、および水6部を混合して室温で30分間共加水分解(縮合)した(b)成分と上記(a)成分を室温で混合し、得られたガスバリアコーティング組成物(E)を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、厚さ0.5g/m2(乾燥状態)のコーティング膜を形成し、次に、100℃で3分、加熱処理してコーティング硬化膜を形成して、ガスバリアコーティングフィルムを製造し、次に、ガスバリアコーティングフィルムのコーティング硬化膜の上に、引き続き上記グラビア印刷機を用い、グラビアインキ組成物を使用して、所望の多色印刷絵柄層を形成し、次に、印刷絵柄層を形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート機の第1送り出しロールに装着し、その印刷絵柄層面に、グラビアロールコート法を用いて2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤を4.5g/m2(乾燥状態)の割合で塗工して、ラミネート用接着剤層を形成し、次に、ラミネート用接着剤層面に、厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして、製造した積層材。」
イ 周知技術について
(ア)引用文献6
a 同じく原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルムの一方の面上に無機酸化物蒸着膜を設けてなる透明ガスバリア性フィルムの、該無機酸化物蒸着膜を設けた側の面に、接着層を介して、遮光性シーラントフィルムを積層した遮光性バリア積層体であって、
該遮光性シーラントフィルムは、ヒートシール性樹脂フィルムの一方の面に、アルミニウム蒸着膜を設けてなるフィルムであり、該アルミニウム蒸着膜を設けた側の面が、該接着層と対向するように積層することを特徴とする、上記遮光性バリア積層体。」
「【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品等の種々の物品を充填包装するために、種々の包装材が開発され、提案されている。
・・・
【0004】
更に、例えば、内容物が食塩、砂糖、粉末スープ、粉ミルク、インスタントコーヒー、ふりかけ、粉状または顆粒状調味料、粉末洗剤等の粉体または顆粒体である場合は、内容物を粉状または顆粒状に維持するために、極めて高い水蒸気バリア性が要求されるが、従来の包装材では、この要求を満たすことができず、内容物が吸湿して品質を損なうという問題点がある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決し、ガスバリア性及び遮光性に優れ、嵩張らず低コストで製造可能でありながら、粉体を包装するための包装材としても使用できる程に十分に高い水蒸気バリア性を示す遮光性バリア積層体、及びそれよりなる包装体、特に粉体用包装体を提供することを目的とする。」
「【実施例】
【0059】
本発明について、実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
(1)厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの一方の面に、マグネトロンスパッタ装置を用いてアルゴンガスによるプラズマ処理面を形成した。得られたフィルムを、抵抗加熱方式の真空蒸着装置に装着し、そのプラズマ処理面上に、下記の蒸着条件にて、厚さ20nmの酸化アルミニウム蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着源:アルミニウム
供給ガス:酸素
蒸着チャンバ内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチャンバ内の真空度:2×10-2mbar
インラインOD値:0.2
フィルム搬送速度:600m/min
次いで、上記で形成された酸化アルミニウム蒸着膜上に、上記と同様にしてプラズマ処理面を形成した。
【0060】
(2)一方、下記の表1に示す組成に従って、調製した組成(a)のポリビニルアルコール、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液に、予め調製した組成(b)のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アルミニウムアセチルアセトン、塩酸及びイオン交換水からなる加水分解液を加えて撹拌し、無色透明のガスバリア性組成物を得た。
【0061】
表1
a. ポリビニルアルコール 1.24質量%
イソプロピルアルコール 20.1質量%
H2O 43.8質量%
酢酸 0.10質量%
b. エチルシリケート40(コルコート社製) 9.26質量%
イソプロピルアルコール 8.88質量%
アルミニウムアセチルアセトン 0.02質量%
塩酸 0.10質量%
H2O 16.5質量%
合 計 100質量%
【0062】
次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で調製したガスバリア性組成物をグラビアロールコート法によりコーティングして、100℃で30秒間加熱処理を行い、厚さ0.4g/m2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、透明ガスバリア性フィルムを製造した。
【0063】
(3)一方、メタロセン系触媒を使用して重合した密度0.920のエチレン・1-ヘキセン共重合体100重量部に、アンチブロッキング剤として粒径3.5μmのゼオライト0.5重量部を添加して十分に混練し、これを、インフレーション製膜法を用いて製膜し、厚さ50μmの低密度ポリエチレン系樹脂フィルムを製造した。
この一方の面にコロナ処理を施し、得られたフィルムを、抵抗加熱方式の真空蒸着装置に装着し、そのコロナ処理面上に、下記の蒸着条件にて、厚さ40nmのアルミニウム蒸着膜を形成して、遮光性シーラントフィルムを製造した。
【0064】
(蒸着条件)
蒸着源:アルミニウム
蒸着チャンバ内の真空度:2×10-3mbar
巻き取りチャンバ内の真空度:3×10-2mbar
フィルム搬送速度:350m/min
【0065】
(4)次に、上記の(2)で製造した透明ガスバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に、所望の印刷模様を形成した後、その印刷模様を含む全面に、2液硬化型ポリウレタン系ドライラミネート用接着剤を、グラビアロールコート法を用いて厚さ4.0g/m2(乾燥状態)にコーティングして接着層を形成し、この接着層の面に、上記(3)で得られた遮光性シーラントフィルムを、そのアルミニウム蒸着膜の面が対向するように重ね合せてドライラミネートし、本発明の遮光性バリア積層体を製造した。」
「【0072】
[実施例5]
密度0.900のエチレン-プロピレンランダム共重合体100重量部に、アンチブロッキング剤として粒径3.5μmのゼオライト0.5重量部を添加して十分に混練し、これをインフレーション製膜法を用いて製膜し、厚さ50μmのポリプロピレン樹脂フィルムを製造し、一方の面にコロナ処理を施した。
【0073】
実施例1に記載の遮光性バリア積層体において、低密度ポリエチレン系樹脂フィルムの代わりに、上記のポリプロピレン樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明に係る遮光性バリア積層体を製造した。
最終的な層構成は、PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着膜/ガスバリア性塗布膜/接着層/アルミニウム蒸着膜/ポリプロピレン樹脂フィルムであった。
酸素透過度は0.1cc/m2・day・atmであり、水蒸気透過度は0.1g/m2・day・atmであった。・・・」
b 引用文献6に記載されている事項
上記aの記載から、引用文献6には、「内容物が顆粒状調味料、粉末洗剤等の粉体または顆粒体を包装するための包装材としても使用できる程に十分に高い水蒸気バリア性を示す遮光性バリア積層体としての実施例として記載されている実施例5として、層構成として/PETフィルム(12μm)/酸化アルミニウム蒸着膜(20nm)/ガスバリア性塗布膜(0.4g/m2)/接着層(4.0g/m2)/アルミニウム蒸着膜(40nm)/ポリプロピレン樹脂フィルム(50μm)/である積層体が記載されていて、ポリプロピレン樹脂フィルムはヒートシール層であるから、当該実施例5には、ポリプロピレン樹脂層に直接接するように蒸着膜が設けられていて、その蒸着膜の厚みはポリプロピレン樹脂層の厚みより小さいものを用いていること」が記載されている。
(イ)引用文献7
a 同じく原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、基材フィルム層、無機酸化物の蒸着膜層、無機酸化物の蒸着膜層、および、ヒートシール性樹脂層の順で順次に積層してなることを特徴とする積層材。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・そこで本発明は、酸素ガスあるいは水蒸気等に対するバリア性等に優れ、更に、遮光性を有し、例えば、飲食品、医薬品、化粧品、化学品、その他等の種々の物品、特に、菓子、スナック食品等に対する充填包装に有用な積層材を提供することである。」
「【0031】実施例5
(1).基材として、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、これをプラズマ化学成膜装置の送り出しロールに装着し、下記の成膜条件で厚さ180Åの酸化珪素の薄膜層を上記の2軸延伸ポリエチレンテレフタレレートフィルムの片面に形成して、透明バリア性フィルムを製造した。
(プラズマ化学成膜条件)
製膜化スピード;100m/min
プラズマパワー;10kW
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1:3:3(単位:slm)
真空チャンバ-内の真空度;50μbar
(2).次に、上記で製造した透明バリア性フィルムの酸化珪素の薄膜層面に、グラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式を用いて所望の印刷絵柄層を形成した。
(3).他方、上記のプラズマ化学成膜装置を使用し、上記と同様にして蒸着して、厚さ25μmの無延伸ポリプロピレンフィルムの片面に、膜厚200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(4).次に、上記の透明バリア性フィルムの印刷絵柄層と、上記の無延伸ポリプロピレンフィルムの酸化珪素の蒸着膜層とを対向させ、その両者を、押し出し用ポリエチレン樹脂を使用し、厚さ20μmにポリエチレン樹脂を押し出しながら、押し出しラミネートして、本発明にかかる積層材を製造した。
(5).次に、上記で製造した積層材を使用し、その無延伸ポリプロピレンフィルム面を重ね合わせて、その三方の外周端部をヒートシールしてシール部を形成して包装用袋を製造し、次いで、該包装用袋の開口部からスナック菓子を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールしてスナック包装製品を製造した。
上記の包装製品は、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、内容物であるスナック菓子の劣化、変質等は認められなかった。」
b 引用文献7に記載されている事項
上記aの記載から、引用文献7には、「スナック菓子の充填包装に有用な積層材としての実施例として記載されている実施例5として、層構成として/2軸延伸ポリプロピレンフィルム(20μm)/酸化珪素の蒸着膜(200Å)/印刷絵柄層/ポリエチレン樹脂(20μm)/酸化珪素の蒸着膜(200Å)/無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)/である積層体が記載されていて、200Åは、0.02μmであり、無延伸ポリプロピレンフィルムはヒートシール層であるから、当該実施例5には、ポリプロピレン樹脂層に直接接するように蒸着膜が設けられていて、その蒸着膜の厚みはポリプロピレン樹脂層の厚みより小さいものを用いていること」が記載されている。
(ウ)引用文献13
令和6年7月29日提出の手続補正の却下の決定で引用された引用文献13には、次の記載がある。
「【プレスリリース】発表日:2018年9月6日
リサイクルに適した単一素材(モノマテリアル)のフィルムパッケージを開発
リサイクル業者等とリサイクル技術や仕組みの構築にも取組み、海洋汚染の低減に貢献
大日本印刷株式会社・・・は、食品や日用品などに使用されるフィルムパッケージ向けに、よりリサイクルしやすい単一素材(モノマテリアル)で構成したパッケージ2種を開発しました。
今回、洗剤やシャンプーの詰替えパウチなど、液体や重量のある内容物に最適なポリエチレン素材のモノマテリアルパッケージと、高速充填性やバリア性が必要とされるパッケージに最適なポリプロピレン素材のモノマテリアルパッケージを開発しました。
【モノマテリアルパッケージ開発の背景】
地球温暖化などの環境課題が世界的に広がるなか、パッケージにも環境負荷を低減することが求められています。特に近年、海洋プラスチック汚染が大きくクローズアップされ、欧州連合(EU)では使い捨てプラスチック容器の禁止やリサイクルを義務づける法案が提出されるなど、全世界で使用後のプラスチックを資源として再利用するためのリサイクルを推進していくことが求められています。それに対して、これまでのフィルムパッケージは、特性の異なる複数の素材を組み合わせることで、保存性や強度などの各種機能を付与しているため、リサイクルがしにくいという課題がありました。
・・・
【開発したモノマテリアルパッケージについて】
・・・
今回DNPは、これらのフィルムに、これまで培ってきたプラスチック基材へのコンバーティング技術や製膜技術、蒸着技術などを活かして必要な性能を付与することで、フィルムパッケージとしての機能を損なうことなく、ポリエチレン素材のモノマテリアルパッケージと、ポリプロピレン素材のモノマテリアルパッケージを実現しました。・・・」
(エ)引用文献14
同じく手続補正の却下の決定で引用された引用文献14には、次の記載がある。
「【0028】
以上のように蓋材と包装容器とを貼り合わす方法としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、直鎖状低密度エチレン、エチレンメチルメタアクリレート共重合体、アイオノマー等のエチレン系共重合体を熱接着層として用いることが通常である。また、包装容器としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の発泡プラスチック類の包装容器と蓋材とから構成される。特に、ポリオレフィン系の発泡プラスチック包装容器の場合とすると材料としてポリオレフィンで統合できることになり、リサイクル面で有利になるので好ましい。」
「【0045】
[実施例1、2]
二軸配向樹脂(A)層としてポリプロピレン樹脂(住友ノーブレンFS2016、MFR:2.1g/10分)を240℃にて溶融押出し、シート状にキャストした後、ロール延伸装置を用いて135℃で長手方向に4.7倍延伸し、一軸延伸フィルムを得た。次いで、別な押出機を用いて一軸配向樹脂(B)層としてポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製PC802A、MFR:15g/10分)を240℃で溶融押出し、前述の一軸延伸フィルムと冷却ドラム上でラミネートし、該一軸延伸フィルムとラミネート樹脂の積層されたフィルムを得た。次いで該積層フィルムを熱風オーブン中にクリップで把持しながら、155℃の延伸温度にて幅方向に9倍延伸し、5%のリラックスを取りながら155℃で熱固定した。次いでクリップ把持部分をトリミングの後に(B)層樹脂表面にコロナ放電処理を行い巻き取った。こうして得られたフィルムは、二軸配向ポリプロピレン樹脂(A)層が26μ、一軸配向ポリプロピレン樹脂(B)層が13μmで、(B)層表面は濡れ張力が39mN/mに処理されていた。」
(オ)引用文献15
同じく手続補正の却下の決定で引用された引用文献15には、次の記載がある。
「【0033】
本実施形態では、樹脂シート2は、3層の積層構造を有しており、原料樹脂として、2種類のポリプロピレン系樹脂を用いている。このため、得られる樹脂シート2は、モノマテリアルとなるので、リサイクルを容易に行うことができる。」
「【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、食品、医薬品、化粧品等の包装用途に適用することができる。」
(カ)周知技術
上記(ア)b及び(イ)bより、以下の周知技術1が認定できる。
<周知技術1>
「飲食品などの包装材料用積層体のシーラント層として用いられるポリプロピレン樹脂フィルムとして、ポリプロピレン樹脂層に直接接するようにポリプロピレン樹脂層より厚みの小さい蒸着層を備えたポリプロピレン樹脂フィルムを利用すること。」
また、上記(ウ)~(オ)より、以下の周知技術2が認定できる。
<周知技術2>
「積層体の素材をポリプロピレンでモノマテリアル化し、リサイクル性を向上すること。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件補正発明の「基材本体」に相当し、かつ、本件補正発明の「前記基材本体がポリオレフィンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、前記基材本体を構成するポリオレフィンはポリプロピレンを含み」を満たす。
イ 引用発明の「酸化アルミニウムの蒸着膜」は、本件補正発明の「蒸着膜」に相当する。
ウ 引用発明の「コーティング硬化膜」は、ガスバリアコーティング組成物(E)の組成からみて、無機層状化合物を含んでいないので、本件補正発明の「バリアコート層(無機層状化合物を含むバリアコート層を除く)」に相当し、ガスバリアコーティング組成物(E)が、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含んでいることから、本件補正発明の「前記バリアコート層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンおよび(メタ)アクリル樹脂から選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂を含み」を満たす。
エ 引用発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」、「酸化アルミニウムの蒸着膜」と「コーティング硬化膜」をあわせたものが、本件補正発明の「基材」に相当する。そうすると、引用発明の/2軸延伸ポリプロピレンフィルム(20μm)/酸化アルミニウムの蒸着膜(0.02μm)/コーティング硬化膜(0.5g/m2(乾燥状態))/多色印刷絵柄層/2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤層(4.5g/m2(乾燥状態))/無延伸ポリプロピレンフィルム(70μm)という層構成は、本件補正発明の「前記基材が、基材本体、蒸着膜およびバリアコート層(無機層状化合物を含むバリアコート層を除く)をこの順に備え」ている態様に相当する。
オ 引用発明の「無延伸ポリプロピレンフィルム」は、引用文献1の【0053】、【0055】、【0061】の記載及び当業者の技術常識から、本件補正発明の「ヒートシール層」に相当するとともに、引用発明の「無延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件補正発明の「前記ヒートシール層が、蒸着膜およびポリオレフィン樹脂層を備え、前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレンから構成され」に関して、少なくとも「前記ヒートシール層が、ポリオレフィン樹脂層を備え、前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレンから構成され」る限りで一致する。
カ 引用発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」の厚みは20μmであり、引用発明のコーティング硬化膜の厚みは、0.5g/m2であり、コーティング樹脂の密度をその主成分となるエチレン-ビニルアルコール共重合体の密度である1.2と仮定すると、厚みは約0.42μmとなるから、引用発明は、本件補正発明の「前記バリアコート層の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さく」を満たしている。
キ 引用発明の「積層材」は、引用文献1の「本発明のガスバリアコーティングフィルムおよびその積層材は、これを使用して製袋、製函して、種々の形態の物品を充填包装するに適した包装用容器の製造を可能とする。・・・上記製袋、製函する方法について説明すると、例えば、軟包装袋の場合、上記ガスバリアコーティングフィルムの積層材を使用し、その内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させて、それを折り重ねるか、またはその2枚を重ね合わせ、さらにその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。」(【0061】)の記載から、本件補正発明の「包装材料用積層体」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「基材と、ヒートシール層とを備え、
前記基材が、基材本体、蒸着膜およびバリアコート層(無機層状化合物を含むバリアコート層を除く)をこの順に備え、
前記ヒートシール層が、ポリオレフィン樹脂層を備え、
前記基材本体がポリオレフィンにより構成される延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体を構成するポリオレフィンはポリプロピレンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層は、ポリプロピレンから構成され、
前記バリアコート層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンおよび(メタ)アクリル樹脂から選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂を含み、
前記バリアコート層の厚みが、前記基材本体の厚みよりも小さい、
包装材料用積層体。」
<相違点1>
ポリプロピレン樹脂層を備えるヒートシール層に関し、本件補正発明は、さらに「蒸着膜」を備えており、さらに、当該ヒートシール層が備える蒸着膜は、「前記ポリオレフィン樹脂層に接して設けられており」「前記ヒートシール層が備える蒸着膜の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さく」と特定するのに対し、引用発明は、このような特定はない点。
<相違点2>
包装材料用積層体に関し、本件補正発明は、「前記包装材料用積層体全体における前記ポリプロピレンの含有量が、80質量%以上である」と特定するのに対し、引用発明は、このような特定はない点。
(4)判断
ア 相違点1について
上記(2)イ(カ)で周知技術1として示したように、包装材料用積層体のシーラント層として用いられるポリプロピレン樹脂フィルムとして、ポリプロピレン樹脂層に直接接するようにポリプロピレン樹脂層より厚みの小さい蒸着層を備えたポリプロピレン樹脂フィルムを用いることは周知技術である。
そして、引用発明の解決しようとする課題は、人体に無害なガスバリアコーティング組成物を提供すること(引用文献1の【0003】)であるところ、当該ガスバリアコーティング組成物を用いた引用発明の積層材のガスバリア性をさらに高めるために、上記周知技術1を採用して、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
イ 相違点2について
引用発明における包装材料用積層体全体におけるポリプロピレンの含有量を計算する。
本件明細書の詳細な説明の「なお、包装材料用積層体における同一ポリオレフィンの含有量とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の含有量の和に対する、同一ポリオレフィンの含有量の割合を意味する。」(【0023】)の記載から、引用発明の層構成における蒸着膜は樹脂材料が利用されていないから除外され、コーティング層及び接着剤層の厚みは、コーティング層の比重を主成分であるエチレン-ビニルアルコール共重合体の比重である1.2と仮定し、接着剤層の主成分である2液硬化型ポリウレタン樹脂の比重である1.2と仮定して求めると、コーティング硬化膜は、0.42μm、2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤層は、3.75μmとなる。
ここで、ポリプロピレンの密度を0.91、コーティング硬化膜の密度を1.2、接着剤層の密度をポリウレタン樹脂の密度である1.2として、積層体におけるポリプロピレンの含有量を計算すると、0.91×(20+70)/(0.91×(20+70)+1.2×0.42+1.2×3.75)=81.9/(81.9+0.504+4.5)=81.9/86.904=0.942となり、引用発明における包装材料用積層体全体における前記ポリプロピレンの含有量は、94.2%であり、グラビアインキ組成物による多色印刷絵柄層の樹脂の組成、量は不明であるが、通常、多量ではないことを考慮すれば、ポリプロピレンの含有量は、80.0質量%以上である蓋然性が高い。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点ではない。
仮にそうでないとしても、上記(2)イ(カ)で周知技術2として示したように、積層体の素材をポリプロピレンでモノマテリアル化し、リサイクル性を向上することは、周知技術である。
引用発明においてもそのような課題が内在しているところ、引用発明に周知技術2を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術1及び2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和6年7月29日提出の意見書において、以下の主張をしている。
「引用文献6、7には、バリア性を向上させるために基材及びヒートシール層の両方に蒸着膜を設けることが教示されているものの、バリアコート層の厚みを基材本体の厚みよりも小さく、あるいはヒートシール層が備える蒸着膜の厚みをポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さくすることまでは、何ら記載も示唆もされておりません。」
また、審判請求書において、以下の主張を行っている。
「・・・しかしながら、引用文献1に記載された発明は、基材又はヒートシール層のいずれかに蒸着膜を備えるものの、本願発明のように、基材及びヒートシール層の両方に蒸着膜を備えていない点で本願発明と相違いたします。この点について、引用文献6、7には、バリア性を向上させるために基材及びヒートシール層の両方に蒸着膜を設けることが教示されているものの、ヒートシール層が備える蒸着膜がポリオレフィン樹脂層に接して設けられていることまでは、何ら記載も示唆もされておりません。さらに、引用文献1及び引用文献6、7には、基材とヒートシール層を構成する材料として同一のものを使用することでモノマテリアル化してリサイクル性を向上させる、という技術思想は何ら教示も示唆もありません。してみれば、引用文献1に接した当業者が、引用文献6、7の記載事項を参酌してバリア性を向上させるために基材とヒートシール層の両方に蒸着膜を設けようとすることはあっても、ヒートシール層が備える蒸着膜を、ポリオレフィン樹脂層に接して設けようとは考えません。すなわち、引用文献1に接した当業者は、引用文献6-7の記載事項を参酌したとしても、引用文献1に記載された発明から本願発明を容易に想到することはできません。」
しかしながら、当該主張についての判断は、上記(4)ア及びイに示したとおりである。
したがって、審判請求人の主張を採用することはできない。
オ 小括
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年2月3日提出の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1~6に記載されたとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)に示したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての拒絶の理由は、以下の理由を含む。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(A)
●理由1(進歩性)について
・請求項 1-4、6
・引用文献等 1、6-7」
また、「<引用文献等一覧>」として以下の文献が挙げられている。
1.特開2003-277676号公報
6.特開2015-58568号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2000-25148号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、6及び7の記載事項は、上記第2の2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明から、「バリアコート層」、「ヒートシール層」、「基材本体」及び「ポリオレフィン樹脂層」についての限定事項を削除するとともに、「包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量が、80質量%以上である」との発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-001598