商標異議申立
2024-900258
ユナイテッドエンジニアリングホールディングス、ユナイテッドエンジニアリング、ユナイテッド、エンジニアリング
- 審判番号
- 2024-900258
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2024-004354
- 登録番号
- 6849993
- 請求日
- 2024年12月10日
- 審決日
- 2025年08月21日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ライクス
- 【権利者代理人】澤木 紀一
- 【異議申立人】ユナイテッド・エアーラインズ・インコーポレーテッド
- 【異議申立人代理人】青木 博通
- 【異議申立人代理人】片山 礼介
- 【異議申立人代理人】中田 和博
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 真鍋 伸行
- 分類
- T1652.261-Y (W39) / T1652.262-Y (W39) / T1652.263-Y (W39) / T1652.271-Y (W39)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6849993号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6849993号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6849993号商標(以下「本件商標」という。)は、「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」の文字を標準文字により表してなり、令和6年1月18日に登録出願、第35類ないし第37類、第39類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同年9月2日に登録査定され、同年10月2日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という場合がある。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3207192号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲1のとおり
指定役務: 第39類「ターボジェット機による輸送」
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成8年10月31日(特例商標)
(2)登録第3207194号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定役務: 第39類「ターボジェット機による輸送」
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成8年10月31日(特例商標)
(3)登録第3207196号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 :別掲3のとおり
指定役務: 第39類「ターボジェット機による輸送」
登録出願日:平成4年9月30日
設定登録日:平成8年10月31日(特例商標)
(4)国際登録第1322346号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:別掲4のとおり
指定役務: 第39類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務
国際商標登録出願日:2016年(平成28年)8月10日
優先権主張日:2016年(平成28年)5月19日(United States of America)
設定登録日:平成29年4月28日
(5)国際登録第1529502号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:別掲5のとおり
指定役務:第39類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務
国際商標登録出願日:2019年(令和元年)12月5日
優先権主張日:2019年(令和元年)10月23日(United States of America)
設定登録日:令和3年7月16日
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標が、その指定役務中、第39類「車両による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり,飛行場の提供,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,航空機の貸与,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,航空機用エンジンの貸与」(以下「本件申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する場合がある。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の先後願及び指定役務
引用商標は、本件商標に対して先願先登録の商標である(甲1、甲2)。
指定役務については、本件商標の指定役務である第39類「航空機による輸送」が、引用商標の指定役務と、また、本件商標の指定役務である第39類「貨物の輸送の媒介」及び「旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」が、引用商標5の指定役務に類似している。
イ 本件商標と引用商標の構成について
本件商標は、標準文字で「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」と書してなる。
これに対して、引用商標1は、ローマ字の「U」を図案化した図形の下にローマ字で「UNITED」と書されている。
引用商標2は、太字のローマ字で「UNITED」と書されている。
引用商標3は、太字のローマ字で「UNITED」、その下に極々小さい文字で「AIRLINES」と上下二段で書されている。
引用商標4及び5は、太字のローマ字で「UNITED」と書され、その右に地球を模した長方形の図形が配されている。
ウ 引用商標「UNITED」の周知性について
(ア)申立人について
申立人であるユナイテッド・エアラインズ・インコーポレーテッドは、1926年にアメリカ合衆国で創立された、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴを本拠とする航空会社であり、社員数は88,000人、就航地は世界353空港である(甲3)。
2019年の国内線旅客輸送実績は8,750万人(世界第6位)、国際線旅客輸送実績は2,880万人(世界第12位)、国内国際合計では世界第5位にランクする。売上額は419億米ドル(日本円で約5.1兆円)で世界第4位であり、2021年2月時点でのフリート数(保有機数)は822機で世界第3位である(甲4)。
一般財団法人が発行している「令和5年度 民間航空機関連データ集」(甲5)の「エアライン・ランキング」によれば、申立人は、有償旅客キロにおいて世界第2位、旅客数世界第5位、売上高世界第3位である。
日本を代表する航空会社である「全日本空輸(ANA)」は有償旅客キロにおいて世界第25位、売上高は第12位、「日本航空(JAL)」の場合、有償旅客キロにおいて世界第31位、売上高は第15位であり、全日本空輸の売上高(12,582百万ドル)と日本航空の売上高(10,137百万ドル)を合計しても申立人の売上高(44,955百万ドル)に遠く及ばない。
申立人は世界を代表する航空会社の一つであるといえる。
(イ)引用商標の使用態様
申立人が保有する飛行機の側面には、「UNITED」と大きく書されている(甲3、甲4、甲6)。
そして、日本においては、羽田国際空港、成田国際空港、関西国際空港、中部国際空港(セントレア)、福岡空港に就航し、日本の主要国際空港と米国の主要都市を結ぶ日本発着便を多数運航している(甲6)。
(ウ)申立人が世界各国において有する商標
申立人は、第39類「航空機による輸送」に関し、世界中において商標「UNITED」を登録している(甲7)。
(エ)申立人の売上について
申立人の航空旅客業務に関する、日本発着の年間旅客数について、日本との往来における年間乗客数は、すべての販売拠点(POS)を合計すると232万4,994人、日本の販売拠点(JP POS)のみでは57万6,492人となる。日本発着の航空券の年間売上高は、全POSで約17億ドル(1,736,909,402ドル)、日本の販売拠点(JP POS)のみでは約3億750万ドル(307,524,419ドル)である(甲8の1)。
申立人の航空貨物業務に関する、日本発着分の貨物輸送について、2024年の日本発分の売上は、80.69百万ドル(約120億8,583万9,450円)、2024年の日本着分の売上は、25.98百万米ドル(約38億8,950万6,000円)である。日本通運、日本郵船といった物流会社が主要顧客である(甲8の2)。
申立人の航空旅客・航空貨物業務に関する、2014年から2024年までの日本発着分に関する日本の販売拠点からの年間売上(航空券及び貨物)について、パンデミック(2020年)以前は、日本発着航空券の売上は、すべての販売拠点で年間12~16億ドル、日本の販売拠点のみで年間4億2,550万~5億9,300万ドルの売上を上げていることが分かる。また、パンデミック(2020年)前、日本発着の年間旅客数は全POSで230万人を超え、日本の販売拠点(JP POS)だけで90万人から130万人に達していたこと分かる(甲8の3)。
(オ)申立人のマーケティング活動について
申立人の日本市場における「UNITED」商標に関連するマーケティング活動について、日本におけるユナイテッド航空の公式アカウントのフォロワー数は、Instagramが24,300人、facebookが15,600人、投稿の平均インプレッション数は、それぞれ3,720件及び4,930件である。また、エンゲージメント率は、それぞれ5.61%及び7.85%と比較的高い水準にある。
さらに、ソーシャルメディアを活用した有料広告(PaidAd)も行っている。
申立人は、2024年9月23日~10月15日に「META JPN-GUM」キャンペーンを実施し、また、7月3日~8月2日には「Teads JPN-GUM」キャンペーンを展開した。これらのキャンペーンは、申立人のグアム便の利用促進を目的としており、オンライン上でのブランド認知向上に寄与している。
さらに、日本国内での広告展開の一環として、電車広告や空港広告が積極的に活用されており、具体的には、羽田-グアム路線の新規就航に伴う広告が、東京メトロの主要路線(銀座線・丸ノ内線・日比谷線・東西線・千代田線・半蔵門線・南北線・有楽町線・副都心線)に掲出され、また、成田空港にも同様の広告が展開された。加えて、成田-セブ路線の新規就航に関する広告も成田空港で掲示された(甲9)。
(カ)まとめ
申立人は商標「UNITED」の下、日本を含む世界中で航空事業を行っていること、また、日本を含む世界各国において商標「UNITED」の登録を有していることを総合的に勘案すれば、引用商標「UNITED」は、本件商標の出願時及び査定時において、航空事業を中心に需要者の間において広く認識され、周知な商標となっていたことは明らかである。
エ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標との類否について検討すると、引用商標はその構成文字から「ユナイテッド」の称呼が生ずるものである。
一方、本件商標は標準文字で「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」と書されているところ、その文字数は22字、促音と長音を除いても19字と非常に冗長である。
また、本件商標中の「ホールディングス」の文字は、「持ち株会社、その事業活動の支配のために他社の株式を保有する会社」等を意味する外来語と認められるところ、一般的には、法人組織名を表す語として広く一般に使用されており、「会社四季報2024年4週秋号」の社名索引を見てもそれは明らかである(甲11)。
したがって、「ホールディングス」の文字は自他役務の識別標識としての機能が極めて弱いものというのが相当であり、本件商標に接する取引者、需要者は、「ホールディングス」の文字部分を、単に法人組織名を表したものと認識し、「ユナイテッドエンジニアリング」の文字部分を自他役務の識別標識として捉え、これより生ずる称呼をもって取引にあたる場合も決して少なくないものと認められる。
なお、「ユナイテッドエンジニアリング」も、その文字数は14字、促音を除いても13字と相当に冗長であり、また、本件商標中の「エンジニアリング」の文字は、「工学,工学技術」等を意味する外来語と認められるところ、ニース分類において、第42類「土木・工学に関するエンジニアリング(英訳:engineering)」、また、TM5 IDリストでは、第42類「航空宇宙に関するエンジニアリングの技術的な助言(英訳:Technical consultation in the field of aerospace engineering)」とあるように(甲12)、普通名称として広く一般に認識されていることから、「エンジニアリング」の文字も自他役務の識別標識としての機能が極めて弱いものというのが相当である。
そうとすると、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際にあっては、本件商標に接する取引者、需要者は、「ホールディングス」の文字部分を、単に法人組織名を表したものと認識し、そして、「エンジニアリング」の文字を単に役務を表したものと認識し、「ユナイテッド」の文字部分を自他役務の識別標識として捉え、これより生ずる称呼をもって取引にあたる場合も決して少なくないものと認められる。
さらに、上述のように、「UNITED」の文字は、航空機による輸送に関し、申立人の商標として取引者・需要者の間に広く認識されている。
「UNITED」が強い出所表示機能を発揮し、強力な顧客吸引力を有することを考えると、本件商標に接する取引者・需要者が、「UNITED」に相応する「ユナイテッド」の文字に着目し、その役務の出所について申立人の「UNITED」商標を連想し・想起して取引に資する場合も決して少なくない。
このような状況に鑑みれば、本件商標は、その指定役務中「航空機による輸送」及び「貨物の輸送の媒介」との関係においては、その構成文字全体に相応して「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」及び「ユナイテッドエンジニアリング」の称呼を生ずるほか、「ユナイテッド」の称呼をも生じるというべきである。
本件商標と引用商標とは「ユナイテッド」という称呼において共通するものであり、本件商標を「航空機による輸送」及び「貨物の輸送の媒介」に使用すれば、引用商標を使用した役務との間において、互いに相紛れる可能性が非常に大きく、本件商標と引用商標に類似することは明らかである。
オ 結論
本件商標と引用商標はその称呼において類似するものであるから互いに類似する商標であり、また、指定役務も互いに類似するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号違反に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)ウで述べたように、引用商標「UNITED」が「航空機の輸送,貨物の輸送の媒介」に関し周知著名の商標であることは明らかであり、そうすると、本件商標は「他人の著名な商標と他の文字とが結合した商標」である。
このような状況を踏まえると、本件商標に接した取引者・需要者は、引用商標を連想・想起し、本件商標が付された、本件商標の第39類「航空機の輸送,貨物の輸送の媒介」以外の本件申立役務に関しても引用商標の商標権者の取り扱う役務であると誤信するか、又は、引用商標の商標権者との間に密接な関係を有する者の業務に係る役務であると誤信することで、その役務の出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきであって、本件商標が商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するのは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号違反に該当するものである。
4 当審の判断
(1)申立人の使用に係る商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)「AIRLINE 2020年8月号」(甲3)の「ユナイテッド航空」の見出しのページ又は「世界のエアラインPROFILE」(2021年4月10日発行)(甲4)の「ユナイテッド航空」の見出しのページには、申立人は、1926年にアメリカ合衆国で創立された同国シカゴを本拠とする航空会社であり、保有機数は810機、就航地は353空港、国内線旅客輸送実績は8,750万人で世界第6位、国際線旅客輸送実績は2,880万人で世界第12位、国内国際合計では世界第5位、売上額は419億米ドル(約5.1兆円)で世界第4位であること、及び、我が国において1983年から就航している旨が記載されている。そして、上記各ページには、航空機の機体側面に「UNITED」の文字が表示されている画像が掲載されている。
(イ)「令和5年度版 民間航空機関連データ集」(甲5)には、「United Airlines」は、2022年のエアライン・ランキングにおいて、有償旅客キロ世界第2位、旅客数世界第5位、売上高世界第3位であることが記載されている。また、同データ集には、我が国の空港数が97港であることも記載されている。
(ウ)申立人ウェブサイトの「Newsroom(ニュースルーム)」と題するページ(2023年2月16日付)(甲6)には、「ユナイテッド航空、2023年日本路線夏期フライトスケジュールを発表」の記載、及び、羽田、成田、関西、セントレア(中部)、福岡と米国の主要都市とを結ぶ日本発着便が運行される旨が記載されているとともに、航空機の機体側面に「UNITED」の文字が表示されている画像が掲載されている。
(エ)「申立人の航空旅客業務に関する、日本発着の年間旅客数と貨物量を示す資料」(甲8の1)には、2024年における申立人の日本との往来における年間乗客数は、すべての販売拠点(POS)の合計が約232万5千人、日本の販売拠点(JP POS)のみでは57万6千人、日本発着の航空券の年間売上高は、すべての販売拠点(POS)の合計が約17億3千万ドル、日本の販売拠点(JP POS)のみでは約3億750万ドル、「申立人の航空旅客業務に関する、日本発着の年間旅客数と貨物量を示す資料(カーゴ業績レポート)」(甲8の2)には、2024年における申立人の日本発分の総計収益は、80.69百万ドル、申立人の日本着分の総収益は、25.13百万ドルの記載がある。なお、甲8に関する証拠は、いずれも申立人の作成に係るものであって、それらに記載されている数値等が事実であることを裏付ける客観的な証拠は提出されていない。
(オ)申立人は、2024年9月23日~10月15日に「META JPN-GUM」と題するキャンペーンを実施し、また、同年7月3日~8月2日には「Teads JPN-GUM」と題するキャンペーンを展開し、羽田-グアム路線の新規就航に伴う電車広告や空港広告が、東京メトロの主要路線(銀座線・丸ノ内線・日比谷線・東西線・千代田線・半蔵門線・南北線・有楽町線・副都心線)及び成田空港において展開されたと主張しているところ、「UNITED Trademark Research in Japan」と題する「日本市場における「UNITED」商標に関連するマーケティング活動の調査報告」(甲9)には、日本におけるユナイテッド航空の公式アカウントのフォロワー数は、Instagramが24,300人、facebookが15,600人である。
グアム路線に関する広告には、「United」の文字、及び「UNITED」と「AIRLINES」の文字が二段に表示されたものが掲載されているとともに、航空機の機体側面に「UNITED」の文字が表示された画像が掲載されている。
電車広告には、車内のディスプレイに、航空機の機体側面に「UNITED」の文字が表示された画像が掲載されている。
成田空港における広告掲示には、成田とサイパン路線に関する広告として「ユナイテッド航空」の文字及び「UNITED」と「AIRLINES」の文字が二段に表示されたものが掲載されているとともに、航空機の機体側面に「UNITED」の文字が表示された画像が掲載されており、成田とセブ路線に関する広告として「ユナイテッド航空」の文字及び「UNITED」と「AIRLINES」の文字が二段に表示されたものが掲載されている。
「Media Artcle Exposure」と題するページには、申立人に係るメディア記事としては、「ユナイテッド航空、病気と闘う子供に旅行体験 サンタに会いに“北極へ”」、「★ユナイテッド航空、「ファンタジーフライト」開催」、「ユナイテッド航空、成田~セブ線開設 7年ぶり以遠権路線、成田“再ハブ化”も」、「ユナイテッド航空、定期旅客便として成田=セブ線が就航」などを見出しとする記事の記載がある。
イ 上記アによれば、申立人は、世界における旅客輸送実績や売上高のランキングが上位であることから、世界有数の航空会社の1つであることが認められる。
一方、申立人は、我が国において1983年から米国の主要都市を結ぶ日本発着便を運航していることが認められるものの、申立人の日本における売上高、年間旅客数などは、申立人の作成による数値及びグラフを中心とした証拠が提出されているのみであって、その数値等が事実であることを裏付ける客観的な証拠は提出されていない。
そして、申立人の提出に係る各甲号証をみるに、申立人又は申立人の業務に係る役務を表すに際して「United Airlines」又は「ユナイテッド航空」と表示されていることがほとんどであり、申立人が行った広告においても、「UNITED」の文字が単独で使用されているものは、広告画面の一部や航空機の機体側面に表示されている程度のものしか確認できない。
電車広告及び空港広告については、電車内のディスプレイには、航空機の機体側面に「United」と表示された画像が映し出されているにすぎず、また、それらの広告についても東京メトロの主要路線と成田空港に限られたものであることから、我が国の需要者の多くが「United」の文字を申立人の業務に係る役務を表すものと認識し、目にとめたものとはいえない。
また、申立人の航空旅客業務に関する、日本発着の年間旅客数と貨物量を示す資料(甲8)については、それらの数値等が事実であることを裏付ける客観的な証拠の提出はなく、仮に申立人の主張のとおりの旅客数等であることが確認できたとしても、当該資料のみによっては、我が国における申立人の市場シェアを確認することはできないうえ、我が国における空港数は97空港(甲5)あるところ、申立人の我が国における運航便は国際線のみのわずか5空港を利用しているにすぎない。
さらに、「UNITED」の文字が「連合すること、団結」(「コンサイスカタカナ語辞典第5版」(株式会社三省堂))等の意味を有する一般に知られた成語であって、特に独創性が高いものであるとはいえないことも併せて考慮すれば、申立人の使用に係る「UNITED」の文字からなる標章(以下「申立人標章」という。)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、申立人の提出に係る証拠において、別掲1ないし5のとおりの構成からなる引用商標と同一と認め得るものが使用されている事実を確認できないから、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、申立人標章及び引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ、その構成文字全体に相応した「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」の称呼を生じ、その構成中「ユナイテッド」が「連合すること、団結」、「エンジニアリング」が「工学、工学技術」、「ホールディングス」の文字が「持ち株会社」(いずれも「コンサイスカタカナ語辞典第5版」(株式会社三省堂))の意味を有する語であるところ、構成全体としては、特定の法人名を表したものと看取できるとしても、具体的な意味合いを認識させるものではないから、特定の観念は生じない。
そして、本件商標は、構成中「ホールディングス」の文字が、法人の組織形態を表すものと認識される場合が少なくないこと、及び、その構成文字全体から生じる「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」の称呼が20音と冗長であることからすれば、簡易迅速を尊ぶ取引の実際にあっては、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標の構成中、語頭に書された「ユナイテッドエンジニアリング」の文字部分をもって取引に資する場合も決して少なくないというべきである。
そうすると、本件商標は、構成文字全体から生じる「ユナイテッドエンジニアリングホールディングス」の称呼のほか、「ユナイテッドエンジニアリング」の文字部分に相応した「ユナイテッドエンジニアリング」の称呼も生じるものの、当該文字は辞書等に掲載されている語ではなく、我が国において親しまれた意味合いを有する語でもないから、特定の意味合いを生じない一種の造語とみるべきものである。
以上によれば、「ユナイテッドエンジニアリング」文字部分からは、その構成文字に相応して「ユナイテッドエンジニアリング」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
なお、申立人は、「ユナイテッドエンジニアリング」の文字部分において、「エンジニアリング」の文字は、識別力が極めて弱いこと、及び、「UNITED」の文字は申立人の商標として需要者の間に広く認識され、強い出所表示機能を発揮し強力な顧客吸引力を有するから、需要者が「ユナイテッド」の文字に着目し、申立人の「UNITED」商標を連想、想起するなどとして、本件商標からは「ユナイテッド」の称呼をも生ずる旨主張している。
しかしながら、本件商標の構成中「ユナイテッドエンジニアリング」の文字は、同一の書体をもって、同一の大きさで隙間なく表されており、その構成文字から生じる称呼「ユナイテッドエンジニアリング」も無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、「ユナイテッドエンジニアリング」の文字において、構成中「ユナイテッド」の文字が申立人の業務に係る役務を示すものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができないことは、上記(1)で述べたとおりであり、その他、当該「ユナイテッド」の文字部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるというべき事情は見いだせないから、「ユナイテッドエンジニアリング」の文字に接する取引者、需要者が、殊更後半の「エンジニアリング」の部分を捨象し、「ユナイテッド」の文字のみに着目するというより、むしろその構成全体をもって一体不可分のものと認識するとみるのが相当である。
したがって、申立人の係る主張は採用できない。
イ 引用商標
引用商標は、別掲1ないし別掲5のとおり、「UnITED」の文字のみからなるか、当該文字又は「UNITED」の文字をその構成に含むものであるところ、いずれも、「UnITED」又は「UNITED」(以下、まとめて「「UnITED」等」という場合がある。)の文字部分が目立つように大きく配されており、当該文字部分が単独で出所識別標識としての機能を果たし得るといえることから、引用商標からは「UnITED」等の文字部分に相応し「ユナイテッド」の称呼を生じ、当該文字が「連合すること、団結」の意味を有する語として親しまれているものであるから、「連合すること、団結」ほどの観念を生じ得るものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、外観について、両者は、その構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼について、本件商標から生じる「ユナイテッドエンジニアリングホールディングズ」及び「ユナイテッドエンジニアリング」の称呼と引用商標から生じる「ユナイテッド」の称呼を比較すると、両者は後半部における「エンジニアリングホールディングス」及び「エンジニアリング」の音の差異を有し、これらの差異が称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念について、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、「連合すること、団結」ほどの観念を生じる引用商標とは、相紛れるおそれのないものでる。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定役務が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり申立人標章及び引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、「UnITED」等の文字は、「連合すること、団結」ほどの意味を有する成語であるから、その独創性は高いとはいえない。
さらに、上記(2)のとおり本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、同じ理由によって、「UNITED」の文字からなる申立人標章とも非類似の商標であるということができ、いずれも類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれを本件申立役務について使用しても、取引者、需要者をして、申立人標章又は引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が申立人標章又は引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の指定役務中、本件申立役務についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-900258